(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688157
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】放射性廃液の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/12 20060101AFI20200421BHJP
G21F 9/04 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
G21F9/12 501K
G21F9/04 D
G21F9/12 501J
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-107157(P2016-107157)
(22)【出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2017-215147(P2017-215147A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】幡野 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】石田 一成
(72)【発明者】
【氏名】長山 位
(72)【発明者】
【氏名】三宮 豊
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−080684(JP,A)
【文献】
特開昭62−177498(JP,A)
【文献】
特開2013−057575(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0189943(US,A1)
【文献】
特開昭62−038247(JP,A)
【文献】
特開平07−246303(JP,A)
【文献】
特開平8−292294(JP,A)
【文献】
福島 浩人 他,陽イオン交換樹脂を用いた環境試料中の放射性ストロンチウムの定量,分析化学,日本,日本分析化学会,1979年 5月 5日,28巻5号,T25−T30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G21F 9/04
G21F 9/12
C02F 1/58− 1/64
C02F 1/28
B01D 15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的物質と共存物質とを含む放射性廃液に錯化剤を添加する錯化剤添加機構と、
前記目的物質を吸着除去する吸着剤を内蔵する吸着ユニットと、を備え、
前記錯化剤は、前記目的物質との錯安定定数が前記共存物質との錯安定定数に比べて小さく、
前記目的物質はSrであり、前記共存物質はCa及びMgの少なくとも1つを含み、
前記錯化剤の添加濃度は、モル基準で、前記共存物質の濃度の0.2倍以下である、放射性廃液の処理装置。
【請求項2】
前記目的物質との錯安定定数は、前記共存物質との錯安定定数に比べて1/100以下である、請求項1記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項3】
前記錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、テトラメタリン酸又はトリリン酸である、請求項1記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項4】
前記錯化剤の添加濃度は、モル基準で、前記目的物質の濃度の3.4倍未満である、請求項1記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項5】
前記共存物質の濃度は、モル基準で、前記目的物質の濃度の1倍以上である、請求項1記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項6】
さらに、前記放射性廃液と前記錯化剤との混合物に含まれる前記目的物質又は前記共存物質の濃度を測定するイオン濃度計を備えた、請求項1記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項7】
前記イオン濃度計から得られる前記目的物質又は前記共存物質の濃度に基いて、前記錯化剤の添加量を調整する、請求項6記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項8】
さらに、前記放射性廃液と前記錯化剤とを混合する攪拌機構を含む、請求項1記載の放射性廃液の処理装置。
【請求項9】
目的物質と共存物質とを含む放射性廃液に錯化剤を添加し、
その後、吸着剤により前記目的物質を吸着除去する方法であって、
前記錯化剤は、前記目的物質との錯安定定数が前記共存物質との錯安定定数に比べて小さく、
前記目的物質はSrであり、前記共存物質はCa及びMgの少なくとも1つを含み、
前記錯化剤の添加濃度は、モル基準で、前記共存物質の濃度の0.2倍以下である、放射性廃液の処理方法。
【請求項10】
前記目的物質との錯安定定数は、前記共存物質との錯安定定数に比べて1/100以下である、請求項9記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項11】
前記錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、テトラメタリン酸又はトリリン酸である、請求項9記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項12】
前記錯化剤の添加濃度は、モル基準で、前記目的物質の濃度の3.4倍未満である、請求項9記載の放射性廃液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等で発生する放射性物質を含む廃液の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等において発生する放射性物質を含む廃液の処理方法の一つに、無機固体およびイオン交換樹脂等を吸着剤として使用し吸着除去する方法がある。放射性物質を吸着した後の吸着剤は放射性廃棄物となることから、吸着性能の向上による処理効率の向上が求められている。
【0003】
吸着剤を使用して目的物質を除去する公知技術の例としては、目的物質の形態を変化させて処理効率を高める方法がある。
【0004】
特許文献1には、硼素を逆浸透膜(RO)膜処理により除去する際に、錯化剤を添加して、硼素を解離状態とすることにより、除去効率を高める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−080684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的物質の除去においては、目的物質の吸着選択性を向上するとともに、共存物質による妨害を低減することも、処理効率の向上に寄与する。放射性廃液を吸着剤で処理する場合、放射性物質以外の共存物質(Ca、Mg、H)も合わせて吸着されることから、共存物質による妨害が生じる。共存物質によって吸着剤の吸着量が低下し、早期に吸着剤の交換が必要となり、廃棄物量およびコストが増大する。
【0007】
本発明は、放射性廃液を吸着剤で処理する場合において、処理対象である目的物質と共存物質との選択性を向上し、吸着剤の有効利用を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射性廃液の処理装置は、目的物質と共存物質とを含む放射性廃液に錯化剤を添加する錯化剤添加機構と、吸着剤を内蔵する吸着ユニットと、を備え、錯化剤は、目的物質との錯安定定数が共存物質との錯安定定数に比べて小さい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射性廃液に含まれる共存物質の吸着剤への吸着を防ぎ、目的物質の吸着剤への選択性を向上し、廃棄物量及びコストの削減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の放射性廃液の処理装置を示す概略構成図である。
【
図2】模擬廃液に錯化剤としてEDTAを添加した溶液を吸着塔に通液した場合の通液量に対するCa及びSrの流出比率を示すグラフである。
【
図3】模擬廃液に錯化剤としてEDTAを添加しない溶液を吸着塔に通液した場合の通液量に対するCa及びSrの流出比率を示すグラフである。
【
図4】模擬廃液に添加するEDTAの濃度をパラメータとして、吸着剤に通液した際の通液量に対するSrの流出比率を示すグラフである。
【
図5】逐次平衡定数より算出したモル濃度比[Ca]/[Sr]に対するCa及びSrのイオン形態の分配比率を示すグラフである。
【
図6】錯化Caと錯化Srとの濃度比率に対するEDTAの添加量の影響を示すグラフである。
【
図7】実施例5の放射性廃液の処理装置を示す概略構成図である。
【
図8】本発明の廃液処理方法の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、廃液から、目的物質Mと吸着阻害を生じる共存物質(A,B)を含む水中からの目的物質を吸着分離する場合において、錯化剤Lを水中に添加する工程と、その後段に吸着剤による吸着を行う工程と、を備えることを特徴とする。ここで、目的物質Mの錯安定定数をK(M−L)、共存物質Aの錯安定定数をK(A−L)、共存物質Bの錯安定定数をK(B−L)とすると、K(M−L)≪K(A−L)及びK(M−L)≪K(B−L)が成り立つ。
【0012】
放射性廃液の吸着処理においては、目的物質だけでなく、その他の共存物質も吸着剤が吸着する場合がある。そのため、廃液中に吸着剤に吸着する共存物質が存在すると、吸着剤の目的物質に対する吸着量が低下し、廃棄物量やコストが増大する。
【0013】
本発明者は、共存物質を吸着剤に吸着されない形態とすることにより、目的物質の選択性を向上することができると考えた。目的物質の選択性を向上することにより、共存物質による吸着量の低下を防止することができ、選択性の低い安価材の代替使用が可能になり、吸着剤を有効利用することができる。
【0014】
よって、本発明では、放射性廃液中に目的物質との錯安定係数に比べ、共存物質との錯安定係数が大きい錯化剤を添加することで共存物質を選択的に吸着されにくい形態とし、吸着剤を有効利用する方法を提案する。また、これを実現するために、放射性廃液に錯化剤を添加する錯化剤添加機構と、吸着剤を内蔵した吸着ユニットと、を備えた、放射性廃液の処理装置を提示する。
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、以下の実施例においては、目的物質をストロンチウム(Sr)、共存物質をカルシウム(Ca)と仮定して記載している。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例の廃液処理装置を示す概略構成図である。
【0017】
廃液処理装置100は、廃液1を貯留する槽10、錯化剤2を含む固体または溶液を貯留する槽11、攪拌機構12、ポンプ13及び吸着塔14(吸着ユニット)を備えている。吸着塔14には、目的物質を吸着除去する吸着剤が充填されている。
【0018】
以下、廃液処理装置100における処理の流れを説明する。
【0019】
廃液1を貯留している槽10に対して、錯化剤2を槽11より添加し、攪拌機構12により廃液1と錯化剤2とを混合する。これにより、錯化剤2(以下「L」と略称する場合がある。)を廃液中の共存物質と反応させ、共存物質を錯体化する。
【0020】
このとき、錯化剤2(L)と目的物質Mとの錯安定定数K(M−L)が、錯化剤2(L)と共存物質Aとの錯安定定数K(A−L)よりも十分に小さい値となるように錯化剤を選定する。具体的には、K(A−L)/K(M−L)>100となる錯化剤が好適である。言い換えると、錯化剤2(L)と目的物質Mとの錯安定定数は、錯化剤2(L)と共存物質Aとの錯安定定数に比べて1/100以下である。この条件を満たす錯化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、テトラメタリン酸、トリリン酸等が挙げられる。
【0021】
表1は、EDTA、テトラメタリン酸、トリリン酸及びニトリロ三酢酸(NTA)のCa、Mg及びSrに対する錯安定定数logKを示したものである。この例では、目的物質MがSrであり、共存物質(A,B)がCa,Mgである。なお、共存物質としては、Ca及びMgのうち少なくとも1つが含まれる場合が想定される。
【0022】
【表1】
【0023】
廃液中の共存物質を錯体化した後、ポンプ13により吸着塔14に通液する。吸着塔14では、イオン交換による目的物質の吸着を行う。吸着塔14の吸着では、イオンに解離している物質のみを吸着することから、錯体化している共存物質は吸着されず、イオンに解離している目的物質が優先的に吸着される。吸着塔14を通過した液は、処理後の排液4として排出される。
【0024】
以下、錯化剤添加による吸着選択性の向上効果を検討した結果について説明する。
【0025】
目的物質MをSrとし、模擬廃液と、模擬廃液に錯化剤としてEDTAを添加した溶液と、を吸着剤に通液した際の、通液量に対する流出濃度の推移を調べた。模擬廃液は、人工海水を10.5倍に希釈し、共存イオンとしてCaCl
2、MgCl
2を添加して調製したものを用いた。このときの模擬廃液のCa、Mg及びNaの濃度並びにEDTAの濃度は、次のとおりである。
【0026】
Ca濃度:160ppm
Mg濃度:160ppm
Na濃度:1126ppm
EDTA濃度:740ppm(Caのモル濃度の0.5倍)
なお、模擬廃液は、pHを調整せずに吸着剤に通液した。EDTAを添加していない模擬廃液のpHは7〜8、EDTAを添加した模擬廃液のpHは3.7であった。
【0027】
通液前後のCa濃度をイオンクロマトグラフィにより測定し、流出したCa濃度を求めた。非放射性同位体のSrの濃度は0.9ppmとし、さらにトレーサーとして微量の放射性同位体Sr−85を添加した。通液前後のSr−85濃度を、半導体型検出器で放射線エネルギーを測定することで決定し、流出したSr濃度を求めた。吸着剤は、市販のストロンチウム吸着剤を使用した。市販のストロンチウム吸着剤としては、ゼオライト、チタン酸化合物又は結晶性シリコチタネートを母材とした製品が販売されている。
【0028】
図2は、模擬廃液に錯化剤としてEDTAを添加した溶液を吸着塔に通液した場合の通液量に対するCa及びSrの流出比率を示すグラフである。
【0029】
図3は、模擬廃液に錯化剤としてEDTAを添加しない溶液を吸着塔に通液した場合、すなわち、模擬廃液をそのまま吸着塔に通液した場合の通液量に対するCa及びSrの流出比率を示すグラフである。
【0030】
ここで用いた吸着剤は、チタン酸化合物を母材とした吸着剤である。横軸に通液量BV、縦軸に流出比率Rをとっている。ここで、通液量BVは、(通液量(mL))/(吸着剤量(mL))である。また、流出比率Rは、(カラム通過後のSr濃度(ppm))/(初期Sr濃度(ppm))である。
【0031】
図2及び
図3を比較すると、EDTAの添加によりCaの流出比率(Rca)とSrの流出比率(Rsr)との差が広がっていることがわかる。通液量AでのRsr/Rcaを比較すると、EDTAを添加していない場合はRsr/Rca=0.2であったのに対し、EDTAを添加した場合にはRsr/Rca=0.04となっている。
【0032】
以上のことより、錯化剤EDTAの添加により、吸着剤のSr選択性が向上することがわかる。
【実施例2】
【0033】
実施例1と同様の装置構成において、錯化剤添加による吸着剤のSr吸着性能変化を検討した。希釈した海水および希釈した海水に錯化剤としてEDTAを添加した溶液を吸着剤に通液した際の、通液量に対する流出比率の推移を調べた。この場合における希釈海水のCa、Mg、Sr及びNaの濃度並びにEDTAの濃度は、次のとおりである。
【0034】
Ca濃度:72ppm
Mg濃度:238ppm
Sr濃度:1.4ppm
Na濃度:2000ppm
EDTA濃度:67ppm、20ppm、6.7ppm(Srモル濃度の11倍、3.4倍、1.1倍)
なお、希釈海水は、pHを調整せずに吸着剤に通液した。希釈海水のpHは、6.5〜7の範囲であった。トレーサーとして微量の放射性同位体Sr−85を添加した。通液前後のSr−85濃度の放射線エネルギーを半導体型検出器により測定することにより、流出したSrの全濃度を算出した。
【0035】
図4は、模擬廃液として希釈海水を用い、これに添加するEDTAの濃度をパラメータとして、吸着剤に通液した際の通液量に対するSrの流出比率を示したものである。ここで用いた吸着剤は、結晶性シリコチタネートを母材とした吸着剤である。横軸に通液量BV、縦軸にSrの流出比率Rをとっている。図中、EDTAのモル比を0、1.1、3.4、11とした場合についてそれぞれ、シンボルを×印、△印、〇印、◇印として示している。
【0036】
図4より、SrとEDTAとのモル濃度比を1:1.1として希釈海水にEDTAを添加した場合は、希釈海水の破過曲線と大きな違いが見られなかった。一方、SrとEDTAのモル濃度比を1:3.4あるいは1:11とした場合には、若干の吸着性能の低下が見られた。よって、EDTAを添加する場合においてEDTA添加量がモル濃度比でSrの1.1倍から3.4倍の間において吸着性能が変化することが確認できた。
【0037】
以上より、EDTA添加量は、Sr濃度の3.4倍未満に留めることが好ましい。また、EDTA添加量は、Sr濃度の2.0倍以下に留めることが更に好ましい。
【実施例3】
【0038】
SrとCaとの濃度比によるSrおよびCaのイオン形態の変化を検討するため、SrおよびCaに対するEDTA錯体の逐次安定定数を用いて各形態の分配比率を算出した。ここで、分配比率は、溶液中のCa濃度、Sr濃度、EDTA濃度、及びpHより逐次安定定数を用いて、平衡反応式により計算した。
【0039】
表2は、平衡反応式及びそれぞれの平衡反応式に対応する逐次安定定数の値を示したものである。
【0040】
【表2】
【0041】
図5は、Srに対して等モルのEDTAを添加した場合の、pH=7における各イオン形態の分配比率を示したものである。
【0042】
図5より、Ca濃度がSr濃度よりも高くなると、Srの自由イオンの分配比率は大幅に増加することがわかる。EDTAは、Caと優先的に錯体を形成するからである。
【0043】
よって、本発明は、Sr濃度に対してCa濃度が1倍以上の廃液に対して特に有効である。
【実施例4】
【0044】
EDTA添加による錯化Caに対する錯化Srの濃度比率を検討するため、SrおよびCaに対するEDTA錯体の逐次安定定数を用いて各形態の存在率を算出した。
【0045】
図6は、Ca濃度に対するEDTA濃度と錯化Caに対する錯化Srの濃度比率(Csr/Cca)との関係を示したものである。横軸にはCaの総濃度に対するEDTA濃度をとり、縦軸には錯化Caに対する錯化Srの濃度比率(Csr/Cca)をとっている。
【0046】
錯化Caに対する錯化Srの濃度比率(Csr/Cca)が低いほど、選択性の向上効果は高い。なお、逐次安定定数は、実施例3で示す値を使用した。
【0047】
図6より、Caの総濃度に対するEDTA濃度が0.2倍を超えた範囲において、Csr/Ccaが大幅に上昇する。よって、EDTAの濃度は、Ca総濃度に対して0.2倍以下とすることが好ましい。また、EDTAの濃度は、Ca総濃度に対して0.1倍以下とすることが更に好ましい。
【実施例5】
【0048】
図7は、本実施例の廃液処理装置を示す概略構成図である。
図1と同様の構成要素には同一の符号を付している。
【0049】
図7においては、
図1の構成に加え、錯化剤2の添加に用いるポンプ15を有し、かつ、槽10においてイオン濃度計20により廃液中の目的物質又は共存物質の濃度を測定する点が異なる。イオン濃度計20により測定した目的物質又は共存物質の濃度に基いて、ポンプ15を稼働し、槽11より錯化剤2を添加する。槽10において目的物質又は共存物質の濃度を測定することで、錯化剤2の添加濃度を適切に調整することができる。
【0050】
以下、本発明の廃液処理方法について説明する。
【0051】
図8は、廃液処理方法の工程を示すフロー図である。
【0052】
本図に示すように、本発明の廃液処理方法は、錯化剤添加工程S101と、目的物質吸着工程S102と、を含む。
【0053】
錯化剤添加工程S101においては、処理すべき廃液に錯化剤を添加する。ここで、錯化剤は、目的物質よりも共存物質と結合しやすい物質である。
【0054】
目的物質吸着工程S102においては、錯化剤と共存物質とが結合して形成された錯体よりも、目的物質が選択的に吸着剤に吸着され、液中から除去される。
【0055】
この方法により、吸着剤を浪費することなく、目的物質を除去することができる。
【0056】
なお、本発明は、廃液に錯化剤を添加し、共存物質をマスキングすることにより、目的物質を除去する吸着剤の負荷を低減するものであり、分析等で行われる高純度化とは異なる考え方によるものである。
【符号の説明】
【0057】
1:廃液、2:錯化剤、10:廃液を貯留する槽、11:錯化剤を貯留する槽、12:攪拌機構、13、15:ポンプ、14:吸着塔、20:イオン濃度計、100:廃液処理装置。