(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688166
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
G01D5/244 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-118031(P2016-118031)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-223505(P2017-223505A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 克敏
【審査官】
菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−232649(JP,A)
【文献】
特開2010−78461(JP,A)
【文献】
特開2006−112859(JP,A)
【文献】
特開2003−35566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定変位に対して波長λのピッチで正弦波状に変化するとともに互いに90度位相が異なる二つの信号を出力する位置センサからの出力信号を位置情報に変換する位置検出装置において、
前記二つの信号それぞれに含まれるオフセット量を修正するためのオフセット修正値と、前記二つの信号間の位相差を修正するための位相修正値と、前記二つの信号間の振幅比を修正するための振幅比修正値と、を記憶する記憶部と、
前記オフセット修正値に基づいて前記二つの信号それぞれからオフセット量を除去するオフセット除去部と、
前記位相修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から位相誤差成分を除去する位相誤差除去部と、
前記振幅比修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から振幅比誤差成分を除去する振幅比誤差除去部と、
前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号を、位置情報に変換する内挿演算部と、
前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号の二乗和の平方根を半径量として算出する半径演算部と、
前記位置情報に対する前記半径量の変化をフーリエ解析するフーリエ演算部と、
前記フーリエ演算部の演算結果に基づいて、前記オフセット修正値の変化量であるオフセット変化値を算出し、当該オフセット変化値と現在のオフセット修正値とに基づいて、次回のオフセット修正値を算出するオフセット修正値演算部と、
前記位相修正値の変化量である位相変化値を算出し、当該位相変化値と現在の位相修正値とに基づいて、次回の位相修正値を算出する位相修正値演算部と、
前記振幅比修正値の変化比率である振幅比変化値を算出し、当該振幅比変化値と現在の振幅比修正値とに基づいて、次回の振幅比修正値を算出する振幅比修正値演算部と、
を備え、さらに、
前記フーリエ解析により得られる二次の成分に基づき、前記オフセットの変化および振幅比の変化を無視したときの前記位相修正値の変化量である仮の位相変化値、および、前記位相差の変化を無視したときの振幅比修正値の変化比率である仮の振幅比変化値を算出する仮変化値演算部を備え、
前記位相修正値演算部は、前記オフセット変化値と、前記半径量と、前記仮の位相変化値と、仮の振幅比変化値と、に基づいて前記位相変化値を算出する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
測定変位に対して波長λのピッチで正弦波状に変化するとともに互いに90度位相が異なる二つの信号を出力する位置センサからの出力信号を位置情報に変換する位置検出装置において、
前記二つの信号それぞれに含まれるオフセット量を修正するためのオフセット修正値と、前記二つの信号間の位相差を修正するための位相修正値と、前記二つの信号間の振幅比を修正するための振幅比修正値と、を記憶する記憶部と、
前記オフセット修正値に基づいて前記二つの信号それぞれからオフセット量を除去するオフセット除去部と、
前記位相修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から位相誤差成分を除去する位相誤差除去部と、
前記振幅比修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から振幅比誤差成分を除去する振幅比誤差除去部と、
前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号を、位置情報に変換する内挿演算部と、
前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号の二乗和の平方根を半径量として算出する半径演算部と、
前記位置情報に対する前記半径量の変化をフーリエ解析するフーリエ演算部と、
前記フーリエ演算部の演算結果に基づいて、前記オフセット修正値の変化量であるオフセット変化値を算出し、当該オフセット変化値と現在のオフセット修正値とに基づいて、次回のオフセット修正値を算出するオフセット修正値演算部と、
前記位相修正値の変化量である位相変化値を算出し、当該位相変化値と現在の位相修正値とに基づいて、次回の位相修正値を算出する位相修正値演算部と、
前記振幅比修正値の変化比率である振幅比変化値を算出し、当該振幅比変化値と現在の振幅比修正値とに基づいて、次回の振幅比修正値を算出する振幅比修正値演算部と、
を備え、さらに、
前記フーリエ解析により得られる二次の成分と、前記半径量と、に基づき、前記オフセットの変化および振幅比の変化を無視したときの前記位相修正値の変化量である仮の位相変化値、および、前記位相差の変化を無視したときの振幅比修正値の変化比率である仮の振幅比変化値を算出する仮変化値演算部を備え、
前記振幅比修正値演算部は、前記仮の位相変化値と、仮の振幅比変化値と、に基づいて前記振幅比変化値を算出する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記二つの信号それぞれの前記オフセット変化値をCOBおよびSOB、前記半径量の平均値をRDA、前記仮の位相変化値をDPと、仮の振幅比変化値をDB、前記位相変化値をPJBとした場合、前記位相変化値PJBは、
PJB=DP/DB+(COB×SOB)/RDA
の式に基づいて算出される、ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の位置検出装置であって、
前記仮の位相変化値をDPと、仮の振幅比変化値をDBと、前記半径量の平均値をRDA、前記振幅比変化値をBJBとした場合、前記振幅比変化値BJBは、
BJB=DP2+DB
の式に基づいて算出される、ことを特緒とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定変位に対して波長λのピッチで正弦波状に変化する90度位相の異なる信号を出力する位置センサからの出力信号を位置情報に変換する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来技術を
図5を参照して簡易に説明する。位置センサ24により検出された余弦波状の信号SCは、増幅器3により増幅され、数値ACとして出力される。また、位置センサ25により検出された正弦波状の信号SSは、増幅器4により増幅され、数値ASとして出力される。増幅された数値AC,ASは、タイミングコントローラ5から出力されるタイミング信号TIMが示すサンプリング間隔で、AD変換器6,7によりデジタル化されて数値DCと数値DSとなる。この数値DCおよび数値DSは、理想状態では、次の式1、式2で表すことができる。
DC=G×COS(36θ) ・・・式1
DS=G×SIN(36θ) ・・・式2
【0003】
しかし、実際には、位置センサの設置誤差や、増幅器3,4の特性のバラツキ等により、デジタル化された二つの数値DC,DSには、オフセット値COF,SOFや、二つの信号間の位相差Pや、振幅比Bが含まれる。そのため、数値DC,DSは、厳密には、次の式3、式4として表すことができる。
DC=G×COS(36θ)+COF ・・・式3
DS=B×G×SIN(36θ)+P・G・COS(36θ)+SOF ・・・式4
【0004】
ここで、このオフセット値COF,SOFや、位相誤差を示す値P、振幅比を示すBは、測定位置に応じて微妙に変化する。そのため、特許文献1では、このオフセット値COF,SOFや、位相誤差や、振幅比誤差を除去するための修正値を随時、演算し、演算された修正値に基づいて数値DC,DSを修正していた。
【0005】
具体的に説明すると、記憶部30には、数値DCに含まれるオフセット成分(COF)を除去するための数値である余弦オフセット修正値COが記憶されている。減算器8は、デジタル化された数値DCから、記憶部30に記憶されている余弦オフセット修正値COを減算して、数値DCAを出力する。
【0006】
また、記憶部31には、数値DSに含まれるオフセット成分(SOF)を除去するための数値である正弦オフセット修正値SOが記憶されている。減算器9は、デジタル化された信号DSから、記憶部31に記憶されている正弦オフセット修正値SOを減算して、数値DSAを出力する。
【0007】
記憶部32には、数値DSAの位相差(P)を算出するための数値である位相修正値PJが記憶されている。乗算器15により、数値DCAに、この位相修正値PJを乗算し、さらに、減算器14により、乗算器15の出力値を、数値DSAから減算して、数値DSBを算出する。
【0008】
記憶部33には、数値DSBの振幅比(B)を修正する数値である振幅比修正値BJが記憶されている。乗算器16は、数値DSBに、この振幅比修正値BJを乗算して数値DSCを算出する。
【0009】
以上の演算によりオフセットや位相差や振幅比が修正された数値DCAと数値DSCが得られる。この数値DCA,DSCは、半径演算部18および内挿演算部17に入力される。半径演算部18は、数値DCAと数値DSCに式5の計算を行い、半径量RDを出力する。
【数1】
【0010】
内挿演算部17は、数値DCAと数値DSCに逆正接演算を行うことで、内挿位置IP(すなわち位置情報)を算出する。ここでは、本発明の説明上必要ないため省略するが、信号SCと信号SSの変化を基にカウント処理したカウンタ値と内挿位置IPなどにより波長λのピッチ以上の位置が算出される。
【0011】
高速フーリエ演算部19では、前記内挿位置IPに対する半径量RDの変化をフーリエ解析する。具体的には、高速フーリエ演算部19は、内挿位置IPのλ/2
Nの位置変化ごとの半径量RDに相当する値を、平均化や補間処理によって求め、フーリエ演算により半径量RDの変化量の一次成分から三次成分までを算出する。さらに高速フーリエ演算部19は、2
N個の半径量RDから平均半径量RDAを算出する。
【0012】
ここでフーリエ演算により得られた一次成分である波長λの余弦成分と正弦成分を数値C1,S1、二次の成分である波長λ/2の余弦成分と正弦成分を数値C2,S2、三次の成分である波長λ/3の余弦成分と正弦成分を数値C3,S3とする。
【0013】
演算部36では、記憶部30が記憶する現在の余弦オフセット修正値COに、高速フーリエ演算部19が演算した一次成分である波長λの余弦成分C1を加算するとともに、三次の成分である波長λ/3の余弦成分C3を減算し、数値COAを算出する。この数値COAは、次回の余弦オフセット修正値COとして、記憶部30に記憶される。
【0014】
演算部37では、記憶部31が記憶する現在の正弦オフセット修正値SOに、高速フーリエ演算部19が演算した一次成分である波長λの正弦成分S1と、三次の成分である波長λ/3の正弦成分S3と、を加算し、数値SOAを算出する。この数値SOAは、次回の正弦オフセット修正値SOとして、記憶部31に記憶される。
【0015】
演算部35では、高速フーリエ演算部19が演算した波長λ/2の正弦成分である数値S2と平均半径である数値RDAに対して、式6の計算が行われ、数値DPが出力される。
DP=2×S2/RDA ・・・式6
【0016】
減算器38では、記憶部32が記憶する現在の位相修正値PJから演算部35で算出した数値DPが減算され、数値PJAが算出される。この数値PJAは、次回の位相修正値PJとして、記憶部32に記憶される。
【0017】
演算部34では、高速フーリエ演算部19が演算した波長λ/2の余弦成分である数値C2と平均半径である数値RDAに対して、式7の計算が行われ、数値DBが出力される。
DB=(RDA+C2)/(RDA−C2) ・・・式7
【0018】
乗算器39では、記憶部33が記憶する現在の振幅比修正値BJと演算部34で算出した数値DBが乗算され、数値BJAが算出される。この数値BJAは、次回の振幅比修正値BJとして、記憶部33に記憶される。
【0019】
従来技術では、以上の演算により、位置に依存して微妙に変化するオフセットや位相差、振幅比の変化を同定し、内挿精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008−232649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、特許文献1では、波長λのピッチにおける2つの信号(DCA,DSC)の自乗和の平方根(すなわち半径量RD)をフーリエ解析した数値に基づき、位置に依存したオフセットや位相差、振幅比を算出することで内挿精度の高精度化を行っている。しかし、特許文献1の位置検出装置では、オフセットや振幅比が大きく変化し、オフセット修正値・振幅比修正値の現在値と次回値との差が大きくなる場合、位相修正値に誤差が発生する。また、位相差が大きく変化し、位相修正値の現在と次回値との差が大きくなる場合、更新する振幅比修正値に誤差が発生する。
【0022】
つまり、従来の技術では、オフセットや位相差、振幅比の変動が大きい位置センサでは、更新される修正値の応答が悪く内挿精度向上の妨げになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の位置検出装置は、測定変位に対して波長λのピッチで正弦波状に変化するとともに互いに90度位相が異なる二つの信号を出力する位置センサからの出力信号を位置情報に変換する位置検出装置において、前記二つの信号それぞれに含まれるオフセット量を修正するためのオフセット修正値と、前記二つの信号間の位相差を修正するための位相修正値と、前記二つの信号間の振幅比を修正するための振幅比修正値と、を記憶する記憶部と、前記オフセット修正値に基づいて前記二つの信号それぞれからオフセット量を除去するオフセット除去部と、前記位相修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から位相誤差成分を除去する位相誤差除去部と、前記振幅比修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から振幅比誤差成分を除去する振幅比誤差除去部と、前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号を、位置情報に変換する内挿演算部と、前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号の二乗和の平方根を半径量として算出する半径演算部と、前記位置情報に対する前記半径量の変化をフーリエ解析するフーリエ演算部と、前記フーリエ演算部の演算結果に基づいて、前記オフセット修正値の変化量であるオフセット変化値を算出し、当該オフセット変化値と現在のオフセット修正値とに基づいて、次回のオフセット修正値を算出するオフセット修正値演算部と、前記位相修正値の変化量である位相変化値を算出し、当該位相変化値と現在の位相修正値とに基づいて、次回の位相修正値を算出する位相修正値演算部と、前記振幅比修正値の変化比率である振幅比変化値を算出し、当該振幅比変化値と現在の振幅比修正値とに基づいて、次回の振幅比修正値を算出する振幅比修正値演算部と、を備え、さらに、前記フーリエ解析により得られる二次の成分に基づき、前記オフセットの変化および振幅比の変化を無視したときの前記位相修正値の変化量である仮の位相変化値、および、前記位相差の変化を無視したときの振幅比修正値の変化比率である仮の振幅比変化値を算出する仮変化値演算部を備え、前記位相修正値演算部は、前記オフセット変化値と、前記半径量と、前記仮の位相変化値と、仮の振幅比変化値と、に基づいて前記位相変化値を算出する、ことを特徴とする。
【0024】
他の本発明の位置検出装置は、測定変位に対して波長λのピッチで正弦波状に変化するとともに互いに90度位相が異なる二つの信号を出力する位置センサからの出力信号を位置情報に変換する位置検出装置において、前記二つの信号それぞれに含まれるオフセット量を修正するためのオフセット修正値と、前記二つの信号間の位相差を修正するための位相修正値と、前記二つの信号間の振幅比を修正するための振幅比修正値と、を記憶する記憶部と、前記オフセット修正値に基づいて前記二つの信号それぞれからオフセット量を除去するオフセット除去部と、前記位相修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から位相誤差成分を除去する位相誤差除去部と、前記振幅比修正値に基づいて前記二つの信号のうちの一方から振幅比誤差成分を除去する振幅比誤差除去部と、前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号を、位置情報に変換する内挿演算部と、前記オフセット量、位相誤差成分、振幅比誤差成分が除去された前記二つの信号の二乗和の平方根を半径量として算出する半径演算部と、前記位置情報に対する前記半径量の変化をフーリエ解析するフーリエ演算部と、前記フーリエ演算部の演算結果に基づいて、前記オフセット修正値の変化量であるオフセット変化値を算出し、当該オフセット変化値と現在のオフセット修正値とに基づいて、次回のオフセット修正値を算出するオフセット修正値演算部と、前記位相修正値の変化量である位相変化値を算出し、当該位相変化値と現在の位相修正値とに基づいて、次回の位相修正値を算出する位相修正値演算部と、前記振幅比修正値の変化比率である振幅比変化値を算出し、当該振幅比変化値と現在の振幅比修正値とに基づいて、次回の振幅比修正値を算出する振幅比修正値演算部と、を備え、さらに、前記フーリエ解析により得られる二次の成分と、前記半径量と、に基づき、前記オフセットの変化および振幅比の変化を無視したときの前記位相修正値の変化量である仮の位相変化値、および、前記位相差の変化を無視したときの振幅比修正値の変化比率である仮の振幅比変化値を算出する仮変化値演算部を備え、前記振幅比修正値演算部は、前記仮の位相変化値と、仮の振幅比変化値と、に基づいて前記振幅比変化値を算出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、位相修正値の誤差や振幅比修正値の誤差を修正することができるため、内挿精度をさらに向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態である位置検出装置の構成を示す図である。
【
図2】振幅比修正値のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図3】位相修正値のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図4】位相修正値のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、従来の技術の
図5とほぼ同じであるため、同じ個所については同じ符号として、その説明を省略する。なお、従来技術の説明で明らかな通り、本実施形態において、記憶部30、記憶部31、記憶部32、記憶部33は、オフセット修正値CO,SO、位相修正値PJ、振幅比修正値BJを記憶する記憶部として機能する。これらの四つの記憶部は、互いに異なる記憶装置(例えばメモリ等)で構成されてもよいし、同一の記憶装置で構成されてもよい。また、減算器8、減算器9は、二つの信号DC,DSからオフセット量を除去するオフセット除去部として機能する。また、乗算器15および減算器14は、信号DSから位相誤差成分を除去する位相誤差除去部として機能する。さらに、乗算器16は、信号DSから振幅比誤差成分を除去する振幅比誤差除去部として機能する。
【0028】
高速フーリエ演算部19は、半径演算部18から出力された半径量RDと内挿演算部17から出力された内挿位置IPを入力とする。高速フーリエ演算部19は、従来技術と同様に、前記内挿位置IPに対する半径量RDの変化をフーリエ解析する。具体的には、高速フーリエ演算部19は、内挿位置IPのλ/2
Nの位置変化ごとの半径量RDに相当する値を、平均化や補間処理によって求め、フーリエ演算により半径量RDの変化量の一次成分から三次成分までを算出する。さらに高速フーリエ演算部19は、2
N個の半径量RDから平均半径量RDAを算出する。
【0029】
ここでフーリエ演算により得られた、一次成分である波長λの余弦成分と正弦成分を数値C1,S1、二次の成分である波長λ/2の余弦成分と正弦成分を数値C2,S2、三次の成分である波長λ/3の余弦成分と正弦成分を数値C3,S3とする。
【0030】
演算部34は、既述した通り、波長λ/2の余弦成分である数値C2と平均半径である数値RDAを式6に当てはめて、数値DBを出力する。従来技術では、この数値DBに、現在の振幅比修正値BJを乗算して、次回の振幅比修正値BJ(=BJA)を算出していた。ただし、この手法では、位相差が大きく変化した場合には、誤差が大きくなる。これは、見方を変えれば、位相差が変化しない場合には、BJA=DB×BJとしても誤差が生じないということである。このことから考えると、数値DBは、位相差が変化しない場合における振幅比修正値BJの変化比率であるとみなせる。よって、以下では、この数値DBを「仮の振幅比変化値DB」と呼ぶ。
【0031】
演算部35は、波長λ/2の正弦成分である数値S2と平均半径である数値RDAを式7に当てはめて数値DPを出力する。従来技術では、この数値DPを、現在の位相修正値PJから減算して、次回の位相修正値PJ(=PJA)としていた。ただし、この手法では、オフセット量や振幅比が大きく変化した場合には、誤差が大きくなる。これは、見方を変えれば、オフセット量や振幅比が変化しない場合には、PJA=PJ−DPとしても誤差が生じないということである。このことから考えると、数値DPは、オフセット量および振幅比が変化しない場合における位相修正値PJの変化量であるとみなせる。よって、以下では、この数値DPを「仮の位相変化値DP」と呼ぶ。そして、この場合、演算部34,35は、内挿位置IPに対する半径量RDの変化をフーリエ解析して得られる二次の成分に基づいて、仮の変化値DB,DPを算出する仮変化値演算部として機能する。
【0032】
演算部36は、一次の余弦成分C1から三次の余弦成分C3を減算して、数値COBを算出し、この数値COBに現在の余弦オフセット修正値COを加算し、数値COAを算出する。この数値COAは、次回の余弦オフセット修正値COとして記憶部30に記憶される。ここで、数値COBは、現在の余弦オフセット修正値COと次回の余弦オフセット修正値CO(=COA)との間の変化量を示す値である。したがって、以下では、数値COBを「余弦オフセット変化値COB」と呼ぶ。
【0033】
演算部37は、一次の正弦成分S1から三次の正弦成分S3を減算して、数値SOBを算出し、この数値SOBに現在の正弦オフセット修正値SOを加算し、数値SOAを算出する。この数値SOAは、次回の正弦オフセット修正値SOとして記憶部31に記憶される。ここで、数値SOBは、現在の正弦オフセット修正値COと次回の正弦オフセット修正値SO(=SOA)との間の変化量を示す値である。したがって、以下では、数値SOBを「正弦オフセット変化値SOB」と呼ぶ。なお、演算部36、演算部37は、オフセット変化値と現在のオフセット修正値とに基づいて、次回のオフセット修正値を算出するオフセット修正値演算部として機能する。
【0034】
演算部40は、演算部36が算出した余弦オフセット変化値COBと、演算部37が算出した正弦オフセット変化値SOBと、演算部34が演算した仮の振幅比変化値DBと、演算部35が算出した仮の位相変化値DPと、平均半径量RDAと、を受け取る。演算部40は、受けた数値を式8に当てはめて計算し、数値PJBを出力する。
PJB=DP/DB+(COB×SOB)/RDA ・・・式8
【0035】
この数値PJBは、位相修正値PJの変化量を示す位相変化値となる。減算器38は、演算部40が演算した位相変化値PJBを、記憶部32に記憶されている現在の位相修正値PJから減算して数値PJAを算出する。減算器38が演算した数値PJAは、次回の位相修正値PJとして記憶部32に記憶される。
【0036】
演算部41は、演算部35が算出した仮の位相変化値DPと、演算部34が演算した仮の振幅比変化値DBと、を受け取る。演算部41は、受けた数値を式9に当てはめて計算し、数値BJBを出力する。
BJB=DP
2+DB ・・・式9
【0037】
この数値BJBは、振幅比修正値BJの変化比率を示す振幅比変化値となる。乗算器39は、演算部41が演算した振幅比変化値BJBに、記憶部33に記憶されている現在の振幅比修正値BJを乗算して、数値BJAを算出する。乗算器39が演算した数値BJAは、次回の振幅比修正値BJとして記憶部33に記憶される。
【0038】
次に、本発明の効果について
図2〜
図4を参照して説明する。
図2は、正弦波状の信号と余弦波状の信号に含まれる初期オフセット値を振幅の1.53%に固定し、さらに、余弦波信号に対する正弦波信号の振幅比を1に固定した状態で、位相角度誤差を変えた場合に1回の修正処理で得られる振幅比修正値BJを示すグラフである。また、
図2において、横軸は、位相角度誤差(単位は度)、縦軸は、振幅比修正値BJを示している。
図2において、実線は、本実施形態の構成で得られる振幅比修正値BJ、破線は、理想の振幅比修正値、一点鎖線は、
図5に示した従来技術で得られる振幅比修正値を示している。上述した通り、
図2の演算では、振幅比を1に固定しているため、望ましい理想の振幅比修正値は、破線で示すように、1である。しかし、従来技術(一点鎖線)では、位相差角度が増えるに従い、振幅比修正値が理想値(破線)から大きく乖離することが分かる。一方、本実施形態(実線)では、位相差角度の増加に伴い、理想値からの乖離量が徐々に増えるものの、従来技術と比べて、当該乖離量を大幅に低減できていることが分かる。
【0039】
図3は、正弦波状の信号と余弦波状の信号に含まれる初期オフセット値を振幅の1.53%に固定し、さらに、位相角度誤差を0度に固定した状態で、振幅比を変えた場合に1回の修正処理で得られる位相修正値PJを示すグラフである。
図3において、横軸は、余弦波状の信号SCに対する正弦波状の信号SSの振幅比を、縦軸は、位相修正値を示している。また、
図3において、実線は、本実施形態の構成で得られる位相修正値PJ、破線は、望ましい理想の位相修正値を、一点鎖線は、
図5に示した従来技術で得られる位相修正値を示している。上述した通り、
図3の演算では、位相角度誤差を0度に固定しているため、望ましい理想の位相修正値は、0である。しかし、従来技術(一点鎖線)では、振幅比が1から離れるに従い、位相修正値が、理想値(破線)から大きく乖離することが分かる。一方、本実施形態(実線)では、従来技術に比べて、理想値との乖離を大幅に低減でき、振幅比1の時点では、理想値との乖離量をほぼゼロにできることが分かる。
【0040】
図4は、余弦波状の信号に含まれる初期オフセット値を振幅の1.53%に固定し、さらに、振幅比を1に固定し、位相角度誤差を0度に固定した状態で、正弦波状の信号に含まれる初期オフセット値を変えた場合に1回の修正処理で得られる位相修正値PJを示すグラフである。
図4において、横軸は、振幅に対するオフセット値の比率を、縦軸は位相修正値を示している。また、
図4において、実線は、本実施形態の構成で得られる位相修正値PJを、破線は、望ましい理想の位相修正値を、一点鎖線は、
図5に示した従来技術で得られる位相修正値を示している。上述した通り、
図4の演算では、位相角度誤差を0度に固定しているため、理想の位相修正値は、0度である。一方、しかし、従来技術(一点鎖線)では、オフセット量が増えるに従い、位相修正値が、理想値(破線)から大きく乖離することが分かる。一方、本実施形態(実線)では、従来技術に比べて、理想値との乖離を大幅に低減でき、位相修正値をほぼ理想値(0度)にできることが分かる。
【0041】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態では、オフセット誤差や振幅比誤差により発生する位相修正値の変化や位相角度誤差により発生する振幅比修正値の変化を修正することが可能であるため、従来技術に比べて、各種修正値の同定精度をより向上でき、ひいては、内挿精度をより向上できる。
【符号の説明】
【0042】
3,4 増幅器、5 タイミングコントローラ、6,7 AD変換器、8,9,14,38 減算器、15,16,39 乗算器、17 内挿演算部、18 半径演算部、19高速フーリエ演算部、24,25 位置センサ、30,31,32,33 記憶部、34,35,36,37,40,41 演算部。