(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吐出端に散水部を備えるとともに内部に2系統の流水路を有するシャワーヘッド本体と、該シャワーヘッド本体に設けられ、前記2系統の流水路にそれぞれ対応する散水孔を有する散水板と、前記シャワーヘッド本体に設けられた押し込み式の操作ボタンと、該操作ボタンの押し込み操作に応じて作動することで、一方の流水路とこれに対応する散水孔とを連通または遮断する弁装置と、前記操作ボタンと前記弁装置との間に介装され、該操作ボタンの押し込み操作に基づいて前記弁装置を揺動させる係合機構を備えたシャワーヘッドであって、
前記係合機構は、前記シャワーヘッド本体内において水の流れる部位から隔壁によって区画された係合機構室内に収容されており、
前記操作ボタンは、前記係合機構室内に押し込まれるように構成されており、
前記弁装置は、前記隔壁を貫通し、且つ、前記係合機構によって回動される揺動軸と接続されていることを特徴とするシャワーヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2のシャワーヘッドには、以下のような問題がある。
【0009】
すなわち、環状カムと環状カムとを噛み合わせる(係合させる)ラチェット機構や、カム溝とガイドピンとを協働させる機構では、ガタつきや作動不良を抑えるべく、各部材の加工精度や組み立て精度が厳しく設定される。にもかかわらず、特許文献1や特許文献2のものでは、ヘッド本体内において、これらの機構が流水に晒される構造となっているため、例えば流水に含まれる異物が、環状カムと環状カムとの間やカム溝に挟まったりした場合には、作動不良が生じて吐水態様の切り替えが困難になるおそれや、最悪の場合にはシャワーヘッドの故障を招くおそれがある。
【0010】
このような問題を解決するために、例えばパッキン等の防水部材を多数用いて、係合機構の止水性を高めることも考えられるが、これでは、部品点数が増えることで構造が複雑になるという問題や製造コストが上昇するという問題がある。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シャワーヘッド本体に設けられた操作ボタンの操作により内部に設けられた弁装置を動かして
流水路を開閉するシャワーヘッドにおいて、簡単な構造で、流水に含まれる異物等により弁装置の作動に不具合が生じるのを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るシャワーヘッドでは、
流水路や弁装置が収容される弁室などのごとき水が流れる部位と、弁装置を駆動させる機構とを、隔壁を介して分離するようにしている。
【0015】
すなわち、本発明は、吐出端に散水部を備えるとともに内部に2系統の流水
路を有するシャワーヘッド本体と、該シャワーヘッド本体に設けられ、前記2系統の流水路にそれぞれ対応する散水孔を有する散水板と、前記シャワーヘッド本体に設けられた押し込み式の操作ボタンと、該操作ボタンの押し込み操作に応じて作動することで、一方の流水路とこれに対応する散水孔とを連通または遮断する弁装置(実施例では切替弁)と
、前記操作ボタンと前記弁装置との間に介装され、該操作ボタンの押し込み操作に基づいて前記弁装置を
揺動させる係合機構
を備え
たシャワーヘッドであって、前記係合機構は、前記シャワーヘッド本体内において水の流れる部位から隔壁によって区画された係合機構室内に収容されて
おり、前記操作ボタンは、前記係合機構室内に押し込まれるように構成されており、前記弁装置は、前記隔壁を貫通し、且つ、前記係合機構によって回動される揺動軸と接続されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成
によれば、係合機構が流水路や弁室などのような水の流れる部
位から隔壁によって区画された係合機構室内に収容されていることから、精密な作動が要求される係合機構が流水に晒されるのを抑制することができる。これにより、パッキン等の防水部材を多数用いることなく、簡単な構造で、流水に含まれる異物等により係合機構に不具合が生じるのを抑えることができる。
【0018】
また、操作ボタンが係合機構室内に押し込まれるように構成されていることから、換言すると、係合機構のみならず操作ボタン(乃至これに直結される部材等)も流水に晒されない構成となっていることから、防水パッキン等が収縮するような水圧がかかった状態で操作ボタンの押し込み(直線運動)を行う必要がないので、操作ボタンの操作性を高めることができる。
【0019】
また、弁装置は、隔壁を貫通する揺動軸を介して係合機構と接続されていることから、換言すると、流水路側では回転運動だけが行われることから、防水パッキンが収縮するような水圧がかかった状態で直線運動が行われるのとは異なり、弁装置をスムーズに揺動させることができる。
【0020】
さらに、前記シャワーヘッドでは、前記操作ボタンの押し込み方向および前記係合機構の係合方向は、前記散水部の散水面と平行であることが好ましい。
【0021】
例えば、操作ボタンの押し込み方向が散水面と直交する場合や、係合機構の係合方向が散水面と直交する場合には、シャワーヘッド本体を相対的に大きくしたり、係合機構の構成を複雑にしたりしなければ、一般的に流水路が狭くなる傾向にある。この点、この構成によれば、操作ボタンの押し込み方向および係合機構の係合方向が共に散水面と平行であることから、シャワーヘッド本体を相対的に大きくしたり、係合機構の構成を複雑にしたりすることなく、相対的に広い流路面積を確保することができる。
【0022】
そうして、前記係合機構の具体例として、前記係合機構は、前記操作ボタンをスライド可能に支持する筒状のホルダーと、前記ホルダー内にスライド可能に設けられたロッドと、前記ロッドを前記操作ボタンの押し込み方向と反対方向に付勢するばねと、前記ホルダー内で前記操作ボタンと前記ロッドとの間に設けられた回転子と、を備え、前記操作ボタンの押し込み操作に基づいて前記回転子が回転することで、前記回転子に設けられた複数のカムが、前記ホルダーの内周面に設けられた複数のカム条体の間に挿入される第1係合状態と、該複数のカムが該複数のカム条体における前記ばね側の端部に引っ掛る第2係合状態とに切り替わるノック機構であることが好ましい。
【0023】
このように、弁装置を揺動させる係合機構として所謂ノック機構を採用することで、簡単な構造を有し且つコンパクトな係合機構を実現することができ、これにより、係合機構室乃至シャワーヘッド本体のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
また、ノック機構を採用する場合の前記シャワーヘッドの具体例として、前記隔壁を貫通し、前記流水路側で前記弁装置と接続される揺動軸と、前記揺動軸の前記係合機構室側の端部に接続され、付勢手段によって付勢されることで、前記弁装置を連通および遮断の一方の状態に維持するカム部材と、をさらに備え、前記ノック機構は、前記第1係合状態から前記第2係合状態に切り替わる際に、前記ロッドに設けられたアームが前記カム部材を付勢力に抗して回動させることで、前記弁装置を連通および遮断の他方の状態に切り替えるように構成されていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、付勢手段およびカム部材(以下、これらを併せてカム機構ともいう)並びにノック機構を用いて、弁装置を連通(または遮断)状態に容易に維持することができるとともに、遮断(または連通)状態に容易に切り替えることができる。加えて、ノック機構のみならずカム機構も係合機構室内に収容されるので、付勢手段およびカム部材として、金属部材や耐食性を有しない部材などを用いることができ、これにより、設計自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように本発明に係るシャワーヘッドによれば、簡単な構造で、流水に含まれる異物等により、操作ボタンや係合機構に不具合が生じるのを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係るシャワーヘッドを模式的に示す斜視図である。このシャワーヘッドは、
図1に示すように、使用者が手に持つ握り部3の先端部にヘッド部1が取り付けられていて、これらヘッド部1と握り部3とで本発明のシャワーヘッド本体2を構成している。握り部3とヘッド部1は互いにねじ結合されており、握り部3の根元が図示しないシャワーホースに連結されるようになっている。握り部3
の内部には、図示しないが、シャワーホースより送られてくる水(お湯を含む)をヘッド部1に導く導水路が設けられて
いる。
【0030】
なお、
図1中の符号5は、ヘッド部1の意匠性を高めるためのエンボス模様である。
【0031】
以下では、説明の便宜上、ヘッド部1に設けられた散水板4に直交する方向を前後方向とし、前後方向における散水板4側を前側(正面側)とし、前後方向におけるヘッドカバー15側を後側(背面側)とする。また、散水板4に平行な方向における操作ボタン20側を上側とする。
【0032】
図2は、ヘッド部1を模式的に示す正面図である。
図2に示すように、散水板4は、その中央部に密集して放射状に形成された複数のジェット水流吐水孔(散水孔)4aと、該ジェット水流吐水孔4aの周りに互いに離間して放射状に形成された複数のシャワー水流吐水孔(散水孔)4bと、を有している。このように、ジェット水流吐水孔4aとシャワー水流吐水孔4bとを設けることで、ヘッド部1に供給された流水を、散水板4の中央部から太い流線の束として放出するジェット水流と、散水板4の外周縁部から多数の細い流線として放出するシャワー水流との吐水とが可能となっている。そして、本実施形態のヘッド部1では、該ヘッド部1自体に設けられた操作ボタン20の押し込み操作により、ジェット水流のみが行われるジェット水流吐水モードと、ジェット水流吐水に加えてシャワー水流も行われる複合吐水モードと、を切り替えることが可能となっている。
【0033】
図3は、ヘッド部1を模式的に示す側面図であり、同図(a)はヘッドカバー15を取り付けた状態を示し、同図(b)はヘッドカバー15を取り外した状態を示している。また、
図4は、ヘッド部1を模式的に示す背面図であり、同図(a)はヘッドカバー15を取り付けた状態を示し、同図(b)はヘッドカバー15を取り外した状態を示している。
【0034】
上述の如く、本実施形態のヘッド部1では、操作ボタン20の押し込み操作により吐水モードを切り替え可能となっているが、操作ボタン20乃至これに直結される部材等に直接水圧がかかると、操作ボタン20の操作性が低下する場合がある。また、吐水モードを切り替えるための機構40,50が流水に晒されると、流水に含まれる異物等により機構40,50に不具合が生じる場合がある。そこで、本実施形態では、
図3(b)および
図4(b)に示すように、ヘッド部1内における水が流れる部位(流水通路11fや弁室10dなど)から区画された係合機構室10c内に、操作ボタン20や各種機構40,50を収容するようにしている。以下、このような構造を実現可能な具体的な構成について詳述する。
【0035】
−全体構成−
図5は、ヘッド部1の分解斜視図である。また、
図6は、ヘッド部1を模式的に示す図であり、同図(a)は
図2のVIa−VIa線の断面図であり、同図(b)は
図2のVIb−VIb線の断面図である。
図5に示すように、ヘッド部1は主に、散水板4が取り付けられたヘッドキャップ12と、仕切台13と、メガネパッキン14と、弁球31と、ばねベース32と、弁ばね33と、揺動部材34と、ヘッドベース11と、トーションばね41と、カム部材42と、操作ボタン20と、ホルダー51と、回転子52と、ロッド53と、コイルばね54と、ヘッドカバー15と、から構成されている。
【0036】
機能的に区分すると、ヘッド部1は、
図6(a)および(b)に示すように、ヘッド部本体10と、ヘッド部本体10に設けられた散水板4と、ヘッド部本体10に設けられた押し込み式の操作ボタン20と、操作ボタン20の押し込み操作に応じて揺動することで吐水モードを切り替える切替弁30と、操作ボタン20と切替弁30との間に介装され、操作ボタン20の押し込み操作に基づいて切替弁30を揺動させるカム機構40およびノック機構50と、を備えている。この場合、ヘッド部本体10は主に、ヘッドベース11と、ヘッドキャップ12と、仕切台13と、メガネパッキン14と、ヘッドカバー15と、から構成されている。また、切替弁30は主に、弁球31と、ばねベース32と、弁ばね33と、揺動部材34と、から構成されている。さらに、カム機構40は主に、トーションばね41と、カム部材42と、から構成されている。また、ノック機構50は主に、ホルダー51と、回転子52と、ロッド53と、コイルばね54と、から構成されている。
【0037】
−ヘッド部本体−
図7は、ヘッド部本体10を模式的に示す、
図2のVIa−VIa線に相当する断面図である。このヘッド部本体10は、
図7に示すように、取付部11aに設けた流水通路11fに連なる弁室1
0を有し、この弁室10と隔壁11cによって区画された係合機構室10cを有している。上述の如く、ヘッド部本体10は主に、ヘッドベース11と、ヘッドキャップ12と、仕切台13と、メガネパッキン14(
図5および
図6(b)参照)と、ヘッドカバー15と、から構成されている。
【0038】
ヘッドベース11は、樹脂製の部材であり、
図7に示すように、内部に前記流水通路11fが形成されて前記握り部3に連結される取付部11aと、前後方向に延びる略筒状のベース本体11bと、ベース本体11bを前後に仕切る隔壁11cと、切替弁30を支持する筒状のホルダー11dと、を有している。取付部11aは、ベース本体11bの下端部に接続されていて、その内部の流水通路11fがベース本体11bにおける隔壁11cよりも前側の空間、すなわち弁室10dと連通している。ベース本体11bは、前側の開口が円形に形成されている一方、後側の開口が略楕円形に形成されている。隔壁11cには貫通孔11eが形成されている。ホルダー11dは、その内周面が貫通孔11eの孔壁と面一となるように、隔壁11cから前側に延びている。なお、隔壁11cの後側面には、後述するノック機構50を固定するためのボス部11gや、トーションばね41を支持するための支柱11hや、カム機構40の回転を規制するためのストッパ11i(
図5および
図8参照)等が突設されている。
【0039】
ヘッドキャップ12は、樹脂製の部材であり、大径円筒状のキャップ本体12aと、散水板4においてジェット水流吐水孔4aとシャワー水流吐水孔4bとを仕切る小径円筒状の仕切り壁12bと、を有している。ヘッドキャップ12は、円筒状のキャップ本体12aの前側の開口部に散水板4が取り付けられることで有底筒状をなしている。なお、これら大径円筒状のキャップ本体12aと小径円筒状の仕切り壁12bおよび散水板4は、モールド成形により一体化されている。
【0040】
ヘッドキャップ12は、キャップ本体12aの内周面に形成された雌ネジと、ベース本体11bの前端部の外周面に形成された雄ネジとを螺合させることで、ヘッドベース11に取り付けられる。このように、ヘッドキャップ12が取り付けられて、ベース本体11bの前側の開口が塞がれることで、流水通路11fを通過した水が供給される弁室10dがヘッド部本体10内に形成される。
【0041】
仕切台13は、樹脂製の部材であり、大径の外側筒部13aと、小径の内側筒部13bと、外側筒部13aの後端部と内側筒部13bの後端部とを繋ぐ円環状の仕切プレート13cと、を有していて、略有底筒状に形成されている。外側筒部13aの外周面には鍔部13dが設けられている。仕切プレート13cには、メガネパッキン14の外形と略同形の凹部13eが形成されていて(
図5および
図6(b)参照)、該凹部13eにメガネパッキン14が後側から嵌め込まれるようになっている。
【0042】
メガネパッキン14は、ゴム製の部材であり、後記
図9(b)および
図10(b)に示すように、切替弁30の揺動軌跡に応じた形状に形成されている。メガネパッキン14の一方側の端部には前後方向に貫通する流水孔14aが形成されている(
図5および
図6(b)参照)。仕切プレート13cの凹部13e内には、前後方向に貫通する弁孔13fが形成されており(
図6(b)参照)、メガネパッキン14を凹部13eに嵌め込むと、流水孔14aと弁孔13fとが連通するようになっている。
【0043】
このように構成された仕切台13は、鍔部13dがベース本体11bとヘッドキャップ12とに挟まれることで、ヘッドベース11に固定される。仕切台13がヘッドベース11に固定された状態では、内側筒部13bがヘッドキャップ12の仕切り壁12bの内側に嵌るようになっている。これにより、ヘッド部本体10の前端部には、散水板4と内側筒部13bとで区画される円柱状の空間と、散水板4と内側筒部13bと仕切プレート13cと外側筒部13aとで区画される円環状の空間と、が形成される。なお、仕切台13の鍔部13dには、位置決めのための切欠き13g等が設けられており(
図5参照)、メガネパッキン14の流水孔14aおよび仕切プレート13cの弁孔13fは、それらの中心が正面視で必ず9時の位置になるように構成されている。
【0044】
なお、「正面視で9時の位置」とは、
図2に示すように、散水板4の中央を原点とし、上下方向をY方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向をX方向とし、
図2に示すX軸を0°とし、正面視で反時計回りを正とした場合の180°の方向にある位置を意味する。
【0045】
以上のように、ヘッドベース11と、ヘッドキャップ12と、メガネパッキン14が嵌め込まれた仕切台13と、を組み合わせることで、ヘッド部本体10内には2系統の流水路10a,10
bが形成されることになる。第1流水路10aは、流水通路11fを通った水が、弁室10dへ供給され、上記円柱状の空間を通ってジェット水流吐水孔4aから吐水される経路であり、ジェット水流吐水モードおよび複合吐水モードの両吐水モードで用いられる。また、第2流水路10bは、流水通路11fを通った水が、弁室10dへ供給され、メガネパッキン14の流水孔14aおよび仕切プレート13cの弁孔13fを通った後、上記円環状の空間を通ってシャワー水流吐水孔4bから吐水される経路であり、複合吐水モードでのみ用いられる。
【0046】
ヘッドカバー15は、樹脂製の部材であり、球面を略楕円状に切り取ったような形状に形成されている。ヘッドカバー15の上端部には、操作ボタン20を挿通するための断面楕円形の挿通孔15aが形成されている。ヘッドカバー15は、後述するように係合機構室10cに配置された操作ボタン20が挿通孔15aに挿通されるように、ヘッドベース11に対し該ヘッドカバー15を上側から被せることで、ヘッドベース11に嵌るとともに、締結ボルト(図示せず)によってヘッドベース11に固定されることで、ベース本体11bの後側の開口を塞ぐようになっている。これにより、ヘッド部本体10の後端部には、隔壁11cによって第1および第2流水路10a,10bから区画されるとともに、ヘッドカバー15によって外部から区画された、カム機構40およびノック機構50を収容するための係合機構室10cが形成されることになる。
【0047】
−切替弁(弁装置)−
上述の如く、切替弁30は主に、金属製の弁球31と、ゴム製のばねベース32と、金属製の弁ばね33と、揺動部材34と、から構成されている。揺動部材34は、樹脂製の部材であり、
図5および
図6に示すように、揺動軸34aと、有底筒状の弁体収容部34bと、揺動軸34aの先端部と弁体収容部34bとを繋ぐ接続部34cと、を有している。揺動軸34aは、ヘッドベース11の隔壁11cに設けられたホルダー11dおよび貫通孔11eに回転自在に挿入されており、これにより、揺動部材34は揺動軸34a周りに揺動可能となっている。より具体的には、
図9(b)および
図10(b)に示すように、揺動部材34は、操作ボタン20の押し込み操作に応じて、弁体収容部34bの中心が、正面視で9時の位置(
図9(b)参照)と、正面視で略7時半の位置(
図10(b)参照)と、を採るように構成されていて、その間で揺動可能となっている。揺動軸34aには、軸方向に離間して2条の溝34dが全周に亘って形成されている。これら2条の溝34dには、Oリング35がそれぞれ嵌められており、これにより、ホルダー11dおよび貫通孔11eと揺動軸34aとの間の隙間を通って、弁室10d内の水が係合機構室10cに浸入するのを防止することができる。なお、「正面視で略7時半の位置」とは、
図2において略228°の方向にある位置を意味する。
【0048】
弁ばね33、ばねベース32および弁球31は、この順で弁体収容部34bに収容されており、弁球31は弁ばね33によって前側に常時付勢されている。上述の如く、弁体収容部34bの中心が、正面視で9時の位置と略7時半の位置との間で揺動することから、弁球31はメガネパッキン14に常時押し付けられている。なお、弁ばね33と弁球31との間にばねベース32を介在させるのは、金属製の弁球31と金属製の弁ばね33とが直接接触することで弁球31の回転抵抗が増えるのを防止するとともに、弁球31が傷つくのを抑えるためである。
【0049】
このように構成された切替弁30では、弁球31(弁体収容部34bの中心)が、正面視で略7時半の位置にある場合には、弁室10dと第2流水路10bとが連通しているので、複合吐水モードとなる。これに対し、操作ボタン20の押し込み操作に応じて揺動部材34が揺動し、弁球31が正面視で9時の位置になると、弁球31がメガネパッキン14の流水孔14aに嵌り該流水孔14aを塞ぐことから、弁孔13fが閉塞され、弁室10dと第2流水路10bとの連通が遮断され、ジェット水流吐水モードとなる。
【0050】
ここで、樹脂製の仕切台13に形成された弁孔13fを金属製の弁球31で直接塞ごうとしても、硬質な弁球31によって硬質な仕切台13に形成された弁孔13fを完全に塞ぐのは困難である。この点、本実施形態では、仕切台13の凹部13eに嵌め込まれたメガネパッキン14に形成された流水孔14aを弁球31で塞ぐことから、弁ばね33の付勢力および弁球31の背面に加わる水圧によって弁球31が流水孔14aに押し付けられることで、流水孔14aが適度に変形して弁球31と密着するので、弁孔13fを完全に塞ぐことが可能となる。
【0051】
−カム機構−
図8は、カム機構40を模式的に示す背面図である。
図8では、図を見易くするために、ヘッドカバー15を取り外した状態を示すとともに、ノック機構50を図示省略している。上述の如く、カム機構40は主に、トーションばね41と、カム部材42と、から構成されている。
【0052】
カム部材42は、樹脂製の部材であり、第1カムアーム42aと、第2カムアーム42bと、を有していて、略L字状に形成されている。カム部材42は、揺動部材34の揺動軸34aにおける、貫通孔11eから係合機構室10c側に飛び出した端部に、C型クリップ43によって固定されている。第1カムアーム42aには、トーションばね41の端部41bを引っ掛けるための係止ストッパ42cが設けられている。
【0053】
トーションばね41は、金属製の部材であり、隔壁11cの後側面に突設された支柱11hに巻き回されている。トーションばね41は、その一方の端部41aが、隔壁11cの後側面に突設されたボス部11gに形成された係止板11jに係止している一方、その他方の端部41bが、第1カムアーム42aの係止ストッパ42cに係止しており、これにより、カム部材42を背面視で反時計回りの方向に常時付勢している。
【0054】
このように、カム部材42はトーションばね41によって背面視で反時計回りの方向に常時付勢されているが、隔壁11cの後側面に突設されたストッパ11iに第2カムアーム42bが当接することで、
図8に示すように、第2カムアーム42bが略水平方向に延びた状態に維持されている。ここで、カム部材42は、揺動軸34aから弁体収容部34bの中心への向きと、揺動軸34aから第2カムアーム42bが延びる向きとが略一致するように、揺動軸34aに固定されている。それ故、第2カムアーム42bがストッパ11iに当接することで、カム部材42が
図8に示す姿勢を採っているときには、切替弁30は、
図9(b)に示す状態に、換言すると、弁球31が正面視で9時の位置になり、第2流水路10bとシャワー水流吐水孔4bとの連通を遮断する状態になっている。つまり、カム機構40は、トーションばね41の付勢力により第2カムアーム42bがストッパ11iに当接している状態では、切替弁30をジェット水流吐水モードに維持する機能を果たしている。
【0055】
一方、トーションばね41の付勢力に抗して、カム部材42が背面視で時計回りに回転すると、切替弁30が正面視で反時計回りに揺動し、第2流水路10bとシャワー水流吐水孔4bとが連通状態になる。
【0056】
−ノック機構(係合機構)−
図9は、操作ボタン20が押し込まれていない状態を模式的に示す図であり、同図(a)はノック機構50の係合状態を示す背面図であり、同図(b)は切替弁30の状態を示す正面図である。また、
図10は、操作ボタン20が押し込まれた状態を模式的に示す図であり、同図(a)はノック機構50の係合状態を示す背面図であり、同図(b)は切替弁30の状態を示す正面図である。なお、
図9(a)および
図10(a)では、図を見易くするために、筒状のホルダー51のうち該ホルダー51の内周面に設けられたカム条体51fのみを示している。また、
図9(b)および
図10(b)では、図を見易くするために、メガネパッキン14の配置位置を破線で表現している。
【0057】
本実施形態のノック機構50は、オルターネイト機構であり、主に、ホルダー51と、回転子52と、ロッド53と、コイルばね54と、から構成されている。なお、操作ボタン20についてもノック機構50と一緒に説明する。
【0058】
ホルダー51は、樹脂製の部材であり、断面円形の下側筒部51aと、該下側筒部51aの上側に段差を介して接続された断面楕円形の上側筒部51bと、を有していて、全体として筒状に形成されている(
図4(b)および
図5参照)。上側筒部51bは、下側筒部51aの半径と同じ短軸半径を有している。ホルダー51は、その両側部に設けられた取付部51cが、締結ボルト(図示せず)によってボス部11gに取り付けられることで、その筒軸が上下方向と一致し且つ上側筒部51bの短軸が前後方向と一致した姿勢でヘッド部本体10に固定されている。ホルダー51の上下方向における中央部よりも上側の部位には、該ホルダー51内にその一部が挿入される操作ボタン20をスライド可能且つ抜出し不能に支持するための上下に延びるスリット溝51dが、前側と後側とにそれぞれ1条ずつ形成されている(
図5参照)。また、ホルダー51の上下方向における中央部よりも下側の部位には、該ホルダー51内にスライド可能に設けられるロッド53のアーム53cが該ロッド53の上下移動に伴って移動できるように、上下に延びるスリット溝51eが形成されている(
図6(b)参照)。
【0059】
さらに、ホルダー51の内周面には、
図9(a)および
図10(a)に示すように、上下方向における中央部よりも上側に、軸方向に延びるカム条体51fが周方向に離間して3条設けられている。各カム条体51fは、ホルダー51内における回転子52の移動範囲に対応する長さを有している。各カム条体51fの下端部には、周方向に並ぶ2つの掛止歯51g、51hが形成されている。
【0060】
操作ボタン20は、樹脂製の部材であり、円形筒状のノック部20aと、該ノック部20aの上側に段差を介して接続された有頂楕円筒状の操作部20bと、を有していて、全体として有頂筒状に形成されている。ノック部20aの下端部は鋸状に形成されている。操作部20bは、ノック部20aの半径と同じ短軸半径を有している。この操作ボタン20の短軸の両端部には、係止フック20cが設けられている。
【0061】
このように構成された操作ボタン20は、操作部20bの短軸と、ホルダー51の上側筒部51bの短軸とが一致するような姿勢で、上方からノック部20aをホルダー51に差し込むと、弾性変形した係止フック20cがスリット溝51dに嵌るようになっている。このように、係止フック20cがスリット溝51dに一旦嵌ると、操作ボタン20は、係止フック20cがスリット溝51dの上縁部に引っ掛ることで、ホルダー51から上方に抜けることなく、スライド可能にホルダー51に支持されることになる。なお、操作ボタン20は、最も上昇した状態では、係止フック20cがスリット溝51dの上縁部に当接するとともに、操作部20bがホルダー51の上側筒部51bから上方に突出する一方、使用者の押し込み操作により最も下降した状態では、操作部20bがホルダー51の上側筒部51b内に収容されるようになっている。なお、「最も下降した状態」とは、正確には、後述する「過渡的な状態」を除いて最も下降した状態を意味する。
【0062】
コイルばね54は、ホルダー51内で一番下に配置されていて、係合機構室10cの底面から反力をとるようになっている。
【0063】
ロッド53は、樹脂製の部材であり、
図5に示すように、相対的に大径の下側筒部53aと、該下側筒部53aの上側に段差を介して接続された相対的に小径の上側筒部53bと、を有していて、全体として筒状に形成されている。ロッド53は、その筒軸がホルダー51の筒軸と同心になるように、ホルダー51内にスライド可能に収容されている。下側筒部53aには、コイルばね54の上端部が収容されており、これにより、ロッド53はコイルばね54によって上方に常時付勢されるようになっている。一方、上側筒部53bの側部には、スリット溝51eを通ってホルダー51の外側に延びるアーム53cが設けられている。アーム53cは、ホルダー51の外側に出た後、前側に曲がって、カム部材42の第2カムアーム42bの上端面に当たるような形状に形成されている。
【0064】
回転子52は、樹脂製の部材であり、相対的に大径の下側筒部52aと、該下側筒部52aの上側に段差を介して接続された相対的に小径の上側筒部52bと、を有していて、全体として筒状に形成されている。回転子52は、その筒軸がホルダー51の筒軸と同心になるように、ホルダー51内における操作ボタン20とロッド53との間にスライド可能に収容されている。下側筒部52aの外周面には、ホルダー51の3条のカム条体51fにそれぞれ対応する3つのカム羽根52cが設けられている。各カム羽根52cの上端部には、カム条体51fの下端部に形成された掛止歯51g、51hの傾斜面と同じ傾きを有する傾斜面が形成されている。
【0065】
下側筒部52aには、ロッド53の上側筒部53bが収容されている。一方、上側筒部52bは操作ボタン20のノック部20aに収容されているとともに、カム羽根52cの上端が、鋸状に形成されノック部20aの下端部に当接している。これにより、操作ボタン20および回転子52は、ロッド53を介してコイルばね54によって上方に常時付勢されるようになっている。
【0066】
このように構成された回転子52は、
図9(a)に示すように、カム羽根52cがカム条体51fとカム条体51fとの間に挿入された場合に、最も上昇した状態となる一方、
図10(a)に示すように、カム羽根52cの上端が、カム条体51fの下端部に形成された掛止歯51hに係止した場合に、最も下降した状態となる。なお、この「最も下降した状態」も、正確には「過渡的な状態」を除いて最も下降した状態を意味する。
【0067】
より詳しくは、
図9(a)に示すように、カム羽根52cがカム条体51fとカム条体51fとの間に挿入されている場合には、回転子52は、周方向に拘束されているが上下方向には拘束されていないため、ホルダー51内を上下方向にスライドすることになる。それ故、コイルばね54の付勢力によってロッド53、回転子52および操作ボタン20が上方に押し上げられ、操作ボタン20の係止フック20cがスリット溝51dの上縁部に当接したときに、回転子52は最も上昇した状態となる。
【0068】
このような状態から、操作ボタン20が下方に押し込まれると、コイルばね54の付勢力に抗して回転子52およびロッド53が押し下げられる。そうして、係止フック20cがスリット溝51dの下縁部に当接するとともに、ノック部20aの下端部に当接しているカム羽根52cの上端が、カム条体51fの下端よりも下がると(これを過渡的な状態という)、回転子52に対する周方向の拘束がなくなるため、カム羽根52cの上端の傾斜面がノック部20aの鋸状の下端部を滑り、回転子52が回転する。ここで、操作ボタン20の押し込み操作を止めると、コイルばね54の付勢力によってロッド53、回転子52および操作ボタン20が上方に押し上げられるが、回転子52が回転したことで、カム羽根52cは、カム条体51fとカム条体51fとの間に挿入されるのではなく、カム条体51fの下端部に形成された掛止歯51gの傾斜面に当接する。このように、掛止歯51gの傾斜面に当接したカム羽根52cは、その上端の傾斜面が掛止歯51gの傾斜面を滑り、掛止歯51hに係止することになる。それ故、操作ボタン20の押し込み操作を止めた後も、
図10(a)に示すように、回転子52が最も下降した状態が維持されることになる。
【0069】
このような状態から、操作ボタン20が再び下方に押し込まれると、コイルばね54の付勢力に抗して回転子52およびロッド53が押し下げられる。そうして、ノック部20aの下端部に当接しているカム羽根52cの上端が、カム条体51fの下端よりも再び下がると(過渡的な状態)、カム羽根52cの上端の傾斜面がノック部20aの鋸状の下端部を滑り、回転子52が更に回転することになる。ここで、操作ボタン20の押し込み操作を止めると、コイルばね54の付勢力によってロッド53、回転子52および操作ボタン20が上方に押し上げられるが、回転子52が回転したことで、カム羽根52cは、掛止歯51gではなく掛止歯51hの傾斜面に当接することになる。このように、掛止歯51hの傾斜面に当接したカム羽根52cは、その上端の傾斜面が掛止歯51hの傾斜面を滑り、カム条体51fとカム条体51fとの間に再び挿入されることになる。それ故、
図10(a)に示す状態から、操作ボタン20の押し込み操作を行うと、
図9(a)に示す状態に戻ることになる。
【0070】
このように、ノック機構50は、操作ボタン20の押し込み操作に基づいて回転子52が回転することで、該回転子52に設けられたカム羽根52cが、ホルダー51の内周面に設けられたカム条体51fとカム条体51fとの間に挿入される第1係合状態と、カム羽根52cがカム条体51fの下端部に引っ掛る第2係合状態と、に切り替わるようになっている。
【0071】
以上のように構成されたヘッド部1では、
図9(a)に示すように、操作ボタン20が押し込まれていない場合には、カム羽根52cがカム条体51fとカム条体51fとの間に挿入されており、コイルばね54の付勢力によってロッド53、回転子52および操作ボタン20が最も上昇した状態(第1係合状態)となる。このとき、ロッド53に設けられたアーム53cは、トーションばね41によって付勢されてストッパ11iに当接している第2カムアーム42bの上端面に単に当たっているだけなので、第2カムアーム42bが略水平方向に延びた状態に維持される。それ故、切替弁30は、
図9(b)に示す状態に、換言すると、弁球31が正面視で9時の位置にあり、弁孔13fが塞がれて弁室10dと第2流水路10bとの連通を遮断する状態になっている。これらにより、操作ボタン20が押し込まれていない場合には、ジェット水流吐水モードが維持されることになる。
【0072】
一方、
図9(a)に示す状態から操作ボタン20が押し込まれた場合には、コイルばね54の付勢力に抗して押下げられた、ロッド53、回転子52および操作ボタン20が最も下降した状態(第2係合状態)となる。このように、第1係合状態から第2係合状態に切り替わる際に、ロッド53に設けられたアーム53cは、トーションばね41の付勢力に抗してカム部材42を背面視で時計回りに回転させるので、第2カムアーム42bが略水平方向に延びた状態から斜め下方に傾くことになる。そうして、第2係合状態では、カム羽根52cの上端がカム条体51fの掛止歯51hに係止していることから、
図10(a)に示すように、第2カムアーム42bが斜め下方に傾いた状態が維持される。それ故、切替弁30は、
図10(b)に示す状態に、換言すると、弁球31が正面視で略7時半の位置になり、弁孔13fを開き、弁室10dと第2流水路10bとが連通する状態に切り替わる。これらにより、操作ボタン20が押し込まれた場合には、ジェット水流吐水モードから複合吐水モードに切り替わることになる。
【0073】
さらに、
図10(a)に示す状態から操作ボタン20が押し込まれた場合には、カム羽根52cがカム条体51fとカム条体51fとの間に再び挿入され、コイルばね54の付勢力によってロッド53、回転子52および操作ボタン20が最も上昇した状態(第1係合状態)に戻る。このとき、ロッド53に設けられたアーム53cも上昇するので、トーションばね41の付勢力によってカム部材42が背面視で反時計回りに回転し、第2カムアーム42bが略水平方向に延びた状態に戻る。それ故、切替弁30は、
図9(b)に示す状態に戻るので、複合吐水モードからジェット水流吐水モードに切り替わることになる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態のヘッド部1によれば、流水通路11fに連なる弁室10dから隔壁11cによって区画された係合機構室10c内に、ノック機構50が収容されていることから、精密な作動が要求されるノック機構50が流水に晒されるのを抑制することができる。これにより、パッキン等の防水部材を多数用いることなく、簡単な構造で、流水に含まれる異物等によりノック機構50に不具合が生じるのを抑えることができる。
【0075】
また、ノック機構50のみならずカム機構40も係合機構室10c内に収容されているので、トーションばね41およびカム部材42として、金属部材や耐食性を有しない部材などを用いることができ、これにより、設計自由度を高めることができる。
【0076】
さらに、操作ボタン20が係合機構室10c内に押し込まれるように構成されていることから、換言すると、ノック機構50のみならず操作ボタン20も流水に晒されない構成となっていることから、防水パッキンが収縮するような水圧がかかった状態で操作ボタン20の押し込みを行う必要がないので、操作ボタン20の操作性を高めることができる。
【0077】
また、切替弁30は、隔壁11cを貫通する揺動軸34aを介してカム機構40およびノック機構50と接続されていることから、換言すると、弁室10d側では回転運動だけが行われることから、Oリング35が収縮するような水圧がかかった状態で直線運動が行われるのとは異なり、切替弁30をスムーズに揺動させることができる。
【0078】
さらに、操作ボタン20の押し込み方向およびノック機構50の係合方向が共に散水板4の散水面と平行であることから、ヘッド部本体10を相対的に大きくしたり、操作ボタン20およびノック機構50の構成を複雑にしたりすることなく、相対的に広い流路面積を確保することができる。
【0079】
また、切替弁30を揺動させる機構としてノック機構(オルターネイト機構)50を採用することで、簡単な構造を有し且つコンパクトな機構を実現することができ、これにより、係合機構室10c乃至ヘッド部本体10のコンパクト化を図ることができる。
【0080】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0081】
上記実施形態では、操作ボタン20が押し込まれていない状態ではジェット水流吐水モードとなる一方、操作ボタン20が押し込まれた状態では複合吐水モードとなるようにしたが、これに限らず、例えば、メガネパッキン14の流水孔14aおよび仕切プレート13cの弁孔13fの位置を変更することで、操作ボタン20が押し込まれていない状態では複合吐水モードとなる一方、操作ボタン20が押し込まれた状態ではジェット水流吐水モードとなるようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ジェット水流吐水のみが行われるジェット水流吐水モードと、ジェット水流吐水に加えてシャワー水流吐水も行われる複合吐水モードと、を切替えるようにしたが、これに限らず、例えば、ジェット水流吐水のみが行われるジェット水流吐水モードと、シャワー水流吐水のみが行われるシャワー水流吐水モードと、を切替えるように構成してもよい。
【0083】
さらに、上記実施形態では、ヘッド部本体10の上部(
図2の+Y方向)に操作ボタン20を配置したが、これに限らず、例えば、ヘッド部本体10の側部(
図2の+X方向や−X方向)に操作ボタン20を配置してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、係合機構としてノック機構50を採用したが、係合機構室10c内に収容され且つ相対的に広い流路面積を確保することができるのであれば、これに限らず、例えば、ノック機構50に代えてラチェット機構等を採用してもよいし、ノック機構50と共にラチェット機構等を併用してもよい。
【0085】
さらにまた、上記実施形態では、ヘッド部1内で流水通路11fを2つの第1流水路10aと第
2流水路10bに分岐して、切替弁30によりこれら流水路10a、10bを選択的に開閉することで、ジェット水流吐水のみが行われるジェット水流吐水モードと、ジェット水流吐水に加えてシャワー水流吐水も行われる複合吐水モードとに切り替えるシャワーヘッドについて説明したが、本発明はこれに制約されず、これらの構成を握り部3の内部に設けたシャワーヘッドであっても良い。
【0087】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。