(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交通信号制御機から歩行者用灯器に送られる灯色信号を受け、前記灯色信号が青色を表すときに音響信号をスピーカに出力し、前記音響信号を前記スピーカにより誘導音に変換させる視覚障害者用音響付加装置において、
前記灯色信号を処理し、前記灯色信号が表す灯色を判定する灯色信号判定手段と、前記灯色信号が表す灯色が青色であると前記灯色信号判定手段が判定したとき、前記音響信号を生成し、出力する音響出力手段と、前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが所定の閾値を超えたか否かを判定する音響レベル判定手段とを含む音響制御部を有し、
前記灯色信号が表す灯色が青色であると前記灯色信号判定手段が判定していないときに、前記音響信号のレベルが前記閾値を超えたと前記音響レベル判定手段が判定したとき、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止することを特徴とする視覚障害者用音響付加装置。
前記音響出力手段が前記音響信号を出力してから所定時間内に、前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが前記閾値に達したと前記音響レベル判定手段が判定しないときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の視覚障害者用音響付加装置。
前記音響出力手段が前記音響信号を出力してから前記所定時間内に前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが前記閾値に達したとの判定を前記音響レベル判定手段がしたとき、その判定の時点から所定の最小音響時間より短い時間内に、前記音響信号のレベルが前記閾値未満に低下したと前記音響レベル判定手段が判定したときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止することを特徴とする請求項2または3に記載の視覚障害者用音響付加装置。
前記音響出力手段が前記音響信号を出力してから前記所定時間内に前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが前記閾値に達したとの判定を前記音響レベル判定手段がしたとき、その判定の時点から所定の最大音響時間より長い時間に亘って、前記音響信号のレベルが前記閾値を超えていると前記音響レベル判定手段が判定したときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止することを特徴とする請求項2ないし4の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【背景技術】
【0002】
この種の視覚障害者用音響付加装置は、交通信号機において歩行者用灯器の灯色が青であることを視覚障害者に知らせるため、外部に接続したスピーカより誘導音を鳴動させる装置である。本装置として、各種の方式が知られている。例えば、特許文献1(特開2012−113585)には、発明「交通信号機用音響装置」が開示されている。本願の添付図の
図7(特許文献1では
図1)は、この特許文献1に示されている十字交差点の平面図である。その
図7に示すように、スピーカ501〜508に誘導音を出力する付加装置(交通信号機用音響装置)60は、横断歩道100aの南側端(横断歩道100cの東側端でもある)に設けられている。なお、
図7の交差点では、図の右、左、下、上の各方向に向かう各道路をそれぞれ東、西、南および北方向の道路とする。付加装置60は、信号制御装置30から出力される歩行者用信号機401〜408向けの灯色信号を受け、その灯色信号に応じた音響信号(可聴音域の電気信号)を生成し、音響信号をスピーカ501〜508に対し出力する。スピーカ501〜508は、その音響信号を誘導音として空中に出力する。付加装置60は前述の視覚障害者用音響付加装置に相当する。
図7の付加装置60は、信号制御装置30から提供される予測到達交通流や車両速度、滞留台数をもとに、誘導音の音量を制御し、視覚障害者に必要な程度に音量を調節している。
【0003】
図8は、従来の一般的な視覚障害者用音響付加装置の構成例を示すブロック図である。
図7に示す特許文献1の付加装置60は、
図8の視覚障害者用音響付加装置と基本的な構成を同じくするものと思われる。そこで、
図8の視覚障害者用音響付加装置には、
図7の付加装置と同じく符号60を付した。
図8の視覚障害者用音響付加装置60は音響制御部610およびスピーカ駆動増幅器13を有する。音響制御部610はCPU(中央処理装置)および記憶部(メモリ)を備える。CPUは、交通信号制御機(
図7における信号制御装置30に相当)から灯色信号301を受ける。灯色信号301は、交通信号制御機から歩行者用信号機(
図7において符号401〜408で示す信号機)に送られる灯色信号と同じ信号である。音響制御部610は、灯色信号301が青色を表す期間に、音響信号611をスピーカ駆動増幅器13に出力する。スピーカ駆動増幅器13は、音響信号611の電力増幅をし、電力増幅した音響信号113をスピーカ2に出力する。スピーカ2(
図7における各スピーカ501〜508に相当)は、電気信号である音響信号113を音響に変換し、誘導音として空中に出力する。スピーカ駆動増幅器13の出力インピーダンスは、スピーカ2の入力インピーダンスにマッチングするように、設計され、製造されている。
【0004】
なお、
図8ではスピーカ2は1個であるが、
図7に平面図で示す交差点には8個のスピーカ501〜508が設けてある。そこで、これら8個のスピーカ501〜508に音響信号を供給するためには、
図8の視覚障害者用音響付加装置60では、各スピーカ501〜508に対応してスピーカ駆動増幅器13がそれぞれ1個ずつ設けられる。すなわち、8個のスピーカ駆動増幅器13が設けられる。そして、交通信号制御機(
図7の信号制御装置30)から灯色信号301を受けた音響制御部610は、歩行者用信号機401〜408向けの灯色信号に応じた音響信号を生成し、それら音響信号を対応するスピーカ駆動増幅器13(8個のスピーカ駆動増幅器13)それぞれに供給する。
【0005】
また、特許文献2(特開2007−87092)には、発明「道路横断支援装置」が開示されている。この特許文献2の道路横断支援装置では、 横断歩道の歩行者用信号機と、その歩行者用信号機の状態を視覚障害者にスピーカを介して音響で通知する視覚障害者用音響付加装置とを有するとともに、視覚障害者の所持する送信機からの信号を受信する受信機を備え、その送信機を所持する視覚障害者が当該受信機の所定距離範囲に入ったとき、視覚障害者用音響付加装置が、歩行者用信号機の状態をスピーカを介して音響で通知する。この特許文献2の道路横断支援装置では、視覚障害者が近接したときだけに、スピーカから音響を出力することにより、不必要な音響の発生を抑え、交通信号機近傍に及ぼす騒音を軽減できるとしている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図2は、本発明の実施形態である視覚障害者用音響付加装置1を含む交通信号制御システムの構成を示すブロック図である。
図2の交通信号制御システムは、視覚障害者用音響付加装置1、交通信号制御機3、歩行者用灯器4、車両用灯器5およびスピーカ2を有する。歩行者用灯器4は
図7における歩行者用信号機401〜408の各灯器に相当し、車両用灯器5は
図7における車両用信号機70における各灯器に相当する。
【0015】
交通信号制御機3は、歩行者用灯色信号301を歩行者用灯器4および視覚障害者用音響付加装置1へ送り、車両用灯色信号302を車両用灯器5へ送る。歩行者用灯色信号301は、歩行者用灯器4を青色、青色の点滅および赤色の順に循環させて点灯させる信号であるとともに、視覚障害者用音響付加装置1に対し歩行者用灯器4の灯色を通知する信号でもある。
【0016】
なお、
図2に示した交通信号制御システムの構成では、スピーカ2は1個である。しかし、例えば、
図7に示す交差点ではスピーカは8個である。このように、1つの交差点に複数のスピーカが設けてあるときは、誘導音の種類を各スピーカ毎に異ならせたり、同じ種類でも誘導音のタイミングを異ならせたりするのが一般的である。このように、複数のスピーカが設けられている交通信号制御システムにおける視覚障害者用音響付加装置1は、各スピーカ毎に予め定められたタイミングに、予め定められた種類の誘導音を各スピーカに供給する必要がある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である視覚障害者用音響付加装置1の構成を示すブロック図である。この視覚障害者用音響付加装置1は、
図8に示した従来の視覚障害者用音響付加装置60を改良したものであり、スピーカ2の経年劣化等の何らかの原因により、横断歩道を渡ることが安全でないとき(すなわち、歩行者用灯器4の灯色が赤色または青色の点滅であるとき)に、視覚障害者が横断歩道に歩を踏み出すことのないようにした装置である。
【0018】
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、誘導音生成部Aの制御を行う音響制御部10および誘導音出力・モニター部Bでなる。音響制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路等を有して構成され、記憶部12に記憶されたプログラムに基づいて誘導音生成部Aの制御を行う。また、誘導音生成部Aおよび誘導音出力・モニター部Bは、1個のスピーカ2に対して1個ずつ配置し、
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、
図7の十字交差点におけるように、スピーカ2が8個である交通信号制御システムにおいては、8個の誘導音生成部Aおよび8個の誘導音出力・モニター部Bで構成される。
【0019】
各誘導音生成部Aは、音響の出力および正常な音響の判定等をする処理部11と、音響の出力データおよび音響のタイミングデータ等を予め記憶している記憶部12を有する。また、各誘導音出力・モニター部Bは、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15およびA/D変換器16を有している。
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、1個の音響制御部10に8個の誘導音生成部Aを設けているが、各誘導音生成部A毎に個別に音響制御部10を設けて8個の音響制御部10を有する構成として、各音響制御部10毎に1個の誘導音生成部Aすなわち1個の処理部11および1個の記憶部を有する構成としても差し支えない。
【0020】
このように、
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、
図7の十字交差点におけるように、スピーカ2が8個である交通信号制御システムに適用できる。前述のように、
図7の交差点における8個のピーカには、各スピーカ毎に予め定められたタイミングに、予め定められた種類の誘導音を供給する必要があるが、
図1の視覚障害者用音響付加装置1はそのような交通信号制御システム用の構成を有している。したがって、スピーカ2がn個の交差点における交通信号制御システムでは、
図1の誘導音生成部Aおよび誘導音出力・モニター部Bはそれぞれn個ずつ設けることとなる。
【0021】
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、8個のスピーカ2に対応して、誘導音生成部Aおよび誘導音出力・モニター部Bもそれぞれ8個を設けた8系統の装置構成となっている。そして、1個の誘導音生成部Aおよび1個の誘導音出力・モニター部Bでもって、1個のスピーカ2用の音響信号113を生成している。8系統の誘導音生成部Aおよび誘導音出力・モニター部Bが生成する音響信号113の種類、タイミングは異なるが、後に
図3および
図4を参照して詳しく説明するように、各系統の誘導音生成部Aおよび誘導音出力・モニター部Bの構成、動作は同様である。そこで、以下では、
図1における1個の誘導音生成部Aおよび1個の誘導音出力・モニター部Bでもって、1個のスピーカ2に音響信号を供給する構成について主に説明する。音響制御部10は、交通信号制御機3から送られた歩行者用灯色信号301を入力し、アナログの音響信号110を生成する。スピーカ駆動増幅器13は、
図8の従来の視覚障害者用音響付加装置60におけるものと同じであり、音響信号110を電力増幅し、電力増幅した音響信号113をスピーカ2へ出力する。スピーカ駆動増幅器13は、出力インピーダンスがスピーカ2の入力インピーダンスにマッチングするように設計され、製造されている。スピーカ2は、音響信号113を音響に変換し、誘導音として空中に出力する。
【0022】
トランス14は、変成器であり、スピーカ駆動増幅器13からスピーカ2に音響信号113を伝送する線路に相互誘導により結合されていて、音響信号113を取り出している。増幅器15はトランス14の出力の音響信号114を電圧増幅する。音響制御部10から出力された音響信号110は、スピーカ駆動増幅器13、トランス14および途中の伝送路を経て増幅器15に至るが、この間の各回路および伝送路の特性により音響信号114の電圧値は装置(視覚障害者用音響付加装置1)毎に相違する。すなわち、音響信号110の電圧が規定値であっても、音響信号114の電圧は、装置毎に分散する。そこで、増幅器15は、A/D変換器16に供給する音響信号115の電圧を規定値に調整する。増幅器15による電圧の調整は、増幅器15自体の増幅率を調整することにより行う。
【0023】
A/D変換器16は、アナログ信号の音響信号115を4ビット(4桁)のデジタル音響信号に変換する。
図1には、それら4ビットのデジタル音響信号が、ビットごとの信号161〜164として表してある。以下では、信号161〜164を個別に説明する際はビット信号161〜164と称し、4ビットのデジタル信号全体をまとめて1つのデジタル信号として説明する際にはデジタル音響信号161〜164と称することとする。ビット信号161〜164のそれぞれは、High(高レベル)またはLow(低レベル)の何れかの電圧であり、High(高レベル)およびLow(低レベル)が2進数の“1”および“0”を表している。ビット信号161〜164は、4桁の2進数における1桁目〜4桁目をそれぞれ表している。例えば、音響信号115が10進数で“3”のアナログ電圧であるとき、これをデジタル変換し、4桁の2進数で表すと、“0011”となるから、ビット信号161および162はHigh(高レベル)、ビット信号163および164はLow(低レベル)の電圧となる。
【0024】
図3は、デジタル音響信号161〜164のタイミング図である。スピーカ2および誘導音出力・モニター部B(スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16で構成される。)が正常であれば(故障がなければ)、音響信号110のアナログ信号は誘導音出力・モニター部Bを伝わり、デジタル音響信号161〜164のデジタル信号は
図3のタイミング図で表される。
【0025】
図3(A),(B),(C)および(D)には、誘導音ピョ、ピョピョ、カッコーおよびカカッコーにそれぞれ対応するデジタル音響信号161〜164が基本レベルのタイミング図として表してある。
図3(A),(B),(C)および(D)の左側に記した数字0,1,2,3,4は、ビット信号161〜164で表されるデジタル音響信号のレベルであり、2進数で表すと“0000”はレベルを0、“0001”はレベルを1、“0010”および“0011”はレベルを2、“0100”以上“0111”以下はレベルを3、“1000”以上はレベルを4と示す。例えば、誘導音ピョについては、
図3(A)に示され、誘導音出力・モニター部Bが正常であれば(故障がなければ)、ビット信号161〜164で表されるデジタル音響信号のレベルは3となる。
図1の視覚障害者用音響付加装置は、「異種鳴き交わし方式」により誘導音を出力して、運用しているものとする。この「異種鳴き交わし方式」は、音響により視覚障害者を誘導する視覚障害者用音響付加装置に適用される音響誘導方式の一種であり、次に説明するように、横断歩道の手前と向かい側とで交互に異なる種類の誘導音を鳴らす方式である。
図3のピョ、ピョピョ、カッコーおよびカカッコーは、それら異なる種類の誘導音の例である。ピョとピョピョとが一対の誘導音であり、カッコーとカカッコーとが別の一対の誘導音である。
【0026】
例えば、
図7に平面図で示す十字交差点に設置した交通信号装置の視覚障害者用音響付加装置において「異種鳴き交わし方式」を適用したとき、誘導音は次のようにスピーカから出力される。いま、
図7の交差点において、横断歩道100a,100bに面する歩行者用信号機401〜404の灯色が青色に点灯しているとする。このとき、横断歩道100a,100bの南側(図の下側)のスピーカ501,503がピョと鳴動し、続いて横断歩道100a,100bの北側(図の上側)のスピーカ502,504がピョピョと鳴動する。視覚障害者用音響付加装置は、誘導音ピョと誘導音ピョピョとを、所定の間隔(例えば約1.5秒)で交互に出力する。なお、視覚障害者用音響付加装置として、
図7では符号60で示すものを用いているが、本実施の形態ではこれに代えて
図1、
図2に符号1で示すものを用いる。
【0027】
次に、
図7の交差点において、横断歩道100c,100dに面する歩行者用信号機405〜408の灯色が青色に点灯したとする。このとき、横断歩道100c,100dの東側(図の右側)のスピーカ505,507がカッコーと鳴動し、続いて横断歩道100c,100dの西側(図の左側)のスピーカ506,508がカカッコーと鳴動する。視覚障害者用音響付加装置は、誘導音カッコーと誘導音カカッコーとを、やはり所定の間隔(例えば約1.5秒)で交互に出力する。
【0028】
歩行者用信号機401〜408の灯色は、青色と、青色の点滅と、赤色とに循環して変わる。視覚障害者用音響付加装置において誘導音をスピーカから出力するのは、歩行者用信号機の灯色が青色の期間だけであり、その灯色が青色の点滅または赤色の期間には誘導音を出力しない。青色の点滅のときには、「ポッポッ」というような短い間隔の青点滅注意音を出力する。
【0029】
図4は、
図3(A)、(B)、(C)、(D)にそれぞれ示した音響信号ピョ、ピョピョ、カッコー、カカッコーに関するタイミングおよびレベルの仕様を表形式で例示する図である。
図4に表で示す音響信号は、
図3に示すタイミング図の許容範囲を示し、音響制御部10の記憶部12に予め記憶しておく誘導音の仕様である。音響制御部10の時間比較部11dおよびレベル比較部11fは、
図1のデジタル音響信号161〜164が
図4の音響信号の仕様を満たすか否かを判断する。スピーカ2は、音響信号113を音響に変換し、誘導音として空中に出力する。誘導音のタイミングおよびレベルは音響信号のタイミングおよびレベルに対応しているので、
図3および
図4を参照して行う誘導音についての以下の説明は、そのまま音響信号の説明となっている。
【0030】
ここで、
図7における横断歩道100aと、この横断歩道100aに対面する歩行者用信号機401に着目する。歩行者用信号機401の灯器は、
図2の歩行者用灯器4である。また、スピーカ501は
図1、
図2のスピーカ2で構成されている。スピーカ501は
図1のスピーカ駆動増幅器13の出力端に接続され、音響信号113により駆動される。いま、誘導音の種類をピョとして、その歩行者用灯器4が
図3のt0の時点に青色に点灯したとする。このとき、
図1に示す本発明の実施形態である視覚障害者用音響付加装置1からの音響信号113により駆動されるスピーカ2(
図7ではスピーカ501として示してあるもの)が、時点t0からT0a時間後にT1a時間だけ誘導音ピョを出力し、T4a時間後に再び誘導音ピョを出力する。
図3(A)は、その誘導音ピョのタイミングを示している。
【0031】
図4の表では、行の項目として、誘導音の種類であるピョ、ピョピョ、カッコー、カカッコーが記載されている。また、その
図4の表には、列の項目として、種類、音響出力周期(秒)、比較対象、T0・開始、T1・音響最小1、T1・音響最大1、T2・開始(間)、T3・音響最小2、T3・音響最大2、T4・開始が記載されている。
【0032】
まず、
図4の表におけるピョの行を参照する。このピョの行には、
図3(A)のタイミング図で表した誘導音ピョに関する時間およびレベルの仕様の例が記載されている。まず、ピョの行には、「音響出力周期(秒)」の項目に“4”と記載されている。これは、誘導音ピョの繰返し周期が4秒であることを表している。
【0033】
続いて、ピョの行であって、かつ「比較対象」の項目が時間(秒)となっている行を見る。この時間(秒)の行には、「T0・開始」の項目に“1”と記載されている。これは、
図1、
図2の灯色信号301が青色灯色信号になり、歩行者用信号機401,402,403,404の灯色が青色になったタイミング(
図3の時点t0)から誘導音ピョが鳴り始めるまでの時間(
図3の時間T0a)の最大値は1秒であることを表している。
【0034】
引き続き、ピョの行であって、かつ「比較対象」の項目が時間(秒)となっている行を見ると、「T
1・音響最小1」の項目には“0.2”、「T
1・音響最大1」の項には“0.5”と記載されている。これは、誘導音ピョが出力される時間(
図3の時間T
1a)は最小で0.2秒、最大で0.5秒であることを表している。
【0035】
さらに引き続き、ピョの行であって、かつ「比較対象」の項目が時間(秒)となっている行見ると、「T4・開始」の項目には“4”と記載されている。これは、一つの誘導音ピョの出力が終わってから次の誘導音ピョの出力が開始されるまでの時間(
図3の時間T4a)の最大値は4秒であることを表している。
【0036】
次に、
図4のピョの行であって、かつ「比較対象」の項目がレベルとなっている行を見る。このレベルの行における、「T1・音響最小1」の項目には“2”、「T1・音響最大1」の項目には“4”と記載されている。これは、デジタル音響信号(ビット信号161〜164で表す信号)の許容範囲は、最小値のレベルが2で、最大値のレベルが4であることを表している。
【0037】
図4のピョピョの行には、
図3(B)の誘導音ピョピョに関するタイミングおよびレベルの仕様が例示してある。
図4のピョピョの行にも、上述のピョ行と同様に記載されている。
図3(B)を見て分かるように、灯色信号301が青色灯色信号になった時点t0から誘導音ピョピョが出力されるまでの時間T0bは、誘導音ピョに関するその時間T0aより長い。
図4のピョピョ・時間(秒)行において、T0・開始の項目に記載されているように、T0bは3秒である。但し、誘導音ピョおよび誘導音ピョピョの出力周期は同じであり、4秒である(
図4のピョ行およびピョピョ行における音響出力周期(秒)の項目参照)。誘導音ピョと誘導音ピョピョとは「異種鳴き交わし方式」により、交互に出力されるので、両誘導音の出力周期は同じに設定されている。
図7の交差点における交通信号装置では、スピーカ501から誘導音ピョが出力され、スピーカ502から誘導音ピョピョが出力される。
【0038】
図4のカッコーおよびカカッコーの行には、
図3(C)および(D)にタイミング図でそれぞれに示すカッコーおよびカカッコーの誘導音に関する時間およびレベルの仕様の例が記載されている。カッコーおよびカカッコーの誘導音がピョおよびピョピョの誘導音と相違する点は、ピョおよびピョピョの誘導音はいずれも連続した音響として出力されるのに対し、カッコーおよびカカッコーの誘導音は途中で一旦短時間だけ途切れることと、その途切れる時間の前後で音響レベルが相違していることである。
【0039】
図3(C)における時間T2cがその途切れる時間である。
図4のカッコーの行であって、比較対象の項目が時間(秒)である行を見ると、T2・開始(間)の項目に0.5と記載されている。これは、その途切れる時間T2cの最大値が0.5秒であることを示している。そして、その時間(秒)の行を見ると、「T1・音響最小1」の項目には“0.2”、「T1・音響最大1」の項には“0.5”と記載されている。これは、誘導音カッコーが出力される時間の前半部分の時間(
図3の時間T1c)は最小で0.2秒、最大で0.5秒であることを表している。同様に、その時間(秒)の行における「T3・音響最小2」の項目には“0.4”、「T3・音響最大2」の項目には“0.7”と記載されている。これは、誘導音カッコーが出力される時間の後半部分の時間(
図3の時間T3c)は最小で0.4秒、最大で0.7秒であることを表している。その時間(秒)の行における「T0・開始」の項目には1と記載され、「T4・開始」の項目には5と記載されている。これは、t0の時点から誘導音カッコーが出力され始めるまでの時間(
図3の時間T0c)の最大値が1秒であり、1回の誘導音カッコーの出力が終了して次の誘導音カッコーの出力が始まるまでの時間(
図3の時間T4c)の最大値が5秒であることを示している。
【0040】
図4のカッコーの行であって、比較対象の項目がレベルである行を見ると、「T1・音響最小1」の項目には“2”、「T1・音響最大1」の項目には“4”と記載されている。これは誘導音カッコーの前半部分(時間T1cの部分)のデジタル音響信号(ビット信号161〜164で表す信号)の許容範囲が、最小値のレベルが2で、最大値のレベルが4であることを表している。同様に、
図4のカッコーの行であって、比較対象の項目がレベルである行における「T3・音響最小2」の項目には“1”、「T3・音響最大2」の項目には“3”と記載されている。これは誘導音カッコーの後半部分(時間T3cの部分)のデジタル音響信号(ビット信号161〜164で表す信号)の許容範囲が、最小値のレベルが1で、最大値のレベルが3であることを表している。
【0041】
図3(D)および
図4のカカッコーの誘導音は、
図3(C)および
図4のカッコーの誘導音と同様である。但し、
図3(D)および
図4のカカッコーの誘導音が、
図3(C)および
図4のカッコーの誘導音に比べて、t0からの立ち上がり時点(出力開始時点)が遅れること、時間(秒)の行における「T1・音響最小1」および「T1・音響最大1」の項目の値がやや大きくなり、それぞれ“0.4”、および“0.7”となっている点が相違している。誘導音カッコーと誘導音カカッコーの音響出力周期は、ともに6秒である。誘導音カッコーと誘導音カカッコー所定の時間間隔で交互に鳴き交わされるので、両者の音響出力周期は等しくする必要がある。
【0042】
次に再び
図1に戻り、本発明の一実施形態である視覚障害者用音響付加装置の構成および動作について更に詳しく説明する。
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、交通信号制御機3から灯色信号301を入力し、その灯色信号301に応じた音響信号113を生成する装置であり、灯色信号301は音響制御部10により処理され、音響信号110を生成することは前述のとおりである。
【0043】
処理部11は、音響出力部11a、灯色信号判定部11b、時間測定部11c、時間比較部11d、レベル測定部11e、レベル比較部11fを含み、記憶部12は、
図4の表における各値を記憶しており、比較対象の項目が時間(秒)の行における「T0・開始」、「T2・開始(間)」および「T4・開始」を開始時間最大値Tsmaxに、「T1・音響最小1」および「T3・音響最小2」を音響時間最小値Taminに、「T1・音響最大1」および「T3・音響最大2」を音響時間最大値Tamaxに記憶し、比較対象の項目がレベルの行における「T1・音響最小1」および「T3・音響最小2」を音響レベル最小値Vminに、「T1・音響最大1」および「T3・音響最大2」を音響レベル最大値Vmaxに記憶し、さらに音響制御部10を作動させるプログラムと、音響信号110に出力するピョ、ピョピョ、カッコーおよびカカッコーの音響データを記憶するメモリを有している。
【0044】
灯色信号301が入力されると灯色信号判定部11bは、所定の歩行者用信号灯器4の灯色を青色、青色点滅および赤色のいずれにする信号かを判断し、歩行者用信号灯器4の灯色を青色にする信号と判定すると、音響出力部11aが所定の音響データを音響信号110として出力する。時間測定部11cは、デジタル音響信号161〜164の検出が有る時間または無い時間を計測し、時間比較部11dは時間測定部11cの計測結果と、予め記憶している開始時間最大値Tsmax、音響時間最小値Taminまたは音響時間最大値Tamaxの値と比較を行い、正常か否かの判定を行う。レベル測定部11eは、デジタル音響信号161〜164のレベルを計測し、レベル比較部11fはレベル測定部11eの計測結果と、予め記憶している音響レベル最小値Vminまたは音響レベル最大値Vmaxの値と比較を行い、正常か否かの判定を行う。
【0045】
図5は、
図1の視覚障害者用音響付加装置1における音響制御部10の動作を示すフローチャートである。次に、この
図5を参照して、その音響制御部10の動作を説明する。いま、
図2の交通信号制御システムが起動され、同時に視覚障害者用音響付加装置1が起動されたとする。このとき、音響制御部10の処理部11は未だ音響信号110を出力していない。この状態で、A/D変換器16から出力されるデジタル音響信号161〜164のレベルをレベル測定部11eが測定し、測定されたデジタル音響信号161〜164のレベルと所定の閾値(例えば、
図3におけるレベル“1”)とをレベル比較部11fが比較し、デジタル音響信号161〜164のレベルが、所定の閾値を超えていれば、レベル比較部11fは、音響の検出ありと判定する(ステップS1)。
【0046】
ステップS1「音響の検出あり?」の判定において、音響の検出あり(YES)と判定された場合は、音響信号110が出力されていないはずの時に、デジタル音響信号161〜164のレベルが前記の閾値(レベル比較部11fに記憶されている)を超えたことになるから、音響信号113の電圧レベルが所定値を超えて大きいと考えられるので、音響出力部11a、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16、レベル測定部11eとその間の音響信号ラインまたは、スピーカ2の何れかが故障であるとレベル比較部11fが判断し、音響制御部10はシステムをリセット(ステップS25)して作動を停止する。音響制御部10が作動を停止することにより、視覚障害者用音響付加装置1が起動された直後であって、音響制御部10から音響信号110が出力されていないにも拘らず、スピーカ2から誘導音が出力されるという異常な事態は回避され、視覚障害者用音響付加装置1の故障に起因して視覚障害者が横断歩道に歩を踏み出すという危険性が予防できる。
【0047】
ステップS1において、音響の検出なし(NO)と判定された場合は、灯色信号301で表される灯色が青色であるか否か(所定の歩行者用灯器4が青?)の判定を、灯色信号判定部11bにより行う(ステップS2)。灯色信号301で表される灯色が青色でないとき(NO)は、ステップS1に戻り、灯色信号301で表される灯色が青色(所定の歩行者用灯器4が青)と判定されるまで、ステップS1とステップS2とが繰り返され、待機状態になる。ステップS2において、所定の歩行者用灯器4が青と判定されたとき(YES)は、処理部11の音響出力部11aが、歩行者用誘導A音の出力を開始する(ステップS3)。歩行者用誘導A音は、視覚障害者に歩行者用信号の灯色が青色であることを知らせる誘導音の一つであり、処理部11からは音響信号110として出力される。
図3および
図4を参照して詳しく説明した誘導音の種類は、ピョ、ピョピョ、カッコー、カカッコーである。誘導音の種類がこれらの4種であるとき、この歩行者用誘導A音は、それら誘導音の内から各スピーカについて予め設定してある種類の誘導音である。例えば、
図7を参照して先に説明した誘導音とスピーカとの対応関係では、誘導音ピョはスピーカ501,503で出力される。
【0048】
次に、時間測定部11cのタイマmをリセットし(ステップS4)、さらに記憶部12の開始時間最大値Tsmaxを時間比較部11dのレジスタZにセットする(ステップS5)。開始時間最大値Tsmaxは、歩行者用誘導A音について予め定めてあり、例えば誘導音ピョでは
図4の表により1秒がセットされる。続いて、レベル測定部11eでデジタル音響信号161〜164のレベルを測定し、その測定したデジタル音響信号161〜164のレベルがある閾値(例えば、前述のステップS1の判定における閾値と同じレベル“1”)を超えたか否か(音響の検出あり?)をレベル比較部11fで判定する(ステップS6)。
【0049】
ステップS6で(NO)と判定されたときは、デジタル音響信号161〜164のレベルがその閾値を超えていない。このときは、時間測定部11Cのタイマmを1だけ進め、m=m+1とし(ステップS7)、続いて、m<Tsmaxか否かを時間比較部11dが判定する(ステップS8)。開始時間最大値Tsmaxは、ステップS3において音響出力部11aが歩行者用誘導A音の出力を開始した時(音響制御部10から音響信号110として出力を開始した時)から、ステップS6において音響(デジタル音響信号161〜164)の検出あり(YES)と判定されるまでの時間として許容される最大の時間である。ステップS8において許容される最大の時間を越えていなければ(YES)と判定し、ステップS6に戻る。ステップS6で音響の検出あり(YES)と判定されないまま、時間測定部11cのタイマmがその開始時間最大値Tsmaxに至った(m=Tsmax)ときは、時間比較部11dがステップS8において(NO)と判定する。このとき、音響出力部11a、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16、時間測定部11cおよびレベル測定部11eとその間の音響信号ラインまたは、スピーカ2の何れかが故障であると判断し、ステップS1と同様に、音響制御部10はシステムをリセット(ステップS25)して作動を停止する。このステップS8における(NO)の判定により、音響制御部10がリセットされ音響出力部11aからの音響信号110の出力を停止するので、音響出力部11a、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16、時間測定部11cおよびレベル測定部11eとその間の音響信号ラインまたは、スピーカ2の何れかの故障に起因して、歩行者用灯器4の灯色と整合しない誘導音をスピーカ2から出力するという危険性は回避できる。
【0050】
ステップS4により時間測定部11cのタイマmがリセットされてからの経過時間がm<Tsmaxである間に、ステップS6において音響の検出あり(YES)と判定されたとき、すなわち、歩行者用誘導A音がスピーカ2から出力されると、時間測定部11cのタイマmを再度リセットし(ステップS9)、音響時間最小値Taminを時間比較部11dのレジスタXにセットし(ステップS10)、音響時間最大値Tamaxを時間比較部11dのレジスタYにセットし(ステップS11)、音響レベル最小値Vminをレベル比較部11fのレジスタPにセットし(ステップS12)、音響レベル最大値Vmaxをレベル比較部11fのレジスタQにセットし(ステップS13)、レベル測定部11eによりデジタル音響信号161〜164のレベル(音響レベルV)を測定する(ステップS14)。
【0051】
いま、ステップS3で出力された歩行者用誘導A音が誘導音ピョであるとすると、音響時間最小値Taminは
図3(A)のT1aの最小時間であり、
図4の例ではTaminは0.2秒である。このとき、音響時間最大値Tamaxは、
図3(A)のT1aの最大時間であり、
図4の例ではTamaxは0.5秒である。
【0052】
音響信号のレベルについては、ステップS3で出力された歩行者用誘導A音が誘導音ピョであるとすると、音響レベル最小値Vminは
図3(A)のT1aの最小レベルであり、
図4の例ではVminは2である。このとき、音響レベル最大値Vmaxは、
図3(A)のT1aの最大レベルであり、
図4の例ではVmaxは4である。レベル比較部11fは、ステップS14で測定した音響レベルV、すなわちデジタル音響信号161〜164のレベルを、レジスタPのVmin及びレジスタQのVmaxと比較し、Vmin<V<Vmaxであるか否かを判定する(ステップS15)。
【0053】
このステップS15における判定が(NO)であるときは、デジタル音響信号161〜164のレベルが規格外であることを表す。このようなときは、音響出力部11a、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16、レベル測定部11eとその間の音響信号ラインまたは、スピーカ2の何れかが故障していることを表す。従って、このように、ステップS15が(NO)のときは、前述のステップS1で(YES)およびS8で(NO)の場合と同様に、音響制御部10はシステムをリセット(ステップS25)して作動を停止する。音響制御部10がリセットされ音響出力部11aからの音響信号110の出力を停止する。この音響信号110の出力停止により、歩行者用灯器4の灯色が青色でないときに、視覚障害者が歩道から車道へ歩を踏み出すという危険を予防している。
【0054】
ここで、スピーカ2の故障により、ステップS15の判定が(NO)となる場合としては、スピーカ2の経年劣化等により、スピーカ2の入力インピーダンスが規格外にとなった場合が考えられる。スピーカ2の入力インピーダンスがスピーカ駆動増幅器13の出力インピーダンスから大きくずれてしまうと、インピーダンスのミスマッチング(不整合)により、音響信号113がスピーカ2において反射され、トランス14に入力される音響信号が規格外にまで増大したり、減少したりする。スピーカ2の経年劣化等により、スピーカ2の入力インピーダンスが、製造時の値から大きくずれてしまうことは十分に起こり得ることである。
【0055】
ステップS15で、Vmin<V<Vmaxである(YES)と判定されたとき、灯色信号判定部11bは灯色信号301が青の点滅であるか否かを判定する(ステップS16)。青の点滅でなければステップS16で(NO)、灯色信号301では青色灯色信号が継続していることになり、次に音響の検出があるか否か(音響の検出あり?)を判定する(ステップS17)。ステップS17の判定は、ステップS1、S6と同様に行う。
【0056】
ステップS17で音響の検出がある(YES)と判定されたときは、時間測定部11cのタイマmに“1”を加え、m=m+1とし(ステップS18)、このmが、ステップS11でレジスタYにセットした音響時間最大値Tamaxより小さいか否か(m<Tamax)の判定を時間比較部11dで行う(ステップS19)。ステップS19の判定がm<Tamaxであるとき(YES)は、ステップS12に戻り、ステップS12〜S19を繰り返し実行する。
【0057】
ステップS16において、歩行者用灯器が青の点滅である(YES)と判定されたときは、音響出力部11aが歩行者用誘導A音の出力を停止する(ステップS20)。次に音響出力部11aは、青点滅注意音の出力を開始し(ステップS21)、灯色判定部11bが灯色信号301により歩行者用灯器4の灯色が赤色であるか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22において、歩行者用灯器4の灯色が赤色にならない間(NO)は、ステップS22を繰り返し、その繰返しの間はステップS21で開始した青点滅注意音の出力を継続する。ステップS22において、歩行者用灯器4の灯色が赤色になったと判定されたとき(YES)、その青点滅注意音の出力を停止し(ステップS23)、ステップS1に戻る。
【0058】
ステップS17において、音響の検出がない(NO)と判定されたとき、時間測定部11cのタイマmを、ステップS10でレジスタXにセットした音響時間最小値Taminと比較し、m>Taminであるか否かを判定する(ステップS24)。ステップS17で音響の検出がない(NO)と判定され、かつ、ステップS24において、m>Taminである(YES)と判定されたということは、タイマmがTamin(音響時間最小値Taminは
図4では0.2秒)より大きくなった(m>Tamin)ことを意味する。したがって、ステップS17で音響の検出がない(NO)と判定された時は、歩行者用誘導A音が誘導音ピョであるとき、
図3(A)のT1aが音響時間最小値Taminを超えている時間にあるので、その歩行者用誘導A音は正常な時間に亘って出力されたことになる。
【0059】
そこで、ステップS24で(YES)と判定されたときは、ステップS4に戻り、タイマmをリセットする。次の、ステップS5でレジスタZにセットされる開始時間最大値Tsmaxは、歩行者用誘導A音が
図3(A)、
図4の誘導音ピョであるとき、
図3のT4aであり、
図4ではT4aは4秒である。また、歩行者用誘導A音が
図3(C)、
図4の誘導音カッコーであるときは、ステップS5でレジスタZにセットされる開始時間最大値Tsmaxは、
図3(C)のT2cであり、
図4ではT2cは0.5秒である。
【0060】
他方、ステップS17で音響の検出がない(NO)と判定されたときに、ステップS24において、m>Taminでない(NO)と判定されたということは、タイマmがTamin(音響時間最小値Taminは
図4では0.2秒)より大きくならなかった(m<Taminまたはm=Tamin)ことを意味する。したがって、ステップS17で音響の検出がない(NO)と判定された時は、歩行者用誘導A音が誘導音ピョであるとき、
図3(A)のT1aが音響時間最小値Taminにまで至らない時間にあり、その歩行者用誘導A音は所定時間より早く停止してしまったことになる。そこで、時間比較部11dは音響出力部11a、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16、時間測定部11cとその間の音響信号ラインまたは、スピーカ2の何れかが故障であると判断し、ステップS24が(NO)のときは、前述のステップS1で(YES)、ステップS8で(NO)及びステップS15で(NO)の場合と同様に、音響制御部10はシステムをリセット(ステップS25)して作動を停止する。音響制御部10がリセットされ音響出力部11aからの音響信号110の出力を停止する。この音響信号110の出力停止により、歩行者用灯器4の灯色が青色でないときに、視覚障害者が歩道から車道へ歩を踏み出すという危険を予防している。
【0061】
次に、ステップS19において、時間測定部11cのタイマmが、ステップS11でレジスタYにセットした音響時間最大値Tamaxより小さいか否か(m<Tamax)の判定がされたとき、ステップS19の判定がm<Tamaxでないとき(NO)は、前述のステップS1で(YES)、ステップS8で(NO)、ステップS15で(NO)およびステップS24で(NO)の場合と同様に、音響制御部10はシステムをリセット(ステップS25)して作動を停止する。歩行者用誘導A音が誘導音ピョであるとすると、音響時間最大値Tamaxは、
図3(A)のT1aの最大時間であり、
図4の例ではTamaxは0.5秒である。時間測定部11cのタイマmが音響時間最大値Tamax以上である(m=Tamaxまたはm>Tamax)と時間比較部11dで判定されたということは、その所定の最大時間である音響時間最大値Tamaxが経過しても、歩行者用誘導A音が出力され続けられていることを意味するので、音響出力部11a、スピーカ駆動増幅器13、トランス14、増幅器15、A/D変換器16、時間測定部11cとその間の音響信号ラインまたは、スピーカ2の何れかが故障であると判断し、音響制御部10がリセットされ音響出力部11aからの音響信号110の出力を停止する。この音響信号110の出力停止により、歩行者用灯器4の灯色が青色でないときに、視覚障害者が歩道から車道へ歩を踏み出すという危険を予防している。
【0062】
(実施の形態の効果)
以上に、
図5のフローチャートを参照し、
図1の視覚障害者用音響付加装置1の作動を詳しく述べ、特に
図5におけるステップS1,S8,S15,S19,S24について説明したところから明らかなように、本発明の一実施形態である
図1の視覚障害者用音響付加装置1は、歩行者用灯器4の灯色が青色でない可能性があるときに、視覚障害者が横断歩道に歩を踏み出し得る危険を確実に回避する手段を提供している。
【0063】
例えば、スピーカ2に経年劣化が生じて、スピーカ2の入力インピーダンスが規格外にとなった場合、スピーカ2の入力インピーダンスが製造時の値から変動し、スピーカ駆動増幅器13の出力インピーダンスから大きくずれてしまい、スピーカ2から所定の音量の誘導音が出力されていないことは十分に起こり得ることであるが、本実施の形態では
図5のステップS1,S8,S15,S19,S24により、スピーカ2の劣化を検知し、視覚障害者用音響付加装置1から規格外のレベルの誘導音が出力されるのを回避している。灯色信号が未だ青色灯色信号になっていないにも拘らず、スピーカ2から誘導音が出力されたり、或いは不完全な誘導音を出力したり、視覚障害者が誤って横断歩道に歩を踏み出してしまうという危険性を、本実施の形態は、予防している。
【0064】
また、上には記述していないが、
図5のステップS1,S8,S15,S19,S24で異常と判定されたときは、音響制御部10の作動を停止するのではなく、通信手段(図示していない。)により、交通信号制御機の監視をする装置に視覚障害者用音響付加装置1の異常を通知するようにしてもよい。或いは、音響制御部10が作動を停止する直前に、通信手段により、交通信号制御機の監視をする装置に視覚障害者用音響付加装置1の異常を通知し、その後に、音響制御部10の作動を停止するようにしてもよい。
【0065】
このように、
図1〜
図5を参照して説明した本実施の形態の視覚障害者用音響付加装置は、所定のタイミングで、適切な音量の誘導音が出力されていないときや、経年劣化等による装置の誤動作があったときにも視覚障害者の安全を確保でき、しかも送信機などの格別な装置を視覚障害者が所持することを要しない
【0066】
(実施形態の変形例)
図6は、上述の本発明の実施形態である視覚障害者用音響付加装置の一変形例を含む交通信号制御システムの構成を示すブロック図である。
図6の視覚障害者用音響付加装置1aは、交通信号制御機3から車両用灯器5へ送られる車両用灯色信号302も、歩行者用灯色信号301と合わせて、入力している。車両用灯色信号302が青色または黄色となり、その車両用灯色信号302が現示する車道(青色信号により、車両に対する進行可の表示されている方路の車道)の横断歩道に対面する歩行者用信号機の灯器の灯色は赤色であり、その横断歩道に対応するスピーカからは誘導音は出力されない仕組みに視覚障害者用音響付加装置1aは設計されているが、視覚障害者用音響付加装置1aにおいて万が一の故障が生じて、その横断歩道に対応するスピーカから誘導音が出力されるようなことがあってはならない。そこで、この変形例では、車両用灯色信号302を灯色信号判定部11bに入力し、車両用灯色信号302が青色または黄色の車両用灯色信号であることを灯色信号判定部11bで判定したときは、スピーカ駆動増幅器13の出力を遮断する信号遮断回路を設けてある。信号遮断回路は、車両用灯色信号302が青色または黄色の車両用灯色信号であることを灯色信号判定部11bが判定したときに音響信号の信号路を遮断するスイッチ回路で構成できる。視覚障害者用音響付加装置1aにおけるその他の構成は、
図1から
図5を参照して先に説明した実施の形態の視覚障害者用音響付加装置1と同様である。
【0067】
(付記)
以上に、本発明に係る実施形態について、詳細に説明したことからも明らかなように、前述の実施形態の一部または全部は、以下の各付記のようにも記載することができるが、本発明はかかる場合に限るものではないことは言うまでもない。
【0068】
(付記1)交通信号制御機から歩行者用灯器に送られる灯色信号を受け、前記灯色信号が青色を表すときに音響信号をスピーカに出力し、前記音響信号を前記スピーカにより誘導音に変換させる視覚障害者用音響付加装置において、
前記灯色信号を処理し、前記灯色信号が表す灯色を判定する灯色信号判定手段と、前記灯色信号が表す灯色が青色であると前記灯色信号判定手段が判定したとき、前記音響信号を生成し、出力する音響出力手段と、前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが所定の閾値を超えたか否かを判定する音響レベル判定手段とを含む音響制御部を有し、
前記灯色信号が表す灯色が青色であると前記灯色信号判定手段が判定していないときに、前記音響信号のレベルが前記閾値を超えたと前記音響レベル判定手段が判定したとき、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止することを特徴とする視覚障害者用音響付加装置。
【0069】
(付記2)前記音響出力手段が前記音響信号を出力してから所定時間内に、前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが前記閾値に達したと前記音響レベル判定手段が判定しないときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止する
ことを特徴とする前記付記1に記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0070】
(付記3)前記音響レベル判定手段は、前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが所定の範囲内であるか否かをも判定し、
前記音響レベル判定手段が前記音響信号のレベルが前記所定の範囲内でないと判定したときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止する
ことを特徴とする前記付記1または2に記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0071】
(付記4)前記音響出力手段が前記音響信号を出力してから前記所定時間内に前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが前記閾値に達したとの判定を前記音響レベル判定手段がしたとき、その判定の時点から所定の最小音響時間より短い時間内に、前記音響信号のレベルが前記閾値未満に低下したと前記音響レベル判定手段が判定したときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止することを特徴とする前記付記2または3に記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0072】
(付記5)前記音響出力手段が前記音響信号を出力してから前記所定時間内に前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルが前記閾値に達したとの判定を前記音響レベル判定手段がしたとき、その判定の時点から所定の最大音響時間より長い時間に亘って、前記音響信号のレベルが前記閾値を超えていると前記音響レベル判定手段が判定したときは、前記音響出力手段は前記音響信号の出力を停止することを特徴とする前記付記2ないし4の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0073】
(付記6)前記音響出力手段から出力された音響信号の電力を増幅して電力増幅音響信号を生成し、前記スピーカの入力インピーダンスに整合する出力インピーダンスでもって前記電力増幅音響信号を前記スピーカに供給するスピーカ駆動増幅器と、 前記電力増幅音響信号の一部を相互誘導により取り出すトランスと、前記トランスの出力を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力をデジタル信号に変換し、デジタル音響信号として出力するA/D変換器とを更に有し、
前記音響レベル判定手段は、前記デジタル音響信号で表される音響信号のレベルを、前記スピーカへ入力される前記音響信号のレベルとすることを特徴とする前記付記1ないし5の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0074】
(付記7)前記音響信号を前記スピーカへ送る信号経路に信号遮断回路を設け、
前記灯色信号判定手段は、前記交通信号制御機から車両用灯器へ送られる車両用灯色信号を入力し、車両用灯色信号が青または黄色の灯色を表すときは前記信号経路を遮断させる信号を前記信号遮断回路へ出力することを特徴とする前記付記1ないし6の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0075】
(付記8)前記交通信号制御機の作動を監視する監視装置と通信をする通信装置を有し、
前記音響制御部は、前記音響出力手段から前記音響信号を出力するのに代えて、前記通信装置により、異常の発生を前記監視装置に通知することを特徴とする前記付記1ないし7の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0076】
(付記9)前記交通信号制御機の作動を監視する監視装置と通信をする通信装置を有し、
前記音響制御部は、前記音響出力手段から前記音響信号を出力するのに先立って、前記通信装置により、異常発生の通知を前記監視装置に対し行い、前記通知の後に前記音響制御部の作動を停止することを特徴とする前記付記1ないし7の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0077】
(付記10)CPU等でなる処理部および記憶部を有するハードウエアと、このハードウエア上で実行されるコンピュータプログラムとで前記音響制御部を構成することを特徴とする前記付記1ないし9の何れかに記載の視覚障害者用音響付加装置。
【0078】
なお、
図1から
図5を参照して以上に説明した実施形態では、
図3、
図4における誘導音がピョであるときについて主にその作動を述べたが、本発明は、誘導音がピョであるときだけでなく、誘導音の種類がピョピョ、カッコー、カカッコー、或いはその他の種類でも適用できることは言うまでもない。また、上述の実施形態については、本発明の理解を容易にするために構成や作動を具体的に説明したが、本発明がこれら具多例に限定されるものでないことは勿論である。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。