特許第6688201号(P6688201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688201
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】汎用エンジン
(51)【国際特許分類】
   F16M 1/026 20060101AFI20200421BHJP
   F16M 1/00 20060101ALI20200421BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20200421BHJP
   F02B 77/04 20060101ALI20200421BHJP
   F02B 75/22 20060101ALI20200421BHJP
   F02B 63/02 20060101ALI20200421BHJP
   F02F 1/06 20060101ALI20200421BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   F16M1/026 C
   F16M1/00 F
   F02M35/024 521Z
   F02B77/04
   F02B75/22 A
   F02B63/02
   F02F1/06
   F02F7/00 M
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-205299(P2016-205299)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-101824(P2017-101824A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】14/958,063
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】クック・ジェイコブ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シックス・アレキサンダー・ウルディス
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/163476(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0025827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 1/026
F02B 63/02
F02B 75/22
F02B 77/04
F02F 1/06
F02F 7/00
F02M 35/024
F16M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダおよびシリンダヘッドを含むシリンダユニットを有する空冷の汎用エンジンであって、
少なくとも前記シリンダユニットを覆うハウジングと、
前記ハウジングに着脱自在に取り付けられてエアクリーナのフィルタ部を覆うクリーナカバーとを備え、
前記ハウジングに、前記シリンダユニットに設けられた複数の冷却フィンの間の隙間に対向するブロー窓が形成され、
前記クリーナカバーに前記ブロー窓を塞ぐ閉止部が形成されている、
掃除用窓付きの汎用エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の汎用エンジンにおいて、このエンジンはV形2気筒エンジンであり、2つの前記シリンダユニットの間に前記エアクリーナのフィルタ部が配置されている汎用エンジン。
【請求項3】
請求項2に記載の汎用エンジンにおいて、前記ブロー窓は、各シリンダユニットに対向して一つずつ形成されている汎用エンジン。
【請求項4】
請求項2に記載の汎用エンジンにおいて、エンジン回転軸が鉛直に延び、2つのシリンダユニットが水平に配置されている汎用エンジン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の汎用エンジンにおいて、前記クリーナカバーは、ファスナにより前記ハウジングに取り付けられており、このファスナは係止部を有し、前記クリーナカバーに挿通された状態で所定角度回動されることによって前記係止部が前記ハウジングの被係止部に係止する汎用エンジン。
【請求項6】
請求項5に記載の汎用エンジンにおいて、前記ハウジングの被係止部は、前記ファスナの回動により前記ファスナの係止部が乗り越えてロック位置に収まる係止凹所と、前記ロック位置で前記係止部のそれ以上の回動を阻止するストッパとを有する汎用エンジン。
【請求項7】
請求項6に記載の汎用エンジンにおいて、前記クリーナカバーの閉止部は、前記ハウジンのブロー窓に嵌合する嵌合突起を有する汎用エンジン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の汎用エンジンにおいて、前記フィルタ部は、前記クリーナカバーを離脱させた状態で前記クリーナカバーの離脱方向に取り出し可能である汎用エンジン。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の汎用エンジンにおいて、前記クリーナカバーの閉止部の外表面に前記ブロー窓を表示するマーキングが施されている汎用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈り機のような作動機の駆動源に用いられる掃除用窓付きの汎用エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば芝刈り機のような作動機の駆動源には、通常、小型空冷の汎用エンジンが用いられる。このような作動機は一定期間使用を継続すると、エンジンの構成部品であるシリンダヘッドやシリンダ周りの冷却フィンの隙間に刈り取った草がゴミとして堆積して目詰まりを来たすことで、エンジンの冷却機能が損なわれることがある。
【0003】
このため、定期的にあるいは随時、冷却フィンの隙間に堆積したゴミの除去作業を行っている。他方、エアクリーナのクリーナエレメントを保持するフィルタ部も目詰まりを起こし易いので、定期的にあるいは随時、清掃または交換などのメンテナンスが必要である。そこで、従来のこの種エンジンでは、エアクリーナがハウジングの凹所に出入可能に収容され、これをクリーナカバーで開閉自在にカバーし、また、ハウジングに、複数の冷却フィンの隙間に対向するブロー用開口を設け、ブロー用開口を着脱自在な蓋部材でカバーする構造となっていた。したがって、例えば、クリーナカバーを開けてエアクリーナのフィルタ部の交換などのメンテナンスを行なうとともに、冷却フィンに目詰まりしたゴミの除去作業は、ブロー用開口を覆う蓋部材を開けて、ブロー用開口からの圧縮空気によるブロー作業を行なう必要があった。
【0004】
このように、従来のエンジン構造では、ブロー用開口を覆う蓋部材とクリーナカバーとが別体であったために、蓋部材の取り付け、取り外しがクリーナカバーの取り付け、取り外しとは別の作業として行わなければならないので、ブロー作業性が低く、また、部品点数の多さによるコスト高を招いていた。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、エアクリーナを覆うクリーナカバーとブロー用開口を覆う蓋部材とを一体化することにより、部品点数の低減とブロー作業性の向上が図れる空冷の掃除用窓付きの汎用エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の汎用エンジンは、シリンダおよびシリンダヘッドを含むシリンダユニットを有する空冷の掃除用窓付きの汎用エンジンであって、少なくとも前記シリンダユニットを覆うハウジングと、前記ハウジングに着脱自在に取り付けられてエアクリーナのフィルタ部を覆うクリーナカバーとを備え、前記ハウジングに、前記シリンダユニットに設けられた複数の冷却フィンの間の隙間に対向するブロー窓が形成され、前記クリーナカバーに前記ブロー窓を塞ぐ閉止部が形成されている。ここで、ハウジングは少なくとも一つの方向から見てシリンダユニットが見えないように覆うものであり、すべての方向から見てシリンダユニットを覆わなくてもよい。
【0007】
この構成によると、従来、ブロー窓を露出させるためにクリーナカバーとは別体のブロー窓専用の蓋部材を取り外していたのに対し、エアクリーナのフィルタ部のメンテナンス時に、ハウジングからクリーナカバーを取り外すと同時にブロー窓が露出するので、エアクリーナのフィルタ部のメンテナンスにあわせてブロー作業が容易に行え、メンテナンスの作業性が向上する。また、ブロー窓専用の蓋部材が不要となって部品点数が削減されるので、コストを低減できる。
【0008】
本発明において、エンジンはV形2気筒エンジンであり、2つの前記シリンダユニットの間に前記エアクリーナのフィルタ部が配置されていることが好ましい。この構成によれば、2つのシリンダユニット間の距離が短くなるので、ブロー窓の閉止部を有するクリーナカバーのコンパクト化を図ることができる。
【0009】
本発明において、V形2気筒エンジンの場合、前記ブロー窓は、各シリンダユニットに対向して一つずつ形成されていることが好ましい。この構成によれば、シリンダユニットごとに効果的なブロー作業が可能となる。
【0010】
本発明において、V形2気筒エンジンの場合、エンジン回転軸が鉛直に延び、2つのシリンダユニットが水平に配置されていることが好ましい、この構成によれば、上方からブロー作業が行えるので、作業性が向上する。
【0011】
本発明において、前記クリーナカバーは、ファスナにより前記ハウジングに取り付けられており、このファスナは係止部を有し、前記クリーナカバーに挿通された状態で所定角度回動されることによって前記係止部が前記ハウジングの被係止部に係止するようにすることが好ましい。この構成によれば、ハウジングからのクリーナカバーの着脱操作が容易となる。
【0012】
本発明において、前記ハウジングの被係止部は、前記ファスナの回動により前記ファスナの係止部が乗り越えてロック位置に収まる凹所と、前記ロック位置で前記係止部のそれ以上の回動を阻止するストッパとを有するようにすることが好ましい。この構成によれば、ファスナによるクリーナカバーの取付けが安定化される。
【0013】
本発明において、前記クリーナカバーの閉止部は、前記ハウジングのブロー窓に嵌合する嵌合突起を有することが好ましい。この構成によれば、ブロー窓と嵌合突起の嵌合により、ハウジングに対するクリーナカバーの位置決めが容易となるので、クリーナカバーの取り付けが容易化される。
【0014】
本発明において、前記フィルタ部は、前記クリーナカバーを離脱させた状態で前記クリーナカバーの離脱方向に取り出し可能であることが好ましい。この構成によれば、通常、クリーナカバーの離脱方向には障害物がないので、その離脱方向と同一方向にフィルタ部が取り出しやすく、フィルタ部の交換作業が容易となる。
【0015】
本発明において、前記クリーナカバーの閉止部の外表面に前記ブロー窓を表示するマーキングが施されていることが好ましい。この構成によれば、マーキングが外部から容易に確認できる目印となるので、マーキングの目視によりブロー窓の位置が瞬時にわかり、クリーナカバーを取り外した後のブロー作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる汎用エンジンの概略構成を示す正面図である。
図2】同汎用エンジンの分解斜視図である。
図3】同汎用エンジンの一部破断平面図である。
図4】同汎用エンジンからクリーナカバーを外した状態を示す平面図である。
図5】同汎用エンジンのハウジングの斜視図である。
図6】同汎用エンジンのハウジングの底面図である。
図7図6のVII−VII線断面図である。
図8図2のVIII−VIII線断面図である。
図9】同汎用エンジンのクリーナカバーのファスナを示す拡大斜視図である。
図10図6のX−X線断面図であり、前記ハウジングの被係止部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる汎用エンジンの概略構成を示す正面図である。図1に示す汎用エンジン1は、小型の空冷2サイクルエンジンであって、芝刈り機のような作動機の駆動源として用いられる。
【0019】
このエンジン1は、図3から明らかなように、シリンダ2aおよびシリンダヘッド2bを含むシリンダユニット2,2が左右一対、V形に配置されたV形2気筒エンジンである。シリンダユニット2,2のシリンダ軸心C,Cがなす角度θは70〜90°であり、この例では80°である。これらシリンダユニット2,2の頂部はそれぞれ、図1のヘッドカバー3,3で覆われている。各シリンダユニット2の外周には複数の冷却フィン4が形成されている。
【0020】
両シリンダユニット2,2の間には、燃料供給装置5と、それよりも上方の図2に示すエアクリーナ10とが配置されている。燃料供給装置5から吸気管6に燃料が供給されて、エアクリーナ10からの空気と混合され、その混合気が吸気管6から図1の左右のシリンダユニット2,2に分配供給される。シリンダユニット2,2は単一のクランクケース7に取り付けられ、クランクケース7の下端面にはベースカバー8が取り付けられている。クランク軸(回転軸)9はベースカバー8を貫通して鉛直方向下方に突出している
【0021】
図2に示すように、両シリンダユニット2,2の間の空間の上方に配置されたエアクリ−ナ10は、上方からクリーナカバー11により覆われている。エアクリーナ10は図示のものよりも大きい場合もあり、その場合でも、クリーナカバー11は少なくともフィルタ部10aを覆う大きさに形成される。
【0022】
図1のクランク軸(回転軸)9の上端部には、破線で示す冷却ファンFAが設けられている。エンジン1におけるクランクケース7の外周はシュラウド12により覆われており、その上方部分がファンハウジング13により覆われている。ファンハウジング13は図2および図3から明らかなように、シリンダユニット2,2とクランクケース7を回転軸9の軸方向の上方から覆って、上方からシリンダユニット2,2とクランクケース7が見えないようにしている。ハウジング13はシリンダユニット2,2のみを覆うように形成し、クランクケース7を別体のケーシングで覆ってもよい。また、ハウジング13は必ずしも上方から覆わなくてもよく、回転軸9を水平に配置したエンジンでは、シリンダユニットをその外周面を構成する前面、後面または側面から見えないように覆ってもよい。図2のシュラウド12はエンジン1におけるシリンダユニット2,2とクランクケース7とを含むエンジン本体にボルト止めされ、ファンハウジング13はシュラウド12にボルト止めされている。
【0023】
シュラウド12とファンハウジング13は一体化された一つのハウジングにより形成してもよい。以下、ここではファンハウジング13を単に「ハウジング」と呼ぶ場合がある。ファンハウジング13における冷却ファンFAと軸方向に対向する部分に開口15(図5)が形成されており、通風用の多数のスリットを持つファンカバー16により覆われている。このファンカバー16は図2の締結部材17によりハウジング13に取り付けられている。
【0024】
図2に示すように、クリーナカバー11をハウジング13から取り外すと、エアクリーナ10が上方に露出する。エアクリーナ10はハウジング13に形成された収納凹所18に収納されており、このエアクリーナ10の出口に前記吸気管6が接続されている。エアクリーナ10はケーシング内にフィルタ部10aを有しており、エアクリーナ10の周囲から吸入された空気がフィルタ部10aで浄化されたのち、吸気管6に導入される。ハウジング13には一対のブロー窓19が形成されている。各ブロー窓19は、クリーナカバー11を取り外した状態を示す図4から明らかなように、2つのシリンダユニット2,2のそれぞれに設けられた複数の冷却フィン4とその間の隙間40に対向している。冷却フィン4は各シリンダ軸心Cと直交する方向に延びている。
【0025】
図2に示すクリーナカバー11には、ハウジング13に取り付けるための後述する一対のファスナ20,20が挿通される挿通孔24,24が設けられるとともに、前記ブロー窓19を塞ぐ閉止部21,21が一体形成されている。ハウジング13には、ファスナ20が挿入される取付孔25,25が形成されている。一対の挿通孔24,24はクリーナカバー11の基端部両側のやや前方側に設けられ、閉止部21はクリーナカバー11の基端部両側で前記ファスナ挿入孔24のやや後ろ側の、前記ブロー窓19に対応する位置に設けられている。この閉止部21の外表面には前記ブロー窓19の開口位置を表示するマーキング23が外部から目視できる目印として施されている。
【0026】
図5から明らかなとおり、ハウジング13は合成樹脂の型成形により一体物として形成されており、冷却ファンFA(図1)が収容されるファン収容部26が形成されている。このハウジング13にはさらに、エアクリーナ10の収納凹所18が形成されている。ハウジングの底面図である図6に示すように、ハウジング13の取付孔25,25の周縁には、被係止部27と、L字状のストッパ28Aおよび逆L字状のストッパ28Bとが、ハウジング13の内側に突出して設けられている。
【0027】
図7の断面図に示すように、ハウジング13の収納凹所18は底部が開口しており、内面に第1支持台31が形成され、前縁に第2支持台32が形成されている。エアクリーナ10の内端部の下部が第1支持台31に支持され、外端部の下部が第2支持台32に支持される
【0028】
図8の断面図に示すように、クリーナカバー11の閉止部21には内方に突出した嵌合突起33が形成されている。クリーナカバー11を図2のハウジング13に被せたとき、ハウジング13のブロー窓19に図8の嵌合突起33が嵌合される。この嵌合突起33とブロー窓19の嵌合により、ハウジング13に対するクリーナカバー11の位置決めが容易になる。
【0029】
図2のクリーナカバー11に装着されるファスナ20は、図9に示すように、円板状の基板20Aと、この円板状の基板20Aの表面上に直径方向である一方向に延びて設けられた凸状の摘み部20Bと、前記基板20Aの裏面から下方に延びる軸部20Cと、この軸部20Cの下端部20Eを挟んでその両側に突設された係止部20D,20Dとを有する。係止部20D,20Dは、前記下端部20Eに設けられて、前記摘み部20Bの一方向と90度異なる方向に並んでいる。軸部20Cの下端部20Eの横幅Lは、係止部20D,20Dの横幅Mよりも若干大きい。このファスナ20は、図2のクリーナカバー11の挿通孔24とハウジング13の取付孔25に図9の軸部20Cが挿通された状態で、摘み部20Bを摘んで所定角度(90°)回動可能になっている。
【0030】
図10に示すように、ハウジング13の取付孔25の周縁の被係止部27は、案内凹所35と、これに山部36を介して連続する山部36よりも低い高い係止凹所37とを有する。図9のファスナ20の係止部20Dを山部36に乗せたのち、ファスナ20を回動させて、山部36を乗り越えさせ、係止凹所37に乗せる。これにより、ファスナ20が被係止部27に係止され、山部36とストッパ28Bとによって係止状態が維持される。
【0031】
図2のハウジング13の所定箇所へのクリーナカバー11の取り付けにあたっては、ファスナ20をハウジング13の挿通孔24に嵌め込む。続いて、横方向に設定された摘み部20Bを摘んで90度回動させ、この摘み部20Bを図3に示すような縦方向に向ける。これにより、前述のとおり、図9に示すファスナ20の係止部20D,20Dが図10に示す被係止部27に係止されて、図2のクリーナカバー11がハウジング13上に固定される。ファスナ20を逆方向に回動させることで、ファスナ20の被係止部27への係止が解除され、クリーナカバー11をハウジング13から取り外すことができる。
【0032】
この状態で、エアクリーナ10をハウジング13から上方へ離脱させて、フィルタ部10aの清掃または交換などのメンテナンスを行う。これとともに、ハウジング13のブロー窓19から、ブロワーのノズルを挿入して、その圧縮空気により、図4に示す冷却フィン4,4間の隙間40に詰まったゴミを除去する。
【0033】
上記構成において、エンジン1は、シリンダユニット2を覆うハウジング13に、図4に示すように、シリンダユニット2に設けられた複数の冷却フィン4の間の隙間40に対向するブロー窓19が形成され、クリーナカバー11にブロー窓19を塞ぐ図3の閉止部21が形成されている。つまり、図2に示すように、ブロー窓19を塞ぐ閉止部20がクリーナカバー11に一体的に形成されているので、従来、ブロー窓19を露出するためにクリーナカバー11とは別のブロー窓専用の蓋部材を取り外していたのに比べ、エアクリーナ10のフィルタ部10aのメンテナンス時に、ハウジング13からクリーナカバー11を取り外すと同時にブロー窓19が露出する。したがって、エアクリーナ10のフィルタ部10aのメンテナンスにあわせてブロー作業が容易に行えるので、メンテナンスの作業性が向上する。また、ブロー窓専用の蓋部材が不要となって部品点数が削減されるのでコストを低減できる。
【0034】
エンジン1は、図3に示すように、V形2気筒エンジンであり、2つのシリンダユニット2.2の間にエアクリーナ10のフィルタ部10aが配置されているから、2つのシリンダユニット2,2間の距離が短くなるので、ブロー窓19の閉止部21を有するクリーナカバー11のコンパクト化を図ることができる。
【0035】
図4のブロー窓19は、各シリンダユニット2,2に対向して一つずつ形成されているので、シリンダユニット2ごとに効果的なブロー作業が可能となる。また、仮にブロー窓19として、各シリンダユニット2,2に対向して共通の窓を一つだけ形成した場合、ブロー窓19が占める面積が大きくなってハウジング13の強度低下を招く。これに対し、ブロー窓19が各シリンダユニット2,2に対向して一つずつ形成されると、ブロー窓19が占める面積が比較的小さくなるので、ハウジング13の強度を低下させない。
【0036】
また、このエンジン1では、図1のエンジン回転軸9が鉛直に延び、2つのシリンダユニット2,2が水平に配置されている。これにより、上方からブロー作業が行えるので、作業性が向上する。
【0037】
クリーナカバー11は、図2のファスナ20によりハウジング13に取り付けられており、このファスナ20は係止部20D(図9)を有し、クリーナカバー11の挿通孔24に挿通された状態で所定角度回動されることによって、係止部20Dが図6のハウジング13の被係止部27に係止する。これにより、図2のハウジング13からのクリーナカバー11の着脱操作が容易となる。
【0038】
ハウジング13の被係止部27は、図10に示すように、ファスナ20の回動によりファスナ20の係止部20Dが乗り越えてロック位置に収まる係止凹所37と、ロック位置で係止部のそれ以上の回動を阻止するストッパ28A,28Bを有する。これにより、ファスナ20によるクリーナカバー11の取付けが安定化される。
【0039】
クリーナカバー11の閉止部21は、ハウジング13のブロー窓19に嵌合する、図8の嵌合突起33を有する。ブロー窓19と嵌合突起33の嵌合により、ハウジング13に対するクリーナカバー11の位置決めが容易となるので、クリーナカバー11のハウジング13に対する取り付けが容易化される。
【0040】
図2のエアクリーナ10は、クリーナカバー11を離脱させた状態でクリーナカバー11の離脱方向、つまり、上方に取り出し可能である。通常、クリーナカバー11の離脱方向には障害物がないので、その離脱方向と同一方向にエアクリーナ10が取り出しやすく、そのフィルタ部10aの交換作業が容易となる。
【0041】
図3に示すように、閉止部21の外表面にブロー窓19を表示するマーキング23が施されている。これより、マーキング23が外部から容易に確認できる目印となるので、マーキング23の目視によりブロー窓19の位置が瞬時にわかり、クリーナカバー11を取り外した後のブロー作業が容易となる。
【0042】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。本発明は、V形2気筒エンジン以外に、対向型の2気筒エンジンにも適用できるほか、単気筒エンジン、3気筒以上のエンジンにも適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1…汎用エンジン
2…シリンダユニット
2a…シリンダ
2b…シリンダヘッド
4…冷却フィン
7…クランクケース
10…エアクリ−ナ
10a…フィルタ部
11…クリーナカバー
12…ファンカバー
13…ハウジング
19…ブロー窓
20…ファスナ
20D…係止部
21…閉止部
23…マーキング
25…被係止部
27…被係止部
28A,28B…ストッパ
33…嵌合突起
37…係止凹所
40…隙間
FA…冷却ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10