(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
なお、各図では、水平方向をx方向、y方向と表現し、xy平面に垂直な方向(つまり、重力方向)をz方向と表現する。
【0018】
図1は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図であり、欠陥検査装置1を構成する各部の配置が概略的に記載されている。
【0019】
本発明に係る欠陥検査装置1は、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥を検査するものである。具体的には、欠陥検査装置1は、励起光照射部2、蛍光撮像部3、欠陥検査部4、制御部5等を備えている。さらに、欠陥検査装置1には、基板保持部8と、相対移動部9が備えられている。
【0020】
励起光照射部2は、ワイドギャップ半導体基板Wに向けて励起光L1を照射するものである。具体的には、励起光照射部2は、励起光照射ユニット20と、投影レンズ22,23と、照射倍率変更部25等を備えている。励起光照射部2は、装置フレーム1fに取付金具(図示せず)などを介して取り付けられている。
【0021】
図2は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図であり、投影レンズ22,23の間隔が変わると、励起光L1の照射範囲F(例えば、F1〜F3)が変わる様子が示されている。
【0022】
励起光照射ユニット20は、励起光L1の元になる光エネルギーを発生させるものであり、光源21を備えている。具体的には、励起光照射ユニット20は、発光波長成分が365nm前後の発光ダイオード(いわゆる、UV−LED)を光源21として備えたものが例示できる。
【0023】
投影レンズ22,23は、光源21から発せられた励起光L1を集光させ、ワイドギャップ半導体基板Wに設定した照射範囲Fに投影・照射するものである。具体的には、投影レンズ22,23は、1枚ないし複数の凸レンズや凹レンズを含む組合せレンズ等で構成されている。
【0024】
照射倍率変更部25は、励起光L1の照射範囲およびエネルギー密度を変更するものである。具体的には、照射倍率変更部25は、励起光L1を通過させる複数のレンズ22,23間の距離を変更するものである。より具体的には、照射倍率変更部25は、電動アクチュエータで構成されており、電動アクチュエータのスライダー26にレンズ23が取り付けられている。電動アクチュエータは、制御部5からの制御信号に基づいてスライダーを移動・静止させる機構であり、レンズ23を位置P1〜P3に移動・静止させることができる。つまり、レンズ23をレンズ22に対して遠ざけたり近づけたりすることで、ワイドギャップ半導体基板Wの表面に投影照射される励起光L1の照射範囲Fおよびエネルギー密度が変更される。このとき、光源21から放射される光のエネルギーが同じであれば、レンズ23を位置P1〜P3で移動させると、各照射範囲F1〜F3の面積比に概ね反比例して励起光L1の集光度合いが変化し、エネルギー密度が変化する。例えば、各照射範囲F1,F2,F3の縦横寸法の比率が、概ね4:2:1であれば、各照射範囲F1,F2,F3での励起光L1のエネルギー密度の比率は、概ね1:4:16となる。
【0025】
なお、スライダー26(つまり、レンズ23)の位置P1〜P3は、励起光L1の照射範囲Fが、蛍光撮像部3で使用する対物レンズ30a〜30c各々に適した照射範囲F1〜F3となるよう、予め設定しておく。
【0026】
蛍光撮像部3は、励起光L1がワイドギャップ半導体基板Wに照射されることで発せられたフォトルミネッセンス光L2を撮像するものである。
具体的には、蛍光撮像部3は、レンズ部30と、撮像倍率切替部31と、蛍光フィルタ部32と、撮像カメラ33等を備えている。蛍光撮像部3は、装置フレーム1fに取付金具(図示せず)などを介して取り付けられている。
【0027】
レンズ部30は、ワイドギャップ半導体基板Wの検査対象となる部位の平面像を、撮像カメラ33のイメージセンサ34に投影・結像させるものである。具体的には、レンズ部30は、観察倍率の異なる対物レンズを複数備えている。より具体的には、レンズ部30には、観察倍率が5倍の対物レンズ30a、10倍の対物レンズ30b、20倍の対物レンズ30cを備えている。
【0028】
撮像倍率切替部31は、レンズ部30に備えられた複数の対物レンズ30a〜30cの内いずれか1つを選択して切り替えるものである。具体的には、撮像倍率切替部31は、電動アクチュエータ機構で構成されており、電動アクチュエータ機構には各対物レンズ30a〜30cが取り付けられている。より具体的には、電動アクチュエータ機構は、制御部5からの制御信号に基づいてスライド・静止する機構であり、どの倍率の対物レンズを使用するかを選択的に切り替えるものである。
【0029】
蛍光フィルタ部32は、励起光L1の波長成分を吸収又は反射させて減衰させつつ、検査対象となる部位から発せられたフォトルミネッセンス光L2を通過させるものである。具体的には、蛍光フィルタ部32は、レンズ部30と撮像カメラ33との間に配置されたバンドパスフィルタで構成されている。より具体的には、このバンドパスフィルタは、励起光L1に含まれる波長成分(上述の場合は、紫外線領域の光。特に波長385nm以下の光)及び、赤外領域(例えば800nm以上)の光を吸収または反射して減衰させ、フォトルミネッセンス光L2に含まれる385nmより波長の長い紫外光や可視光を通過させるものである。
【0030】
撮像カメラ33は、蛍光フィルタ部32を通過したフォトルミネッセンス光L2を撮像し、外部へ映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)を出力するものである。撮像カメラ33は、イメージセンサ34を備えている。
【0031】
イメージセンサ34は、受光した光エネルギーを時系列処理して、逐次電気信号に変換するものである。具体的には、イメージセンサ45は、多数の受光素子が2次元配列されたエリアセンサが例示でき、より具体的にはCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどを備えた、白黒カメラまたはカラーカメラで構成されている。
【0032】
欠陥検査部4は、蛍光撮像部3で撮像された画像に基づいて検査を行うものである。具体的には、欠陥検査部4は、画像処理機能を備えたコンピュータ(ハードウェア)とその実行プログラム(ソフトウェア)により構成されている。
【0033】
より具体的には、欠陥検査部4は、撮像カメラ33から出力された映像信号(アナログ信号)や映像データ(デジタル信号)が入力されると、画像の濃淡情報(例えば、輝度値。カラー画像であれば色相・明度・彩度などの色情報も含む)に基づいて欠陥候補を抽出し、どのような欠陥種類であるかを判定したり、欠陥種類を細分類したり、欠陥の計数や位置情報の出力など(いわゆる、欠陥検査)を行う。
【0034】
[欠陥の種類]
図3は、検査対象となる欠陥の種類を模式的に表した斜視図である。
ここでは、ワイドギャップ半導体基板Wに生じた欠陥の種類として、SiC基板W1上に形成させたSiCエピタキシャル層W2の内部に生じた種々の欠陥が例示されている。また、エピタキシャル層W2の基底面Bが、破線で示されている。また、図では、欠陥の成長方向は、x方向と所定の角度をなす、基底面Bに沿う方向として示されている。
【0035】
本発明の検査対象となる欠陥としては、SiCエピタキシャル層に内在する基底面転位E1や、SiCエピタキシャル層に内在する積層欠陥E2が代表的に挙げられる。なお、積層欠陥E2は、単に「積層欠陥」と呼ばれるが、さらに1SSF〜4SSF等の欠陥種類に細分類することができる。なお、1SSFは、シングル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Single Shockley Stacking Fault)とも呼ばれる。同様に、2SSFはダブル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Double Shockley Stacking Fault)、3SSFはトリプル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Triple Shockley Stacking Fault)、4SSFはクアドラプル・ショックレイ・スタッキング・フォルト(Quadruple Shockley Stacking Fault)とも呼ばれる。
【0036】
図4は、検査対象となる基板および各種欠陥の蛍光発光特性を示す図であり、横軸に波長、縦軸に蛍光発光の強度の一例が示されている。
【0037】
ワイドギャップ半導体基板Wから発せられるフォトルミネッセンス光L2は、「基底面転位」も「積層欠陥」も無い場合、バンド端発光による波長成分(主に、385〜395nm)と、不純物準位の発光(いわゆる、D−Aペア発光)による波長成分(主に、450〜700nm)が含まれる。
【0038】
一方、ワイドギャップ半導体基板Wに「基底面転位」があれば、当該基底面転位部位から発せられるフォトルミネッセンス光L2は、主に610nm以上の波長の光、特に750nm前後の波長の光が放出される。
【0039】
一方、ワイドギャップ半導体基板Wに「積層欠陥」があれば、当該積層欠陥部位からは、積層欠陥の欠陥種類に応じて、1SSFなら波長420nm付近、2SSFなら波長500nm付近、3SSFなら波長480nm付近、4SSFなら波長460nm付近のフォトルミネッセンス光が、主に放出される。また、前記以外にも、波長600nm以下のフォトルミネッセンス光を放出する積層欠陥が確認されている。
【0040】
[欠陥の抽出]
図5は、本発明により撮像された各種欠陥の白黒画像とカラー画像を模式的に表したイメージ図である。
図5には、撮像カメラ33にて撮像された画像が、白黒画像である場合の各種欠陥の濃淡画像イメージと、カラー画像である場合の各種欠陥の見え方が例示されている。さらに比較のため、従来技術で撮像された画像(赤外領域のフォトルミネッセンス光を撮像)での各種欠陥の濃淡画像イメージも示されている。なお、カラー画像について白黒で代用説明を行う都合上、色情報の違いは、適宜ハッチングの種類を変えつつ、撮像されたフォトルミネッセンス光の視覚的表現及び主な波長成分を併記して表現している。
【0041】
本発明に係る欠陥検査部4では、取得した画像に対して画像処理を行い、背景画像と異なる濃淡情報や色情報の領域や部位を欠陥候補として抽出し、予め規定された判定基準に則って欠陥検査を行う、一連のプログラム処理が実行される。
【0042】
制御部5は、撮像倍率切替部30において選択された対物レンズの観察倍率に応じて、照
射倍率変更部2
5における励起光L1の照射範囲Fおよびエネルギー密度を変更するものである。
【0043】
制御部5は、照射倍率変更部25、撮像倍率切替部31と各々接続されており、電動アクチュエータをスライド・静止させて使用する対物レンズ30a〜30cを切り替えたり、スライダー26の位置P1〜P3を変更することができる。そのため、制御部5は、複数の対物レンズ30a〜30cの内、いずれを使用するかを選択すると共に、対物レンズの倍率に適した励起光L1の照射範囲F1〜F3となるよう、レンズ22とレンズ23との間の距離を変更することができる。つまり、使用する対物レンズ30a〜30cの観察倍率に連動させて、励起光L1の照射範囲Fおよびエネルギー密度を変更することができる様に構成されている。
【0044】
また、制御部5は、基板保持部8の基板保持機構や相対移動部9などの、欠陥検査装置1に備えられた各機器とも接続されており、各機器を統括して制御することができる。具体的には、制御部5は、コンピュータCPやプログラマブルロジックコントローラ(シーケンサとも言う)などのハードウェアと、その実行プログラム(ソフトウェア)を備え、操作パネルやスイッチ類(図示せず)を介したオペレータによる操作、各種設定データおよび実行プログラムに基づいて、各機器の制御が行われる。
【0045】
基板保持部8は、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wを所定の姿勢で保持するものである。具体的には、基板保持部8は、負圧吸着プレートや静電吸着プレート、把持チャック機構などの基板保持機構によりワイドギャップ半導体基板Wを保持するものが例示でき、上面が水平となるように配置されている。
【0046】
相対移動部9は、励起光照射部2及び蛍光撮像部3に対して、基板保持部8を相対移動させるものである。具体的には、相対移動部9は、装置フレーム1fに取り付けられたX方向やY方向に延びるレール91X,91Yと、そのレール上を所定の速度で移動したり当該レール上の所定の位置で静止するスライダー92X,92Y等を備えている。そして、スライダー92Y上には基板保持部8が取り付けられている。
【0047】
スライダー92X,92Yは、制御用のアンプユニットなどを介して、制御部5と接続されており、制御部5からの制御信号に基づいてレール91X,91Y上を所定の速度で移動させたり当該レール上の所定の位置で静止させることができる。より具体的には、検査のための画像取得(つまり、撮像)は静止状態で行われ、次の撮像位置への移動した後、再び画像取得のために静止状態となる、いわゆるステップアンドリピート方式で画像取得が行われる。
【0048】
この様な構成をしているため、本発明にかかる欠陥検査装置1は、ワイドギャップ半導体基板Wの検査対象の撮像範囲を可変にしつつ、簡単な装置構成にもかかわらず従来よりも迅速かつ確実に欠陥の検査ができ、欠陥の拡張も防止することができる。
【0049】
なお上述では、励起光照射部2の実施形態として照射倍率変更部25を備えた構成を例示し、照射倍率変更部25が、投影レンズ22,23のレンズ間の距離を変更することで励起光L1の照射範囲F(例えば、F1〜F3)およびエネルギー密度を変更する形態を例示した。この様な形態であれば、必要最小限のレンズ枚数で励起光照射部2を構成しつつ、多段階での倍率変更が可能となるので好ましい。また、投影レンズ22,23を用いることで、励起光L1の照射範囲F1〜F3の内外での光量差を急峻に設定することができ、照射範囲を変更してもエネルギーロスを防ぎつつ、照射範囲F1〜F3内のエネルギー密度を変更することができる。
[別の形態]
しかし、本発明を具現化する上では、上述の様な形態に限らず、励起光照射部として投影倍率の異なる投影レンズを複数備え、照射倍率変更部は、励起光L1を通過させる投影レンズを切り替える形態であっても良い。
【0050】
図6は、本発明を具現化する別の形態の一例の要部を示す概略図であり、励起光照射部2に代えて励起光照射部2Bを備えた形態が例示されている。
【0051】
励起光照射部2Bは、励起光照射ユニット20と、照射倍率変更部25Bと、投影レンズ28a〜28c等を備えている。励起光照射部2Bを構成する励起光照射ユニット20と、照射倍率変更部25Bは、装置フレーム1fに取付金具(図示せず)などを介して取り付けられている。
【0052】
励起光照射ユニット20は、上述の励起光照射部2に備えられたものと同様の構成のため、詳細な説明は省く。
【0053】
照射倍率変更部25Bは、ターレット式レンズホルダと回転アクチュエータで構成されている。回転アクチュエータは、制御部5からの制御信号に基づいてターレット式レンズホルダを所定の角度に回転・静止させるものである。ターレット式レンズホルダには、それぞれ投影倍率の異なる投影レンズ28a〜28cが取り付けられている。
【0054】
投影レンズ28a〜28cは、励起光照射ユニット20の光源21から発せられた励起光L1を集光させ、ワイドギャップ半導体基板Wに設定した照射範囲Fに投影・照射するものである。具体的には、投影レンズ28a〜28cは、照射範囲F1〜F3に、光源21から発せられた光を所定の投影倍率で投影するものであり、各々が1枚ないし複数の凸レンズや凹レンズを含む組合せレンズ等で構成されている。
【0055】
励起光照射部2Bは、この様な構成をしているため、制御部5からの制御信号に基づいて使用する投影レンズ28a〜28cを切り替えて、ワイドギャップ半導体基板Wの表面に投影照射される励起光L1の照射範囲F(例えば、F1〜F3)およびエネルギー密度を変更することができる。そして、投影レンズ28a〜28cをそれぞれ、励起光L1の照射範囲F1〜F3に最適化設計しておくことにより、励起光L1の照射範囲F1〜F3の内外での光量差を急峻に設定することができ、照射範囲を変更してもエネルギーロスを防ぎつつ、照射範囲F1〜F3内のエネルギー密度を変更することができるので、好ましい。
【0056】
なお、本発明に係る照射倍率変更部は、
図1や
図6を示しながら説明した上述の形態(つまり、照射倍率変更部25,25B)に限らず、以下の様な形態であっても、本発明を具現化することができる。
【0057】
図7は、本発明を具現化するさらに別の形態の一例の要部を示す概略図であり、上述の励起光照射部2,25Bに代えて励起光照射部2Cを備えた形態が例示されている。
【0058】
励起光照射部2Cは、励起光照射ユニット(図示せず)と、拡散板24と、投影レンズ22,23と、照射倍率変更部25等を備えている。励起光照射ユニットは、ランプ光源などをライトガイドで導光する構成が例示でき、ライトガイド出射部29から励起光L1が出射される。また、ライトガイド出射部29から照射される励起光L1は、拡散板24に照射されるよう配置されている。拡散板24は、励起光L1が照射される面内の照度均一性を向上させるものである。そして、拡散板24を隔ててライトガイド出射部29と対向する位置に投影レンズ22,23が配置されている。
【0059】
投影レンズ22,23は、拡散板24に照射されて通過した励起光L1を、ワイドギャップ半導体基板Wの表面に投影照射するものである。そして、励起光照射部2Cを構成する投影レンズ22,23、拡散板24、照射倍率変更部25Bは、装置フレーム1fに取付金具(図示せず)などを介して取り付けられている。さらに、照射倍率変更部25のスライダー26上には、ライトガイド出射部29が取り付けられている。なお、励起光照射部2Cに備えられた投影レンズ22,23と、照射倍率変更部25は、上述した励起光照射部2に備えられたそれらと概ね同様の構成であるため、詳細な説明は省く。
【0060】
励起光照射部2Cは、この様な形態をしているため、制御部5からの制御信号に基づいて照射倍率変更部25のスライダー26(つまり、ライトガイド出射部29)を位置P1〜P3に移動・静止させることで、ワイドギャップ半導体基板Wの表面に投影照射される励起光L1の照射範囲Fおよびエネルギー密度が変更される。なお、スライダー26の位置P1〜P3は、励起光L1の照射範囲Fが、蛍光撮像部3で使用する対物レンズ30a〜30c各々に適した照射範囲F1〜F3となるよう、予め設定しておく。
【0061】
励起光照射部2Cは、この様な構成をしているため、制御部5からの制御信号に基づいてライトガイド出射部29の位置P1〜P3を切り替えて、ワイドギャップ半導体基板Wの表面に投影照射される励起光L1の照射範囲F(例えば、F1〜F3)およびエネルギー密度を変更することができる。この場合、上述した励起光照射部2,2Bの様に励起光L1の照射範囲F1〜F3の内外での光量差が急峻ではないものの、比較的簡易な装置構成でワイドギャップ半導体基板Wの表面に照射される励起光L1の照射範囲F(例えば、F1〜F3)およびエネルギー密度を変更することができるので、好ましい。
【0062】
また、本発明に係る照射倍率変更部は、この様な形態に限らず、励起光照射ユニット20と投影レンズ22を備えて、一定の拡がり角で励起光L1を照射する構成とし、励起光照射ユニット20と投影レンズ22を一体的に、ワイドギャップ半導体基板Wに対して近づけたり遠ざけたりする形態であっても良い。
【0063】
照射倍率変更部は、この様な形態であっても、ワイドギャップ半導体基板Wの表面に投影照射される励起光L1の照射範囲F(例えば、F1〜F3)およびエネルギー密度を変更することができ、本発明を具現化することができる。
【0064】
[検査対象となる基板、欠陥の種類]
上述では、検査対象となるワイドギャップ半導体基板Wの一類型として、SiC基板上にエピタキシャル層を成長させたものを例示し、このエピタキシャル層の内部、およびSiC基板との界面に生じた欠陥を検査する形態を示した。
【0065】
しかし、ワイドギャップ半導体としては、SiC基板に限定されず、GaNなどの半導体からなる基板であっても良い。そして、検査対象となる基板の材料に応じて、照射する励起光L1の波長は適宜設定すれば良い。そして、検査対象となる基板の材料、励起光の波長L1および欠陥種類に対するフォトルミネッセンス光L2の特性に応じて、欠陥種類を分類するための濃淡情報や色情報は適宜設定すれば良い。
【0066】
また、本発明に係る欠陥検査装置1は、ワイドギャップ半導体基板Wの表面上に形成させたエピタキシャル層に生じた欠陥のみならず、ワイドギャップ半導体基板Wを構成する材料そのものに生じた欠陥の検査にも適用することができる。
【0067】
また、検査対象となる欠陥は、上述で例示した欠陥に限らず、マイクロパイプ、貫通らせん転位、貫通刃状転位などの転位欠陥や、他の種類の欠陥であっても良い。そして、これら検出対象となる欠陥の種類に応じて、励起光L1の波長や、蛍光フィルタ部20を通過させるフォトルミネッセンス光L2の波長(つまり、蛍光フィルタ部20のフィルタリング波長)を適宜設定すれば良い。
【0068】
[励起光/蛍光フィルタの変形例]
上述では、励起光照射部2の励起光照射ユニット20が、UV−LEDを光源として備え、波長365nm前後の光を励起光L1として照射し、フォトルミネッセンス光L2が波長385〜800nmの光(つまり、可視光領域に近い紫外光ないし可視光領域の光)である構成を例示した。
【0069】
しかし、励起光L1の波長成分は、検査対象となる基板や欠陥の種類に応じて適宜決定すれば良い。同様に、欠陥検査のための撮像対象とするフォトルミネッセンス光L2は、どのような波長帯域の光を通過(つまり、フィルタリング)させるかは、検査対象となる基板や欠陥の種類や、励起光L1の波長に応じて適宜決定すれば良い。
【0070】
具体的には、検査対象となる各種欠陥が、SiC基板上に成長させたSiCエピタキシャル層に生じたものであれば、375nm以下(いわゆる紫外光)の光を励起光L1として照射し、GaN基板上に成長させたGaNエピタキシャル層に生じたものであれば365nm以下の深紫外光を励起光L1として照射する。
【0071】
例えば、検査対象となる各種欠陥がGaN基板上に成長させたGaNエピタキシャル層に生じたものので、励起光L1の波長が300nm付近の深紫外光であり、フォトルミネッセンス光L2が350〜400nmの可視光領域に近い紫外光であれば、蛍光観察フィルタとして、350nm以下を減衰させ、350nm以上を通過させる特性のものを用いる。
【0072】
また、励起光照射ユニット20に備えられた光源21としては、UV−LEDに限らず、レーザ発振器やレーザダイオード、キセノンランプ等を用いた構成でも良い。例えば、レーザ発振器やレーザダイオードを用いる場合であれば、YAGレーザやYVO4レーザとTHGとを組み合わせた、いわゆるUVレーザを用いて所定波長の励起光L1を照射する様に構成されている。一方、キセノンランプやメタルハライドランプ、水銀キセノンランプ、水銀ランプ等の白色光源を用いる場合であれば、励起光L1の波長成分を通過させてそれ以外の波長成分を吸収もしくは反射させるUV透過フィルタやダイクロイックミラーなどを用いて、所定波長の励起光L1を照射する様に構成されている。なお、光源21は、点光源や面光源などの方式を適宜選定することができ、光源の方式に応じて投影レンズの焦点距離や配置場所を設定すれば良い。
【0073】
また、蛍光フィルタ部32は、上述の様な構成に限らず、対物レンズ30a〜30cやイメージセンサ35の表面に施されたコーティング膜にて構成しても良い。
【0074】
[撮像倍率切替部の変形例]
上述では、撮像倍率切替部31として、制御部5からの制御信号に基づいてスライド・静止する電動アクチュエータ機構を例示した。しかし、撮像倍率切替部31は、他の方式により対物レンズ30a〜30cを切り替える構成でも良く、制御部5からの制御信号に基づいて回転・静止する電動レボルバ機構などにて構成されていても良い。
【0075】
[制御部の変形例]
本発明を具現化する上では、上述の様にステップアンドリピート方式で画像取得が行われる形態の場合、次の撮像位置への移動している間は、励起光L1を照射させない(いわゆる、消灯)状態にしておくことが好ましい。
【0076】
具体的には、照明光照射ユニット20と制御部5とを接続し、リモート操作によって照明光を出射させるための電流のON/OFFやシャッターの開閉により、励起光L1のON/OFFを切り替え制御する構成とする。この様な構成であれば、制御部5は、撮像カメラ33での撮像時に励起光L1を照射し、次の撮像位置への移動している間は励起光L1を照射させない(いわゆる、消灯)状態に切り替えることができ、ワイドギャップ半導体基板Wの移動中(つまり、非検査時)に不必要な励起光L1を照射させないため、欠陥の拡張防止効果を高めることができる。
【0077】
しかし、この励起光L1のON/OFFを切り替え制御は、必須の機能ではなく、低倍率での観察などエネルギー密度が低い場合や、検査時間に要する時間と比較して次の場所への移動の間に励起光L1が照射されている時間が短い場合など、欠陥の拡張にさほど影響しない程度であれば、励起光L1を常時照射していても良い。
【0078】
[相対移動部/撮像カメラの変形例]
なお上述では、相対移動部9の一例として、ステップアンドリピート方式で画像取得が行われる形態を例示したが、本発明を具現化する上ではこの様な方式に限らず、スキャン方式で画像取得が行われる形態であっても良い。
【0079】
具体的には、以下の様な形態が例示できる。
(1)エリアセンサを備えた撮像カメラを用い、励起光L1をストロボ的に発光させる。
(2)ラインセンサやTDIセンサを備えた撮像カメラを用い、励起光L1を常時照射し続ける。このとき、ラインセンサやTDIセンサの長手方向が、相対移動部9のスキャン方向と交差(望ましくは、直交)する様に配置しておく。
【0080】
また上述では、相対移動部9の一例として、装置フレーム1fに取り付けられた励起光照射部2及び蛍光撮像部3に対して、ワイドギャップ半導体基板Wを載置する基板保持部8をX方向およびY方向に移動させる形態を例示した。しかし、相対移動部9は、この様な構成に限らず、以下の様な形態であっても良い。
(1)励起光照射部2及び蛍光撮像部3をX方向またはY方向に移動させ、基板保持部8をY方向またはX方向に移動させる。
(2)励起光照射部2及び蛍光撮像部3をX方向およびY方向に移動させ、基板保持部8は装置フレーム1fに固定しておく。