(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記引出を引き出した状態において、前記給電コイル及び受電コイルは、何れか一方が上下方向又は左右方向で見たときに他方の内側に納まる大きさに構成される請求項1に記載の給電システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の給電システム10が適用されるキャビネット1を示す斜視図である。本実施形態のキャビネット1は、システムキッチン等に用いられるものである。
【0014】
図1に示すように、キャビネット1は、キャビネット本体2と、調理器具等を収容する複数の引出5,6,7と、を備える。キャビネット本体2には、引出5,6,7を収容するための収容部が、左右の内側板3、底板15及び天板(図示省略)に囲まれた空間により形成される。複数の引出5,6,7は、この収容部に収納位置と引出位置の間でスライド移動可能にそれぞれ取り付けられる。
【0015】
引出5,6,7のうち、最下段に配置される引出7の前板71には、各種の情報を表示可能な電子機器(電気使用機器)60が配置される。電子機器60は、その表示画面に時間、温度、湿度等の情報を表示可能に構成される。また、タイマ機能やアラーム等の機能も有している。
【0016】
給電システム10は、キャビネット本体2に内蔵され、外部電源(図示省略)に接続される給電器30と、引出7に内蔵され、電子機器60に電気的に接続される受電器50と、を備える。
【0017】
給電システム10は、磁界共鳴を利用してキャビネット本体2側の給電器30から引出7側の受電器50に非接触給電を行うことにより、電子機器60に電力を供給する。給電器30及び受電器50は、何れも、共振周波数が一致するようにコイルの形状及びコンデンサの容量等が設定されている共振器である。以下、給電システム10の各構成について説明する。
【0018】
図2は、第1実施形態の引出7の電子機器60に給電が行われる様子を示す模式図である。
図2(a)は、引出7が収納位置にある状態での給電の様子を示し、
図2(b)は引出7が引出位置での給電の様子を示す。
図3は、第1実施形態の引出7を引き出したときの給電コイル31と受電コイル51の位置関係を上から示す模式図である。なお、
図3に示す引出位置は、引出7の移動範囲における最も手前側の位置とする。
【0019】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、キャビネット本体2の底板15の近傍には、外部電源(図示省略)に接続される給電回路20が配置される。給電回路20は、ケーブル25を介して給電器30に電気的に接続されている。
【0020】
本実施形態の給電回路20は、給電器30に電力を供給するON状態と電力の供給を停止するOFF状態を切り替え可能に構成される。
【0021】
給電器30は、キャビネット本体2の底板15に内蔵される。給電器30は、給電コイル31及び共振コンデンサ(図示省略)等によって構成される給電側のLC共振回路である。給電コイル31は、矩形の枠状に形成されており、キャビネット1の底板15の前側に位置している。
【0022】
受電器50は、引出7の底板72に内蔵される。受電器50は、受電コイル51及び共振コンデンサ(図示省略)等によって構成される受電側のLC共振回路である。受電コイル51は、引出7の底板72の形状に合わせて矩形の枠状に折り曲げられて構成される。
【0023】
受電コイル51は、ケーブル55を介して電子機器60に電気的に接続されており、給電器30を介して受電した電力を電子機器60に供給する。なお、
図2では、ケーブル55を介して受電コイル51と電子機器60を接続する例を示したが、受信コイル及び送信コイルによって受電コイル51と電子機器60の電気的接続も非接触給電とすることもできる。
【0024】
図2(a)に示すように、収納位置において給電コイル31は、受電コイル51の下方に位置する。本実施形態では、受電コイル51の手前側と給電コイル31が上下方向で重なっている状態となる。
【0025】
図2(b)に示すように、引出位置においても給電コイル31は、受電コイル51の下方に位置する。本実施形態では、受電コイル51の奥側と給電コイル31が上下方向で重なっている状態となる。
【0026】
図3に示すように、受電コイル51は、給電コイル31よりも大きい矩形状になっている。引出7を最も手前側に引き出した引出位置においても給電コイル31が受電コイル51の内側に納まるように、給電コイル31及び受電コイル51の形状及び配置位置が設定されている。また、
図2(b)に示す収納位置においても、給電コイル31が受電コイル51の内側に納まるように、給電コイル31及び受電コイル51の形状及び配置位置が設定されている。
【0027】
給電器30に給電回路20を通じて電力が供給されると、給電コイル31と受電コイル51の間に磁界結合が生じ、磁界共鳴によって給電コイル31から受電コイル51を通じて電子機器60に電力が供給される。本実施形態では、受電コイル51に電力が供給された受電器50が、磁界共鳴によって生じた高周波を直流に変換して電子機器60に電力を供給する。
【0028】
図2(a)、
図2(b)及び
図3に示すように、本実施形態の引出7は、その移動範囲のどの位置においても上下方向で給電コイル31と受電コイル51が重なるようになっている。従って、引出7の位置が移動範囲のどこであっても、給電コイル31と受電コイル51の間の上下方向の距離は所定の範囲に保たれることになる。
【0029】
以上説明した第1実施形態の給電システム10によれば、以下のような効果を奏する。
給電システム10は、引出7を出し入れ可能なキャビネット本体2と、キャビネット本体2側に配置され、電力が供給される給電コイル31を有する給電器30と、引出7に配置される受電コイル51を有し、給電器30に対応する共振周波数が設定されるとともに、給電器30から磁界共鳴により電気を受電する受電器50と、引出7に配置され、受電器50が受電した電力が供給される電子機器60と、を備える。
【0030】
これにより、磁界共鳴を利用することにより、収納位置と引出位置で位置が変わる引出7の電子機器60に配線を取り回すことなく給電することができる。また、引出7が繰り返し引き出されることに起因する配線の切断や接点損傷等を効果的に防止できる。従って、移動する引出7に配置される電子機器60にキャビネット本体2側から安定して給電を行う構成を実現できる。
【0031】
また、本実施形態の給電システム10は、引出7を引き出した状態において、給電コイル31と受電コイル51は、上下方向で少なくとも一部が重なるように構成される。
【0032】
これにより、収納位置だけでなく引出位置においても給電コイル31と受電コイル51の距離が保たれるので、磁界共鳴を利用した非接触給電を高効率に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態の給電システム10は、引出7を引き出した状態において、給電コイル31及び受電コイル51は、何れか一方が上下方向又は左右方向で見たときに他方の内側に納まる大きさに構成される。
【0034】
これにより、給電コイル31及び受電コイル51の少なくとも一方の全部が他方に対面する状態となり、非接触給電が高効率に行われる領域を増やしてより高効率に給電を行うことができる。本実施形態では、受電コイル51の内側に給電コイル31が納まるように構成されているので、漏れ磁界を効果的に抑制することができる。
【0035】
次に、第1実施形態と同様にキャビネット1に本発明を適用した各実施形態について順次説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、既に説明した同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0036】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の給電システム210が適用されるキャビネット1を示す斜視図である。第2実施形態では、給電システム210におけるキャビネット本体2に配置される給電器230の位置が第1実施形態と異なっている。
図4に示すように、給電器230の給電コイル231は、キャビネット本体2の内側板3に内蔵される。
【0037】
図5は、第2実施形態の引出7の電子機器60に給電が行われる様子を示す模式図である。
図5(a)は、引出7が収納位置にある状態での給電の様子を示し、
図5(b)は引出7が引出位置での給電の様子を示す。
【0038】
図5に示すように、給電コイル231は、上下に縦長の矩形状に形成される。給電コイル231の引出方向の長さは、受電コイル51の引出方向の長さよりも小さくなっている。
【0039】
図5(a)に示すように、収納位置において給電コイル231は、受電コイル51の側方に位置し、受電コイル51の手前側と給電コイル231が左右方向で重なっている状態となる。また、
図5(b)に示すように、引出位置においても給電コイル231は、受電コイル51の側方に位置し、受電コイル51の奥側と給電コイル231が左右方向で重なっている状態となる。従って、引出7の位置が移動範囲のどこであっても、給電コイル231と受電コイル51の間の左右方向の距離は所定の範囲に保たれることになる。即ち、給電コイル231と受電コイル51は、左右方向で少なくとも一部が重なるように構成されている。
【0040】
第2実施形態のように、給電器230の給電コイル231の軸方向と受電器50の受電コイル51の軸方向とは直交する関係となっている場合であっても、給電側と受電側のコイルの配置の自由度が高い磁界共鳴方式により、引出7の側方に配置される給電コイル231から引出7の底板15に配置される受電コイル51に非接触給電を行うことができる。
【0041】
以上説明した第2実施形態の給電システム210によれば、以下のような効果を奏する。
第2実施形態の給電システム210は、給電コイル231は、引出7の側方に配置され、受電コイル51は、引出7の底板72に内蔵される。
【0042】
これにより、鍋等の金属材料で構成されるものが収容物として引出7に収容されている場合でも、磁界共鳴を利用して引出7の側方から受電コイル51に電力を供給することができる。また、底板72の底部が金属材料で構成されている場合であっても、金属材料の上側に受電コイル51を配置することで引出7の側方から受電コイル51に電力を供給することができ、引出7を構成する材料やレイアウトの自由度を広げることができる。
【0043】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の複数の引出5a,6a,7のそれぞれの電子機器60に給電が行われる様子を示す模式図である。
図6に示すように、第3実施形態の給電システム310では、最下段の引出7の上方に位置する引出6a及びこの引出6aの更に上方に位置する引出5aのそれぞれにも、電子機器60が配置される。なお、引出7には、第1実施形態と同様の電子機器60及び受電器50が配置される。
【0044】
引出6aには、底板72に内蔵される受電コイル51a及び共振コンデンサ(図示省略)を有し、中継共振器としても機能する受電器50aが配置される。引出6aには、底板72に内蔵される受電コイル51b及び共振コンデンサ(図示省略)を有する受電器50bが配置される。受電器50a及び受電器50bは、給電器30に対応する共振周波数が設定される。
【0045】
第3実施形態では、引出7に配置される受電コイル51、引出6aに配置される受電コイル51aを中継コイルとして利用し、最も上方に位置する引出5aの電子機器60に電力を供給することが可能となっている。
【0046】
また、引出5a,6a,7は、それぞれ電子機器60を有しており、磁界共鳴を利用して非接触給電された電力を各電子機器60に供給可能となっている。なお、引出5a,6a,7に配置される電子機器60は、適宜省略してもよい。例えば、引出5b,7に配置される電子機器60に関わる構成を省略し、受電コイル51及び受電コイル51aを引出5aの受電コイル51bに給電するための中継コイルのみの機能とすることもできる。
【0047】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の複数の引出5b,6b,7aのそれぞれの電子機器60に給電が行われる様子を示す模式図である。
図7に示すように、第4実施形態の給電システム410では、給電器430の給電コイル431の形状が、引出7aの底板の形状よりも少し小さい程度の矩形の枠状に構成される。
【0048】
最下段に位置する引出7aの受電器50cは、その受電コイル51cが引出7aの側面に固定されている。受電コイル51cは、引出7aの側面の形状に応じた矩形の枠状になっている。
【0049】
引出7aの上方に位置する引出5bに配置される受電器50eは、その受電コイル51eが引出7aの側面の形状に応じた矩形の枠状になっている。本実施形態では、引出7aに比べ、引出5bの側面の上下方向の長さは小さくなっているので、受電コイル51eの上下方向の長さも受電コイル51cの上下方向の長さよりも短くなっている。引出6bに配置される受電器50dの受電コイル51dにおいても、引出6bの側面の形状に応じた矩形の枠状となっている。引出5b,6b,7aのそれぞれが収納位置にある状態において、受電コイル51c〜eは、上下方向に並ぶように隣接配置されている。
【0050】
第4実施形態においても、引出7aに配置される受電コイル51c、引出6bに配置される受電コイル51dを中継コイルとして利用し、最も上方に位置する引出5bの電子機器60に電力を供給することが可能となっている。また、引出5b,6b,7aは、それぞれ電子機器60を有しており、磁界共鳴を利用して非接触給電された電力を各電子機器60に供給する構成としてもよい。
【0051】
引出5b,6b,7aの何れかを収納位置から引出位置に引き出した場合でも、引出5b,6b,7aの奥側がキャビネット本体2で支持されているため、上下方向で一部が重なる位置関係となる。第4実施形態では、受電コイル51c〜eが引出5b,6b,7aの形状に応じた形状となっているので、引出5b,6b,7aのうち、何れかが引き出されたとしても上下に隣接する受電コイル51c〜eは上下方向で少なくとも一部が重なる状態となり、磁界共鳴を利用した非接触給電を効率的に行うことが可能となっている。なお、受電コイル51c〜eは引出5b,6b,7aの側板に内蔵したり、支持部材によって固定したりする等、適宜の方法により引出5b,6b,7aの側方に固定するものとする。
【0052】
第4実施形態の構成により、鍋等の金属材料で構成されるものが収容物として引出5b,6b,7aに収容されている場合や底板72の底部が金属材料で構成されている場合であっても、上下方向に並ぶ引出5b,6b,7aのそれぞれに給電を行うことができる。
【0053】
以上、第3実施形態や第4実施形態のように複数の引出のそれぞれの電子機器に給電を行う構成について説明したが、複数の引出の上下方向の長さに合わせた大きな給電コイルを1つ配置し、この給電コイルを介して各引出に磁界共鳴を利用して非接触給電を行う構成としてもよい。
【0054】
<第5実施形態>
次に、第1実施形態の構成を変形した例として第5実施形態を説明する。
図8は、第5実施形態の引出7の電子機器60に給電が行われる様子を示す模式図である。
図8に示すように、第5実施形態の給電システム10aでは、第1実施形態と同様に、給電器30aの給電コイル31aが底板15に配置されている。第5実施形態の給電コイル31aの形状は、受電コイル51の形状と略同じサイズになっており、給電側と受電側で同一のコイルを用いることが可能となっている。
【0055】
<第6実施形態>
次に、第2実施形態の構成を変形した例として第6実施形態を説明する。
図9は、第6実施形態の引出7の電子機器60に給電が行われる様子を示す模式図である。
図9に示すように、第6実施形態の給電システム210aでは、第2実施形態と同様に、給電器230aの給電コイル231aが内側板3に配置される構成である。第5実施形態の給電コイル231aの形状は、その引出方向の長さが、受電コイル51の引出方向の長さと略同じ長さになっている。
【0056】
第5実施形態及び第6実施形態に示したように、給電コイルの形状や配置位置は適宜変更することができる。例えば、また、第1実施形態では、給電コイル31が受電コイル51よりも小さく構成されるが、受電コイルが給電コイルより小さく構成することもできる。また、第1実施形態では受電コイルより小さい給電コイルを引出の手前側に設置し、引出がどの位置にあっても給電できる状態であるが、給電コイルを引出の奥側に設置してもよい。このように配置することによって引出を収納したときのみ給電されるようにすることもできる。
【0057】
次に、電気使用機器の例について説明する。
図10は、給電システム10によって給電される電気使用機器の例を示す模式図である。
【0058】
図10に示すように、上述の表示機能を備える電子機器60の他に、リモコン65、温風ファン66、引出照明67等を磁界共鳴により非接触給電された電力を供給する電気使用機器とすることができる。
【0059】
リモコン65は、外部機器を操作するための無線機能を有する。操作される対象の外部機器としては、例えば、照明、換気扇、電動収納、電動天窓等である。温風ファン66は、引出7の前板71下部に配置される温風送風機である。
【0060】
引出照明67は、前板71の裏側に配置されており、引出7の内部を照らす照明である。本実施形態の引出照明67において、引出7を引き出した場合のみ内部を照明したい場合は引出7を引き出した状態で給電されるよう引出の手前側で上下もしくは左右方向で一部が重なるように給電コイルと受電コイルを設ける(
図1〜
図3を参照して説明した実施形態)。また、引出照明67に紫外線照射機能を有する殺菌灯を設けてもよく、この場合は引出を閉めた場合のみ内部を照明するよう引出の奥側で上下もしくは左右方向で一部が重なるように給電コイルと受電コイルを設けて、引出7の内部に配置される収容物、例えばまな板90等の殺菌を行うこともできる。なお、引出照明67は、紫外線機能を有して殺菌機能と照明機能の両方とすることもできる。この場合は引出を引き出したときに給電されるよう給電コイルと受電コイルを設ける。
【0061】
また、キャビネット本体2にリミットスイッチ68を配置し、給電回路20のON/OFF制御を行う構成としてもよい。リミットスイッチ68を用いた給電回路20のON/OFF制御の例について説明する。
【0062】
リミットスイッチ68は、引出7が収納位置にある状態を検出する位置検出部であり、給電回路20に電気的に接続されている。給電回路20は、リミットスイッチ68の検出信号により、引出7が収納位置にあることを検出すると電気使用機器に応じたON/OFF制御を行う。
【0063】
例えば、紫外線照射機能を有する引出照明67の場合は、リミットスイッチ68によって引出7が収納位置にあることを検出すると所定時間だけ紫外線照射を行うように給電回路20をON状態になるように制御する。この場合、引出7を閉じると収納位置で紫外線照射による殺菌が行われる。また、紫外線照射機能を有さないような単純な照明機能の場合は、リミットスイッチ68のOFF信号に基づいて照明を点灯し、ON信号になると消灯するように給電回路20のON/OFF制御を行う。この場合は、引出7を引き出すと引出7の内部が照らされることになる。また、電気使用機器が時間等を表示し、常時電力を消費するような電子機器60の場合は、引出7の位置に関わらず給電回路20をON状態に制御する等、引出7に配置される電気使用機器に応じて適宜制御を設定することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。