特許第6688169号(P6688169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688169
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】二色成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20200421BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20200421BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20200421BHJP
【FI】
   B29C45/16
   B29C45/26
   B29L9:00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-120209(P2016-120209)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-222117(P2017-222117A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】松永 賢一
(72)【発明者】
【氏名】頼政 克久
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−228336(JP,A)
【文献】 特開2003−007108(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1360770(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/16,45/26−45/37
B29L9/00
B60Q1/00−1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の第1樹脂部と、前記第1樹脂部と少なくとも一部が重なるように接している第2樹脂部と、を備える二色成形品であって、
前記第1樹脂部は、第1の表面部と、前記第1の表面部が向く方向と異なる方向を向いた第2の表面部と、前記第1の表面部と前記第2の表面部とを連結する屈曲部と、を有し、
前記第2樹脂部は、
前記第1の表面部の一部を構成する第1の部分と重なるように該第1の部分の裏側に接している第1の積層領域と、
前記第1の表面部の一部を構成し、前記第1の部分と異なる第2の部分と重なるように該第2の部分の裏側に接している第2の積層領域と、
前記第1の積層領域と前記第2の積層領域との間に設けられ、前記第1の部分と前記第2の部分との間に形成された貫通部を充填するように設けられている単層領域と、を有し、
前記単層領域は、前記屈曲部と接する接合部を有し、
前記接合部は、前記屈曲部に対して凸状に形成されていることを特徴とする二色成形品。
【請求項2】
前記接合部は、曲面を有していることを特徴とする請求項1に記載の二色成形品。
【請求項3】
前記接合部は、全体が曲面であることを特徴とする請求項1または2に記載の二色成形品。
【請求項4】
前記接合部は、前記曲面のRが1〜3mmの範囲にあることを特徴とする請求項2または3に記載の二色成形品。
【請求項5】
前記接合部は、前記単層領域の内部から表面に向かって前記屈曲部から離れるように形成された傾斜面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二色成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形の一方法として、1次成形品を形成した後に、その周囲に2次成形品を形成することで二色成形品を作製する技術が知られている。二色成形の技術は、例えば、車両のヘッドランプ等の灯具の透光カバーを作製する際に用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−176974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1次成形品と2次成形品との界面が外部から視認できる場合、界面が光って見えることがあり、二色成形品の外観品質の低下を招きかねない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二色成形品における外観品質を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の二色成形品は、所定形状の第1樹脂部と、第1樹脂部と少なくとも一部が重なるように接している第2樹脂部と、を備える二色成形品であって、第1樹脂部は、第1の表面部と、第1の表面部が向く方向と異なる方向を向いた第2の表面部と、第1の表面部と第2の表面部とを連結する屈曲部と、を有する。第2樹脂部は、第1の表面部の一部を構成する第1の部分と重なるように該第1の部分の裏側に接している第1の積層領域と、第1の表面部の一部を構成し、第1の部分と異なる第2の部分と重なるように該第2の部分の裏側に接している第2の積層領域と、第1の積層領域と第2の積層領域との間に設けられ、第1の部分と第2の部分との間に形成された貫通部を充填するように設けられている単層領域と、を有する。単層領域は、屈曲部と接する接合部を有する。接合部は、屈曲部に対して凸状に形成されている。
【0007】
この態様によると、第1樹脂部の屈曲部と第2樹脂部の接合部との界面は平坦でない。そのため、第1樹脂部および第2樹脂部の一方の側から界面を見た際に外光がそのまま視認者に反射される割合が低減され、二色成形品の外観品質が向上する。
【0008】
接合部は、曲面を有していてもよい。これにより、第1樹脂部および第2樹脂部の一方の側から界面を見た際に外光がそのまま視認者に反射される割合が更に低減される。また、接合部は、全体が曲面であってもよい。
【0009】
接合部は、曲面のRが1〜3mmの範囲にある。これにより、外光が散乱しやすくなるともに、金型の角に樹脂が充填されない未充填領域の発生を低減できる。
【0010】
接合部は、単層領域の内部から表面に向かって屈曲部から離れるように形成された傾斜面を有してもよい。これにより、第1樹脂部の屈曲部側から見た際に接合部の一部がより離れて見えるので、界面での外光の反射の影響を低減できる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二色成形品における外観品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】参考例に係る二色成形品の要部断面斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す二色成形品のA−A断面図、図2(b)は、図1に示す二色成形品のB−B断面図、図2(c)は、図1に示す二色成形品のC−C断面図である。
図3図3(a)は、図2(b)に示す領域Rの拡大図、図3(b)は、図3(a)に示す隙間に第2樹脂部が侵入した状況示す図である。
図4】実施の形態に係る二色成形品の要部断面斜視図である。
図5図4に示す二色成形品のB’−B’断面図である。
図6図6(a)、図6(b)は、本実施の形態に係る射出成形方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面等を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0015】
(参考例)
はじめに、二色成形品において問題となりうる現象を参考例を用いて説明する。図1は、参考例に係る二色成形品の要部断面斜視図である。図2(a)は、図1に示す二色成形品のA−A断面図、図2(b)は、図1に示す二色成形品のB−B断面図、図2(c)は、図1に示す二色成形品のC−C断面図である。
【0016】
二色成形品10は、所定形状の第1樹脂部12と、第1樹脂部12と少なくとも一部が重なるように接している第2樹脂部14と、を備える。第1樹脂部12は、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明な樹脂材料で構成されており、二色成形品10が使用される態様においては外側(表側)に配置されている。
【0017】
第1樹脂部12は、断面が略L字状であり、図1の左右方向に向かって伸びている第1の表面部12aと、第1の表面部12aが向く方向と異なる、図1の上下方向に向かって伸びている第2の表面部12bと、第1の表面部12aと第2の表面部12bとを連結する屈曲部12cと、を有する。
【0018】
第2樹脂部14は、第1の表面部12aの一部を構成する第1の部分12a1と重なるように第1の部分12a1(図2(a)参照)の裏側に接している第1の積層領域14aと、第1の表面部12aの一部を構成し、第1の部分12a1と異なる第2の部分12a2(図2(c)参照)と重なるように第2の部分12a2の裏側に接している第2の積層領域14bと、第1の積層領域14aと第2の積層領域14bとの間に設けられ、第1の部分12a1と第2の部分12a2との間に形成された貫通部16を充填するように設けられている単層領域14cと、を有する。第2樹脂部14は、不透明な有色(具体的には黒色や灰色)の樹脂材料で構成されている。
【0019】
このように構成された二色成形品10を車両用灯具の前照灯の構成部品として使用する場合、第1樹脂部12が表側となるように配置し、かつ第1の表面部12aが車両前方を向くように配置すると、以下のような現象が発生することがある。
【0020】
図1に示す二色成形品10においては、1次成形品として第1樹脂部12を形成した後、第1樹脂部12の一部と積層するように2次成形品として第2樹脂部14を形成する。2次成形品を形成する際に用いる金型においては、第1の積層領域14aや第2の積層領域14bに対応するキャビティが狭いため、第2樹脂部14を形成する際のガスが抜けにくい。そこで、二色成形品10の2次成形品を形成する際に用いる金型においては、射出成形時のガスが抜けやすいように、貫通部16に対応する形状のキャビティが形成されるように構成されている。
【0021】
これにより、第2樹脂部14の第1の積層領域14aや第2の積層領域14bの奥側(充填末端部)にガスGが残存して気泡(欠肉)になることが抑制される。しかしながら、貫通部16を設けることで別の問題が生じうる点に本願発明者らは想到した。
【0022】
第2樹脂部14は、貫通部16を充填するように形成された単層領域14cを有する(図2(b)参照)。単層領域14cは、第1の表面部12aに近いところまで充填されており、透明な第1樹脂部12と接する接合部18は平坦である。この場合、前方から矢印Lの方向を見た視認者は、接合部18における反射光によって第1の表面部12aの一部が光って見える。
【0023】
図3(a)は、図2(b)に示す領域Rの拡大図、図3(b)は、図3(a)に示す隙間に第2樹脂部14が侵入した状況示す図である。
【0024】
二色成形品10においては、第1樹脂部12を形成した後に第2樹脂部14を射出成形によって形成する。第1樹脂部12を形成する際には、単層領域14cに相当する部分に1次コア側金型が配置された状態で、第1樹脂部12を形成する第1の樹脂材料が充填される。その際、金型のキャビティの角まで樹脂材料が充填できずに0.01mm前後の微小なノッチ(隙間)Nが形成される場合がある。ノッチNは、必ずしも連続的でなく、分散して複数形成される場合もあり、図2(b)に示すように、前方から矢印Lの方向を見た視認者は、ノッチNによる散乱光を認識することとなり、外観品質の低下の一因となりうる。
【0025】
更に、図3(a)に示すノッチNを有する第1樹脂部12に対して、第2樹脂部14を2次成形品として射出成形すると、ノッチNが部分的に充填されて充填部20(図3(b)参照)が形成される。あるいは、ノッチNの全領域に充填された場合に、接合部18の端部ラインが必ずしも均一な直線にならない。このような場合も、前方から矢印Lの方向を見た視認者は、点在する充填部20による散乱光や、不均一な端部ラインを認識することとなり、外観品質の低下の一因となりうる。
【0026】
(実施の形態)
上述の事情を鑑みて本願発明者らは下記の構成の二色成形品に想到した。図4は、実施の形態に係る二色成形品の要部断面斜視図である。図5は、図4に示す二色成形品のB’−B’断面図である。
【0027】
本実施の形態に係る二色成形品100は、参考例に係る二色成形品10と比較して、第2樹脂部の単層領域の構成が異なる。その他の構成については、二色成形品10とほぼ同じ構成であり、同様の構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0028】
二色成形品100は、単層領域102において、屈曲部12cと接する接合部104を有する。接合部104は、屈曲部12cに対して凸状に形成されている。これにより、第1樹脂部12の屈曲部12cと第2樹脂部14の接合部104との界面は平坦でない。そのため、第1樹脂部12の側から界面を見た際に外光がそのまま視認者に反射される割合が低減され、二色成形品100の外観品質が向上する。なお、接合部104は、屈曲部12cに対して楔状に形成されていてもよい。
【0029】
本実施の形態に係る接合部104は、曲面を有している。これにより、第1樹脂部12の側から界面を見た際に外光がそのまま視認者に反射される割合が更に低減される。また、本実施の形態に係る接合部104は、全体が曲面であるが、一部に平坦面が含まれていてもよい。
【0030】
接合部104は、曲面のRが1〜3mmの範囲にある。これにより、外光が散乱しやすくなるともに、金型の角に樹脂が充填されない未充填領域の発生を低減できる。
【0031】
接合部104は、単層領域102の内部から表面(図5の右側面)に向かって屈曲部12cから離れるように形成された傾斜面を有しているということもできる。これにより、第1樹脂部12の屈曲部12c側から見た際に接合部104の一部がより離れて見えるので、界面での外光の反射の影響を低減できる。
【0032】
図6(a)、図6(b)は、本実施の形態に係る射出成形方法を示す工程図である。はじめに、図6(a)に示すように、1次コア側金型110とキャビティ側金型112とを型締めする。そしてこの状態で、加熱シリンダから供給される透明の樹脂材料114を1次空間部C1に射出して1次成形品116を成形する。
【0033】
次に、1次コア側金型110とキャビティ側金型112とを型開きし、1次コア側金型110を2次コア側金型118に交換し、2次コア側金型118とキャビティ側金型112とを型締めする。そしてこの状態で、加熱シリンダから供給される有色(黒色)の樹脂材料120を2次空間部C2に射出して2次成形品122を成形する。これにより、1次成形品116と2次成形品122とが一体化されてなる二色成形品100を完成させる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0035】
10 二色成形品、 12 第1樹脂部、 12a 第1の表面部、 12b 第2の表面部、 12c 屈曲部、 14 第2樹脂部、 14a 第1の積層領域、 14b 第2の積層領域、 14c 単層領域、 16 貫通部、 18 接合部、 20 充填部、 100 二色成形品、 102 単層領域、 104 接合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6