(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。また、同一の構成要素には、同一の符号が付してある。
【0017】
(実施の形態)
図1〜
図3は、本発明の一実施の形態にかかる電力用半導体装置の構成を示す部分断面図である。
図1は、電力用半導体装置1の構成を示す断面図である。
図2は、電力用半導体装置1の圧接ユニットの構成を説明する斜視図である。
図3は、
図2に示す圧接ユニットを下方からみたときの構成を説明する平面図である。なお、
図1に示す電力用半導体装置は、使用状態を示す図であり、後述する導電性カバープレートに荷重が加わっている状態である。電力用半導体装置は、スイッチングチップ、フリーホイールダイオードチップ、ワイドバンドギャップチップなどの複数の電力用半導体チップを用いた電力用半導体装置であり、各チップと導電性カバープレートの間には、複数の圧力接触用の圧接部材が配置されている。これと同時に、スイッチングチップやワイドバンドギャップチップを用いた電力用半導体装置においては、圧接部材以外に信号用の接続部材(図示せず)が配置されており、その接続部材の一端は、スイッチングチップやワイドバンドギャップチップの信号パッドに接続されるとともに、他端は導電性カバープレート下に配置されたゲート/エミッタ信号用基板に接続されている構造である。電力用半導体装置は、一つの電力用半導体装置を用いるものであってもよいし、複数個積層してもよい。
【0018】
図1に示す電力用半導体装置1は、略平板状の導電性ベースプレート2と、略平板状の導電性カバープレート3と、半導体チップ4と、圧接部材5と、金属板6と、内側樹脂フレーム7と、外側樹脂フレーム8とを備える。
【0019】
導電性ベースプレート2には、金属板6を介して複数の半導体チップ4が設けられている。半導体チップ4は、板状をなしている。半導体チップ4は、一方の主面に電極4aが設けられており、この電極4aを介して圧接部材5と電気的に接続している。また、半導体チップ4は、金属板6と電気的に接続している。なお、金属板6の板厚は適宜設計可能である。なお、本明細書において、板形状の「主面」とは、部材の表面を構成する複数の面のうちの一部の面であって最も広い面積を有する面のことをいう。また、側面(または側部)は、主面と交差する面(部分)のことをいう。
【0020】
導電性カバープレート3は、略板状をなしている。
図1において、導電性カバープレート3は、側面側の端部が段付き形状をなしているが、これに限らず、一様な断面積で構成されていてもよい。導電性カバープレート3は、例えば、銀メッキを施した純銅を用いて形成される。
【0021】
本実施の形態では、導電性カバープレート3および圧接部材5により、圧接ユニット10を構成している。圧接ユニット10は、
図2および
図3に示すように、導電性カバープレート3が、複数の圧接部材5を保持してなる。本実施の形態では、九つの圧接部材5が導電性カバープレート3に取り付けられているものとして説明するが、この数に限らず、二つ以上の圧接部材5が取り付けられる。また、本実施の形態においては、各圧接部材5が、各々の向きを揃えて配列されている。
【0022】
図4〜7は、本発明の一実施の形態にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図であって、圧接ユニット10を説明する図である。
図4は、圧接ユニット10の構成を示す斜視図である。
図5は、圧接ユニット10の構成を示す側面図である。
図6は、圧接ユニット10の構成を示す部分断面図であり、
図6の左側が側面図、右側が、後述するガイドピン55を通過する平面を切断面とする断面図を示している。
図7は、
図6のA−A線部分断面図である。圧接ユニット10は、上述したように、導電性カバープレート3に複数の圧接部材5が取り付けられてなる。
【0023】
圧接部材5は、第1通電部51と、第2通電部52と、ばね部材53と、固定ねじ54と、ガイドピン55とを有する。
【0024】
第1通電部51は、角柱状をなす本体部511と、本体部511の表面からそれぞれ突出してなる二つの突出部512とを有する。第1通電部51は、例えば純銅を用いて形成される。
【0025】
本体部511は、断面積が異なる段付き形状をなして延びるものとして説明するが、同一の断面積で延びる形状をなしていてもよい。本体部511には、一端側に開口を有し、複数のばね部材53の一部を収容可能であり、各ばね部材53の伸縮方向を揃えて保持可能な第1収容部511aと、第1収容部511aの他端に連なり、ガイドピン55を収容可能な第2収容部511bとが形成されている(
図6参照)。また、本体部511には、圧接部材5の伸縮方向に沿って延び、第2通電部52と接触する表面をなす二つの平面部511cを有する(
図6参照)。
【0026】
突出部512は、本体部511における第1収容部511aの開口が形成されている面と交差する面のうち、対向する面の第1収容部511aの開口側の端部からそれぞれ突出している。突出部512は、端部側が面取りされているものを例に説明するが、面取りを有さずに、角柱状をなして突出していたり、突出方向の先端側が球状をなしていたりしてもよい。
【0027】
第2通電部52は、帯状の部材を略C字状に湾曲させてなる。第2通電部52は、平板状をなす基部521と、基部521の互いに対向する側面から、基部521に対して屈曲してそれぞれ延び、第1通電部51に対して摺動可能な摺動部522と、を有する。摺動部522は、基部521の互いに対向する側面から、基部521に対して屈曲してそれぞれ延出する二つの延出部522aと、各延出部522aの端部のうち基部521に連なる側と反対側の端部から、対向する延出部522a側に向けて湾曲して延びる二つの湾曲部522bとを有する。第2通電部52は、二つの延出部522aおよび湾曲部522bが、本体部511の突出部512が形成されている面を挟み込んでいる。本構成において、突出部512は、湾曲部522bが係止することによって第2通電部52の抜け止め機能を担うことができる。第2通電部52は、例えばコルソン銅を用いて形成される。
【0028】
ばね部材53は、一端側が第1通電部51に保持され、他端が基部521に当接している。ばね部材53は、導電性カバープレート3と第1通電部51とが互いに離れる方向に付勢している。ばね部材53は、長手方向と直交する面を切断面とする断面が矩形をなす線材を巻回してなる角線コイルばねを用いて実現される。ばね部材53は、絶縁性材料からなるものであってもよいし、導電性材料からなるものであってもよい。また、本実施の形態では、ばね部材53が複数設けられるものとして説明するが、ガイドピン55を挿通するばね部材、例えば一つの角線コイルばねや複数の皿ばねからなるものであってもよい。ばね部材53は、例えば線材を巻回することにより延伸する方向である当該ばね部材53の長手方向に伸縮する。
【0029】
複数のばね部材53およびガイドピン55は、
図7に示すように、第1収容部511aに収容されている。この際、複数のばね部材53およびガイドピン55は、各々の位置を固定して圧接する荷重を安定させるという観点で、第1収容部511aに密に収容されていることが好ましい。
【0030】
ここで、導電性カバープレート3には、板厚方向に貫通する一つの第1貫通孔3a、および二つの第2貫通孔3bが形成されている(
図4参照)。第1貫通孔3aは、ガイドピン55を挿通可能な径を有し、板厚方向に延びている。第2貫通孔3bは、固定ねじ54を螺合可能な径を有し、板厚方向に延びている。なお、第1貫通孔3aおよび第2貫通孔3bは、ガイドピン55および固定ねじ54を挿通可能であれば、板厚方向に貫通していなくてもよい。
【0031】
同様に、基部521には、板厚方向に貫通する一つの第1貫通孔521a、および二つの第2貫通孔521bが形成されている(
図2,6参照)。第1貫通孔521aは、ガイドピン55を挿通可能な径を有し、板厚方向に貫通している。第2貫通孔521bは、固定ねじ54を挿通可能な径を有し、板厚方向に貫通している。
【0032】
圧接部材5は、本体部511の側面に第2通電部52の湾曲部522bが摺動自在に接触しているとともに、固定ねじ54によって基部521と導電性カバープレート3とが固定されている。なお、基部521と導電性カバープレート3とを一体化できれば、固定ねじ54による固定に限らず、ろう付け、または接合により基部521と導電性カバープレート3とを固定してもよい。
【0033】
このようにして基部521と導電性カバープレート3とを固定することによって、半導体チップ4が短絡破壊して爆風が生じた場合でも、両者の間の接触を維持することができる。この際、導電性カバープレート3が変形するなどして、導電性ベースプレート2から離間して、半導体チップ4と導電性カバープレート3との間の距離が大きくなったとしても、湾曲部522bが摺動して本体部511との接触を維持することができる。このため、本体部511の湾曲部522bの摺動面は、導電性カバープレート3の変形により離間する距離に対応できるように確保されていることが好ましい。これにより、半導体チップ4と導電性カバープレート3との間の電気的な接続を維持することができる。
【0034】
図1に戻り、内側樹脂フレーム7は、導電性ベースプレート2から立設されている。
【0035】
外側樹脂フレーム8は、導電性カバープレート3の両端部から、導電性カバープレート3の主面と直交する方向に延びている。外側樹脂フレーム8は、内側樹脂フレーム7の外周側を覆うように設けられている。外側樹脂フレーム8を設けることにより防爆性を向上することができる。
【0036】
続いて、本発明にかかる圧接ユニット10と、従来の圧接ユニットとの荷重に対する電気抵抗の特性について説明する。電気抵抗は、圧接ユニットに所定の荷重を加えた状態において、4端子法により測定して得た値である。
【0037】
図8は、従来の圧接ユニットの構成を説明する模式図である。
図8に示す圧接ユニット20は、金属ブロック200と、皿ばね201と、第1通電部202と、第2通電部203と、中間部材204〜206と、銅板207とを備える。圧接ユニット20は、金属ブロック200上に第1通電部202および第2通電部203が順に積層され、第2通電部203の金属ブロック200側と反対側の端部に中間部材204が積層されている。中間部材204の第2通電部203側と反対側には、銅板207が積層されている。また、中間部材205,206は、金属ブロック200と銅板211とに挟まれてなる。圧接ユニット20を用いた4端子測定では、銅板207,211を電気的に接続して測定を行う。
【0038】
第1通電部202および第2通電部203は、導電性材料を用いて形成され、帯状の部材を湾曲してなる。第1通電部202および第2通電部203は、互いに対向する方向から皿ばねを挟み込むようにして設けられる。なお、本測定において、第1通電部202および第2通電部203は、第1通電部51と同じ材料を用いた。第1通電部202および第2通電部203は、外部からの荷重Fによって銅板207が押し下げられることによる皿ばね201の収縮に追従して、
図8の左右方向にそれぞれ広がるように変形する。
【0039】
図9は、圧接ユニットに加わる荷重と、電気抵抗との関係を説明する図である。
図9では、曲線L
1が本発明にかかる圧接ユニット10の電気抵抗曲線を示し、曲線L
100が従来の圧接ユニット20の電気抵抗曲線を示している。
図9に示すように、圧接ユニット10の方が、小さい荷重で電気抵抗が安定していることがわかる。これは、圧接ユニット10における電流の導通経路において、異なる部材が接触する接点箇所が、第1通電部51と第2通電部52との間、および第2通電部52と導電性カバープレート3との間の二箇所しかないのに対し、圧接ユニット20では九箇所あり、この接点箇所の差によるものと考えられる。接点箇所が多いほど、抵抗値が安定するまでに大きな荷重が必要であることがわかる。
【0040】
図10は、本発明にかかる圧接ユニットと、従来の圧接ユニットとにおいて100Nの荷重が加わった場合の電気抵抗を説明する図である。
図11は、本発明にかかる圧接ユニットと、従来の圧接ユニットとにおいて800Nの荷重が加わった場合の電気抵抗を説明する図である。なお、荷重にかかわらず、圧接ユニット10は0.0047mΩの部材固有抵抗を有しており、従来の圧接ユニット20は0.0036mΩの部材固有抵抗を有している。電気抵抗は、この部材固有抵抗と、荷重に応じて変化する接触抵抗とからなる。
【0041】
図10に示すように、100Nの荷重が加わった状態において、圧接ユニット10では電気抵抗が0.166mΩとなるのに対して、圧接ユニット20では電気抵抗が0.381mΩとなっている。すなわち、圧接ユニット10では接触抵抗が0.119mΩとなり、圧接ユニット20では接触抵抗が0.345mΩとなっている。
【0042】
また、
図11に示すように、800Nの荷重が加わった状態において、圧接ユニット10では電気抵抗が0.152mΩとなるのに対して、圧接ユニット20では電気抵抗が0.151mΩとなっている。すなわち、圧接ユニット10では接触抵抗が0.105mΩとなり、圧接ユニット20では接触抵抗が0.115mΩとなっている。
【0043】
荷重が100Nの電気抵抗をΩ
100、800Nの電気抵抗をΩ
800とすると、
図10及び
図11が示す値より、100Nと800Nとの電気抵抗比(Ω
100/Ω
800)は、圧接ユニット10がおよそ1.09となり、圧接ユニット20がおよそ2.52となる。また、800Nの荷重を加えた際の接触抵抗に対する100Nの荷重を加えた際の接触抵抗比(Ω
100/Ω
800)は、圧接ユニット10がおよそ1.13となり、圧接ユニット20が3.00となる。本発明にかかる圧接ユニット10は、上述した接触抵抗比が、1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがさらに好ましく、1.0以上1.1以下であることがさらに好ましい。このように、圧接ユニット10は、圧接ユニット20と比して荷重間の抵抗比が小さく、小さい荷重から安定した電気的導通を確保することができるといえる。一因として、圧接ユニット10は、接点箇所が少ないことと、第2通電部52が第1通電部51の周面に対して摺動可能に接触していることとが挙げられる。摺動可能に接触することによって、荷重によらず一定の接触抵抗を維持することができる。なお、上述した接触抵抗比は、800Nの荷重と100Nの荷重との接触抵抗比を例に説明したが、800Nおよび100Nに限らず、それぞれ前後数十Nの荷重における接触抵抗の比としてもよい。例えば、800Nの前後50N(750N〜850N)の接触抵抗と、100Nの前後50N(50N〜150N)の接触抵抗との比であってもよい。この場合の接触抵抗比についても、上述した範囲となる。
【0044】
上述した本発明の一実施の形態によれば、導電性カバープレート3と第2通電部52とを固定ねじ54で固定するとともに、第1通電部51に対して第2通電部52を摺動自在に接触させるようにしたので、一部の半導体チップ4が故障しても導通を維持することができるとともに、電力用半導体装置1を小型化することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、導電性カバープレート3と第2通電部52とを固定ねじ54で固定するとともに、第1通電部51に対して第2通電部52を摺動自在に接触させることにより、従来の構成と比して荷重間の抵抗比を小さくしたので、小さい荷重で圧接する場合であっても、安定した電気的導通を確保することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、複数のばね部材53を、一つの穴をなす第1収容部511aに収容するようにしたので、第1通電部51に対して、複数のばね部材53を容易に組み付けることができる。この際、複数のばね部材53を結束バンド等の保持部材によって保持した状態で、第1収容部511aに収容するようにしてもよい。
【0047】
なお、本実施の形態において、第2通電部52が、基部521と、複数の延出部522aおよび湾曲部522bとを有するものとして説明したが、例えば、第2通電部52が、基部521を有さずに、互いに別体で設けられる複数の延出部521および湾曲部522bからなり、延出部522aが固定ねじ54によって導電性カバープレート3に固定されるものであってもよい。この場合、ばね部材53は、導電性カバープレート3に当接する。
【0048】
(実施の形態の変形例1)
図12および
図13は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図である。
図12は、電力用半導体装置1の圧接ユニットの構成を説明する斜視図である。
図13は、
図12に示す圧接ユニットを下方からみたときの構成を説明する平面図である。上述した実施の形態では、各圧接部材5が、各々の向きを揃えて配列されているものとして説明したが、
図12および
図13に示すように、各圧接部材5が互い違いに向くように配列されてもよい。導電性カバープレート3の主面上において圧接部材5が占有する面積が長方形である場合、隣り合う圧接部材5の長辺と短辺とが互い違いとなるように配列することによって、複数の圧接部材5をより密に配列させることが可能となる。
【0049】
(実施の形態1の変形例2)
図14〜
図16は、本発明の実施の形態の変形例2にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図である。
図14は、本変形例2にかかる圧接部材5Aを斜め上方から見た斜視図である。
図15は、本変形例2にかかる圧接部材5Aの側面図である。
図16は、本変形例2にかかる圧接部材5Aを斜め下方から見た斜視図である。本変形例2にかかる圧接ユニット10Aは、導電性カバープレート3Aに複数の圧接部材5Aが取り付けられてなる。導電性カバープレート3Aは、略板状をなしている。
【0050】
圧接部材5Aは、第1通電部51Aと、第2通電部52Aと、ばね部材53と、固定ねじ54と、上述したガイドピン55(図示せず)とを有する。
【0051】
第1通電部51Aは、円柱状をなす本体部513を有する。本体部513には、一端側に開口を有し、複数のばね部材53の一部を収容可能な第1収容部513aと、第1収容部513aの他端に連なり、ガイドピン55を収容可能な第2収容部513bとが形成されている(
図15参照)。第1通電部51Aは、例えば純銅を用いて形成される。本変形例2では、本体部513の側面部の表面において、第2通電部52Aが摺動する。
【0052】
第2通電部52Aは、平板状をなす基部523と、基部523の互いに対向する側面から、基部523に対して屈曲してそれぞれ延び、第1通電部51Aに対して摺動可能な三つの摺動部524と、を有する。摺動部522は、基部523の互いに異なる側面からそれぞれ延出する延出部524aと、各延出部524aの端部のうち基部523に連なる側と反対側の端部から、対向する延出部524a側に向けて湾曲して延びる湾曲部524bとを有する。第2通電部52Aは、三つの延出部524aおよび湾曲部524bが、本体部513の周面を挟み込んでいる。なお、摺動部524の数は三つに限らず、三つ以上設けることによって電気的な信頼性を向上できることは言うまでもない。
【0053】
基部523には、上述した第1貫通孔521aと同様に、ガイドピン55を挿通可能な貫通孔が形成されている。また、基部523には、三つの延出部524aの間からそれぞれ延びる三つの舌片部523aを有し、各舌片部523aには、上述した第2貫通孔521bと同様に、固定ねじ54を挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0054】
ここで、導電性カバープレート3Aには、板厚方向に貫通する一つの第1貫通孔3a、および三つの第2貫通孔3cが形成されている(
図14参照)。第2貫通孔3cは、固定ねじ54を螺合可能な径を有し、板厚方向に延びている。なお、第2貫通孔3cについても、固定ねじ54を挿通可能であれば、板厚方向に貫通していなくてもよい。
【0055】
本変形例2においても、固定ねじ54によって第2通電部52Aと導電性カバープレート3Aとが固定されている。
【0056】
上述した変形例2によれば、導電性カバープレート3Aと第2通電部52Aとを固定ねじ54で固定するとともに、第1通電部51Aに対して第2通電部52Aを摺動自在に接触させるようにしたので、一部の半導体チップ4が故障しても導通を維持することができるとともに、電力用半導体装置1を小型化することができる。
【0057】
また、上述した変形例2によれば、本体部513が円柱状をなすため、上述した角柱状をなす本体部511と比して加工が容易である。
【0058】
(実施の形態の変形例3)
図17および
図18は、本発明の実施の形態の変形例3にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図である。
図17は、本変形例3にかかる圧接部材5Bを斜め上方から見た斜視図である。
図18は、本変形例3にかかる圧接部材5Bの側面図である。本変形例3にかかる圧接ユニット10Bは、導電性カバープレート3Bに複数の圧接部材5Bが取り付けられてなる。導電性カバープレート3Bは、略板状をなしている。
【0059】
圧接部材5Bは、第1通電部51と、第2通電部52Bと、ばね部材53と、固定ねじ54Aと、上述したガイドピン55(図示せず)とを有する。
【0060】
第2通電部52Bは、平板状をなす基部525と、基部525の互いに対向する側面から、基部521に対して屈曲してそれぞれ延び、第1通電部51に対して摺動可能な摺動部526と、を有する。摺動部526は、基部525の互いに異なる側面からそれぞれ延出する四つの延出部526aと、各延出部526aの端部のうち基部525に連なる側と反対側の端部から、対向する延出部525a側に向けて湾曲して延びる四つの湾曲部526bとを有する。第2通電部52Bは、四つの延出部526aおよび湾曲部526bが、本体部511の周面を挟み込んでいる。本変形例3では、圧接部材5Bの伸縮方向に沿って延びる四つの面が、第2通電部52Bと接触する表面をなす平面部511cとなる。
【0061】
基部525には、上述した第1貫通孔521aと同様に、ガイドピン55を挿通可能な貫通孔が形成されている。また、基部525には、四つの延出部526aの間からそれぞれ延びる四つの舌片部525aを有し、各舌片部525aには、上述した第2貫通孔521bと同様に、固定ねじ54Aを挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0062】
ここで、導電性カバープレート3Bには、板厚方向に貫通する一つの第1貫通孔3a、および四つの第2貫通孔3dが形成されている(
図17参照)。第2貫通孔3dは、固定ねじ54Aを螺合可能な径を有し、板厚方向に延びている。なお、第2貫通孔3dについても、固定ねじ54Aを挿通可能であれば、板厚方向に貫通していなくてもよい。
【0063】
本変形例3においても、固定ねじ54Aによって第2通電部52Bと導電性カバープレート3Bとが固定されている。
【0064】
上述した変形例3によれば、導電性カバープレート3Bと第2通電部52Bとを固定ねじ54Aで固定するとともに、第1通電部51に対して第2通電部52Bを摺動自在に接触させるようにしたので、一部の半導体チップ4が故障しても導通を維持することができるとともに、電力用半導体装置1を小型化することができる。
【0065】
(実施の形態1の変形例4)
図19〜
図22は、本発明の実施の形態の変形例4にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図である。
図19は、本変形例4にかかる圧接部材5Cを斜め上方から見た斜視図である。
図20は、本変形例4にかかる圧接部材5Cの側面図である。
図21は、本変形例4にかかる圧接部材5Cを斜め下方から見た斜視図である。本変形例4にかかる圧接ユニット10Cは、導電性カバープレート3Cに複数の圧接部材5Cが取り付けられてなる。導電性カバープレート3Cは、略板状をなしている。
【0066】
圧接部材5Cは、第1通電部51Aと、第2通電部52Cと、ばね部材53と、固定ねじ54と、上述したガイドピン55(図示せず)とを有する。本変形例4では、本体部513の側面部の表面において、第2通電部52Cが摺動する。
【0067】
第2通電部52Cは、帯状の部材を周回させてなる基部527と、基部527の長手方向と直交する側面であって一方の側面から互いに近づく方向に屈曲してそれぞれ延び、第1通電部51Aに対して摺動可能な七つの摺動部528と、を有する。摺動部528は、基部527の同じ側の側面からそれぞれ延出する延出部528aと、各延出部528aの端部のうち基部527に連なる側と反対側の端部から、対向する延出部528a側に向けて湾曲して延びる湾曲部528bとを有する。第2通電部52Cは、三つの延出部528aおよび湾曲部528bが、本体部513の周面を挟み込んでいる。なお、摺動部528の数は七つに限らず、三つ以上設ければ電気的な信頼性を確保することが可能である。
【0068】
基部527には、上述した第1貫通孔521aと同様に、ガイドピン55を挿通可能な貫通孔が形成されている。また、基部527には、基部527の摺動部528が延びる側と反対側の側面からそれぞれ延びる三つの舌片部527aを有し、各舌片部527aには、上述した第2貫通孔521bと同様に、固定ねじ54を挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0069】
ここで、導電性カバープレート3Cには、板厚方向に貫通する一つの第1貫通孔3a、および三つの第2貫通孔3eが形成されている(
図14参照)。第2貫通孔3eは、固定ねじ54を螺合可能な径を有し、板厚方向に延びている。なお、第2貫通孔3eについても、固定ねじ54を挿通可能であれば、板厚方向に貫通していなくてもよい。
【0070】
本変形例4においても、固定ねじ54によって第2通電部52Cと導電性カバープレート3Cとが固定されている。
【0071】
上述した変形例4によれば、導電性カバープレート3Cと第2通電部52Cとを固定ねじ54で固定するとともに、第1通電部51Aに対して第2通電部52Cを摺動自在に接触させるようにしたので、一部の半導体チップ4が故障しても導通を維持することができるとともに、電力用半導体装置1を小型化することができる。
【0072】
(実施の形態の変形例5)
図22は、本発明の実施の形態の変形例5にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図であって、ばね部材の構成の他の例を示す図である。本変形例5にかかるばね部材53Aは、
図22に示すように、当該ばね部材53Aを構成し、断面が矩形をなす線材である帯状部材の幅d
1が、巻回により延伸する方向の部材間の距離であるピッチd
2より大きい。また、ばね部材53Aは、
図23に示すように、帯状部材の長手方向および幅d
1方向と垂直な方向の長さ(板厚)d
3が、幅d
1よりも小さい。
【0073】
本変形例5にかかるばね部材53Aのように、当該ばね部材53Aを構成する帯状部材の幅d
1に対し、巻回により延伸する方向のピッチd
2を小さくすることによって、複数のばね部材53Aを束ねて一括して第1収容部511aに収容する場合であっても、ばね部材53A同士が絡むことなく、容易に第1収容部511a内に収容させることができる。
【0074】
なお、上述した変形例5では、ばね部材53Aが、帯状部材の長手方向および幅d
1方向と垂直な方向の長さ(板厚)が、幅d
1よりも小さいものを例に説明したが、d
1>d
2の関係を満たしていれば、当該ばね部材を構成する帯状部材の幅d
1に対し、帯状部材の長手方向および幅d
1方向と垂直な方向の長さ(板厚)が大きいものであってもよい。
【0075】
(実施の形態の変形例6)
図23は、本発明の実施の形態の変形例6にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図であって、ばね部材の構成の他の例を示す図である。上述した実施の形態では、ばね部材53が、長手方向と直交する面を切断面とする断面が矩形をなす線材を巻回してなる角線コイルばねであるものとして説明したが、
図23に示すばね部材53Bのように、長手方向と直交する面を切断面とする断面が円をなす線材を巻回してなる丸線コイルばねであってもよい。
【0076】
(実施の形態の変形例7)
図24は、本発明の実施の形態の変形例7にかかる電力用半導体装置の要部の構成を示す模式図であって、ばね部材の構成の他の例を示す図である。上述した実施の形態1では、ばね部材53が、長手方向と直交する面を切断面とする断面が矩形をなす線材を巻回してなる角線コイルばねであるものとして説明したが、
図24に示すばね部材53Cのように、帯状の材料が用いられ、主面に沿って湾曲された形状をなす板ばねであってもよい。ばね部材53Cに用いられる帯状の材料は、一様な幅および均一な板厚を有する材料であってもよい。なお、幅とは、帯状の部材の主面において、長手方向と直交する方向の長さを指す。
【0077】
上述した実施の形態は、本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。本発明は、仕様等に応じて種々変形することが可能であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは、上記記載から自明である。