特許第6688137号(P6688137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688137回転電機の製造装置、及び回転電機の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688137
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】回転電機の製造装置、及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/16 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   H02K15/16 B
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-75783(P2016-75783)
(22)【出願日】2016年4月5日
(65)【公開番号】特開2017-189007(P2017-189007A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下津 久明
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−168098(JP,A)
【文献】 特開2013−055785(JP,A)
【文献】 特開2011−229236(JP,A)
【文献】 実開昭61−062568(JP,U)
【文献】 米国特許第04157613(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸及び永久磁石を有するロータと、
コイルを有し内部に前記ロータを収容するステータと、
前記ステータの一方の端側に設けられた第1ブラケットと、
前記第1ブラケットに形成された第1軸受取付穴に嵌め込まれて前記回転軸の一方の端側を回転可能に支持する第1軸受と、
前記ステータの他方の端側に設けられた第2ブラケットと、
前記第2ブラケットに形成された第2軸受取付穴に嵌め込まれて前記回転軸の他方の端側を回転可能に支持する第2軸受と、
を備える回転電機を製造するための製造装置であって、
ベース面を有する装置本体と、
前記ベース面から離間した状態で前記装置本体に設けられて前記ロータの回転軸の一方の端部を着脱可能に支持すると共に前記第1ブラケットの前記第1軸受取付穴に挿通可能な第1支持部材であって、前記ロータを前記ベース面から離間した状態かつ前記回転軸の中心軸線と当該第1支持部材の中心軸線とが同一線上となった状態で支持可能な第1支持部材と、
前記第1支持部材に対して前記第1支持部材の中心軸線方向に離間して設けられ前記回転軸の他方の端部を着脱可能に支持すると共に前記第2ブラケットの前記第2軸受取付穴に挿通可能な第2支持部材であって、前記ロータを前記ベース面から離間した状態かつ前記回転軸の中心軸線及び前記第1支持部材の中心軸線と当該第2支持部材の中心軸線とが同一線上となった状態で支持可能な第2支持部材と、
前記第2軸受取付穴に前記第2支持部材を挿通可能な状態で前記第2ブラケットを着脱可能に保持する第2ブラケット保持部と、
前記ベース面上に設けられて前記第1支持部材の中心軸線方向に沿って相対的に移動可能でかつ前記第1ブラケットを取り付けた状態の前記ステータを載置可能なステージと、
前記ステージに設けられ前記第1ブラケットを支持可能な第1ブラケット支持部と、
前記第2ブラケットの代わりに前記ステータに着脱可能に装着される仮ブラケットと、
前記ステージ又は前記装置本体に着脱可能に設けられ前記仮ブラケットが前記ステータに装着された状態で前記ステータが前記ステージに載置された場合に前記仮ブラケットを支持可能な仮ブラケット支持部と、
前記ステージに設けられ前記ステージに載置された前記ステータの外周面を少なくとも三方向から前記ステータの中心方向へ向かって押圧可能であって押圧状態と非押圧状態とを切替可能であって、前記第1ブラケット支持部及び前記仮ブラケット支持部によって前記第1ブラケット及び前記仮ブラケットがそれぞれ支持された状態で前記押圧状態となるステータ支持部と、
を備える回転電機の製造装置。
【請求項2】
前記第1軸受取付穴の内径は、前記第2軸受取付穴の内径よりも大きい、
請求項1に記載の回転電機の製造装置。
【請求項3】
回転軸及び永久磁石を有するロータと、
コイルを有し内部に前記ロータを収容するステータと、
前記ステータの一方の端側に設けられた第1ブラケットと、
前記第1ブラケットに形成された第1軸受取付穴に嵌め込まれて前記回転軸の一方の端側を回転可能に支持する第1軸受と、
前記ステータの他方の端側に設けられた第2ブラケットと、
前記第2ブラケットに形成された第2軸受取付穴に嵌め込まれて前記回転軸の他方の端側を回転可能に支持する第2軸受と、
を備える回転電機の製造方法であって、
ベース面を有する装置本体と、
前記ベース面から離間した状態で前記装置本体に設けられて前記ロータの回転軸の一方の端部を着脱可能に支持すると共に前記第1ブラケットの前記第1軸受取付穴に挿通可能な第1支持部材であって、前記ロータを前記ベース面から離間した状態かつ前記回転軸の中心軸線と当該第1支持部材の中心軸線とが同一線上となった状態で支持可能な第1支持部材と、
前記第1支持部材に対して前記第1支持部材の中心軸線方向に離間して設けられ前記回転軸の他方の端部を着脱可能に支持すると共に前記第2ブラケットの前記第2軸受取付穴に挿通可能な第2支持部材であって、前記ロータを前記ベース面から離間した状態かつ前記回転軸の中心軸線及び前記第1支持部材の中心軸線と当該第2支持部材の中心軸線とが同一線上となった状態で支持可能な第2支持部材と、
前記第2軸受取付穴に前記第2支持部材を挿通可能な状態で前記第2ブラケットを着脱可能に保持する第2ブラケット保持部と、
前記ベース面上に設けられて前記第1支持部材の中心軸線方向に沿って相対的に移動可能でかつ前記第1ブラケットを取り付けた状態の前記ステータを載置可能なステージと、
前記ステージに設けられ前記第1ブラケットを支持可能な第1ブラケット支持部と、
前記第2ブラケットの代わりに前記ステータに着脱可能に装着される仮ブラケットと、
前記ステージ又は前記装置本体に着脱可能に設けられ前記仮ブラケットが前記ステータに装着された状態で前記ステータが前記ステージに載置された場合に前記仮ブラケットを支持可能な仮ブラケット支持部と、
前記ステージに設けられ前記ステージに載置された前記ステータの外周面を少なくとも三方向から前記ステータの中心方向へ向かって押圧可能であって押圧状態と非押圧状態とを切替可能であって、前記第1ブラケット支持部及び前記仮ブラケット支持部によって前記第1ブラケット及び前記仮ブラケットがそれぞれ支持された状態で前記押圧状態となるステータ支持部と、
を備える回転電機の製造装置を用いて行われるものであって、
前記ステータに前記第1ブラケットを組み付ける第1ブラケット組付工程と、
前記第2ブラケットの代わりに仮ブラケットを前記ステータに装着する仮ブラケット装着工程と、
前記第1ブラケット組付工程及び前記仮ブラケット装着工程の後に実行され前記第1ブラケットが組み付けられているとともに前記仮ブラケットが装着された前記ステータを前記ステージに載置する載置工程と、

前記載置工程の後に実行され前記ステータ支持部を前記押圧状態に動作させるステータ支持部動作工程と、 前記ステータ支持部動作工程の後に実行され、前記仮ブラケット支持部を前記ステージ又は前記装置本体から取り外す仮ブラケット支持部取外工程と、
前記ステータ支持部動作工程の後に実行され前記第1支持部材の中心軸線方向に沿って前記第1支持部材と前記ステージとを相対的に移動させて前記第1ブラケットとは反対側から前記ステータ内に前記ロータを挿入するロータ挿入工程と、
前記ロータ挿入工程及び前記仮ブラケット支持部取外工程の後に実行され前記ロータが挿入された前記ステータに前記第2ブラケットを組み付ける第2ブラケット組付工程と、
を備える回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の製造装置、及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ又はステータのいずれか一方に永久磁石を配置した永久磁石型回転電機においては、ロータとステータとを組み立てる際には、永久磁石の吸引力によって相互に接触することを防ぐ必要がある。ロータとステータとが永久磁石の吸引力によって接触すると、ロータとステータとが相互に吸着してしまい分離するために手数がかかったり、接触する際の衝撃によって永久磁石等が損傷してしまったりするおそれがあるからである。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、ロータとステータとの接触を防ぐために、次のような構成が開示されている。なお、括弧内の数字は引用文献1における符号を示している。特許文献1では、ステータ(3)のケーシング(5)を基台(7)に配置するとともに、ロータ軸(21)と延長軸(22)との中心軸線が一致するようにロータ(2)を配置する。そして、駆動手段(9)によってロータ(2)をロータ軸(21)及び延長軸(22)の中心軸線に沿って移動させることで、ロータ(2)をステータ(3)の内側に挿入する。これにより、ロータ(2)を、ロータ軸(21)及び延長軸(22)に沿って水平移動させることで、ロータ(2)とステータ(3)との距離を保つことができ、ロータ(2)とステータ(3)との接触を防いでいる。
【0004】
しかしながら、上記構成において、ケーシング(5)は、基台(7)上に載置されているだけである。ここで、一般に、回転電機の外殻を形成するケーシングは、鋳物で構成されていることが多い。しかし、鋳物は外形寸法に誤差が出易いため、ケーシング(5)を単純に基台(7)に載置しただけでは、軸挿通孔(57)の中心とロータ軸(21)の中心とを高い精度で一致させることが難しい。そして、軸挿通孔(57)の中心とロータ軸(21)の中心とが正確に一致していないと、ロータ(2)をステータ(3)内に挿入する際に、ロータ(2)とステータ(3)との径方向の距離が不安定になり易くなる。すると、ロータ(2)とステータ(3)との距離が短い部分に強い吸着力が生じて、相互に接触し易くなる。
【0005】
この場合、軸挿通孔(57)の中心とロータ軸(21)の軸心とを正確に一致させるためには、例えばケーシング(5)に対し、基台(7)と接触する接触面を切削加工等してその接触面と軸挿通穴(57)の中心位置との位置関係を高い精度で確保する必要がある。しかしながら、この様な構成にすると、余計な工数が増えることになり、その結果、製造性が低下するとともにコストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−57915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、ロータとステータとを組み立てる際にロータとステータとの接触を高い精度で防ぐことができる回転電機の製造装置、及び回転電機の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の回転電機の製造装置は、回転軸及び永久磁石を有するロータと、コイルを有し内部に前記ロータを収容するステータと、前記ステータの一方の端側に設けられた第1ブラケットと、前記第1ブラケットに形成された第1軸受取付穴に嵌め込まれて前記回転軸の一方の端側を回転可能に支持する第1軸受と、前記ステータの他方の端側に設けられた第2ブラケットと、前記第2ブラケットに形成された第2軸受取付穴に嵌め込まれて前記回転軸の他方の端側を回転可能に支持する第2軸受と、を備える回転電機を製造するための製造装置である。製造装置は、ベース面を有する装置本体と、前記ベース面から離間した状態で前記装置本体に設けられて前記ロータの回転軸の一方の端部を着脱可能に支持すると共に前記第1ブラケットの前記第1軸受取付穴に挿通可能な第1支持部材であって、前記ロータを前記ベース面から離間した状態かつ前記回転軸の中心軸線と当該第1支持部材の中心軸線とが同一線上となった状態で支持可能な第1支持部材と、前記第1支持部材に対して前記第1支持部材の中心軸線方向に離間して設けられ前記回転軸の他方の端部を着脱可能に支持すると共に前記第2ブラケットの前記第2軸受取付穴に挿通可能な第2支持部材であって、前記ロータを前記ベース面から離間した状態かつ前記回転軸の中心軸線及び前記第1支持部材の中心軸線と当該第2支持部材の中心軸線とが同一線上となった状態で支持可能な第2支持部材と、前記第2軸受取付穴に前記第2支持部材を挿通可能な状態で前記第2ブラケットを着脱可能に保持する第2ブラケット保持部と、前記ベース面上に設けられて前記第1支持部材の中心軸線方向に沿って相対的に移動可能でかつ前記第1ブラケットを取り付けた状態の前記ステータを載置可能なステージと、前記ステージに設けられ前記第1ブラケットを支持可能な第1ブラケット支持部と、前記第2ブラケットの代わりに前記ステータに着脱可能に装着される仮ブラケットと、前記ステージ又は前記装置本体に着脱可能に設けられ前記仮ブラケットが前記ステータに装着された状態で前記ステータが前記ステージに載置された場合に前記仮ブラケットを支持可能な仮ブラケット支持部と、前記ステージに設けられ前記ステージに載置された前記ステータの外周面を少なくとも三方向から前記ステータの中心方向へ向かって押圧可能であって押圧状態と非押圧状態とを切替可能であって、前記第1ブラケット支持部及び前記仮ブラケット支持部によって前記第1ブラケット及び前記仮ブラケットがそれぞれ支持された状態で前記押圧状態となるステータ支持部と、を備える。
【0009】
また、実施形態の回転電機の製造方法は、上記回転電機を用いて上記製造装置を製造するための製造方法である。実施形態の製造方法は、前記ステータに前記第1ブラケットを組み付ける第1ブラケット組付工程と、前記第2ブラケットの代わりに仮ブラケットを前記ステータに装着する仮ブラケット装着工程と、前記第1ブラケット組付工程及び前記仮ブラケット装着工程の後に実行され前記第1ブラケットが組み付けられているとともに前記仮ブラケットが装着された前記ステータを前記ステージに載置する載置工程と、前記載置工程の後に実行され前記ステータ支持部を前記押圧状態に動作させるステータ支持部動作工程と、前記ステータ支持部動作工程の後に実行され、前記仮ブラケット支持部を前記ステージ又は前記装置本体から取り外す仮ブラケット支持部取外工程と、前記ステータ支持部動作工程の後に実行され前記第1支持部材の中心軸線方向に沿って前記第1支持部材と前記ステージとを相対的に移動させて前記第1ブラケットとは反対側から前記ステータ内に前記ロータを挿入するロータ挿入工程と、前記ロータ挿入工程及び前記仮ブラケット支持部取外工程の後に実行され前記ロータが挿入された前記ステータに前記第2ブラケットを組み付ける第2ブラケット組付工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による製造装置の製造対象となる回転電機の一例を示す断面図
図2】一実施形態による製造装置を前方から見た外観を示す斜視図
図3】一実施形態による製造装置を後方から見た外観を示す斜視図
図4】一実施形態による製造装置を後方から見た外観を示す斜視図の一部を拡大して示す図
図5】一実施形態による製造方法において実行される各工程の流れを示すフローチャート
図6】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その1)
図7】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その2)
図8】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その3)
図9】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その4)
図10】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その5)
図11】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その6)
図12】一実施形態による各工程における製造装置の状態を概略的に示す図(その7)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。
[回転電機の構成]
まず、本実施形態による製造対象の一例として、図1に示す回転電機70の構成について説明する。図1に示す回転電機70は、いわゆるインナロータ型の永久磁石型回転電機であり、ロータ80と、ステータ90と、を備えている。ロータ80は、ロータコア81と、複数の永久磁石82と、回転軸83と、を有している。ロータコア81は、例えば電磁鋼板を積層して形成されている。永久磁石82は、ロータコア81の外周表面に設けられている。すなわち、本実施形態の場合、回転電機70は、ロータコア81の表面に永久磁石82が設けられたSPM(Surface Permanent Magnet)型の回転電機である。なお、回転電機70は、SPM型に限られず、永久磁石がロータコアの内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)型であってもよい。
【0012】
回転軸83の中心軸線J1はロータ80及びステータ90の中心を通っている。また、回転軸83の両端部は、ロータコア81の両端部から突出している。ロータ80は、回転軸83と一体的に回転する。回転軸83の一方の端側部分831の外径は、他方の端側部分832の外径よりも大きい。なお、以下の説明では、一方の端側部分831を第1端部831と称し、他方の端側部分832を第2端部832と称する。本実施形態の場合、第1端部831は、負荷側であり、駆動対象となる負荷が接続される。また、第2端部832は、非負荷側であり、負荷は接続されない。
【0013】
ステータ90は、ステータ本体91と、ステータケース92と、を有している。ステータ本体91は、詳細は図示しないが、例えば電磁鋼板を積層して形成したステータコアに、導線を巻回して形成したコイルを設けて構成されている。ステータケース92は、ステータ90の外殻を構成するものであり、例えば鋳物で形成されている。なお、ステータ本体91の外殻が、ステータケース92を兼ねる構成であってもよい。ステータ本体91及びステータケース92は、全体として筒状に形成されている。ステータ本体91は、ステータケース92の内側に挿入されている。ステータ本体91は、例えば製造装置10とは別の装置によって、ステータケース92の内側に挿入される。そして、ロータ80は、ステータ90の内側、つまりステータケース92の内側でかつステータ本体91の内側に収容されている。
【0014】
また、回転電機70は、第1軸受71、第2軸受72、第1ブラケット73、及び第2ブラケット74を有している。第1軸受71は、回転軸83の負荷側部分つまり第1端部831を回転可能に支持する。第2軸受72は、回転軸83の負荷側とは反対側部分つまり第2端部832を回転可能に支持する。本実施形態の場合、第1軸受71は、自動調心機能を有している。そして、第1軸受71の外径は、第2軸受72の外径よりも大きい。
【0015】
第1ブラケット73及び第2ブラケット74は、全体として板状に形成されている。第1ブラケット73はステータ90の一方の端側に設けられている。また、第2ブラケット74は、ステータ90の他方の端側に設けられている。本実施形態の場合、第1ブラケット73は、ステータ90に対して負荷側つまり第1端部831側に設けられている。また、第2ブラケット74は、ステータ90に対して負荷側とは反対側に設けられている。
【0016】
第1ブラケット73は、第1軸受取付穴731を有している。第1軸受取付穴731は、第1ブラケット73の中心部分をその厚み方向へ円形に貫いて形成されている。第1軸受取付穴731の内径寸法は、第1軸受71の外径寸法と略同一寸法となっている。そして、第1軸受71は、第1軸受取付穴731に対して圧入により嵌め込まれている。
【0017】
同様に、第2ブラケット74は、第2軸受取付穴741を有している。第2軸受取付穴741は、第2ブラケット74の中心部分をその厚み方向へ円形に貫いて形成されている。第2軸受取付穴741の内径寸法は、第2軸受72の外径寸法と略同一寸法となっている。そして、第2軸受72は、第2軸受取付穴741に対して圧入により嵌め込まれている。この場合、第1軸受取付穴731の内径は、第2軸受取付穴741の内径よりも大きい。
【0018】
[製造装置の構成]
次に、本実施形態による回転電機の製造装置10(以下、製造装置10と称する)の構成について、図2図4を参照して説明する。製造装置10は、図1に示す永久磁石型回転電機70を組み立てることができる。製造装置10は、図2及び図3に示すように、装置本体20を備えている。装置本体20は、架台21、及びベース板22を有している。架台21は、製造装置10の各機構を設けるための土台である。ベース板22は、長方形状の平板で構成されており、上面に平坦なベース面221が形成されている。製造装置10の各機構は、ベース面221を基準に配置されている。
【0019】
製造装置10は、ステータ移動機構30、ステータ保持機構40、及びロータ保持機構50を備えている。ステータ移動機構30は、第1ブラケット73が組み付けられたステータ90を、ベース面221に平行に移動させるための機構である。ステータ移動機構30は、ガイドレール31、スライダ32、ステージ33、及び駆動部34を有している。ガイドレール31は、いわゆるリニアガイドレールであって、ベース面221上に2本設けられている。2本のガイドレール31は、平行となるように配置されている。スライダ32は、ガイドレール31に沿って滑らかに移動可能に構成されている。
【0020】
ステージ33は、矩形の板で構成されており、2本のガイドレール31に設けられた各スライダ32に跨って設けられている。ステージ33は、スライダ32を介してガイドレール31に沿って、ベース面221に対して平行に移動することができる。駆動部34は、例えばピニオンを有するモータ、及びピニオンに係合するラック等によって構成されている。この場合、ラックは、スライダ32に固定されている。そして、モータが駆動すると、そのモータの回転力がピニオン及びラックによって直線方向への運動に変換されてステージ33に伝達される。これにより、ステージ33は、駆動部34が駆動すると、ガイドレール31の長手方向に沿って滑らかに移動することができる。なお、以下の説明では、ガイドレール31の長手方向つまりスライダ32の移動方向を、製造装置10の前後方向とする。
【0021】
ステータ保持機構40は、ステージ33上に設けられており、ステージ33上にステータ90を保持するためのものである。また、製造装置10は、仮ブラケット11を有している。すなわち、ステージ33は、第1ブラケット73及び仮ブラケット11を取り付けた状態のステータ90を載置可能に構成されている。
【0022】
仮ブラケット11は、ステータ保持機構40にステータ90を保持させるために用いられる治具である。仮ブラケット11は、ステータ90をステータ保持機構40に保持させる際に、第2ブラケット74の代わりにステータ90に着脱可能に取り付けられる。仮ブラケット11は、第2ブラケット74に類似した形状であり、全体として板状に形成されている。この場合、仮ブラケット11の中心部には、図4等に示すように、第2軸受取付穴741よりも内径が大きい連通穴111が形成されている。
【0023】
ステータ保持機構40は、第1ブラケット支持部41、仮ブラケット支持部42、及び複数のステータ支持部43を有している。第1ブラケット支持部41は、図3に示すように、第1ブラケット73の下方に設けられている。第1ブラケット支持部41は、例えばブロック状に形成されており、ステージ33上に固定されている。第1ブラケット支持部41は、第1ブラケット73が組み付けられたステータ90において第1ブラケット73を支持する。
【0024】
この場合、第1ブラケット支持部41の第1ブラケット73側の面つまり上端面411は、切削加工等が施された平坦面に形成されている。これにより、ベース面221から第1ブラケット支持部41の上端面411までの寸法は、高い寸法精度が確保されている。また、図6等に示すように、第1ブラケット73の下端面732つまり第1ブラケット支持部41との接触面は、切削加工等が施された平坦面に形成されており、ステータ90の位置決めの基準面の1つとして機能している。ステータ90に第1ブラケット73を取り付けた場合、下端面732からステータ90の中心までの距離寸法は高い精度で確保されている。
【0025】
この場合、第1ブラケット支持部41は、ベース面22に対する第1ブラケット73の位置、換言すれば第1支持部材52及び第2支持部材55の中心に対する第1ブラケット73の位置を決める第1ブラケット位置決部としても機能する。また、この場合、第1ブラケット73の下端面732は、回転電機70を設置する際の基準面として利用することもできる。
【0026】
仮ブラケット支持部42は、第1ブラケット支持部41と同様に、例えばブロック状に形成されている。仮ブラケット支持部42は、ステータ90における第1ブラケット73とは反対側、つまり第2ブラケット74が組み付けられる位置の下方に設けられている。換言すれば、仮ブラケット支持部42は、仮ブラケット11が取り付けられる箇所の下方に設けられている。
【0027】
この場合、図6等に示すように、仮ブラケット支持部42の仮ブラケット11側の面つまり上端面421は、切削加工等が施された平坦面に形成されている。そして、ベース面221から仮ブラケット支持部42の上端面421までの寸法は、高い寸法精度となっている。また、図4に示すように、仮ブラケット11の下端面112は、切削加工等が施された平坦面に形成されており、ステータ90の位置決めの基準面の1つとして機能する。ステータ90に仮ブラケット11を取り付けた場合、下端面112からステータ90の中心までの寸法精度は高い精度が確保されている。この場合、仮ブラケット支持部42は、ベース面22に対する仮ブラケット11の位置、換言すれば第1支持部材52及び第2支持部材55の中心に対する仮ブラケット11の位置を決める仮ブラケット位置決部としても機能する。
【0028】
仮ブラケット支持部42は、例えばボルト等の締結部材で固定されることによって、ステージ33上に着脱可能に設けられている。すなわち、仮ブラケット支持部42は、装置本体20に着脱可能に設けられている。仮ブラケット支持部42は、仮ブラケット11が取り付けられたステータ90において仮ブラケット11部分を支持する。なお、仮ブラケット支持部42は、ベース面221に着脱可能に設けてもよい。
【0029】
複数のステータ支持部43は、それぞれステージ33と一体的に移動可能に構成されている。ステータ支持部43は、図4に示すプランジャー431と、内部に設けられた図示しないバネ等を有している。ステータ支持部43は、油圧、空圧、又は水圧等の駆動圧力を印加することでプランジャー431が突出する。これにより、ステータ支持部43は、ステータ90を押圧して支持した状態つまり押圧状態となる。また、ステータ支持部43は、駆動圧力を解除するとバネの弾性力によってプランジャー431の突出が解除されて引き込まれる。これにより、ステータ支持部43は、ステータ90の押圧支持を解除した状態つまりステータ90を押圧支持していない非押圧状態となる。
【0030】
ステータ支持部43は、ステージ33に載置されたステータ90の外周面を少なくとも三方向からステータ90の中心へ向かって押圧することで、ステータ90を支持するものである。本実施形態の場合、ステージ33に載置されたステータ90の外周面を、上面、下面、及び左右側面の四方向からステータ90の中心へ向かって略点接触状態で押圧することで、ステータ90を支持することができる。この場合、各ステータ支持部43は、ステータ90の下面を支持する下面支持部43Aと、ステータ90の左右側面を支持する側面支持部43B、43Cと、ステータ90の上面を支持する上面支持部43Dと、から構成されている。なお、各ステータ支持部43の配置や数は、ステータ90の外形に応じて適宜変更することができる。
【0031】
そして、ステータ保持機構40は、側壁部44、45、及び天井壁部46、を有している。側壁部44、45は、ステータ90の対向する側面を覆うようにして、ステージ33に設けられている。天井壁部46は、ステータ90の上面を覆うようにして、側壁部44、45を介してステージ33に設けられている。天井壁部46は、側壁部44、45に着脱可能に設けられている。本実施形態の場合、天井壁部46は、対向する側壁部44、45のうち一方にヒンジを介して開閉可能に設けられている。また、下面支持部43Aは、ステージ33に設けられている。側面支持部43B、43Cは、それぞれ側壁部44、45に設けられている。そして、上面支持部43Dは、天井壁部46に設けられている。
【0032】
ロータ保持機構50は、第1台座部51、第1支持部材52、第2台座部53、第2ブラケット保持部54、及び第2支持部材55を有している。第1台座部51は、図2及び図3に示すように、ベース面221上においてステージ33の一方の移動端側に設けられている。第1支持部材52は、円柱軸状に形成されている。第1支持部材52の一方の端部は、第1台座部51によって回転不可に支持されている。これにより、第1支持部材52は、ベース面221から離間した状態で装置本体20に設けられている。この場合、第1支持部材52は、第1ブラケット73の第1軸受取付穴731を挿通可能に形成されている。すなわち、第1支持部材52の外径寸法は、第1軸受取付穴731の内径寸法よりも小さい。
【0033】
第1支持部材52は、図2に示すように、第1受部521を有している。第1受部521は、円筒形の片側部分この場合上側部分を切り欠いた形状に形成されており、ロータ80の第1端部831を着脱可能に受け付けて支持することができる。図9に示すように、第1受部521にロータ80の第1端部831が載置された状態において、回転軸83の中心軸線J1と第1支持部材52の中心軸線J2とは同一線上となっている。すなわち、この場合、回転軸83の中心と第1支持部材52の中心とは一致している。
【0034】
第2台座部53は、ベース面221上においてステージ33の他方の端部側つまり第1台座部51とは反対側に設けられている。ちなみに、第2台座部53は、ガイドレール31に沿って移動可能な補助スライダ35に設けられている。しかし、製造装置10により回転電機70を製造する際、第2台座部53は、固定ピン36によってベース面221に対して移動不可に固定されている。
【0035】
第2ブラケット保持部54は、第2ブラケット74の第2軸受取付穴741に第2支持部材55を挿通可能な状態で第2ブラケット74を着脱可能に保持するものである。第2ブラケット保持部54は、第2台座部53の上端部つまりベース面221とは反対側の端部に設けられている。第2ブラケット保持部54は、例えば図7図12に示すように、第2軸受取付穴741の内径よりも若干小さい外径を有する円柱状に形成されており、第2軸受取付穴741に対してマイナス公差で嵌合可能となっている。そして、第2軸受取付穴741に第2ブラケット保持部54を挿入することで、第2ブラケット保持部54は、第2ブラケット74を支持する。なお、第2ブラケット保持部54は、例えばボルト等によって第2ブラケット74を保持する構成であっても良いし、第2ブラケット74の下面等を支持する構成であっても良い。
【0036】
第2支持部材55は、図3に示すように、第1受部521と同様に円筒形の片側部分この場合上側部分を切り欠いた形状に形成されている。これにより、第2支持部材55は、ロータ80の第2端部832を着脱可能に受け付けて支持することができる。したがって、第2支持部材55は、第2受部として機能する。図9等に示すように、第2支持部材55にロータ80の第2端部832が載置された状態において、回転軸83の中心軸線J1と第2支持部材55の中心軸線J3とは同一線上となっている。すなわち、この場合、回転軸83の中心と第2支持部材55の中心とは一致している。
【0037】
また、本実施形態の場合、ロータ保持機構50は、図2図4、及び図6等に示すように、ハンドル56を有している。ハンドル56の回転に伴い、第2台座部53に対する第2支持部材55の突出寸法が変更される。この場合、使用者は、ハンドル56を回転させることで、第1支持部材52に対する第2支持部材55の距離Lを調整することができる。これにより、ロータ80の回転軸83の長さ寸法に応じて、ロータ保持機構50における第1支持部材52と第2支持部材55との間の距離寸法Lを調整することができる。
【0038】
また、製造装置10は、図2図3に示すように、制御盤12及び操作装置13を備えている。制御盤12は、詳細は図示しないが、駆動部34のモータを駆動制御するための駆動回路や、ステータ支持部43の駆動圧力を制御するための電磁弁、そしてこれら駆動回路や電磁弁を制御するためのコンピュータ等を有している。操作装置13は、モニタ131や複数のスイッチ132等を有している。使用者は、スイッチ132を操作することで、製造装置10の動作の開始又は停止を行うことができる。
【0039】
[製造工程]
次に、製造装置10によって行われる回転電機70の製造工程について、図5図12も参照して説明する。
なお、以下の説明において、「組付」とは、回転電機70を構成する部品を回転電機70の構成要素として組み付けることを意味する。また、「装着」とは、回転電機70を構成しない部品を着脱可能に取り付けること等を意味する。そして、「取付」とは、製造装置10に対して治具等を着脱可能に取り付けること等を意味する。
また、以下の説明では、図6図12における紙面の右側を製造装置10の前側とし、紙面の左側を製造装置10の後側とする。
【0040】
まず、製造工程が開始されると(図5のスタート)、作業者は、図5のステップS11の第1ブラケット組付工程、ステップS12の仮ブラケット装着工程、及びステップS13の仮ブラケット支持部取付工程を実行する。ステップS11の第1ブラケット組付工程において、作業者は、ステータ90に第1ブラケット53を組み付ける。ステップS12の仮ブラケット装着工程において、作業者は、ステータ90に仮ブラケット11を装着する。そして、ステップS13の仮ブラケット支持部取付工程において、作業者は、製造装置10のステージ33仮ブラケット支持部42を取り付ける。この場合、ステップS11〜S13の実行順をどのように入れ替えても良い。
【0041】
次に、作業者は、ステップS14において載置工程を実行する。作業者は、載置工程を行う際に、天井壁部46を開放するとともに、各ステータ支持部43を非押圧状態にする。載置工程において、作業者は、図6に示すように、第1ブラケット73が組付けられているとともに仮ブラケット11が装着されたステータ90を、ステータ保持機構40を介してステージ33に載置する。ステータ90がステージ33に載置されると、第1ブラケット73が第1ブラケット支持部41によって支持されるとともに、仮ブラケット11が仮ブラケット支持部42によって支持される。
【0042】
この場合、図6等に示すように、第1ブラケット73の下端面732は、第1ブラケット支持部41の上端面411に接触した状態で支持される。ここで、ステータ90の中心線J1は、第1ブラケット73の中心つまり第1軸受取付穴731の中心を通っている。そして、第1ブラケット73の中心から下端面732までの距離寸法H11、及び第1ブラケット支持部41の上端面411からベース面22までの距離寸法H21は、高い寸法精度が確保されている。したがって、第1ブラケット73が第1ブラケット支持部41に支持された状態において、第1ブラケット73の中心及びステータ90の中心からベース面22までの距離寸法H31は、高い寸法精度となっている。
【0043】
同様に、仮ブラケット11の下端面112は、仮ブラケット支持部42の上端面421に支持される。ここで、ステータ90の中心線J1は、仮ブラケット11の中心つまり連通穴111の中心を通っている。そして、仮ブラケット11の中心から下端面112までの距離寸法H12、及び仮ブラケット支持部42の上端面421からベース面22までの距離寸法H22は、高い寸法精度が確保されている。したがって、仮ブラケット11が仮ブラケット支持部42に支持された状態において、仮ブラケット11の中心及びステータ90の中心からベース面22までの距離寸法H32は、高い寸法精度となっている。
【0044】
すなわち、ステータ90は、第1ブラケット73が第1ブラケット支持部41によって支持されるとともに、仮ブラケット11が仮ブラケット支持部42によって支持されることで、ベース面22から第1ブラケット73、ステータ90、及び仮ブラケット11の中心までの距離H31、H32を高い精度に確保することができる。換言すると、第1ブラケット73が第1ブラケット支持部41によって支持されるとともに、仮ブラケット11が仮ブラケット支持部42によって支持されることで、第1ブラケット73、ステータ90、及び仮ブラケット11の中心と、第1支持部材52及び第2支持部材55の中心とを高い精度で一致させることができる。
【0045】
次に、作業者は、ステップS15に示すように、ステータ支持部動作工程を実行する。ステータ支持部動作工程では、作業者は、図7に示すように、天井壁部46を閉じる。そして、操作装置13を操作して、ステータ支持部43に駆動圧力を印加してステータ支持部43を駆動させる。これにより、ステータ本体91は、四方からステータ90の中心に向かって押圧された状態で支持される。この場合、各ステータ支持部43は、ステータ90の四方からステータ90の中心に向かって略均等な力で押圧するため、ステータ支持部43の駆動の前後においてステータ90の中心位置が変化し難い。つまり、ステータ支持部動作工程後においても、第1ブラケット73、ステータ90、及び仮ブラケット11の中心と、第1支持部材52及び第2支持部材55の中心とは、高い精度で一致している。
【0046】
次に、作業者は、ステップS16に示すように、仮ブラケット支持部取外工程を実行する。これにより、作業者は、図7に示すように、仮ブラケット支持部42をステージ33から取り外す。この場合、ステータ90は、各ステータ支持部43によって支持されている。したがって、仮ブラケット支持部42をステージ33から取り外した後であっても、第1ブラケット73及びステータ90の中心と、第1支持部材52及び第2支持部材55の中心とは、高い精度で一致している。
【0047】
次に、作業者は、ステージ33を後退させた後、ステップS17に示す第2ブラケット取付工程を実行する。これにより、作業者は、図8に示すように、第2ブラケット74を、第2ブラケット保持部54に保持させる。このとき、ステージ33は後退しているため、第1支持部材52と第2支持部材55との間の上方部分が開放されている。したがって、第1支持部材52と第2支持部材55との間にロータ80が挿入可能となっている。
【0048】
次に、作業者は、ステップS18においてロータ取付工程を実行する。ロータ取付工程において、作業者は、図9に示すように、ロータ80を、第1支持部材52と第2支持部材55との間の上方部分を通して第1支持部材52と第2支持部材55との間に配置する。この場合、作業者は、ロータ80の第1端部831を第1受部521に挿入すると共に、第2端部832を第2支持部材55に挿入する。これにより、ロータ80は、ロータ保持機構50に保持される。この場合、ロータ80の回転軸83の中心軸線J1は、第1支持部材52の中心軸線J2及び第2支持部材55の中心軸線J3と一致していると共に、第1ブラケット73、ステータ90、及び第2ブラケット74の中心を通っている。なお、第1軸受71及び第2軸受72は、ロータ取付工程の実行前に、ロータ80の第1端部831及び第2端部832に組み付けられている。
【0049】
次に、作業者は、ステップS19においてロータ挿入工程を実行する。この場合、作業者は、例えば操作装置13のスイッチ132を操作することによって、ロータ挿入工程を実行する。製造装置10は、ロータ挿入工程が実行されると、第1支持部材52の中心軸線J2方向に沿って第1支持部材52とステージ33とを相対的に移動させることにより、第1ブラケット73とは反対側からステータ90内にロータ80を挿入する。すなわち、本実施形態の場合、製造装置10は、図10に示すように、駆動部34を駆動させてステージ33を第2ブラケット保持部54側へ前進させる。これにより、第1軸受71が第1ブラケット73の第1軸受取付穴731に圧入されると共に、ロータ80がステータ90内に収納される。
【0050】
次に、作業者は、ステップS20において、第2ブラケット組付工程を実行する。この場合、作業者は、図11に示すように、第2ブラケット74を第2ブラケット保持部54から取外し、その後、第2ブラケット74をステータ90に組み付ける。これにより、回転電機70の組立てが完了する(図5のエンド)。その後、作業者は、図12に示すように、天井壁部46を開放して、組立てが完了した回転電機70を製造装置10から取り外す。
【0051】
以上のように、実施形態の製造装置10は、装置本体20、第1支持部材52、第2支持部材55、第2ブラケット保持部54、ステージ33、第1ブラケット支持部41、仮ブラケット11、仮ブラケット支持部42、及びステータ支持部43を備えている。装置本体20は、ベース面22を有している。
【0052】
第1支持部材52は、ベース面22から離間した状態で装置本体20に設けられており、ロータ80の回転軸83の一方の端部この場合第1端部831を着脱可能に支持すると共に、第1ブラケット73の第1軸受取付穴731に挿通可能に構成されている。また、第1支持部材52は、ロータ80をベース面22から離間した状態かつ回転軸83の中心軸線J1と当該第1支持部材52の中心軸線J2とが同一線上となった状態で、ロータ80を支持可能に構成されている。
【0053】
第2支持部材55は、第1支持部材52に対して第1支持部材52の中心軸線J2方向に離間して設けられている。第2支持部材55は、ロータ80の回転軸83の他方の端部この場合第2端部832を着脱可能に支持すると共に、第2ブラケット74の第2軸受取付穴741に挿通可能に構成されている。第2支持部材55は、ロータ80をベース面22から離間した状態かつ回転軸83の中心軸線J1及び第1支持部材52の中心軸線J2と当該第2支持部材55の中心軸線J3とが同一線上となった状態で支持可能に構成されている。
【0054】
第2ブラケット保持部54は、装置本体20のベース面22上に設けられており、第2軸受取付穴741に第2支持部材55を挿通可能な状態で第2ブラケット74を着脱可能に保持する。ステージ33は、ベース面22上に設けられており、第1支持部材52の中心軸線J2方向に沿って相対的に移動可能であり、かつ第1ブラケット73を取り付けた状態のステータ90を載置可能に構成されている。この場合、第1支持部材52は移動不可に構成され、ステージ33が移動可能に構成されている。第1ブラケット支持部41は、ステージ33に設けられており、第1ブラケット73を支持可能に構成されている。
【0055】
仮ブラケット11は、回転電機70の組立て過程において、第2ブラケット74の代わりにステータ90に着脱可能に装着される。仮ブラケット支持部42は、ステージ33又は装置本体20に着脱可能に設けられている。本実施形態の場合、仮ブラケット支持部42は、ステージ33に設けられている。また、仮ブラケット支持部42は、仮ブラケット11がステータ90に装着された状態でステータ90がステージ33に載置された場合に、仮ブラケット11を支持可能に構成されている。
【0056】
そして、ステータ支持部43は、ステージ33に設けられている。この場合、ステータ支持部43は、ステージ33と一体的に移動可能に構成されている。ステータ支持部43は、ステージ33に載置されたステータ90の外周面を少なくとも三方向からステータ90の中心方向へ向かって押圧可能である。本実施形態の場合、ステータ支持部43は、ステータ90の外周面を四方向からステータ90の中心方向へ向かって押圧可能に構成されている。ステータ支持部43は、駆動圧力の切替によって、押圧状態と非押圧状態とを切替可能である。ステータ支持部43は、押圧状態のときにはステータ90を支持し、非押圧状態のときにはステータ90を支持していない。
【0057】
また、実施形態の製造方法は、第1ブラケット取付工程(ステップS11)、仮ブラケット装着工程(ステップS12)、載置工程(ステップS14)、ステータ支持部動作構成(ステップS15)、仮ブラケット支持部取外工程(ステップS16)、ロータ挿入工程(ステップS19)、及び第2ブラケット組付工程(ステップS20)を備えている。
【0058】
第1ブラケット組付工程は、ステータ90に第1ブラケット73を組み付ける工程である。仮ブラケット装着工程は、第2ブラケット74の代わりに仮ブラケット11をステータ90に装着する工程である。載置工程は、第1ブラケット組付工程及び仮ブラケット装着工程の後に実行され、第1ブラケット73が組み付けられているとともに仮ブラケット11が装着されたステータ90をステージ33に載置する工程である。
【0059】
ステータ支持部動作工程は、載置工程の後に実行されステータ支持部43を動作させて押圧状態にする工程である。仮ブラケット支持部取外工程は、ステータ支持部動作工程の後に実行され、仮ブラケット支持部43をステージ33又は装置本体20から取り外す工程である。ロータ挿入工程は、ステータ支持部動作工程の後に実行され第1支持部材52の中心軸線J2方向に沿って第1支持部材52とステージ33とを相対的に移動させて、第1ブラケット73とは反対側からステータ90内にロータ80を挿入する工程である。そして、第2ブラケット組付工程は、ロータ挿入工程及び仮ブラケット支持部取外工程の後に実行されロータ80が挿入されたステータ90に第2ブラケット74を組み付ける工程である。
【0060】
これらによれば、ステータ90がステージ33上に載置される際、ステータ90は、第1ブラケット73及び仮ブラケット11を介して、第1ブラケット支持部41及び仮ブラケット支持部42に支持される。そして、ステータ支持部43が動作すると、ステータ支持部43のプランジャー431が突出し、ステータ90の外周面に接触してステータ90を支持する。その際、各プランジャー431の突出量が適宜変化することによって、ステータ90の外周面の寸法精度が低くても、ステータ90の中心位置を第1支持部材52及び第2支持部材55の中心位置と一致した状態に保持することができる。
【0061】
すなわち、これによれば、ステータ保持機構40がステータ90を保持し、ロータ保持機構50がロータ80を保持した状態において、ロータ80の回転軸83の中心軸線J1と、ステータ90の中心とを高い精度で一致させることができる。これにより、ロータ80をスータ90に挿入する際に、ロータ80の外周面とステータ90の内周面と距離を安定させることができる。
【0062】
つまり、これによれば、ロータ80の外周面とステータ90の内周面との距離に不均衡が生じることを抑制できる。したがって、ロータ80とステータ90との間に生じる永久磁石82による吸着力の偏りを抑制することができる。これにより、ロータ80の挿入工程において、ロータ80とステータ90とが接触することを、高い精度で防ぐことができる。その結果、ステータ90に対するロータ80の挿入工程が容易になるとともに、ロータ80がステータ90に吸着された場合のロータ80の剥離作業を低減することができ、ひいては製造工程や製造コストを低減することができる。また、ステータ90とロータ80とが衝突して永久磁石82が破損することを抑制することができるため、永久磁石82の破損等による回転電機70の品質低下を抑制することができる。
【0063】
また、この場合、ステータ90の外周面の寸法精度が低くても、ステータ90の中心位置を第1支持部材52及び第2支持部材55の中心位置と一致した状態に保持することができる。つまり、ステータ90の中心位置を第1支持部材52及び第2支持部材55の中心位置と一致した状態に保持するために、ステータ90の外表面つまりステータケース92の外表面に対して切削加工等を行う必要がない。したがって、この点においても、製造工程を削減することができる。
【0064】
ここで、図2等に示すように、ロータ80を、第1支持部材52と第2支持部材55との間に配置するためには、ステータ90を後方へ退避させて、第1支持部材52と第2支持部材55との間にロータ80を配置するための空間を確保する必要がある。そして、この場合、第1支持部材52は、ステータ90を後方へ退避させた状態において、ステータ90を貫いて第1受部521をステータ90の外側へ露出させる必要がある。したがって、第1支持部材52の長さ寸法は、少なくともステータ90の長さ寸法以上にする必要がある。しかし、第1支持部材52は、片持ち梁状態でロータ80を支持しなければならないため、その長さ寸法の増大に伴って撓み易くなる。
【0065】
そこで、第1ブラケット73の第1軸受取付穴731の内径は、第2ブラケット74の第2軸受取付穴741の内径よりも大きく設定されている。この場合、第1ブラケット73は、負荷側となり、第2ブラケット74は負荷側とは反対側となる。そして、第1支持部材52は、第1ブラケット73の第1軸受取付穴731を通すように構成されている。
【0066】
これによれば、第1ブラケット73と第2ブラケット74の配置が逆である場合に比べて、第1支持部材52の外径を極力大きくすることができる。そして、第1支持部材52を極力太くすることで、第1支持部材52の剛性を高くすることができる。これにより、ロータ80を取り付けた場合の第1支持部材52の撓みを抑制することができ、その結果、ロータ80をスータ90に挿入する際に、ロータ80の外周面とステータ90の内周面と距離を更に安定させることができる。
【0067】
つまり、第1支持部材52の剛性を高めることで、ロータ80の外周面とステータ90の内周面との距離に不均衡が生じることを更に抑制できる。したがって、ロータ80とステータ90との間に生じる永久磁石82による吸着力の偏りをより高い精度で抑制することができる。これにより、ロータ80の挿入工程において、ロータ80とステータ90との接触をより高い精度で防ぐことができる。また、第1支持部材52の剛性を高くすることができるため、製造装置10は、長さ寸法の大きい回転電機70にも対応することができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
図面中、10は製造装置、11は仮ブラケット、20は装置本体、221はベース面、33はステージ、41は第1ブラケット支持部、42は仮ブラケット支持部、43はステータ支持部、52は第1支持部材、54は第2ブラケット保持部、55は第2支持部材、70は回転電機、71は第1軸受、72は第2軸受、73は第1ブラケット、731は第1軸受取付穴、74は第2ブラケット、741は第2軸受取付穴、80はロータ、90はステータを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12