特許第6688204号(P6688204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688204
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】リンク式多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/04 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   B25J9/04 B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-209230(P2016-209230)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-69354(P2018-69354A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 卓也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 志朗
(72)【発明者】
【氏名】杉森 正
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−132365(JP,A)
【文献】 実開昭59−66594(JP,U)
【文献】 特開昭58−155185(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/131955(WO,A1)
【文献】 特開平4−300190(JP,A)
【文献】 特開2003−305683(JP,A)
【文献】 特開平8−281578(JP,A)
【文献】 特開2015−33749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主アームと、この主アームの先端部に連結されたハンド部と、を有し、前記ハンド部に取り付けた対象物を操作するリンク式多関節ロボットであって、
前記主アームの胴部に対して一端部が回動自在に連結された副アームと、
前記主アームおよび前記副アームを支持する本体塔と、
制御装置と、を備え、
前記本体塔は、ベース部と、
このベース部に対して回転自在に支持された本体支柱と、
この本体支柱を回転駆動させる支柱回転装置と、
前記主アームの基端部が回動自在に連結され当該基端部を前記本体支柱に沿って移動させる第1の直動装置と、
前記副アームの他端部が回動自在に連結され当該他端部を前記本体支柱に沿って移動させる第2の直動装置と、を備え
前記本体支柱は、断面四角形であり、
前記本体支柱の対向する2つの壁の外面に一対のガイドレールがそれぞれ配設されており、
前記第1の直動装置は、直線ガイド機構と、駆動機構と、を備え、
前記第1の直動装置の直線ガイド機構は、
一対の前記ガイドレールに沿ってそれぞれ移動する一対の第1ガイドブロックと、
一対の前記第1ガイドブロックにそれぞれ配設されるとともに前記主アームの基端部にそれぞれ連結された一対の第1ガイドプレートと、を有し、
前記第2の直動装置は、直線ガイド機構と、駆動機構と、を備え、
前記第2の直動装置の直線ガイド機構は、
一対の前記ガイドレールに沿ってそれぞれ移動する一対の第2ガイドブロックと、
一対の前記第2ガイドブロックにそれぞれ配設されるとともに前記副アームの他端部にそれぞれ連結された一対の第2ガイドプレートと、を有すること、
を特徴とするリンク式多関節ロボット。
【請求項2】
前記第1の直動装置の駆動機構は、
一方の前記ガイドレールに沿って移動する前記第1ガイドブロックに配設された前記第1ガイドプレートに固定された第1ボールナットと、
前記第1ボールナットに螺合された第1ボールねじと、
前記第1ボールねじを回転駆動させる第1モータと、を有し、
前記第2の直動装置の駆動機構は、
他方の前記ガイドレールに沿って移動する前記第2ガイドブロックに配設された前記第2ガイドプレートに固定された第2ボールナットと、
前記第2ボールナットに螺合された第2ボールねじと、
前記第2ボールねじを回転駆動させる第2モータと、を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項3】
前記本体支柱は、断面が正方形の中空部材であること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項4】
前記ハンド部は、前記対象物を取り付ける被取付部と、
この被取付部を回転自在に支持する被取付部支持部と、
を備えたこと、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項5】
前記主アームは、前記被取付部を回転駆動させる対象物回転駆動装置を備えたこと、
を特徴とする請求項に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項6】
前記主アームは、前記ハンド部を前記主アーム軸に交差するハンド部揺動軸の回りに回転自在に支持するハンド部支持部と、
前記ハンド部を前記ハンド部揺動軸の回りに回転駆動させるハンド部揺動駆動装置と、を備えたこと、
を特徴とする請求項または請求項に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項7】
前記主アームは、前記ハンド部支持部を前記主アーム軸の回りに回転自在に支持する主アームベース部と、
前記ハンド部支持部を前記主アーム軸の回りに回転駆動させるハンド部支持部駆動装置と、を備えたこと、
を特徴とする請求項に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項8】
前記制御装置は、前記本体支柱の回転軸に対して前記主アーム軸が平行となる状態で前記本体支柱を回転駆動させること、
を特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリンク式多関節ロボット。
【請求項9】
前記副アームは、内部空間を有する筒状をなし、当該内部空間に前記ハンド部へ制御媒体を供給するケーブルを配設すること、を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリンク式多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク式多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場における装置間のワーク搬送は自動化が進み、多くの産業用ロボットが使われている。一方で、生産現場のスペースをできる限り有効活用するため、装置間の間隔は操作や保守に必要な最小限にレイアウトされる。
【0003】
従来、コンパクト化を図るため、スコットラッセル機構を採用した産業用ロボットが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された産業用ロボットは、主アームが曲げられたブーメラン状の形状をなしているため、主アームの先端部を副アームの直近となる手元まで寄せることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5476507号公報(請求項1、明細書の段落0027、図1図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された産業用ロボットは、旋回軸を直動機構によって上下に移動させているので、旋回可動範囲が制限されるという問題があった。産業用ロボットは、装置や作業者との干渉を回避しながら、可動範囲を広くする必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題点を解決すべく、狭小スペースでも旋回可動範囲を広くすることができるリンク式多関節ロボットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、主アームと、この主アームの先端部に連結されたハンド部と、を有し、前記ハンド部に取り付けた対象物を操作するリンク式多関節ロボットであって、前記主アームの胴部に対して一端部が回動自在に連結された副アームと、前記主アームおよび前記副アームを支持する本体塔と、制御装置と、を備え、前記本体塔は、ベース部と、このベース部に対して回転自在に支持された本体支柱と、この本体支柱を回転駆動させる支柱回転装置と、前記主アームの基端部が回動自在に連結され当該基端部を前記本体支柱に沿って移動させる第1の直動装置と、前記副アームの他端部が回動自在に連結され当該他端部を前記本体支柱に沿って移動させる第2の直動装置と、を備え、前記本体支柱は、断面四角形であり、前記本体支柱の対向する2つの壁の外面に一対のガイドレールがそれぞれ配設されており、前記第1の直動装置は、直線ガイド機構と、駆動機構と、を備え、前記第1の直動装置の直線ガイド機構は、一対の前記ガイドレールに沿ってそれぞれ移動する一対の第1ガイドブロックと、一対の前記第1ガイドブロックにそれぞれ配設されるとともに前記主アームの基端部にそれぞれ連結された一対の第1ガイドプレートと、を有し、前記第2の直動装置は、直線ガイド機構と、駆動機構と、を備え、
前記第2の直動装置の直線ガイド機構は、一対の前記ガイドレールに沿ってそれぞれ移動する一対の第2ガイドブロックと、一対の前記第2ガイドブロックにそれぞれ配設されるとともに前記副アームの他端部にそれぞれ連結された一対の第2ガイドプレートと、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るリンク式多関節ロボットは、狭小スペースでも旋回可動範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るリンク式多関節ロボットの外観を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る図1の主アームの構成を示し、(a)は平面断面図、(b)は側面断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る図1のハンド部の構成を示す平面断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るリンク式多関節ロボットにおける主アームと副アームの支持構造を模式的に示す側面図であり、本体支柱に対して主アームを平行にした状態を示す。
図5】主アームと副アームの支持構造を模式的に示す図4の断面図であり、(a)はX−X断面図、(b)はY−Y断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る本体塔の主要な構成を示す正面断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るリンク式多関節ロボットを工作機械ラインへ適用した実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るリンク式多関節ロボット1について適宜図1から図5を参照しながら詳細に説明する。
〈全体構成の概要〉
リンク式多関節ロボット1は、図1に示すように、主アーム2と、主アーム2の先端部に連結されたハンド部3と、副アーム4と、本体塔5と、制御装置10と、を備えている。
【0011】
ハンド部3は、対象物を取り付ける被取付部31と、被取付部31を回転自在に支持する被取付部支持部32と、を備えている。
リンク式多関節ロボット1は、ハンド部3に取り付けた対象物である工具、治具、クランプ装置等を操作するロボットである。例えば、図7に示すように、エアクランプやマグネット等で把持するクランプ装置Tをハンド部3に取り付けてワークWをマシニングセンタ等の工作機械M1,M2に搬入搬出する用途に好適である。
【0012】
本体塔5は、図6に示すように、ベース部51と、本体支柱52と、支柱回転装置53と、主アーム2の基端部(第1の連結部23)を移動させる第1の直動装置54と、副アーム4の他端部42を移動させる第2の直動装置55と、外側を覆うカバー部材56(図1参照)と、可動部を覆うスライドガード57(図1参照)と、を備えている。
【0013】
〈主アーム〉
主アーム2の構成について、図2図3を参照しながら説明する。図2は、主アームの全体構成を示し、(a)は平面断面図、(b)は側面断面図である。図3は、主アームの先端部分の構成を示す平面断面図である。
【0014】
主アーム2は、図2(a)に示すように、ハンド部支持部21と、主アームベース部22と、主アーム2の基端部に配設された第1の連結部23と、ハンド部揺動駆動装置6と、ハンド部支持部駆動装置7(図2(b)参照)と、対象物回転駆動装置8と、を備えている。
【0015】
主アーム2は、主アームベース部22からハンド部支持部21までが直線の主アーム軸2a上に配置されている。
かかる構成により、ハンド部揺動駆動装置6、ハンド部支持部駆動装置7(図2(b)参照)、対象物回転駆動装置8は、主アーム2の基端側にモータ等の駆動源を配置して、先端側のハンド部3まで、動力伝達系を構成する伝達シャフト(63,73,83)を主アーム軸2aに沿って直線上に配置することができる。これにより、動力伝達系を簡素化するとともに、先端側の剛性を高めることができる。
【0016】
ハンド部支持部21は、ハンド部3を支持する部位であり、主アーム2の先端側(手先部分)に配設されている。ハンド部支持部21は、基体となるケーシング21aと、先端部にコ字状をなした貫通凹部21bと、カバー21cと、を備えている。貫通凹部21bには、ハンド部3が支持されている。ハンド部支持部21は、主アーム軸2aに直交する方向に設定されたハンド部揺動軸2bの回りに、ハンド部3を回転自在に支持する。
【0017】
なお、本実施形態においては、主アーム軸2aに直交する方向にハンド部揺動軸2bを設定したが、これに限定されるものではなく、作業環境等を考慮して主アーム軸2aに交差する方向に設定することもできる。
【0018】
主アームベース部22は、ハンド部支持部21を支持する部位であり、主アーム2の基端側に配設されている。主アームベース部22は、ハンド部支持部21を主アーム軸2aの回りに回転自在に支持する。
【0019】
第1の連結部23は、図4に示すように、第1の直動装置54に連結される部位であり、主アーム2の基端部に配設されている。リンク式多関節ロボット1は、第1の直動装置54によって、第1の連結部23を本体支柱52(図6参照)に沿って上下方向に往復移動(図1の符号S1を参照)させる。
【0020】
ハンド部揺動駆動装置6は、図2(a)に示すように、ハンド部3をハンド部揺動軸2bの回りに回転駆動させる装置である。ハンド部揺動駆動装置6は、駆動モータ61と、駆動モータ61から歯車62と減速機G1を介してハンド部3へ駆動力を伝達する伝達シャフト63と、図3に示すように、伝達シャフト63から、はすば歯車64とベルト伝達機構65、および減速機G2を介してハンド部3を回転駆動させるハンド部揺動駆動伝達機構(64,65)と、を備えている。伝達シャフト63は、中空のシャフトで構成されている。
【0021】
かかる構成により、リンク式多関節ロボット1は、ハンド部揺動駆動装置6によって、ハンド部揺動軸2bの回りに少なくとも90度の可動範囲θ6(図1参照)で、ハンド部3を往復揺動回転または連続回転させることができる。
また、ハンド部3に伝達される減速機G1および減速機G2の減速速度を適宜調整することで、ハンド部3の回転速度を適宜設定することができる。
【0022】
ハンド部支持部駆動装置7は、図2(b)に示すように、主アーム2の基端部に配設された駆動モータ71と、駆動モータ71から歯車72と減速機G1を介してハンド部支持部21へ駆動力を伝達する伝達シャフト73と、伝達シャフト73とハンド部支持部21のケーシング21aとを連結する連結継手74と、を備えている。伝達シャフト73は、中空のシャフトで構成されている。伝達シャフト73の内側に伝達シャフト63が内設されている。
【0023】
かかる構成により、リンク式多関節ロボット1は、ハンド部支持部駆動装置7によって、主アーム軸2aの回りに少なくとも180度の可動範囲θ7(図1参照)で、ハンド部支持部21を往復揺動回転または連続回転させることができる。
また、ハンド部支持部21に伝達される減速機G1の減速速度を適宜調整することで、ハンド部支持部21の回転速度を適宜設定することができる。
【0024】
図2(a)に示すように、対象物回転駆動装置8は、被取付部31を中心軸2cのまわりに回転駆動させる装置である。対象物回転駆動装置8は、駆動モータ81と、駆動モータ81から歯車82と減速機G1を介してハンド部3へ駆動力を伝達する伝達シャフト83と、図3に示すように、伝達シャフト83から、はすば歯車84とベルト伝達機構85を介して被取付部31を回転駆動させる被取付部駆動伝達機構(83〜87)と、を備えている。伝達シャフト83は、中空のシャフトで構成され、伝達シャフト63の内側に内設されている。
【0025】
被取付部駆動伝達機構は、はすば歯車84とベルト伝達機構85の他、ベルト伝達機構85で駆動されるはすば歯車86と、はすば歯車86に噛合され被取付部31に連結されたはすば歯車87と、を備えている。
【0026】
駆動モータ61、駆動モータ71、および駆動モータ81は、主アーム2の基端部に配設されている。これにより、主アーム2の慣性モーメントを低減して、迅速で高精度な動作を行わせることができる。また、先端側のハンド部3の周辺は、作業環境によってクーラント等が飛散して汚染されるが、モータ等の駆動源を基端部に配設することで、耐環境性を向上させることができる。
【0027】
かかる構成により、リンク式多関節ロボット1は、対象物回転駆動装置8によって、主アーム軸2aの回りに少なくとも360度の可動範囲θ8(図1参照)で、被取付部31を往復揺動回転または連続回転させることができる。
【0028】
〈ハンド部〉
被取付部31は、先端部に減速機G3が配設されている。
被取付部支持部32は、図2(b)に示すように、円板形状をなした部材であり、被取付部31を中心軸2cのまわりに回転自在に支持する部位である。被取付部支持部32は、ハンド部支持部21の先端部に形成された貫通凹部21bに配設され、ハンド部揺動軸2bの回りに回転自在に支持されている。
【0029】
かかる構成により、減速機G3の減速速度を適宜調整することで、被取付部31の回転速度を適宜設定することができる。
【0030】
〈副アーム〉
副アーム4は、図4に示すように、両端(41,42)が回転自在に連結されたリンク部材であり、一端部である関節部41が主アーム2の胴部である主アームベース部22に連結され、他端部の関節部である第2の連結部42が第2の直動装置55に連結されている。副アーム4は、内部空間4a(図1参照)を有する筒状をなし、内部空間4aにハンド部3へ制御媒体を供給するケーブルK1,K2,およびK3のうち少なくとも1つが配設されている。
【0031】
例えば、図1に示すように、ケーブルK1は、副アーム4の内部中空4aから外に出してハンド部3に接続するケーブルである。ケーブルK2は、副アーム4の内部中空4aから主アーム2の内部を通してハンド部3に接続するケーブルである。ケーブルK3は、副アーム4の内部中空4aから主アーム2の内部を通った後、再度主アーム2の外部に出してハンド部3に接続するケーブルである。なお、エア配管には、図示しないエア源から圧縮エアが供給される。
【0032】
ケーブルK1,K2,およびK3は、圧縮エア配管や油圧配管、電線等であり、制御媒体は、ハンド部3に取り付けた対象物であるクランプ装置T(図7参照)を制御するための圧縮エアや圧油、電力等である。
【0033】
〈本体塔〉
本体塔5について、主として図5図6を参照しながら説明する。図5は、主アームと副アームの支持構造を模式的に示す図4の断面図であり、(a)はX−X断面図、(b)はY−Y断面図である。図6は、本体塔の主要な構成を示す正面断面図であり、本体塔を裏側から見た背面図であり、主アームと副アームを省略する。
【0034】
図6に示すように、本体塔5は、基体となるベース部51を備えている。ベース部51は、工場の床等に固定される。
本体支柱52は、ベース部51から立設するように配設された部材であり、ベース部51に対して回転自在に支持されている。本体支柱52は、軸受で支持された軸支部分(不図示)と、ベース部51から立設する断面が正方形のパイプ部材(図5参照)と、を備えている。
【0035】
支柱回転装置53は、ベース部51に対して、本体支柱52を回転駆動させる装置であり、サーボモータ53aと減速装置53bとを備えている。リンク式多関節ロボット1は、支柱回転装置53によって、回転軸52aの回りに少なくとも360度の可動範囲θ5で、本体支柱52を往復揺動回転または連続回転させる。これにより、リンク式多関節ロボット1は、主アーム2、副アーム4、並びに第1の直動装置54および第2の直動装置55を本体支柱52とともに360度で全周回転させることができる。
【0036】
かかる構成により、減速装置53bの減速速度を適宜調整することで、本体支柱52の回転速度を適宜設定することができる。
【0037】
第1の直動装置54は、主アーム2の基端部である第1の連結部23を本体支柱52に沿って移動させる装置である。第1の直動装置54は、直線ガイド機構と、駆動機構とを備えている。
【0038】
直線ガイド機構は、図5(a)に示すように、本体支柱52の対向面に図の左右それぞれ配設されたガイドレール54a,54aと、ガイドレール54a,54aに沿って移動するガイドブロック54bと、左右それぞれのガイドレール54a,54aのガイドブロック54bに配設されたガイドプレート54c,54cと、を備えている。
【0039】
第1の直動装置54の駆動機構は、サーボモータ54dと、サーボモータ54dで回転駆動されるボールねじ54eと、ボールねじ54eに螺合されたボールナット54fと、を備えている。ボールナット54fは、ボールねじ54eが設けられたガイドプレート54cに固定されている。第1の連結部23は、図の左右それぞれに配設されたガイドプレート54c,54cにまたがって図の左右方向における中央部に連結されている。
【0040】
ガイドブロック54bは、図6に示すように、ボールねじ54eが設けられるガイドプレート54cには、2個が配設され、ボールねじ54eが設けられないガイドプレート54cには、1個が配設されている。
【0041】
第2の直動装置55は、副アーム4の他端部である第2の連結部42を本体支柱52に沿って移動させる装置である。第2の直動装置55は、直線ガイド機構と、駆動機構とを備えている。
【0042】
直線ガイド機構は、前記した第1の直動装置54のガイドレール54a,54aを共用化して使用し、ガイドレール54a,54aに沿って移動するガイドブロック55bと、左右それぞれのガイドレール54a,54aのガイドブロック55bに配設されたガイドプレート55c,55cと、を備えている(図5(b)参照)。ガイドブロック55bの構成は、第1の直動装置54と同様である。
【0043】
第2の直動装置55における駆動機構は、サーボモータ55dと、サーボモータ55dで回転駆動されるボールねじ55eと、ボールねじ55eに螺合されたボールナット55fと、を備えている。ボールナット55fは、ボールねじ55eが設けられたガイドプレート55cに固定されている。図5(b)に示すように、第2の連結部42は、図の左右それぞれに配設されたガイドプレート55c,55cにまたがって図の左右方向における中央部に連結されている。
【0044】
制御装置10(図1参照)は、ハンド部揺動駆動装置6、ハンド部支持部駆動装置7、対象物回転駆動装置8、支柱回転装置53、および第1の直動装置54と第2の直動装置55、その他の付属装置等の動作を制御する。
【0045】
以上のように構成された本発明の実施形態に係るリンク式多関節ロボット1の動作について、主として図1図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、本発明の実施形態に係るリンク式多関節ロボット1は、第1の直動装置54によって、本体支柱52に沿って所定の可動範囲S1で、主アーム2の第1の連結部23を直線往復移動させることができる。また、第2の直動装置55によって、本体支柱52に沿って所定の可動範囲S2で、副アーム4の第2の連結部42を直線往復移動させることができる。
【0046】
リンク式多関節ロボット1は、第1の直動装置54、および第2の直動装置55からなるガイドレール54a,54aを共用化した直線移動ガイド方式を採用することで、コンパクトに構成するとともに、かつ、高度な剛性および軌道精度を確保することができる。
【0047】
そして、リンク式多関節ロボット1は、第1の連結部23と第2の連結部42とを一緒に上下に移動させることで、本体支柱52の回転軸52aに対する角度θ2(図1参照)を維持したままで、移動させることができる。
【0048】
リンク式多関節ロボット1は、第1の連結部23と第2の連結部42とが相互に離隔する方向に移動させることで、本体支柱52の回転軸52aに対する角度θ2(図1参照)を減少する方向に移動させることができる。そして、角度θ2が0度になるまで移動させると、図4に示すように、回転軸52aに対して主アーム軸2aが平行となる。このようにして、主アーム2をコンパクトに折り畳んだ状態で、本体支柱52を回転駆動させることができる。これにより、主アーム2の手元まで作業範囲を拡大させることで、狭小スペースでも作動可動範囲を広く確保することができる。
【0049】
リンク式多関節ロボット1は、第1の直動装置54、および第2の直動装置55によって、それぞれ第1の連結部23、および第2の連結部42の2か所の位置を制御すればよいので、一般的な多関節ロボットのような複雑な同期制御を不要とすることができるため、制御系を簡素化してコスト低減を図ることができる。
【0050】
リンク式多関節ロボット1は、第1の直動装置54、および第2の直動装置55によって、それぞれ主アーム2、および副アーム4を制御することで、一般的な多関節ロボットのように、稼働中にアームが背面側に飛び出すことがないため、狭小な作業スペースに設置しても、他の装置等との干渉を防止することが容易である。
【0051】
また、リンク式多関節ロボット1は、作業目的や工場のレイアウト等に応じて、減速装置53b、減速機G1,G2,G3の減速速度を適宜調整して組み合わせることで、本体支柱52、ハンド部3、ハンド部支持部21、被取付部31の回転速度を適宜設定することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されず、適宜変形して実施することが可能である。例えば、本実施形態においては、本体塔5を鉛直方向に設置したが、これに限定されるものではなく、本体塔5を水平方向に設置したり、傾けて設置したりすることもできる。
【0053】
また、本実施形態においては、本体塔5を工場の床等に固定した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、種々の移動装置に搭載してリンク式多関節ロボット1を移動させながらワーク(不図示)をライン搬送することもできる。
【0054】
例えば、図7に示すように、マシニングセンタ等の工作機械M1,M2を並べた工作機ライン100において、送り方向に沿って工作機械M1,M2の前に移動装置101を設置して、リンク式多関節ロボット1を各工作機械M1,M2への搬入搬出装置として適用することができる。
【0055】
なお、図7において、工作機械M1,M2は、特に限定されるものではなく、工作ライン100の目的に応じて、横形のマシニングセンタ、立形のマシニングセンタ、ウォータージェット式洗浄装置等から適宜構成することができる。
【0056】
工作機械ライン100は、複数の工程を実行する工作機械M1,M2の前に配設された移動装置101と、移動装置101に載置されたリンク式多関節ロボット1と、移動装置101とリンク式多関節ロボット1の制御装置10とを接続するケーブル101aと、搬入ワーク載置台102と、搬出ワーク載置台103と、を備えている。
【0057】
工作機械ライン100は、図示しないコンベア等のワーク供給装置によって、ワークWを搬入ワーク載置台102の所定の供給位置まで供給する。
【0058】
リンク式多関節ロボット1は、搬入ワーク載置台102に対する所定の基準位置まで移動装置101によって接近する。リンク式多関節ロボット1は、支柱回転装置53、ハンド部揺動駆動装置6、ハンド部支持部駆動装置7、対象物回転駆動装置8、第1の直動装置54および第2の直動装置55(図6参照)によって主アーム2と副アーム4、およびハンド部3を操作して、ハンド部3に取り付けたエアクランプ等のクランプ装置Tを所定のワーク把持位置まで移動させる。
【0059】
リンク式多関節ロボット1は、クランプ装置Tによって、ワークWを把持して、第1の直動装置54および第2の直動装置55(図6参照)によって主アーム2と副アーム4とを移動させて、ワークWを所定の持ち上げ高さまで上昇させる。そして、リンク式多関節ロボット1は、支柱回転装置53(図6参照)等によって主アーム2を旋回させながら、工作機械M1の所定の基準位置までワークWを搬入する。リンク式多関節ロボット1は、ワークWを工作機械M1の所定の基準位置でクランプ装置Tを開放する。
【0060】
工作機械M1で加工が完了すると、リンク式多関節ロボット1は、ワークWを工作機械M1から工作機械M2へ搬入する。このようにして、工作機械M2で加工が完了すると、リンク式多関節ロボット1は、ワークWを搬出ワーク載置台103の所定の排出位置まで移動させる。
【符号の説明】
【0061】
1 リンク式多関節ロボット
2 主アーム
2a 主アーム軸
2b ハンド部揺動軸
2c 中心軸
3 ハンド部
4 副アーム
4a 内部空間
5 本体塔
6 ハンド部揺動駆動装置
7 ハンド部支持部駆動装置
8 対象物回転駆動装置
10 制御装置
21 ハンド部支持部
22 主アームベース部
23 第1の連結部(基端部)
41 関節部
42 第2の連結部(他端部)
51 ベース部
52 本体支柱
52a 回転軸
53 支柱回転装置
54 第1の直動装置
55 第2の直動装置
K1,K2,K3 ケーブル
T クランプ装置(対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7