(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688174
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】細胞培養容器,自動細胞培養装置,液体収容器,ロボットハンド及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/24 20060101AFI20200421BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20200421BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
C12M1/24
C12M1/00 C
B25J15/08 C
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-127618(P2016-127618)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-20(P2018-20A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】514090865
【氏名又は名称】株式会社アニマルステムセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 孝二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】長池 一博
【審査官】
松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−064112(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/156367(WO,A1)
【文献】
特表2009−502165(JP,A)
【文献】
特開2002−104476(JP,A)
【文献】
特開2003−276712(JP,A)
【文献】
特開2002−019884(JP,A)
【文献】
特開2015−202894(JP,A)
【文献】
特開2015−112704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/10
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養液が収容される容器本体と、
この容器本体の開口部に取り付けられるキャップと、
前記キャップによる閉栓状態が正常か否かを確認するためのマークとを備え、
前記マークとして、前記キャップ側に設けられる、開栓作業が行われる際に加えられる回転力を受け止めるための回転力受け部と、
前記容器本体側に設けられる基準マークとを備える細胞培養容器。
【請求項2】
前記回転力受け部は、前記キャップの外周面に設けられた突起部である請求項1記載の細胞培養容器。
【請求項3】
前記突起部の高さが1mm以上である請求項2記載の細胞培養容器。
【請求項4】
前記突起部が、開栓又は閉栓作業が行われる際の位置ずれを減じるか、又は開栓作業が行われる際の負荷を減じる作用を成す請求項2又は3記載の細胞培養容器。
【請求項5】
前記突起部の先端位置が、閉栓状態で前記キャップ方向から見た際に、前記容器本体の外周を超えない位置に配置されている請求2から4の何れか一項に記載の細胞培養容器。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の細胞培養容器を用いるもので、
撮像した画像のデータを出力する撮像部と、
この撮像部が撮像した前記マークの画像データを取得して、前記キャップが正常な閉栓状態にあるか否かを判断する制御装置とを備える自動細胞培養装置。
【請求項7】
容器状の本体と、前記本体の開口部に取り付けられるスクリューキャップとを備え、少なくとも開栓作業を、作業室内においてロボットハンドで行うことを想定した液体収容器であって、
前記キャップの外周部に設けられる突起部と、
前記開口部の周辺部に設けられ、前記突起部との相対的な位置関係によって、前記キャップが正常な閉栓位置にあるか否かを示す位置表示部とを備える液体収容器。
【請求項8】
前記位置表示部は、前記開口部の周辺を周方向に分割した領域を個別に識別できるように、複数配置されている請求項7記載の液体収容器。
【請求項9】
前記突起部の先端位置が、閉栓状態で前記キャップ方向から見た際に、前記本体の外周を超えない位置に配置されている請求項7又は8記載の液体収容器。
【請求項10】
請求項7から9の何れか一項に記載の液体収容器の開栓作業を行うロボットハンドであって、
2本以上の爪と、
前記位置表示部を撮像して認識するための撮像部と、
少なくとも1本の爪の先端に設けられ、前記突起部に係合させるための凹部とを備えるロボットハンド。
【請求項11】
前記爪が2本である請求項10記載のロボットハンド。
【請求項12】
前記凹部が2本以上の爪に設けられている請求項11記載のロボットハンド。
【請求項13】
請求項10から12の何れか一項に記載のロボットハンドを有するロボットアームと、
このロボットアームを制御する制御装置とで構成され、
前記制御装置は、前記ロボットハンドに設けられている撮像部が撮像した、前記液体収容器のキャップ及び位置表示部の画像のデータを取得すると、前記キャップの突起部と前記位置表示部との相対位置関係から、前記キャップが正常な閉栓位置にあるか否かを判断するロボットシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記キャップが正常な閉栓位置にあると判断すると、前記ロボットハンドにより前記キャップを把持し、前記ロボットハンドを開栓方向に、所定角度だけ回転させて前記液体収容器の開栓動作を行う請求項13記載のロボットシステム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記キャップが正常な閉栓位置に無いと判断すると、前記ロボットハンドにより前記キャップを把持し、前記ロボットハンドを閉栓方向に、所定角度だけ回転させて前記液体収容器の閉栓動作を行った後、閉栓した液体収容器の廃棄処理を行う請求項13又は14記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養容器,自動細胞培養装置,液体収容器,その収容器を取り扱うロボットハンド及びそのロボットハンドを備えて構成されるロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットが医薬や医療に関連した作業を行うために適用されている。そこで、作業領域内にロボットのアームを配置し、操作者が外部からアームの動作指令を与えて細胞培養作業等を行わせるアイソレータも市場に投入されている。例えば特許文献1には、操作ロボット19を備える自動細胞培養装置に対する消耗材料等の搬入及び搬出を、入出庫部15を介して行う構成が開示されている。このようなアイソレータにおいては、ロボットアームにより作業効率の向上を図るため、取り扱われる消耗材料等の供給についてもロボットアームを活用して、滅菌状態を維持しつつ如何にして効率的に行うかが問題となる。
【0003】
例えば、生体から単離した様々な種類の細胞を、生体環境を模した人工的な環境下で培養し、さらに必要に応じて遺伝子導入を行い、それら細胞や細胞から産生される各種因子を大量に得て、各種の疾患治療に用いることが行われている。このような作業をロボットアームで行うに際し、細胞の培養液をフラスコ又はボトル状の容器に収容して容器の開口部をスクリューキャップにより閉栓した状態で、アイソレータの作業領域内に供給することが想定される。この場合、ロボットアームは、容器を所定の作業位置に配置した後、先端のハンドによりキャップを把持して回転させることで開栓した後、容器の本体を把持して、容器に収容されている培養液を例えば培養用フラスコ,ボトルやシャーレ等の他の容器に移し替える、といった作業を行う。
【0004】
再生医療用の自動培養装置に使用される多くの培養容器は、一般的な細胞培養用の容器等が用いられている。これらのキャップの上部には、キャップの成型時にメーカー名を付したり開栓位置を矢印で示したものがあるが、その文字や印は不鮮明である。自動培養装置に使用に適合するような、キャップ形状を有していたり明瞭な印を付した容器を、入手することは困難である。
【0005】
自動培養装置の動作は設計された機械的なものであり、上述のような培養容器を取り扱う同一の動作を反復した際、キャップと容器本体との位置関係は極めて再現性が高い。しかし、ロボットの爪がキャップを把持した際に滑り等が発生すると、キャップの回転位置に誤差を生じる場合があり、キャップ内のねじ位置を視覚的に見分けることができなくなる。そのため、キャップの開閉に際しては、容器本体との相対的な位置関係をカメラやセンサ等で認識するが、その精度は極めて低く、実際上、閉栓時のクラッチ利用,開栓時の過剰な回転などを使用し、さらにその作業がキャップの方向性を乱すため、キャップの摩耗を増加させる要因となっている。
【0006】
一方、キャップの開閉においては、閉栓されている状態から開栓を開始する際に瞬間的に大きなトルクを要する。これは、ロボットハンドにおける爪の把持力や、ハンドに係る回転トルクとして大きな負荷となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4550101号公報
【特許文献2】国際公開第WO2007/015770号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような作業形態を想定すると、以下のような課題の発生が考えられる。
(1)先ず、培養液を収容した状態の容器内部は滅菌状態にあることが前提であり、外部から雑菌が混入しない状態でアイソレータの作業領域内に供給される必要がある。そして、ロボットアームが作業領域内で開栓作業を開始する前に、混入した雑菌等により作業領域内が汚染されることを防止するため、キャップが確実に締結されて完全に閉栓状態にあることを確認しなければならない。
【0009】
例えば、他人の細胞等とのコンタミネーションが発生すれば、その培養した細胞が使えなくなるので、ボトル内の細胞や溶液がアイソレータ内の作業環境に漏出することを回避しなければならず、そのためには、キャップによって完全に閉栓された状態であることを確認する必要がある。尚、ここでは滅菌環境下で行われる作業を一例として挙げたが、このような作業ではなくとも一般に、容器に収容されている液体等の漏出を防止するため、キャップが確実に締結されていることを確認する必要性は存在する。
【0010】
(2)ボトル状の容器の材質については、製造の容易性やコストの低減を考慮すると、例えばポリエチレンテレフタレートやポリスチレン等の樹脂を用いることが想定される。一方、ロボットハンドは人間の手等とは異なり、通常剛性が高い金属で構成されている。そのため、容器の本体側が固定された状態で、ロボットハンドがキャップを把持して回転させる際に、把持状態が不完全で両者の間に滑りが生じると、樹脂製のキャップ表面部分がハンドにより削られて摩耗粉が発生するおそれがある。このような摩耗粉の発生も作業室内を汚染することに繋がるため、防止する必要がある。キャップの構造によっては、ロボットハンドが開栓,閉栓の両方向に回転するそれぞれの場合に位置ずれが生じる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットハンドによる開栓作業を容易に行うことができる液体収容器,その液体収容器の開栓作業を行うのに適した構成を備えるロボットハンド及びそのロボットハンドを備えるロボットシステム,並びに閉栓状態の確認が容易な細胞培養容器,その容器を用いる自動細胞培養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の細胞培養容器によれば、マークを備えることで、細胞培養液が収容される容器本体の開口部に取り付けられる、キャップによる閉栓状態が正常か否かを容易に確認できる。
【0013】
加えて、キャップ側に設けた回転力受け部と、容器本体側に設けた基準マークとを備えるので、両者の相対的な位置関係によって、キャップによる閉栓状態を確認できる。
【0014】
請求項
2記載の細胞培養容器によれば、キャップの外周面に設けた突起部により、開栓作業が行われる際に加えられる回転力を受け止めることができる。
請求項
3記載の細胞培養容器によれば、前記突起部の高さを1mm以上とする。
【0015】
請求項
4記載の細胞培養容器によれば、突起部が、開栓又は閉栓作業が行われる際の位置ずれを減じるか、又は開栓作業が行われる際の負荷を減じる作用を成す。すなわち、突起部を設けることで、キャップの内周側に形成されているねじ山又はねじ溝の開始位置,終了位置を外観上から認識できるようになる。つまり、一方の外観から容器本体側の開口部のねじの位置も含む双方を知りうることにより、ねじピッチの動作のみで開栓,閉栓ができることになる。また、容器本体側は、比較的広い平面を有する細胞観察面等で固定し、キャップの形状及び突起部の形状を、例えばロボットハンドで取り扱う際には、ハンド側の形状との組み合わせにより、開栓,閉栓作業時に加えられる回転力を伝達し易くすることができる。
【0016】
請求項
5記載の細胞培養容器によれば、突起部の先端位置を、閉栓状態でキャップ方向から見た際に、容器本体の外周を超えない位置に配置する。このように構成すれば、細胞培養容器を取り扱う際に、キャップに設けた突起部が作業の邪魔にならず、また、例えばロボットハンドで取り扱う際に、ハンドの爪による把持力を軽減できる。更に、開閉動作時に加えられる回転トルクに、一次式で影響を与える動作半径が大きくなるので、比較的強回転力を加えることも可能となる。
【0017】
請求項
6記載の自動細胞培養装置によれば、請求項1から
5の何れか一項に記載の細胞培養容器を取り扱う。そして、制御装置は、撮像部が撮像したマークの画像データを取得して、キャップが正常な閉栓状態にあるか否かを判断する。すなわち、細胞培養容器のマークを画像により確認することで、制御装置はキャップが正常な閉栓状態にあるか否かを判断できる。
【0020】
請求項
7記載の液体収容器によれば、ボトル状の本体と、本体の開口部に取り付けられるスクリューキャップとを備えた構成において、スクリューキャップの外周部に突起部を設ける。また、開口部の周辺部に、前記突起部との相対的な位置関係により、正常な閉栓位置にあるか否かを示す位置表示部を備える。
【0021】
このように構成すれば、ロボット側では、ロボットハンドに配置したカメラ等により撮像された画像から、開栓作業を行う前にキャップの突起部と位置表示部との位置関係を把握して、キャップが正常な閉栓位置にあるか否かを判定できる。また、ロボットハンドがキャップを把持して開栓作業を開始する際に、例えばハンドの爪をキャップの突起部に当接させた状態で開始させることができる。これにより、ロボットハンドを回転させた際に、キャップとの間に滑りが発生することを防止して、摩耗粉の発生を抑止できる。
【0022】
更に、ロボット側では、初期の閉栓状態からキャップをどれだけ回転させたかについても、突起部と位置表示部との位置関係から把握できる。したがって、キャップを開栓するのに必要な回転量の情報も得ることが可能になり、開栓作業を容易に行うことができる。
【0023】
請求項
8記載の液体収容器によれば、位置表示部を、開口部の周辺を周方向に分割した領域を個別に識別できるように複数配置するので、キャップと本体との相対位置関係を、より容易且つ詳細に把握できる。
【0024】
請求項
9記載の液体収容器によれば、突起部を、閉栓状態でキャップ方向から見た際に、容器本体の径方向寸法を超えない位置に配置する。このように構成すれば、細胞培養容器を取り扱う際に、キャップに設けた突起部が作業の邪魔にならない。
【0025】
請求項1
0記載のロボットハンドによれば、前記液体収容器の開栓作業を行うもので、2本以上の爪と、液体収容器本体の位置表示部を撮像して認識するための撮像部とを備える。これによりロボット側は、撮像部によりキャップと本体との相対位置関係を把握して、2本以上の爪によりキャップを把持して開栓作業を行うことができる。
【0026】
加えて、少なくとも1本の爪の先端に、キャップ側の突起部に係合させるための凹部を備えるので、両者を係合させた状態でキャップを容易に回転させることができ、キャップと爪との間に滑りが生じることを防止して、摩耗粉の発生をより確実に抑止できる。
【0027】
請求項1
1記載のロボットハンドによれば、爪を2本とすることで、爪を駆動するためのアクチュエータを備える内部と外部との間を連通させるために設ける開口部が極力少なくなり、前記開口部のシーリングも容易に行うことができる。したがって、洗浄性の向上に適した構造にできる。
【0028】
請求項1
2記載のロボットハンドによれば、凹部を2本以上の爪に設けることで、キャップの突起部との係合をより容易に行うことができる。
請求項1
3記載のロボットシステムによれば、制御装置は、ロボットハンドに設けられている撮像部が撮像した液体収容器のキャップ及び位置表示部の画像のデータを取得すると、キャップの突起部と位置表示部との相対位置関係から、キャップが正常な閉栓位置にあるか否かを判断する。したがって、液体収容器の開栓動作を行う以前に、液体収容器内に収容されている材料等が汚染されていないことを確認できる。
【0029】
請求項1
4記載のロボットシステムによれば、制御装置は、キャップが正常な閉栓位置にあると判断すると、ロボットハンドによりキャップを把持し、開栓方向に所定角度だけ回転させて液体収容器の開栓動作を行う。したがって、キャップの突起部と位置表示部との相対位置関係を画像データで確認しながら、開栓動作を確実に行うことができる。
【0030】
請求項1
5記載のロボットシステムによれば、制御装置は、キャップが正常な閉栓位置に無いと判断すると、ロボットハンドにより前記キャップを把持し、閉栓方向に所定角度だけ回転させて液体収容器の閉栓動作を行う。それから、閉栓した液体収容器の廃棄処理を行う。すなわち、液体収容器が適切に閉栓されていなければ、収容されている材料等が汚染されている可能性が有る。そこで、液体収容器を完全な閉栓状態にして収容されている材料等の漏出を防止した上で、その液体収容器を廃棄処理することで、ロボットアームが作業を行う室内が汚染されてしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態であり、細胞培養容器であるボトルの(a)は側面図,(b)は平面図
【
図5】ロボットハンドがパスボックスよりボトルを取り出す動作を説明する図
【
図6】ロボットハンドの爪がキャップを把持した状態を示す(a)は正面図,(b)は側面図
【
図7】ロボットの全体のシステム構成を示す機能ブロック図
【
図8】
図5の動作に対応する処理内容を示すフローチャート
【
図9】ロボットハンドがボトルを開栓する処理を示すフローチャート
【
図10】ロボットハンドがボトルを閉栓する処理を示すフローチャート
【
図14】第2実施形態であり、キャップを付けた状態のボトルの平面図
【
図16】第3実施形態であり、キャップを付けた状態のボトルの平面図
【
図18】第4実施形態でありロボットハンドの爪がキャップを把持した状態を示す(a)は正面図,(b)は側面図
【
図19】開栓する際に、キャップに付与する回転力を測定した状態をモデル的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。
図1から
図4に示すように、本実施形態の細胞培養容器であるボトル10の本体1は、閉塞した下端部2と、相対向する上端部に径小の円環状をなすキャップ取付け部3とを有する8角柱のボトル形状を成している。そして、本体1の8角柱を形成する各面は平面状であり、且つ各面のうち相対向する2面はほぼ平行となっている。また、ボトル10を遠心分離用チューブとしても用いるため、閉塞した下端部2の形状は円錐状又は8角錐状となっている。本体1は、容器本体に相当する。
【0033】
キャップ取付け部3の上端面は開口4となっている。キャップ取付け部3の外周部には、内周ねじ付きのキャップ5を取り付けるためのねじ山6が形成されている。すなわち、キャップ5はスクリューキャップである。更に、回転培養を機械制御で行うことを容易とするため、キャップ取付け部3と本体1との繋ぎ目部分の外周側は、8角柱の本体1を上向きや横向きに保持し、開口4を斜め下向きにして、本体1の内部に収容された培養液をデカンテーションにて排出するため保持する際に、把手部材や穴空き部材を固定するための凸状部7が形成されている。
【0034】
図1及び
図2に示すように、キャップ5の外周における
図2中の下端側には、例えば高さが1mm以上ある突起部8が形成されている。この突起部8は後述するように、ロボットハンドがキャップ5を回転させてボトル10の開栓又は閉栓動作を行う際に使用される。そして、キャップ取付け部3の下端から本体1の8角柱をなす各面に至るまでの上面部には、8面のそれぞれに対応してキャップ取付け部3を囲む周辺に、数字「1」〜「8」が付されている。これらが位置表示部9となっている。位置表示部9は、後述するようにロボット側の制御に使用される。突起部8は、マークである回転力受け部に相当し、位置表示部9は基準マークに相当する。
【0035】
ボトル10を形成するために用いる材料は特に限定しないが、細胞培養において一般的に用いられる材料を使用できる。例えば、樹脂材料、及び、ガラスや石英等の無機材料、金属等があるが、製造の容易性、コスト低減、細胞培養状態の把握の容易性を考慮し、樹脂材料を用いるのが好ましい。そして、製造の容易性やコストの低減、細胞培養状態の把握の容易性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリスチレン樹脂、又はポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリビニル・クロライド及びこれらの混合物からなる群から選択された部材等を用いるのが好ましい。
【0036】
図11は自動細胞培養装置の正面図である。自動細胞培養装置11の作業室12には、中央部にロボットアーム13が配置されている。ロボットアーム13は、作業室12の
図12及び
図13に示す床板14に回転可能に設置されており、先端部に設けられたハンド15は3つの関節機構により回転可能に設けられると共に、各関節機構部において軸回りにねじる方向にも回転可能に設けられている。すなわちロボットアーム13は、並進3自由度で且つ回転3自由度の垂直6軸構成となっている。これにより、ハンド15は、所定の可動範囲内において任意の位置姿勢をとることができる。ハンド15は、作業対象となる物体を2つの爪15a,15bにより把持可能に構成されている。ロボットアーム13は、耐滅菌性,サニタリ性を備えるように表面処理がなされている。
【0037】
図12は、作業室12の内部を示す平面図である。ロボットアーム13の周辺おける床板14には、遠心分離機16,顕微鏡17,作業のため試薬や消耗材料が配置される作業台18,ピペッタ19,廃棄シャッタ20等が配置されている。廃棄シャッタ20は、
図13に示すように、不要となった材料や廃液等を廃棄するため、床板14の下方に配置されている廃棄ボックス21の開口部を開閉するものである。また、作業室12の周壁部には、インキュベータ22やパスボックス23等が配置されている。
【0038】
作業室12は、細胞培養等のような医療系の作業を行うため密閉空間を構成する。作業室12の正面には、ロボットアーム13による作業を外部より監視するため、
図11に示す透明な監視窓24が配置された開閉扉25が取り付けられている。また、
図11及び
図13に示すように、作業室12の上方には、作業室12を滅菌すると共に、外気を滅菌して供給するためのへパユニット26が配置されている。
【0039】
パスボックス23には、複数のボトル10が収容される。パスボックス23が作業室12に臨む面側は、図示しないアクチュエータで駆動されるシャッタ27により開閉される。ロボットアーム13は、シャッタ27が開いた際に、パスボックス23に配置されているボトル10をハンド15により取り出す。
【0040】
そして、
図5及び
図6に示すように、ハンド15を構成する爪15a,15bの先端には、それぞれに凹部28が形成されている。この凹部28は、ハンド15によってパスボックス23に配置されているボトル10を取り出したり、ボトル10の開栓,閉栓動作を行うためを把持する際に、キャップ5に設けられている突起部8と係合させるために設けられている。
【0041】
図7は、コントローラも含めたロボットの全体のシステム構成を示す機能ブロック図である。ロボットシステム31において、コントローラ32は、マイクロコンピュータで構成された制御部32a及び画像処理部32b等を備えている。この画像処理部32bは、ハンド15に配置されているカメラ33で撮像した画像に対して画像処理を行うことにより作業基準位置を設定する。コントローラ32は制御装置に相当する。
【0042】
撮像部に相当するカメラ33はコントローラ32に接続されており、ハンド15の先に位置する作業対象のワーク等を撮像する。カメラ33で撮像された画像のデータはコントローラ32に送信されて、画像処理部32bによりワーク位置を設定するための画像処理が行われる。
【0043】
ペンダント34は、制御部34a及び表示部34b等を備えており、接続ケーブルを介してコントローラ32に接続されている。ペンダント34はティーチングペンダントとも称され、これを用いてロボットアーム13の動作軌跡の設定や各種のパラメータの設定等を行うことができる。また、ペンダント34をマニュアル操作することで、ロボットアーム13の姿勢を制御することもできる。表示部34bには図示しないタッチパネルが設けられており、ユーザによるタッチ操作が入力可能となっている。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5は、ロボットハンド15によりパスボックス23からボトル10を取り出す際の動作を示しており、
図8は
図5の動作に対応する処理内容を示すフローチャートである。尚、ボトル10は、本体1の8角柱面の一部が、パスボックス23の内壁の一部に接した状態で収容されており、本体1は、その収容された状態でパスボックス23により固定されている。
【0045】
図5(a)に示す状態において、ハンド15に配置されているカメラ33は、パスボックス23に収容されているボトル10の画像を、キャップ5側から捉えている。コントローラ32は、カメラ33の画像データからキャップ5の突起部8の位置を認識すると(S1)、その位置により本体1の配置位置,角度を認識する(S2)。
【0046】
それから、コントローラ32は、爪15a,15bを開いた状態でハンド15を図中右方向に移動させて、爪15a,15bの先端部分をパスボックス23の内部に進入させる。そして、
図5(b)に示すように、爪15a,15bを閉じて凹部28を突起部8に係合させた状態でキャップ5を把持する(S3)。
図6(a)は凹部28を突起部8に係合させた状態をモデル的に示す正面図であり、
図6(b)は同側面図である。
【0047】
次に、コントローラ32は、キャップ5が本体1に正常に締結されているか、つまりボトル10が正常に閉栓されているか否かを判断する(S4)。ここでは前提として、キャップ5を本体1に締結する作業を開始する際に、突起部8を本体1の表示部9が示す初期位置,例えば表示「1」に合わせてから締結作業を行うものとする。そして、初期位置からキャップ5を所定量だけ回転させることで、所定のトルクを付与した状態で締結が完了した際に突起部8が位置する終了位置が、例えば表示部9の表示「7」であるとする。尚、この作業の詳細については後述する。
【0048】
したがって、コントローラ32は、ステップS4において突起部8が終了位置である表示部9の表示「7」に位置していれば、キャップ5が本体1に正常に締結されていると判断する(YES)。この場合、
図5(c)に示すように、ハンド15をそのまま図中左方向に移動させ、ボトル10をパスボックス23より引き出して(S5)処理を終了する。
【0049】
一方、ステップS4において、突起部8が位置表示部9の表示「7」に位置しておらず、例えば表示「6」に位置していると(NO)、キャップ5に「緩み」があり正常な閉栓位置に無い、つまり正常に締結されていないと判断する(NO)。この場合、コントローラ32は、キャップ5の再締結を試行し、キャップ5を把持した状態で、ハンド15を閉栓方向に回転させる(S6)。それから、続くステップS7及びS8においてステップS1及びS2と同様の処理を行い、ステップS9でステップS4と同様の判断を行う。ここで、キャップ5が正常に締結されていると判断すると(YES)ステップS5に移行し、正常に締結されていないと判断すると(NO)異常停止処理を行う(S10)。
【0050】
図9は、ロボットハンド15によりボトル10を開栓する場合の処理を示すフローチャートである。開栓作業は、例えばパスボックス23より取り出されたボトル10を作業台18に移動させて、本体1側を固定した状態で行う。コントローラ32は、ステップS1と同様にしてキャップ5の突起部8の位置を認識すると(S11)、
図5と同様に爪15a,15bを開いた状態でハンド15をキャップ5に接近させる。
【0051】
それから、爪15a,15bを閉じて凹部28を突起部8に係合させた状態でキャップ5を把持する(S12)。ここで、開栓作業を行うため、爪15a,15bを閉じてキャップ5に付与する把持力は略ゼロで良い。次に、ここは突起部8が上記の終了位置にある前提で、コントローラ32は、把持したキャップ5を開栓させる方向に所定量だけ回転させて開栓し、キャップ5を取り外す(S13)。
【0052】
また、上記のように開栓作業を行う際に、ハンド15がキャップ5に付与する回転力は、0.7Nm以上で1.5Nm以下であれば良い。
図19は、正常に閉栓した状態にあるキャップ5を開栓する際に、必要となる回転力がどれ位になるかを測定した状態をモデル的に示している。ボトル10を横に寝かせた状態にして、机上等に設置した荷重計と、突起部8との間に測定治具を介在させる。この状態で、本体1を開栓させる方向に回転させて、開栓させるのに要した回転力を荷重計により測定した。閉栓時にキャップ5を締め付けた際の強弱に応じて、荷重は30N〜60Nの範囲で変化する。この場合、開栓する際に必要となる回転力は0.7Nm〜1.5Nmの範囲であった。
【0053】
図10は、ハンド15によりボトル10を閉栓する場合の処理を示すフローチャートである。ステップS21〜S23は、ステップS1〜S3と同様の処理であるが、この場合、キャップ5は本体1より取り外されている。したがって、コントローラ32は、ステップS23でキャップ5を把持すると、本体1のキャップ取付け部3に近付ける。続いて、突起部8が本体1の特定位置,つまり上述した位置表示部9が示す初期位置である表示「1」に位置するようにして、キャップ5を本体1のキャップ取付け部3に挿入する(S24)。それから、キャップ5を締結する方向,閉栓方向に所定の角度回転させる(S25)。
【0054】
そして、ステップS1及びS2と同様に、突起部8の位置及び本体1の配置角度を認識すると、ステップS4と同様にしてキャップ5が正常に締結されているか否かを判断する(S28)。正常に締結されていると判断すると(YES)処理を終了する。一方、正常に締結されていないと判断すると(NO)、爪15a,15bによりキャップ5を把持し(S29)。キャップ5の再締結,リトライを試行する(S30)。ステップS30で行うリトライは、
図8に示すステップS6〜S10の処理に対応する。
【0055】
尚、キャップ5を再度締結した後に、そのボトル10については廃棄ボックス21に廃棄することにしても良い。すなわち、ボトル10が適切に閉栓されていなければ、収容されている材料等が汚染されている可能性が有るので、ボトル10を完全な閉栓状態にして収容されている材料等の漏出を防止した上で廃棄処理し、作業室12内が汚染されることを防止する。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、本体1と、本体1のキャップ取付け部3に取り付けられるキャップ5とを備えるボトル10において、キャップ5の外周部に突起部8を設ける。また、キャップ取付け部3の周辺部に、突起部8との相対的な位置関係によりキャップ5が正常な閉栓位置にあるか否かを示す位置表示部9を備える。一方、ロボットハンド15には、2本の爪15a,15bと、本体1の位置表示部9を撮像して認識するためのカメラ33とを備え、爪15a,15bにはそれぞれ凹部28を形成した。
【0057】
このように構成すれば、ロボット側ではコントローラ32が、ロボットハンド15に配置したカメラ33により撮像された画像から、開栓作業を行う前にキャップ5の突起部8と位置表示部9との位置関係を把握して、キャップ5が正常な閉栓位置にあるか否かを判定できる。
【0058】
そして、ロボット側では、初期の閉栓位置からキャップ5をどれだけ回転させたかについても、突起部8と位置表示部9との位置関係から画像的,視覚的に把握できる。したがって、開栓するのに必要なキャップ5の回転量の情報も補助的に得ることが可能になり、ボトル10の開栓作業を容易に行うことができる。この場合、位置表示部9を、キャップ取付け部3の周辺を周方向に等分した領域を個別に識別できるように複数設け、それらに連番の数字を付して表示するので、キャップ5と本体1との相対位置関係を、より容易且つ詳細に把握できる。
【0059】
また、爪15a,15bに形成した凹部28を突起部8に係合させた状態で、キャップ5を容易に回転させることができ、キャップ5と爪15a,15bとの間に滑りが生じることを防止できる。加えて、キャップ5に突起部8を設けたことで、開栓作業を行うため爪15a,15bを閉じた際にキャップ5に付与する把持力は略ゼロで良くなる。したがって、キャップ5が剛性の高い爪15a,15bにより削られてしまうことを防止でき、摩耗粉の発生を確実に抑止できる。
【0060】
またこのように、凹部28を爪15a,15bにそれぞれ設けることで、突起部8との係合をより容易に行うことができる。加えて、2本の爪15a,15bのみを有するハンド15は、それらを駆動するためのアクチュエータを備える内部と外部との間を連通させるために設ける開口部が極力少なくなり、その開口部のシーリングも容易に行うことができる。したがって、滅菌状態にある作業室12内で行う作業に適用するに当たり、ハンド15洗浄性の向上に適した構造にできる。
【0061】
そして、本実施形態のロボットシステム31によれば、コントローラ32は、ハンド15に設けられているカメラ33が撮像した、ボトル10のキャップ及び位置表示部9の画像のデータを取得すると、キャップ5の突起部8と位置表示部9との相対位置関係から、キャップ5が正常な閉栓位置にあるか否かを判断する。したがって、ボトル10の開栓動作を行う以前に、ボトル10内に収容されている材料等が汚染されていないことを確認できる。
【0062】
また、コントローラ32は、キャップ5が正常な閉栓位置にあると判断すると、ハンド15によりキャップ5を把持し、開栓方向に所定角度だけ回転させてボトル10の開栓動作を行う。したがって、突起部8と位置表示部9との相対位置関係を画像データで確認しながら、開栓動作を確実に行うことができる。
【0063】
加えて、コントローラ32は、キャップが5正常な閉栓位置に無いと判断すると、ハンド15によりキャップ5を把持し、閉栓方向に所定角度だけ回転させてボトル10の閉栓動作を行う。それから、閉栓したボトル10の廃棄処理を行う。これにより、ボトル10に収容されている材料等の漏出を防止でき、且つ作業室12内が汚染されてしまうことを回避できる。
【0064】
(第2,第3実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2,第3実施形態は、ボトルの本体側に設ける位置表示部のバリエーションを示す。
図14及び
図15に示す第2実施形態のボトル41は、円柱形の本体42を備えており、位置表示部43は、本体42の中心を通る直線で表示を行っており、ボトル取付け部3で分断される一方が43a,他方が43bとなっている。
【0065】
また、
図16及び
図17に示す第3実施形態のボトル51は、ボトル41と同様に円柱形の本体52を備えており、位置表示部53は、本体52の中心を通る直線上に配置される○で表示されている。ボトル取付け部3を挟む一方側の表示が53a,他方側の表示が53bとなっている。これらの第2,第3実施形態のように位置表示部43,53を備える場合も、キャップ5の突起部8との相対位置関係を把握できる。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態は、
図18に示すように、ロボットハンド61がハンド15と同様に2本の爪61a,61bを備えているが、これらの爪61a,61bには第1実施形態のように凹部28が形成されていない。このような形状であっても、キャップ5を把持した際に、例えば爪61aの側部をキャップ5の突起部8に当接させた状態で回転させることで、両者の間に滑りを発生させることなく回転させることができる。
【0067】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
例えば第1実施形態において、凹部28を一方の爪だけに設けても良い。
突起部8の高さ寸法は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
ロボットハンドの爪は、3本以上あっても良い。
ボトル本体の形状は8角柱に限らず、その他の多角柱形状でも良い。例えば、
図20に示すような4角柱状や、
図21に示すようなフラスコ状でも良い。例えば、フラスコ状の本体を有するボトルをパスボックスより取り出す際の動作は、
図22に示すようになる。
作業室内は、必ずしも滅菌状態である必要はない。
【符号の説明】
【0068】
図面中、1は本体、2は下端部、3はキャップ取付け部、4は開口、5はキャップ、6はねじ山、8は突起部、9は位置表示部、10はボトル、13はロボットアーム、15はロボットハンド、15a,15bは爪、28は凹部、31はロボットシステム、32はコントローラ、33はカメラを示す。