【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11は、直並列連続切替チョッパを備える電源装置10aの構成例を示す図である。
【0005】
図11に示す電源装置10aは、スイッチング素子101〜104と、コンデンサ107,111,112,121と、インダクタ108,109,110,119,120と、単相インバータ113,114と、変圧器115,116と、整流器117,118と、三相インバータ122と、制御部123とを備える。スイッチング素子101〜104、インダクタ109,110およびコンデンサ111,112はSPCHを構成する。
【0006】
スイッチング素子101〜104はそれぞれ、オンオフ可能なIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子とダイオードとが逆並列接続されて構成される。
【0007】
スイッチング素子101(第1のスイッチング素子)とスイッチング素子103(第3のスイッチング素子)とは直列に接続され、レグ105(第1のレグ)を構成する。スイッチング素子102(第2のスイッチング素子)とスイッチング素子104(第4のスイッチング素子)とは直接に接続され、レグ106(第2のレグ)を構成する。
【0008】
スイッチング素子101のスイッチング素子103と接続されていない端と、スイッチング素子102のスイッチング素子104と接続されていない端との間に、コンデンサ107と、インダクタ108および直流電源20からなる直列体とが並列に接続される。電源装置10aが電気車に搭載される場合には、直流電源20は架線に相当する。
【0009】
インダクタ109(第1のインダクタ)は、スイッチング素子103のスイッチング素子101と接続されていない端と、スイッチング素子102とスイッチング素子104との接続点との間に接続される。
【0010】
インダクタ110(第2のインダクタ)は、スイッチング素子104のスイッチング素子102と接続されていない端と、スイッチング素子101とスイッチング素子103との接続点との間に接続される。
【0011】
スイッチング素子101のスイッチング素子103と接続されていない端と、スイッチング素子103のスイッチング素子101と接続されていない端との間には、コンデンサ111(第1のコンデンサ)および単相インバータ113(第1のインバータ)が並列接続される。すなわち、コンデンサ111および単相インバータ113は、レグ105と並列接続される。
【0012】
単相インバータ113は、スイッチング素子113a〜113dを備える。スイッチング素子113aとスイッチング素子113bとは直列に接続される。スイッチング素子113cとスイッチング素子113dとは直列に接続される。スイッチング素子113aのスイッチング素子113bと接続されていない端、および、スイッチング素子113cのスイッチング素子113dと接続されていない端は、コンデンサ111の一端と接続される。スイッチング素子113bのスイッチング素子113aと接続されていない端、および、スイッチング素子113dのスイッチング素子113cと接続されていない端は、コンデンサ111の他端と接続される。
【0013】
スイッチング素子113aとスイッチング素子113bとの接続点は、変圧器115の一次巻線の一端と接続される。スイッチング素子113cとスイッチング素子113dとの接続点は、変圧器115の一次巻線の他端と接続される。
【0014】
上述した構成の単相インバータ113によれば、スイッチング素子113a〜113dのスイッチングを制御することで、コンデンサ111の電圧(直流電圧)を交流電圧に変換し、変圧器115に出力することができる。
【0015】
スイッチング素子102のスイッチング素子104と接続されていない端と、スイッチング素子104のスイッチング素子102と接続されていない端との間には、コンデンサ112(第2のコンデンサ)および単相インバータ114(第2のインバータ)が並列接続される。すなわち、コンデンサ112および単相インバータ114は、レグ106と並列接続される。
【0016】
単相インバータ114は、スイッチング素子114a〜114dを備える。スイッチング素子114aとスイッチング素子114bとは直列に接続される。スイッチング素子114cとスイッチング素子114dとは直列に接続される。スイッチング素子114aのスイッチング素子114bと接続されていない端、および、スイッチング素子114cのスイッチング素子114dと接続されていない端は、コンデンサ112の一端と接続される。スイッチング素子114bのスイッチング素子114aと接続されていない端、および、スイッチング素子114dのスイッチング素子114cと接続されていない端は、コンデンサ112の他端と接続される。
【0017】
スイッチング素子114aとスイッチング素子114bとの接続点は、変圧器116の一次巻線の一端と接続される。スイッチング素子114cとスイッチング素子114dとの接続点は、変圧器116の一次巻線の他端と接続される。
【0018】
上述した構成の単相インバータ114によれば、スイッチング素子114a〜114dのスイッチングを制御することで、コンデンサ112の電圧(直流電圧)を交流電圧に変換し、変圧器116に出力することができる。
【0019】
変圧器115(第1の変圧器)は、一次側と二次側とが絶縁された高周波絶縁変圧器である。変圧器115は、一次巻線が単相インバータ113の出力端子(スイッチング素子113aとスイッチング素子113bとの接続点、および、スイッチング素子113cとスイッチング素子113dとの接続点)と接続され、二次巻線が整流器117に接続される。変圧器115は、単相インバータ113から出力された交流電圧を所定の変圧比で変圧して、整流器117に出力する。
【0020】
変圧器116(第2の変圧器)は、一次側と二次側とが絶縁された高周波絶縁変圧器である。変圧器116は、一次巻線が単相インバータ114の出力端子(スイッチング素子114aとスイッチング素子114bとの接続点、および、スイッチング素子114cとスイッチング素子114dとの接続点)と接続され、二次巻線が整流器118に接続される。変圧器116は、単相インバータ114から出力された交流電圧を所定の変圧比で変圧して、整流器118に出力する。
【0021】
整流器117(第1の整流器)は、ブリッジ状に接続されたダイオード117a〜117dを備え、変圧器115から出力された交流電圧を整流して出力する。
【0022】
整流器118(第2の整流器)は、ブリッジ状に接続されたダイオード118a〜118dを備え、変圧器116から出力された交流電圧を整流して出力する。
【0023】
インダクタ119(第3のインダクタ)は、一端が整流器117の高圧出力端子(ダイオード117aのカソードおよびダイオード117cのカソード)と接続される。
【0024】
インダクタ120(第4のインダクタ)は、一端が整流器118の高圧出力端子(ダイオード118aのカソードおよびダイオード118cのカソード)と接続される。
【0025】
コンデンサ121(第3のコンデンサ)は、一端がインダクタ119の他端およびインダクタ120の他端と接続され、他端が整流器117の低圧出力端子(ダイオード117bのアノードおよびダイオード117dのアノード)、および、整流器118の低圧出力端子(ダイオード118bのアノードおよびダイオード118dのアノード)と接続される。コンデンサ121は、整流器117,118の出力により充電される。コンデンサ121により、整流器117,118の出力が平滑化される。
【0026】
三相インバータ122は、コンデンサ121の電圧(直流電圧)を三相交流電圧に変換して負荷(交流負荷)に出力する。なお、
図1においては、コンデンサ121に三相インバータ122を接続し、コンデンサ121の電圧(直流電圧)を三相インバータ122により交流電圧に変換して負荷(交流負荷)に供給する例を示しているが、これに限られるものではなく、コンデンサ121に直流負荷を接続し、コンデンサ121の電圧を直流負荷に供給してもよい。
【0027】
三相インバータ122は、スイッチング素子122a〜122fを備える。スイッチング素子122aとスイッチング素子122bとは直列に接続される。スイッチング素子122cとスイッチング素子122dとは直列に接続される。スイッチング素子122eとスイッチング素子122fとは直列に接続される。
【0028】
スイッチング素子122aのスイッチング素子122bと接続されていない端と、スイッチング素子122cのスイッチング素子122dと接続されていない端と、スイッチング素子122eのスイッチング素子122fと接続されていない端とは、コンデンサ121の一端と接続される。スイッチング素子122bのスイッチング素子122aと接続されていない端と、スイッチング素子122dのスイッチング素子122cと接続されていない端と、スイッチング素子122fのスイッチング素子122eと接続されていない端とは、コンデンサ121の他端と接続される。
【0029】
スイッチング素子122aとスイッチング素子122bとの接続点と、スイッチング素子122cとスイッチング素子122dとの接続点と、スイッチング素子122eとスイッチング素子122fとの接続点とが負荷に接続される。スイッチング素子122a〜122fのスイッチングを制御することで、これらの接続点から負荷に三相交流電圧が出力される。
【0030】
制御部123は、上述した電源装置10aの各部の動作を制御する。例えば、制御部123は、スイッチング素子101〜104のスイッチングを制御する。また、制御部123は、単相インバータ113,114の通流率D
TR1,D
TR2を設定し、設定した通流率D
TR1,D
TR2に応じて、単相インバータ113,114が備えるスイッチング素子113a〜113d,114a〜114dのスイッチングを制御する。こうすることで、設定した通流率D
TR1,D
TR2に応じた電圧が単相インバータ113,114それぞれから出力され、変圧器115,116により所望の電圧に変圧される。
【0031】
以下では、直流電源20の電源電圧をEとし、コンデンサ107の電圧をV
Cfとし、インダクタ109に流れる電流をI
L1とし、インダクタ110に流れる電流をI
L2とし、コンデンサ111の電圧をV
C1とし、コンデンサ112の電圧をV
C2とし、インダクタ119を流れる電流をI
REC1とし、インダクタ120を流れる電流をI
REC2とする。また、コンデンサ107のキャパシタンスをC
fとし、コンデンサ111のキャパシタンスをC
1とし、コンデンサ112のキャパシタンスをC
2とし、インダクタ109のインダクタンスをL
1とし、インダクタ110のインダクタンスをL
2とし、インダクタ119のインダクタンスをL
REC1とし、インダクタ120のインダクタンスをL
REC2とする。
【0032】
L
1=L
2=L、C
1=C
2=C、L
REC1=L
REC2と設定すると、制御部123は、電圧V
C1の出力電圧指令値V
C1_REF、電圧V
C2の出力電圧指令値V
C2_REFを用いて、以下の式(1),(2)に従い、スイッチング素子101のデューティー比(通流率)D
1およびスイッチング素子102のデューティー比D
2を算出する。
【0033】
【数1】
【0034】
制御部123は、算出したデューティー比D
1,D
2を指令値として、スイッチング素子101〜104のスイッチングを制御する。また、制御部123は、単相インバータ113,114の通流率D
TR1,D
TR2を設定し、その通流率D
TR1,D
TR2に従い、単相インバータ113,114を駆動する。
【0035】
通流率とは、0から1までの範囲で変化する値である。通流率D
1,D
2が0になると、スイッチング素子101,102がオンとなり、スイッチング素子103,104がオフとなる。この状態では、コンデンサ111,112は、直流電源20と並列接続となる。以下では、この状態を並列モードと称する。
【0036】
SPCHを備える電源装置10aでは、並列モードにおいては、架線電圧降下、変圧器115,116の変圧比の誤差などに起因して、整流器117,118の出力電圧に電圧差が生じることがある。この電圧差により、各インダクタ(インダクタ109,110,119,120)に循環電流が流れ、単相インバータ113、変圧器115および整流器117で構成される絶縁整流回路と、単相インバータ114、変圧器116および整流器118で構成される絶縁整流回路とで、負荷電力の分担が不平衡となってしまう。このような負荷電力の分担の不平衡が生じると、電源装置10aの効率低下、過電流による故障、寿命減少などの悪影響が生じる。
【0037】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、循環電流の発生を抑制し、負荷電力の分担の平衡化を図ることができる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記課題を解決するため、本発明に係る電源装置は、第1のスイッチング素子と第3のスイッチング素子とが直列に接続され、前記第1のスイッチング素子の前記第3のスイッチング素子と接続されていない端が直流電源と接続された第1のレグと、第2のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とが直列に接続され、前記第2のスイッチング素子の前記第4のスイッチング素子と接続されない端が前記直流電源と接続された第2のレグと、前記第3のスイッチング素子の前記第1のスイッチング素子と接続されていない端と、前記第2のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続点との間に接続された第1のインダクタと、前記第4のスイッチング素子の前記第2のスイッチング素子と接続されていない端と、前記第1のスイッチング素子と前記第3のスイッチング素子との接続点との間に接続された第2のインダクタと、前記第1のレグと並列接続された第1のコンデンサおよび第1のインバータと、前記第2のレグと並列接続された第2のコンデンサおよび第2のインバータと、前記第1のインバータの出力端子に一次巻線が接続された第1の変圧器と、前記第2のインバータの出力端子に一次巻線が接続された第2の変圧器と、前記第1の変圧器の二次巻線に接続された第1の整流器と、前記第2の変圧器の二次巻線に接続された第2の整流器と、一端が前記第1の整流器の高圧出力端子と接続された第3のインダクタと、一端が前記第2の整流器の高圧出力端子と接続された第4のインダクタと、一端が前記第3のインダクタの他端および前記第4のインダクタの他端と接続され、他端が前記第1の整流器の低圧出力端子および前記第2の整流器の低圧出力端子と接続された第3のコンデンサと、前記第3のインダクタを流れる電流と前記第4のインダクタを流れる電流との電流差を検出し、該検出した電流差に基づき、前記第1のコンデンサの電圧を指令する第1の電圧指令値および前記第2のコンデンサの電圧を指令する第2の電圧指令値を補正し、補正後の第1の電圧指令値および補正後の第2の電圧指令値を用いて、前記第1から第4のスイッチング素子のスイッチングを制御する制御部と、を備える。
【0039】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る電源装置において、前記制御部は、前記第3のインダクタを流れる電流と前記第4のインダクタを流れる電流との電流差に代わり、前記第1のインダクタを流れる電流と前記第2のインダクタを流れる電流との電流差を検出し、該検出した電流差に基づき、前記第1の電圧指令値および前記第2の電圧指令値を補正し、補正後の第1の電圧指令値および補正後の第2の電圧指令値を用いて、前記第1から第4のスイッチング素子のスイッチングを制御する。
【0040】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る電源装置は、第1のスイッチング素子と第3のスイッチング素子とが直列に接続され、前記第1のスイッチング素子の前記第3のスイッチング素子と接続されていない端が直流電源と接続された第1のレグと、第2のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とが直列に接続され、前記第2のスイッチング素子の前記第4のスイッチング素子と接続されない端が前記直流電源と接続された第2のレグと、前記第3のスイッチング素子の前記第1のスイッチング素子と接続されていない端と、前記第2のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続点との間に接続された第1のインダクタと、前記第4のスイッチング素子の前記第2のスイッチング素子と接続されていない端と、前記第1のスイッチング素子と前記第3のスイッチング素子との接続点との間に接続された第2のインダクタと、前記第1のレグと並列接続された第1のコンデンサおよび第1のインバータと、前記第2のレグと並列接続された第2のコンデンサおよび第2のインバータと、前記第1のインバータの出力端子に一次巻線が接続された第1の変圧器と、前記第2のインバータの出力端子に一次巻線が接続された第2の変圧器と、前記第1の変圧器の二次巻線に接続された第1の整流器と、前記第2の変圧器の二次巻線に接続された第2の整流器と、一端が前記第1の整流器の高圧出力端子と接続された第3のインダクタと、一端が前記第2の整流器の高圧出力端子と接続された第4のインダクタと、一端が前記第3のインダクタの他端および前記第4のインダクタの他端と接続され、他端が前記第1の整流器の低圧出力端子および前記第2の整流器の低圧出力端子と接続された第3のコンデンサと、前記第3のインダクタを流れる電流と前記第4のインダクタを流れる電流との電流差を検出し、該検出した電流差に基づき、前記第1のインバータの通流率である第1の通流率および前記第2のインバータの通流率である第2の通流率を補正し、補正後の第1の通流率および補正後の第2の通流率を用いて、前記第1のインバータおよび前記第2のインバータを制御する制御部と、を備える。
【0041】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る電源装置において、前記制御部は、前記第3のインダクタを流れる電流と前記第4のインダクタを流れる電流との電流差の代わりに、前記第1のインダクタを流れる電流と前記第2のインダクタを流れる電流との電流差を検出し、該検出した電流差に基づき、前記第1の通流率および前記第2の通流率を補正し、補正後の第1の通流率および補正後の第2の通流率を用いて、前記第1のインバータおよび前記第2のインバータを制御する。
【0042】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る電源装置において、前記制御部は、前記第3のインダクタを流れる電流と前記第4のインダクタを流れる電流との電流差を、前記第3のインダクタを流れる電流を検出する電流センサ、および、前記第4のインダクタを流れる電流を検出する電流センサの検出結果を用いて検出する、または、1つの電流センサにより検出することが望ましい。
【0043】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る電源装置において、前記制御部は、前記第1のインダクタを流れる電流と前記第2のインダクタを流れる電流との電流差を、前記第1のインダクタを流れる電流を検出する電流センサ、および、前記第2のインダクタを流れる電流を検出する電流センサの検出結果を用いて検出する、または、1つの電流センサにより検出することが望ましい。