特許第6688139号(P6688139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688139
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】自動可動式車止め装置
(51)【国際特許分類】
   B61K 7/12 20060101AFI20200421BHJP
   B61H 7/10 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B61K7/12
   B61H7/10
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-76422(P2016-76422)
(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-185904(P2017-185904A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 善之
(72)【発明者】
【氏名】祖田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】長澤 直
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02923255(US,A)
【文献】 特開平08−216882(JP,A)
【文献】 特開昭48−078605(JP,A)
【文献】 実開昭61−129666(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第102010024908(DE,A1)
【文献】 特開2010−163124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 7/12
B61H 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両が所定位置を超えて走行することを防止するものであって、
レール上に配置される車止めレバーと、
前記車止めレバーを、前記レール上に配置される設置位置と、前記レール上に配置されない除去位置との間で回動させる回動手段と、
前記回動手段に駆動力を付与する駆動手段と、
前記車止めレバーを前記設置位置に配置することを指示する第1指示手段と、
前記車止めレバーを前記除去位置に配置することを指示する第2指示手段と、
前記第1指示手段が指示する場合には、前記回動手段が前記車止めレバーをレール側へ向かって正方向に回動させるように前記駆動手段を制御する一方、第2指示手段が指示する場合には、前記回動手段が前記車止めレバーをレールと反対側へ向かって逆方向に回動させるように前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを有すること、
前記車止めレバーは、前記レールを挟んで一方から他方へ掛け渡されて前記設置位置に配置され、前記レールとの間に隙間を設けるための凹部を備える
こと、
前記車止めレバーは、前記凹部の内側面に対向する側面に車止め部が突設されていること、
を特徴とする自動可動式車止め装置。
【請求項2】
請求項1に記載する自動可動式車止め装置において、
前記レールの片側に垂直に掘り下げられ、前記車止めレバーと前記回動手段と前記駆動手段を収納するピットと、
前記ピットを塞ぐものであって、前記車止めレバーの回動を許容する窓を有する蓋と、
前記窓を開閉する開閉手段と、
前記第1指示手段が指示する場合には、前記開閉手段に前記窓を開放させ、前記第2指示手段が指示する場合には、前記開閉手段に前記窓を閉鎖させる開閉制御手段とを有すること
を特徴とする自動可動式車止め装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載する自動可動式車止め装置において、
鉄道車両の走行を指示する走行信号と前記鉄道車両の停止を指示する停止信号を表示する信号機に接続されていること、
前記車止めレバーの位置を検出する位置検出手段と、
前記車止めレバーが前記設置位置に配置されていることを前記位置検出手段が検出する場合と、前記車止めレバーが前記除去位置に配置されていることを前記位置検出手段が検出する場合とで、前記信号機の表示を切り換える信号機切換手段とを有すること
を特徴とする自動可動式車止め装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項の何れか一つに記載する自動可動式車止め装置において、
前記車止めレバーを手動で回動させる手動回動手段を有する
ことを特徴とする自動可動式車止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両が所定位置を超えて走行することを防止する車止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、点検・整備工場の敷地には、鉄道車両を点検・整備工場内へ入庫するための軌道や、鉄道車両の点検・整備等を行うための軌道、鉄道車両を点検・整備工場から出庫させるための軌道が敷設されている。これらの軌道は、軌道配線の関係上、一連に繋がっていることが多い。そのため、鉄道車両は、軌道の途中で一時的に停止して先の鉄道車両が移動するのを待つことがある。その場合に、鉄道車両が所定位置から動かないようにするために、軌道(レール)に着脱される車止めが用いられる。
【0003】
図6は、従来の車止め1501の使用状態を示す図である。車止め1501は、例えば、待機位置に鉄道車両を停止させる場合、一対のレール2A,2Bが配置された間隙部1510、1510に固定ブロック1502,1502をはめ込むようにして固定し、その固定ブロック1502,1502にポール1503を掛け渡すようにして固定することにより、設置される。そして、その鉄道車両が例えば待機位置から検査位置へ移動する場合には、車止め1501は、ポール1503が固定ブロック1502,1502から取り外され、固定ブロック1502,1502が間隙部1510から取り外されることにより、除去される。
【0004】
尚、例えば特許文献1に記載するように、トラバーサの鉄道車両が待機する待機用スペースから車止めを上下方向に揺動させることにより、鉄道車両の車輪を固定するものが提案されている。しかし、レールに設置・除去される車止めは、上記のように、手作業で設置・除去されるものが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−163124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の車止め1501は、鉄道車両の車輪が当たっても動きにくくするために、固定ブロック1502,1502の重量を重くしており、そのため、車止め1501の設置と除去には、手間がかかっていた。また、例えば、レールの同じ位置に鉄道車両が次々に停車する場合には、鉄道車両が停止する都度、重量物の車止め1501を手作業で設置及び除去しなければならず、非効率であった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車止めの設置と除去を自動で行うことができる自動可動式車止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。
(1)鉄道車両が所定位置を超えて走行することを防止するものであって、レール上に配置される車止めレバーと、前記車止めレバーを、前記レール上に配置される設置位置と、前記レール上に配置されない除去位置との間で回動させる回動手段と、前記回動手段に駆動力を付与する駆動手段と、前記車止めレバーを前記設置位置に配置することを指示する第1指示手段と、前記車止めレバーを前記除去位置に配置することを指示する第2指示手段と、前記第1指示手段が指示する場合には、前記回動手段が前記車止めレバーをレール側へ向かって正方向に回動させるように前記駆動手段を制御する一方、第2指示手段が指示する場合には、前記回動手段が前記車止めレバーをレールと反対側へ向かって逆方向に回動させるように前記駆動手段を制御する駆動制御手段を制御する駆動制御手段とを有することを特徴とする自動可動式車止め装置である。
【0009】
ここで、例えば、第1及び第2指示手段は、押下式のボタンのように手動で指示を行うものでも、鉄道車両を検出した場合等、所定の条件を満たす場合に自動的に指示を行うものでも良い。また、第1及び第2指示手段は、別個に設けても良いし、一体で設けても良い。更に例えば、第1及び第2指示手段は、車止め装置に設けてもよいし、車止め装置から離れた位置に設けても良い。
【0010】
上記構成では、第1指示手段が車止めレバーを設置位置に配置することを指示すると、駆動制御手段が、回動手段が車止めレバーをレール側へ向かって正方向に回動させるように駆動手段を駆動させ、車止めレバーをレール上に配置する。一方、第2指示手段が車止めレバーを除去位置に配置することを指示すると、駆動制御手段が、回動手段が車止めレバーを反レール側へ向かって逆方向に回動させるように駆動手段を駆動させ、車止めレバーをレールから除去する。よって、上記構成によれば、車止めの設置と除去を自動で行うことができる。これにより、車止めを設置したり除去する手間を省くことが可能になる。また、第1及び第2指示手段の指示で同じ場所に車止めレバーを設置したり除去したりするので、作業効率が良い。
【0011】
(2)(1)に記載の構成において、前記車止めレバーは、前記レールを挟んで一方から他方へ掛け渡されて前記設置位置に配置され、前記レールとの間に隙間を設けるための凹部を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成では、レールを挟んで一方から他方へ掛け渡される車止めレバーは、鉄道車両を停止させるために重量物となるが、設置位置に配置される場合にレールとの間に隙間を設けるための凹部を備えるので、レールに干渉することなく、設置と除去は行われる。よって、上記構成によれば、車止めレバーを自動で設置又は除去しても、レールを損傷させない。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載の構成において、前記レールの片側に垂直に掘り下げられ、前記車止めレバーと前記回動手段と前記駆動手段を収納するピットと、前記ピットを塞ぐものであって、前記車止めレバーの回動を許容する窓を有する蓋と、前記窓を開閉する開閉手段と、前記第1指示手段が指示する場合には、前記開閉手段に前記窓を開放させ、前記第2指示手段が指示する場合には、前記開閉手段に前記窓を閉鎖させる開閉制御手段とを有することが好ましい。
【0014】
上記構成では、レールの片側に垂直に掘り下げられたピットに、車止めレバーと回動手段と駆動手段を収納し、ピットを蓋で塞いでいるので、作業員が蓋の上で作業できる。蓋は、車止めレバーの回動を許容する窓が開閉手段により開閉されるので、作業員が窓からピット内へ落下しにくい。更に、開閉制御手段が第1及び第2指示手段の指示に応じて開閉手段に窓を自動的に開閉させるので、作業員が窓を開閉する手間がかからない。よって、上記構成によれば、車止めレバーや回動手段、駆動手段が作業の邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)の何れか一つに記載の構成において、鉄道車両の走行を指示する走行信号と前記鉄道車両の停止を指示する停止信号を表示する信号機に接続されていること、前記車止めレバーの位置を検出する位置検出手段と、前記車止めレバーが前記設置位置に配置されていることを前記位置検出手段が検出する場合と、前記車止めレバーが前記除去位置に配置されていることを前記位置検出手段が検出する場合とで、前記信号機の表示を切り換える信号機切換手段とを有することが好ましい。
【0016】
上記構成では、自動可動式車止め装置と信号機が連動するので、例えば、車止めレバーを設置位置に確実に配置してから鉄道車両を自動可動式車止め装置まで進入させることができる。よって、上記構成によれば、鉄道車両を安全に走行させることができる。
【0017】
(5)(1)乃至(4)の何れか一つに記載の構成において、前記車止めレバーを手動で回動させる手動回動手段を有することが好ましい。
【0018】
上記構成では、例えば停電や駆動手段、駆動制御手段等の故障が発生しても、車止めレバーを手動で設置位置又は除去位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
従って、上記構成によれば、車止めの設置と除去を自動で行うことができる自動可動式車止め装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る自動可動式車止め装置の概略構成図であって、車止めレバー収納状態を示す。
図2図1に示す自動可動式車止め装置の概略構成図であって、車止めレバー設置状態を示す。
図3図1に示す自動可動式車止め装置の上面図である。
図4図1に示す自動可動式車止め装置の上面図であって、蓋を外した状態を示す。
図5図1に示す自動可動式車止め装置の使用方法を説明する図である。
図6】従来の車止めの使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る自動可動式車止め装置の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自動可動式車止め装置10(以下、単に「車止め装置10」ともいう。)の概略構成図であって、車止めレバー収納状態を示す。図2は、図1に示す車止め装置10の概略構成図であって、車止めレバー設置状態を示す。図3は、図1に示す車止め装置10の上面図である。図4は、図1に示す車止め装置10の上面図であって、蓋115を外した状態を示す。図5は、図1に示す車止め装置10の使用方法を説明する図である。
【0022】
例えば図5に示すように、車止め装置10は、鉄道車両を点検・整備する点検・整備工場で使用される。車止め装置10は、入庫線9A,9Bを構成するレール2A,2Bの終端部に配置され、トラバーサ6によって整備線9Cに振り分けられるのを待つ鉄道車両1(1A,1B)をトラバーサ6の溝4の手前で停止させる。入庫線9A,9Bには、鉄道車両1に走行を指示する走行信号と停止を指示する停止信号を表示する信号機3A,3Bが配置されている。
【0023】
尚、車止め装置10の設置位置は、本実施形態に限定されないことはいうまでもない。例えば、車止め装置10は、信号機3A,3Bの手前に配設したり、点検・整備工場内に敷設されるレール2に配設したりしても良い。また例えば、車止め装置10は、駅や車両基地などに配設しても良い。
【0024】
次に、車止め装置10の概略構成を説明する。尚、図5では、鉄道車両1やレール2、信号機3等を区別できるように添え字A〜Dを付記したが、以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、添え字A〜Dを適宜省略する。
【0025】
図4に示すように、車止め装置10は、鉄道車両1を所定の位置で停止させるための車止めレバー114を、図4に想像線で示すようにレール2上に配置する設置位置(図2参照)と、図4に実線で示すようにレール2上に配置しない除去位置(図1参照)との間で自動的に回動させるように、構成されている。
【0026】
図5に示すように、車止め装置10は、一対のレール2A,2Bの外側に配置される第1ユニット11,11と、レール2A,2Bの内側に配置される第2ユニット12,12と、制御手段13を備える。一方の第1及び第2ユニット11,12は、他方の第1及び第2ユニット11,12と同じ構成なので、以下の説明では、一方の第1及び第2ユニット11,12について説明し、他方の第1及び第2ユニット11,12の説明は省略する。
【0027】
図1及び図4に示すように、第1及び第2ユニット11,12は、レール2の両側の地面Gを垂直に掘り下げることにより形成されたピット111,121を備える。図1に示すように、レール2は、ピット111,121の間に設けられた間隙部22に、基台21を介して設置されている。
【0028】
図1図2及び図4に示すように、ピット111には、車止めレバー114と、車止めレバー114を回動させる回動手段112と、回動手段112に回転力を付与する駆動手段113が、地面Gより上方に突出しないように収納されている。
【0029】
図2に示すように、車止めレバー114は、略L字形に折れ曲がった形状をなし、設置位置に配置された場合にレール2との間に隙間を形成するための凹部114aを備える。また、車止めレバー114は、凹部114aの内側面と対向する側面に車止め部114bが突設され、車止めレバー114を設置位置に設置した場合に、車止め部114bをレール2の上方に高く立つように配置して、鉄道車両1の車輪が車止めレバー114を乗り越えにくくしている。
【0030】
図1及び図2に示すように、回動手段112は、車止めレバー114の一端が固定され、その固定位置を中心にして車止めレバー114を回動させるように構成されている。図4に示すように、回動手段112は、本体112aに一対の支持板112b,112bが立設されている。回転軸112cは、その一対の支持板112b,112bに回転可能に保持されている。この回転軸112cに車止めレバー114が固定されている。連結軸112eは、回転軸112cの駆動手段113側に位置する端面から突出するように回転軸112cに連結されている。回転軸112cと連結軸112eは、一体的に回転するように結合されている。
【0031】
図4に示すように、駆動手段113は、モータ113aの回転力を連結軸112eに伝達するように構成されている。モータ113aは、ギヤボックス113b内の減速ギヤ列を介して出力軸113cに連結され、モータ113aの回転力を減速させて出力軸113cに伝達する。駆動側スプロケット113eは、ボルト113dにより出力軸113cに固定されている。従動側スプロケット113fは、ボルト113gにより回動手段112の連結軸112eに固定されている。図1及び図2に示すように、駆動側スプロケット113eと従動側スプロケット113fには、チェーン113hが噛合し、出力軸113cに付与された回転力を連結軸112eに伝達する。
【0032】
図1に示すように、回動手段112と駆動手段113は、車止めレバー114をピット111の内壁等に干渉させずにピット111に収納できるように、基台120により設置高さを調整されている。
【0033】
図5に示す制御手段13(駆動制御手段の一例)は、モータ113a(図4参照)に接続され、駆動手段113(図4参照)の動作を制御する。制御手段13は、周知のマイクロコンピュータであって、情報処理演算装置(CPU)やROM、RAM、メモリなどを備える。制御手段13は、車止めレバー114を設置位置に配置することを指示する第1スイッチ13a(第1指示手段の一例)と、車止めレバー114を除去位置に配置することを指示する第2スイッチ13b(第2指示手段の一例)を備える。第1及び第2スイッチ13a,13bは押下ボタンで構成されている。
【0034】
ここで、第1及び第2指示手段の種類、数、設置位置は、本実施形態に限定されないことはいうまでもない。例えば、第1及び第2指示手段を1つのスイッチで構成しても良い。また例えば、第1及び第2指示手段は、所定の条件を満たした場合に自動的に指示を行うものであっても良い。具体的には、例えば、車止め装置10から離れた位置のレール2に配置され、鉄道車両1を検出した場合に、車止めレバー114を設置又は除去することを自動的に指示するセンサを、第1及び第2指示手段として使用しても良い。また例えば、第1及び第2スイッチ13a,13bは、例えば、トラバーサや点検・整備工場内など制御手段13と別の位置に設けても良い。
【0035】
制御手段13は、第1スイッチ13aから車止めレバー114を設置位置に配置する指示を受けた場合には、回動手段112が車止めレバー114をレール側へ向かって正方向に回動させるように駆動手段113を動作させる一方、第2スイッチ13bから車止めレバー114を除去位置に配置する指示を受けた場合には、回動手段112が車止めレバー114をレールと反対側へ向かって逆方向に回動させるように駆動手段113を動作させるプログラムを記憶している。
【0036】
ところで、車止め装置10は、停電が発生したり、モータ113aや制御手段13が故障すると、車止めレバー114を回動させられなくなる。そこで、車止め装置10は、出力軸113cに着脱されるハンドル(図示せず)を備え、そのハンドルを出力軸113cに連結して出力軸113cを手動で回転させた場合に、車止めレバー114を手動で回動させられるようにしている。尚、本実施形態では、この図示しないハンドルが「手動回動手段」の一例に相当するが、回転軸112c又は連結軸112e、車止めレバー114に連結して、車止めレバー114を回動させるハンドル等を「手動回動手段」として構成しても良い。
【0037】
図1及び図2に示すように、ピット111には、車止めレバー114が除去位置に配置されたことを検出する第1位置検出スイッチ118と、車止めレバー114が設置位置に配置されたことを検出する第2位置検出スイッチ119が配設されている。本実施形態では、第1及び第2位置検出スイッチ118,119は、車止めレバー114に接触した場合にオン信号を出力し、車止めレバー114に接触しない場合にオン信号を出力しないリミットスイッチにより構成され、「位置検出手段」を構成する。
【0038】
尚、「位置検出手段」の種類、数、設置位置は、本実施形態の態様に限定されないことはいうまでもない。例えば、第1及び第2位置検出スイッチ118,119を非接触式の近接スイッチとしても良い。また例えば、回転軸112c或いは連結軸112eの回転量から車止めレバー114の位置を検出する回転センサ等により、「位置検出手段」を構成しても良い。更に、1個のセンサ又は3個以上のセンサにより「位置検出手段」を構成しても良い。
【0039】
一方、図4に示すように、ピット121には、車止めレバー114が図中実線で示す除去位置から図中想像線で示す設置位置へ回動する場合に、車止めレバー114が衝突する荷重受けプレート117を備える。荷重受けプレート117は、一対の側面部117a,117aがレール2の敷設方向に沿って設けられている。一対の側面部117a,117aは、設置位置に配置される車止めレバー114の両側面114c,114dに当接する間隔を空けて荷重受けプレート117に立設され、鉄道車両1が車止めレバー114に接触した際の荷重を受けるようになっている。
【0040】
図3に示すように、第1及び第2ユニット11,12は、ピット111,121の開口部が蓋115、122に覆われ、作業員がピット111,121上で作業できるようにしている。蓋115には、車止めレバー114の回動を許容するための窓115aが設けられている。その窓115aは、開閉手段116により開閉されるようになっている。一方、蓋122には、荷重受けプレート117を露出させるように窓122aが設けられている。
【0041】
開閉手段116は、窓115aを塞ぐ第1〜第3開閉扉1161A,1161B,1161Cを、エアシリンダ1164A〜1164Cの推力で自動開閉するようにしたものである。第1〜第3開閉扉1161A〜1161Cは、ヒンジ1162A〜1162Cを介して蓋115に揺動可能に連結されている。エアシリンダ1164A〜1164Cは、出力ロッド1165A〜1165Cを垂直方向(図3の手前方向と奥方向、図1の上下方向)に往復直線運動させるように、ピット111に設置されている。第1〜第3開閉扉1161A〜1161Cは、出力ロッド1165A〜1165Cの先端部を結合され、エアシリンダ1164A〜1164Cの出力に応じて開閉する。第1〜第3開閉扉1161A〜1161Cは、手動で開閉するための取手1163A〜1163Cを備える。
【0042】
図5に示す制御手段13は、第1スイッチ13aから指示される場合には、開閉手段116に窓115aを開放させる一方、第2スイッチ13bから指示される場合には、開閉手段116に窓115aを閉鎖させるプログラムを記憶している。かかる制御手段13は、「開閉制御手段」の一例に相当する。
【0043】
ところで、図5に示す制御手段13は、信号機3(3A,3B)と連動するように、信号機3に接続されている。制御手段13は、第1及び第2位置検出スイッチ118,119に接続され、車止めレバー114の位置を監視している。制御手段13は、車止めレバー114が除去位置に配置されていることを第1位置検出スイッチ118が検出する場合と、車止めレバー114が設置位置に配置されていることを第2位置検出スイッチ119が検出する場合とで、信号機3の表示を切り換えるプログラムを記憶している。かかる制御手段13は、「信号機切換手段」の一例に相当する。
【0044】
続いて、車止め装置10を図5に示すように点検・整備工場で使用する場合を例に挙げて、車止め装置10の動作を説明する。
図5に示すように、点検・整備工場の敷地には、点検・整備を受ける鉄道車両1A〜1Dを本線から入庫させる入庫線9A,9Bが、敷設されている。入庫線9A,9Bで待機する鉄道車両1A〜1Dは、トラバーサ6に一台ずつ載せられ、点検・整備スペースに続く整備線9Cに割り振られる。トラバーサ6は、本体7に設けられた車両搭載レール8,8の高さを入庫線9A,9Bや整備線9Cのレール2A,2Bの高さに合わせるために、地面Gに掘り下げられた溝4に配置されている。溝4には、走行レール5,5がレール2A,2Bに対して直交する方向に敷設され、鉄道車両1を平行移動させる。車止め装置10は、溝4の手前で途切れる入庫線9A,9Bの終端部にそれぞれ配置され、鉄道車両1が溝4に落下するのを防止する。
【0045】
次に、車止め装置10の具体的な動作を説明する。車止め装置10は、例えば入庫線9A,9Bに鉄道車両1が待機していない場合には、作業員や工場敷地内を走行する作業用自動車等の邪魔にならないように、車止めレバー114をピット111に収納し、開閉手段116により窓115aを閉鎖している(図1図3参照)。
【0046】
具体的には、車止め装置10は、図1に示すように、車止めレバー114を除去位置に配置してピット111に収納している。開閉手段116は、エアシリンダ1164A〜1164Cの出力ロッド1165A〜1165Cを下限位置まで後退させ、第1〜第3開閉扉1161A〜1161Cにより窓115aを閉鎖している。この場合、車止めレバー114は、第1位置検出スイッチ118に接触するが、第2位置検出スイッチ119に接触しない。そのため、制御手段13は、第1位置検出スイッチ118からオン信号を入力し、第2位置検出スイッチ119からオン信号を入力しないことから、車止めレバー114が除去位置に配置されていることを認識できる。
【0047】
この状態において、例えば、鉄道車両1Aを入庫線9Aの終端部まで進入させる場合には、作業員は、入庫線9Aに設置された車止め装置10の第1スイッチ13aを押下する。すると、車止め装置10が、第1ユニット11,11に収納される車止めレバー114,114をレール2A,2B上に自動的に設置する。
【0048】
各車止めレバー114の設置動作は同様なので、ここでは、一方の車止めレバー114に着目して設置動作を具体的に説明する。図5に示す制御手段13は、第1スイッチ13aが押下され、車止めレバー114を設置位置に配置することを指示されると、図2に示すように、エアシリンダ1164A〜1164Cの出力ロッド1165A〜1165Cを上限位置まで上昇させ、第1〜第3開閉扉1161A〜1161Cを押し上げる。これにより、窓115aが開放される。
【0049】
それから、図5に示す制御手段13は、図4に示すモータ113aを正方向に回転させる。すると、モータ113aの回転力がギヤボックス113b内の減速ギヤ列を介して出力軸113cに伝達され、出力軸113cが回転する。駆動側スプロケット113eが出力軸113cと一体的に回転すると、チェーン113hを介して従動側スプロケット113fが正方向に回転し、連結軸112eを介して回転軸112cを正方向に回転させる。これにより、車止めレバー114は、図4の実線で示す除去位置から第2ユニット12側(レール側)へ向かって正方向に回動し、図4の想像線に示すように、先端部を第2ユニット12の荷重受けプレート117に衝突させて停止する。
【0050】
図2に示すように、車止めレバー114は、荷重受けプレート117に当接するときに、第2位置検出スイッチ119に接触する。すると、第2位置検出スイッチ119は、オン信号を制御手段13に送信する。一方、第1位置検出スイッチ118は、車止めレバー114が除去位置から移動すると、車止めレバー114に接触しなくなり、オン信号を制御手段13に送信しなくなる。図5に示す制御手段13は、第2位置検出スイッチ119からオン信号を入力すると、モータ113aを停止させ、モータ113aの焼き付き等を防止する。これにより、車止めレバー114の設置動作が終了する。
【0051】
ここで、図5に示す入庫線9Aの信号機3Aは、通常、停止信号を表示している。制御手段13は、第2位置検出スイッチ119からオン信号を入力し、モータ113aの動作を停止させると、信号機3Aの表示を停止信号から走行信号に切り換える。これにより、鉄道車両1Aは、入庫線9Aの終端部への進行を許可される。入庫線9Aの終端部では、車止め装置10が車止めレバー114をレール2A,2Bに配置しているので、鉄道車両1Aは、溝4の手前で確実に停止し、溝4に落下しない。
【0052】
信号機3Aは、走行信号を所定時間表示すると、走行信号から停止信号に自動的に切り換えられる。そのため、後続する鉄道車両1Cは、鉄道車両1Aが停車している入庫線9Aの終端部に誤って進入しない。
尚、上記と同様にして、鉄道車両1B、1Dも入庫線9Bに入庫する。
【0053】
その後、例えば、トラバーサ6が車両搭載レール8,8を入庫線9Aのレール2A,2Bに位置を合わせて停止すると、作業員は、入庫線9Aに設置された車止め装置10の第2スイッチ13bを押下する。すると、車止め装置10は、図1に示すように、第1ユニット11,11の車止めレバー114,114を入庫線9Aのレール2A,2Bから除去する。
【0054】
各車止めレバー114,114の除去動作は同様であるので、一方の車止めレバー114に着目して除去動作を具体的に説明する。図5に示す制御手段13は、第2スイッチ13bが押下され、車止めレバー114をレール2上に配置しないことを指示されると、第2位置検出スイッチ119からオン信号を入力していることを確認してから(車止めレバー114が設置位置に配置されていることを確認してから)、図4に示すモータ113aを逆方向に回転させる。すると、出力軸113cが逆方向に回転し、駆動側スプロケット113eと従動側スプロケット113fとチェーン113hと連結軸112eを介して、回転軸112cが逆方向に回転する。これにより、車止めレバー114は、図4に想像線で記載する設置位置から図4に実線で記載する除去位置へ向かって(レールと反対側に向かって)逆方向に回動する。
【0055】
車止めレバー114は、図1に示すように、除去位置まで移動すると、第1位置検出スイッチ118に接触する。すると、第1位置検出スイッチ118が制御手段13にオン信号を出力する。一方、第2位置検出スイッチ119は、車止めレバー114に接触しなくなると、オン信号を制御手段13に出力しなくなる。図5に示す制御手段13は、第1位置検出スイッチ118からオン信号を入力すると、車止めレバー114が除去位置に配置されたと判断し、図4に示すモータ113aを停止させる。
【0056】
それから、図5に示す制御手段13は、図1に示すように、エアシリンダ1164A〜1164Cの出力ロッド1165A〜1165Cを下限位置まで後退させる。これにより、第1〜第3開閉扉1161A〜1161Cが、出力ロッド1165A〜1165Cに引っ張られて回動し、窓115aを閉鎖する。これにより、車止めレバー114の除去動作が終了する。
【0057】
作業員は、車止めレバー114が除去されたことを確認すると、鉄道車両1Aの運転士にトラバーサ6へ鉄道車両1Aを移動させることを指示する。作業員は、鉄道車両1Aがトラバーサ6に載せられたことを確認すると、入庫線9Aに設置された車止め装置10の第1スイッチ13aを押下し、車止めレバー114を設置位置に自動的に配置する。すると、信号機3Aの表示が停止信号から走行信号に切り換えられ、後続の鉄道車両1Cが信号機3Aから入庫線9Aの終端部へ進入する。車止めレバー114の設置動作及び信号機3Aに切換動作は上述したので、説明を省略する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の車止め装置10は、第1及び第2スイッチ13a,13bを押すだけで、車止めレバー114を自動でレール2に設置又は除去することができる。そのため、作業員は、重量物である車止めを手作業でレール2に設置又は除去する必要がなく、作業性が良い。また、第1及び第2スイッチ13a,13bの操作に応じて車止めレバー114を繰り返し同じ場所に設置したり、除去したりすることができるので、作業効率が良い。
【0059】
また、本実施形態の車止め装置10では、レール2を挟んで一方から他方へ掛け渡される車止めレバー114は、鉄道車両1を停止させるために重量物となるが、設置位置に配置される場合にレール2との間に隙間を設ける凹部114aを備えるので、レール2に干渉することなく、設置と除去が行われる。よって、本実施形態の車止め装置10によれば、車止めレバー114を自動で設置又は除去しても、レール2を損傷させない。
【0060】
また、本実施形態の車止め装置10では、レール2の片側に垂直に掘り下げられたピット111に、回動手段112と車止めレバー114と駆動手段113を収納し、ピット111を蓋115で塞いでいるので、作業員が蓋115の上で作業できる。また、蓋115は、車止めレバー114の回動を許容する窓115aが開閉手段116により開閉されるので、作業員が窓115aからピット111内へ落下しにくい。更に、制御手段13が、第1及び第2スイッチ13a,13bの操作に応じて開閉手段116に窓115aを自動的に開閉させるので、作業員が窓115aを開閉する手間がかからない。よって、本実施形態の車止め装置10によれば、車止めレバー114や回動手段112、駆動手段113が作業の邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の車止め装置10では、入庫線9A,9Bの車止め装置10と信号機3A,3Bが連動するので、例えば、入庫線9Aの各レール2A,2Bに車止めレバー114を確実に設置してから鉄道車両1Cを車止め装置10まで進入させることができる。よって、本実施形態の車止め装置10によれば、鉄道車両1を安全に走行させることができる。
【0062】
また、本実施形態の車止め装置10は、例えば停電やモータ113a、制御手段13の故障等が発生しても、図示しないハンドルを出力軸113cに取り付けて出力軸113cを正方向又は逆方向に回転させれば、車止めレバー114を手動で設置位置又は除去位置に配置することができる。
【0063】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、車止め装置10に連動する信号機3は、上記実施形態に限定されず、整備線9Cから出庫する鉄道車両1に移動を許可する信号機等であっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1(1A〜1D) 鉄道車両
2(2A,2B) レール
3(3A,3B) 信号機
10 自動可動式車止め装置
13 制御手段(駆動制御手段、開閉制御手段、信号機切換手段の一例)
13a,13b 第1及び第2スイッチ(第1及び第2指示手段の一例)
111 ピット
112 回動手段
113 駆動手段
114 車止めレバー
114a 凹部
115 蓋
115a 窓
116 開閉手段
118,119 第1及び第2位置検出センサ(位置検出手段の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6