【文献】
ARTHRITIS & RHEUMATISM, 2010, Vol.62, No. 5, pp.1383-1392
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
老化はほとんどの成人病、障害、および健康悪化の危険因子である。個体が年を取るにつれ、複製を停止した細胞である老化細胞は蓄積し、老化と年齢に関連する疾患の基礎となる細胞と組織の劣化に部分的なまたは主要な一因となり得る。細胞は環境的、化学的、または生物学的な損傷に対する暴露後に、あるいは疾患の結果として、老化することもある。本明細書では、加齢性の病状と疾患を含む多くの病状と疾患に関連している老化細胞の選択的な死滅のための方法と薬剤が提供される。本明細書に開示されるように、老化細胞に関連する疾患と障害は、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤の投与によって処置されるか、または予防されることがある(つまり、発生または進行の可能性が減る)。本明細書に記載される薬剤と方法によって処置または予防される老化細胞に関連する疾患または障害は、心臓の疾患または障害、炎症性または自己免疫性の疾患または障害、肺の疾患または障害、神経系疾患または障害、皮膚科学的な疾患または障害、化学療法の副作用、放射線療法副作用、あるいは転移、あるいは代謝病を含み、これらはすべて本明細書においてより詳細に記載されている。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤と方法によって処置または予防される老化細胞関連疾患または障害としては、一例として、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、変形性関節症、およびアテローム性動脈硬化のような動脈硬化症に関連した心疾患および障害が挙げられる。ある実施形態では、老化に関連する疾患または障害は癌ではない。本明細書においてより詳細に記載されているように、老化細胞破壊薬剤は例えば、MDM2阻害剤(例えばヌトリン 3a、RG−7112);少なくとも抗アポトーシスタンパク質、BCL−xLの機能を阻害する、1以上のBCL−2の抗アポトーシスタンパク質ファミリーの阻害剤(例えば、ABT−263、ABT−737、WEHI−539、A−1155463);およびAkt特異的阻害剤(例えばMK−2206)を含む。
【0028】
本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤はかなりの数の老化細胞を殺すのに十分である。たとえ細胞が処置された被験体において老化し続けても、老化に関連する分泌の表現型(SASP)の存在によって示されたような老化の確立は、数日にわたって生じる(例えば、Laberge et al., Aging Cell 11:569−78 (2012); Coppe et al., PLoS Biol 6: 2853−68 (2008); Coppe et al. PLoS One 5:39188 (2010); Rodier et al., Nat. Cell Biol. 11:973−979; Freund et al., EMBO J. 30:1536−1548 (2011)を参照)。したがって、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の使用は、こうした薬剤が、頻繁ではなく断続的に、および/または、これらの疾患と病気の治療に一般に使用される多くの治療剤よりも低い用量で投与可能であるという長所を与えるものである。本明細書に記載される方法は、頻繁ではなく断続的に、および/または、癌または他の疾患の治療に薬剤が投与される際には低用量で投与され得る老化細胞破壊薬剤などの薬剤の使用について記載している。
【0029】
老化細胞破壊薬剤
本明細書に記載されるような老化細胞破壊薬剤は、「選択的に」(優先的に、またはかなりの程度で)老化細胞を破壊するか、殺すか、除去するか、またはその選択的な破壊を促す薬剤である。言いかえれば、老化細胞破壊薬剤は、非老化細胞を破壊するか殺すその能力と比較して、生物学的、臨床学的、および/または、統計学的に有意な方法で老化細胞を破壊するか殺す。老化細胞破壊薬剤は、臨床学的に有意なまたは生物学的に有意な方法において、確立された老化細胞を選択的に殺すのには十分であるが、非老化細胞を殺すのには不十分である時間と量で使用される。ある実施形態において、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の死を誘発し(開始させ、刺激し、引き金を引き、活性化し、促進し)、および老化細胞の死を結果的にもたらす(つまり、引き起こす、至らしめる)方法で、少なくとも1つのシグナル伝達経路を変更する。例えば、老化細胞破壊薬剤は、例えば、老化細胞における細胞生存および/または炎症性の経路内のタンパク質をアンタゴナイズすることによって、細胞生存シグナル伝達経路(例えばAkt経路)または炎症性の経路の一方または両方を変更することがある。
【0030】
特定の理論によって縛束されることなく、本明細書に記載される阻害剤とアンタゴニストが老化細胞を選択的に殺すメカニズムは、結果として細胞死をもたらすアポトーシス経路の誘導(活性化、刺激、その阻害の排除)によるものである。非老化細胞は増殖細胞であるか、あるいは休止細胞であってもよい。ある例では、本明細書に記載される方法で使用されるような老化細胞破壊薬剤への非老化細胞の曝露は、非老化細胞の増殖する能力を一時的に低下させることがある;しかしながら、アポトーシス経路は誘導されず、非老化細胞は破壊されない。
【0031】
本明細書に記載される方法で使用され得る老化細胞破壊薬剤は癌を処置するのに有用であると記載されている;しかしながら、老化に関連する障害または疾患を処置する方法において、老化細胞破壊薬剤は、様々であると考えられ、かつ、癌の治療には効果がない可能性がある方法で投与される。本明細書に記載された老化細胞破壊薬剤で老化に関連する疾患または障害を処置するために使用される方法は、癌治療に必要な薬剤の投与量よりも、1日量を減少させること、単一の処置サイクルにわたって蓄積量を減少させること、または多数の処置サイクルからの薬剤の蓄積量を減少させること、の1つ以上を含むことがある;したがって、癌の治療のために最適化されたレジメンに従って被験体を処置することに関連した1つ以上の有害な作用(つまり副作用)が生じる可能性は減少する。対照的に、老化細胞破壊薬剤として、本明細書に記載される化合物は、当該技術分野で現在知られているよりも少ない用量で、または選択的に老化細胞を殺す方法(例えば間欠性の投薬)で投与されてもよい。ある実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤は、有効に癌を処置する癌細胞に対して細胞毒性が十分ではない可能性のある処置コースまたは処置サイクル毎により低い蓄積量で投与されてもよい。言い換えれば、本明細書に記載される方法によって、老化細胞破壊薬剤が癌を治療するために単独で、あるいは1つ以上の追加の化学療法剤または放射線療法と一緒に投与されるかどうかにかかわらず、老化細胞破壊薬剤は、癌の治療のために当業者によって一次療法として理解されることになる方法の中では使用されない。たとえ、本明細書に記載される方法で使用されるような薬剤が、癌の一次療法として考えられるのに十分である方法で使用されていなくても、その方法と本明細書に記載される老化細胞を破壊する組み合わせは、転移を阻害するのに役立つ方法(例えば、短期間の治療コース)で使用されることがある。本明細書で使用されるような「癌のための一次療法」とは、単独で、あるいは1つ以上の薬剤と一緒に使用されることがある薬剤が医学と腫瘍内科学分野の当業者によって決定されるような癌の効果的な処置であるとされているか、または知られている場合、該薬剤を用いる癌の処置のための投与プロトコルは適切な癌関連のエンドポイントを達成するために設計されてきた。さらに毒性を減らすために、老化細胞破壊薬剤は、老化細胞(腫瘍細胞ではない)の近位の、または該相貌に接する部位で投与されることがある。
【0032】
老化細胞破壊薬剤の局所的な送達は本明細書において詳細に記載されている。本明細書に記載された老化細胞破壊薬剤は、細胞の老化プロセスの間に活性化する1つ以上の細胞の経路を変更する(つまり、緩衝し、影響を与える)。老化細胞破壊薬剤は細胞生存シグナル伝達経路(例えばAkt経路)または炎症性の経路のいずれかを変更するか、あるいは老化細胞の細胞生存シグナル伝達経路と炎症性の経路の両方を変更することがある。老化中の特定の細胞の経路の活性化は、アポトーシスを誘導し、最終的にはアポプトーシスを被る細胞の能力を低下させるか、または阻害する。理論によって束縛されることなく、老化細胞破壊薬剤が老化細胞を選択的に殺すメカニズムは、細胞死をもたらすアポトーシス経路を誘導する(活性化する、刺激する、その阻害を解除する)ことによるものである。老化細胞破壊薬剤は、1つ以上のシグナル伝達経路において1つ、2つ、またはそれ以上の標的タンパク質と相互に作用することにより老化細胞の1つ以上のシグナル伝達経路を変更することがあり、これはアポトーシス経路のような細胞死経路の抑制の解除または減少をもたらす。老化細胞中の1つ、2つ、またはそれ以上の細胞経路を変更するために老化細胞破壊薬剤に老化細胞を接触させるか晒すことによって、アポプトーシスを開始させるための細胞のメカニズムと経路を回復することがある。ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は老化細胞のシグナル伝達経路を変更する薬剤であり、これは老化細胞の生存にとって重要な1つ以上の遺伝子産物の分泌および/または発現を阻害する。老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の生存にとって重要な遺伝子産物の生物学的活性を抑制することもある。代替的に、老化細胞中の遺伝子産物のレベルの減少または低下は、別の細胞成分の生物学的活性を変更することがあり、これは、アポトーシス経路の引き金を引くか、開始させるか、活性化するか、刺激するか、あるいは、アポトーシス経路の抑制を解除するか、減少させる。本明細書で記載されるように、老化細胞破壊薬剤は生物学的に活性な薬剤であり、細胞毒性の部分(例えば、毒素または細胞毒性ペプチドまたは細胞毒性の核酸)への結合または抱合のない状態で老化細胞を選択的に殺すことができる。老化細胞破壊薬剤はさらに、老化細胞と選択的に結合する標的部分(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント;細胞結合ペプチド)への結合または抱合のない状態で老化細胞を選択的に殺す際に活性である。
【0033】
細胞死の代替的な2つのモード、アポプトーシスと壊死は識別することができる。アポプトーシスという用語は、凝固壊死とは形態学的に異なる細胞死のモードとして現象を評するために、Kerrとその同僚たちによって最初に用いられた(Br. J. Cancer 26:239−57 (1972))。アポプトーシスは典型的には、細胞の円形化、クロマチン凝縮(核濃縮)、核断片化(核崩壊)、および近隣細胞の貪食(例えば、Kroemer et al., Cell Death Differ. 16:3−11 (2009))によって特徴づけられる。いくつかの分子アッセイが開発されており、当該技術分野で使用されている;しかしながら、光学顕微鏡と電子顕微鏡検査によって検知される形態学的変化は、細胞死の2つの特徴的な形態を区別するための最適な技術として、当該技術分野では見られている(例えば、蒸気のKroemer et al.を参照)。カスパーゼ−に依存しないアポプトーシスのようなプログラム細胞死(PCD)、オートファジー、壊死のようなPCD、および分裂死などの代替的な細胞死の形態も同様に特徴づけられている(例えば、see, e.g., Golstein, Biochem. Sci. 32:37−43 (2007); Leist et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2:589−98 (2001)を参照)。
例えば、Caruso et al., Rare Tumors 5(2): 68−71 (2013); published online 2013 June 7. doi: 10.3081/rt.2013.e18を参照。当該技術分野で日常的に実践される、および、本明細書に記載される技術と方法(例えばTUNEL)は、アポトーシスの細胞死が本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤との接触に起因することを示すために使用されてもよい。
【0034】
ある実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるような老化細胞破壊薬剤は、小分子化合物である。小分子であるこれらの老化細胞破壊薬剤は、本明細書において老化細胞破壊化合物とも呼ばれることがある。ある実施形態では、小分子である老化細胞破壊薬剤は、活性化されるもの、あるいは、細胞内の酵素によって活性型に変換されるプロドラッグであるものを含む。さらに特定の実施形態では、プロドラッグを活性な老化細胞破壊形態に変換する酵素は、非老化細胞中より老化細胞中で高いレベルで発現されるものである。
【0035】
少なくとも1つのシグナル伝達経路を変更し得る本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤は、経路内の標的タンパク質の少なくとも1つの活性を抑制する薬剤を含む。老化細胞破壊薬剤は、少なくともBCL−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの特異的阻害剤(例えば、Bcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤;選択的なBcl−xL阻害剤;Bcl−xL/Bcl−w阻害剤);Aktキナーゼ特異的阻害剤;または、MDM2阻害剤であってもよい。実施形態では、ケルセチン(および、そのアナログ)、エンザスタウリン、およびダサチニブなどの分子は除外され、本明細書に記載される方法と組成物で使用される化合物ではない。他の特定の実施形態では、方法は少なくとも2つの老化細胞破壊薬剤の使用を含み、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤と第2の老化細胞破壊薬剤は各々異なり、老化細胞の生存シグナル伝達経路と炎症性の経路のいずれか1つまたは両方を独立して変更する。
【0036】
小分子
老化に関連する疾患または障害を処置または予防する方法で使用され得る老化細胞破壊薬剤は、小さな有機分子を含む。小さな有機分子(本明細書において小分子または小分子化合物とも呼ばれる)は典型的には105ダルトン未満、104ダルトン未満、または103ダルトン未満の分子量を有する。ある実施形態では、小分子老化細胞破壊薬剤は、以下の基準を二度以上破らない:(1)せいぜい5つの水素結合供与体(窒素−水素と酸素−水素結合の総数);(2)せいぜい10の水素結合受容体(すべての窒素または酸素原子);(3)500ダルトン未満の分子量;(4)5以下のオクタノール−水分配係数[5]logP。
【0037】
MDM2阻害剤
ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤はMDM2阻害剤であってもよい。老化細胞を選択的に殺し、老化に関連する疾患または障害を処置または予防する(つまり、その発生または進行の可能性を減少または低下させる)方法で使用され得るMDM2(murine double minute 2)阻害剤は、次のクラスの化合物、例えば、シス−イミダゾリン化合物、スピロ−オキシンドール化合物、ベンゾジアゼピン化合物、ピペリジノン化合物、トリプタミン化合物、および、CGM097のいずれか1つに属する小分子化合物、およびその関連するアナログであってもよい。ある実施形態では、MDM2阻害剤は、ヒトのHDMXとしても知られているMDMX(murine double minute Xに結合し、この活性を阻害することができる。MDM2のヒト同族体は当該技術分野でHDM2(human double minute2)と呼ばれる。したがって、本明細書に記載される方法によって処置された被験体はヒト被験体であり、MDM2阻害剤として本明細書に記載される化合物はさらにHDM2のそのリガンドの1つ以上への結合を阻害する。
【0038】
MDM2は、当該技術分野において、26Sプロテアソームによるプロテアソーム分解のためにp53などの腫瘍抑制タンパク質を標的とすることにより、腫瘍形成を促進することができるE3ユビキチン・リガーゼとして記載されている(例えば、Haupt et al. Nature 387: 296−299 1997; Honda et al., FEBS Lett 420: 25−27 (1997); Kubbutat et al., Nature 387: 299−303 (1997)を参照)。
MDM2はさらにp53のN末端への直接結合によりp53に影響を与え、これは、p53の転写活性化機能を阻害する(例えば、Momand et al., Cell 69: 1237−1245 (1992); Oliner et al., Nature 362: 857−860 (1993)を参照)。Mdm2は順にp53によって調節される;p53反応元素は、Mdm2遺伝子のプロモーターに位置する(例えば、Barak et al., EMBO J 12:461−68 (1993)); Juven et al., Oncogene 8:3411−16 (1993)); Perry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 90:11623−27 (1993)を参照)。p53とMdm2の間のこの負のフィードバックループの存在は、単離細胞研究によって確認されている(例えば、Lahav, Exp. Med. Biol. 641:28−38 (2008)を参照)。さらにManfredi, Genes & Development 24:1580−89 (2010)も参照のこと。
【0039】
報告書はMDM2のいくつかの活性と生物学的機能を記載している。これらは、活性が下記を含むと報告している:それ自体、およびARRB1に向かってユビキチン・リガーゼE3として作用する;p53の核外輸送を許可する;網膜芽細胞腫RB1タンパク質のプロテアソーム依存性ユビキチン非依存型の分解を促す;そのユビキチン化と分解を引き起こすことによりDAXX媒介性のアポプトーシスを阻害する;p53を安定させることに関与するTRIM28/KAP1−MDM2−p53複合体の構成要素;成長因子とDNA損傷反応経路をリンクするTRIM28/KAP1−ERBB4−MDM2複合体の構成要素;核中のDYRK2のユビキチン化と後のプロテアソーム分解を媒介する;IGF1RとSNAI1をユビキチン化して、それらをプロテアソーム分解へと促す。MDM2は転写因子FOXO4のモノ−ユビキチン化を引き起こすことも報告されている(例えば、Brenkman et al., PLOS One 3(7):e2819, doi: 10.1371/journal.pone.0002819を参照)。本明細書に記載されたMDM2阻害剤は、MDM2と前述の細胞成分の任意の1以上との間の相互作用を妨害することがある。
【0040】
1つの実施形態では、本明細書に記載される方法に役立つ化合物は、シス−イミダゾリンの小分子阻害剤である。シス−イミダゾリン化合物は当該技術分野でヌトリンと呼ばれるものを含んでいる。本明細書に記載された他のMDM2阻害剤に類似して、ヌトリンは、MDM2とp53の間の相互作用のシス−イミダゾリン小分子阻害剤である(Vassilev et al., Science 303 (5659): 844−48 (2004)を参照)。選択的に老化細胞を殺し、老化に関連する疾患または障害を処置または予防する(つまり、その発生または進行の可能性を低下させるか減少させる)方法で使用され得る典型的なシス−イミダゾリン化合物は、米国特許第6,734,302号;第6,617,346号;第7,705,007号、および米国特許出願公開第2005/0282803号;第2007/0129416号;第2013/0225603号に記載されている。ある実施形態では、本明細書に記載された方法は、ヌトリン−1と呼ばれるヌトリン化合物;または、ヌトリン−2と呼ばれるヌトリン化合物;または、ヌトリン 3と呼ばれるヌトリン化合物の使用を含む(CAS Registry No. 675576−98−4 and No. 548472−68−0を参照)。ヌトリン−3(4−[[4S,5R)−4,5−ビス(4−クロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−2−[4−メトキシ−2−(1−メチルエトキシ)フェニル]−1H−イミダゾール−1−イル]カルボニル]−2−ピペラジノン)の活性なエナンチオマーは、当該技術分野でヌトリン−3aと呼ばれる。ある実施形態では、本明細書に記載された方法は、老化細胞を選択的に殺すためのヌトリン−3aの使用を含む。
【0041】
ヌトリン−3はp53経路の非遺伝毒性のアクチベーターとして当該技術分野で記載されており、p53の活性化はmurine double minute 2(MDM2)遺伝子によって制御される。MDM2タンパク質はE3ユビキチン・リガーゼであり、ユビキチン依存型の分解によりp53半減期を制御する。ヌトリン−3aは、(例えば小児癌に関する)前臨床研究と、特定の癌(例えば網膜芽細胞腫)の処置のための臨床試験において調査されてきた。現在に至るまで、ヌトリン−3による生体外研究と前臨床研究は、化合物が化合物に晒された細胞の機能に対して可変の生物学的効果を有していることを示唆している。例えば、伝えられるところによれば、ヌトリン−3は、B細胞悪性を含む血液悪性腫瘍における癌細胞のアポトーシスの程度を増加させ(例えば、Zauli et al., Clin. Cancer Res. 17:762−70 (2011; online publication on November 24, 2010、および本明細書に列挙される文献を参照)、ダサチニブなどの他の化学療法薬と組み合わせると、細胞毒性効果は相乗的になるように思われる(例えば、上記のZauli et al., を参照)。
【0042】
老化細胞を選択的に殺すのに役立つ別の典型的なシス−イミダゾリン小分子化合物は、RG−7112(Roche)(CAS、No.:939981−39−2;IUPAC名:((4S,5R)−2−(4−(tert−butイル)−2−エトキシフェニル)−4,5−ビス(4−クロロフェニル)−4,5−ジメチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−1−イル)(4−(3−(メチルスルホニル)プロピル)ピペラジン−1−イル)メタノンである。米国特許7,851,626号;Tovar et al., Cancer Res. 72:2587−97 (2013)を参照。
【0043】
別の特定の実施形態では、MDM2阻害剤は、RG7338(Roche)(IPUAC名: 4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン(neopentylpyrrolidine)−2−カルボキサミド)−3−メトキシ安息香酸) (CAS 1229705−06−9)と呼ばれるシス−イミダゾリン化合物である。Ding et al., J. Med. Chem. 56(14):5979−83. Doi: 10.1021/jm400487c. Epub 2013 Jul 16; Zhao et al., J. Med. Chem. 56(13):5553−61 (2013) doi: 10.1021/jm4005708. Epub 2013 Jun 20).さらに別の典型的なヌトリン化合物はRO5503781である。他の有力なシス−イミダゾリン小分子化合物は、Miyazakiによって記載されたジヒドロイミダゾチアゾール化合物(例えばDS−3032b;Daiichi Sankyo)(例えば、Miyazaki et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 23(3):728−32 (2013) doi: 10.1016/j.bmcl.2012.11.091. Epub 2012 Dec 1; Miyazaki et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 22(20):6338−42 (2012) doi: 10.1016/j.bmcl.2012.08.086. Epub 2012 Aug 30; 国際出願公開第WO 2009/151069 (2009)を参照)。
【0044】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されてもよいシス−イミダゾリン化合物は、ジヒドロイミダゾチアゾール化合物である。
【0045】
他の実施形態では、MDM2小分子阻害剤はスピロ−オキシンドール化合物である。例えば、Ding et al., J. Am. Chem. Soc. 2005;127:10130−31; Shangary et al., Proc Natl Acad Sci USA 2008;105:3933−38; Shangary et al., Mol Cancer Ther 2008;7:1533−42; Shangary et al., Mol Cancer Ther 2008;7:1533−42; Hardcastle et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 15:1515−20 (2005); Hardcastle et al., J. Med. Chem. 49(21):6209−21 (2006); Watson et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 21(19):5916−9 (2011) doi: 10.1016/j.bmcl.2011.07.084. Epub 2011 Aug 9に記載される化合物を参照。MDM2阻害剤であるスピロ−オキシンドール化合物の他の例は、当該技術分野では、MI−63、MI−126;MI−122、MI−142、MI−147、MI−18、MI−219、MI−220、MI−221、およびMI−773と呼ばれる。別の特定のスピロ−オキシンドール化合物は、3−(4−クロロフェニル)−3−((1−(ヒドロキシメチル)シクロプロピル)メトキシ)−2−(4−ニトロベンジル)イソインドリン−1−オンである。別の化合物はMI888(例えば、Zhao et al., J. Med. Chem. 56(13):5553−61 (2013); 国際特許出願公開第WO 2012/065022を参照)。
【0046】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されてもよいMDM2小分子阻害剤は、ベンゾジアゼピンジオン(例えば、Grasberger et al., J Med Chem 2005;48:909−12; Parks et al., Bioorg Med Chem Lett 2005;15:765−70 ; Raboisson et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 15:1857−61 (2005); Koblish et al., Mol. Cancer Ther. 5:160−69 (2006)を参照)。本明細書に記載される方法で使用されてもよいベンゾジアゼピンジオン化合物は、1,4−ベンゾジアゼピン−2,5−ジオン化合物を含んでいる。ベンゾジアゼピンジオン化合物の例としては、5−[(3S)−3−(4−クロロフェニル)−4−[(R)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−2,5−ジオキソ−7−フェニル−1,4−ジアゼピン−1−イル]吉草酸と、5−[(3S)−7−(2−ブロモフェニル)−3−(4−クロロフェニル)−4−[(R)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−2,5−ジオキソ−1,4−ジアゼピン−1−イル]吉草酸を含んでいる(例えば、上記のRaboisson et al.を参照)。他のベンゾジアゼピンジオン化合物は、当該技術分野では、TDP521252(IUPAC名:5−[(3S)−3−(4−クロロフェニル)−4−[(1R)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−7−エチニル−2,5−ジオキソ−3H−1,4−ベンゾジアゼピン−1−イル]ペンタン酸)、および、TDP665759(IUPAC名:(3S)−4−[(1R)−1−(2−アミノ−4−クロロフェニル)エチル]−3−(4−クロロフェニル)−7−ヨード−1−[3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピル]−3H−1,4−ベンゾジアゼピン−2,5−ジオン)と呼ばれる(例えば、Parks et al., supra; Koblish et al.を参照)(Johnson & Johnson, New Brunswick, NJ)。
【0047】
また別の実施形態では、MDM2小分子阻害剤は、テルフェニルである(例えば、Yin et al., Angew Chem Int Ed Engl 2005;44:2704−707 ; Chen et al., Mol Cancer Ther 2005;4:1019−25を参照)。また別の特定の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されてもよいMDM2阻害剤は、キリノール(quilinol)(例えば、Lu et al., J Med Chem 2006;49:3759−62を参照)。また別の特定の実施形態では、MDM2阻害剤はカルコンである(例えば、Stoll et al., Biochemistry 2001;40:336−44を参照)。また別の特定の実施形態では、MDM2阻害剤は、スルホンアミド(例えばNSC279287)である(例えば、Galatin et al., J Med Chem 2004;47:4163−65)を参照。
【0048】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されてもよい化合物は、serdemetan(JNJ−26854165;化学名:N1−(2−(1H−インドール−3−イル)エチル)−N4−(ピリジン−4−イル)ベンゼン−1,4−ジアミン;CAS No.881202−45−5)(Johnson & Johnson, New Brunswick, NJ)のようなトリプタミンである。Serdemetanは、p53を活性化し、HDM2ユビキチン・リガーゼ・アンタゴニストとして作用するトリプタミン誘導体である(例えば、Cancer Lett. 312(2):209−18 (2011) doi: 10.1016/j.canlet.2011.08.011. Epub 2011 Aug 22; Kojima et al., Mol. Cancer Ther. 9:2545−57 (2010); Yuan et al., J. Hematol. Oncol. 4:16 (2011))を参照。
【0049】
他の特定の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されてもよいMDM2小分子阻害剤は、Rew et al., J. Med. Chem. 55:4936−54 (2012); Gonzalez−Lopez de Turiso et al., J. Med. Chem. 56:4053−70 (2013); Sun et al., J. Med. Chem. 57:1454−72 (2014); Gonzalez et al., J. Med. Chem. 2014 Mar 4 [Epub ahead of print]; Gonzalez et al., J. Med. Chem. 2014 Mar 6 [Epub ahead of print]に記載されるものを含む。
【0050】
さらに別の実施形態では、MDM2阻害剤はピペリジノン化合物である。有力なMDM2ピペリジノン阻害剤の一例は、AM−8553({(3R,5R,6S)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−1−[(2S,3S)−2−ヒドロキシ−3−ペンタニル]−3−メチル−2−オキソ−3−ピペリジニル}酢酸;CAS No.1352064−70−0)(Amgen, Thousand Oaks, California)である。
【0051】
他の特定の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されてもよいMDM2阻害剤は、ピペリジン(Merck, Whitehouse Station, NJ) である(例えば、国際特許出願公開第WO 2011/046771号を参照)。他の実施形態では、方法で使用されてもよいMDM2阻害剤は、イミダゾール−インドール化合物(Novartis)である(例えば、国際特許出願公開第WO 2008/119741号)である。
【0052】
本明細書に記載される方法で使用されてもよいMDM2とMDMXに結合する化合物の例としては、RO−2443、およびRO−5963((Z)−2−(4−((6−クロロ−7−メチル−1H−インドール−3−イル)メチレン)−2,5−ジオキソイミダゾリジン−1−イル)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)−N−(1,3−ジヒドロキシプロパン−2−イル)アセトアミドが挙げられる(例えば、Graves et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109:11788−93 (2012)を参照; 例えば、前述のZhao et al., 2013, BioDiscoveryを参照)。
【0053】
別の特定の実施形態では、当該技術分野でCGM097と呼ばれるMDM2阻害剤は、老化細胞を選択的に殺すために、および老化に関連する疾患または障害を処置するために、本明細書に記載される方法で使用されてもよい。
【0054】
タンパク質のBCL−2抗アポトーシスファミリーの阻害剤
ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、BCL−2ファミリーの1つ以上のタンパク質の阻害剤であることがある。ある実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤から選択され、該阻害剤は少なくともBCL−xLを阻害する。タンパク質のBCL−2抗アポトーシスファミリー阻害剤は少なくとも細胞生存経路を変更する。アポプトーシス活性化は、細胞表面死受容体の活性化が引き金となって起こる外因性の経路、あるいは、発生の合図や様々な細胞内のストレスが引き金となって起きる内因性の経路を介して生じることがある。ストレス経路またはミトコンドリア経路としても知られているこの内因性の経路は、BH1−BH4ドメイン(BCL−2(つまり、BCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーのBCL−2タンパク質メンバー)、BCL−xL、BCL−w、A1、MCL−1、およびBCL−B)を有する抗アポトーシス(生存促進性)タンパク質;BH1、BH2、およびBH3ドメイン(BAX、BAK、およびBOK)を有するアポトーシス促進性のタンパク質;および、アポトーシス促進性のBH3のみのタンパク質(BIK、BAD、BID、BIM、BMF、HRK、NOXA、およびPUMA)からなるカスパーゼ活性化の重要なレギュレーターのクラスであるBCL−2ファミリーによって主として調節される(例えば、Cory et al., Nature Reviews Cancer 2:647−56 (2002); Cory et al., Cancer Cell 8:5−6 (2005); Adams et al., Oncogene 26:1324−1337 (2007)を参照)。BCL−2抗アポトーシスタンパク質は、アポトーシス促進性の多ドメインタンパク質BAXとBAKの活性化を阻む(例えば、Adams et al., Oncogene 26:1324−37 (2007)を参照)。アポプトーシス制御の正確なメカニズムが未知である一方で、細胞内のストレスシグナルによって解放されたBH3のみのタンパク質は、アポトーシスのタンパク質上でBH1−3領域によって形成されたBH3「リガンド」乃至「受容体」BH3結合溝を介して、抗アポトーシスのBCL−2様タンパク質に結合し、それによって抗アポトーシスタンパク質を中和する(例えば、Letai et al., Cancer Cell 2:183−92 (2002); 前述のAdams et al., Oncogeneを参照)。その後、BAXとBAKはミトコンドリア膜中にオリゴマーを形成することができ、膜透過化、チトクロムCの放出、カスパーゼ活性化、および最終的にはアポプトーシスをもたらす(例えば、前述のAdams et al., Oncogeneを参照)。
【0055】
本明細書で使用されるように、および特段の明記のない限り、本明細書に記載された薬剤によって阻害されるBCL−2ファミリーメンバーは、生存促進性(抗アポトーシス)ファミリーメンバーである。本明細書に記載される方法で使用される老化細胞破壊薬剤は、BCL−2、抗アポトーシスタンパク質、BCL−xL(本明細書において、および、当該技術分野ではBcl−xL、BCL−XL、Bcl−xl、またはBcl−XLとも書かれることがある)の1つ以上の機能を阻害する。ある実施形態では、BCL−xL機能の阻害に加えて、阻害剤は、BCL−2(つまり、BCL−xL/BCL−2阻害剤)の1つ以上の機能と相互作用する、および/または該1つ以上の機能を阻害することもある。また別のある実施形態において、本明細書に記載される方法で使用される老化細胞破壊薬剤は、BCL−xLとBCLwの各々の阻害剤(つまり、BCL−xL/BCLw阻害剤)として分類される。また別の特定の実施形態では、BCL−xLを阻害する本明細書で記載される方法で使用される老化細胞破壊薬剤は、BCL−2(つまりBCL−2タンパク質)とBCL w(つまりBCL−xL/BCL−2/BCL w阻害剤)の1つ以上の機能と相互に作用し、および、該機能を阻害し、その結果、老化細胞を選択的に殺すことがある。ある実施形態では、BCL−2抗アポトーシスタンパク質阻害剤は、BCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバー(少なくともBCL−xLを含む)と、BCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーが阻害剤のない状態で結合する1つ以上のリガンドまたは受容体との間の相互作用に干渉する。他の特定の実施形態では、少なくともBCL−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤はとりわけ、BCL−xL、BCL−2、BCL wの1つ以上にのみ結合し、Mcl−1とBCL2A1などの他のBcl−2抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバーには結合しない。
【0056】
また別の実施形態では、本明細書に記載された方法で使用される老化細胞破壊薬剤は、BCL−xL選択的阻害剤であり、BCL−xLの1つ以上の機能を阻害する。BCL−xL選択的阻害剤であるこうした老化細胞破壊薬剤は、生物学的または統計学的に有意なやり方で1つ以上の他のBCL−2抗アポトーシスタンパク質の機能を阻害しない。BCL−xLは、本明細書および当該技術分野において、BCL2L1、BCL2様の1、BCLX、BCL2L、BCLxL、またはBCL−Xとも呼ばれることがある。1つの実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤は、BCL−xLの1つ以上の機能を変更する(例えば、減少させる、阻害する、低下させる、抑制する)が、BCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリー(例えば、BCL−2またはBCL w)中の他のタンパク質の1つ以上の機能を有意には阻害しない。ある実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤は、BCL−xLと、BCL−xLが該阻害剤のない状態で結合する1つ以上のリガンドまたは受容体との間の相互作用を妨げる。ある特定の実施形態では、BCL−xLの機能の1つ以上を阻害する老化細胞破壊薬剤は、ヒトBCL−xLに選択的に結合するが、BCL−2ファミリーの他のタンパク質には選択的に結合せず、これが老化細胞の選択的な死滅をもたらす。
【0057】
BCL−xLはBCL−2タンパク質ファミリーの抗アポトーシスメンバーである。BCL−xLはオートファジーとアポプトーシとの間のクロストークで重要な役割を果たす(例えば、Zhou et al., FEBS J. 278:403−13 (2011)を参照)。BCL−xLは、さらに有糸分裂、血小板凝集、およびシナプス効率などの他のいくつかの細胞と生物のプロセスと同様に、ミトコンドリアATP産生、Ca2+流動、およびタンパク質アセチル化を含む生体エネルギー学的代謝でも役割を果たすように思われている。ある実施形態では、本明細書に記載されたBCL−xL阻害剤は、細胞のアポプトーシスを促進するために、BCL−xLと、前述のBH3のみのタンパク質の任意の1以上との間の相互作用を妨害することがある。
【0058】
ある実施形態では、BCL−xL阻害剤は、他の抗アポトーシスBCL2ファミリーメンバー(例えばBCL−2、MCL−1、BCL−w、BCL−b、およびBFL−1/A1)よりもBCL−xLに優先的に結合することを意味する、選択的阻害剤である。ある実施形態では、BCL−XL選択的阻害剤は、BCL−2タンパク質または核酸よりも少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍、または30000倍、BCL−XLタンパク質または核酸と選択的に結合することを示す。ある実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤は、MCL−1タンパク質または核酸よりも少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍、または30000倍、BCL−XLタンパク質または核酸と選択的に結合することを示す。ある実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤は、BCL−wタンパク質または核酸よりも少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍、または30000倍、BCL−XLタンパク質または核酸と選択的に結合することを示す。ある実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤は、BCL−Bタンパク質または核酸よりも少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍、または30000倍、BCL−XLタンパク質または核酸と選択的に結合することを示す。ある実施形態では、BCL−XL選択的阻害剤は、A1タンパク質または核酸よりも少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍、または30000倍、BCL−XLタンパク質または核酸と選択的に結合することを示す。本明細書に記載されたように、ある実施形態では、少なくともBCL−xLを阻害する(例えばBCL−xL選択的阻害剤)1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、MCL−1またはBCL2A1に対して検知できるほどには結合しない。
【0059】
BCL−2ファミリータンパク質へのBCL−xL阻害剤の結合親和性を測定する方法は、当該技術分野で知られている。一例として、BCL−xL阻害剤の結合親和性は競合蛍光偏光法分析を使用して決定されてもよく、この分析では、蛍光性のBAK BH3ドメイン・ペプチドは、先に記載されたような濃度上昇したBCL−XL阻害剤の存在下または不在下でBCL−xLタンパク質(または他のBCL−2ファミリータンパク質)で培養される(例えば、米国特許出願公開第20140005190; Park et al., Cancer Res. 73:5485−96 (2013); Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 97:7124−9 (2000); Zhang et al., Anal. Biochem. 307:70−5 (2002); Bruncko et al., J. Med. Chem. 50:641−62 (2007)を参照)。パーセント阻害は以下の方程式によって決定されてもよい:1−[(ウェルのmP値−負の対照)/範囲]x100%。阻害定数(Ki)の値は以下の式によって決定される:Bruncko et al., J. Med. Chem. 50:641−62 (2007) ( Wang, FEBS Lett. 360:111−114 (1995)も参照)に記載されるように、Ki = [I]50/([L]50/Kd+[P]0/Kd+1)。
【0060】
老化細胞を選択的に殺す本明細書に記載される方法で使用される薬剤(例えば、BCL−xL選択的阻害剤、BCL−xL/BCL−2阻害剤、BCL−xL/BCL−2/BCL w阻害剤、BCL−xL/BCL w阻害剤)は、一例として、小分子を含む。
【0061】
特定の実施形態では、BCL−xL阻害剤は、以下の化合物:例えば、ベンゾチアゾール−ヒドラゾン化合物、アミノピリジン化合物、ベンズイミダゾール化合物、テトラヒドロキノリン化合物、および、フェノキシル化合物、ならびに関連するアナログのクラスのいずれか1つに属する小分子化合物である。
【0062】
1つの実施形態において、本明細書に記載される方法に役立つBCL−xL選択的阻害剤は、ベンゾチアゾール−ヒドラゾン小分子阻害剤である。ベンゾチアゾール−ヒドラゾン化合物は、WEHI−539(5−[3−[4−(アミノメチル)フェノキシ]プロピル]−2−[(8E)−8−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルヒドラジンイリデン)−6,7−ジヒドロ−5H−ナフタレン−2−イル]−1,3−チアゾール−4−カルボン酸、BCL−xLを選択的に標的とするBH3ペプチド模倣薬である(例えば、Lessene et al., Nature Chemical Biology 9:390−397 (2013)を参照)。ある実施形態では、本明細書に記載される方法は、老化細胞を選択的に殺すためにWEHI−539の使用を含む。
【0063】
他の実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤はアミノピリジン化合物である。選択的なBCL−xL阻害剤として使用されてもよいアミノピリジン化合物は、BXI−61(3−[(9−アミノ−7−エトキシアクリジン−3−イル)ジアゼニル]ピリジン−2,6−ジアミンである(例えば、Park et al., Cancer Res. 73:5485−96 (2013);米国特許出願公開第2009−0118135号を参照)。ある実施形態では、本明細書に記載された方法は、老化細胞を選択的に殺すためにBXI−61の使用を含む。
【0064】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載された方法で使用されてもよいBCL−xL選択的阻害剤は、ベンズイミダゾール化合物である。選択的なBCL−XL阻害剤として使用されてもよいベンズイミダゾール化合物の一例は、BXI−72(2’−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(4−メチル−1−ピペラジニル)−2,5’−bi(1H−ベンゾイミダゾール)トリヒドロクロリド(例えば、前述のPark et alを参照)である。ある実施形態では、本明細書に記載された方法は、老化細胞を選択的に殺すためにBXI−72の使用を含む。
【0065】
また別の実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤は、テトラヒドロキノリン化合物である(例えば、米国特許出願公開第2014−0005190号を参照)である。選択的なBCL−xL阻害剤として使用されてもよいテトラヒドロキノリン化合物の例は、米国特許出願公開第2014−0005190号の表1に示され、記載される。そこに記載される他の阻害剤は、BCL−xLに加えて、他のBCL−2ファミリーメンバー(例えばBCL−2)を阻害することがある。
【0066】
他の実施形態では、BCL−xL選択的阻害剤はフェノキシル化合物である。選択的なBCL−xL阻害剤として使用されてもよいフェノキシル化合物の一例は、2[[3−(2,3−ジクロロフェノキシプロピル]アミノ]エタノール(2,3−DCPE)である(Wu et al., Cancer Res. 64:1110−1113 (2004)を参照)。ある実施形態では、本明細書に記載された方法は、老化細胞を選択的に殺すために2,3−DCPEの使用を含む。
【0067】
また別の実施形態では、少なくともBCL−xLを阻害するBcl−2抗アポトーシスファミリーメンバーの阻害剤は、米国特許第8,232,273号に記載されている。特定の実施形態では、阻害剤は、A−1155463と呼ばれるBCL−xL選択的阻害剤である(例えば、Tao et al., ACS Med. Chem. Lett., 2014, 5(10): 1088−1093を参照)。
【0068】
他の実施形態では、所望の老化細胞破壊薬剤は、BCL−xLに加えて他のBCL−2抗アポトーシスファミリーメンバーを阻害する。例えば、本明細書に記載された方法は、BCL−xL/BCL−2阻害剤、BCL−xL/BCL−2/BCL w阻害剤、およびBCL−xL/BCL w阻害剤とそのアナログの使用を含む。ある実施形態では、阻害剤は、BCL−2とBCL−xLを阻害する化合物を含み、その阻害剤はさらにBCL−wを阻害することがある。これらの阻害剤の例としては、ABT−263(4−[4−[[2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル]メチル]ピペラジン−1−イル]−N−[4−[[(2R)−4−モルホリン−4−イル−1−フェニルスルファニルブタン−2−イル]アミノ]−3−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニルベンズアミド、またはIUPAC、(R)−4−(4−((4’−クロロ−4,4−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)−N−((4−((4−モルホリノ−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)スルホニル)ベンズアミド,6−テトラヒドロ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)−N−((4−((4−モルホリノ−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(例えば、Park et al., 2008, J. Med. Chem. 51:6902; Tse et al., Cancer Res., 2008, 68:3421;国際特許出願公開第WO 2009/155386;米国特許第7390799, 7709467, 7906505, 8624027を参照)と、ABT−737(4−[4−[(4’−クロロ[1,1’−ビフェニル]−2−イル)メチル]−1−ピペラジニル]−N−[[4−[[(1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]−3−ニトロフェニル]スルホニル]ベンズアミド、ベンズアミド、4−[4−[(4’−クロロ[1,1’−ビフェニル]−2−イル)メチル]−1−ピペラジニル]−N−[[4−[[(1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]−3−ニトロフェニル]スルホニル]−、または4−[4−[[2−(4−クロロフェニル)フェニル]メチル]ピペラジン−1−イル]−N−[4−[[(2R)−4−(ジメチルアミノ)−1−フェニルスルファニルブタン−2−イル]アミノ]−3−ニトロフェニル]スルホニルベンズアミド)(例えば、Oltersdorf et al., Nature, 2005, 435:677; 米国特許第7973161;米国特許第7642260号を参照)が挙げられる。他の実施形態では、BCL−2抗アポトーシスタンパク質阻害剤は、キナゾリン・スルホンアミド化合物である(例えば、Sleebs et al., 2011, J. Med. Chem. 54:1914を参照)。また別の実施形態では、BCL−2抗アポトーシスタンパク質阻害剤は、Zhou et al., J. Med. Chem., 2012, 55:4664(例えば、化合物21(R)−4−(4−クロロフェニル)−3−(3−(4−(4−(4−((4−(ジメチルアミノ)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−ニトロフェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−エチル−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボン酸)と、Zhou et al., J. Med. Chem., 2012, 55:6149(例えば、化合物14(R)−5−(4−クロロフェニル)−4−(3−(4−(4−(4−((4−(ジメチルアミノ)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−ニトロフェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−1−エチル−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボン酸;化合物15(R)−5−(4−クロロフェニル)−4−(3−(4−(4−(4−((4−(ジメチルアミノ)−1−(フェニルチオ)ブタン−2−イル)アミノ)−3−ニトロフェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−1−イソプロピル−2−メチル−1H−ピロール−3−カルボン酸)に記載されているような小分子化合物である。他の実施形態では、BCL−2抗アポトーシスタンパク質阻害剤は、BM−1074(例えば、Aguilar et al., 2013, J. Med. Chem. 56:3048を参照);BM−957(例えば、Chen et al., 2012, J. Med. Chem. 55:8502)BM−1197 (例えば、Bai et al., PLoS One 2014 Jun 5; 9(6):e99404. Doi: 10.1371/journal.pone. 009904を参照);米国特許出願第2014/0199234号;N−アシルスルホンアミド化合物(例えば、国際特許出願公開第WO 2002/024636号、国際特許出願公開第WO 2005/049593号、国際特許出願公開第WO 2005/049594号、米国特許第7767684号、米国特許第7906505号を参照)のようなBCL−2/BCL−xL阻害剤である。また別の実施形態では、BCL−2抗アポトーシスタンパク質阻害剤は、小分子大環状化合物である(例えば、国際特許出願公開第WO 2006/127364号、米国特許第7777076号を参照)。また別の実施形態では、BCL−2抗アポトーシスタンパク質阻害剤は、イソキサゾリジン化合物である(例えば、国際特許出願公開第WO 2008/060569号、米国特許第7851637号、米国特許第7842815号を参照)。
【0069】
ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、ABT−263またはABT−737などの、Bcl−2、Bcl−w、およびBcl−xLの阻害剤である化合物である。ある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、ABT−263の構造を描いている、以下に記載されるような化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、互変異性体、またはプロドラッグである。ABT−263は当該技術分野ではNavitoclaxとしても知られている。
【0071】
Aktキナーゼ阻害剤
ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤はAktキナーゼ阻害剤である。例えば、Aktを阻害する老化細胞破壊薬剤は小分子化合物とそのアナログであり得る。いくつかの実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、他のプロテインキナーゼに比べて、Akt1、Akt2、およびAkt3を選択的に阻害する化合物である。
【0072】
Akt阻害剤(Aktキナーゼ阻害剤またはAKTキナーゼ阻害剤とも呼ばれることがある)は、その作用機序に基づいた、6つの主要なクラスに分類することができる(例えば、Bhutani et al., Infectious Agents and Cancer 2013, 8:49 doi:10.1186/1750−9378−8−49を参照)。Aktは当該技術分野ではプロテインキナーゼB(PKB)とも呼ばれる。ファーストクラスは、AktのATP競合的阻害薬を含んでおり、Akt2とAkt1を阻害するCCT128930とGDC−0068のような化合物を含んでいる。このカテゴリーはさらに、GSK2110183(アフレセルチブ)、GSK690693、およびAT7867のような汎Aktキナーゼ阻害剤を含んでいる。第2のクラスは、PI3KによってPIP3の生成を阻害することにより作用する脂質ベースのAkt阻害剤を含んでいる。このメカニズムは、Calbiochem Akt阻害剤I、II、およびIIIのようなホスファチジルイノシトール・アナログ、あるいはPX−866のような他のPI3K阻害剤によって使用される。このカテゴリーはペリフォシン(KRX−0401)(Aeterna Zentaris/Keryx)のような化合物を含んでいる。第3のクラスは、偽基質阻害剤と呼ばれる化合物群を含んでいる。これらは、AKTide−2TとFOXO3hybrなどの化合物を含んでいる。第4のクラスはAKTキナーゼ・ドメインのアロステリック阻害剤からなり、MK−2206(8−[4−(1−アミノシクロブチル)フェニル]−9−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾロ[3,4−f][1,6]ナフチリジン−3−オン;二塩化水素化物(Merck & Co.)(例えば、米国特許第7576209号)のような化合物を含んでいる。第5のクラスは抗体からなり、GST−抗−Akt1−MTSのような分子を含んでいる。最後のクラスは、AktのPHドメインと相互に作用する化合物を含み、トリシリビン(Triciribine)とPX−316を含んでいる。AKT阻害剤として作用する当該技術分野で記載される他の化合物としては、例えば、GSK−2141795(GlaxoSmithKline)、VQD−002、ミルテホシン、AZD5363、GDC−0068、およびAPI−1が挙げられる。AKT阻害剤の活性を測定するための技術は、当業者によって慣例的に実行されている。
【0073】
特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、以下に記載されるような構造(本明細書と当該技術分野ではMK−2206とも呼ばれる)、8−[4−(1−アミノシクロブチル)フェニル]−9−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾロ[3,4f][1,6]ナフチリジン−3−オンを有する、Aktキナーゼ阻害剤である化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、互変異性体、またはプロドラッグである。二塩化水素化物塩が示されている。
【0075】
ある実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、少なくとも1つの他の老化細胞破壊薬剤とともに投与されることがあり、2つ以上の老化細胞破壊薬剤は、老化細胞を選択的に殺すために付加的または相乗的に作用する。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤を使用する方法が提供され、老化細胞破壊薬剤は、細胞生存シグナル伝達経路または炎症性の経路のいずれかを変更するか、あるいは老化細胞中の細胞生存シグナル伝達経路と炎症性の経路の両方を変更する。他の特定の実施形態では、該方法は少なくとも2つの老化細胞破壊薬剤の使用を含み、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤と第2の老化細胞破壊薬剤は各々異なり、独立して老化細胞中の生存シグナル伝達経路と炎症性の経路のいずれか1つまたは両方を変更する。便宜上、2つ以上の老化細胞破壊薬剤が併用して使用されるものとして本明細書に記載されている場合、1つの老化細胞破壊薬剤は第1の老化細胞破壊薬剤と呼ばれ、もう1つの老化細胞破壊薬剤は第2の老化細胞破壊薬剤などと呼ばれる、他の特定の実施形態において、本明細書に記載される方法は、少なくとも3つの老化細胞破壊薬剤(第1の老化細胞破壊薬剤、第2の老化細胞破壊薬剤、および第3の老化細胞破壊薬剤)を投与する工程を含む。本文脈における第1の、第2の、第3のなどの形容詞は、まったく便宜上のためだけに使用され、特段の明記のない限り、老化細胞破壊活性または他のパラメータの順序、または投与、優先性、またはレベルを記載するものとして解釈されるものではない。特定の実施形態において、2つ以上の老化細胞破壊薬剤が本明細書に記載される方法で使用される場合、各々の老化細胞破壊薬剤は小分子である。他のある実施形態において、本明細書に記載される方法は、少なくとも3つの老化細胞破壊薬剤(第1の老化細胞破壊薬剤、第2の老化細胞破壊薬剤、および第3の老化細胞破壊薬剤)を投与する工程を含む。ある実施形態では、少なくとも2つの老化細胞破壊薬剤の使用は、各々の老化細胞破壊薬剤の単独での使用と比較して、老化細胞の死滅の有意な増加をもたらす。他の特定の実施形態では、少なくとも2つの老化細胞破壊薬剤の使用は、各々の老化細胞破壊薬剤の単独での使用と比較して、老化細胞の死滅の有意な増加をもたらし、その効果は付加的なこともあれば、相乗的なこともある。ある実施形態では、少なくとも2つの老化細胞破壊薬剤は各々異なり、(1)少なくともBCL−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤;(例えば、Bcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤、Bcl−2/Bcl−xL阻害剤、選択的なBcl−xL阻害剤、またはBcl−xL/Bcl−w阻害剤);Aktキナーゼ特異的阻害剤;MDM2阻害剤から選択される。1つの特定の実施形態において、必要としている被験体に投与された少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が、少なくともBCL−XLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤(例えばBcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤、Bcl−2/Bcl−xL阻害剤、選択的なBcl−xL阻害剤、またはBcl−xL/Bcl−w阻害剤)である場合、第2の老化細胞破壊薬剤は投与される。他のある実施形態では、2つの老化細胞破壊薬剤の1つは、少なくともBCL−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤であり、第2の老化細胞破壊薬剤はMDM2阻害剤である。またさらなる特定の実施形態において、必要としている被験体に投与された少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が選択的なBcl−xL阻害剤である場合、第2の老化細胞破壊薬剤が投与される。またさらなる特定の実施形態において、必要としている被験体に投与された少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤がMDM2阻害剤である場合、第2の老化細胞破壊薬剤は投与される。またさらなる特定の実施形態において、必要としている被験体に投与された少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤がAktキナーゼ阻害剤である場合、第2の老化細胞破壊薬剤は投与される。さらに特定の実施形態でも、少なくともBCL−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、単独で、あるいは、少なくともBCL−xLを阻害するか、本明細書に記載されるような異なる老化細胞破壊薬剤である1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤である他の老化細胞破壊薬剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、少なくともBCL−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、Aktキナーゼの阻害剤と組み合わされる。非限定的な例として、Bcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤ABT−263は、Aktキナーゼ阻害剤(例えばMK2206)と組み合わせて使用されてもよい。
【0076】
さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤であるMDM2阻害剤は、老化に関連する疾患または障害を処置する方法において少なくとも1つの追加の老化細胞破壊薬剤と組み合わせて使用され;追加の老化細胞破壊薬剤(便宜上、第2の老化細胞破壊薬剤と呼ばれることもある)は、別のMDM2阻害剤であることもあれば、あるいはMDM2阻害剤ではない老化細胞破壊薬剤であることもある。1つの実施形態では、少なくともBcl−xLを阻害するBcl−2抗アポトーシスファミリーメンバー阻害剤は、AKT阻害剤と組み合わせて使用される。より具体的な実施形態では、Bcl−2抗アポトーシスファミリーメンバー阻害剤は、ABT−263、ABT−737、またはWEHI−539であり、AKT阻害剤はMK−2206である。
【0077】
他のある実施形態において、本明細書に記載される方法は、少なくとも3つの老化細胞破壊薬剤(第1の老化細胞破壊薬剤、第2の老化細胞破壊薬剤、および第3の老化細胞破壊薬剤)を投与する工程を含む。
【0078】
mTOR、NFκB、およびPI3kの経路阻害剤:選択的に老化細胞を殺し、老化に関連する疾患または障害を処置する方法で本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤とともに使用されてもよい小分子化合物は、mTOR、NFκB、およびPI3k経路の1つ以上を阻害する小分子化合物であり得る。本明細書に記載されるように、選択的に老化細胞を殺し、老化に関連する疾患または障害を処置する方法も提供され、方法は必要としている被験体に少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含み、方法はmTOR、NFκB、およびPI3kの経路の1つ以上の阻害剤を投与する工程をさらに含むこともある。こうした経路の阻害剤は当該技術分野では知られている。
【0079】
mTOR阻害剤の例としては、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、32−デオキソラパマイシン、ゾタロリムス、PP242、INK128、PP30、Torin1、Ku−0063794、WAY−600、WYE−687、およびWYE−354が挙げられる。NFκB経路の阻害剤としては、例えば、TPCA−1(IKK2阻害剤);BAY 11−7082(IKK1とIKK2に対する選択性が低いIKK阻害剤);および、MLN4924(NEDD8活性化酵素−阻害剤(NAE));および、MG132によるNFκB活性の抑止が挙げられる。
【0080】
mTORまたはAKTの経路を阻害することもあるPI3−kの阻害剤の例としては、ペリフォシン(KRX−0401)、イデラリシブ、PX−866、IPI−145、BAY80−6946、BEZ235、RP6530、TGR1201、SF1126、INK1117、GDC−0941、BKM120、XL147(SAR245408)、XL765(SAR245409)、Palomid 529、GSK1059615、GSK690693、ZSTK474、PWT33597、IC87114、TG100−115、CAL263、RP6503、PI−103、GNE−477、CUDC−907、AEZS−136、BYL719、BKM120、GDC−0980、GDC−0032、およびMK2206が挙げられる。
【0081】
小分子化合物−塩と一般的な合成手順。老化細胞破壊薬剤として本明細書に記載される小分子化合物は、老化細胞破壊薬剤の生理学的に許容可能な塩(つまり、薬学的に許容可能な塩)、水和物、溶媒和物、多形体、代謝産物、およびプロドラッグを含む。代謝についてのさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw−Hill (1996)」から得られる。本明細書で開示される化合物の代謝物は、宿主への化合物の投与と宿主から採取した組織サンプルの解析により、あるいは、肝細胞を用いた化合物のインビトロでのインキュベーションと得られた化合物の分析のいずれかによって、同定される。両方の方法が当該技術では周知である。
【0082】
本明細書に記載される化合物は、遊離酸または遊離塩基として一般に使用されてもよい。代替的に、化合物は、酸または塩基付加塩の形態で使用されてもよい。遊離塩基アミノ化合物の酸付加塩は当該技術分野で周知の方法によって調製されてもよく、有機酸と無機酸から形成されることがある。適切な有機酸としては、(限定されないが)マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン、コハク酸、メタンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、桂皮酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸、マロン酸、およびベンゼンスルホン酸が挙げられる。適切な無機酸としては、(限定されないが)塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、および硝酸が挙げられる。本明細書に記載される化合物の遊離酸化合物の塩基付加塩も当該技術分野で周知の方法によって調製されてもよく、有機酸と無機塩基から形成されることがある。付加塩は対イオンがカチオンであるものを含んでいる。適切な無機塩基としては、(限定されないが)ヒドロキシド、あるいはナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどの他の塩、および置換されたアンモニウム塩(例えばジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2−ヒドロキシメチルアンモニウム)などの有機塩基が挙げられる。さらなる塩としては、対イオンがアニオンであるもの、例えば、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩(digluconate)、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロヨウ化物、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−プロピオン酸フェニル、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、琥珀酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、および吉草酸塩が挙げられる。したがって、本明細書に記載される化合物の「薬学的に許容可能な塩」との用語は、全ての薬学的に適切な塩形態を包含することを意図している。
【0083】
化合物は、アニオン種として描かれることもある。当業者は、化合物が等モルの比率のカチオンと存在することを認識する。例えば、本明細書に記載される化合物は、完全にプロトン化した形態、あるいはナトリウム、カリウム、アンモニウムなどの塩の形態、あるいは上に記載されているような任意の無機塩基と組み合わされて存在することができる。1つを超えるアニオン種が描かれている場合、それぞれのアニオン種は独立して、プロトン化した種として、あるいは塩性の種として存在することがある。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載された化合物は、ナトリウム塩として存在する。他の特定の実施形態では、本明細書に記載された化合物は、カリウム塩として存在する。
【0084】
さらに、本明細書に記載された任意の化合物の結晶性形態のいくつかは多形体として存在することがあり、これも本開示によって含まれており、企図されている。加えて、化合物の中には水または他の有機溶媒を含む溶媒和物を形成するものもある。しばしば、結晶化は、開示された化合物の溶媒和物をもたらす。本明細書で使用されるように、用語「溶媒和物」は溶媒の1つ以上の分子を備えた開示された化合物のいずれかの1つ以上の分子を含む凝集体を指す。溶媒は水であってもよく、その場合には、溶媒和物は水和物であってもよい。代替的に、溶媒は有機溶媒であってもよい。したがって、本開示される化合物は、対応する溶媒和形態と同様に、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などを含む水和物として存在することがある。化合物のある実施形態は純粋な溶媒和物であってもよく、その一方で、他の例では、化合物のいくつかの実施形態は単に外来性の水を保持することもあれば、外来性の溶媒と水の混合物であることもある。
【0085】
一般に、本明細書に記載される方法で使用される化合物は、市販の化学製品および/または化学の文献に記載される化合物から出発して、当業者に知られている有機合成技術によって作られもよい。特定の類似した反応物は、ほとんどの公立や大学の図書館で、および、オンラインのデータベースで利用可能な米国化学学会の化学情報検索サービス機関によって調製された既知の化学製品の指数によって識別されてもよい(詳細については、ワシントンDCの米国化学学会に連絡されたい)。既知ではあるがカタログで市販されていない化学物質は、慣習化学合成室(custom chemical synthesis house)によって調製され得、そこでは、標準の化学合成室(例えば、上記に記載のもの)の多くは、慣習合成サービスを提供している。本開示の医薬用の塩の調製と選択の文献は、P. H. Stahl & C. G. Wermuth ”Handbook of Pharmaceutical Salts,” Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, 2002である。当業者に既知の方法は、様々な参考文献やデータベースによって識別されてもよい。適切な参考文献と論文は、本明細書に記載された化合物の調製に役立つ反応物の合成を詳述するか、あるいは調製について記載している記事への言及を提供する。老化細胞破壊薬剤を同定するための分析と技術は本明細書において詳細に記載されている。加えて、小さな化合物を老化細胞破壊薬剤であると同定および選択して、医薬品化学技術の同業者はさらに、溶解度、バイオアベイラビリティ、薬物動態学、リピンスキーの5の法則などの小分子の他の特性を考慮することがある。
【0086】
ポリペプチド、抗体、および核酸
他のある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗原結合フラグメント(つまり、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むペプチドとポリペプチド)、peptibody、組み換えウイルスベクター、または核酸であってもよい。ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、またはペプチドである。例えば、ポリペプチド、抗体、核酸などの老化細胞破壊薬剤は、例えば、MDM2阻害剤、BCL−2ファミリー阻害剤、またはAktキナーゼ阻害剤を含む。他の実施形態において、本明細書に記載される小分子老化細胞破壊薬剤のリガンドまたは標的タンパク質に特異的に結合するポリペプチド、ペプチド、抗体(その抗原結合フラグメントを含む)は、小分子老化細胞破壊薬剤の使用を特徴づけるかまたはモニタリングするための分析と方法で使用されてもよい。
【0087】
老化細胞であるか、疾患微環境中の細胞である細胞の標的タンパク質(例えば、Bcl−xL、Bcl−2、Bcl−w、MDM2、Akt)をコード化するmRNAの一部に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、老化、生物学的に有害な(つまり、細胞に損害を与える)薬物療法、また環境上の損傷によって細胞を老化へ誘導することがある。他の実施形態では、標的タンパク質は、細胞生存経路または炎症性の経路またはアポトーシス経路の下流または上流のリガンドまたはタンパク質であってもよい。ポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチドは、標的ポリペプチド(例えば、短干渉核酸、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、またはペプチド核酸)をコード化するヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であってもよく、それを用いて遺伝子および/またはタンパク質の発現を変更することもある。標的ポリペプチドをコード化する核酸分子と特異的に結合するか、該核酸分子をハイブリダイズするこれらのポリヌクレオチドは、当該技術分野で利用可能なヌクレオチド配列を使用して調製されてもよい。
別の実施形態では、配列特異的ではないアプタマーのような核酸分子も遺伝子および/またはタンパク質の発現を変更するために使用されてもよい。
【0088】
アンチセンスポリヌクレオチドはmRNAまたはDNAのような核酸に対して配列特異的なやり方で結合する。アンチセンスの薬剤として使用されるオリゴヌクレオチドとリボザイムの同定と、標的送達のために標的遺伝子をコード化するDNAの同定は、当該技術分野で周知の方法を含んでいる。例えば、こうしたオリゴヌクレオチドの所望の特性、長さ、および他の特性は周知である。アンチセンス技術を用いて、ポリメラーゼ、転写因子、または他の調節分子の結合への干渉により遺伝子発現を制御することができる。
【0089】
短干渉RNAは、所望の標的ポリペプチドをコード化する遺伝子の発現を調節(減少または阻害)するために使用されてもよい(例えば、本明細書に記載される実施例を参照)。短干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、および短ヘアピンRNA(shRNA)分子のような小さな核酸分子は、標的タンパク質の発現を調節するために、本明細書に記載された方法に従って使用されてもよい。siRNAポリヌクレオチドは、好ましくは二本鎖RNA(dsRNA)を含むが、一本鎖RNAを含むこともある(例えば、Martinez et al., Cell 110:563−74 (2002)を参照)。siRNAポリヌクレオチドは、本明細書で提供されるような、ならびに、当業者に知られているおよび使用されるようなヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、あるいはその両方の組み合わせ)の他の自然発生する、組み換え型の、または合成の一本鎖または二本鎖のポリマー、および/またはヌクレオチドアナログを含むことがある。
【0090】
特段の定めのない限り、用語「siRNA」は二本鎖干渉RNAを指す。典型的には、siRNAは2つのヌクレオチドを含む二本鎖核酸分子であり、各鎖は約19乃至約28のヌクレオチド(つまり、約19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28のヌクレオチド)を有する。ある実施形態では、各鎖は19、20、21、22、または23のヌクレオチドである。他の特定の実施形態では、siRNAは2つのヌクレオチド鎖を含み、各鎖は約15、16、17、または18のヌクレオチドを含む。他のある実施形態では、二本鎖siRNAの1つの鎖は少なくとも2つのヌクレオチドの長さであり、例えば、1つの鎖は、1つの端部で、通常3’末端で2つの塩基オーバーハング(TTなど)を有することがある。
【0091】
短ヘアピン干渉RNA分子は、ステムループまたはヘアピン構造(例えばshRNA)中の干渉RNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の両方を含む。shRNAは、センス干渉RNAをコード化するDNAオリゴヌクレオチドが短スペーサーによって逆の相補的なアンチセンス干渉RNA鎖をコード化するDNAオリゴヌクレオチドに繋がれている、DNAベクターから発現されることもある。必要に応じて、制限部位を形成する3’末端のT’sとヌクレオチドが加えられてもよい。結果として生じるRNA転写物は、ステムループ構造を形成するためにそれ自体の上に折り畳まれる。
【0092】
siRNA分子に加えて、他の干渉RNAとRNA様分子はRISCと相互に作用し、短ヘアピンRNA(shRNAs)、一本鎖siRNAs、マイクロRNA(miRNAs)、およびダイサー基質27量体二本鎖などの遺伝子発現を停止させることができる。こうしたRNAのような分子は1つ以上の化学的に修飾されたヌクレオチド、1つ以上の非ヌクレオチド、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド、および/または、1つ以上の非リン酸ジエステル結合を含むことがある。RISCと相互に作用することができ、遺伝子発現のRISC関連の変化に関与することができるRNAまたはRNAのような分子は、本明細書では「干渉RNA」または「干渉RNA分子」と呼ばれることがある。特定の例において、一本鎖干渉RNAはmRNAの発現停止をもたらすが、二本鎖RNAほど効率的ではない。
【0093】
当業者は、siRNA、miRNA、shRNAなどのRNA分子がヌクレアーゼ分解に対する安定性を向上させるために化学的に修飾されつつ、その一方で、細胞に存在するかもしれない標的核酸に結合する能力を保持することがあるということを認識する。修飾されたRNAが所望の標的配列と結合し、酵素の分解に抵抗する限り、RNAは分子のどの位置でも修飾されることがある。siRNAの修飾はヌクレオチド塩基、リボース、またはリン酸塩中にあってもよい。一例として、リボースの2’位置を修飾することができ、この修飾は当該技術分野で慣例的に実行される多くの異なる方法のいずれか1つを使用して実行可能である。RNAは、フルオロのようなハロゲン化物の付加によって化学的に修飾されることがある。RNA分子を修飾するために使用されてきた他の化学的な部分は、メチル、メトキシエチル、およびプロピル基を含んでいる(例えば、米国特許第8,675,704を参照)。
【0094】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、shRNAを含む)は、所望のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが導入された組み換えベクターによって送達されることがある。他の実施形態において、組み換えウイルスベクターは組み換えの発現ベクターであってもよく、該発現ベクターに対して、Bcl−xL、Bcl−2、Bcl−w、MDM2、およびAktなどの本明細書に記載されるタンパク質を含む細胞生存経路または炎症性の経路のタンパク質を阻害する抗体、抗原結合フラグメント、ポリペプチド、またはペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列が挿入され、コード化配列は、ポリペプチド、抗体、抗原結合フラグメント、またはペプチドの発現を駆り立てるために、1つ以上の調節制御配列と動作可能なように繋がれる。組換えベクターまたは組み換え発現ベクターは、ウイルス組換えベクターまたはウイルス組み換え発現ベクターであってもよい。典型的なウイルスベクターは、限定されないが、レンチウイルスベクターゲノム、ポックスウイルスベクターゲノム、ワクシニアウイルスベクターゲノム、アデノウイルスベクターゲノム、アデノウイルスに関連するウイルスベクターゲノム、ヘルペスウイルスベクターゲノム、およびアルファ・ウイルスベクターゲノムを含んでいる。ウイルスベクターは生きているか、弱毒化しているか、複製が条件付きであるか、または複製が不十分であり、典型的には非病原性(欠損)の複製の能力のあるウイルスベクターである。こうしたウイルスベクターを設計し生成するための手順と技術は当業者に周知であり、慣例的に実行される。
【0095】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されてもよい老化細胞破壊薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドがある。非限定的な例として、以前に記載されたBCL−xL特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載される方法で使用されてもよい(例えば、PCT国際公開第WO 00/66724; Xu et al., Intl. J. Cancer 94:268−74 (2001); Olie et al., J. Invest. Dermatol. 118:505−512 (2002); and Wacheck et al., Br. J. Cancer 89:1352−1357 (2003)を参照)。
【0096】
ある実施形態では、本明細書に記載された方法で使用されてもよい老化細胞破壊薬剤はペプチドである。一例として、および、ある実施形態では、BCL−xL選択的なペプチド阻害剤はBH3ペプチド模倣薬である。BCL−xL選択的BH3ペプチド模倣薬の例としては、以前に記載されたものが挙げられる(例えば、Kutzki et al., J. Am. Chem. Soc. 124:11838−39 (2002); Yin et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 22:1375−79 (2004); Matsumura et al., FASEB J. 7:2201 (2010)を参照)。
【0097】
ある実施形態では、本明細書に記載された方法に役立つ老化細胞破壊薬剤は、EXO1酵素をコード化するポリヌクレオチドを含むエキソヌクレアーゼ、EXO1、またはベクター(ウイルス・ベクターを含む)をコード化するポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを含まない(つまり、EXO1酵素をコード化するポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドのフラグメント、またはこうしたポリヌクレオチドを含むベクターは除外される)。本明細書に記載される方法に役立つ老化細胞破壊薬剤は、EXO1酵素ポリペプチド(つまり、EXO1酵素は除外される)、あるいはその活性ペプチドまたはポリペプチドフラグメントを含まない。加えて、こうした分子は、炎症性の経路または細胞生存経路のような細胞シグナル伝達経路の1つまたは両方の阻害剤ではない;その代わりに、EXO1は、キャッピング欠損テロメアを分解する5’−3’エキソヌクレアーゼをコード化する(例えば、国際特許出願第WO 2006/018632)。
【0098】
本明細書に記載された老化細胞破壊薬剤は抗体または抗原結合フラグメントであるポリペプチドであってもよい。抗原結合フラグメントはF(ab’)2、Fab、Fab’、Fv、および、Fdであってもよく、さらに少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むペプチドまたはポリペプチドを含んでいる。抗体は、標的タンパク質との相互作用を介して老化細胞により内部移行される抗体または抗原結合フラグメントであってもよい。
【0099】
同族の抗原に対する抗体の結合特性は、一般に当業者によって容易に行なわれ得る方法を用いて測定および評価されてもよい(例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)を参照)。本明細書において使用されるように、抗体は、ポリペプチドによって検知可能なレベルで反応する場合、抗原に対して「免疫特異的(immunospecific)」、「特異的」、または「特異的に結合する」ことと言われている。抗体とその抗原結合フラグメントの親和性は、従来の技術、例えば、Scatchard et al.によって記載されたものを使用して容易に決定することができる (Ann. N.Y. Acad. Sci. USA 51:660 (1949)) and by surface plasmon resonance (SPR; BIAcore*, Biosensor, Piscataway, NJ)。
【0100】
抗体はポリクローナルクローンまたはモノクローナルであってもよい。可変領域または1つ以上の相補性決定領域(CDR)が同定され、抗原結合フラグメントまたはペプチドライブラリから分離されてもよい。抗体または抗原結合フラグメントは組み換え操作され、および/または組み換え作成されてもよい。抗体は、任意の免疫グロブリンクラス、例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、またはIgAに属することもあれば、動物、例えば、家禽(例えばトリ)、および、限定されないがマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または他のげっ歯動物、雌ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ヒト、または他の霊長類を含む哺乳動物から得られる、または、これらに由来することもある。ヒト被験体で使用するために、抗体と抗原結合フラグメントは一般にヒトであるか、ヒト化されるか、あるいは、ヒト以外のペプチドとポリペプチド配列に対する被験体による免疫原性反応を減らすためにキメラである。
【0101】
抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、またはそれから調製されるまたは派生する抗原結合フラグメント(例えばF(ab’)2、Fab、Fab’、Fv、およびFd)であるモノクローナル抗体であり得る。抗原結合フラグメントは任意の合成たんぱく質、または遺伝子改変タンパク質であってもよい(例えば、Hayden et al., Curr Opin. Immunol. 9:201−12 (1997); Coloma et al., Nat. Biotechnol. 15:159−63 (1997); U.S. Patent No. 5,910 573);Holliger et al., Cancer Immunol. Immunother. 45:128−30 (1997); Drakeman et al., Expert Opin. Investig. Drugs 6:1169−78 (1997); Koelemij et al., J. Immunother. 22:514−24 (1999); Marvin et al., Acta Pharmacol. Sin. 26:649−58 (2005); Das et al., Methods Mol. Med. 109:329−46 (2005);国際特許出願第PCT/US91/08694 and PCT/US91/04666)、およびファージディスプレイペプチドライブラリーから (例えば、Scott et al., Science 249:386 (1990); Devlin et al., Science 249:404 (1990); Cwirla et al., Science 276: 1696−99 (1997); 米国特許出願第5,223,409号; 米国特許出願第5,733,731号; 米国特許出願第5,498,530号; 米国特許出願第5,432,018号; 米国特許出願第5,338,665号; 1994; 米国特許出願第5,922,545号;国際特許出願公開第WO 96/40987号、およびWO 98/15833号を参照)。最小限の認識単位またはCDR(つまり、重鎖可変領域にある3つのCDRのいずれか1つ以上、および/または軽鎖可変領域にある3つのCDRの1つ以上)であるペプチドは、所望の標的タンパク質に特異的に結合するペプチド配列を比較および予言するために使用することができるコンピューター・モデリング技術によって同定されてもよい(例えば、Bradley et al., Science 309:1868 (2005); Schueler−Furman et al., Science 310:638 (2005)を参照)。ヒト化抗体を設計するための有用な戦略は当該技術分野で記載されている(例えば、Jones et al., Nature 321:522−25 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323−27 (1988; Padlan et al., FASEB 9:133−39 (1995); Chothia et al., Nature, 342:377−83 (1989)を参照)。
【0102】
老化細胞
本明細書に記載された老化細胞破壊薬剤を用いて、臨床的に有意な、または生物学的に有意なやり方で老化細胞を殺すか破壊してもよい。本明細書において詳細に議論されたように、1つ以上の老化細胞破壊薬剤は、臨床学的に有意なまたは生物学的に有意な方法において、確立された老化細胞を選択的に殺すのには十分であるが、非老化細胞を殺す(破壊する、その死をもたらす)のには不十分である時間と量で使用される。老化細胞破壊薬剤は1つ以上のタイプの老化細胞(例えば、老化した前脂肪細胞、老化した内皮細胞、老化した繊維芽細胞、老化したニューロン、老化した上皮細胞、老化した間葉細胞、老化した平滑筋細胞、老化したマクロファージ、または老化した軟骨細胞)を選択的に殺すこともある。
【0103】
老化細胞は、次の7つの特性のいずれか1つ以上を示すことがある。(1)老化成長停止は本質的に永続的であり、既知の生理的な刺激により変えることはできない。(2)老化細胞はサイズが大きくなり、非老化相当物のサイズに比べてしばしば2倍よりも大きく拡大する。(3)老化細胞は、部分的にリソソーム質量の増加を反映する老化に関連するβ−ガラクトシダーゼ(SA−β−ガル)を発現する。(4)最も老化した細胞はp16
INK4aを発現し、これは静止した細胞または高分化した細胞によって一般に発現されない。(5)持続的なDDRシグナル伝達とともに老化する細胞は、老化を強める染色質変質を伴うDNAセグメントと名付けられた、持続的な核内フォーカスを抱える(DNA−SCARS)。こうしたフォーカスは活性化されたDDRタンパク質を含んでおり、一時的に損傷を受けたフォーカスと区別可能である。DNA−SCARSは機能障害性のテロメア、または機能障害により誘発されるフォーカス(TIF)を含む。(6)老化細胞は発現し、老化に関連した分子を分泌することがある。これは特定の例では、持続的なDDRシグナル伝達の存在下で観察されることがあり、これは特定の例では発現について持続的なDDRシグナル伝達に依存することがある。(7)老化細胞の核は、Lamin B1のような構造タンパク質、またはヒストンやHMGB1のような染色質関連タンパク質を失う。例えば、Freund et al., Mol. Biol. Cell 23:2066−75 (2012); Davalos et al., J. Cell Biol. 201:613−29 (2013); Ivanov et al., J. Cell Biol. DOI: 10.1083/jcb.201212110, page 1−15; published online July 1, 2013; Funayama et al., J. Cell Biol. 175:869−80 (2006)を参照)。
【0104】
老化細胞と老化細胞関連分子は当該技術分野で記載される技術と手順によって検知可能である。例えば、組織中の老化細胞の存在は、老化マーカー、SAベータ・ガラクトシダーゼ(SA−βgal)を検知する組織化学的技術または免疫組織化学的技術によって分析することができる(例えば、Dimri et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 9363−9367 (1995)を参照)。老化細胞に関連するポリペプチドp16の存在は、免疫ブロット法分析などの当該技術分野で実行される多くの免疫化学方法のいずれか1つによって決定することができる。細胞中のp16 mRNAの発現は定量PCRを含む当該技術分野で実行される様々な技術によって測定することができる。老化細胞に関連するポリペプチド(例えば、SASPのポリペプチド)の存在とレベルは、当該技術分野で記載される自動化ルミネックスアレイ分析などの、自動化されたおよびハイスループットな分析により決定することができる(例えば、Coppe et al., PLoS Biol 6: 2853−68 (2008)を参照)。
【0105】
老化細胞の存在も、成長因子、プロテアーゼ、サイトカイン(例えば炎症性サイトカイン)、ケモカイン、細胞関連代謝産物、活性酸素種(例えばH2O2)、ならびに、炎症および/または他の生物学的効果または被験体の基礎疾患を促進または悪化させることがある反応を含む、老化細胞関連分子の検出によって決定することができる。老化細胞関連分子は、老化に関連する分泌表現型(SASP、つまり、老化細胞の炎症促進性の表現型を構築することがある分泌因子を含む)、老化したメッセージセクレトーム、およびDNA損傷分泌プログラム(DDSP)を含むと当該技術分野で記載されるものを含む。当該技術分野で記載されるような老化細胞関連分子のこうしたグループ分けは、分子を共通に含んでおり、分子の3つの別々の明確なグループ分けを記載することを意図していない。老化細胞関連分子は、有力なオートクリンとパラクリンの活性を有し得る特定の発現されたおよび分泌された成長因子、プロテアーゼ、サイトカイン、および他の因子を含んでいる(例えば、Coppe et al., supra; Coppe et al. J. Biol. Chem. 281:29568−74 (2006); Coppe et al. PLoS One 5:39188 (2010); Krtolica et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98:12072−77 (2001); Parrinello et al., J. Cell Sci. 118:485−96 (2005)を参照)。ECM関連因子は炎症性のタンパク質とECMリモデリングのメディエーターを含み、これは老化細胞で強く誘導される(例えば、Kuilman et al., Nature Reviews 9:81−94 (2009)を参照)。他の老化細胞関連分子は、DNA損傷分泌プログラム(DDSP)としてまとめて記載される細胞外ポリペプチド(タンパク質)を含んでいる(例えば、Sun et al., Nature Medicine 18:1359−1368 (2012)を参照)。老化細胞関連タンパク質は老化細胞上で発現される細胞表面タンパク質(または受容体)を含み、これは、探知できる程度の少量で存在するか、非老化細胞の細胞表面には存在しないタンパク質を含む。
【0106】
老化細胞関連分子は、老化細胞の炎症促進性の表現型を構築し得る分泌因子を含んでいる(例えばSASP)。こうした因子の例としては、限定されないが、GM−CSF、GROα、GROα、β、γ、IGFBP−7、IL−1α、IL−6、IL−7、IL−8、MCP−1、MCP−2、MIP−1α、MMP−1、MMP−10、MMP−3、アンフィレギュリン、ENA−78、イオタキシン−3、GCP−2、GITR、HGF、ICAM−1、IGFBP−2、IGFBP−4、IGFBP−5、IGFBP−6、IL−13、IL−1β、MCP−4、MIF、MIP−3α、MMP−12、MMP−13、MMP−14、NAP2、オンコスタチンM、オステオプロテゲリン、PIGF、RANTES、sgp130、TIMP−2、TRAIL−R3、Acrp30、アンジオゲニン、Axl、bFGF、BLC、BTC、CTACK、EGF−R、Fas、FGF−7、G−CSF、GDNF、HCC−4、I−309、IFN−γ、IGFBP−1、IGFBP−3、IL−1 R1、IL−11、IL−15、IL−2R−α、IL−6R、I−TAC、レプチン、LIF、MMP−2、MSP−a、PAI−1、PAI−2、PDGF−BB、SCF、SDF−1、sTNF RI、sTNF RII、トロンボポイエチン、TIMP−1、tPA、uPA、uPAR、VEGF、MCP−3、IGF−1、TGF−β3、MIP−1−デルタ、IL−4、FGF−7、PDGF−BB、IL−16、BMP−4、MDC、MCP−4、IL−10、TIMP−1、Fit−3リガンド、ICAM−1、Axl、CNTF、INF−γ、EGF、BMP−6が挙げられる。追加の同定因子は老化メッセージセクレトーム(SMS)因子と当該技術分野でしばしば呼ばれるものを含み、老化メッセージセクレトーム(SMS)因子の一部はSASPポリペプチドの一覧に含まれる。追加の同定因子としては、限定されないが、IGF1、IGF2、およびIGF2R、IGFBP3、IDFBP5、IGFBP7、PAl1、TGF−β、WNT2、IL−1α、IL−6、IL−8、およびCXCR2結合ケモカインが挙げられる。細胞関連分子は、限定されないが、前述のSun et al., Nature Medicineに記載される因子をさらに含み、例えば、遺伝子産物、MMP1、WNT16B、SFRP2、MMP12、SPINK1、MMP10、ENPP5、EREG、BMP6、ANGPTL4、CSGALNACT、CCL26、AREG、ANGPT1、CCK、THBD、CXCL14、NOV、GAL、NPPC、FAM150B、CST1、GDNF、MUCL1、NPTX2、TMEM155、EDN1、PSG9、ADAMTS3、CD24、PPBP、CXCL3、MMP3、CST2、PSG8、PCOLCE2、PSG7、TNFSF15、C17orf67、CALCA、FGF18、IL8、BMP2、MATN3、TFP1、SERPINI 1、TNFRSF25、およびIL23Aを含む。老化細胞関連タンパク質は老化細胞上で発現される細胞表面タンパク質(または受容体)を含み、これは探知できる程度の少量で存在するか、非老化細胞の細胞表面には存在しないタンパク質を含んでいる。
【0107】
ある実施形態では、少なくとも老化した前脂肪細胞を選択的に殺す老化細胞破壊薬剤は、糖尿病(特に2型糖尿病)、メタボリック症候群、または肥満の処置に役立つことがある。他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は少なくとも老化した内皮細胞、老化した平滑筋細胞、および/または老化したマクロファージを選択的に殺すことができる。こうした老化細胞破壊薬剤は心疾患(例えばアテローム性動脈硬化)の処置に役立つことがある。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は少なくとも老化した繊維芽細胞を選択的に殺すことができる。また別の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、ドーパミンを生成するニューロンを含む少なくとも老化したニューロンを選択的に殺すことがある。また別の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも老化したレチナール着色した上皮細胞、または他の老化した上皮細胞(例えば肺の老化した上皮細胞、または老化した腎臓(腎)上皮細胞)を殺すことがある。少なくとも老化した肺の上皮細胞の選択的な死滅は、慢性閉塞性肺疾患または特発性肺線維症のような肺疾患を処置するのに役立つことがある。また他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は少なくとも老化した免疫細胞(老化したマクロファージなど)を選択的に殺すことがある。また別の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は少なくとも老化した軟骨細胞を殺すことがあり、これは変形性関節症のような炎症性障害の処置に役立つことがある。
【0108】
老化細胞を選択的に殺す方法
老化細胞を選択的に殺し、それにより老化に関連する疾患または障害を処置または予防する(発生の可能性を減らす)方法が本明細書で提供され、該方法は、本明細書に記載されるような老化細胞破壊薬剤の使用を含む。本明細書に記載されるように、これらの老化細胞破壊薬剤は癌の治療には効果がないと考えられる方法で投与される。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤で老化関連疾患を処置するために用いられる方法が、癌治療に必要とされる量と比較して、一日用量の減少、単一の治療サイクルにわたって蓄積量の減少、あるいは複数の治療サイクルにわたって、老化細胞破壊薬剤(例えばMDM2阻害剤;少なくともBcl−xLを阻害する少なくとも1つのBcl−2抗アポトーシスのファミリーメンバーの阻害剤;Akt阻害剤)蓄積量の減少を含むため、癌の治療のために最適化されるレジメンに従って被験体を処置することに関連する1つ以上の有害な作用(つまり副作用)が生じる可能性は減少する。
【0109】
老化に関連する疾患または障害を処置する方法の処置レジメンは、老化細胞を選択的に殺すのに十分な時間と量で老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む。ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は処置サイクル内に投与され、処置サイクルは、処置コースとその後の非処置インターバルを含む。投与の処置コースとは本明細書では、1以上の老化細胞破壊薬剤が1以上の日に投与される有限の時間枠を指す。有限の時間枠は本明細書では処置ウィンドウとも呼ばれることがある。
【0110】
1つの実施形態では、癌ではない老化に関連する疾患または障害を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、選択的に老化細胞を殺し、処置サイクル内で投与される小分子老化細胞破壊薬剤を、必要としている被験体に投与する工程を含む。特定の実施形態では、方法は少なくとも2つの処置サイクルで老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む。特定の実施形態では、非処置インターバルは、少なくとも約2週間、または少なくとも約0.5−12か月の間、例えば、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、あるいは少なくとも約12か月(つまり、1年)などであってもよい。他のある特定の実施形態では、非処置インターバルは1−2年または1−3年の間、あるいはそれ以上であってもよい。ある実施形態では、各処置コースは約1か月を超えず、約2か月を超えず、または約3か月を超えず、あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、26、27、28、29、30、または31日間を超えない。
【0111】
ある実施形態では、処置ウィンドウ(つまり処置コース)はわずか1日である。他のある実施形態で、1つの処置コースは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、26、27、28、29、30、または31日間を超えずに発生する。こうした処置ウィンドウのあいだ、老化細胞破壊薬剤は、日数は変動可能で少なくとも2日間(つまり2日以上)投与されてもよく、該薬剤は投与の少なくとも2日間は投与されない。別の言い方をすれば、処置コース内で老化細胞破壊薬剤が2日以上投与されるとき、処置コースは、老化細胞破壊薬剤が投与されない1日以上の1つ以上のインターバルを有してもよい。非限定的な例として、老化細胞破壊薬剤が21日を超えない処置コースのあいだに2日以上投与される場合、該薬剤は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、26、27、28、29、30、または31日からの任意の数の日投与されてもよい。ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は3日以上の処置コースのあいだに被験体に投与され、該薬剤は隔日に(つまり一日おきに)投与されてもよい。他のある実施形態において、老化細胞破壊薬剤が4日以上の処置ウィンドウで被験体に投与される場合、老化細胞破壊薬剤は2日に一回(つまり2日おきに)投与されてもよい。1つの実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつせいぜい約21日まで(つまり約2−21日);少なくとも2日かつ約14日を超えない(つまり約2−14日);少なくとも2日かつ約10日を超えない(つまり約2−10日);あるいは、少なくとも2日かつ約9日を超えない(つまり約2−9日);あるいは、少なくとも2日かつ約8日を超えない(つまり約2−8日)処置コースのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与される。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつ約7日を超えない(つまり約2−7日);少なくとも2日かつ約6日を超えない(つまり約2−6日);少なくとも2日かつ約5日を超えない(つまり約2−5日);あるいは、少なくとも2日かつ約4日を超えない(つまり約2−4日)処置ウィンドウのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与される。また別の実施形態では、処置ウィンドウは少なくとも2日であり、3日を超えず(つまり2−3日)、あるいは2日である。ある特定の実施形態では、処置コースは3日を超えない。他の実施形態では、処置コースは5日を超えない。さらに別の特定の実施形態では、処置コースは7日、10日、または14日、または21日を超えない。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつ約11日を超えない(つまり約2−11日)処置ウィンドウのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与され;あるいは、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつ約12日を超えない(つまり約2−12日)処置ウィンドウのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与され;あるいは、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつせいぜい約13日(つまり約2−13日)である処置ウィンドウのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与され;あるいは、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつせいぜい約15日(つまり約2−15日)である処置コースのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与され;あるいは、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも2日かつ約16日、17日、18日、19日、または20日を超えない(つまり、それぞれ約2−16日、約2−17日、約2−18日、約2−19日、約2−20日)処置コースのあいだに、少なくとも2日(つまり2日以上)投与される。他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも3日かつ3〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも3日に投与されることがあり;あるいは、少なくとも4日かつ4〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも4日投与されることがあり;あるいは、少なくとも5日かつ5〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも5日投与され;あるいは、少なくとも6日かつ6〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも6日投与され;あるいは、少なくとも7日かつ7〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも7日投与され;あるいは、少なくとも8または9日かつ、それぞれ8または9日〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも8または9日投与され;あるいは、少なくとも10日かつ10〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも10日投与され;あるいは、少なくとも14日かつ14〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも14日投与され;あるいは、少なくとも11または12日かつ、それぞれ11または12日〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも11または12日間投与され;あるいは、少なくとも15または16日かつ、それぞれ15または16日〜21日の任意の日数を超えない処置コースにわたって少なくとも15または16日間投与される。補足例として、老化細胞破壊薬剤は、それぞれ少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14日であり、かつ14日を超えない処置コースにわたって、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14日間投与されてもよい。処置コースが10日を超えない場合、老化細胞破壊薬剤は、それぞれ少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10日であり、かつ10日を超えない処置コースにわたって、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間投与されてもよい。同様に、処置コースが7日を超えない場合、老化細胞破壊薬剤は、それぞれ少なくとも2、3、4、5、6、または7日であり、かつ7日を超えない処置コースにわたって、少なくとも2、3、4、5、6、または7日間投与されてもよい。また別の例において、処置コースが5日を超えない場合、老化細胞破壊薬剤は、それぞれ少なくとも2、3、4、または5日であり、かつ5日を超えない処置コースにわたって、少なくとも2、3、4、または5日間投与されてもよい。
【0112】
3日以上の処置コースに関して、老化細胞破壊薬剤の投与量は、特定の処置ウィンドウ内の総日数よりも少ない日数のあいだ、投与されることがある。非限定的な例として、処置のコースがせいぜい7、10、14、または21日の処置コースを有している場合、老化細胞破壊薬剤が投与され得る日数は、2日とそれぞれ7、10、14、または21日との間の、および、かつ、本明細書において詳細に議論される処置されている特定の疾患、投与されている老化細胞破壊薬剤、患者の健康状態、および他の関連要因に適切な任意のインターバルにおける任意の日数である。当業者は、老化細胞破壊薬剤が処置ウィンドウにわたって2日以上投与される場合、薬剤がウィンドウの最少日数、ウィンドウの最大日数、または最小と最大の間の任意の日数送達され得ることを容易に認識する。
【0113】
ある特定の実施形態では、処置コースは1日であるか、あるいは、処置コースは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日を超過しない長さであり、これらはコースの例であり、老化細胞破壊薬剤は、それぞれ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日を超過しないために(つまり、超えない)処置コースにわたって2日以上投与される。他のある実施形態では、処置コースは、約2週(約14日または0.5か月)、約3週(約21日)、約4週(約1か月)、約5週、約6週(約1.5か月)、約2か月(または約60日)、あるいは約3か月(または約90日)である。特定の実施形態では、処置コースは老化細胞破壊薬剤を一日の投薬である。
他の実施形態において、任意の処置コースに関して、老化細胞破壊薬剤の1日量は単一投与としてであってもよく、あるいは、投与量は薬剤の1日の総投与量を提供するために、2、3、4、または5回の別々の投与に分けられることもある。
【0114】
本明細書に記載されるように、特定の実施形態において、処置ウィンドウ内で老化細胞破壊薬剤が2日以上投与されるとき、処置コースは、老化細胞破壊薬剤が投与されない1日以上の1つ以上のインターバルを有することもある。単独で、非限定的な例として、処置ウィンドウが2〜7日であるとき、第1の投与量は処置ウィンドウの1日目に投与されてもよく、第2の投与量はコースの3日目に投与されてもよく、第3の投与量は処置ウィンドウの7日目に投与されてもよい。当業者は、特定の処置ウィンドウの間に変動制の投薬スケジュールを使用してもよいことを認識するであろう。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は処置コースの継続期間中、各日連続して毎日投与される。1日量は単回投与として投与されることもあれば、1日量は老化細胞破壊薬剤の1日の総投与量を提供するために2、3、4、または5回の別々の投与に分割されることがある。
【0115】
ある実施形態では、処置コースは、老化細胞破壊薬剤が毎日投与される期間を含む。1つの特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は2日間毎日投与される。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は3日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は4日間毎日投与される。1つの特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は5日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は6日間毎日投与される。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は7日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は8日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は9日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は10日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は11日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は12日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は13日間毎日投与される。また別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は14日間毎日投与される。上記の例のそれぞれの処置ウィンドウ(つまりコース)は、それぞれ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日を超えない。
【0116】
他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間、各日(つまり一日おき)投与される。さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間、3日おきに(つまり、薬剤を受ける一日と、その後の薬剤を受けない2日)投与される。さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日の処置ウィンドウのあいだ2−3日おきに投与されてもよい。また他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日の処置コースのあいだ3日おきに;あるいは6、7、8、9、10、11、12、13、または14日の処置コースのあいだ4日おきに、投与されてもよい。当業者は、老化細胞破壊薬剤が、本明細書に記載されるような有限日数の処置ウィンドウにわたって6日おき、7日おきなどに投与される際の処置ウィンドウの最小日数を容易に認識することができる。
【0117】
ある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、14日よりも長い期間、毎日投与されることがあり、少なくとも15、16、17、18、19、または少なくとも21日間投与されることがある。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日間の各々で毎日投与されることがある。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置ウィンドウのあいだ一日おきに投与されることがある。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置ウィンドウのあいだ2日おきに処理されることがある。さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置ウィンドウのあいだ、2−3日おきに投与されることがある。また他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置コースのあいだ3日おきに;あるいは、15、16、17、18、19、または21日の処置コースのあいだ、4日おきに投与されることがある。当業者は、老化細胞破壊薬剤が、本明細書に記載されるような有限日数の処置ウィンドウにわたって6日おき、7日おきなどに投与される際の処置ウィンドウの最小日数を容易に認識することができる。
【0118】
別のある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、14日よりも長い期間、毎日投与されることがあり、少なくとも15、16、17、18、19、または少なくとも21日間投与されることがある。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日間の各々で毎日投与されることがある。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置ウィンドウのあいだ一日おきに投与されることがある。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置ウィンドウのあいだ2日おきに処理されることがある。さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置ウィンドウのあいだ、2−3日おきに投与されることがある。また他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、15、16、17、18、19、または21日の処置コースのあいだ3日おきに、あるいは15、16、17、18、19、または21日の処置コースのあいだ4日おきに投与されることがある。当業者は、老化細胞破壊薬剤が、本明細書に記載されるような有限日数の処置ウィンドウにわたって6日おき、7日おきなどに投与される際の処置ウィンドウの最小日数を容易に認識することができる。
【0119】
別のある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、14日または21日よりも長い期間、処置コースで投与されることもあれば、約1か月、約2か月、または約3か月の処置コースで投与されることもある。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、1か月、2か月、または3か月の処置コースのそれぞれで毎日投与されることがある。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、約1か月、約2か月、または約3か月の処置コースのあいだ一日おきに投与されることがある。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、約1か月、約2か月、または約3か月の処置コースのあいだ二日おきに投与されることがある。さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、約1か月、約2か月、または約3か月の処置コースのあいだ1−2日おきに投与されることがある。また他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、約1か月、約2か月、または約3か月の処置コースのあいだ3日おきに、あるいは、約1か月、約2か月、または約3か月の処置コースのあいだ4日おきに投与されることがある。当業者は、老化細胞破壊薬剤が、本明細書に記載されるような有限日数の処置ウィンドウにわたって6日おき、7日おきなどに投与される際の処置コースの最小日数を容易に認識することができる。
【0120】
非限定的な例として、1日当たりの減少した投与量を用いる長い処置ウィンドウは、被験体に対する処置オプションであってもよい。他の特定の実施形態では、および一例として、老化に関連する疾患または障害のステージまたは重症度、あるいは他の臨床学的因子は、より長期的なコースが臨床学的な利点を与え得ることを示唆することもある。ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、約1−2週(例えば約5−14日)、約1−3週(例えば約5−21日)、約1−4週(例えば約5−28日、約5−36日、約5−42日、7−14日、7−21日、7−28日、7−36日、または7−42日;あるいは9−14日、9−21日、9−28日、9−36日、またはは9−42日)の処置コースのあいだに、毎日、あるいは随意に、隔日(1日おき)または2日おき、あるいは それよりも長いインターバル(つまり3日おき、4日、5日おき)に投与される。他のある実施形態では、処置コースは約1−3か月間である。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも5日間毎日投与され、別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は5−14日間毎日投与される。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は少なくとも7日間、例えば、7−14、7−21、7−28日、7−36日、または7−42日間投与される。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は少なくとも9日間、例えば、9−14日、9−21日、9−28日、9−36日、または9−42日間投与される。
【0121】
たとえ、本明細書において、および上で議論されたように、老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む処置コースは臨床的な利点を与え、他のある実施形態において、処置コースは、老化細胞破壊薬剤が投与されないとき(つまり、非処置インターバル、休薬療法)各処置コース間の時間インターバルで繰り返される。本明細書において、および当該技術分野において記載されるような処置サイクルは、処置コースとその後の非処置インターバルを含む。処置サイクルは必要に応じて頻繁に繰り返されることがある。例えば、処置サイクルは、少なくとも1度、少なくとも2度、少なくとも3度、少なくとも4度、少なくとも5度、あるいは必要に応じてもっと頻繁に繰り返されてもよい。ある特定の実施形態では、処置サイクルは一度繰り返される(つまり、老化細胞破壊薬剤の投与は2回の処置サイクルを含む)。他のある実施形態では、処置サイクルは2度繰り返されるか、あるいは3回以上繰り返される。これに応じて、ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤を用いる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の処置サイクルの処置が行われる。特定の実施形態において、処置コースまたは処置サイクルは繰り返されてもよく、老化に関連する疾患または障害が再発したとき、あるいは、上に記載されているような1回の処置コースによって有意に減少した疾患または障害の症状または続発症が増加したか検知できるとき、あるいは、疾患または障害の症状または続発症が悪化したときなどに、処置コースは繰り返されてもよい。他の実施形態において、老化細胞破壊薬剤が、老化に関連する疾患または障害を予防する(つまり、その発生または進行の可能性を減少させる)ために、あるいは、該疾患または障害の発症、進行、または重症度を遅らせるために、被験体に投与されるとき、被験体は2つ以上の処置サイクルにわたって老化細胞破壊薬剤を受けることがある。それに応じて、ある実施形態では、処置の1つのサイクルは処置のその後のサイクルを伴う。処置サイクルの各処置コース、または2つ以上の処置サイクルの各処置コースは、老化細胞破壊薬剤の継続時間と投薬が一般に同じである。他の実施形態では、処置サイクルの各処置コースのあいだの老化細胞破壊薬剤の継続時間と投薬は、例えば、処置されている特定の疾患または障害、投与されている老化細胞破壊薬剤、患者の健康状態、および本明細書で詳細に議論される他の関連する因子に依存して、医学分野の当業者によって決定されるように調節されてもよい。それに応じて、第2または任意のその後の処置サイクルの処置コースは、医学的に必要であると認められるように、または慎重に、短くされたり長くされたりしてもよい。言いかえれば、当業者によって評価されるように、2つ以上の処置サイクルの各処置コースは独立しており、同じであるか、または異なり;各処置サイクルのそれぞれの非処置インターバルは独立しており、同じであるか、または異なる。
【0122】
本明細書で記載されるように、処置サイクル中の処置のコースはそれぞれ、老化細胞破壊薬剤を用いる処置なしで(つまり、非処置時間インターバル、休薬インターバル;本明細書では非処置インターバルと呼ばれる)、数日、数週、または数か月の時間的インターバルによって分けられる。1つの処置コースとその後の処置コースとの間の非処置インターバル(数日、数週、数か月など)は一般に、処置コース中の投与の任意の2日間における最長の時間的インターバル(つまり日数)よりも長い。一例として、処置コースが14日を超えず、薬剤が処置コースの間一日おきに投与される場合、2つの処置コースの間の非処置インターバルは、本明細書に記載されるように、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または14日、あるいは約3週、約4週、約6週、あるいは約2か以上などと2日よりも長い。特定の実施形態では、2つの処置コースの間の非処置インターバルは、約5日、約1週、約2週、約3週、約1か月、約6週、約2か月(8週)、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月(約1年)、約18か月(約1.5年)、あるいはそれ以上である。ある特定の実施形態では、非処置インターバルは約2年または約3年である。ある特定の実施形態では、非処置時間インターバルは、少なくとも約14日、少なくとも約21日、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または少なくとも約1年である。ある実施形態では、処置のコース(本明細書に記載されるような処置コース(例えば1−14日、2−14日、2−21日、または1−21日)内の投与間で毎日、1日おき、2日おき、または他のインターバルであろうとなかろうと)は、約14日ごとに(つまり約2週ごとに)(つまり、老化細胞破壊薬剤処置のない14日)、約21日ごとに(つまり、約3週ごとに)、約28日ごとに(つまり約4週ごとに)、約36日ごとに、約42日ごとに、約54日ごとに、約60日ごとに、あるいは、毎月(約30日ごとに)、約2か月ごとに(約60日ごとに)、およそ四半期ごとに(約90日ごとに)、あるいは、半年ごとに(約180日ごとに)投与される。他のある実施形態では、処置のコース(例えば、非限定的な例として、少なくとも1日、あるいは約2−21日、約2−14日、約5−14日、約7−14日、約9−14日、約5−21日、約7−21日、約9−21日間のコース中の少なくとも2日の投与)は、28日ごとに、36日ごとに、42日ごとに、54日ごとに、60日ごとに、あるいは毎月(約30日ごとに)、2か月ごとに(約60日ごとに)、四半期ごとに(約90日ごとに)、あるいは、半年ごとに(約180日ごとに)、ほぼ毎年(約12か月)投与される。他の実施形態では、処置のコース(非限定的な例として、処置コース内の投与間で毎日、1日おき、2日おき、または他のインターバルであろうとなかろうと、例えば、約5−28日、約7−28日、あるいは約9−28日間)は、約36日ごとに、約42日ごとに、約54日ごとに、約60日ごとに、あるいは、毎月(約30日ごとに)、約2か月ごとに(約60日ごとに)、およそ四半期ごとに(約90日ごとに)、あるいは、半年ごとに(約180日ごとに)投与される。他の特定の実施形態では、処置のコース(処置コース内の投与間で毎日、1日おき、2日おき、または他のインターバルであろうとなかろうと、例えば、約5−36日、約7−36日、あるいは約9−36日間)は、約42日ごとに、約54日ごとに、約60日ごとに、あるいは、毎月(約30日ごとに)、約2か月ごとに(約60日ごとに)、およそ四半期ごとに(約90日ごとに)、あるいは、半年ごとに(約180日ごとに)、あるいは毎年(12ヶ月)投与される。
【0123】
特定の実施形態では、処置コースは1日であり、非処置インターバルは少なくとも約14日、約21日、約1か月、約2か月(8週)、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月(約1年)、約18か月(約1.5年)、またはそれ以上である。他のある実施形態では、処置コースは少なくとも2日であり、あるいは少なくとも3日であり、および10日を超えず、非処置インターバルは、少なくとも約14日、約21日、約1か月、約2か月(8週)、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月(約1年)、約18か月(約1.5年)、またはそれ以上である。また別の実施形態では、処置コースは少なくとも3日であり、10日を超えず、14日を超えず、あるいは21日を超えず、非処置インターバルは少なくとも約14日、約21日、約1か月、約2か月(8週)、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、約12か月(約1年)、約18か月(約1.5年)、あるいはそれ以上である。また別の実施形態では、処置コース(処置コース内の投与間で毎日、1日おき、2日おき、または他のインターバルであろうとなかろうと、例えば、約5−42、7−42、または9−42日間)は、42日ごとに、60日ごとに、あるいは、毎月(約30日ごとに)、約2か月ごとに(約60日ごとに)、四半期ごとに(約90日ごとに)、あるいは、半年ごとに(約180日ごとに)、またはほぼ毎年(12ヶ月)投与される。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は14日ごと(約2週間)に、あるいは21−42日ごとに5−14日間毎日投与される。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、四半期の5−14日間毎日投与される。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、21−42日ごとに7−14日間毎日投与される。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、四半期の7−14日間毎日投与される。さらに別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、21−42日ごとに9−14日間毎日投与されるか、あるいは9−14日ごと四半期である。さらに別の実施形態では、非処置インターバルは処置コース間で変わることがある。非限定的な例として、非処置インターバルは処置の最初のコースの後の14日であってもよく、第2、第3、または第4の(またはそれ以上)処置のコース後の21日間またはそれ以上であってもよい。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、それを必要としている被験体に0.5−12か月ごとに一度投与される。他のある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、必要中の被験体に4−12か月ごとに一度投与される。
【0124】
ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、被験体が特定の障害を発症させる可能性または危険を減少させるために、あるいは、老化に関連する疾患または障害の1つ以上の症状の発症を遅らせるために、被験体に投与されるある実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、3、4、5、6、7、8、9、10、または12か月ごとに、1日以上(例えば、2−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、および2−21日を含むこれらの間の任意の数の連続した日)投与される。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、5または6か月ごとに1日以上(例えば、1−9日を含むこの間の任意の数の連続した日)投与される。
【0125】
任意の特別の理論によって束縛されることなく、老化細胞破壊薬剤の周期的な投与は、新しく形成された老化細胞を殺し、それによって、被験体中に蓄積する老化細胞の総数を減少(低下、縮小)させる。別の実施形態では、被験体中に蓄積する老化細胞の総数は、毎週一度か二度、あるいは、上に記載された他の処置コースのいずれかに従って、老化細胞破壊薬剤を投与することにより、減らされるまたは阻害される。老化細胞破壊薬剤の1日の総投与量は、各投与日における単回投与として、または複数回の投与として、送達されてもよい。他のある特定の実施形態において、多くのサイクル老化細胞破壊薬剤が投与される場合、1日に投与される老化細胞破壊薬剤の投与量は、1回だけの処置コースが施されることを意図しているのでなければ、投与された1日投与量未満であってもよい。
【0126】
ある実施形態において、老化に関連する疾患または障害を処置する方法は、老化細胞を選択的に殺す小分子老化細胞破壊薬剤を、必要としている被験体に投与する工程を含み、老化に関連する疾患または障害は癌ではなく、老化細胞破壊薬剤は1または2の処置サイクル、典型的には2つの処置サイクル内で投与される。ある特定の実施形態では、非処置インターバルは少なくとも2週間であり、各処置コースは3か月を超えない。
【0127】
さらに、老化細胞を選択的に殺す方法が本明細書で提供され、該方法は、老化細胞を殺すのに十分な条件および時間、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤に老化細胞を接触させる工程(つまり、相互作用を促すか、あるいは老化細胞と老化細胞破壊薬剤を相互作用させる方法で)を含む。こうした実施形態では、薬剤は非老化細胞よりも老化細胞を選択的に殺す(つまり、薬剤は非老化細胞の死滅と比較して老化細胞を選択的に殺す)。ある実施形態では、死滅させられる老化細胞は被験体(例えばヒトまたはヒト以外の動物)中に存在する。老化細胞破壊薬剤は、処置サイクル、処置コース、および上記のおよび本明細書に記載される非処置インターバルに従って被験体に投与されてもよい。
【0128】
特定の実施形態では、単一の(つまり、唯一の、ただ1つの)老化細胞破壊薬剤は、老化に関連する疾患または障害を処置するために被験体に投与される。ある実施形態では、1つの老化細胞破壊薬剤の投与は老化に関連する疾患または障害を処置するのに十分であるとともに臨床的に有益なことがある。これに応じて、ある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は単独療法として投与され、疾病または疾患を治療するために被験体に投与される単一の(つまり、唯一の、ただ1つの)活性な薬剤である。老化細胞破壊薬剤が単独療法として投与される際に被験体への投与から必ずしも除外されない薬物は、非限定的な例として、緩和ケアまたは慰安などの他の目的のための薬物(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、または処方薬鎮痛剤;かゆみ止め局所用薬剤)、あるいは、とりわけ他の薬物がコレステロールを低下させるための薬物、スタチン、眼用湿潤剤、および医学分野の当業者に知られている他こうした薬物のような老化細胞破壊薬剤ではない場合に、異なる疾患または症状を治処置するための薬物を含む。
【0129】
特定の実施形態において、老化細胞破壊薬剤がMDM2阻害剤である場合、MDM2阻害剤は単独療法(つまり唯一の活性な治療剤)として投与され、各処置コースは少なくとも5日間であり、その間、MDM2阻害剤は少なくとも5日間投与される。ある他の実施形態では、MDM2阻害剤は少なくとも9日間投与される。さらに特定の実施形態では、MDM2阻害剤はヌトリン−3aである。
【0130】
投薬レジメン、処置コース、および処置サイクルは、老化細胞破壊薬剤に対する被験体の反応性、疾患のステージ、被験体の健康状態、および、本明細書と当該技術分野で記載される他の因子に依存して、当業者によって決定されるように、調査および変更または調節、継続または中止可能である。
【0131】
本明細書に記載されるように、該方法で使用されてもよい特定の老化細胞破壊薬剤は、癌を処置するのに役立つ、または潜在的に役立つと評されてきた;しかしながら、老化に関連する疾患または障害を処置する方法の実施形態において、老化細胞破壊薬剤は、異なると解釈され、癌の治療には効果がない可能性があると考えられる方法で投与される。それに応じて、本明細書に記載される方法は、老化に関連する障害または疾患を処置するのに役立つが、癌を処置するための一次療法(単独で、またはもう1つの化学療法薬剤または放射線療法)としても同じくらい有用であるとは評されていない。1つの実施形態では、老化細胞破壊薬剤で老化に関連する疾患または障害を処置するために使用される方法は、癌治療に求められるような薬剤の1日量よりも少ない1日量を含むことがある。別の実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤で老化に関連する疾患または障害を処置するために用いられる方法は、癌治療に求められるような薬剤の蓄積量よりも少ない蓄積量を単一の処置サイクルにわたって含むことがある。また別の実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤で老化に関連する疾患または障害を処置するために使用される方法は、複数の癌治療サイクルに求められるような薬剤の投与量と比較して、多くの処置サイクルにわたって投与される薬剤の減少蓄積量を含むことがある。
【0132】
一例として、ある実施形態では、老化細胞破壊薬剤が癌細胞に対して細胞毒性であり、癌の治療のための方法において腫瘍学で用いられる薬剤である場合(例えばMDM2阻害剤(例えばヌトリン−3a;RG−7112)、あるいは少なくともBcl−xLを阻害する1以上のBCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤(例えば、ABT−263、ABT−737、WEHI−539、A−1155463))、老化に関連する疾患または障害を処置する方法は、1または2以上の処置サイクルで老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含み、各処置コースの間、各処置サイクルの間、および/または、2つ以上の処置サイクルにわたって累積的に投与された老化細胞破壊薬剤の総用量は、癌治療に効果的な量未満の量である。老化に関連する疾患または障害を処置するために所定の期間(1週、2週、1か月、6か月、1年など)にわたって被験体に投与されたこうした老化細胞破壊薬剤の量は、例えば、癌の処置のための薬剤を受ける被験体に投与された同じ薬剤の総量と比較して、総量で約20倍乃至約5000倍の減少となり得る。老化に関連する疾患または障害を処置するために所定の期間(つまり、日数、月数、年数)に投与された老化細胞破壊薬剤の量(つまりより少ない量)の倍の減少は、同じ期間にわたって癌を処置するために被験体に投与された薬剤の量と比較して、20倍の減少、25倍の減少、30倍の減少、40倍の減少、50倍の減少、60倍の減少、75倍の減少、約100倍の減少、約125倍の減少、約150倍の減少、約175倍の減少、約200倍の減少、約300倍の減少、約400倍の減少、約500倍の減少、約750倍の減少、約1000倍の減少、約1250倍の減少、約1500倍の減少、約1750倍の減少、約2000目減少、約2250倍の減少、約2500倍の減少、約2750倍の減少、約3000倍の減少、約3250倍の減少、約3500倍の減少、約3750倍の減少、約4500倍の減少、約4000倍の減少、あるいは約5000倍の減少であってもよい。老化に関連する疾患の処置に必要な低用量は投与経路に起因することがある。例えば、老化細胞破壊薬剤が老化に関連する肺の疾患または障害(例えばCOPD、IPF)を処置するために使用される場合、老化細胞破壊薬剤は、肺(例えば、吸入によって、挿管によって、鼻腔内であるいは、気管内に)に直接送達されてもよく、あるいは、薬剤が経口で投与される場合よりも少ない一日当たりおよび/または処置コース当たりの用量が必要とされる。さらに、別の例として、老化細胞破壊薬剤が変形性関節症または老化に関連する皮膚科学的な疾患または障害を処置するために用いられる場合、老化細胞破壊薬剤は、骨関節炎の関節(例えば、関節内に、皮内に、局所的に、経皮的)に、あるいは皮膚(例えば、局所的に、皮下に、皮内に、経皮的に)にそれぞれ、老化細胞破壊薬剤が経口で投与される場合よりも少ない一日当たりおよび/または処置コース当たりの用量で、直接送達されてもよい。老化細胞破壊薬剤が経口で送達される場合、例えば、1日当たりの老化細胞破壊薬剤の投与量は、癌を処置するために患者に投与される際と同じ量であってもよい;しかしながら、処置コースまたは処置サイクルにわたって送達される薬剤の量は実質的に、癌の治療のための薬剤の適正量を受け取る被験体に投与される量未満である。
【0133】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、癌の処置に使用されるときの老化細胞破壊薬剤を受ける被験体に、全身に、例えば、経口または静脈内に送達され得る量と比較して、減少した量の老化細胞破壊薬剤を使用する工程を含む。特定の実施形態では、老化細胞を選択的に死滅させることによって老化関連の疾患または障害を処置する方法は、処置コース、処置サイクル、または癌治療プロトコル(即ち、レジメン)を形成する2つ以上の処置サイクルの間に癌細胞を死滅させるために、癌を有する被験体に投与される用量の少なくとも10%(即ち、10分の1)、少なくとも20%(5分の1)、25%(4分の1)、30%−33%(約3分の1)、40%(5分の2)、または少なくとも50%(半分)である用量で老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む。他の特定の実施形態では、本明細書に記載される方法で使用される老化細胞破壊薬剤の用量は、癌を有する被験体に投与される用量の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%である。老化関連の障害または疾患の処置に使用され得る、老化細胞破壊薬剤の用量および投与のスケジュールおよび方法を含む、治療レジメンはまた、非老化細胞に対して著しく細胞毒性であるには不十分なレジメンである。
【0134】
特定の実施形態では、癌でない老化関連の疾患または障害を処置する方法は、必要としている被験体に、老化細胞を選択的に死滅させる(即ち、非老化細胞よりも又は非老化細胞と比べて老化細胞を選択的に死滅させる)治療上有効な量の小分子の老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含み、該薬剤は、癌細胞に対して細胞毒性であり、ここで、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも1つの処置サイクル内で投与され、該処置サイクルは、処置コースを含み、その後、非処置インターバルが続く。処置コース中に投与された老化細胞破壊薬剤の総量、及び/又は処置サイクル中に投与された老化細胞破壊薬剤の総量、及び/又は2つ以上の処置サイクル中に投与された老化細胞破壊薬剤の総量は、癌治療に有効な量未満の量である。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくともBcl−xLを阻害するBcl−2の抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤;MDM2阻害剤;またはAkt特異的阻害剤、である。これらの阻害剤の例は、本明細書に記載される。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、単独療法として投与され、疾患または障害を処置するために被験体に投与される単一の活性な老化細胞破壊薬剤である。処置コースおよび処置インターバルの日数は、本明細書に詳細に記載される。
【0135】
一実施形態では、老化関連の疾患または障害を処置するための方法が、本明細書に提供され、ここで、老化関連の疾患は癌ではなく、該方法は、必要としている被験体に、老化細胞を選択的に死滅させる老化細胞破壊薬剤または小分子の細胞老化化合物を投与する工程を含み、該投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または15日などの、短期間(例えば、癌を処置するための特定の薬剤に使用される期間よりも短い期間)の間続く。これらの特定の実施形態では、1−15日の間のいずれかの日数のこの処置コースは、単一の処置コースであり、繰り返されない。別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、繰り返されない単一の処置コースとして、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または31日の間投与される。
【0136】
特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、ABT−263(navitoclax)である。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、21日間を含む処置ウィンドウで投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、14日間毎日投与され、その後7日間インターバルをあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、13日間毎日投与され、その後8日間インターバルをあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、12日間毎日投与され、その後9日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、11日間毎日投与され、その後10日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、10日間毎日投与され、その後11日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、9日間毎日投与され、その後12日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、8日間毎日投与され、その後13日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、7日間毎日投与され、その後14日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、6日間毎日投与され、その後15日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、5日間毎日投与され、その後16日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、4日間毎日投与され、その後17日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、3日間毎日投与され、その後18日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、2日間毎日投与され、その後19日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、1日の間投与され、その後20日間間隔をあける。
【0137】
幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至325mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至300mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至275mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至250mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至225mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至200mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至175mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約125mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約100mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約75mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約50mgの用量で21日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約25mgの用量で21日間毎日投与される。
【0138】
幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至325mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至300mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至275mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至250mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至225mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至200mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至175mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約125mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約100mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約75mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約50mgの用量で14日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約25mgの用量で14日間毎日投与される。
【0139】
幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至325mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至300mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至275mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至250mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至225mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至200mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mg乃至175mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約150mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約125mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約100mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約75mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約50mgの用量で7日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、navitoclaxは、約25mgの用量で7日間毎日投与される。他の特定の実施形態では、上記の用量は、1、2、3、4、5、または6日間、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、または20日間毎日投与される。
【0140】
幾つかの実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、ヌトリン−3aである。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、28日間を含む処置ウィンドウで投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、10日間毎日投与され、その後18日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、9日間毎日投与され、その後19日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、8日間毎日投与され、その後20日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、7日間毎日投与され、その後21日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、6日間毎日投与され、その後22日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、5日間毎日投与され、その後23日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、4日間毎日投与され、その後24日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、3日間毎日投与され、その後25日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、2日間毎日投与され、その後26日間間隔をあける。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、1日の間毎日投与され、その後27日間間隔をあける。
【0141】
幾つかの特定の実施形態では、ヌトリン−3aは、約20mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約19mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約18mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約17mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約16mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約15mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約14mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約13mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約12mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約11mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約10mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約9mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約8mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約7mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約6mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約5mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約4mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約3mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約2mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約1mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約0.75mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約0.5mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約0.25mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約0.1mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。幾つかの実施形態では、ヌトリン−3aは、約0.01mg/m
2の用量で10日間毎日投与される。特定の実施形態では、ヌトリン−3aは、上に記載される用量で、5、6、7、8、9、11、12、13、または14日間投与される。
【0142】
老化関連の疾患および障害
必要としている被験体において、年齢関連の疾患および障害を含む、細胞老化に関連する、関係する、またはそれによって引き起こされる疾病、疾患、または障害を処置するための方法が、本明細書に提供される。老化関連の疾患または障害はまた、本明細書において、老化細胞関連の疾患または障害とも呼ばれ得る。老化関連の疾患および障害は、例えば、心臓の疾患および障害、炎症性の疾患および障害、自己免疫性の疾患および障害、肺の疾患および障害、眼の疾患および障害、代謝性の疾患および障害、神経系の疾患および障害(例えば、神経変性の疾患および障害);老化によって引き起こされた年齢関連の疾患および障害;皮膚疾患;年齢関連疾患;皮膚の疾患および障害;および移植関連の疾患および障害、を含む。老化の顕著な特徴は、漸進的な機能損失、または分子、細胞、組織、および有機体レベルで生じる変性である。年齢関連の変性は、筋肉減少症、アテローム性動脈硬化症および心不全などの、よく認識された病状、骨粗鬆症、肺動脈弁閉鎖不全症、腎不全、神経変性(黄斑変性、アルツハイマー病、およびパーキンソン病を含む)、および他に多くの他の病状を引き起こす。異なる哺乳動物種は、特定の年齢関連の病状に対するその感受性が異なるが、集合的に、年齢関連の病状は、一般に、種特異的な寿命のおよそ中間点(例えば、ヒトでは50−60歳)で始まるおよそ指数関数的な動態(approximately exponential kinetics)とともに増加する(例えば、Campisi, Annu. Rev. Physiol. 75:685−705 (2013); Naylor et al., Clin. Pharmacol. Ther. 93:105−16 (2013)を参照)。
【0143】
本明細書に記載される方法に従って本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤のいずれか1つの投与によって処置され得る、老化関連の疾病、障害、または疾患の例は、認知疾患(例えば、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病および他の認知症;ハンチントン病);心疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、心臓の拡張機能障害、大動脈瘤、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心内膜炎、高血圧症、頚動脈疾患、末梢血管疾患、心臓のストレス耐性、心線維症);代謝性の疾患および障害(例えば、肥満、糖尿病、メタボリック症候群);運動機能の疾患および障害(例えば、パーキンソン病、運動ニューロン機能不全(MND);ハンチントン病);脳血管疾患;気腫;変形性関節症;良性前立腺肥大;肺疾患(例えば、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、閉塞性気管支炎、喘息);炎症性/自己免疫性の疾患および障害(例えば、変形性関節症、湿疹、乾癬、骨粗鬆症、粘膜炎、移植関連の疾患および障害);眼の疾患または障害(例えば、加齢黄斑変性症、白内障、緑内障、視力喪失、老視);糖尿病潰瘍;転移;化学療法の副作用、放射線治療の副作用;老化関連の疾患および障害(例えば、脊柱後弯、腎機能障害、虚弱、脱毛、聴力損失、筋疲労、皮膚疾患、筋肉減少症、および椎間板ヘルニア)、および老化によって引き起こされる他の年齢関連の疾患(例えば、放射、化学療法、喫煙、高脂肪/糖分の多い食事の摂取、および環境要因に起因する疾患/障害);創傷治癒;皮膚母斑;線維性の疾患および障害(例えば、嚢胞性線維症、腎線維症、肝臓線維症、肺線維症、口腔粘膜下線維症、心線維症、および膵線維症)。特定の実施形態では、上に又はここで記載される疾患または障害のいずれか1つ又はそれ以上は、除外されてもよい。
【0144】
より具体的な実施形態では、老化細胞破壊薬剤の投与によって、疾患または障害を有する被験体において疾患または障害に関係する老化細胞(即ち、樹立老化細胞)を死滅させることにより、老化関連の疾患または障害を処置するための方法が提供され、ここで、疾患または障害は、変形性関節症;特発性肺線維症;慢性閉塞性肺疾患(COPD);またはアテローム性動脈硬化症、である。
【0145】
老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む本明細書に記載される方法の使用から恩恵を受け得る被験体(即ち、患者、個体(ヒトまたはヒト以外の動物))は、癌も有する被験体を含む。これらの方法によって処置された被験体は、部分寛解または完全寛解(癌寛解とも呼ばれる)にあると考えられ得る。本明細書で詳細に議論されるように、老化細胞の選択的死滅のための方法に使用する老化細胞破壊薬剤は、癌の処置として、即ち、統計的に有意な方法で癌細胞を死滅させる又は破壊する方法で使用されるようには意図されていない。したがって、本明細書に開示される方法は、癌の処置のための主要な治療と考えられる方法での老化細胞破壊薬剤の使用を包含しない。老化細胞破壊薬剤が、単独で又は他の化学療法薬剤または放射線治療薬剤との併用で、主要な癌治療と考えられるのに十分な方法で使用されなくても、本明細書に記載される方法および老化細胞破壊薬剤は、転移を阻害するのに有用な方法(例えば、短期の治療経過)で使用されてよい。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤で処置される被験体は、癌を有していない(即ち、被験体は、医療技術分野の当業者によって癌を有しているとは診断されていない)。
【0146】
心臓の疾患および障害。
別の実施形態では、本明細書に記載される方法によって処置される老化関連の疾患または障害は、心疾患である。心疾患は、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患(CAD)、頚動脈疾患、心内膜炎、心臓発作(冠状動脈血栓症、心筋梗塞[MI])、高血圧/高血圧症、大動脈瘤、脳動脈瘤、心線維症、心臓の拡張機能障害、高コレステロール血症/高脂血症、僧帽弁逸脱症、末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患(PAD))、心臓のストレス耐性、および脳卒中のいずれか1つ又はそれ以上であり得る。
【0147】
特定の実施形態では、動脈硬化症(即ち、動脈の硬化)に関係する又はそれによって引き起こされる老化関連の心疾患を処置するための方法が提供される。心疾患は、アテローム性動脈硬化症(例えば、冠動脈疾患(CAD)および頚動脈疾患);狭心症、うっ血性心不全、および末梢血管疾患(例えば、末梢動脈疾患(PAD))のいずれか1つ又はそれ以上であり得る。動脈硬化症に関係する又はそれによって引き起こされる心疾患を処置するための方法は、高血圧/高血圧症、狭心症、脳卒中、および心臓発作(即ち、冠状動脈血栓症、心筋梗塞(MI))の発症の可能性を減少させ得る。特定の実施形態では、被験体の血管(例えば、動脈)中のアテローム性動脈硬化プラークを安定させるための方法が提供され、それによって、脳卒中またはMIなどの血栓事象の発症の可能性を減少させるか、またはその発症を遅らせる。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤の投与を含むこれらの方法は、被験体の血管(例えば、動脈)中のアテローム性動脈硬化プラークの脂質含有量を減少させる(即ち、その減少を引き起こす)、及び/又は線維性被膜厚さを増大させる(即ち、線維性被膜の増大を引き起こす、あるいはその厚化を増強または促進する)。
【0148】
アテローム性動脈硬化症は、中型および大型の動脈の内腔を侵害する、斑状内膜のプラーク(patchy intimal plaques)(アテローム(atheromas))を特徴とし;プラークは、脂質、炎症細胞、平滑筋細胞、および結合組織を含有している。アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈、頚動脈、および大脳動脈、大動脈およびその分枝、および肢の主な動脈を含む、大型および中型の動脈に影響を与えかねない。アテローム性動脈硬化症は、中型および大型の動脈の内腔を侵害する、斑状内膜のプラーク(アテローム)を特徴とし;プラークは、脂質、炎症細胞、平滑筋細胞、および結合組織を含有している。
【0149】
一実施形態では、老化細胞破壊薬剤の投与によってアテローム性動脈硬化プラークの形成を阻害する(またはアテローム性動脈硬化プラークの形成を減らす、縮小する、減少を引き起こす)ための方法が提供される。他の実施形態では、方法はプラークの量(即ち、レベル)を減らす(減少する、縮小する)ための方法が提供される。血管(例えば、動脈)中のプラークの量の減少は、例えば、プラークの表面積の減少によって、あるいは血管造影法または心臓の分野で使用される他の可視化方法によって測定され得る、血管(例えば、動脈)の閉塞の範囲または程度(例えば、パーセント)の減少によって、測定され得る。本明細書にはまた、被験体の1本以上の血管(例えば、1本以上の動脈)中に存在するアテローム性動脈硬化プラークの安定性を増加させる(または安定性を改善する、促進する、増強する)ための方法が提供され、該方法は、被験体に本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤のいずれか1つを投与する工程を含む。
【0150】
アテローム性動脈硬化症は、しばしば,動脈の「硬化」あるいは詰まり(furring)と呼ばれ、動脈内の多数のアテローム性プラークの形成によって引き起こされる。アテローム性動脈硬化症(本明細書および当該技術分野において動脈硬化性血管疾患またはASVDとも呼ばれる)は、動脈壁が厚くなる動脈硬化症の形態である。プラークの成長または破裂が血流を減少させる又は妨害するときに、症状は進行し;症状は、どの動脈が影響を受けるかによって変わり得る。アテローム性動脈硬化プラークは、安定または不安定であり得る。安定したプラークは、時に数十年間の間、退行し、静止したままであり、あるいはゆっくり成長して、その後、狭窄または閉塞を引き起こし得る。不安定なプラークは、自発性の侵食、亀裂、または破裂に弱く、血行力学的に著しい狭窄を引き起こすずっと前に、急性の血栓症、閉塞、および梗塞を引き起こす。ほとんどの臨床徴候は、不安定なプラークに起因し、これは血管造影法では深刻には見えないようであり;したがって、プラーク安定化は、罹患率と死亡率を減少させる方法であり得る。プラークの破裂または侵食は、急性冠動脈症候群および脳卒中などの主要な心血管イベントにつながりかねない(例えば、Du et al., BMC Cardiovascular Disorders 14:83 (2014); Grimm et al., Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 14:80 (2012)を参照)。分裂したプラークは、無傷のプラークよりも多い含有量の脂質、マクロファージを有することが分かり、より薄い線維性被膜を有していた(例えば、Felton et al., Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 17:1337−45 (1997)を参照)。
【0151】
アテローム性動脈硬化症は、動脈の壁の白血球の慢性炎症反応が大きな原因で動脈血管に影響を及ぼす症候群である。これは、機能性高密度リポタンパク質(HDL)によるマクロファージからの脂肪およびコレステロールの適切な除去がない状態で、低密度リポタンパク質(LDL、コレステロールおよびトリグリセリドを運ぶ血漿タンパク質)によって促進される。アテローム性動脈硬化症の最も初期の可視病巣は、「脂肪線条」であり、これは、動脈の内膜層における脂質を持った泡沫細胞の蓄積である。アテローム性動脈硬化症の特徴は、アテローム性動脈硬化プラークであり、これは、脂肪線条の進化であり、以下の3つの主成分を有している:脂質(例えば、コレステロールおよびトリグリセリド);炎症細胞および平滑筋細胞;並びに組織化およびカルシウム沈着の様々な段階において血栓を含有し得る結合組織マトリックス。最も外側の最も古いプラーク内では、死細胞からのカルシウムおよび他の結晶化した成分(例えば、微小石灰化)を見つけることができる。微小石灰化およびそれに関連する特性も、プラークのストレスを増加させることによって、プラークの不安定性に寄与すると思われる(例えば、Bluestein et al.,J. Biomech. 41(5):1111−18 (2008); Cilla et al., Journal of Engineering in Medicine 227:588−99 (2013)を参照)。脂肪線条は、動脈壁の弾性を低下させるが、動脈の筋肉壁がプラークの位置で大きくなることによって順応するために、何年も血流には影響を与えないかもしれない。脂質の豊富なアテロームは、プラーク破裂および血栓症のリスクが増加する(例えば、Felton et al., supra; Fuster et al., J. Am. Coll. Cardiol. 46:1209−18 (2005)を参照)。報告書では、すべてのプラーク成分、脂質コアが、最も高い血栓形成作用を示すことが分かった(例えば、Fernandez−Ortiz et al., J. Am. Coll. Cardiol. 23:1562−69 (1994)を参照)。進行した疾患における主要な動脈内では、壁硬化も最終的に脈圧を上昇させ得る。
【0152】
不安定プラークは、血栓事象(脳卒中またはMI)につながり得、時に、薄い線維性被膜によって覆われた大きく柔軟な脂質プールとして記載される(例えば、Li et al., Stroke 37:1195−99 (2006); Trivedi et al., Neuroradiology 46:738−43 (2004)を参照)。進行性アテローム性動脈硬化プラークの進行した特徴は、炎症細胞、細胞外脂質(アテローム)および線維組織(硬化症)による動脈内膜の不規則な厚化である(例えば、Newby et al., Cardiovasc. Res. 345−60 (1999)を参照)。線維性被膜の形成は、血管平滑筋細胞の移動および増殖から、およびマトリックス沈着から生じると考えられている(例えば、Ross, Nature 362:801−809 (1993); Sullivan et al., J. Angiology at dx.doi.org/10.1155/2013/592815 (2013)を参照)。薄い線維性被膜は、プラークの不安定性および破裂のリスクの増加に寄付する(例えば、上のLi et al.を参照)。
【0153】
炎症促進性マクロファージ(M1)および抗炎症性マクロファージ(M2)の両方を、アテローム性動脈硬化プラークにおいて見ることができる。プラーク不安定性への両方のタイプの寄与は、活発な調査(active investigation)の主題であり、その結果は、M2タイプに対するM1タイプのレベルの増加が、プラークの不安定性の増加に関連していることを示唆している(例えば、Medbury et al., Int. Angiol. 32:74−84 (2013); Lee et al., Am. J. Clin. Pathol. 139:317−22 (2013); Martinet et al., Cir. Res. 751−53 (2007)を参照)。
【0154】
心疾患を患う被験体は、心疾患に関して当該技術分野で既知の標準的な診断法を使用して特定され得る。一般に、アテローム性動脈硬化症および他の心疾患の診断は、患者の症状(例えば、胸痛または胸部圧迫感(狭心症)、腕または脚の麻痺または脱力、発話困難または不明瞭発語、顔の垂下筋肉、下肢痛、高血圧、腎不全及び/又は勃起障害)、病歴、及び/又は身体検査に基づく。診断は、血管造影法、超音波検査法、または他の画像検査によって確認され得る。心疾患を進行させるリスクを有する被験体は、心疾患の家族歴などの素因のいずれか1つ又はそれ以上を有する被験体、および高血圧、脂質異常症、高コレステロール、糖尿病、肥満および喫煙、セデンタリー・ライフスタイルおよび高血圧症などの、他の危険因子(即ち、素因)を有する被験体を含む。特定の実施形態では、老化細胞関連の疾患/障害である心疾患は、アテローム性動脈硬化症である。
【0155】
心疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)を処置または予防する(即ち、その進行または発症の可能性を低下または減少させる)ための1つ以上の老化細胞破壊薬剤の有効性は、医療および臨床の技術分野における当業者によって容易に判定され得る。本明細書に記載される及び当該技術分野で実施される、身体検査、臨床症状の評価およびモニタリング、並びに分析的な試験および方法の遂行を含む、診断法(例えば、血管造影法、心電図検査法、ストレステスト、非ストレステスト)の1つ又はその任意の組み合わせは、被験体の健康状態のモニタリングに使用され得る。老化細胞破壊薬剤またはそれを含む医薬組成物の処置の効果は、処置を受けた心疾患を患う又はそのリスクのある患者の症状を、そのような処置を受けなかった又はプラセボ治療を受けた患者の症状と比較することなどの、当該技術分野で既知の技術を使用して分析され得る。
【0156】
炎症性および自己免疫性の疾患および障害
特定の実施形態では、老化関連の疾患または障害は、限定しない例として、老化細胞破壊薬剤の投与を含む本明細書に記載される方法に従って処置または予防され得る(即ち、発症の可能性は低下される)、変形性関節症などの、炎症性の疾患または障害である。本明細書に記載される阻害剤および拮抗薬などの老化細胞破壊薬剤の投与することによって処置され得る、他の炎症性または自己免疫性の疾患または障害は、骨粗鬆症、乾癬、口腔粘膜炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、湿疹、脊柱後弯、椎間板ヘルニア、および肺疾患、COPDおよび特発性肺線維症を含む。
【0157】
骨関節炎の退行性骨関節症は、高い機械的ストレス、骨硬化症、および関節滑膜と関節襄の厚化の部位での軟骨の細線維化を特徴とする。細線維化は、軟骨の表層の分裂に伴う局所表面の組織崩壊である。初期の分裂は、軟骨表面とはほとんど関係なく(tangential with)、優性のコラーゲン束の軸に従う。軟骨内のコラーゲンは、組織崩壊され、プロテオグリカンが軟骨表面から失われる。関節中のプロテオグリカンの保護効果および潤滑効果がない状態では、コラーゲン繊維は、分解に弱くなり、機械的破壊が続発する。変形性関節症を進行させる素因となる危険因子は、老化、肥満、前の関節損傷、関節の酷使、弱い大腿筋、および遺伝的性質を含む。それは、高齢者における慢性障害の一般的な原因である。変形性関節症の症状は、不活性または酷使後の、関節、特に臀部、膝、および腰の痛み又は凝り;移動後にはなくなる静止後の凝り;および活性後に又は一日の終わりにむかって悪化する疼痛、を含む。変形性関節症はまた、頚部、小指関節、親指の付け根、足くび、および足の親指に影響を与え得る。
【0158】
慢性炎症は、変形性関節症の一因となる主な年齢関連因子であると考えられている。老化と組み合わさって、関節の酷使および肥満は、変形性関節症を促進するように見える。
【0159】
予期せぬことに、老化細胞を選択的に死滅させることによって、老化細胞破壊薬剤は、関節におけるプロテオグリカン層の損失または侵食を予防する(即ち、発症の可能性を低下させる)、減少させる、または阻害する、患部の関節における炎症を減少させる、およびコラーゲン(例えば、II型コラーゲン)の生成を促進する(即ち、刺激する、増強する、誘発する)。老化細胞の除去は、関節において生成された、IL−6などの、炎症性サイトカインの量(即ち、レベル)の減少を引き起こし、炎症が減少される。(医薬組成物を形成するために少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせてもよい)少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤を被験体に投与することによって、変形性関節症を処置する、被験体の骨関節炎関節において老化細胞を選択的に死滅させる、及び/又は必要としている被験体の関節においてコラーゲン(II型コラーゲンなど)生成を誘発するための方法が、本明細書に提供される。老化細胞破壊薬剤はまた、関節においてコラーゲンを分解する、メタロプロテイナーゼ13(MMP−13)の生成を減少させる(阻害する、減じる)ために、およびプロテオグリカン層を回復する又はプロテオグリカン層の損失及び/又は分解を阻害するために使用されてもよい。老化細胞破壊薬剤での処置はまた、骨の侵食を予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)、阻害する、減少させる、または遅らせる(即ち、速度を低下させる)。本明細書で詳細に記載されるように、特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、(例えば、関節内、局所、経皮、皮内、または皮下の送達によって)骨関節炎関節に直接投与される。老化細胞破壊薬剤での処置はまた、関節の強度の劣化を回復、改善、または阻害することができる。さらに、老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む方法は、関節痛を軽減することができ、したがって、骨関節炎関節の疼痛処理に有用である。
【0160】
被験体における変形性関節症の処置または予防、および1つ以上の老化細胞破壊薬剤を受ける被験体のモニタリングのための1つ以上の老化細胞破壊薬剤の有効性は、医療および臨床の技術分野における当業者によって容易に判定され得る。本明細書に記載される及び当該技術分野で実施される、身体検査(患部の関節の柔軟性、腫脹または赤みの測定など)、臨床症状の評価およびモニタリング(疼痛、凝り、可動性など)、並びに分析的な試験および方法の遂行を含む、診断法(例えば、炎症性のサイトカインまたはケモカインのレベルの測定;関節における骨間の空間の狭化によって示されるような軟骨の損失を測定するためのX線画像;軟骨を含む、骨および軟組織の詳細な画像を提供する、磁気共鳴画像(MRI))は、被験体の健康状態のモニタリングのために使用されてもよい。1つ以上の老化細胞破壊薬剤の処置の効果は、処置を受けた、変形性関節症などの、炎症性の疾患または障害を患う又はそのリスクのある患者の症状を、そのような処置を受けなかった又はプラセボ治療を受けた患者の症状と比較することによって分析され得る。
【0161】
特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、関節リウマチ(RA)を処置する及び/又は予防する(即ち、発症の可能性を減少または低下させる)ために使用され得る。自然および適応の免疫反応の調節不全は、関節リウマチ(RA)を特徴とし、これは、発症率が年齢とともに増加する自己免疫性疾患である。関節リウマチは、手および足の小関節に典型的に影響を及ぼす慢性炎症性障害である。変形性関節症は、少なくとも部分的に、関節の摩擦および亀裂に起因し、一方で関節リウマチは、関節の内側(lining)に影響を及ぼし、骨侵食および関節変形につながり得る、痛みを伴う腫脹を結果的にもたらす。RAは、時に、皮膚、目、肺および血管などの、身体の他の臓器にも影響を及ぼしかねない。RAは、あらゆる年齢の被験体に生じ得るが、通常、40歳を超えて進行し始める。障害は、女性においてはるかに多く見られる。本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、RAは除外される。
【0162】
慢性炎症もまた、脊柱後弯および骨粗鬆症などの、他の年齢関連または老化関連の疾患および障害に寄与し得る。脊柱後弯は、脊柱における深刻な湾曲であり、正常老化および早期老化で頻繁に見られる(例えば、Katzman et al. (2010) J. Orthop. Sports Phys. Ther. 40: 352−360を参照)。骨粗鬆症が脊椎骨をひびが入り圧迫されるポイントまで弱めた後、年齢関連の脊柱後弯がしばしば生じる。数タイプの脊柱後弯は、幼児または10代を対象とする。深刻な脊柱後弯は、肺、神経、および他の組織および臓器に影響し得、疼痛および他の問題を引き起こす。脊柱後弯は、細胞老化に関係している。脊柱後弯を処置するための老化細胞破壊薬剤の効能の特徴付けは、当該技術分野で使用される前臨床の動物モデル中で決定され得る。例として、TTDマウスは、脊柱後弯を進行させ(例えば、de Boer et al. (2002) Science 296: 1276−1279を参照);使用され得る他のマウスは、BubR1
H/Hマウスを含み、これも脊柱後弯を進行させると知られている(例えば、Baker et al. (2011) Nature 479: 232−36を参照)。後弯形成は、時間をかけて視覚的に測定される。老化細胞破壊薬剤での処置によって減少した老化細胞のレベルは、SA−β−Gal染色によるなどの1つ以上の老化細胞関連のマーカーの存在を検知することによって判定され得る。
【0163】
骨粗鬆症は、骨折のリスクの増加につながり得る骨量および骨密度の減少を特徴とする進行性の骨疾患である。骨ミネラル密度(BMD)は低下され、骨微細構造は劣化し、骨におけるタンパク質の量および種類は変更される。骨粗鬆症は、典型的に、骨ミネラル密度試験によって診断され、モニタリングされる。エストロゲンが減少した閉経後の女性が最もリスクを抱える。75歳を超える男性および女性の両方にリスクがあるが、女性は男性より2倍も骨粗鬆症を進行しやすい。老化細胞破壊薬剤での処置によって減少した老化細胞のレベルは、SA−β−Gal染色によるなどの1つ以上の老化細胞関連のマーカーの存在を検知することによって判定され得る。
【0164】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤によって処置または予防され得る(即ち、発症の可能性は低下される)炎症性/自己免疫性疾患は、潰瘍性大腸炎およびクローン病などの、過敏性大腸症候群(IBS)および炎症性腸疾患を含む。炎症性腸疾患(IBD)は、消化管のすべて又は一部の慢性炎症を伴う。IBDから生じる命にかかわる合併症に加えて、疾患は、痛みを伴い、衰弱させ得る。潰瘍性大腸炎は、消化管の一部分において永続的な炎症を引き起こす炎症性腸感染である。症状は、通常、急にではなくむしろ、時間をかけて進行する。潰瘍性大腸炎は、通常、大腸(結腸)および直腸の最も内側のみに影響を与える。クローン病は、消化管の膜に沿った部位のどこにでも炎症を引き起こし、しばしば、患部の組織へと深く伸長する炎症性腸感染である。
これは、腹痛、重度の下痢、および栄養失調につながりかねない。クローン病によって引き起こされた炎症は、消化管の異なる領域を包含し得る。これらの疾患の診断およびモニタリングは、血液検査、結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、バリウム注腸、CTスキャン、MRI、内視鏡検査、および小腸画像診断を含む、当該技術分野で慣例的に実施される方法および診断テストに従って実行される。
【0165】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、椎間板ヘルニアを有する被験体の処置に有用であり得る。これらの椎間板ヘルニアの被験体は、血液および血管壁における細胞老化の存在が高まったことを示す(例えば、Roberts et al. (2006) Eur. Spine J. 15 Suppl 3: S312−316を参照)。椎間板ヘルニアの症状は、疼痛、麻痺または刺痛、あるいは腕か脚の脱力を含み得る。炎症誘発性分子およびマトリックスメタロプロテアーゼのレベルの増加も、老化する及び変性する椎間板組織に見られ、これは、老化細胞に対する役割を示唆している(例えば、Chang−Qing et al. (2007) Ageing Res. Rev. 6: 247−61を参照)。動物モデルは、椎間板ヘルニアを処置する際の老化細胞破壊薬剤の有効性を特徴付けるために使用され得;椎間板の変性は、マウスにおいて圧縮により引き起こされ、椎間板の強度が評価される(例えば、Lotz et al. (1998) Spine (Philadelphia Pa. 1976). 23:2493−506を参照)。
【0166】
老化細胞破壊薬剤の使用によって処置または予防され得る(即ち、発症の可能性が低下される)、他の炎症性または自己免疫性の疾患は、湿疹、乾癬、骨粗鬆症、および肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、喘息)、炎症性腸疾患、および粘膜炎(幾つかの例において放射線によって引き起こされる、口腔粘膜炎を含む)を含む。腎線維症、肝臓線維症、膵線維症、心線維症、皮膚創傷治癒、および口腔粘膜下線維症などの、臓器の特定の線維症または線維性の疾病は、老化細胞破壊薬剤を使用して処置され得る。
【0167】
特定の実施形態では、老化細胞関連の障害は、限定しない例として、老化細胞破壊薬剤の投与を含む本明細書に記載される方法に従って処置または予防され得る(即ち、発症の可能性が低下される)、乾癬および湿疹などの、皮膚の炎症性障害である。乾癬は、皮膚の表皮層の異常に過度の及び急速な成長を特徴とする。乾癬の診断は、通常、皮膚の外観に基づいている。乾癬に典型的な皮膚特性は、苦痛およびかゆみを伴い得る、皮膚の鱗片状の赤色のプラーク、丘疹、または斑点である。乾癬では、SASPの主要な成分であるIL−6などの、様々な炎症誘発性サイトカインの皮膚および全身性の過剰発現が観察される。湿疹は、赤み、皮膚の腫脹、かゆみ及び乾燥、痂皮、小はがれ、水ぶくれ、ひび割れ、滲出(oozing)、または出血を特徴とする、皮膚の炎症である。健診か臨床の芸術に熟練している人は、老化細胞破壊薬剤を受ける被験体の乾癬および湿疹の処置およびモニタリングのための老化細胞破壊薬剤の有効性は、医療または臨床の分野における当業者によって容易に判定され得る。身体検査(皮膚の外観など)、臨床症状(そう痒、腫脹、および疼痛など)のモニタリングの評価、および分析的な試験および方法の遂行を含む、診断法の1つ又はその任意の組み合わせが、本明細書に記載され、当該技術分野で実施される(即ち、炎症誘発性サイトカインのレベルを測定する)。
【0168】
老化細胞破壊薬剤により処置または予防され得る(即ち、発症の可能性が低下される)他の免疫性の障害または疾病は、移植臓器の拒絶反応などの、臓器移植(例えば、腎臓、骨髄、肝臓、肺、または心臓の移植)に対する宿主免疫反応から結果として生じる疾病を含む。老化細胞破壊薬剤は、移植片対宿主病を処置する又はその発症の可能性を低下させるために使用され得る。
【0169】
肺の疾患および障害。一実施形態では、老化細胞破壊薬剤を投与することによって、肺の疾患または障害を有する被験体において該疾患または障害に関係する老化細胞(即ち、樹立老化細胞)を死滅させることにより該疾患または障害である老化関連の疾患または障害を処置または予防する(即ち、発症の可能性を低下させる)ための方法が提供される。老化関連の肺の疾患および障害は、例えば、特発性肺線維症(IPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、および気腫を含む。
【0170】
COPDは、肺組織の破壊(気腫)および小気道の機能不全(閉塞性気管支炎)に起因する持続的に乏しい気流によって定義された肺疾患である。COPDの1次症状は、息切れ、喘鳴、胸部絞扼感、慢性咳、および過剰な痰生成を含む。巻たばこ煙活性化の好中球およびマクロファージからのエラスターゼは、胞状構造の細胞外マトリックスを分解し、結果として、気腔の拡大および呼吸容量の損失をもたらす(例えば、Shapiro et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 32, 367−372 (2005)を参照)。COPDは、タバコ煙(巻たばこ煙、葉巻き煙、間接喫煙、パイプ煙を含む)、職業性被曝(例えば、粉塵、煙、または煙霧への暴露)、および汚染によって最も一般に引き起こされ、これは数十年間の間にわたって生じ、そのため、COPDを進行させる危険因子としての老化に関係している。
【0171】
肺損傷を引き起こすことに関係するプロセスは、例えば、タバコ煙中の高濃度のフリーラジカルによってもたらされた酸化ストレス;気道における刺激物への炎症反応によるサイトカイン放出;およびタバコ煙およびフリーラジカルによる抗プロテアーゼ酵素の障害(これによりプロテアーゼが肺を破損する)を含む。遺伝的感受性もまた、該疾患の一因となり得る。COPDを患う人の約1%において、該疾患は、肝臓中のα1−アンチトリプシンの低レベルの生成を引き起こす遺伝病に起因する。酵素は、通常、肺の保護を助けるために血流へと分泌される。
【0172】
肺線維症は、肺の硬化および瘢痕化を特徴とする慢性および進行性の肺疾患であり、これは、呼吸不全、肺癌、および心不全につながり得る。線維症は、上皮の修復に関係している。線維芽細胞が活性化され、細胞外マトリックスタンパク質の生成が増加され、収縮性筋線維芽細胞への分化転換が創面収縮の一因となる。暫定的なマトリックスは、損傷した上皮を塞ぎ(plugs)、上皮細胞の移動のためのスキャフォールド(scaffold)を提供し、これには上皮間葉転換(EMT)が伴う。上皮損傷に関係する失血は、血小板活性化、成長因子の産生、および急性炎症反応を引き起こす。通常、上皮性関門は治癒し、炎症反応は解消する(resolves)。しかしながら、線維症疾患では、線維芽細胞反応は継続し、結果的に未解消の(unresolved)創傷治癒につながる。線維芽細胞の焦点(foci)の形成は、該疾患の特徴であり、これは進行中の線維形成の位置を反映している。名称が暗示するように、IPFの病因は知られていない。IPFにおける細胞老化の関与は、観察によって示唆される、発病率が年齢とともに増加すること、およびIPF患者中の肺組織が、SA−β−Gal陽性細胞に対して豊富であり、高レベルの老化マーカーp21を含有していることの観察によって示唆されている(例えば、Minagawa et al., Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 300:L391−L401 (2011)を参照;また、例えば、上のNaylor et al.を参照)。短いテロメアは、IPFおよび細胞老化の両方に一般的な危険因子である(例えば、Alder et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:13051−56 (2008)を参照)。理論に縛られることなく、IPFに対する細胞老化の寄与は、IL−6、IL−8、およびIL−1βなどの、老化細胞のSASP成分が、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化および上皮から間葉への転換を促進し、結果として、肺胞腔および間質腔の細胞外マトリックスの広範囲なリモデリングにつながるという報告によって示唆されている(例えば上の、Minagawa et al.を参照)。
【0173】
肺線維症を進行させるリスクのある被験体は、石綿症および珪肺症などを患う、環境または職業上の汚染物質にさらされる被験体;喫煙者;関節リウマチ、SLEおよび強皮症などの幾つかの典型的な結合組織疾患を患う被験体;サルコイドーシスおよびヴェーゲナー肉芽腫症などの、結合組織に関係する他の疾患を患う被験体;感染症を患う被験体;特定の薬剤(例えば、アミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン(busufan)、メトトレザト、およびニトロフラントイン)を摂取している被験体;胸部への放射線治療を受けている被験体;および家族が肺線維症を患っている被験体、を含む。
【0174】
COPDの症状は、特に身体活動中での息切れ;喘鳴;胸部絞扼感;肺における過剰粘液が原因の朝一での咳払い;無色、白色、黄色の、または緑色がかった唾液をもたらす慢性咳;唇または爪の基部の青色化(blueness)(チアノーゼ);頻繁な呼吸器感染症;エネルギーの不足;(疾患の後期段階で観察された)意図しない体重減少、のいずれか1つを含み得る。COPDを患う被験体はまた、増悪を起こし、その間に、症状は悪化し、何日も持続する。肺線維症の症状は、当該技術分野で知られており、特に運動中での息切れ;乾性の、空咳;速く、浅い呼吸;段階的な意図しない体重減少;疲労;関節痛および筋肉痛;及びばち指(clubbing)(指またはつま先の先端の広がり及び丸まり)、を含む。
【0175】
COPDまたは肺線維症を患う被験体は、当該技術分野で慣例的に実施される標準的な診断法を使用して特定され得る。肺疾患を有する又はそれを進行させるリスクのある被験体に投与された1つ以上の老化細胞破壊薬剤の効果のモニタリングは、診断に典型的に使用される方法を使用して行われ得る。一般に、以下の検査または試験の1つ以上が実行され得る:健康診断、患者の病歴、患者の家族の病歴、胸部X線、肺機能検査(肺活量測定など)、血液検査(例えば、動脈血ガス分析)、気管支肺胞洗浄、肺生検、CTスキャン、および運動試験。
【0176】
老化細胞破壊薬剤の使用によって処置され得る他の肺の疾患または障害は、例えば、気腫、喘息、気管支拡張症、および嚢胞性線維症を含む(例えば、Fischer et al., Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 304(6):L394−400 (2013)を参照)。これらの疾患はまた、細胞を老化へと誘導し、それにより炎症の一因となる、タバコ煙(巻たばこ煙、葉巻き煙、間接喫煙、パイプ煙を含む)、職業性被曝(例えば、粉塵、煙、または煙霧への暴露)、感染、及び/又は汚染物質によって悪化され得る。気腫は、時に、COPDのサブグループと見なされる。
【0177】
気管支拡張症は、気道に対する損傷からの結果であり、これにより気道は、広がり、たるみ、瘢痕化する。気管支拡張症は、通常、気道壁を損傷するか又は気道が粘液を取り除くことを阻害する病状によって引き起こされる。そのような疾病の例には、嚢胞性線維症および原発性線毛機能不全(PCD)が挙げられる。肺の一部のみが影響を受ける場合、該障害は、病状ではなくむしろ閉塞によって引き起こされ得る。
【0178】
老化関連の肺の疾患または障害を処置または予防する(即ち、発症の可能性を低下させる)ために本明細書に記載される方法はまた、老化している、および肺機能の損失(または変性)(即ち、より若い被験体と比較した肺機能の低下また障害)及び/又は肺組織の変性を有している被験体の処置に使用され得る。呼吸器系は、年齢とともに様々な解剖学的、生理学的、および免疫学的な変化を経験する。構造変化は、全呼吸器系コンプライアンスを損ないかねない胸壁および胸椎の変形を含み、これは結果として呼吸する努力の増加につながる。呼吸器系は、年齢とともに構造的、生理学的、および免疫学的な変化を受ける。より若い成人と比較した、好中球の割合の増加およびマクロファージの低いパーセンテージが、高齢者の気管支肺胞洗浄(BAL)において見られ得る。下気道における持続する軽度の炎症は、肺マトリックスに対するタンパク分解性およびオキシダント媒介性の損傷を引き起こしかねず、これは結果として、老化とともに見られる肺胞単位の損失および肺胞膜にわたるガス交換の障害につながる。下気道の持続した炎症は、毒性の環境曝露に対する感受性の上昇および肺機能の低下の促進を高齢者が受けやすくし得る。(例えば、Sharma et al., Clinical Interventions in Aging 1:253−60 (2006)を参照)。酸化ストレスは、老化中に炎症を悪化させる(例えば、Brod, Inflamm Res 2000; 49:561−570; Hendel et al., Cell Death and Differentiation (2010) 17:596−606を参照)。老化中の酸化還元バランスの変動および酸化ストレスの増加は、サイトカイン、ケモカイン、接着分子、および酵素の発現を促進する(例えば、Chung et al., Ageing Res Rev 2009; 8:18−30を参照)。マクロファージ、T細胞、およびマスト細胞の構成的活性化および動員は、プロテアーゼの放出を促進し、これは、細胞外マトリックス分解、細胞死、リモデリンング、および慢性炎症の間に組織および臓器の損傷を引き起こしかねない他の事象につながる(例えば、Demedts et al., Respir Res 2006; 7: 53−63を参照)。老化細胞破壊薬剤を老化している被験体(無症性である中年の成人を含む)に投与することによって、肺機能の低下は、呼吸器官から老化細胞を死滅させ、除去することによって減速させられ得るか又は阻害され得る。
【0179】
老化細胞破壊薬剤の有効性は、医療および臨床の技術分野における当業者によって容易に判定され得る。本明細書に記載される、身体検査、臨床症状の評価およびモニタリング、並びに分析的な試験および方法の遂行を含む、診断法の1つ又はその任意の組み合わせは、被験体の健康状態のモニタリングに使用され得る。老化細胞破壊薬剤または老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物の処置の効果は、処置を受けた肺疾患を患う又はそのリスクのある患者の症状を、そのような処置を受けなかった又はプラセボ治療を受けた患者の症状と比較することなどの、当該技術分野に既知の技術を使用して分析され得る。さらに、肺の機械的機能を評価する方法および技術、例えば、肺の容量、弾性、および気道過敏性を測定する技術が実行され得る。肺機能を測定するために及び処置全体にわたって肺機能をモニタリングするために、以下の多数の測定のいずれか1つが得られ得る:予備呼気量(ERV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気肺活量(FEV)(例えば、1秒でのFEV、FEV1)、FEV1/FEV比率、努力呼気流量25%乃至75%、および最大随意換気量(MVV)、ピーク呼気流量(PEF)、遅い肺活量(SVC)。全肺気量は、総肺気量(TLC)、肺活量(VC)、残気量(RV)、および機能的残気量(FRC)を含む。肺胞毛細血管膜にわたるガス交換は、一酸化炭素拡散能(DLCO)を使用して測定され得る。末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO
2)も測定され得;正常な酸素レベルは、典型的に95%から100%の間である。90%未満のSpO
2レベルは、被験体が低酸素血症を患っていることを示唆している。80%未満の値は、深刻であると考えられ、脳および心臓の機能を維持する且つ心臓または呼吸の停止を回避するための介入を必要とする。
【0180】
神経系の疾患および障害。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤を投与することによって処置可能な老化関連の疾患または障害は、神経系の疾患または障害を含む。そのような老化関連の疾患および障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病(および他の認知症)、運動ニューロン機能不全(MND)、軽度認識障害(MCI)、ハンチントン病、および加齢黄斑変性症などの眼の疾患および障害を含む。加齢に関係する眼の他の疾患は、緑内障、視力喪失、老視、および白内障である。
【0181】
パーキンソン病(PD)は、2番目に一般的な神経変性疾患である。それは、動作緩慢(運動緩徐)、振盪、硬直、および後期段階での平衡感覚障害によって特徴付けられる脳の身障状態である。これらの症状の多くは、脳における特定の神経の損失が原因であり、これは、結果としてドーパミンの不足をもたらす。この疾患は、黒質緻密部中のドーパミン作動性ニューロンの約50%から70%の損失、線条体中のドーパミンの重度の損失、及び/又は主としてαシヌクレインおよびユビキチンからなる細胞質内封入体(レーヴィ体)の存在などの、神経変性を特徴とする。パーキンソン病はまた、振戦、硬直、運動緩徐、及び/又は姿勢動揺などの、自発運動不足を特色とする。パーキンソン病を進行させるリスクのある被験体は、パーキンソン病の家族歴を有する被験体、および殺虫剤(例えば、ロテノンまたはパラコート)、除草剤(例えば、オレンジ剤)、または重金属にさらされた被験体を含む。ドーパミンを生成するニューロンの老化は、活性酸素種(参照、例えばコーエンら、J.の神経のTransm。補遺19:89−103(1983))の生成を介してPDにおいて観察された細胞死の一因となると考えられ;したがって、本明細書に記載される方法および老化細胞破壊薬剤は、パーキンソン病の処置および予防法に有用である。
【0182】
パーキンソン病に関係する神経変性の欠乏及び/又は自発運動不足を検出、モニタリング、または定量する方法は、組織学的研究、生化学試験、および行動評価などの当該技術分野で知られている(例えば、米国特許公開第2012/0005765号を参照)。パーキンソン病の症状は、当該技術分野で知られており、限定されないが、正常反射、運動緩徐、および姿勢動揺を除く、自発運動を開始または終了することの困難性、随意運動、痙攣性の硬直した運動、筋萎縮、振盪(振顫)、および心拍数を含む。パーキンソン病と診察された人が、その肉体的症状に加えて、軽度認識障害を含む、認識障害を有し得るという認識が拡大している。
【0183】
アルツハイマー病(AD)は、記憶力の減退、見当識障害、および錯乱とともに、ゆっくり進行する精神機能低下を示す神経変性病であり、これは、深刻な認知症につながる。年齢は、高齢者における認知症の主要原因であるADを進行させる、単一の最も大きな素因となる危険因子である(例えば、Hebert, et al., Arch. Neurol. 60:1119−1122 (2003)を参照)。初期の臨床症状は、軽度認識障害との著しい類似点を示す(以下を参照)。該疾患が進行するとともに、判断力不足、錯乱、行動変化、見当識障害、歩行困難、および嚥下困難が生じる。
【0184】
アルツハイマー病は、組織学的標本中の神経原線維変化およびアミロイド(老人)プラークの存在を特徴とする。該疾患は、脳の辺縁および皮質の領域に主に関係している。アミロイド前駆タンパク質(APP)のアミロイドペプチドAβ断片を含有している好銀性のプラークは、大脳皮質および海馬の全体にわたって散在している。神経原線維変化は、新皮質、海馬、およびマイネルト基底核に主に位置する錐体ニューロンにおいて見られる。海馬の錐体細胞中の顆粒空胞変性などの他の変化、および皮質および海馬におけるニューロン損失および神経膠症が観察されている。アルツハイマー病を進行させるリスクのある被験体は、高齢の被験体、アルツハイマー病の家族歴を有する被験体、遺伝的リスク遺伝子(例えば、ApoE4)または決定的な遺伝子突然変異(例えば、APP、PS1、またはPS2)を有する被験体、および頭部外傷または心臓/脈管の疾病(例えば、高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病、高コレステロール症)の病歴を有する被験体を含む。
【0185】
多くの行動的および病理組織学的なアッセイが、アルツハイマー病の表現型を評価するために、治療剤を特徴付けるために、および処置を評価するために当該技術分野で知られている。組織学的分析は、典型的に死後に行われる。Aβレベルの組織学的分析は、チオフラビンSを使用して行われ得る。コンゴーレッド、または切断された脳組織上のAβ沈着を視覚化するための抗Aβ染色(例えば、4G8、10D5、または6E10の抗体)(例えば、Holcomb et al., 1998, Nat. Med. 4:97−100; Borchelt et al., 1997, Neuron 19:939−945; Dickson et al., 1988, Am. J. Path. 132:86−101を参照)。トランスジェニックマウス中のAβ沈着を視覚化するインビボでの方法も記載されている。BSB((trans、(trans)−1−ブロモ−2,5−ビス−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)スチリルベンゼン)およびPETトレーサー
11C標識化のPittsburgh Compoundd−B(PIB)は、Aβプラークに結合する(例えば、Skovronsky et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:7609−7614; Klunk et al., 2004, Ann. Neurol. 55:306−319を参照)。
19F含有アミロイド親和性(amyloidophilic)コンゴーレッド型化合物FSB((E,E)−1−フルオロ−2,5−ビス−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)スチリルベンゼンは、MRIによってAβプラークの可視化を可能にする(例えば、Higuchi et al., 2005, Nature Neurosci. 8:527−533を参照)。放射標識された、プトレシン修飾のアミロイドβペプチドは、アルツハイマー病のマウスモデルにおいてインビボでアミロイド沈着物を標識化する(例えば、Wengenack et al., 2000, Nat. Biotechnol. 18:868−872を参照)。
【0186】
星状細胞による増加したグリア線維酸性タンパク質(GFAP)は、神経変性間のアストログリアの活性化およびグリオーシスのためのマーカーである。Aβプラークは、GFAP陽性の活性化星状細胞に関係しており、GFAP染色によって視覚化され得る(例えば、Nagele et al. 2004, Neurobiol. Aging 25:663−674; Mandybur et al., 1990, Neurology 40:635−639; Liang et al., 2010, J. Biol. Chem. 285:27737−27744を参照)。神経原線維変化は、チオフラビンS蛍光顕微鏡およびGallyas銀染色(例えば、Gotz et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:529−534; 米国特許第6,664,443号を参照)を使用して、免疫組織化学的検査によって特定され得る。電子顕微鏡法および軸索輸送研究を用いる軸索染色が、神経変性に使用され得る(例えば、Ishihara et al., 1999, Neuron 24:751−762を参照)。
【0187】
アルツハイマー病を患う被験体は、アルツハイマー病の技術分野で既知の標準の診断法を使用して特定され得る。一般に、アルツハイマー病の診断は、患者の、症状(例えば、記憶機能の進行性の低下、正常活動からの段階的な退却およびそれによるフラストレーション、無感情、激越または被刺激性、攻撃性、不安、睡眠障害、不快、異常運動行動、脱抑制、引きこもり、食欲不振、幻覚、認知症)、病歴、神経心理学的検査、神経学的検査及び/又は身体検査に基づく。脳脊髄液もまた、タウ、アミロイドβペプチド、およびAD7C−NTPを含む、アルツハイマー病理に関係している様々なタンパク質のために試験され得る。遺伝子検査もまた、常染色体性優性遺伝病である、早期発症型家族性アルツハイマー病(eFAD)に利用可能である。臨床遺伝子検査が、AD症状を有する個人または早期発症型の疾患を有するリスクを抱える患者の家族に利用可能である。米国では、PS2およびAPPに対する突然変異は、Clinical Laboratory Improvement Amendmentsの下、臨床的に又は連邦政府によって承認された実験室において試験され得る。PS1突然変異に対する商用試験も利用可能である(Elan Pharmaceuticals)。
【0188】
本明細書に記載される1つ以上の老化細胞破壊薬剤の有効性および1つ以上の老化細胞破壊薬剤を受ける被験体のモニタリングは、医療および臨床の技術分野における当業者によって容易に判定され得る。本明細書に記載される、身体検査、臨床症状の評価およびモニタリング、並びに分析的な試験および方法の遂行を含む、診断法の1つ又はその任意の組み合わせは、被験体の健康状態のモニタリングに使用され得る。1つ以上の老化細胞破壊薬剤を投与する効果は、処置を受けたアルツハイマー病を患う又はそのリスクのある患者の症状を、そのような処置を受けなかった又はプラセボ治療を受けた患者の症状と比較することなどの、当該技術分野に既知の技術を使用して分析され得る。
【0189】
軽度認識障害(MCI)。MCIは、個人の年齢および教育に基づいて予期されたものを超えるが、個人の日常活動を妨害するには十分ではない、認識障害の発病および進行を伴う脳機能症候群である。MCIは、正常な老化から認知症に転換し得るまで遷移状態であると考えられる認知的加齢の態様である(Pepeu, Dialogues in Clinical Neuroscience 6:369−377, 2004を参照)。主として記憶に影響するMCIは、「健忘性のMCI」として知られている。健忘性のMCIを患う人は、最近の事象など、以前には容易に思い出していた重要な情報を忘れ始め得る。健忘性のMCIは、しばしば、アルツハイマー病の前駆期と見なされている。記憶以外の思考技術に影響するMCIは、「非健忘性のMCI」として知られている。この種のMCIは、正しい判断を行う、複雑な課題を完了するために必要とされる時間または一連の工程を判断する能力などの思考技術、または視覚認知に影響を与える。非健忘性のMCIを患う個人は、他のタイプの認知症(例えば、レビー小体型認知症)により転換しやすくなると考えられる。
【0190】
医療技術分野の当業者は、パーキンソン病と診察された人が、身体的症状に加えてMCIを有し得るという認識を高めている。最近の研究は、パーキンソン病の人の20−30%がMCIを有しており、MCIが非健忘性となる傾向があることを示している。MCIを有するパーキンソン病患者は時に、完全に発達した認知症(認知症を有するパーキンソン病)になる。
【0191】
星状細胞の形態学的解析、アセチルコリンの放出、神経変性を評価するための銀染色法、およびβアミロイドペプチド沈着物を検出するためのPiB PETイメージングを含む、MCIに関係する神経病理学的欠乏を検出、モニタリング、定量する、または評価するための方法は、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許出願公開第2012/0071468号;上のPepeu,2004を参照)。八方向迷路パラダイム、非見本合わせ課題(non−matching−to−sample task)、水迷路中の他人中心性場所決定課題(allocentric place determination task in a water maze)、モーリス迷路試験、視空間課題(visuospatial tasks)、および遅延反応空間記憶課題(delayed response spatial memory task)、嗅覚新規検査(olfactory novelty test)を含む、MCIに関係する行動的欠乏を検出、モニタリング、定量する、または評価するための方法は、当該技術分野で既知である(同文献を参照)。
【0192】
運動ニューロン機能不全(MND)。MNDは、発話、歩行、呼吸、および嚥下などの、不可欠な随意筋活動を制御する細胞である、運動ニューロンを破壊する進行性の神経障害の群である。それは、変性が上位運動ニューロン、下位運動ニューロン、またはその両方に影響を与えるかによって分類される。MNDの例は、限定されないが、ルー・ゲーリッグ病としても知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化、進行性筋萎縮症、下位運動ニューロン疾患、および脊髄筋萎縮症(SMA)(例えば、ウェルドニッヒ−ホフマン病とも呼ばれるSMA1、クーゲルバーグ−ヴェランダー病、およびケネディ病とも呼ばれるSMA2、SMA3)、ポリオ後症候群、および遺伝性痙性対麻痺を含む。成人において、最も一般的なMNDは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)であり、これは、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの両方に影響を与える。それは、腕、脚、または顔面筋に影響を及ぼしかねない。原発性側索硬化は、上位運動ニューロンの疾患であり、一方で進行性筋萎縮症は、脊髄における下位運動ニューロンにのみ影響を与える。進行性球麻痺では、脳幹の最も下位の運動ニューロンが最も影響を受け、不明瞭発語および咀嚼及び嚥下困難を引き起こす。腕および脚にはほぼ常に軽度に異常な徴候がある。MNDを有する患者は、パーキンソン病の表現型を示す(例えば、振顫、硬直、運動緩徐、及び/又は姿勢動揺を有している)。MNDなどの、パーキンソン病に関係する自発運動不足及び/又は他の欠乏を検出、モニタリング、または定量するための方法は、当該技術分野で知られている(例えば、米国特許出願公開第20120005765号を参照)。
【0193】
病理組織学的、生化学的、および電気生理学的な検査および運動活性分析を含む、MNDに関係する運動不足および病理組織学的な欠乏を検出、モニタリング、定量する、または評価するための方法は、当該技術分野で知られている(例えば、Rich et al., J Neurophysiol 88:3293−3304, 2002; Appel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:647−51, 1991を参照)。病理組織学的に、MNDは、運動ニューロンの死、SOD1およびユビキチンを含有している洗剤耐性の凝集物の進行性蓄積、運動ニューロンを退化させる際の異常な神経フィラメントの集積を特徴とする。さらに、反応性のアストログリアおよびミクログリアは、しばしば、病変組織において検出される。MNDを有する患者は、筋衰弱および消耗症、制御できない単収縮、痙縮、緩慢および骨の折れる動作、および過度に活動的な腱反射を含む、1つ以上の運動不足を示す。
【0194】
眼の疾患および障害:特定の実施形態では、老化関連の疾患または障害は、眼の疾患、障害、または疾病、例えば、老眼、黄斑変性、または白内障である。他の特定の実施形態では、老化関連の疾患または障害は、緑内障である。黄斑変性は、斑と呼ばれる網膜の中央部位の光受容細胞の損失を引き起こす神経変性疾患である。黄斑変性は、一般に、以下の2つのタイプに分類される:乾燥型および湿潤型。乾燥型は、湿潤型よりも一般的であり、加齢黄斑変性症(ARMDまたはAMD)の患者の約90%が、乾燥型と診断されている。該疾患の湿潤型は、通常、より深刻な視力喪失につながる。加齢黄斑変性症の正確な原因はまだ知られておらず、老化網膜色素上皮(RPE)細胞の数は年齢とともに増加する。年齢および特定の遺伝因子および環境因子は、ARMDを進行させる危険因子である(例えば、Lyengar et al., Am. J. Hum. Genet. 74:20−39 (2004) (Epub 2003 December 19); Kenealy et al., Mol. Vis. 10:57−61 (2004); Gorin et al., Mol. Vis. 5:29 (1999)を参照)。環境素因は、オメガ−3脂肪酸摂取(例えば、Christen et al., Arch Ophthalmol. 129:921−29 (2011)を参照);エストロゲン曝露(例えば、Feshanich et al., Arch Ophthalmol 126(4):519−24) (2008)を参照);およびビタミンDの血中濃度の増加(例えば、Millen, et al., Arch Ophthalmol. 129(4):481−89 (2011)を参照)を含む。遺伝素因となる危険因子は、乾燥型のAMDを有する患者の眼におけるDicer1(マイクロRNAの成熟に含まれる酵素)の減少を含み、マイクロRNAの減少は、老化細胞プロファイルの一因であり;DICER1切除は、早期老化を引き起こす(例えば、Mudhasani J. Cell. Biol. (2008)を参照)。
【0195】
乾燥型のARMDは、RPE層の萎縮に関係し、光受容細胞の損失を引き起こす。ARMDの乾燥型は、黄斑組織の老化および菲薄化および斑における色素の沈着に起因し得る。老化は、RPEの複製および移動の両方を阻害するように見え、結果として乾燥型のAMD患者の斑における恒久的なRPE不足をもたらす(例えば、Iriyama et al., J. Biol. Chem. 283:11947−953 (2008)を参照)。湿潤型のARMDでは、新しい血管は、網膜の下で成長し、血液と流体を漏出する。この異常な漏出性の脈絡膜血管新生は、網膜細胞を死なせ、中心視野に盲点を生成する。黄斑変性の異なる形態も、より若い患者に生じ得る。年齢に関連しない病因は、遺伝、糖尿病、栄養不足、頭部外傷、感染、または他の因子に関連付けられ得る。
【0196】
定期眼科検診中に患者または眼科医によって認められた視力の低下は、黄斑変性の最初の指標であり得る。斑のブルック膜の下の滲出物、または「ドルーゼン」の形成は、しばしば、黄斑変性が進行し得る最初の身体的徴候である。症状は、直線の知覚された歪み(perceived distortion of straight lines)を含み、幾つかの場合では、視野の中心は、場面(scene)の残りよりも歪められているように見え;暗い、ぼやけた領域または「ホワイトアウト」は、視野の中心に現われ;及び/又は色知覚は変更または縮小する。黄斑変性の被験体の診断およびモニタリングは、当該技術分野で承認された(art−accepted)定期眼科検診の手順および被験体による症状の報告に従って、眼の技術分野の当業者によって達成され得る。
【0197】
老眼は、正常な眼の速度および調節幅が年齢とともに減少するとともに、近くにある物に焦点を合わせる能力が徐々に減少することを示す、年齢関連の疾病である。水晶体の弾性の損失および毛様筋の収縮性の損失は、その原因として仮定されてきた(例えば、Heys et al., 2004, Mol. Vis. 10:956−63; Petrash, 2013, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 54:ORSF54−ORSF59を参照)。水晶体前嚢および水晶体後嚢の機械的性質の年齢関連の変化は、水晶体後嚢の機械強度が、年齢とともに著しく減少することを示唆している(例えば、Krag et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 44:691−96 (2003); Krag et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 38:357−63 (1997)を参照)。
【0198】
水晶体の層状組織も変化し、これは、組織の組成の変化に少なくとも部分的に起因し得る(例えば、上のKrag et al., 1997、およびそこで引用される参考文献を参照)。水晶体嚢の主な構造成分は、三次元の分子ネットワークへと組織化される基底膜IV型コラーゲンである(例えば、Cummings et al., Connect. Tissue Res. 55:8−12 (2014); Veis et al., Coll. Relat. Res. 1981;1:269−86を参照)。IV型コラーゲンは、各々がα112、α345、またはα556の具体的な連鎖結合を含むヘテロ三量体のIV型コラーゲンプロトマーへと結合する6つの相同のα鎖(α1−6)から構成される(例えば、Khoshnoodi et al., Microsc. Res. Tech. 2008;71:357−70を参照)。プロトマーは、非コラーゲン1(NC1)ドメインと名付けられた球状C末端領域で終端する、Gly−X−Y(Timpl et al., Eur. J. Biochem. 1979;95:255−263)のトリプレットペプチド配列との三重螺旋のコラーゲンドメインの構造類似性を共有する。
N末端は、7Sドメインと名付けられた螺旋ドメインから構成され(例えば、Risteli et al., Eur. J. Biochem. 1980;108:239−250を参照)、これは、プロトマー間の相互作用にも関係している。
【0199】
IV型コラーゲンが、上皮層の下の基底膜の位置決めから推論される細胞機能に影響を与えることを、研究は示唆しており、データは、組織安定化におけるIV型コラーゲンの役割を支持している(例えば、上のCummings et al.を参照)。後嚢混濁(PCO)は、白内障手術(参照、例えばAwasthiら、Ophthalmolを弓形にする。2009;127:555−62)後数年間における患者のおよそ20−40%での合併症として進行する。PCOは、創傷治癒(参照、例えばAwasthiら、Ophthalmolを弓形にする。2009;127:555−62)に類似した反応における後嚢に沿った残りの水晶体上皮細胞の増殖および活性に起因する。線維芽細胞増殖因子、形質転換増殖因子β、表皮増殖因子、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、およびインターロイキンIL−1およびIL−6などの、成長因子はまた、上皮細胞移動を促進し得る(例えば、上のAwasthi et al., supra; Raj et al.を参照)。本明細書で議論されるように、これらの因子および老化細胞によるサイトカインの産生は、SASPの一因である。対照的に、インビボ研究は、IV型コラーゲンが、水晶体上皮細胞の付着を促進することを示している(例えば、Olivero et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 1993;34:2825−34を参照)。眼内レンズへのIV型コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンの付着は、細胞移動を阻害し、PCOの危険性を減少させ得る(例えば、Raj et al., Int. J. Biomed. Sci. 2007;3:237−50を参照)。
【0200】
特定の理論に縛られることなく、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤による老化細胞の選択的死滅は、IV型コラーゲン網の分裂を遅くするか又は妨害し得る(遅延する、阻害する、遅らせる)。老化細胞の除去およびそれによるSASPの炎症効果の除去は、上皮細胞移動を減少または阻害し得、さらに老眼の発症を遅らせ得る(抑える)か、あるいは疾病の進行性の重症度を低下させ得るか又は遅くし得る(例えば、軽度から中程度または中程度から重度の進行を遅くする)。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤はまた、PCOの発症の可能性を低下させるための白内障手術後に有用であり得る。
【0201】
細胞老化の白内障の進行との関連性の直接的な証拠は、人体研究からは得られていないが、BubR1の低形質マウスは、生涯の早期に両側的に後嚢下白内障を進行させ、これは、老化が役割を果たし得ることを示唆している(例えば、Baker et al.,Nat. Cell Biol. 10:825−36 (2008)を参照)。白内障は、眼の水晶体の混濁であり、視界がぼやけ、未処置の場合、結果的に失明になりかねない。手術は有効であり、白内障を取り除くために定期的に行われる。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の1つ以上の投与は、結果として、白内障の発症の可能性を低下させ得るか、または白内障の進行を遅くし得るか又は阻害し得る。白内障の存在および重症度は、眼科の技術分野の当業者によって定期的に行われる方法を使用して眼科検診によってモニタリングされ得る。
【0202】
特定の実施形態では、老化細胞を選択的に死滅させる少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、老眼、白内障、または黄斑変性を進行させる危険性のある被験体に投与され得る。老化細胞破壊薬剤による処置は、白内障、老眼、および黄斑変性の発症または進行を遅らせる又は阻害するために、ヒトの被験体が少なくとも40歳であるときに始められ得る。ほぼすべてのヒトが老眼を進行させるため、特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、老眼の発症または進行を遅らせる又は阻害するために、本明細書に記載されるような方法で、ヒトの被験体が40歳に達した後に投与され得る。
【0203】
特定の実施形態では、老化関連の疾患または障害は、緑内障である。緑内障は、しばしば他に流行する症状なしで、視野欠損を引き起こす疾患の群について記載するために使用される広義語である。症状の欠如は、しばしば、疾患の末期までの緑内障の診断の遅れにつながる。緑内障を罹患した被験体が、たとえ盲目にならなくても、視覚は、しばしば重度に損なわれる。通常、透明液は、前眼房として知られる、眼の前部に流れ、そこから流れ出る。開放隅角/広角緑内障を有している個体において、この流体の流出はゆっくり過ぎであり、眼内の圧上昇につながる。未処置である場合、この高圧は、続いて視神経を傷つけ、全盲につながりかねない。辺縁視の損失は、網膜における神経節細胞の死によって引き起こされる。神経節細胞は、眼を脳に結合する特定のタイプの投射ニューロンである。流体の流出に必要とされる細胞網が、SA−β−Gal染色にさらされたときに、緑内障患者において老化の4倍増加が観察された(例えば、Liton et al., Exp. Gerontol. 40:745−748 (2005)を参照)。
【0204】
緑内障の進行の阻害に対する治療の効果をモニタリングするには、標準の自動視野計測(視野検査)の技術が最も広く使用されている。さらに、進行検出のための幾つかのアルゴリズムが開発された(例えば、Wesselink et al., Arch Ophthalmol. 127(3):270−274 (2009)、およびその引用文献を参照)。追加の方法は、隅角鏡検査(流体が眼から流出する小柱網および角を検査する);画像技術(例えば、走査レーザトモグラフィー(例えば、HRT3)、レーザー偏光測定(例えば、GDX)、視覚コヒーレンストモグラフィー(ocular coherence tomography));検眼鏡検査法;および角膜中央部の厚さを測定する厚度計測定、を含む。
【0205】
代謝性の疾患または障害。老化細胞破壊薬剤の投与によって処置可能な老化関連の疾患あるいは障害は、代謝性の疾患または障害を含む。そのような老化細胞関連の疾患および障害は、糖尿病、メタボリック症候群、糖尿病潰瘍、および肥満症を含む。
【0206】
糖尿病は、インスリン産生、インスリン作用、またはその両方の欠損によって引き起こされた高レベルの血糖を特徴とする。成人における糖尿病のすべての診断された症例の大多数(90〜95%)は、膵臓によるインスリン産生の徐々の損失を特徴とする2型糖尿病である。糖尿病は、米国における成人間で、腎不全、非外傷性の下肢切断、および失明の新しい症例の主要原因である。糖尿病は、心臓病および脳卒中の主な原因であり、米国における死亡の7番目の主要原因である(例えば、Centers for Disease Control and Prevention, National diabetes fact sheet:2011年の米国における糖尿病および糖尿病前についての全国推定値および一般的な情報(「糖尿病ファクトシート(Diabetes fact sheet)」)を参照)。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤は、2型糖尿病、特に年齢、食事および肥満関連の2型糖尿病の処置に使用され得る。
【0207】
肥満および2型糖尿病などの代謝疾患への老化細胞の関与は、損傷または代謝機能不全に対する反応として示唆されてきた(例えば、Tchkonia et al., Aging Cell 9:667−684 (2010)を参照)。肥満マウスからの脂肪組織は、老化マーカーSA−β−Gal、p53、およびp21の誘発を示した(例えば、上のTchkonia et al.; Minamino et al., Nat. Med. 15:1082−1087 (2009)を参照)。腫瘍壊死因子−αおよびCcl2/MCP1などの、炎症誘発性サイトカインの同時のアップレギュレーションが、同じ脂肪組織中で観察された(例えば、上のMinamino et al.を参照)。炎症誘発性のSASP成分も2型糖尿病の一因となると示唆されているため、肥満における老化細胞の誘発は、潜在的に臨床的意味を有している(例えば、上のTchkonia et al.を参照)。老化マーカーおよびSASP成分のアップレギュレーションの類似パターンは、マウスおよびヒトの両方において、糖尿病に関係している(例えば、上のMinamino et al.を参照)。したがって、老化細胞破壊薬剤を投与する工程を含む本明細書に記載される方法は、肥満およびメタボリック症候群の他に、2型糖尿病の処置または予防に有用であり得る。理論に縛られることなく、老化前脂肪細胞が老化細胞破壊薬剤と接触し、それにより老化前脂肪細胞を死滅させることによって、糖尿病、肥満症、またはメタボリック症候群のいずれか1つを有する人に臨床的および健康的な恩恵が与えられ得る。
【0208】
2型糖尿病を患う被験体は、2型糖尿病の分野で既知の標準の診断法を使用して特定され得る。一般に、2型糖尿病の診断は、患者の、症状(例えば、増加した口渇および頻尿、増加した飢餓、体重減少、疲労、視界のぼやけ、回復が遅い痛み又は頻発する感染症、及び/又は黒ずんだ皮膚の領域)、病歴、及び/又は身体検査に基づく。2型糖尿病を進行させる危険性のある被験体は、2型糖尿病の家族歴を有する被験体、および過剰体重、脂肪分布、不活性、人種、年齢、糖尿病前症、及び/又は妊娠性糖尿病などの、他の危険因子を有する被験体を含む。
【0209】
老化細胞破壊薬剤の有効性は、医療および臨床の技術分野における当業者によって容易に判定され得る。本明細書に記載されるような、身体検査、臨床症状の評価およびモニタリング、並びに分析的な試験および方法の遂行を含む、診断法の1つ又はその任意の組み合わせは、被験体の健康状態のモニタリングに使用され得る。糖尿病の処置または予防のために本明細書に記載される1つ以上の老化細胞破壊薬剤を受ける被験体は、例えば、グルコースおよびインスリンの耐性、エネルギー消費、身体組成、脂肪組織、骨格筋、および肝臓炎症、及び/又は脂肪毒性(インビボでの画像化による筋肉および肝臓の脂質および組織構造による筋肉、肝臓、骨髄、および膵臓のβ細胞脂質の蓄積および炎症)を分析することによってモニタリングされ得る。2型糖尿病の他の特性または表現型が知られており、本明細書に記載されるように、および当該技術分野で知られる及び慣例的に実施される他の方法および芸術を使用して分析され得る。
【0210】
肥満症および肥満関連の障害は、身長および体格に対して理想よりも相当大きい体重を有する被験体の疾病を指すために使用される。肥満度指数(BMI)は、過剰体重を判定するために使用される測定ツールであり、被験体の身長および体重から計算される。ヒトは、25−29のBMIを有している場合、太り過ぎであると考えられ;30−39のBMIを有している場合、肥満であると考えられ、および≧40BMIを有している場合、重度に肥満であると考えられる。したがって、用語、肥満および肥満関連とは、30を超える、35を超える、または40を超える肥満度指数値を有するヒトの被験体を指す。BMIによって得られない肥満のカテゴリーは、当該技術分野で「腹部脂胖症」と呼ばれ、これは、中年の被験体で見られる余分な脂肪に関連し、BMIとは無関係でさえある、健康の重要な因子である。腹部脂胖症の測定に最も簡潔で及び最も頻繁に用いられるは、ウエストサイズである。一般に、女性における腹部脂胖症は、ウエストサイズ35インチ以上として定義され、男性では40インチ以上として定義される。肥満を判定するためのより複雑な方法は、磁気共鳴画像または二重X線吸収測定法の機械などの、専門的な装置を必要とする。
【0211】
糖尿病および老化に関係する疾病または障害は、糖尿病潰瘍(即ち、糖尿病の創傷)である。潰瘍は、皮膚の破壊であり、これは、皮下組織あるいは筋肉また骨までを含むようになり得る。これらの病変は、特に、下肢に生じる。糖尿病性静脈潰瘍の患者は、慢性創傷の部位で細胞老化の存在が高まったことを示す(例えば、Stanley et al. (2001) J. Vas. Surg. 33: 1206−1211を参照)。慢性創傷の部位で、尿病潰瘍などの慢性炎症も観察され(例えば、Goren et al. (2006) Am. J. Pathol. 7 168: 65−77; Seitz et al. (2010) Exp. Diabetes Res. 2010: 476969を参照)、これは、老化細胞の炎症誘発性サイトカインの表現型が、病理における役割を有することを示唆している。
【0212】
2型糖尿病を有する又はそれを進行させる危険性のある被験体は、メタボリック症候群を有し得る。ヒトにおけるメタボリック症候群は、典型的に、肥満に関係し、心疾患、肝臓脂肪症、高脂血症、糖尿病、およびインスリン抵抗性の1つ以上を特徴とする。メタボリック症候群の被験体は、例えば、高血圧症、2型糖尿病、高脂血症、脂質異常症(例えば、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症)、インスリン抵抗性、肝臓脂肪症(脂肪性肝炎)、高血圧症、アテローム性動脈硬化、および他の代謝障害の1つ以上を含み得る、代謝性の異常または異常の群を示し得る。
【0213】
腎機能障害:糸球体疾患などの腎臓病学的病状は、高齢者に生じる。糸球体腎炎は、腎臓の炎症および2つのタンパク質、IL1αおよびIL1βの表現を特徴とする(例えば、Niemir et al. (1997) Kidney Int. 52:393−403を参照)。IL1αおよびIL1βは、SASPの主要制御因子と考えられる(例えば、Coppe et al. (2008) PLoS. Biol. 6: 2853−68を参照)。糸球体疾患は、特に線維性の腎臓における、老化細胞の存在の高まりに関係している(例えば、Sis et al. (2007) Kidney Int. 71:218−226を参照)。
【0214】
皮膚科学的な疾患または障害。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤を投与することによって処置可能な老化関連の疾患または障害は、皮膚科学的な疾患または障害を含む。そのような老化細胞関連の疾患および障害は、乾癬および湿疹を含み、これらも炎症性疾患であり、より詳細に上で議論されている。老化に関係している他の皮膚科学的な疾患および障害は、しわ(rhytides)(老化によるしわ);心因掻痒(糖尿病および老化に関連している);知覚不全(糖尿病および多発性硬化症に関連する化学療法副作用);乾癬(留意されるような)および他の丘疹鱗屑性障害、例えば、紅皮症、扁平苔癬、および苔癬様皮膚病症;アトピー性皮膚炎(湿疹の形態および炎症に関係している);湿疹性発疹(しばしば、高齢患者に観察され、特定の薬剤の副作用に関連している)、を含む。老化に関係する他の皮膚科学的な疾患および障害は、好酸球性皮膚病(特定種類の血液の癌に関連している);反応性の好中球性皮膚症(炎症性腸症候群などの基礎疾患に関係している);天疱瘡(自己抗体がデスモグレインに対して形成する自己免疫性疾患);天疱瘡様および他の免疫水疱性皮膚病(皮膚の自己免疫性水疱形成);老化に関連付けられる皮膚の線維性組織球性増殖;および高齢の個体群においてより一般的な皮膚リンパ腫、を含む。本明細書に記載される方法に従って処置可能であり得る別の皮膚科学的疾患は、紅斑性狼瘡の症状である、皮膚の狼瘡を含む。遅発性の狼瘡は、T細胞およびB細胞の減少した(即ち、低下した)機能および老化に関係するサイトカイン(免疫老化)に関連付けられ得る。
【0215】
転移。特定の実施形態では、転移である、老化細胞関連の疾患(あるいは障害または疾病)を処置する又は予防する(即ち、その発症または進行の可能性を低下させる)ための方法が提供される。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤も、身体における臓器または組織から別の臓器または組織への転移(即ち、癌または腫瘍細胞の広がり及び播種)を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)ために本明細書に記載される方法に従って使用され得る。
【0216】
老化細胞関連の疾患あるいは障害は、転移を含み、癌を有する被験体は、転移を阻害するための本明細書に記載されるような老化細胞破壊薬剤の投与から恩恵を受け得る。本明細書に記載される方法に従って癌を有する被験体に投与されるときのそのような老化細胞破壊薬剤は、腫瘍増殖を阻害し得る。癌の転移は、癌細胞(即ち、腫瘍細胞)が、被験体の身体の全体にわたって発生および最初のコロニー形成の解剖学的部位を越えて他の領域に広がるときに生じる。腫瘍増殖は、腫瘍サイズによって判定され得、これは、例えば、PETスキャン(MRI)、CATスキャン、生検などによって、当業者によく知られている様々な方法で測定され得る。腫瘍増殖に対する治療剤の効果も、腫瘍細胞の分化を検査することによって評価され得る。
【0217】
本明細書および当該技術分野で使用されるように、用語、癌または腫瘍は、典型的に異常な細胞増殖を示す細胞を特徴とする疾患を包含する、臨床的に記述的な用語である。用語、癌は、悪性腫瘍または悪性腫瘍から生じる疾患状態について記載するために一般に使用される。代替的に、成長異常は、当該技術分野において新生物と呼ばれ得る。用語、腫瘍は、組織に関連するなど、一般に、少なくとも部分的に過度且つ異常な細胞増殖を特徴とする異常な組織成長を指す。腫瘍は、転移性であり得、被験体の身体の全体にわたって発生および最初のコロニー形成のその解剖学的部位を越えて他の領域に広がり得る。癌は、固形腫瘍を含み得るか、または「液体」腫瘍(例えば、白血病および他の血液癌)を含み得る。
【0218】
細胞は、放射線および特定の化学療法剤などの癌治療によって老化を引き起こされる。老化細胞の存在は、炎症分子の分泌(老化細胞に関する本明細書の記載を参照)を増加させ、腫瘍発達を促進し、これは、腫瘍成長を促進し、腫瘍サイズを増大させ、転移を促進し、および分化を変更し得る。老化細胞が破壊されるとき、腫瘍発達は、著しく阻害され、結果として、腫瘍サイズは小さくなり、転移成長ほとんど又はまったく観察されない(例えば、国際出願公開番号WO 2013/090645を参照)。
【0219】
一実施形態では、本明細書に記載されるように老化細胞破壊薬剤を投与することによって、癌を有する被験体の転移を予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)、阻害する、または遅らせるための方法が提供される。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、7日または14日以内の処置ウィンドウ(即ち、処置コース)内で1日以上投与される。他の実施形態では、処置コースは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日以内、または21日以内である。他の実施形態では、処置コースは、1日である。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、7日または14日以内の処置ウィンドウ内で2日以上、または7日または14日以内の処置ウィンドウ内で3日以上;7日または14日以内の処置ウィンドウ内で4日以上;7日または14日以内の処置ウィンドウ内で5日以上;7日または14日以内の処置ウィンドウ内で、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日投与される。特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が、3日以上の処置ウィンドウの間、被験体に投与されるとき、老化細胞破壊薬剤は、2日ごとに(即ち、1日置きに)投与され得る。他の特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、4日以上の処置ウィンドウの間、被験体に投与されるとき、老化細胞破壊薬剤は、3日ごとに(即ち、2日置きに)投与され得る。
【0220】
細胞が、放射線および特定の化学療法剤(例えば、ドキソルビシン;パクリタキセル;ゲムシタビン;ポマリドマイド;レナリドマイド)などの、癌治療によって老化を引き起こされ得るため、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤は、これらの老化細胞を死滅させる(またはその死滅を促進する)ために化学療法または放射線治療後に投与され得る。本明細書に議論される及び当該技術分野で理解されるように、細胞老化関連分泌表現型(SASP)の存在などによって示される、老化の確立が、数日間にわたって生じ;それ故、老化細胞を死滅させる及びそれにより転移の発生の可能性を低下させる又はその範囲を縮小するための老化細胞破壊薬剤の投与が、老化が確立されたときに開始される。本明細書で議論されるように、老化細胞破壊薬剤の投与のための続く処置コースは、化学療法または放射線治療の副作用を処置または予防する(即ち、発症の可能性を低下させる、または重症度を低下させる)ために本明細書に記載される方法に使用されてもよい。
【0221】
特定の実施形態では、化学療法または放射線治療は、少なくとも1日のオン治療(on−therapy)(即ち、化学療法または放射線治療)、その後、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日(または約2週)、15、16、17、18、19、20、21日(または約3週)、あるいは約4週(約1か月)のオフ治療(off−therapy)(即ち、化学療法または放射線治療を受けていない)の処置サイクルで施されるときに、老化細胞破壊薬剤は、オフ治療の時間間隔の2日目に又はその後に始まり、オフ治療の時間間隔の最終日に又はその前に終了する、オフ治療の時間間隔(時間周期)の間に1日以上投与される。実例として、nがオフ治療の日の数である場合、老化細胞破壊薬剤は、オフ治療の時間間隔の少なくとも1日およびn−1日以下投与される。ある特定の実施形態では、化学療法または放射線治療が、少なくとも1日のオン治療(即ち、化学療法または放射線治療)、その後、少なくとも1週のオフ治療の処置サイクルで施されるときに、老化細胞破壊薬剤は、オフ治療の時間間隔の2日目に又はその後に始まり、オフ治療の時間間隔の最終日に又はその前に終了する、オフ治療の時間間隔の間に1日以上投与される。より具体的な実施形態では、化学療法または放射線治療が、少なくとも1日のオン治療(即ち、化学療法または放射線治療)、その後、少なくとも1週のオフ治療の処置サイクルで施されるときに、老化細胞破壊薬剤は、オフ治療の時間間隔の6日目である1日に投与される。他の具体的な実施形態では、化学療法または放射線治療が、少なくとも1日のオン治療(即ち、化学療法または放射線治療)、その後、少なくとも2週のオフ治療の処置サイクルで施されるときに、老化細胞破壊薬剤は、化学療法または放射線治療のない時間間隔の6日目に始まり、続く化学療法または放射線治療の処置コースの1日目に少なくとも1日または少なくとも2日前に終了して投与される。例として、化学療法または放射線治療のない時間間隔が、2週である場合、老化細胞破壊薬剤は、化学療法または放射線治療の経過が終了した後の6日目(即ち、化学療法または放射線治療のない時間間隔の6日目)に始まるオフ治療の時間間隔の少なくとも1日および7日以下(即ち、1、2、3、4、5、6、または7日)投与され得る。化学療法または放射線治療のない時間間隔が、少なくとも3週である場合、老化細胞破壊薬剤は、化学療法または放射線治療の経過が終了した後の6日目に始まるオフ治療の時間間隔の少なくとも1日および14日以下(即ち、1−14日:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日)投与され得る。他の実施形態では、化学療法または放射線治療のない時間間隔に依存して、老化細胞破壊薬剤による処置コースは、少なくとも1日および2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16 17、18、19、20、または21日以下(即ち、1−21日)であるが、但し、これは、老化細胞破壊薬剤の投与が、化学療法または放射線治療と同時ではない場合である。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤による処置コースは、1日である。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、14日以内の処置ウィンドウ内で2日以上、14日以内の処置ウィンドウ内で3日以上;14日以内の処置ウィンドウ内で4日以上;14日以内の処置ウィンドウ内で5日以上;14日以内の処置ウィンドウ内で、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日、投与される。特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が、3日以上の処置コース中に被験体に投与されるとき、老化細胞破壊薬剤は、2日ごとに(即ち、1日置きに)投与され得る。他の特定の実施形では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が、4日以上の処置コース中に被験体に投与されとき、老化細胞破壊薬剤は、3日ごとに(即ち、2日置きに)投与され得る。
【0222】
多くの化学療法および放射線療法のレジメンが、オン薬物治療(on−drug therapy)、その後のオフ薬物治療(off−drug therapy)の有限数のサイクルを含むか、または化学療法または放射線治療が施される有限の時間枠を含む。そのような癌治療のレジメンは、処置プロトコルとも呼ばれ得る。プロトコルは、処置される被験体に関連する、臨床試験、薬剤ラベル、および治験に関わる医療従事者によって決定される。化学療法または放射線治療のサイクルの数または化学療法または放射線治療のレジメンの合計時間は、癌治療に対する患者の反応によって様々であり得る。そのような処置レジメンに対する時間枠は、腫瘍学の技術分野における当業者によって容易に決定される。転移を処置するための別の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、化学療法または放射線治療の処置レジメンが完了した後に投与され得る。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、化学療法または放射線治療が完了した後、または14日以内の処置ウィンドウ(即ち、老化細胞破壊薬剤による処置コース)内で1日以上、投与される。他の実施形態では、老化細胞破壊薬剤による処置コースは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日以内、または21日以下である.他の実施形態では、処置コースは、1日である。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、14日以内の処置ウィンドウ内で2日以上、14日以内の処置ウィンドウ内で3日以上;14日以内の処置ウィンドウ内で4日以上;14日以内の処置ウィンドウ内で5日以上;14日以内の処置ウィンドウ内で、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日、投与される。特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が、3日以上の処置ウィンドウの間、化学療法または放射線治療後に被験体に投与されるとき、老化細胞破壊薬剤は、2日ごとに(即ち、1日置きに)投与され得る。他の特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤が、4日以上の処置ウィンドウの間、被験体に投与されるとき、老化細胞破壊薬剤は、3日ごとに(即ち、2日置きに)投与され得る。一実施形態では、老化細胞破壊薬剤による処置は、癌処置のレジメンが完了した少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後、あるいはその後に開始され得る。さらに特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤による処置は、癌処置のレジメンが完了した少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後、あるいはその後に開始され得る。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の投与のための追加の処置コースおよび処置サイクルのいずれかは、化学療法または放射線治療のプロトコルが完了した後に、被験体の転移を阻害するために続けられてもよい。
【0223】
化学療法は、化学療法、化学療法薬、または化学療法剤と呼ばれ得る。多くの化学療法薬は、小有機分子と呼ばれる化合物である。化学療法は、特別の癌を処置するために投与される併用化学療法剤について記載するためにも使用される用語である。当業者によって理解されるように、化学療法はまた、協調的に投与され、併用化学療法と呼ばれ得る、2つ以上の化学療法分子の組み合わせを指し得る。多数の化学療法剤は、腫瘍学の技術分野で使用され、限定することなく、アルキル化剤;代謝拮抗薬;アントラサイクリン、植物アルカロイド;およびトポイソメラーゼ阻害剤、を含む。
【0224】
転移し得る癌は、固形腫瘍であり得るか、または液体腫瘍(例えば、血液癌、例えば、白血病)であり得る。液体腫瘍である癌は、血液、骨髄、およびリンパ節に生じるものとして当該技術分野で分類され、一般に、白血病(骨髄性およびリンパ球性)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、および黒色腫(多発性骨髄腫を含む)を含む。白血病として、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病が挙げられる。固形腫瘍であり、ヒトにおいてかなりの頻度で生じる癌として、例えば、前立腺癌、睾丸癌、乳癌、脳癌、膵癌、結腸癌、甲状腺癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、カポジ肉腫、皮膚癌(扁平上皮皮膚癌を含む)、腎臓癌、頭頸部癌、喉頭癌、鼻、口、咽喉などの湿った粘膜内層に生じる扁平上皮癌、膀胱癌、骨肉腫(骨癌)、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、および腎臓癌、が挙げられる。特定の具体的な実施形態では、本明細書に記載される方法によって処置または予防される(即ち、発症または進行の可能性が低下される)老化細胞関連の疾患または障害は、メラノーマ細胞、前立腺癌細胞、睾丸癌細胞、乳癌細胞、脳癌細胞、膵癌細胞、結腸癌細胞、甲状腺癌細胞、胃癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、カポジ肉腫細胞、皮膚癌細胞、腎臓癌細胞、頭頸部癌細胞、喉頭癌細胞、扁平上皮癌細胞、膀胱癌細胞、骨肉腫細胞、子宮頸癌細胞、子宮内膜癌細胞、食道癌細胞、肝臓癌細胞、または腎臓癌細胞、の転移である。
【0225】
本明細書に記載される方法はまた、医療技術分野で記載される腫瘍のタイプのいずれか1つの転移癌の進行を阻害する、遅らせる、または遅くするのに有用である。癌(腫瘍)のタイプには、以下が挙げられる:副腎皮質癌、小児期副腎皮質癌、AIDS関連の癌、肛門癌、虫垂癌、基底細胞癌、小児期基底細胞癌、膀胱癌、小児期膀胱癌、骨肉腫、脳腫瘍、小児期星状細胞腫、小児期脳幹部グリオーマ、小児期中枢神経系、非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、小児期中枢神経系胚芽腫、小児期中枢神経系胚細胞腫瘍、小児期頭蓋咽頭腫脳腫瘍、小児期脳室上衣腫脳腫瘍、乳癌、小児期気管支腫瘍、類癌腫、小児期類癌腫、消化管カルチノイド、原発不明癌、原発不明幼年期癌腫、小児期心(心臓)腫瘍、子宮頸癌、小児期子宮頸癌、小児期脊索腫、慢性骨髄増殖症候群、結腸癌、結腸直腸癌、小児期結腸直腸癌、肝臓外胆管癌、乳管内癌(DCIS)、子宮内膜癌、食道癌、小児期食道癌、小児期鼻腔神経芽細胞腫、眼癌、骨の悪性線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌(gastric (stomach) cancer)、小児期胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、小児期消化管間質腫瘍(GIST)、小児期頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、 妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫、頭頸部癌、小児期頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、下咽頭癌、腎臓癌、腎細胞の腎臓癌、ウィルムス腫瘍、小児期腎腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、小児期喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(cml)、ヘアリーセル白血病、口唇癌、肝臓癌(原発性)、小児期肝臓癌(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、リンパ腫、AIDS関連のリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫(CNS)、黒色腫、小児期黒色腫、眼球内(眼の)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、小児期悪性中皮腫、潜在性原発の転移性扁平上皮頚部癌、NUT遺伝子に関する正中管癌腫(midline tract carcinoma)、口腔癌、小児期多発性内分泌腺腫症、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成の新生物、脊髄増殖性新生物、多発性骨髄腫、鼻腔癌、鼻咽腔癌、小児期鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、口腔癌、小児期口腔癌、口腔咽頭癌、卵巣癌、小児期卵巣癌、上皮卵巣癌、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、小児期膵癌、膵内分泌腫瘍(島細胞腫)、小児期乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞腫瘍、小児期胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂移行上皮癌、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、小児期唾液腺癌、腫瘍のユーイング肉腫ファミリー、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、小児期横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、小児期皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、扁平上皮癌、小児期扁平上皮癌、睾丸癌、小児期睾丸癌、喉頭癌、胸腺腫および胸腺癌、小児期胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、小児期甲状腺癌、尿管移行上皮癌、尿道癌、子宮内膜の子宮癌、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症。
【0226】
化学療法および放射線治療の副作用。別の実施形態では、老化細胞関連の障害または疾病は、化学療法または放射線治療の副作用である。老化する非癌化細胞を含む化学療法剤の例は、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシンなど);タキソール(例えば、パクリタキセル);ゲムシタビン;ポマリドマイド;およびレナリドマイド、を含む。本明細書に記載されるように投与された老化細胞破壊薬剤の1つ以上は、化学療法または放射線治療の副作用を処置及び/又は予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)ために使用され得る。老化細胞の除去または破壊は、化学療法または放射線治療の、エネルギー不均衡を含む急性毒性を含む、急性毒性を改善し得る。急性毒性の副作用は、限定されないが、胃腸毒性(例えば、吐き気、嘔吐、便秘、食欲不振、下痢)、末梢神経障害、疲労、倦怠感、低身体活動、血液毒性(例えば、貧血症)、肝毒性、脱毛症(脱毛)、疼痛、感染、粘膜炎、体液鬱滞、皮膚科学的毒性(例えば、発疹、皮膚炎、色素過剰症、蕁麻疹、光過敏症、爪の変化)、口腔の問題(例えば、口腔粘膜炎)、歯肉または咽喉の問題、あるいは化学療法または放射線治療によって引き起こされた毒性の副作用、を含む。例えば、放射線治療または化学療法によって引き起こされた毒性の副作用(例えば、National Cancer Instituteのウェブサイトを参照)は、本明細書に記載される方法によって改善され得る。したがって、特定の実施形態では、治療を受ける被験体において化学療法または放射線治療あるいはその両方の急性毒性を改善する(発症を減少する、阻害する、または予防する(即ち、発症の可能性を低下させる))、あるいはその毒性の副作用(即ち、有害副作用)の重症度を低下させるための方法が、本明細書に提供され、ここで該方法は、老化細胞を選択的に死滅させる、除去する、または破壊する、あるいはその選択的な破壊を促進する薬剤を被験体に投与する工程を含む。
化学療法または放射線治療の副作用を処置する又はその発症の可能性を低下させる、あるいはその重症度を低下させるための老化細胞破壊薬剤の投与は、転移の処置/予防のために上に記載される同じ処置コースによって達成され得る。転移を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)ために記載されるように、老化細胞破壊薬剤は、化学療法または放射線治療のない時間間隔中に、あるいは化学療法または放射線療法の処置レジメンが完了した後に投与される。
【0227】
より具体的な実施形態では、急性毒性は、エネルギー不均衡を含む急性毒性であり、体重減少、内分泌学的変化(例えば、ホルモン不均衡、ホルモンシグナル伝達の変化)、および身体成分の変化の1つ以上を含み得る。特定の実施形態では、エネルギー不均衡を含む急性毒性は、 医学療法を受けなかった被験体で観察されるよりも減少した又は縮小されたエネルギーの消費によって示されるように、被験体が物理的に活動的となる能力の減少または縮小に関連している。限定しない例として、エネルギー不均衡を含むそのような急性の毒作用は、低身体活動を含む。他の特定の実施形態では、エネルギー不均衡は、疲労または倦怠感を含む。
【0228】
一実施形態では、老化細胞破壊薬剤によって処置または予防される(即ち、発症の可能性が低下される)化学療法の副作用は、心臓毒性である。アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)で処置されている癌を有する被験体は、アントラサイクリンの心臓毒性を低下させる、改善する、または減少させる、本明細書に記載される1つ以上の老化細胞破壊薬剤によって処置され得る。医療技術分野でよく理解されるように、アントラサイクリンに関係する心臓毒性のために、被験体が受けることができる最大の生涯投与量は、癌が薬物に反応したとしても制限される。老化細胞破壊薬剤の1つ以上の投与によって、心臓毒性は低下し得、それにより、さらなる量のアントラサイクリンを被験体に投与することができ、その結果、癌疾患に関連する予後の改善がもたらされる。一実施形態では、心臓毒性は、ドキソルビシンなどのアントラサイクリンの投与に起因する。ドキソルビシンは、白金を用いた治療の失敗後に卵巣癌;原発性全身性化学療法の失敗または治療に対する不耐性後のカポジ肉腫;あるいは以前にボルテゾミブを受けなかった又は少なくとも1回の先の治療を受けた患者においてボルテゾミブと組み合わせた多発性骨髄腫、を有している患者を処置するために承認されているアントラサイクリントポイソメラーゼである。ドキソルビシンは、患者への合計の生涯投与量が550mg/m
2を超過する場合、うっ血性心不全につながり得る心筋障害を引き起こし得る。患者がさらに縦隔放射線照射または別の心臓毒性の薬物を受ける場合、心臓毒性は低用量でも生じ得る。製剤挿入物(drug product inserts)(例えば、DOXIL、ADRIAMYCIN)を参照。
【0229】
他の実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤は、慢性または長期の副作用を改善するために本明細書に提供されるような方法に使用され得る。慢性の毒性の副作用は、典型的に、長期間にわたる化学療法または放射線治療への複数回の曝露またはその適用に起因する。特定の毒作用は、処置のかなり後に現われ(遅発性毒作用とも呼ばれる)、治療による臓器または系への損傷に起因する。臓器機能不全(例えば、神経学的な、肺性、心臓血管、および内分泌腺の機能不全)は、小児期に癌の治療を受けた患者で観察されてきた(例えば、Hudson et al., JAMA 309:2371−81 (2013)を参照)。特定の理論に縛られることなく、老化細胞、特に化学療法または放射線治療によって老化を引き起こされた特定の正常細胞を破壊することによって、慢性の副作用の発生の可能性は低下され得るか、慢性の副作用の重症度は低下または縮小され得るか、あるいは慢性の副作用の発生の時間は遅れ得る。化学療法または放射線治療を受けた被験体に生じる慢性及び/又は遅発性の毒性の副作用は、限定しない例として、心筋症、うっ血性心疾患、炎症、早発閉経、骨粗鬆症、不妊症、認知機能の障害、末梢神経障害、二次癌、白内障および他の視覚問題、聴力損失、慢性疲労、肺活量の減少、および肺疾患、を含む。
【0230】
さらに、老化細胞破壊薬剤を投与することにより、癌を有する被験体において老化細胞を死滅させる又は除去することによって、化学療法または放射線治療に対する感受性は、老化細胞破壊薬剤が投与されなかった場合よりも、臨床的または統計的に有意な方法で高められ得る。言いかえれば、化学療法または放射線治療への耐性の発達は、老化細胞破壊薬剤がそれぞれの化学療法または放射線治療で処置された被験体に投与されるときに阻害され得る。
【0231】
年齢関連の疾患および障害。老化細胞破壊薬剤は、自然老化プロセスの一部として生じる又は被験体が老化誘発剤または因子(例えば、照射、化学療法、喫煙、高脂肪/糖分の多い食事、他の環境要因)にさらされるときに生じる年齢関連の疾患または障害を処置または予防する(即ち、発症の可能性を低下させる)のに有用であり得る。年齢関連の障害または疾患あるいは年齢に敏感な特性は、老化誘発性の刺激に関係し得る。本明細書に記載される処置の方法の効果は、老化誘発性の刺激に関係する年齢関連の障害または年齢に敏感な特性の症状の数を減少させることによって、1つ以上の症状の重症度を低下させることによって、または老化誘発性の刺激に関係する年齢関連の障害または年齢に敏感な特性の進行を遅らせることによって、明らかとなり得る。他の特定の実施形態では、老化誘発性の刺激に関係する年齢関連の障害または年齢に敏感な特性を予防することは、老化誘発性の刺激に関係する年齢関連の障害または年齢に敏感な特性の発症あるいは老化誘発性の刺激に関係する1つ以上の年齢関連の障害または年齢に敏感な特性の再発症を予防する又は遅らせる(即ち、発症の可能性を低下させる)ことを指す。年齢関連の疾患または疾病は、例えば、腎機能障害、脊柱後弯、椎間板ヘルニア、虚弱、脱毛、聴力損失、視力喪失(盲目または視覚の損傷)、筋疲労、皮膚疾患、皮膚母斑、糖尿病、メタボリック症候群、および筋肉減少症を含む。視力喪失は、被験体が前に有した視覚の欠如を指す。視力に基づいて視覚および視力喪失の範囲について記載するために、様々な尺度が開発されてきた。年齢関連の疾患および症状はまた、皮膚科学的疾病、例えば、限定することなく、以下の疾病の1つ以上を含む:表在性の小じわを含む、しわ;色素過剰症;瘢痕;ケロイド;皮膚炎;乾癬;湿疹(脂漏性湿疹を含む);酒さ;白斑;尋常性魚鱗癬;皮膚筋炎;および紫外線角化症。
【0232】
虚弱は、毎日または急性のストレス要因に対処する被験体の能力を損なう多数の生理系にわたって蓄え(reserve)および機能の老化関連の低下に起因する、増加した脆弱性の臨床的に認識可能な状態として定義されている。虚弱は、低握力、低エネルギー、目が覚める速度の低下、低身体活動、及び/又は意図しない体重減少などの、損なったエネルギー特性を特徴とし得る。研究は、5つの前述の特徴のうち3つが観察されるときに、患者が虚弱であると診断され得ることを示唆している(例えば、Fried et al., J. Gerontol. A Biol. Sci. Med, Sci. 2001;56(3):M146−M156; Xue, Clin. Geriatr. Med. 2011;27(1):1−15を参照)。特定の実施形態では、老化および老化に関連する疾患および障害は、老化細胞破壊薬剤を投与することによって処置または予防され得る(即ち、発症の可能性が低下される)。老化細胞破壊薬剤は、成体幹細胞の老化を阻害するか、あるいは老化した成体幹細胞の蓄積を阻害するか、成体幹細胞を死滅させるか、またはその除去を促進し得る。例えば、組織の再生能を維持するために幹細胞における老化を予防する重要性について記載する、Park et al., J. Clin. Invest. 113:175−79 (2004) and Sousa−Victor, Nature 506:316−21 (2014)を参照。
【0233】
本明細書に記載される老化関連の疾患または障害の処置に関する老化細胞破壊薬剤の有効性は、医療および臨床の技術分野における当業者によって容易に判定され得る。身体検査、患者の自己評価、臨床症状の評価およびモニタリング、臨床検査、体力テスト、および診査手術を含む分析的な試験および方法の遂行を含む、当業者に周知である、特別の疾患または障害に適切な診断法の1つ又はその任意の組み合わせは、例えば、被験体の健康状態および老化細胞破壊薬剤の有効性のモニタリングに使用されてもよい。本明細書に記載される処置の方法の効果は、老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物を受けた特定の疾患または障害を患う又はそのリスクのある患者の症状を、老化細胞破壊薬剤による処置を受けなかった又はプラセボ治療を受けた患者の症状と比較することなどの、当該技術分野に既知の技術を使用して分析され得る。
【0234】
医療技術分野の当業者によって理解されるように、用語「処置する」および「処置」は、被験体(即ち、患者)の疾患、障害、または疾病の医療管理を指す(例えば、Stedman's Medical Dictionaryを参照)。一般に、適切な投与および処置のレジメンは、治療的または予防的な恩恵を与えるのに十分な量で老化細胞破壊薬剤を提供する。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤が投与される被験体のための治療効果は、例えば、臨床結果の改善を含み、ここで、その目的は、疾患に関係する望まれない生理学的変化を予防する又は遅くする又は遅らせる(減少させる)ことであるか、あるいはそのような疾患の拡大または重症度を予防する又は遅くする又は遅らせる(減少させる)ことである。本明細書で議論されるように、1つ以上の老化細胞破壊薬剤の有効性は、限定されないが、処置される疾患に起因する又は関係する症状の軽減、減少、または緩和;症状の発症の減少;生活の質の改善;より長い無病状態(即ち、被験体が、疾患の診断がなされることに基づいて症状を示す可能性または傾向を減少させる);疾患の範囲の縮小;疾患の安定した(即ち、悪化しない)状態;疾患進行の遅れ又は遅延;疾患状態の改善または緩和;および検出可能であろうと不可能であろうと、緩解(部分または完全であろうと);及び/又は全生存、を含む有益な望ましい臨床結果を含み得る。本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の有効性はまた、被験体が、老化細胞を選択的に死滅させる老化細胞破壊薬剤を受けていなかった場合に、予期された生存と比較したときの生存の延長を意味し得る。
【0235】
本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の投与は、被験体が処置を受けていなかった場合に、予期された生存と比較したときの延長する生存を延長することができる。処置を必要としている被験体は、疾患または障害を有する傾向のある又はその危険性のある被験体、および疾患、疾病、または障害が予防的に処置される被験体と同様に、疾患または障害を既に有している被験体も含む。被験体は、老化細胞のクリアランスから恩恵を得るであろう疾患または障害を進行させる遺伝性素因を有し得るか、または老化細胞破壊薬剤の摂取が、年齢関連の疾患または障害を含む、疾患の発症を遅らせる又はその重症度を低下させる臨床効果を提供し得る特定の年齢であり得る。
【0236】
別の実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤による処置から恩恵を得るであろう被験体を特定する工程(即ち、表現型検査;個々に応じた治療)をさらに含む、老化関連の疾患または障害の処置のための方法が提供される。この方法は、被験体の特別の臓器または組織でのように被験体の老化細胞のレベルを最初に検出する工程を含む。生体サンプル、例えば、血液サンプル、血清、血漿サンプル、生検材料、体液(例えば、肺洗浄、腹水、粘膜洗液、関節液、硝子体液、髄液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、臓器培養、あるいは被験体からの他の組織または細胞製剤は、被験体から得られ得る。老化細胞のレベルは、本明細書に記載されるインビトロのアッセイまたは技術のいずれかに従って判定され得る。例えば、老化細胞は、形態(例えば、顕微鏡検査法によって見られるような);老化関連のマーカーの生成、細胞老化関連のβ−ガラクトシダーゼ(SA−β−Gal)、p16INK4a、p21、PAI−1、または1つ以上のSASP因子(例えば、IL−6、MMP3)によって検出され得る。生体サンプルの老化細胞および非老化細胞も、インビトロの細胞アッセイで使用され得、その中で、細胞は、非老化細胞に対する望まれない毒性なしで、被験体の老化細胞を死滅させる老化細胞破壊薬剤の能力を判定するために、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤のうちのいずれか1つに曝露される。これらのアッセイにおける陽性対照として、アッセイは、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤(例えば、ヌトリン−3a、RG−7112、ABT−263、ABT−737、WEHI−539、A−1155463、MK−2206のいずれか1つを組み込み得る。その後、被験体は、適切な老化細胞破壊薬剤で処置され得、これは、MDM2阻害剤;Bcl−xL(例えば、Bcl−xL選択的阻害剤、Bcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤、Bcl−2/Bcl−xLまたはBcl−xL/Bcl−w阻害剤)を阻害する1つ以上のBcl−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤;あるいはAkt特異的阻害剤、であり得る。さらに、これらの方法は、老化細胞破壊薬剤による処置の前、間、および後に、被験体の老化細胞のレベルをモニタリングするために使用されてもよい。特定の実施形態では、老化細胞の存在は、(例えば、mRNAの老化細胞マーカー発現のレベルを測定することによって)検出され得、それによって、処置コース及び/又は非処置間隔が調節され得る。
【0237】
本明細書に記載されるような老化細胞破壊薬剤による処置を必要としている、被験体、患者、または個体は、老化細胞関連の疾患または障害の症状を進行させた、または老化細胞関連の疾患または障害を進行させる危険性のある、ヒトまたはヒト以外の霊長類、あるいは他の動物(即ち、獣医用途)であり得る。処置され得るヒト以外の動物は、哺乳動物、例えば、ヒト以外の霊長類(例えば、猿、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯動物(例えば、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、シロイタチ、ウサギ)、ウサギ目の動物、家畜豚(例えば、豚、ミニチュアピッグ)、ウマで、イヌ、ネコ、ウシ、ゾウ、クマ、および他の飼育動物、家畜、および動物園動物、を含む。
【0238】
老化細胞破壊薬剤を特徴付ける及び識別するための方法
老化細胞破壊薬剤の特徴付けは、本明細書または当該技術分野で記載される及び当業者が精通するであろう、1つ以上の細胞ベースのアッセイおよび1つ以上の動物モデルを使用して決定され得る。老化細胞破壊薬剤は、統計的に有意な、臨床的に有意な、または生物学的に有意な方法で老化細胞を選択的に死滅させる又は破壊する薬剤である。老化細胞破壊薬剤は、老化細胞(例えば、老化前脂肪細胞、老化内皮細胞、老化線維芽細胞、老化ニューロン、老化上皮細胞、老化間充織細胞、老化平滑筋細胞、老化マクロファージ、または老化軟骨細胞)の1つ以上のタイプを選択的に死滅させ得る。ある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、少なくとも老化線維芽細胞を選択的に死滅させることができる。
【0239】
薬剤を老化細胞破壊薬剤として特徴付けることは、本明細書または当該技術分野で記載される1つ以上の細胞ベースのアッセイおよび1つ以上の動物モデルを使用して達成され得る。当業者は、薬剤を老化細胞破壊薬剤として特徴付けること薬剤によって死滅させるレベルを判定することが、検査薬の活性を適切な陰性対照(例えば、ビヒクルまたは希釈剤のみ及び/又は老化細胞を死滅させないと当該技術分野で知られている組成物または化合物)および適切な陽性対照と比較することによって達成され得ることを容易に認識するだろう。老化細胞破壊薬剤を特徴付けるためのインビトロの細胞ベースのアッセイはまた、薬剤の非老化細胞(例えば、休止細胞または増殖細胞)に対する効果を判定するための対照を含む。老化細胞破壊薬剤は、1つ以上の陰性対照と比較して、複数の老化細胞のパーセント生存率を低下させる(即ち、減少させる)(即ち、ある方法で、動物において又は細胞ベースのアッセイにおいて生存可能な老化細胞の量を減少させる)。特定のインビトロのアッセイのための条件は、温度、緩衝液(塩、陽イオン、培地を含む)、およびアッセイで使用される検査薬および試薬の完全性を維持する、および当業者によく知られている及び/又は容易に判定され得る、他の要素を含む。
【0240】
アッセイで使用するための老化細胞のソースは、初代細胞培養、または限定されないが、培養は、染色体に組み込まれた又はエピゾームの組み換えの核酸配列を含み得る遺伝子的に操作された細胞株、不死化した又は不死化可能な細胞株、体細胞雑種細胞株、分化した又は分化可能な細胞株、形質転換した細胞株などを含む、培養に適応した細胞株であり得る。特定の実施形態では、老化細胞は、老化細胞関連の疾患または障害を有する宿主または被験体から得られた生体サンプルから分離される。他の実施形態では、被験体から得られ得る又は培養に適応した細胞株であり得る、非老化細胞は、照射または化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)にさらされることなどによって、本明細書および当該技術分野で記載される方法によって使用され、老化が誘発され得る。生体サンプルは、血液サンプル、生検材料、体液(例えば、肺洗浄、腹水、粘膜洗液、関節液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養、あるいは被験体からの他の組織または細胞製剤であり得る。生体サンプルは、形態学的完全性または身体状態が、例えば、解剖、解離、可溶化、分画、均質化、生化学的または化学的な抽出、粉末化、凍結乾燥、音波処理、あるいは被験体または生物学的ソースに由来するサンプルを処理するための他の手段によって破壊されている、組織または細胞製剤であってもよい。被験体は、ヒトまたはヒト以外の動物であり得る。
【0241】
本明細書および当該技術分野で記載されるようなトランスジェニック動物モデルは、老化細胞の死滅または除去を判定するために使用され得る(例えば、Baker et al., supra; Nature, 479:232−36 (2011); 国際公開番号WO 2012/177927;国際公開番号WO 2013/090645を参照)。典型的なトランスジェニック動物モデルは、陽性対照としての老化細胞(例えば、p16
ink4aの陽性の老化細胞)の制御されたクリアランスを可能にする核酸を含む導入遺伝子を含有している。トランスジェニック動物中の老化細胞の存在およびレベルは、動物の老化細胞中で発現される、検出可能なラベルのレベルを測定することによって判定され得る。導入遺伝子のヌクレオチド配列は、老化細胞のクリアランスを検出するために、検出可能なラベル、例えば、赤色蛍光タンパク質;緑色蛍光タンパク質;および1つ以上のルシフェラーゼ、の1つ以上を含む。
【0242】
本明細書または当該技術分野で記載される動物モデルは、アテローム性動脈硬化モデル、変形性関節症モデル、COPDモデル、およびIPFモデルなどの、特定の老化関連の疾患または障害を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)ための老化細胞破壊薬剤の有効性を判定するための当該技術分野で承認されたモデルを含む。本明細書に記載されるように、ブレオマイシンの肺線維症モデルなどの肺疾患のネズミモデル、および慢性の喫煙モデルは、COPDなどの疾患に適用可能であり、当業者によって慣例的に実施され得る。化学療法および放射線治療の副作用モデルを処置及び/又は予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)、又は転移を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)老化細胞破壊薬剤の有効性を判定するための動物モデルは、国際公開番号WO 2013/090645およびWO 2014/205244に記載され、それらはその全体が引用によって本明細書に組み込まれる。眼疾患、特に加齢黄斑変性症を処置するための薬剤の有効性を判定するための動物モデルはまた、当業者によって慣例的に使用される(例えば、Pennesi et al., Mol. Aspects Med. 33:487−509 (2012); Zeiss et al., Vet. Pathol. 47:396−413 (2010); Chavala et al., J. Clin. Invest. 123:4170−81 (2013)を参照)。
【0243】
限定しない例として及び本明細書に記載されるように、変形性関節症の動物モデルが開発されてきている。変形性関節症は、例えば、前十字靱帯の、不完全または完全である、外科的切断によって膝において関節への損傷を引き起こすことによって、動物において引き起こされ得る。変形性関節症の動物モデルは、変形性関節症を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)、プロテオグリカン侵食の減少を引き起こす、コラーゲン(II型コラーゲンなど)産生を引き起こす(即ち、刺激、増強する)、およびACL手術を受ける動物の痛みを軽減する老化細胞破壊薬剤の有効性を評価するために使用されてもよい。関節中の組織および細胞の完全性および組成を検査するために、免疫組織学的検査(Immunohistology)が行われてもよい。本明細書に記載される及び当業者によって慣例的に実施され得る方法および技術を使用して、炎症分子(例えば、IL−6)のレベルを判定するためのアッセイ、および上述されるような老化マーカーのレベルの判定のためのアッセイなどの、免疫化学及び/又は分子生物学的な技術も実行されてもよい。
【0244】
別の限定しない例として及び本明細書に記載されるように、アテローム性動脈硬化の動物モデルが開発されてきている。アテローム性動脈硬化は、例えば、動物に高脂肪食を与えることによって、または進行するアテローム性動脈硬化に高度に弱いトランスジェニック動物を使用することによって、動物において引き起こされ得る。アテローム性動脈硬化の動脈においてプラークの量を減少する又はプラークの形成を阻害する、アテローム性動脈硬化プラークの脂質含有量を減少させる(即ち、プラーク中の脂質の量を減少させる、縮小する)、およびプラークの線維性被膜厚さを増大させる又は増強する老化細胞破壊薬剤の有効性を判定するために、動物モデルはが使用され得る。アテローム性動脈硬化血管における脂質のレベルを検出するために、ズダン染色が使用され得る。(例えば、炎症分子(例えば、IL−6)のレベルを判定するための、および上述されるような老化マーカーのレベルを判定するための)免疫組織学的および免疫化学的および分子生物学的なアッセイはすべて、本明細書に記載され及び当該技術分野で慣例的に実施される方法に従って実行され得る。
【0245】
さらに別の例において及び本明細書に記載されるように、動物がブレオマイシンで処置さるマウスモデルが、IPFを処置するための薬剤の有効性を判定するために記載されてきた(例えば、Peng et al., PLoS One 2013; 8(4):e59348. doi: 10.1371/journal.pone.0059348. Epub 2013 Apr 2; Mouratis et al., Curr. Opin. Pulm. Med. 17:355−61 (2011)を参照)。肺疾患の動物モデル(例えば、ブレオマイシンの動物モデル、喫煙曝露の動物モデルなど)において、エラスタンス、コンプライアンス(compliance)、静的コンプライアンス,および末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO
2)を判定するために、呼吸の測定が行われ得る。(例えば、炎症分子(例えば、IL−6)のレベルを判定するための、および上述されるような老化マーカーのレベルを判定するための)免疫組織学的および免疫化学的および分子生物学的なアッセイはすべて、本明細書に記載され及び当該技術分野で慣例的に実施される方法に従って実行され得る。
【0246】
動物モデルにおいて本明細書に記載されるような老化細胞を選択的に死滅させる老化細胞破壊薬剤の有効性の判定は、当業者が精通しているであろう1つ以上の統計分析を使用して行われ得る。例として、二元配置分散分析(ANOVA)などの統計分析が、薬剤で処置された動物群と薬剤で処置されていない動物群(即ち、ビヒクルのみ及び/又は非老化細胞破壊薬剤を含み得る、陰性対照群)との間の違いの統計的有意差を判定するために使用されてもよい。SPSS、MINITAB、SAS、Statistika、Graphpad、GLIM、Genstat、およびBMDPなどの、統計パッケージは、容易に入手可能であり、動物モデルの技術分野における当業者によって慣例的に使用される。
【0247】
当業者は、老化細胞破壊薬剤の特徴付け及び老化細胞破壊薬剤による死滅のレベルの判定が、検査薬の活性を適切な陰性対照(例えば、ビヒクルのみ及び/又は老化細胞を死滅させないと当該技術分野で知られている組成物、薬剤、または化合物)および適切な陽性対照と比較することによって達成され得ることを容易に認識するだろう。薬剤を特徴付けるためのインビトロの細胞ベースのアッセイはまた、非老化細胞(例えば、休止細胞または増殖細胞)に対する薬剤の効果を判定するための対照を含む。有用な老化細胞破壊薬剤は、1つ以上の陰性対照と比較して、老化細胞のパーセント生存率を低下させる(即ち、減少させる)(即ち、ある方法で、動物において又は細胞ベースのアッセイにおいて生存可能な老化細胞の量を減少させる)。したがって、老化細胞破壊薬剤は、非老化細胞の死滅と比較して、老化細胞を選択的に死滅させる(これは、非老化細胞よりも老化細胞を選択的に死滅させるものとして本明細書で引用され得る)。特定の実施形態では(インビトロのアッセイまたはインビボのいずれかでは(ヒトまたはヒト以外の動物において))、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では(インビトロのアッセイまたはインビボのいずれかでは(ヒトまたはヒト以外の動物において))、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%を死滅させ、非老化細胞の約5%または10%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では(インビトロのアッセイまたはインビボのいずれかでは(ヒトまたはヒト以外の動物において))、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%を死滅させ、非老化細胞の約5%、10%、または15%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では(インビトロのアッセイまたはインビボのいずれかでは(ヒトまたはヒト以外の動物において))、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、または65%を死滅させ、非老化細胞の約5%、10%、15%、20%、または25%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では(インビトロのアッセイまたはインビボのいずれかでは(ヒトまたはヒト以外の動物において))、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の少なくとも約50%、55%、60%、または65%を死滅させ、非老化細胞の約5%、10%、15%、20%、25%、または30%以下を死滅させる。言い換えると、老化細胞破壊薬剤は、非老化細胞(例えば、少なくとも5x、10x、20x、25x、30x、40x、50x、60x、75x、80x、90x、または100x)よりも、少なくとも5−25、10−50、または10−100倍(5x−25x、10x−50xまたは10x−100x)以上、老化細胞を選択的に死滅させる。老化関連の疾患または障害を処置するために本明細書に記載される方法の具体的な実施形態に関して、死滅されたパーセント老化細胞は、該疾患または障害の発症、進行、及び/又は悪化に一因となる老化細胞を含む組織または臓器において死滅されたパーセント老化細胞を指し得る。限定しない例として、脳の組織、眼の組織および部分、肺組織、心臓組織、動脈、関節、皮膚、および筋肉は、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤によって上に記載されるようなパーセントで減少され得、それにより治療効果を提供し得る、老化細胞を含み得る。さらに、影響を受けた組織また臓器から老化細胞の少なくとも20%または少なくとも25%を選択的に除去することには、臨床的に有意な治療効果があり得る。老化細胞破壊薬剤を投与することによって、アテローム性動脈硬化症などの、動脈硬化に関係する心臓の疾患または障害を処置するなどのための、本明細書に記載される方法の具体的な実施形態に関して(即ち、上記のインビボの方法に関して)、死滅されたパーセント老化細胞は、動脈プラークにおいて死滅された非老化細胞に対する、プラークを含有している影響を受けた動脈におけるパーセント老化細胞を指し得る。ある特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化症などの心疾患を処置するための方法において、本明細書で記載されるように、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、動脈において老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、動脈硬化の動脈において老化細胞の少なくとも25%を選択的に死滅させる。別の実施形態では、老化細胞破壊薬剤を投与することによって変形性関節症を処置するための本明細書に記載される方法に関して、死滅されたパーセント老化細胞は、骨関節炎の関節において死滅された非老化細胞に対する、骨関節炎の関節において死滅されたパーセント老化細胞を指し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるような変形性関節症を処置するための方法において、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、骨関節炎の関節において老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、骨関節炎の関節において老化細胞の少なくとも25%を選択的に死滅させる。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤を投与することによって老化関連の肺の疾患または障害(例えば、COPD、IPF)を処置するための本明細書に記載される方法に関して、死滅されたパーセント老化細胞は、影響を受けた肺の肺組織において死滅された非老化細胞に対する、影響を受けた肺組織において死滅されたパーセント老化細胞を指し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるような老化関連の肺の疾患および障害を処置するための方法において、老化細胞破壊薬剤は、影響を受けた肺組織において老化細胞の少なくとも20%を死滅させ、非老化細胞の5%以下を死滅させる。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、影響を受けた肺組織において老化細胞の少なくとも25%を選択的に死滅させる。
【0248】
特定の実施形態では、老化関連の疾患または障害を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる)ための有用な老化細胞破壊薬剤である薬剤を識別する(即ち、スクリーニングする)ための方法が提供される。一実施形態では、そのような疾患および障害を処置するための老化細胞破壊薬剤を識別する方法は、樹立老化細胞を提供するために細胞の老化を引き起こす工程を含む。細胞の老化を引き起こすための方法は、本明細書および当該技術分野で記載され、例えば、放射線(例えば、典型的に10Gyが十分である)または化学療法剤(例えば、ドキソルビシンまたは他のアントラサイクリン)の曝露を含む。薬剤への曝露後、細胞は、適切な時間の間および適切な条件(例えば、与えられた細胞型または細胞株に適切な、培地、温度、CO
2/O
2レベル)下で培養され、それによって、老化が確立される。本明細書で議論されるように、細胞の老化は、形態(例えば、顕微鏡検査法によって見られるような)の変化;例えば、老化関連のβ−ガラクトシダーゼ(SA−β−Gal)、p16ink4a、p21、または1つ以上のSASP因子(例えば、IL−6、MMP3)の生成、などの任意の数の特性を判定することによって決定され得る。その後、老化細胞のサンプルが、候補薬剤と接触させられる(即ち、混合される、組み合わせられる、または細胞および薬剤が相互作用することを可能にする)。当業者は、アッセイが、歴史的であろうと同時に行われようと、適切な陰性対照および陽性対照を含むことを認識するだろう。例えば、老化細胞と同様に培養されたが、老化誘発剤にさらされなかった、対照の非老化細胞のサンプルが、候補薬剤と接触させられる。老化細胞の生存のレベが判定され、非老化細胞の生存のレベルと比較される。老化細胞破壊薬剤は、老化細胞の生存のレベルが非老化細胞の生存のレベル未満であるときに識別される。
【0249】
特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤を識別するための上に記載される方法は、老化細胞破壊薬剤が変形性関節症を処置するのに有用であるかを識別するための工程をさらに含み得る。該方法は、識別された老化細胞破壊薬剤とコラーゲンを生成することができる細胞とを接触させる工程;および細胞によって生成されたコラーゲンのレベルを判定する工程、をさらに含み得る。特定の実施形態では、細胞は軟骨細胞であり、コラーゲンはII型コラーゲンである。該方法は、関節に関節炎病変を有するヒト以外の動物に候補老化細胞破壊薬剤を投与する工程、および(a)関節における老化細胞のレベル;(b)動物の身体機能;(c)炎症の1つ以上のマーカーのレベル;(d)関節の組織構造;および(e)生成されたII型コラーゲンのレベル、の1つ以上を判定する工程であって、それによって、老化細胞破壊薬剤の治療有効性を判定する工程をさらに含み得、ここで、以下の1つ以上が、老化細胞破壊薬剤により処置されていない動物と比較して、処置された動物において観察される:(i)処置された動物の関節における老化細胞のレベルの減少;(ii)処置された動物の身体機能の改善;(iii)処置された動物における炎症の1つ以上のマーカーのレベルの減少;(iv)処置された動物の関節における組織学的正常性の増大;および(v)処置された動物において生成されたII型コラーゲンのレベルの増加。本明細書および当該技術分野で記載されるように、動物の身体機能は、例えば、影響を受けた肢への負荷に対する動物の耐性または熱さ又は冷たさなどの不快な刺激から逃れる動物の能力による、誘発された又は天然の骨関節炎の疾病に対する脚の感受性を判定する技術によって判定され得る。動物モデルにおいて本明細書に記載されるような老化細胞を死滅させる薬剤の有効性の判定は、当業者が精通しているであろう1つ以上の統計分析を使用して行われ得る。本明細書に記載される及び当該技術分野で慣例的に実施されるような統計分析は、データの分析に適用され得る。
【0250】
別の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤を識別するための上に記載される方法は、老化細胞破壊薬剤が、動脈硬化症によって引き起こされたか又はそれに関係する心疾患を処置するのに有用であるかを識別する工程をさらに含む。したがって、該方法は、プラークの量を減少する、アテローム性動脈硬化の動脈におけるプラークの形成を阻害する、アテローム性動脈硬化プラークの脂質含有量を減少する(即ち、プラークにおける脂質の量を減少する、縮小する)、及び/又はプラークの線維性被膜厚さを増大させる又は増強する薬剤の有効性を判定するために、動物モデルのヒト以外の動物に候補老化細胞破壊薬剤を投与する工程をさらに含み得る。アテローム性動脈硬化血管における脂質のレベルを検出するために、ズダン染色が使用され得る。炎症分子(例えば、IL−6)のレベルを判定するためのアッセイ、及び/又は上述されるような老化マーカーのレベルの判定のためのアッセイである、免疫組織学的検査はすべて、本明細書に記載される及び当該技術分野で慣例的に実施される方法に従って行われ得る。特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤を識別するための本明細書に記載される方法は、アテローム性動脈硬化プラークを有するヒト以外の動物に候補老化細胞破壊薬剤を投与する工程および(a)動脈における老化細胞のレベル;(b)動物の身体機能;(c)炎症の1つ以上のマーカーのレベル;(d)影響を受けた血管(例えば、動脈)の組織構造、の1つ以上を判定する工程であって、それによって、老化細胞破壊薬剤の治療有効性を判定する工程、をさらに含み、ここで、以下の1つ以上が、老化細胞破壊薬剤により処置されていない動物と比較して、処置された動物において観察される:(i)処置された動物の動脈における老化細胞のレベルの減少;(ii)処置された動物の身体機能の改善;(iii)処置された動物における炎症の1つ以上のマーカーのレベルの減少;(iv)処置された動物の動脈における組織学的正常性の増大。本明細書および当該技術分野で記載されるように、動物の身体機能は、身体活動を測定することによって判定され得る。本明細書に記載される及び当該技術分野で慣例的に実施されるような統計分析は、データの分析に適用され得る。
【0251】
一実施形態では、老化細胞破壊薬剤を識別するための本明細書に記載される方法は、ブレオマイシンモデルまたは喫煙曝露の動物モデルなどのヒト以外の動物の肺疾患モデルに候補老化細胞破壊薬剤を投与する工程および(a)肺における老化細胞のレベル;(b)動物の肺機能;(c)炎症の1つ以上のマーカーのレベル;(d)肺組織の組織構造、の1つ以上を判定する工程であって、それによって、老化細胞破壊薬剤の治療有効性を判定する工程、をさらに含み、ここで、以下の1つ以上が、老化細胞破壊薬剤により処置されていない動物と比較して、処置された動物において観察される:(i)処置された動物の肺および肺組織における老化細胞のレベルの減少;(ii)処置された動物の肺機能の改善;(iii)処置された動物における炎症の1つ以上のマーカーのレベルの減少;および(iv)処置された動物の肺組織における組織学的正常性の増大。エラスタンス、コンプライアンス、静的コンプライアンス,および末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO
2)を判定するために、呼吸の測定が行われ得る。肺機能は、予備呼気量(ERV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気肺活量(FEV)(例えば、1秒でのFEV、FEV1)、FEV1/FEV比率、努力呼気流量25%乃至75%、および最大随意換気量(MVV)、ピーク呼気流量(PEF)、遅い肺活量(SVC)などの、多数の測定のいずれか1つを判定することによって評価され得る。全肺気量は、総肺気量(TLC)、肺活量(VC)、残気量(RV)、および機能的残気量(FRC)を含む。肺胞毛細血管膜にわたるガス交換は、一酸化炭素拡散能(DLCO)を使用して測定され得る。末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO
2)も測定され得る。本明細書に記載される及び当該技術分野で慣例的に実施されるような統計分析は、データの分析に適用され得る。
【0252】
老化細胞破壊薬剤を識別する及び特徴付けるために本明細書に記載されるインビトロのアッセイおよびインビボのアッセイ(例えば、動物モデル)は、陽性対照として本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤(例えば、ヌトリン−3a、RG−7112、ABT−263、ABT−737、WEHI−539、A−1155463、MK−2206)のいずれか1つを含み得る。特定のインビトロのアッセイのための条件は、温度、緩衝液(塩、陽イオン、培地を含む)、およびアッセイで使用される検査薬および試薬の完全性を維持する、および当業者によく知られている及び/又は容易に判定され得る、他の要素を含む。本明細書に記載されるアッセイおよび技術も、薬剤開発の間に及び品質保証のために慣例的に行われる、毒性分析法、品質管理アッセイなどに使用され得る。これらの方法および目的のための動物モデルは、ヒト以外の霊長類モデル、イヌモデル、げっ歯動物モデル、または老化細胞破壊薬剤の安全性および有効性を判定するのに適切な他の動物モデルを含み得る。
【0253】
医薬組成物
本明細書にはまた、本明細書に記載されるように、老化細胞破壊薬剤(例えば、MDM2阻害剤;Bcl−xL(例えば、Bcl−xL選択的阻害剤、Bcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤、Bcl−2/Bcl−xLまたはBcl−xL/Bcl−w阻害剤)を阻害する1つ以上のBcl−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーの阻害剤、あるいはAkt特異的阻害剤)および薬学的に適切な賦形剤または担体(即ち、有効成分の活性を妨害しない無毒な物質)とも呼ばれ得る、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、あるいはエマルジョン(例えば、マイクロエマルジョン)であり得る。本明細書に記載される賦形剤は、例であり、決して限定するものではない。有効な量あるいは治療上有効な量は、望ましい治療効果を生むのに有効である、単回投与または一連の投与の一部として、被験体に投与された1つ以上の老化細胞破壊薬剤の量を指す。
【0254】
2つ以上の老化細胞破壊薬剤が、本明細書に記載される疾患または障害の処置のために被験体に投与されるときに、老化細胞破壊薬剤の各々は、個別の医薬組成物へと処方され得る。(便宜上、例えば、第1老化細胞破壊薬剤および第2老化細胞破壊薬剤の各々を含む第1医薬組成物および第2医薬組成物と呼ばれ得る)個別の医薬組成物の各々を含む、医薬製剤が調製され得る。調製における医薬組成物の各々は、同時に(即ち、共に)および同じ投与経路を介して投与され得るか、あるいは同じ又は異なる投与経路によって異なる時間に投与され得る。代替的に、2つ以上の老化細胞破壊薬剤は、単一の医薬組成物中で一緒に製剤され得る。
【0255】
他の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤およびmTOR、NFκB、またはPI3kの経路の少なくとも1つの阻害剤の組み合わせは、それを必要としている被験体に投与され得る。少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤およびmTOR、NFκB、またはPI3kの経路の1つ以上の阻害剤が両方とも、老化細胞を選択的に死滅させるために本明細書に記載される方法でともに使用されるとき、老化細胞破壊薬剤の各々は、同じ医薬組成物へと製剤され得るか、または個別の医薬組成物に製剤され得る。便宜上、例えば、第1老化細胞破壊薬剤およびmTOR、NFκB、またはPI3kの経路の1つ以上の阻害剤の各々をそれぞれ含む第1医薬組成物および第2医薬組成物と呼ばれ得る、個別の医薬組成物の各々を含む、医薬製剤が調製され得る。調製における医薬組成物の各々は、同時に及び同じ投与経路を介して投与され得るか、あるいは同じ又は異なる投与経路によって異なる時間に投与され得る。
【0256】
特定の実施形態では、単一の老化細胞破壊薬剤は、被験体に投与され、疾病また疾患の処置に使用される単一(即ち、唯一)の活性老化細胞破壊薬剤(即ち、単独療法)である。老化細胞破壊薬剤が単一の老化細胞破壊薬剤であるとき、緩和薬剤または快適さのために使用される薬剤などの他の目的のための薬剤、またはコレステロールを低下させるための薬物または目の湿潤剤などの、老化細胞破壊薬剤ではない特定の疾患または症状を処置するための薬剤、および医療技術分野の当業者によく知られている他の薬剤の使用は、必ずしも除外されない。肺疾患(例えば、COPD)を有する被験体に投与され得る他の薬剤および薬物の例は、限定しない例として、気管支拡張薬(例えば、抗コリン作動薬;ベータ−2アゴニスト);鎮痛薬、を含む。変形性関節症の被験体に投与され得る薬剤および薬物は、ヒアルロナン、鎮痛剤(局所用薬剤を含む)、およびステロイドを含む。心疾患の被験体に投与され得る他の薬剤および薬物は、スタチン、ベータ遮断薬、ニトログリセリン(nitroglyercin)、アスピリンを含む。
【0257】
被験体は、一般に、処置されている疾病に適したアッセイおよび方法を使用して治療有効性のためにモニタリングされ得、そのアッセイは、当業者に精通され、本明細書に記載される。被験体に投与される老化細胞破壊薬剤(またはその1つ以上の代謝物質)の薬物動態は、生体液、、例えば、血液、血液分画(例えば、血清)、及び/又は尿、及び/又は被験体からの他の生体サンプルまたは生体組織において、老化細胞破壊薬剤のレベルの判定することによってモニタリングされ得る。薬剤を検出するための当該技術分野で実施される及び本明細書に記載される任意の方法が、処置コース中に老化細胞破壊薬剤のレベルを判定するために使用されてもよい。
【0258】
老化細胞関連の疾患または障害を処置するために本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の用量は、被験体の状態、すなわち、疾患のステージ、疾患によって引き起こされる症状の重症度、健康状態、さらに年齢、性別、および体重、並びに医療技術分野の当業者に明白な他の因子に依存し得る。医薬組成物は、医療技術分野の当業者によって判定されるように処置される疾患に適切な方法で投与され得る。本明細書に記載される及び上述の老化関連の疾患または障害を処置するための老化細胞破壊薬剤の使用に関連する因子に加えて、老化細胞破壊薬剤の投与の適切な期間および頻度も、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重症度、有効成分の特定の形態、および投与の方法のような因子によって判定または調整され得る。薬剤の最適用量は、一般に、実験モデル及び/又は臨床試験を使用して決定され得る。最適用量は、被験体の体質量、体重、または血液量に依存し得る。有効な治療を提供するのに十分な最小量の使用が通常好まれる。本明細書に記載される(予防的な恩恵のために投与されるときを含む)老化細胞破壊薬剤のための前臨床および臨床の研究の設計および実行は、関連する当業者の十分技術内にある。2つ以上の老化細胞破壊薬剤が、老化関連の疾患または障害を処置するために投与されるとき、各老化細胞破壊薬剤の最適用量は、各老化細胞破壊薬剤が単回の薬剤治療として単独で投与されるときよりも少ないなど、異なり得る。ある特定の実施形態では、2つの老化細胞破壊薬剤の併用は、相乗的または付加的に作用し(make act)、一方の薬剤は、単独で投与された場合に、より少ない量で使用され得る。1日当たり投与され得る老化細胞破壊薬剤の量は、例えば、約0.01mg/kg乃至100mg/kg(例えば、約0.1乃至1mg/kg、約1乃至10mg/kg、約10−50mg/kg、約50−100mg/kg)の間の重量であり得る。他の実施形態では、1日当たり投与され得る老化細胞破壊薬剤の量は、約0.01mg/kg乃至1000mg/kgの間、約100乃至500mg/kgの間、または約500乃至1000mg/kgの間の重量であり得る。特定の実施形態では、各処置サイクルの処置コースごとに投与された、MDM2阻害剤(例えば、ヌトリン−3a)の合計量、老化細胞破壊薬剤の合計量は、2100mg/kgを超過せず;他の実施形態では、処置コースごとに投与された合計量は、1400mg/kgを超過しない。最適用量(1日当たり、または処置コースごと)は、処置される老化関連の疾患または障害によって異なり得、投与経路および治療レジメンに応じても様々であり得る。
【0259】
老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物は、当該技術分野で慣例的に実施される技術の使用によって送達方法に適切な方法で製剤され得る。組成物は、固体(例えば、錠剤、カプセル)、半固体(例えば、ゲル)、液体、または気体(エアロゾル)の形態であり得る。他の特定の具体的な実施形態では、老化細胞破壊薬剤(またはそれを含む医薬組成物)は、ボーラス注入として投与される。老化細胞破壊薬剤が注入によって送達されるときの特定の実施形態において、老化細胞破壊薬剤は、医療技術分野の当業者によって慣例的に実行される技術に従って、血管を介して死滅される老化細胞を含む臓器または組織に送達される。
【0260】
薬学的に許容可能な賦形剤は、薬学の技術分野において周知であり、例えば、Rowe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients: A Comprehensive Guide to Uses, Properties, and Safety, 5
th Ed., 2006, and in Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro, 21
st Ed. Mack Pub. Co., Easton, PA (2005)に記載される。典型的な薬学的に許容可能な賦形剤は、生理学的なpHで無菌生理食塩水およびリン酸緩衝食塩水を含む。保存剤、安定剤、染料、バッファーなどは、医薬組成物中に提供され得る。さらに、抗酸化剤および懸濁化剤も使用されてもよい。一般に、賦形剤のタイプは、有効成分の化学組成の他に、投与の様式にも基づいて選択される。代替的に、本明細書に記載される組成物は、凍結乾燥体として製剤され得る。本明細書に記載される組成物は、投与後に、凍結乾燥され得るか、さもなければ、組成物の薬剤を可溶性にする及び/又は希釈するために1つ以上の適切な賦形剤溶液を使用して、凍結乾燥した生成物として製剤され得る。他の実施形態では、薬剤は、当該技術分野で既知である及び実施される技術を使用して、リポソーム内にカプセル化され得る。ある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤(例えば、ABT−263)は、高度に、完全にではないが、閉塞した動脈の処置に使用されるステントへの適用のためにリポソーム内に製剤されることはない。医薬組成物は、本明細書および当該技術分野で記載される投与の任意の適切な方法のために製剤され得る。
【0261】
医薬組成物は、当業者に既知の幾つかの経路のいずれか1つによって、必要としている被験体に送達され得る。限定しない例として、組成物は、経口、静脈内、腹腔内、注入(例えば、ボーラス注入)、皮下、腸内、直腸、鼻腔内、吸入、頬側、舌下腺、筋肉内、経皮、皮内、局所、眼内、膣、直腸、または頭蓋内の注入によって、あるいはそれらの任意の組み合わせで送達され得る。ある特定の実施形態では、用量の投与は、上に記載されるように、静脈内、腹腔内を介するか、標的の組織または臓器に直接であるか、あるいは皮下経路である。特定の実施形態では、送達方法は、老化細胞破壊薬剤である薬物をコーティングした又は浸透させたステントを含む。そのような送達方法に適した製剤は、本明細書でより詳細に記載される。
【0262】
ある特定の実施形態では、(少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わされて、医薬組成物を形成する)老化細胞破壊薬剤は、疾患または障害の発現の一因である老化細胞を含む標的の組織または臓器に直接投与される。変形性関節症を処置するときの特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤は、必要としている被験体の骨関節炎の関節(即ち、関節内)に直接投与される。他の具体的な実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、局所、経皮、皮内、または皮下経路によって関節に投与され得る。他の特定の実施形態では、動脈に直接投与することによって、アテローム性動脈硬化症などの、動脈硬化に関係する心臓の疾患または障害を処置するための方法が本明細書に提供される。別の特定の実施形態では、老化関連の肺の疾患または障害を処置するための(少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わされて、医薬組成物を形成する)老化細胞破壊薬剤は、例えば、影響を受けた肺組織に、より直接的に老化細胞破壊薬剤を提供するために、吸入、鼻腔内、挿管によって、あるいは気管内に投与され得る。別の限定しない例として、老化細胞破壊薬剤(または老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物)は、注入(例えば、眼内または硝子体内)、あるいはクリーム、軟膏、ゲル、または点眼剤の眼瞼の下の結膜への適用によって眼に直接送達され得る。より特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤または老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物は、持続放出(徐放性、制御放出とも呼ばれる)の組成物として製剤され得るか、あるいはボーラス注入として投与され得る。
【0263】
(例えば、経口投与のための又は注射、注入、皮下送達、筋肉内送達、腹腔内送達、あるいは他の方法のための)医薬組成物は、液体の形態であり得る。液体の医薬組成物は、例えば、以下の1つ以上を含み得る:水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張食塩水、溶媒または懸濁媒として働き得る不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、あるいは他の溶媒などの、無菌の希釈剤;抗菌剤;抗酸化剤;キレート剤;塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調節するためのバッファーおよび薬剤。非経口組成物は、ガラスまたはプラスチックで作られた、アンプル、使い捨て注射器、または多人数用バイアルに封入され得る。生理食塩水の使用が好まれ、注射可能な医薬組成物は、好ましくは無菌である。別の実施形態では、眼の疾病または疾患の処置のために、液体の医薬組成物は、点眼剤の形態で眼に適用され得る。液体の医薬組成物は、経口で送達され得る。
【0264】
経口製剤に関して、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤の少なくとも1つは、単独で又は錠剤、粉末剤、果粒剤またはカプセル剤を作るために適切な添加剤と組み合わせて使用され得、もし望まれれば、賦形剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、着色剤、および香味剤とともに使用され得る。化合物は、胃環境の低いpHからの化合物の保護及び/又は腸溶コーティングを提供するために、緩衝剤で製剤され得る。医薬組成物に含まれる老化細胞破壊薬剤は、例えば、液体、固体または半固体の製剤において香味剤とともに及び/又は腸溶コーティングで経口送達のために製剤され得る。
【0265】
本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤のいずれか1つを含む医薬組成物は、徐放性または遅効性(持続放出または制御放出とも呼ばれる)のために製剤され得る。そのような組成物は、一般に、周知の技術を使用して調製され得、望ましい標的部位で、例えば、経口、直腸、皮内、皮下の注入、あるいは移植によって投与され得る。徐放性製剤は、担体マトリックス中に分散された及び/又は律速膜に囲まれたリザーバー(reservoir)内に含まれた化合物を含有し得る。そのような製剤内での使用のための賦形剤は、生物学的適合性があり、生物分解性でもあり得;好ましくは、製剤は、比較的一定なレベルの有効成分の放出を提供する。徐放性製剤内に含まれた活性薬剤の量は、移植の部位、放出の速度および予期される期間、および処置または予防される疾病、疾患、または障害の性質に依存する。
【0266】
特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物は、経皮、皮内、または局所の投与のために製剤される。組成物は、粉末/タルクまたは他の固形物、液体、スプレー、エアロゾル、軟膏、泡、クリーム、ゲル、ペーストとして、シリンジ、包帯、経皮貼布、インサート(insert)、あるいはシリンジ状の塗布用具を使用して投与され得る。これは、好ましくは、局所に投与された、あるいは処置される領域に隣接する又は領域内の皮膚に直接注入された(皮内または皮下に)、制御放出製剤または徐放性製剤の形態であり得る。活性組成物もイオン注入によって送達され得る。保存剤は、菌類および他の微生物の成長を防ぐために使用され得る。適切な保存剤は、限定されないが、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、チメロサール、およびそれらの組み合わせ、を含む。
【0267】
老化細胞破壊薬剤を含む医薬組成物は、局所適用のためのエマルジョンとして製剤され得る。エマルジョンは、別の液体の本体に分配された1つの液体を含有する。エマルジョンは、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンであり得る。油相および水相のどちらか又は両方は、1つ以上の界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、バッファー、および他の賦形剤を含有し得る。油相は、他の油性の薬学的に承認された賦形剤を含有し得る。適切な界面活性剤は、限定されないが、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を含む。局所適用のための組成物はまた、少なくとも1つの適切な懸濁化剤、抗酸化剤、キレート剤、皮膚軟化剤、または湿潤剤を含み得る。
【0268】
軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤の追加とともに水性または油性の塩基で製剤され得る。ローション剤は、水性または油性の塩基で製剤され得、一般に、1つ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤も含む。液体スプレーは、例えば、特別に形作られたクロージャー(closure)を介して、加圧パックから送達され得る。水中油型エマルジョンはまた、組成物、貼付剤、包帯および物品(articles)において使用され得る。これらのシステムは、半固体のエマルジョン、マイクロエマルジョン、または泡状のエマルジョンのシステムである。
【0269】
幾つかの実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、油脂性基剤か軟膏剤で製剤されて、所望の形状を有する半固体の組成物を形成し得る。老化細胞破壊薬剤に加えて、これらの半固体の組成物は、溶解された及び/又は懸濁された殺菌剤、保存剤及び/又は緩衝系を含有することができる。含まれ得るワセリン成分は、イソブチレン、コロイダル・シリカ、またはステアリン酸塩を組み込む鉱油からパラフィンワックスまでの粘度の範囲に及ぶパラフィンであり得る。吸水性基剤は、油性システムとともに使用され得る。添加剤は、コレステロール、ラノリン(ラノリン誘導体、蜜ろう、脂肪族アルコール、ウールワックスアルコール、低いHLB(疎水性と疎油性のバランス(hydrophobellipophobe balance))の乳化剤、および分類したイオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を、単独で又は組み合わせで含み得る。
【0270】
制御放出または徐放性の経皮または局所の製剤は、当該技術分野で利用可能である、高分子構造、マトリックスなどの、持続放出の添加剤の追加によって達成され得る。例えば、組成物は、生体付着性ホットメルト押出フィルムなどの、ホットメルト押出物の使用によって投与され得る。製剤は、架橋されたポリカルボン酸ポリマー製剤を含むことができる。架橋剤は、化合物の所望の放出を可能にする十分な時間の間、標的の上皮または内皮の細胞表面にシステムを付けたままにすることができる十分な付着性を提供する量で存在し得る。
【0271】
インサート、経皮貼布、包帯あるいは物品は、長期間にわたって一定の速度で活性薬剤の放出を提供するポリマーの混合物またはコーティングを含むことができる。幾つかの実施形態では、記事、経皮貼布、またはインサートは、インサートの耐久性を増加させるために及び有効成分の放出を延長するために水不溶性ポリマーと混合され得るポリエチレングリコール(PEG)などの、水溶性の気孔生成剤を含む。
【0272】
経皮デバイス(インサート、貼付剤、包帯)もまた、水不溶性ポリマーを含み得る。律速ポリマーは、pH変更が放出を達成する使用され得る部位への投与に有用であり得る。これらの律速ポリマーは、活性化合物でのスプレーおよび乾燥のプロセスの間に連続的な膜コーティングを使用して適用され得る。一実施形態では、コーティング製剤は、固体の生分解性のインサートを形成するために圧縮される有効成分を含むペレット剤をコーティングするために使用される。
【0273】
ポリマー製剤も、制御放出または徐放を提供するために利用され得る。当該技術分野で記載される生体付着性ポリマーが使用され得る。例として、徐放性のゲルおよび化合物は、疎水性ポリマーマトリックスなどの、ポリマーマトリックスに組み込まれ得る。ポリマーマトリックスの例は、微粒子を含む。微粒子はミクロスフェアであり得、コアは、ポリマーシェルとは異なる材料で構成され得る。代替的に、ポリマーは、薄いスラブまたは膜、粉砕または他の標準の技術によって生成された粉末、あるいはヒドロゲルなどのゲルとして鋳造され(cast)得る。ポリマーはまた、コーティング、または包帯、ステント、カテーテル、人工血管、または老化細胞破壊薬剤の送達を促進する他のデバイスの一部の形態であり得る。マトリックスは、当業者に知られていた、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、および当業者に既知の他の方法によって形成され得る。
【0274】
動脈硬化症に関係する又はそれによって引き起こされる心疾患の治療のために本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、1つ以上の老化細胞破壊薬剤は、ステントを介して血管(例えば、動脈)へと直接送達され得る。特定の実施形態では、ステントは、アテローム性動脈硬化の血管(動脈)に老化細胞破壊薬剤を送達するために使用される。ステントは、典型的に、管状の金属デバイスであり、これは、薄い金属製スクリーン様の足場(scaffold)を有し、圧縮した形態で差し込まれ、その後、標的部位で拡張される。ステントは、膨張した血管の長期的な支持を提供するように意図される。薬物がコーティングされた及び埋め込まれたステントを準備するための幾つかの方法が当該技術分野で記載される。例えば、老化細胞破壊薬剤は、ステントに適用されたポリマー層に組み込まれ得る。単一タイプのポリマーが使用されてもよく、老化細胞破壊薬剤が浸透したポリマーの1つ以上の層が、老化細胞破壊薬剤がコーティングされたステントを形成するために金属ステントに適用され得る。老化細胞破壊薬剤はまた、本明細書で老化細胞破壊薬剤が浸透したステントまたは老化細胞破壊薬剤が埋め込まれたステントとも呼ばれる、金属ステント自体の穴に組み込まれてもよい。ある特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、リポソーム内に製剤され、ステントに適用され得;他の特定の実施形態では、例えば、老化細胞破壊薬剤がABT−263である場合、ABT−263は、リポソーム中に製剤されない。アテローム性動脈硬化の動脈におけるステントの配置は、医療技術分野の当業者によって実行される。老化細胞破壊薬剤がコーティングされた又は埋め込まれたステントは、影響を受けた血管(例えば、動脈)を膨脹させるだけでなく、特に薬剤がコーティングされた又は埋め込まれたステントに近位のプラークに関して、(1)プラークの量を減少すること、(2)プラークの形成を阻害すること、および(3)(例えば、プラークの脂質含有量を減少させることによって;及び/又は線維性被膜厚さを増大させることによって)プラークの安定性を増加させること、の1つ以上に有効であり得る。
【0275】
1つの特定の実施形態では、眼の老化に関連する疾患または障害を有する被験体に投与される老化細胞破壊薬剤は、眼内または硝子体内に送達され得る。他の特定の実施形態では、老化細胞破壊薬剤は、下瞼、上瞼、またはその両方の粘膜および組織に老化細胞破壊薬剤を適用する、結膜経路によって眼に投与され得る。これらの投与のいずかは、ボーラス注入であり得る。他の特定の実施形態では、本明細書に記載される老化細胞破壊薬剤のいずれか1つを含む医薬組成物は、徐放性または遅効性(持続放出または制御放出とも呼ばれる)のために製剤され得。その製剤は、本明細書でより詳細に記載される。特定の実施形態では、眼の疾患、障害、または疾病(例えば、老眼、白内障、黄斑変性)を処置または予防する(即ち、その発症の可能性を低下させる;その発症または進行を遅らせる、またはその進行または重症度を阻害する、遅らせる、遅くする、あるいは妨害する)ための;(少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わされて、医薬組成物を形成し得る)少なくとも1つの老化細胞破壊薬剤を眼に直接投与することによって、被験体の眼において老化細胞を選択的に死滅させる、及び/又はそれを必要としている被験体の眼においてコラーゲン(IV型コラーゲンなど)生成を引き起こすための方法が、本明細書に提供される。
【0276】
核酸分子を含む医薬組成物に関して、核酸分子は、核酸を含む、当業者に既知の様々な送達系、および例えば、本明細書に提供されるような組み換えの発現構築物などの、細菌性、ウイルス性、および哺乳類の発現系のいずれか内に存在し得る。そのような発現系にDNAを組み込むための技術は、当業者に周知である。DNAはまたは、例えば、Ulmer et al., Science 259:1745−49, 1993に記載されるように、およびCohen, Science 259:1691−92, 1993によって検討されているように、「裸」であり得る。裸のDNAの取り込みは、生物分解性のビード上にDNAをコーティングすることによって増加され得、これは細胞へと効率的に輸送される。核酸分子は、当該技術分野で記載される幾つかの方法のいずれか1つに従って細胞へと送達され得る(例えば、Akhtar et al., Trends Cell Bio. 2:139 (1992); Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics, ed. Akhtar, 1995, Maurer et al., Mol. Membr.Biol. 16:129−40 (1999); Hofland et al., Handb. Exp. Pharmacol. 137:165−92 (1999); Lee et al., ACS Symp. Ser. 752:184−92 (2000); 米国特許第 6,395,713号; 国際公開番号WO 94/02595); Selbo et al., Int. J. Cancer 87:853−59 (2000); Selbo et al., Tumour Biol. 23:103−12 (2002);米国特許出願公開第 2001/0007666号,および2003/077829を参照)。
【0277】
本明細書に記載される薬剤の1つ以上の単位用量を有するキットは、通常、経口または注射可能な用量で提供される。そのようなキットは、単位用量を含む容器、老化細胞関連の疾患の際の薬物の用途および付随する利点を説明する情報の添付文書、および随意に、組成物の送達用の器具またはデバイスを含み得る。
【実施例】
【0278】
実施例1
ヌトリン−3aの老化細胞破壊活性を判定するためのインビトロの細胞アッセイ
包皮線維芽細胞株HCA2およびBJ、肺線維芽細胞株IMR90、およびマウスの胚線維芽細胞を、6ウェルのプレート中で播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)または24時間のドキソルビシン(Doxo)による処置で老化を誘発した。老化表現型を、少なくとも7日間進行させ、その時点で細胞数をカウントし、細胞のベースライン数を判定した。その後、ヌトリン−3a処置を、少なくとも9日の期間の間始めた。培地単独または適切であるように薬物とともに培地を、少なくとも3日ごとにリフレッシュした。アッセイ期間の終わりに、細胞をカウントする。各々の条件を備えた培地(condition)を、3ウェルのプレートにおいて播種し、別々にカウントした。ヌトリン処置のない最終日の数と比較して、始原細胞数は、老化の誘発を判定するための対照として機能する。始原非老化細胞数は、ヌトリン−3a毒性を判定するための代理として機能する。
図1は、実験設計の概略図を示す。
【0279】
包皮線維芽細胞株HCA2およびBJ、肺線維芽細胞株IMR90、およびマウスの胚線維芽細胞を、老化を誘発するために10Gyのイオン化放射線(IR)にさらした。照射後7日目に、細胞を、9日の期間の間、様々な濃度のヌトリン−3a(0、2.5μMおよび10μM)で処置し、薬物を少なくとも3日ごとにリフレッシュした。パーセント生存率を、[ヌトリン−3a処置の9日目の細胞数/ヌトリン−3a処置の初日の始原細胞数]として計算した。結果を、
図2のA−Dに示し、これらは、ヌトリン−3aが、老化包皮線維芽細胞(HCA2およびBJ)、肺線維芽細胞(IMR90)、およびマウスの胚線維芽細胞(MEF)の細胞生存率を減少させ、老化細胞破壊薬剤がヌトリン−3aであることを示している。
【0280】
包皮線維芽細胞(HCA2)および大動脈内皮細胞(Endo Aort)を、老化を誘発ために1日(24時間)の間ドキソルビシン(250nM)で処置した(
図1を参照)。ドキソルビシン処置の8日後に、ヌトリン−3a処置を始めた。HCA2細胞を、9日間ヌトリン−3aにさらし、大動脈内皮細胞を、11日間ヌトリン−3aにさらした。化合物を含有している培地または対照培地を、少なくとも3日ごとにリフレッシュした。パーセント生存率を、[ヌトリン−3a処置の最終日の細胞数/ヌトリン−3a処置の初日の始原細胞数]として計算した。結果を、
図3のA−Bに示し、これらは、アドリアマイシンに誘発された老化細胞が、ヌトリン−3aに感受性があることを示している。
【0281】
非老化包皮線維芽細胞(HCA2)、肺線維芽細胞(IMR90)およびマウスの胚線維芽細胞(MEF)を、ヌトリン−3a毒性を評価するために、9日の期間の間、様々な濃度(0、2.5μMおよび10μM)のヌトリン−3aで処置した。細胞数を、ヌトリン−3a処置の開始(NS開始)および最後に得た。9日目(NS 0)にヌトリン−3aで処置されていない細胞の数と、0日目(NS開始)に判定された細胞数との間の差は、示された期間にわたる細胞増殖を反映している。結果を、
図4のA−Cに示し、それらは、ヌトリン−3a処置が、増殖を減少させるが、非老化細胞に対して無毒であることを示している。ヌトリン−3a処置は、開始レベルより下に細胞の数を減少させず、これは、毒性の欠如を示している。NS 0とNS 2.5およびNS 0とNS 10との間の明らかな生存率の減少は、細胞増殖の減少を反映している。理論に縛られることなく、ヌトリン−3aは、p53を安定化し、これは、細胞周期の成長停止につながり得る。
【0282】
非老化大動脈内皮(Endo Aort)細胞および前脂肪細胞(Pread)も、上に記載されるように、ヌトリン−3a毒性を評価するために、11日の期間の間、様々な濃度の(0、2.5μMおよび10μM)ヌトリン−3aで処置した。細胞数を、ヌトリン−3a処置の0日目の開始(NS開始)時および最後に得た。11日目(NS 0)にヌトリン−3aで処置されていない細胞の数と、NS開始からの細胞数との間の差は、示された期間にわたる細胞増殖を反映している。結果を、
図5のA−Bに示し、これらは、ヌトリン−3a処置が、増殖を減少させるが、非老化細胞に対して無毒であることを例証している。線維芽細胞で観察されるように、ヌトリン−3a処置は、開始レベルより下に細胞の数を減少させず、これは、毒性の欠如を示している。NS 0とNS 2.5およびNS 0とNS 10との間の明らかな生存率の減少は、細胞増殖の減少を反映している。
【0283】
実施例2
P16−3MRトランスジェニックマウスのヌトリン−3A処置
インビボで老化細胞を除去するヌトリン−3aの能力を、トランシジェニックp16−3MRマウスにおいて判定した(例えば、国際公開番号WO2013/090645を参照)。実験プロトコルの概略図は、
図6に提供される。トランスジェニックマウスは、これらのトランシジェニックマウスにおいて、老化細胞の検出のために及び老化細胞の選択的なクリアランスのために三峰性の融合タンパク質に手術的に関連付けられたp16
ink4aプロモーターを含み、これは
図7に例証される。非老化細胞ではなく老化細胞において転写活性のあるプロモーター、p16
ink4a(例えば、Wang et al.,J. Biol. Chem. 276:48655−61 (2001); Baker et al., Nature 479:232−36 (2011)を参照)を、核酸構築物へと人工的に入れた(engineered)。3MR(三峰性レポーター)は、合成Renillaルシフェラーゼ(LUC)、モノマー赤色蛍光タンパク質(mRFP)、およびガンシクロビル(GCV)による死滅を可能にする、切断性の単純性疱疹ウイルス(HSV)−1チミジンキナーゼ(tTK)の機能ドメインを含有している融合タンパク質である(例えば、Ray et al., Cancer Res. 64:1323−30 (2004)を参照)。3MR cDNAを、エキソン2中のp16を有するフレームに挿入し、全長野生型のp16タンパク質ではないが、p16の最初の62のアミノ酸を含有している融合タンパク質を生成した。3MR cDNAの挿入は、結果として、エキソン2中のp19
ARFリーディングフレームにおいて停止コドンの発生をもたらし、それによって、BACからの全長p19
ARF発現も防いだ。p16
ink4a遺伝子プロモーター(およそ100のキロ塩基対)を、三峰性レポーターの融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列の上流に導入した。代替的に、切断されたp16
ink4aプロモーターが使用されてもよい(例えば、上のBaker et al., Nature, supra; 国際公開番号WO2012/177927; 上のWang et al.を参照)。したがって、3MRの発現は、老化細胞においてのみp16
ink4aプロモーターによって促進される。検出可能なマーカー、LUCおよびmRFPは、それぞれ、生物発光と蛍光による老化細胞の検出を可能にした。tTKの表現は、tTKによって細胞毒性の部分に変換される、プロドラッグ・ガンシクロビル(GCV)への曝露による老化細胞の選択的死滅を可能にした。C57B16バックグラウンドを有する、初代遺伝子導入動物を確立し、トランスジーンを動物に導入するための既知の手順を使用して繁殖させた(例えば、Baker et al., Nature 479:232−36 (2011)を参照)。
【0284】
雌のC57/BL6 p16−3MRマウスを、ドキソルビシン+ヌトリン−3aで処置した又はドキソルビシンのみで処置した群へと無作為化した(
図6を参照)。ヌトリン−3aの投与の10日前(−10日目)にマウスに10mg/kgのドキソルビシンを腹腔内に投与することによって、老化を誘発した。ヌトリン−3a(25mg/kg)を、ドキソルビシン処置の10日後から24日後に腹腔内に毎日投与した(群=9匹のマウス)。(ドキソルビシンで処置した)対照マウスに、等量のPBSを注入した(群=3匹のマウス)。
【0285】
発光イメージング(Xenogen画像システム)を、各マウスに対するベースライン(100%の強度)として0日目(即ち、ドキソルビシン処置の10日後)に実行した。マウスの発光イメージングを、ヌトリン−3a処置の開始の7、14、21、28、および35日後に実行した。発光(L)の減少(Reduction)を、次のように計算した:L=(ヌトリン−3a処置後のイメージング)/(ベースラインイメージング(Baseline Imaging))%。Lが100%以上である場合、老化細胞の数は減少しなかった。Lが100%未満である場合、老化細胞の数は減少した。すべてのマウスを別々に計算し、バックグラウンドを各サンプルから抽出した。結果を
図8に示し、これは、ヌトリン−3aによる処置が、ドキソルビシンで誘発された老化に関係する発光を減少させたことを示唆している。発光の統計的に有意な減少を、ヌトリン−3aで処置した動物において14日目、28日目、および35日目に観察した。
【0286】
老化に関係する遺伝子の発現に対するヌトリン−3a処置の効果を判定するための実験を行った。雌のC57/BL6 p16−3MRの群を、上に記載されるように処置した。ヌトリン−3a処置の終了の3週間後(35日目)に、ドキソルビシンで処置したマウス(対照)(N=3)およびドキソルビシン+ヌトリン−3aで処置したマウス(N=6)を屠殺した。皮膚および脂肪の生検を、RNA抽出のために収集し;脂肪の生検を、老化関連のβ−ガラクトシダーゼの検出のために収集し;および肺を、クリオスタット切片のために抗凍結剤のOCT培地中で急速冷凍した。
【0287】
RNAを、リアルタイムPCRアッセイのためのRoche Universal Probe Libraryを使用して、アクチンmRNA(cDNA量に対する対照)に対する内因性の老化マーカー(p21、p16
ink4a(p16)、およびp53)およびSASP因子(mmp−3およびIL−6)のmRNAレベルに関して分析した。結果を
図9のA−Eに示し、これは、ヌトリン−3a処置が、ドキソルビシンで誘発された老化に関係するSASP因子および老化マーカーの発現を減少させたことを示唆している。値は、未処置の対照動物に対するそれぞれのmRNAの誘発の倍率を示す。
【0288】
冷凍の肺組織を、10μMの厚さに切断し、細胞中の二本鎖切断(DNA損傷)のためのマーカーである、γH2AXに対する一次ウサギポリクローナル抗体で染色した(Novus Biologicals, LLC)。その後、切片を、ALEXAのFLUOR(登録商標)の色素をラベル付けした二次的なヤギ抗ウサギで染色し(Life Technologies)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で逆染色した(Life Technologies)。陽性細胞の数を、ImageJの画像処理プログラムを使用して計算し(National Institutes of Health、imagej.nih.gov/ij/index.htmlをインターネットで参照)、細胞の総数のパーセンテージとして表わした。結果を、
図10のA−Bに示し、これは、ヌトリン−3A処置が、ドキソルビシンによって誘発されたDNA損傷を有する細胞の数を減少させたことを示す。
図10のAは、ドキソルビシン単独で処置した細胞と比較した、ドキソルビシン+ヌトリン−3aで処置した細胞における減少したγH2AX染色を示す。
図10のBは、ドキソルビシン単独で処置した細胞と比較した、ドキソルビシン+ヌトリン−3aで処置した細胞におけるγH2AX陽性細胞のパーセントの減少を示す。
【0289】
収集後に、脂肪の生検を、4%のホルマリン中にすぐに固定し、その後、老化関連のβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)の存在を検出するためにX−galを含有している溶液で染色した。脂肪の生検を、X−galの溶液中に37℃で一晩インキュベートし、翌日、写真をとった。未処置の動物からの脂肪の生検を、陰性対照(CTRL)として使用した。結果を
図11に示し、これは、ヌトリン−3a処置が、ドキソルビシン単独で処置した細胞と比較して、未処置の陰性対照に類似したドキソルビシンで誘発された老化を有する動物からの脂肪の生検の老化関連のβ−gal強度を減少させたことを示す。
【0290】
実施例3
MDM2阻害剤は、確立したSASPを有する老化細胞を除去する
10Gyの照射の適用によって、初代ヒト線維芽細胞(IMR90)の老化を誘発した。照射の7日後(0日目)に、細胞を、9日間(9日目)10μMのヌトリン−3aまたはビヒクル(DMSO)で処置した。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュした。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、さらに3日間(12日目)培養した。その後、細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、具体的な抗IL−6抗体を用いて免疫蛍光法によって染色した(R&D、AF−206−NA)。細胞を、核の可視化のためにDAPIで逆染色した。IL−6陽性細胞のパーセントを、
図12Aに例証する。IL−6陽性細胞の免疫蛍光法の一例を、
図12Bに示す。IL−6陽性細胞を、CellProfilerソフトウェアを使用して、公平な方法で測定した。3つの異なる培養物を評価した。非老化細胞は、検出可能な細胞IL−6生成がなかったが、老化細胞は、ビヒクル(DMSO)処置の9日後(照射の16日後)に約8%陽性であった。ヌトリン−3a処置は、IL−6陽性細胞のパーセントを5%未満のレベルに減少させた。12日目に、ヌトリン−3aを除去した3日後および照射の19日後、ビヒクル対照におけるIL−6陽性細胞は、約9%であり、ヌトリン3aで処置した細胞は、IL−6に対して1%未満陽性であった。
【0291】
別の実験では、IMR90細胞を、照射(10Gy)によって老化を誘発した。照射の7日後に、細胞を、9日間(9日目)10μMのヌトリン−3aまたはビヒクル(DMSO)で処置した。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュした。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、さらに6日間培養した。処置した細胞からの調整培地を収集し、ELISAによるIL−6測定を行った(Perkin Elmer, AL223F)。培養培地中のIL−6レベルを、製造業者の指示に従ってキットを使用してELISAによって判定した(AL223F、Perkin Elmer)。細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、具体的な抗IL−6抗体を用いて免疫蛍光法によって染色した(R&D、AF−206−NA)。ELISAによって判定したIL−6レベルを、各ウェルにおける細胞の数に標準化した。データを、非老化細胞(NS)におけるレベルと比較した、処置した細胞におけるIL−6の相対的なレベルとして
図22のCに示す。データを、3つの異なる細胞サンプルの平均として示す。
【0292】
老化細胞におけるIL−6のレベルは、非老化細胞におけるよりも10−40倍高かった。ヌトリン−3aで処置した老化細胞は、DMSOで処置した細胞よりも5−9倍低いIL−6のレベルを有している。ヌトリン−3a処置後に残存する細胞は、より低いIL−6分泌、および外挿法によって、より低いSASPを有し、ヌトリン−3aが、十分に確立したSASPを有する老化細胞を好ましくは死滅させることを示唆している。
【0293】
実施例4
MDM2阻害剤は、確立したSASPを有する老化細胞を除去する:
SASP因子発現
10Gyの照射の適用によって、初代ヒト線維芽細胞(IMR90)細胞の老化を誘発した。照射の7日後(0日目)に、細胞を、9日間(9日目)10μMのヌトリン−3aまたはビヒクル(DMSO)で処置した。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュした。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、薬物またはビヒクルなしで、培地中にさらに3日間培養した。その後、細胞を収集し、mRNAを抽出し、cDNAを調製した。その後、様々な遺伝子の発現を検出するために、定量PCR(qPCR)を実行した。薬物/ビヒクルが3日間除去された後の12日目にも、細胞を取集した。データを、3つのサンプルの平均として示す。データを、アクチンに標準化し、非老化細胞に対する比率として表わした。データを、
図13A−13Fに示す。
【0294】
p21のレベルは、老化細胞においておよそ10倍高く、細胞をヌトリン−3aで処置したときにより高かった(およそ90倍)。ヌトリン−3aは、p53を安定させ、p53は、サイクリン依存性のキナーゼ阻害剤p21の発現を活性化する転写因子である。12日目に、DMSOで処置した細胞におけるp21のレベルは、9日目のレベルに匹敵し、これはまた、12日目のヌトリン−3a処置した細胞におけるレベルに匹敵した。これらのデータは、細胞に対するヌトリン−3aの急性効果が、薬物曝露の除去の3日後に無効にされることを示唆している。別の老化マーカーである、P16のレベルは、照射された細胞において増加し、ヌトリン−3aの存在下では変わらなかった。薬物が除去された3日後(12日目)に、p16レベルの減少が観察された。SASPの制御因子である、IL−1aのレベルは、ヌトリン−3aが除去された後にのみ減少した。CXCL−1、IL−6およびIL−8は、3つの他のSASP因子である。3つすべてのレベルは、ヌトリン−3aが存在するときに減少し、薬物が除去された後も低いままであった。これらのデータは、ヌトリン−3a処置から残存する細胞が、より低いp16レベルを有し、ヌトリン−3aが、高いp16発現因子(expressers)である細胞をむしろ好ましくは死滅させることを示唆している。同様に、SASP因子は、残存する細胞において減少し、ヌトリン−3aが、より高いSASPを有する細胞を好ましくは死滅させることも示唆している。
【0295】
実施例5
MDM2阻害剤は、高まったDNA損傷反応を有する老化細胞を撤去する
10Gyの照射の適用によって、初代ヒト線維芽細胞(IMR90)細胞の老化を誘発した。照射の7日後(0日目)に、細胞を、9日間(9日目)10μMのヌトリン−3aまたはビヒクル(DMSO)で処置した。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュした。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、薬物またはDMSOなしで、培地中にさらに6日間培養し、3日ごとに培地を交換した。細胞を、0日目(非老化細胞)、9日目、12日目、および15日目に収集し、タンパク質を抽出し、イムノブロッティング(ウェスタンブロッティング)のために処理した。2つのサンプルを、各時間点で処理し;結果を、
図14において1つのサンプルに対して提供する。
【0296】
データは、キナーゼATMのリン酸化が、薬物が除去されたときでさえ、ヌトリン−3aで処置した細胞においてより低いことを示している(pATM S1981を参照)。同様に、ATM、H2AXの基質は、ヌトリン 3A処置後および薬物除去後にもリン酸化の低下するレベルを有していた(γH2AXを参照)。老化細胞では、NF−kB経路が活性化されると、IkBaは分解され、これはSASPにつながる。データは、薬物が除去された後に、ヌトリン−3aで処置した細胞のIkBaのレベルが、非老化細胞におけるIkBaのレベルに接近することを示している。MDM2、p53およびp21の各々のレベルは、ヌトリン−3aで処置したサンプルにおいて高まり、薬物が除去されたときに減少した。
【0297】
これらのデータはまた、ヌトリン−3aが、より高いSASPを有する細胞を優先的に死滅させることを支持している。さらに、より低いレベルの活性化したATMが、薬物処置後に残存する細胞において生成されるため、これらのデータは、DNA損傷の反応が活性化した老化細胞が、ヌトリン−3aに感受性のある細胞であることを示唆している。
【0298】
実施例6
細胞数測定アッセイを使用する老化細胞のためのABT−263の選択毒性
ABT−263が、非老化細胞と比較して、老化細胞へ選択的に毒性であるどうかを判定するために、細胞数測定アッセイを用いて、ABT−263による処置後の細胞生存率を判定した。細胞数測定アッセイのための一般的なタイムラインおよび手順を、
図15に示す。IMR90細胞(ヒト初代肺線維芽細胞(IMR90)(IMR−90 (ATCC(登録商標) CCL−186TM, Mannassas, Virginia)を、6ウェルのプレートに播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって、細胞の老化を引き起こした(0日目)。培地を、3日ごとにリフレッシュした。老化表現型を、7日間進行させ、その時点で、細胞数を数え、細胞のベースライン数を測定した。老化細胞(照射された)および非老化細胞(放射されていない細胞)において、3μMのABT−263を、培地に導入した。任意のABT−263毒性の原因となる対照としてのABT−263を含有していなかった培地を、一部の細胞に投与した。各調整培地を、3ウェルのプレートにおいて播種し、別々にカウントした。細胞を、ABT−263(または対照培養)への24時間の曝露後に数えた。
【0299】
図16は、24時間後に細胞の生存のパーセンテージとして測定されるような非老化細胞に対するABT−263の効果を実証している。非老化細胞(中央のバー)に対するABT−263の追加は、非老化細胞における毒性の欠如を示す開始レベル(左端のバー)より下の細胞増殖を減少させなかった。ABT−263で処置されなかった細胞を、最も右側で対照として示す。
【0300】
図17は、24時間後に細胞の生存のパーセンテージとして測定されるような老化細胞に対するABT−263の効果を実証している。老化細胞(中央の棒)に対するABT−263の追加は、開始レベルの細胞数(最も左のバー)の細胞増殖より下の細胞増殖を減少させた。ABT−263で処置した細胞は、ABT−263処置の前に細胞数の28%を有していた。ABT−263で処置されなかった細胞を、最も右側で対照として示す。
【0301】
実施例7
CellTiter−Glo(登録商標)の細胞生存率アッセイを使用する老化細胞に対するABT−263の選択毒性
ABT−263が、非老化細胞と比較して、老化細胞に対する選択毒性があるかどうかを判定するために、細胞生存率アッセイを用いて、ABT−263による処置後に細胞生存を評価した。細胞数測定アッセイのための一般的なタイムラインおよび手順を、
図18に示す。IMR90細胞(ヒト初代肺線維芽細胞(IMR90)(IMR−90 (ATCC(登録商標) CCL−186TM, Mannassas, Virginia)を、6ウェルのプレートに播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって、細胞の老化を引き起こした(0日目)。培地を、3日ごとにリフレッシュした。老化表現型を、7日間進行させ、その時点で、細胞数を数え、細胞のベースライン数を測定し、その後、96ウェルのプレートへ播種した。8日目に、老化細胞(照射された)および非老化細胞(放射されていない細胞)を、3日の期間の間、ABT−263の連続希釈にさらした。ABT−263濃度は、0.5nMから3μMの範囲に及んだ。各調整培地を、3回繰り返して播種した。
【0302】
3日間の処置後(11日目)、細胞を、市販のCellTiter−Glo(登録商標)(CTG) Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation, Madison, Wisconsin)を使用して、細胞生存のために分析した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
【0303】
図19は、老化細胞、および非老化細胞におけるABT−263のIC50曲線を示す。IC50曲線は、細胞生存率アッセイによって測定されるようなABT−263の処置後の細胞生存のパーセンテージのプロットである。プロットは、細胞生存に対する様々な濃度レベルのABT−263の効果を示す。非老化細胞に対するABT−263のIC50は、老化細胞に対する140nMのIC50値と比較して、2.4μMであり、これは、老化細胞に対するABT−263の選択毒性を実証している。17のインビトロの理論上の治療指数が観察された。
【0304】
実施例8
様々な細胞タイプの老化細胞のためのABT−263の選択毒性の評価
実施例7の方法を、他の細胞株において繰り返した。細胞株は、Primary Renal Cortical Cells, ATCC Cat# PCS−400−011(
図20)、HCA2包皮線維芽細胞(
図21)、Primary Small Airway Epithelial Cells, ATCC Cat# PCS−301−010(肺)(
図22)、患者からのヒトのプールした前脂肪細胞(Pread)(
図23)、C57Bl6マウスから抽出されたマウス胚線維芽細胞(MEF)(
図24)、Primary Coronary Artery Smooth Muscle, ATCC Cat# PCS−100−021 (Smth Mscl)(
図25)を含んだ。
【0305】
これらの他の細胞株において行われた実験を、本質的に実施例7に記載されるように行った。
図20に示されるように、非老化細胞に対するABT−263のIC50は、老化細胞に対する25nMのIC50値と比較して、430nMであり、これは、腎臓上皮細胞における老化細胞に対するABT−263の選択毒性を実証している。
【0306】
図21に示されるように、非老化細胞に対するABT−263のIC50は、老化細胞に対する410nMのIC50値と比較して、最大3μMと毒性ではなく、これは、HCA2細胞における老化細胞のためのABT−263の選択毒性を実証している。
【0307】
実施例9
老化ヒト初代肺線維芽細胞のためのABT−263および他のBCL−2阻害剤の選択毒性の評価
他のBcl−2阻害剤が、非老化細胞よりも老化細胞に対する選択毒性を実証しているかどうかを判定するために、細胞を、ABT−199(Selleckem Cat# S8048, Houston, TX)またはObatoclax (Selleckem Cat# S1057)で処置した。ABT−199およびObatoclaxは、既知のBcl−2阻害剤として知られている。
【0308】
これらの他のBcl−2阻害剤の効果の評価のために行われた実験を、本質的に実施例7に記載されるように行った。細胞を、15nMから100μMの範囲の連続希釈濃度でABT−199にさらした(
図26および27)。細胞を、1.4nMから9μMの範囲の濃度でObatoclaxにさらした(
図28)。
【0309】
図26−27に示されるように、ABT−199は、老化細胞における6.9μM−12.4μMのIC50値と比較して、非老化細胞における6μM−15.8μMのIC50値を有していた。
図28に示されるように、Obatoclaxは、老化細胞における125nMのIC50値と比較して、非老化細胞における75nMのIC50値を有していた。
図26−28は、ABT−199およびObatoclaxが、非老化細胞より老化細胞を選択的に標的とする能力がないことを実証している。
【0310】
Bcl−2A1に特異的な化合物も、老化細胞を選択的に死滅させなかった。実施例7に記載されるような照射によって、IMR90細胞の老化を誘発した。その後、照射したIMR90細胞および非老化IMR90細胞を、Bcl−2A1特異的阻害剤であるML214と呼ばれる化合物にさらした。老化細胞の死滅のレベルは、非老化細胞の死滅のレベルに匹敵した。
【0311】
実施例10
AKT阻害剤、MK−2206単独の、およびABT−263と組み合わせた、老化細胞に対する選択毒性
Akt阻害剤、MK−2206と組み合わせたABT−263の効果を、IMR90細胞における非老化細胞と比較して、老化細胞の選択毒性のために試験した。ABT−263の連続希釈に加えて、細胞培養を10nMのMK−2206(Selleckem,Cat# S1078)に露出させたということを除いて、実施例7の方法を繰り返した。
【0312】
図29Aは、老化細胞および非老化細胞上の10nMのMK−2206と組み合わせたABT−263処置の用量依存性プロットを示す。ABT−263+のMK−2206で処置した老化細胞は、0.083μMのIC50値を有していたが、一方で、非老化細胞におけるABT−263+MK−2206細胞は、>3μMのIC50値を有し、これは、老化細胞に対する>36の選択指数をもたらした。
【0313】
老化IMR90細胞および非老化IMR90細胞(実施例7の手順を参照)をMK−2206の連続希釈にさらすことによって、MK−2206単独の老化細胞破壊の効果を判定した。パーセント生存率を測定し、結果を
図29Bに示す。
【0314】
実施例11
マウス中のABT−263の老化細胞破壊の効果を判定するための動物研究
老化細胞破壊薬剤、例えば、ABT−263の老化細胞破壊の効果は、老化の動物モデルにおいて評価することができる。そのような動物研究の一例をここに記載する。動物における老化は、ドキソルビシンの投与およびその後の老化細胞破壊薬剤の処置によって誘発され得る。35日目に、マウスを屠殺し、脂肪および皮膚を、RNA分析のために収集し、一方で、肺を収集し、免疫顕微鏡法分析のために急速冷凍した。RNAを、SASP因子(mmp3、IL−6)および老化マーカー(p21、p16、およびp53)の発現のために分析する。冷凍した肺組織を、DNA損傷マーカー(γH2AX)のために分析する。
【0315】
試験されるマウスは、p16−3MRのトランスジーン挿入を含む。3MR(三峰性レポーター)は、合成Renillaルシフェラーゼ(LUC)、モノマー赤色蛍光タンパク質(mRFP)、および切断された単純性疱疹ウイルス(HSV)−1チミジンキナーゼ(tTK)の機能ドメインを含有している融合タンパク質であり、これは、ガンシクロビル(GCV)による死滅を可能にする。3MR cDNAを、エキソン2中のp16を有するフレームに挿入し、p16の最初の62のアミノ酸を含有しているが、全長野生型のp16タンパク質を含まない、融合タンパク質を生成した。3MR cDNAの挿入はまた、エキソン2中のp19
ARFリーディングフレームにおいて停止コドンを導入する。
【0316】
ABT−263の効果を、発光強度の減少によって分析する。雌のC57/Bl6 p16−3MRマウスを、ドキソルビシンで処置する。発光を、10日後に測定し、各マウスに対するベースラインとして使用する(100%の強度)。ドキソルビシン処置の10日後から24日後に、ABT−263を、腹腔内に毎日投与する。その後、発光を、ABT−263処置の7、14、21、28、35日後に測定し、最終値を、ベースライン値の%として計算する。対照動物(DOXO)に、等量のPBSを注入する。
【0317】
ドキソルビシン単独(DOXO)またはドキソルビシン+ABT−263による処置後に動物からの皮膚および脂肪における内因性のmmp−3、IL−6、p21、p16、およびp53のmRNAのレベルをプロットする。値は、未処置の対照動物と比較した、特定のmRNAの誘導倍加を表わす。
【0318】
ドキソルビシンで処置した動物(DOXO)およびドキソルビシンおよびABT−263で処置した動物からの肺切片の免疫蛍光顕微鏡検査法は、γH2AXに特異的な一次ウサギポリクローナル抗体に結合し、その後、二次ヤギ抗ウサギ抗体でのインキュベーション、およびDAPIでの逆染色によって検出され得る。免疫蛍光顕微鏡検査法からの陽性細胞のパーセントを計算し、細胞の総数のパーセンテージとして表わすことができる。データは、ドキソルビシンで処置したマウス(Doxo)およびドキソルビシン+ABT−263で処置したマウスから得ることができる。
【0319】
ABT−263は、ドキソルビシンで最初に処置された動物からの脂肪の生検の減少した老化関連(SA)のβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)強度のために分析することができる。雌のC57/BL6 p16−3MRマウスを、ドキソルビシンで処置する。ドキソルビシンで処置した動物の一部は、ドキソルビシン処置の10日後から24日後までABT−263またはPBS(DOXO)を毎日受ける。ABT−263処置の3週間後、マウスを屠殺し、脂肪の生検を、すぐに固定し、X−Galを含有している溶液で染色する。未処置の動物を、陰性対照(CTRL)として使用する。
【0320】
実施例12
WEHI−539の老化細胞破壊の活性を判定するためのインビトロの細胞アッセイ
肺線維芽細胞株IMR90(ヒト初代肺線維芽細胞、ATCC(登録商標)CCL−186TM、Manassas, Virginia)および腎臓細胞株(Primary Renal Cortical Cells, ATCC Cat. No. PCS−400−011)を、6ウェルのプレート中で播種し、そのHCA2は、10Gyのイオン化放射線(IR)によって老化を誘発した。老化表現型を、少なくとも7日間進行させた。
【0321】
老化表現型が進行した後、細胞を、96ウェルのプレートへと再び播種し、老化細胞(照射された)および非老化細胞(放射されていない細胞)を、3日の期間の間、WEHI−539の3倍の連続希釈にさらした。WEHI−539濃度は、0.0075μMから15μMの範囲に及んだ。3日後、細胞生存率を、市販のCellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation, Madison, Wisconsin)を使用して測定した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
図30は、IMR90の細胞生存率(
図30Aを参照)および腎臓の細胞生存率(
図30Bを参照)を示す。
【0322】
実施例13
P16−3MRトランシジェニックマウスのWEHI−539処置
この実施例は、インビボで老化細胞を選択的に死滅させる老化細胞破壊薬剤の能力を判定するのに有用な動物モデルについて記載する。インビボで老化細胞を除去するWEHI−539または別の老化細胞破壊薬剤の能力を、トランシジェニックp16−3MRマウスにおいて判定する(例えば、国際公開番号WO2013/090645を参照)。
図6に提供される概略図における手順の例証と類似した方法で、実験を行う。トランスジェニックマウスは、これらのトランシジェニックマウスにおいて、老化細胞を検出のために及び老化細胞の選択的なクリアランスのために三峰性の融合タンパク質に手術的に関連付けられたp16
ink4aプロモーターを含み、これは
図7に例証される。非老化細胞ではなく老化細胞において転写活性のあるプロモーター、p16
ink4a(例えば、Wang et al., J. Biol. Chem. 276:48655−61 (2001); Baker et al., Nature 479:232−36 (2011)を参照)を、核酸構築物へと操作した。3MR(三峰性レポーター)は、合成Renillaルシフェラーゼ(LUC)、モノマー赤色蛍光タンパク質(mRFP)、および切断された単純性疱疹ウイルス(HSV)−1チミジンキナーゼ(tTK)の機能ドメインを含有している融合タンパク質であり、これは、ガンシクロビル(GCV)による死滅を可能にする(例えば、Ray et al., Cancer Res. 64:1323−30 (2004)を参照)。3MR cDNAを、エキソン2中のp16を有するフレームに挿入し、全長野生型のp16タンパク質ではないが、p16の最初の62のアミノ酸を含有している融合タンパク質を生成した。3MR cDNAの挿入は、結果として、エキソン2中のp19
ARFリーディングフレームにおいて停止コドンの発生をもたらし、それによって、BACからの全長p19
ARF発現も防いだ。p16
ink4a遺伝子プロモーター(およそ100のキロ塩基対)を、三峰性レポーターの融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列の上流に導入した。代替的に、切断されたp16
ink4aプロモーターが使用されてもよい(例えば、上のBaker et al., Nature, supra; 国際公開番号WO2012/177927; 上のWang et al.を参照)。したがって、3MRの発現は、老化細胞においてのみp16
ink4aプロモーターによって促進される。検出可能なマーカー、LUCおよびmRFPは、それぞれ、生物発光と蛍光による老化細胞の検出を可能にした。tTKの表現は、tTKによって細胞毒性の部分に変換される、プロドラッグ・ガンシクロビル(GCV)への曝露による老化細胞の選択的死滅を可能にした。C57B16バックグラウンドを有する、初代遺伝子導入動物を確立し、トランスジーンを動物に導入するための既知の手順を使用して繁殖させた(例えば、Baker et al., Nature 479:232−36 (2011)を参照)。
【0323】
WEHI−539などの薬剤の老化細胞破壊の活性を判定するために、雌のC57/BL6 p16−3MRマウスを、ドキソルビシン+WEHI−539で処置した群またはドキソルビシン単独で処置した群へと無作為化する。WEHI−539の投与の10日前(−10日目)にマウスに10mg/kgのドキソルビシンを腹腔内に投与することによって、老化を誘発する。ドキソルビシン処置の10日後から24日後に、WEHI−539を、腹腔内に毎日投与する。(ドキソルビシンで処置した)対照マウスに、等量のPBSを注入する(群=3匹のマウス)。
【0324】
発光イメージング(Xenogen画像システム)を、各マウスに対するベースライン(100%の強度)として0日目(即ち、ドキソルビシン処置の10日後)に実行する。マウスの発光イメージングを、WEHI−539処置の開始の7、14、21、28、および35日後に実行する。発光(L)の減少を、次のように計算する:L=(WEHI−539処置後のイメージング)/(ベースラインイメージング)%。Lが100%以上である場合、老化細胞の数は減少しなかった。Lが100%未満である場合、老化細胞の数は減少した。すべてのマウスを別々に計算し、バックグラウンドを各サンプルから抽出する。
【0325】
老化に関係する遺伝子の発現に対するWEHI−539処置の効果を判定するための実験を行う。雌のC57/BL6 p16−3MRの群を、上に記載されるように処置する。WEHI−539処置の終了の3週間後(35日目)に、ドキソルビシンで処置したマウス(対照)(N=3)およびドキソルビシン+WEHI−539で処置したマウス(N=6)を屠殺する。皮膚および脂肪の生検を、RNA抽出のために収集し;脂肪の生検を、老化関連のβ−ガラクトシダーゼの検出のために収集し;および肺を、クリオスタット切片のために抗凍結剤のOCT培地中で急速冷凍する。
【0326】
RNAを、リアルタイムPCRアッセイのためのRoche Universal Probe Libraryを使用して、アクチンmRNA(cDNA量に対する対照)に対する内因性の老化マーカー(例えば、p21、p16
ink4a(p16)、およびp53)およびSASP因子(例えば、mmp−3およびIL−6)のmRNAレベルに関して分析した。
【0327】
冷凍の肺組織を、10μMの厚さに切断し、細胞中の二本鎖切断(DNA損傷)のためのマーカーである、γH2AXに対する一次ウサギポリクローナル抗体で染色する(Novus Biologicals, LLC)。その後、切片を、ALEXAのFLUOR(登録商標)の色素をラベル付けした二次的なヤギ抗ウサギで染色し(Life Technologies)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で逆染色する(Life Technologies)。陽性細胞の数を、ImageJの画像処理プログラムを使用して計算し(National Institutes of Health、imagej.nih.gov/ij/index.htmlをインターネットで参照)、細胞の総数のパーセンテージとして表わす。
【0328】
収集後に、脂肪の生検を、4%のホルマリン中にすぐに固定し、その後、老化関連のβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)の存在を検出するためにX−galを含有している溶液で染色する。脂肪の生検を、X−galの溶液中に37℃で一晩インキュベートし、翌日、写真をとる。未処置の動物からの脂肪の生検を、陰性対照(CTRL)として使用する。
【0329】
実施例14
確立したSASPを有する老化細胞を除去するBCL−XL阻害剤の能力
この実施例は、SASPを確立した老化細胞の死滅に対する老化細胞破壊薬剤の効果を判定するための方法について記載する。10Gyの照射の適用によって、初代ヒト線維芽細胞(IMR90)細胞の老化を誘発する。照射の7日後(0日目)に、細胞を、9日間(9日目)10μMのBCL−XL阻害剤(例えば、WEHI−539)またはBCL−2/BCL−XL阻害剤またはビヒクル(DMSO)で処置する。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュする。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、さらに3日間(12日目)培養する。その後、細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、具体的な抗IL−6抗体を用いて免疫蛍光法によって染色する(R&D、AF−206−NA)。細胞を、核の可視化のためにDAPIで逆染色する。IL−6陽性細胞を、CellProfilerソフトウェアを使用して、公平な方法で測定する。
【0330】
別の実験では、IMR90細胞を、照射(10Gy)によって老化を誘発する。照射の7日後に、細胞を、9日間(9日目)老化細胞破壊薬剤(例えば、BCL−XL阻害剤(例えば、WEHI−539)またはBCL−2/BCL−XL阻害剤;MDM2阻害剤;Akt阻害剤)またはビヒクル(DMSO)で処置する。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュする。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、さらに6日間培養する。処置した細胞からの調整培地を収集し、ELISAによるIL−6測定を行う(Perkin Elmer, AL223F)。培養培地中のIL−6レベルを、製造業者の指示に従ってキットを使用してELISAによって判定する(AL223F、Perkin Elmer)。その後、細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、具体的な抗IL−6抗体を用いて免疫蛍光法によって染色する(R&D、AF−206−NA)。ELISAによって判定したIL−6レベルを、各ウェルにおける細胞の数に標準化する。
【0331】
実施例15
確立したSASP;SASP因子発現を有する老化細胞を除去する老化細胞破壊薬剤の能力
この実施例は、SASP因子発現に対する老化細胞破壊薬剤の効果を判定するための方法について記載する。10Gyの照射の適用によって、初代ヒト線維芽細胞(IMR90)細胞の老化を誘発する。照射の7日後(0日目)に、細胞を、9日間老化細胞破壊薬剤(例えば、BCL−XL阻害剤(例えば、WEHI−539)またはBCL−2/BCL−XL阻害剤;MDM2阻害剤;Akt阻害剤)またはビヒクル(DMSO)で処置する。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュする。薬物/ビヒクルを、9日目にSASP発現の評価の前に除去した後、細胞を、薬物またはDMSOなしで、培地中にさらに3日間培養する。その後、細胞を収集し、mRNAを抽出し、cDNAを調製する。その後、様々な遺伝子の発現を検出するために、定量PCR(qPCR)を実行する。薬物/ビヒクルが3日間除去された後の12日目にも、細胞を取集する。データを、アクチンに標準化し、非老化細胞に対する比率として表わす。
【0332】
実施例16
高まったDNA損傷反応を有する老化細胞を除去する老化細胞破壊薬剤の能力
この実施例は、高まったDNA損傷反応を有する老化細胞を選択的に死滅させることに対する老化細胞破壊薬剤の効果を判定するための方法について記載する。10Gyの照射の適用によって、初代ヒト線維芽細胞(IMR90)細胞の老化を誘発する。照射の7日後(0日目)に、細胞を、9日間(9日目)老化細胞破壊薬剤(例えば、BCL−XL阻害剤(例えば、WEHI−539)またはBCL−2/BCL−XL阻害剤、MDM2阻害剤;Akt阻害剤)またはビヒクル(DMSO)で処置する。薬物またはビヒクルを、3日ごとにリフレッシュする。薬物/ビヒクルを、9日目に除去し、細胞を、薬物またはDMSOなしで、培地中にさらに6日間培養し、3日ごとに培地を交換する。細胞を、0日目(非老化細胞)、9日目、12日目、および15日目に収集し、タンパク質を抽出し、イムノブロッティング(ウェスタンブロッティング)のために処理する。2つのサンプルを、各時間点で処理する。
【0333】
実施例17
BCL−XL選択的阻害剤は、アポトーシスを介して老化細胞を死滅させる
実施例12に記載されるように、肺線維芽細胞株IMR90(ヒト初代肺線維芽細胞、ATCC(登録商標)CCL−186TM、Manassas, Virginia)を、6ウェルのプレート中で播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって老化を誘発した。老化が確立された後、細胞を、96ウェルのプレートへと再び播種した。汎カスパーゼ阻害剤Q−VD−OPh(20μM)を、老化細胞(照射された)(IMR90 Sen(IR))のウェルおよび非老化細胞(放射されていない細胞)(IMR90 NS)を含有しているウェルに加えた。4時間後、老化および非老化細胞を、各々、3日の期間の間、1.67または5μMのWEHI−539にさらした。アッセイ期間の終わりに、細胞を数えた。各調整培地を、3ウェルのプレートにおいて播種し、別々にカウントした。WEHI−539処置のない最終日の数と比較して、始原細胞数は、老化の誘発を判定するための対照として機能した。始原非老化細胞数は、WEHI−539毒性を判定するための代理として機能する。細胞生存率を、市販のCellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation, Madison, Wisconsin)を使用して測定した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
図31(左側)は、WEHI−539が老化細胞を選択的に死滅させる例証であり(実施例12を参照)、この実験で使用されるWEHI−539濃度を例証する。汎カスパーゼ阻害剤の存在下において、残存する老化細胞のパーセントは増加した(
図31(右側))。
【0334】
実施例18
BCL−XLを阻害することによる老化細胞の効果的な死滅
本実施例は、BCL−XLが、老化細胞のアポトーシスにとって重要なBCL−2抗アポトーシスのファミリーメンバーであることを実証している。BCL−2、BCL−XL(BCL2L1とも呼ばれる)、およびBCL−w(BCL2L2とも呼ばれる)に特異的な配列を含む、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を調製し、レンチウイルスベクターへと導入した。BCL−XLおよびBCL−wの各々に対する4つの異なるshRNAおよびBCL−2に対する3つの異なるshRNAを、Broad Institute of MIT and Harvard (Cambridge, MA)によって合成した。それぞれのshRNAを含むレンチウイルスベクターを、Sigma Aldrich (St. Louis, MO)から購入した。shRNA配列および標的配列を、下記の表に提供する。各タンパク質のヌクレオチド配列は、公共のデータベースから容易に得られ得る(例えば、Bcl−xL at GenBank NM_001191.2 and NM_138578.1 (BCL2−like 1 (BCL2L1)); Bcl−w at GenBank NM_004050.3 (BCL2−like 2 (BCL2L2)); and Bcl−2 at NM_000633.2, NM_000657 (B−cell CLL/lymphoma 2 (BCL2)を参照)。
【0335】
老化細胞および非老化細胞の三重のサンプル(Triplicate samples)を、当該技術分野で実施される方法に従って、異なるレンチウイルスベクターの各々および2つの対照ベクターで形質導入した。対照サンプルは、レンチウイルスで形質導入されなかった(NT)老化および非老化細胞を含む。実施例12に記載されるように、10Gyのイオン化放射線(IR)への曝露によって、IMR90細胞の老化を誘発した。老化表現型が進行した後、細胞を、96ウェルのプレートへと再び播種し、shRNAを加えた。24時間後、shRNAを除去し、培地をリフレッシュさせた。培地を、3日後に再びリフレッシュさせた。最後の培地のリフレッシュ後(shRNA除去の6日後)に、生存率を、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayで測定した。
【0336】
【表1】
【0337】
その後、老化細胞および非老化細胞の生存率を、試験された各shRNAのために3回繰り返して測定した。表に順番にリストされるようなshRNAを、図中で左から右に示す。BCL−2に特異的な第2および第3のshRNA配列は同一である。老化細胞生存率と非老化細胞生存率の比率を、
図32で各shRNAに対して示す。1.0の比率は、非老化細胞と比較した、老化細胞の生存率の割合の差がないことを示す。老化細胞への4つのBCL−XL特異的なshRNA分子のうちの3つの導入は、Bcl−wまたはBCL−2特異的なshRNAが導入された老化細胞と比較して、結果として、有意な老化細胞死をもたらした。データは、BCL−XL発現が老化細胞の生存にとって重要であることを例証している。
【0338】
実施例19
BCL−2抗アポトーシスタンパク質ファミリーメンバーを阻害することによる老化細胞の効果的な死滅
他のBcl−2/Bcl−xL/Bcl−w阻害剤が、非老化細胞と比較して、老化細胞に対する選択毒性があるかどうかを判定するために、細胞生存率アッセイを用いて、ABT−737による処置後に細胞生存を評価した。細胞数測定アッセイのための一般的なタイムラインおよび手順を、
図18に示し、実施例7に記載する。IMR90細胞(ヒト初代肺線維芽細胞を、6ウェルのプレートに播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって、細胞の老化を引き起こした(0日目)。培地を、3日ごとにリフレッシュさせた。老化表現型を、7日間進行させ、その時点で、細胞数を数え、細胞のベースライン数を測定し、その後、96ウェルのプレートへ播種した。8日目に、老化細胞(照射された)および非老化細胞(放射されていない細胞)を、3日の期間の間、ABT−737の連続希釈にさらした。ABT−737濃縮液を、50μMから開始して連続希釈した。各調整培地を、3回繰り返して播種した。
【0339】
3日間の処置後(11日目)、細胞を、CellTiter−Glo(登録商標)(CTG) Luminescent Cell Viability Assay を使用して、細胞生存のために分析した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
【0340】
図33は、老化細胞および非老化細胞におけるABT−737のIC50曲線を示す。IC50曲線は、細胞生存率アッセイによって測定されるようなABT−737の処置後の細胞生存のパーセンテージのプロットである。プロットは、細胞生存に対する様々な濃度レベルのABT−737の効果を示す。
【0341】
実施例20
BCL−2/BCL−XL/BCL−W阻害剤は、アポトーシスを介して老化細胞を死滅させる
実施例17に記載されるような実験を、1つ以上のBCL−2抗アポトーシスファミリーメンバーの他の阻害剤が、アポトーシスを介して老化細胞を死滅させるかどうかを判定するために行った。実施例12に記載されるように、肺線維芽細胞株IMR90(ヒト初代肺線維芽細胞、ATCC(登録商標)CCL−186TM、Manassas, Virginia)を、6ウェルのプレート中で播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって老化を誘発した。老化が確立された後、細胞を、96ウェルのプレートへと再び播種した。汎カスパーゼ阻害剤Q−VD−OPh(20μM)を、老化細胞(照射された)(IMR90 Sen(IR))のウェルおよび非老化細胞(放射されていない細胞)(IMR90 NS)を含有しているウェルに加えた。4時間後、老化および非老化細胞を、各々、3日の期間の間、0.33または1μMのABT−263(Navitoclax)にさらした。アッセイ期間の終わりに、細胞を数えた。各調整培地を、3ウェルのプレートにおいて播種し、別々にカウントした。ABT−263処置のない最終日の数と比較して、始原細胞数は、老化の誘発を判定するための対照として機能した。始原非老化細胞数は、ABT−263毒性を判定するための代理として機能する。細胞生存率を、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation, Madison, Wisconsin)を使用して測定した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
図34(上のグラフィック)は、ABT−263が老化細胞を選択的に死滅させる例証であり、この実験で使用されるABT−263濃度を例証している。汎カスパーゼ阻害剤の存在下において、残存する老化細胞のパーセントは増加した(
図34、下のグラフィック)。
【0342】
実施例21
変形性関節症の動物モデルにおける老化細胞の除去の効果
2つの変形性関節症のマウスモデルの研究設計の表および概略図を、それぞれ、
図35および
図36に示す。2つの処置研究を、変形性関節症の動物モデルにおいて老化細胞を除去する効果を判定するように設計した。
【0343】
並行研究を行った。1つの研究は、3MRマウスにおいてガンシクロビル(GCV)によって老化細胞を除去する効果を調査した。マウスは、片方の後肢の関節において変形性関節症を誘発するために、片方の後肢の前十字靱帯を切断する手術を受けた。手術後の2週目の間に、3MRマウスは、5日間1日4回、関節内注入によって手術した膝に2.5μgのGCVを受け、手術後の4週目の間に、2回目の処置(5日間1日4回の2.5μgのGCV)を受けた。手術後の4週の終わりに、マウスの手術した関節を、老化細胞の存在のためにモニタリングし、機能のために評価し、炎症のマーカーのためにモニタリングし、および組織学的評価にさらした。
【0344】
並行研究において、C57BL/6Jマウスは、片方の後肢の関節において変形性関節症を誘発するために、片方の後肢の前十字靱帯を切断する手術を受けた。手術後の3週目および4週目の間に、マウスを、2週間1日おきに、関節内注入によって手術した膝につき5.8μgのヌトリン3A(n=7)で処置した。手術後の4週の終わりに、マウスの関節を、老化細胞の存在のためにモニタリングし、機能のために評価し、炎症のマーカーのためにモニタリングし、および組織学的評価にさらした。
【0345】
マウスの2つの対照群を、実行される研究に含み:1つの群は、偽手術(n=3)(即ち、ACLの切断を除く、続く外科手術)およびGCVで処置した群と並行するビヒクルの関節内注入を受けた、C57BL/6Jまたは3MRのマウスを含み;もう1つの群は、ACL手術を受け、GCVで処置した群と並行するビヒクル(n=5)の関節内注入を受けた、C57BL/6Jまたは3MRのマウスを含んだ。
【0346】
ヌトリン3Aで処置したマウスからのマウスの手術した関節からのRNAを、SASP因子(mmp3、IL−6)および老化マーカー(p16)の発現のために分析した。mRNAレベルを検出するために、qRT−PCRを実行した。
図37A−Cに示されるように、ヌトリン3Aによる処置は、関節から老化細胞を取り除く。マウスの手術した関節からのRNAをまた、II型コラーゲンの発現のために分析し、対照としてのアクチンの発現と比較した。
図38に示されるように、変形性関節症の手術を受けたマウスにおけるヌトリン3Aによる処置は、未処置のマウスと比較して、コラーゲン生成を促進する。
【0347】
四肢の機能を、マウスがどちらの脚を好んだかを判定する体重負荷試験によって手術の4週後に評価した(
図39)。測定をとる前に、マウスを、少なくとも3回、室に順応させた。マウスを、各規模で1本の後足で立つように室の内部で練習させた。各後足にかけられた重量を、3秒の期間にわたって測定した。少なくとも3回の別々の測定を、各時間点で各動物のために行った。その結果を、対側の手術を受けなかった肢に対して手術した肢にかけられた重量のパーセンテージとして表わした。
図40に示されるように、変形性関節症の手術を受けた未処置のマウスは、手術した後肢よりも手術を受けなかった後肢を好む(Δ)。しかしながら、ヌトリン3Aで老化細胞を取り除くことで、手術を受けたマウスにおけるこの効果を無効となる(▽)。
【0348】
四肢の機能をまた、痛み刺激に対する感受性および反応を示すホットプレート分析によって手術の4週後に評価した。要するに、マウスを、55℃のホットプレートに置いた。
ホットプレートの熱い面に置かれたときに、マウスは、痛覚域値の到達が原因で、足を上げて、なめるだろう(足をなめる反応)。後肢反応(足をなめる反応)の潜伏期を、応答時間として記録する。
図41に示されるように、変形性関節症手術を受けた未処置のマウスは、手術で変更されていない正常なマウスと比較して、増加した応答時間を有している(■)。しかしながら、ヌトリン3Aによる変形性関節症の手術を受けたマウスの処置は、有意な方法で応答時間を減少させる(▲)。
【0349】
ACL手術によって誘発された変形性関節症の組織病理は、プロテオグリカン層が破壊されたことを例証した。ヌトリン3Aによる老化細胞の除去は、この効果を完全に無効にした。老化細胞を死滅させる、GCVで処置した3MRマウスからの老化細胞の除去は、ヌトリン3Aと同じ、変形性関節症の病態生理に対する影響を有した。
図42を参照。
【0350】
実施例22
アテローム性動脈硬化症の動物モデルにおける老化細胞の除去の効果
2つのアテローム性動脈硬化症のマウスモデルの概略図を、
図43のA−Bに示す。
図43のAに例証される研究は、ヌトリン3AによるLDLR
−/−マウスにおけるプラークからの老化細胞の除去が、どの程度までプラーク負荷を減少させるかを評価した。LDLR
−/−マウスの2つの群(10週)に、0週目から開始して研究の全体にわたって、脂肪から42%のカロリーを有している高脂肪食(HFD)(Harlan Teklad TD.88137)を与える。LDLR
−/−マウスの2つの群(10週)に、通常の餌(−HFD)を与える。0−2週目から、HFDマウスおよび−HFDマウスの1つの群を、ヌトリン3A(腹腔内に、25mg/kg)で処置する。1回の処置サイクルは、14日間処置、14間のオフである。ビヒクルを、HFDマウスの1つの群および−HFDマウスの1つの群に投与する。4週目(時間点1)に、マウスの1つの群を屠殺し、プラーク中の老化細胞の存在を評価する。残りのマウスの一部については、ヌトリン3Aおよびビヒクルの投与を、4−6週目から繰り返す。8週目(時間点2)に、マウスを屠殺し、プラーク中の老化細胞の存在を評価する。残りのマウスを、8−10週目からヌトリン3Aまたはビヒクルで処置する。12週目(時間点3)に、マウス屠殺し、プラークのレベルおよびプラーク中の老化細胞の数を評価する。
【0351】
血漿脂質レベルを、−HFD(1基当たりn=3)を与えたマウスと比較して、時間点1でHFDを与えた及びヌトリン3Aまたはビヒクルで処置したLDLR
−/−マウスにおいて測定した。血漿を、午後の中頃に収集し、脂質およびリポタンパク質の循環のために分析した。データを、
図44のA−Dに示す。
【0352】
時間点1の終わりに、HFDを与えた及びヌトリン3Aまたはビヒクルで処置したLDLR
−/−マウスを屠殺し(n=3、すべての群)、大動脈弓を、SASP因子および老化細胞マーカーのRT−PCR分析のために切開した。値を、GAPDHに標準化し、普通食を与えた、年齢が一致した、ビヒクル処置した、LDLR
−/−マウスに対する倍率変化として表わした。データは、HFDを与えたLDLR
−/−マウスにおけるヌトリン3Aによる老化細胞の除去が、1回の処置サイクル後に、幾つかのSASP因子および老化細胞マーカー、MMP3、MMP13、PAI1、p21、IGFBP2、IL−1A、およびIL−1Bの発現を減少させたことを示す(
図45のA−Dを参照)。
【0353】
時間点2の終わりに、HFDを与えた及びヌトリン3Aまたはビヒクルで処置したLDLR
−/−マウス(すべての群に対してn=3)を屠殺し、大動脈弓を、SASP因子および老化細胞マーカーのRT−PCR分析のために切開した。値を、GAPDHに標準化し、普通食を与えた、年齢が一致した、ビヒクル処置した、LDLR
−/−マウスに対する倍率変化として表わした。データは、HFDマウス内の大動脈弓における幾つかのSASP因子および老化細胞マーカーの発現を示す(
図46のA−C)。HFDを与えたLDLR
−/−マウスにおけるヌトリン3Aの複数回の処置サイクルによる老化細胞の除去は、ほとんどのマーカーの発現を減少させた(
図46のA−B)。
【0354】
時間点3の終わりに、HFDを与えた及びヌトリン3Aまたはビヒクルで処置したLDLR
−/−マウス(すべての基に対してn=3)を屠殺し、大動脈を、切開し、脂質の存在を検出するためにズダン(Sudan)IVで染色した。マウスの身体組成を、MRIによって分析し、循環する血液細胞を、Hemavetによって数えた。データは、ヌトリン3Aによる処置が、下行大動脈中のプラークを〜45%減少させることを示す(
図47のA−C)。
図48のA−Bに示されるように、血小板およびリンパ球の数は、ヌトリン3Aで処置したマウスとビヒクルで処置したマウスとの間で同等であった。
図49のA−Bに示されるように、ヌトリン3Aによる処置はまた、HFDを与えたマウスにおいて質量および体脂肪の組成を減少させた。
【0355】
図43のBで例証される研究は、LDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウスからの老化細胞のアシクロビルベースの除去が、どの程度まで先在するアテローム生成の疾患を改善するかを評価した。LDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウス(10週)およびLDLR
−/−シングルトランシジェニックマウス(10週)に、0週目に開始して12週目まで、高脂肪食を与える。ガンシクロビルを、12−13週目および14−15週目からマウスの両方の群(25mg/kg、腹腔内)に投与する。16週目に、プラークのレベルおよびプラーク中の老化細胞の数を判定する。
図50に示されるように、HFD(n=10)を与えたLDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウスにおけるGCVによる老化細胞の除去は、LDLR
−/−マウス/HFD対照(n=9)と比較して、プラークで覆われていた大動脈の%を減少させる。
図51に示されるように、GCVによる老化細胞の除去はまた、LDLR
−/−マウス/HFD対照(n=5)と比較して、HFD(n=3)を与えたLDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウスにおけるプラーク断面積を減少させる。
【0356】
実施例23
老化細胞の除去は、老化とともに心臓ストレス耐性を保持する
健康および寿命に対する老化細胞の除去の影響を研究するために、FVB x 129Sv/E x C57BL/6を混合した又はC57BL/6の純粋に遺伝的な背景上のINK−ATTACのトランシジェニックマウスのコホートを確立した。12か月齢で、p16陽性の老化細胞のアポトーシスを誘発するために、各コホートの2分の1に、AP20187を週3回注入し(混合した及び純粋なC57BL/6コホートに対して、それぞれ、0.2mg/kgおよび2mg/kgのAP20187)、各コホートの残りの2分の1はビヒクルを受けた。18か月で、各コホートからの雄および雌のマウスのサブセットを、心臓の負荷試験にさらし、その中で、マウスに、致死量のイソプロテレノール(680mg/kg)を注入し、心拍停止までの時間を記録した。18か月齢の未処置(ビヒクル)のマウスは、12か月齢の対照マウスと比較して、心拍停止の著しい加速を一貫して示したが、AP20187で処置したマウスは、性別および遺伝的背景にかかわらず、イソプロテレノールからの若い心保護を保持した(
図52を参照)。
【0357】
心保護シグナル経路は、虚血および低酸素の低下などの代謝ストレスに対する耐性を提供すると知られている(Granfeldt et al., 2009, Cardiovasc. Res. 83:234−246)。しかしながら、心保護シグナルは、老化とともに悪化し、それ故、心臓の機能的且つ適応性のある予備容量を減少させる(Ogawa et al., 1992, Circulation 86:494−503; Wiebe et al., 1998, Clin. J. Sport Med. 8:272−279)。ATP依存性のKチャネル(KATP)は、心保護シグナルに中心的な役割を果たす(Gross and Auchampach, 1992, Cardiovasc. Res. 26:1011−1016)。これらのKATPチャネルは、膜孔形成のサブユニットKir6.2/Kir6.1、調節サブユニットSur2a、および追加のアクセサリータンパク質から構成される。KATPチャネルは、Sur2aの発現の減少が原因で老化とともに低下すると考えられる(Du et al., 2006, FASEB J. 20:1131−1141; Jovanovic and Jovanovic, 2009, Curr. Opin. Pharmacol. 9:189−193; Ranki et al., 2002, Mech. Ageing Dev. 123:695−705)。Sur2aの発現の高まりは、食事の変化(Sukhodub et al., 2011, J. Cell. Mol. Med. 15:1703−1712)またはトランシジェニックなアプローチ(Sudhir et al., 2011, Biogerentology 12:147−155)であろうと、老化したマウスにおいて心臓ストレス耐性を保持すると示されてきた。したがって、Sur2a発現における年齢関連の低下に対する老化細胞の寄与を、前に記載した心臓の負荷試験にさらされた、18か月齢のAP20187で処置した及びビヒクルで処置したマウスにおいて検査した。実際は、18か月齢の雌のAP20187で処置した動物のイソプロテレノールの負荷試験における若い能力は、保持されたSur2a発現に一貫して関連した(
図53を参照)。まとめると、これらの実験は、老化する老化細胞の存在が、KATPの経路機能にマイナスの影響を与え、、老化細胞の除去は、この悪化を対抗する有効な治療である。保持された心機能は、AP20187で処置したINK−ATTACマウスにおいて観察された平均寿命の延長に寄与し得る。
【0358】
実施例24
老化細胞の除去は、LDLR
−/−/3MRマウスのアテローム性動脈硬化症を改善する
成熟したアテローム性動脈硬化プラークの安定性およびサイズに対する老化細胞の除去の影響を、LDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウスにおいて研究した。10週齢から、LDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウス(10週)およびLDLR
−/−のシングルトランシジェニックマウス(対照)に、通常の食事に切り替えられたとき、0週目に開始して12.5週目まで、42%のカロリーを有している高脂肪食(Harlan Teklad TD.88137)を与えた。マウスの両方の群を、次の100日間にわたって、12.5週目からガンシクロビルで処置し、各処置サイクルは、5日間のガンシクロビル(25mg/kg、腹腔内に毎日)および14日間のオフを含んだ。100日の処置期間の終わりに、マウスを屠殺し、血漿および組織を収集し、アテローム性動脈硬化を定量化した。
【0359】
下行大動脈を、切開し、ズダンIVで染色して、プラーク脂質を視覚化した。
図54のA−Bに示されるように、ガンシクロビルで処置したLDLR
−/−/3MRのダブルトランシジェニックマウスは、HFDを与えたLDLR
−/−対照マウスよりも弱い染色を有する、より少ないアテローム性動脈硬化プラークを有した。ズダンIV染色の領域によって測定されるようなプラークにおいて覆われる大動脈の%も、LDLR
−/−対照マウスと比較して、ガンシクロビルで処置したLDLR
−/−/3MRマウスにおいて著しく低かった(
図54のC参照)。
【0360】
ガンシクロビルで処置したLDLR
−/−対照およびLDLR
−/−/3MRのマウスからのプラーク(それぞれ、
図55のA−Bにおける破線での円のプラークを参照)を、採取し、断面に切断し、アテローム性動脈硬化プラークの一般的な構造を特徴付けるように染色した。「#」は、大動脈の外部に位置する脂肪を示す(
図55のAを参照)。
図55のAおよびBにおいて、それぞれ、「
*」および「
**」と印が付けられたプラークを、それぞれ、
図55のBおよびDにおいて染色された断面として示す。
図55のBおよびDで例証されるように、ガンシクロビルで処置したLDLR
−/−/3MRマウスにおける老化細胞の除去は、LDLR
−/−対照マウスと比較して、プラーク形態に効果がある。対照マウスからのプラークは、内側に蓄積する識別可能な「脂質ポケット」を有する。ガンシクロビルで処置したLDLR
−/−/3MRマウスからのプラークは、厚い線維性被膜の存在および脂質ポケットの欠如を示す。脂質に富んだプラークの被膜における破壊または断裂は、血小板および血液の凝固成分へのプラークの血栓形成成分曝露を介する冠動脈イベントの引き金となる。急速な脂質沈着の結果としてより急速に成長し、薄い線維性被膜を有する、プラークは、破裂しがちである。成熟した線維性被膜を有するゆっくり成長するプラークは、安定する傾向があり、破裂しがちではない。まとめると、これらの実験は、老化細胞の除去が、アテローム性動脈硬化プラークの構造に影響を与え、安定効果を有し得ることを示す。
【0361】
アテローム性動脈硬化の大動脈の組織切片を準備し、SA−β−GALを検出するために染色した。X−GAL結晶を、脂質を有するマクロファージ泡末細胞および平滑筋泡末細胞のリソソームに位置付けた(
図56−58を参照)。
【0362】
実施例25
肺疾患モデルにおける老化細胞の除去の効果
1つの動物モデル研究は、ブレオマイシンで誘発された肺損傷を有するトランスジェニックマウス株3MRにおける老化細胞の除去の効果を評価した。特発性肺線維症のためのブレオマイシン損傷モデルにおいて、マウスは、ブレオマイシン処置後の7−14日以内に肺線維症を進行させる(例えば、Limjunyawong et al., 2014, Physiological Reports 2:e00249; Daniels et al., 2004, J. Clin. Invest. 114:1308−1316を参照)。ブレオマイシンを、Daniels et al. (2004, J. Clin. Invest. 114:1308−1316)に記載されるように、マイクロスプレーシリンジ(Penn−Century, Inc.)を使用して、気管内吸引(50μlのPBS中に2.5U/kgのブレオマイシン)によって、麻酔をかけた6−8週齢の3MRマウスに投与した。対照マウスに生理食塩水を投与した。ブレオマイシン処置の翌日に、ガンシクロビル(GCV)(PBS中に25mg/kg)を投与した。3MRマウスを、5日間連続してガンシクロビルを用いて腹膜腔内注射によって処置し、その後5日間安息日を設け、その後5日連続の第2の処置サイクルが続いた。未処置のマウスは、等量のビヒクルを受けた。ブレオマイシン処置の7、14、および21日後に、肺機能を、MouseSTAT PhysioSuiteのパルスオキシメータ(Kent Scientific)を使用して、酸素飽和をモニタリングすることによって評価した。イソフルラン(1.5%)で動物に麻酔をかけ、鉄頭鉄唇を適用した。マウスを、30秒間モニタリングし、この期間にわたる平均の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO
2)測定を計算した。
図59に示されるように、ブレオマイシン投与は、ビヒクルで処置したマウスにおけるSpO
2レベルを著しく低下させ、老化細胞の除去は、結果として、より高いSpO
2レベルをもたらし、これは、ブレオマイシン投与の21日後に標準のレベルに接近した。ブレオマイシン処置の21日後に、マウスの気道過敏性(AHR)を検査した。マウスのAHRを、メタコリン誘発(challenge)によって測定し、一方で、肺機能の他のパラメータ(気道力学、肺容量および肺コンプライアンス)を、SCIREQ flexiVentのベンチレータを使用して判定した。Aravamudan et al. (Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. (2012) 303:L669−L681)に記載されるように、ケタミン/キシラジンの麻酔下にある、および気管切開術(19FrのブラントLuerカニューレ)による気管のカニューレ挿入にさらされている間、マウスの気道抵抗(エラスタンス)およびコンプライアンスを、ベースラインで、および噴霧(AeroNeb)によって送達された増加する濃度のメタコリン(PBS中に0乃至50mg/ml)に応じて、評価した。動物を、37℃で維持し、一方、筋肉麻痺(パンクロニウム)下で;気道機能を、FlexiVent(商標)のベンチレータおよび肺力学システム(SCIREQ, Montreal, Quebec, Canada)を使用することによって測定し、これを、スタビール(stabile)8上に収容した。
図60のAで示されるように、ビヒクルで処置したマウスにおいて、ブレオマイシン投与は、肺エラスタンスを増加させ、一方で、ガンシクロビル処理は、肺エラスタンスを減少させた。
図60のB−Cに示されるように、ブレオマイシン投与は、ビヒクル処置したマウスにおいて静的コンプライアンスおよび(動的)コンプライアンスを減少させた。ブレオマイシンにさらされたマウスにおけるガンシクロビルによる老化細胞の除去は、コンプライアンス値を著しく改善した(
図60のB−C)。統計的に有意でないが、動物群のサイズが小さすぎたため、データは、老化細胞破壊薬剤(ヌトリン3A)による老化細胞の除去がまた、ブレオマイシンにさらされたマウスにおいて、肺エラスタンスを減少させ、肺コンプライアンスを増加させたことを示唆した。ペントバルビタールの腹腔内注入によって、マウスを安楽死させた。気管支肺胞洗浄(BAL)の流体および肺を得て、分析する。肺のヒドロキシプロリン含有量を、Christensen et al. (1999, Am . J. Pathol. 155:1773−1779)に記載されるように測定し、定量的な病理組織診断を行った。処置した及び対照のマウスにおいてqRT−PCRによって老化細胞マーカーを測定するために、RNAを、肺組織から抽出する。
【0363】
IPFのブレオマイシンで誘発された肺損傷モデルにおける老化細胞の除去の効果は、上に記載される研究設計においてINK−ATTACのトランシジェニックマウス中で研究されてもよい。INK−ATTAC(標的としたカスパーゼの活性化によるp16
ink4aアポトーシス)のトランシジェニックマウスは、p16
ink4aプロモーターの制御下で、FK506結合タンパク質(FKBP)−カスパーゼ8(Casp8)融合ポリペプチドを有する(例えば、上のBaker et al., Nature;国際公開番号WO/2012/177927を参照)。膜結合したミリストイル化FKBP−Casp8融合タンパク質の二量体化を引き起こす合成薬である、AP20187の存在下において、p16
ink4aプロモーターによってFKBP−Casp8融合タンパク質を特異的に発現する老化細胞は、プログラム細胞死(アポトーシス)を受ける(例えば、上のBaker, Nature、
図1を参照)。
【0364】
第2の研究はまた、ブレオマイシンで誘発された肺損傷を有するC57BL6/Jマウスにおいて老化細胞破壊薬剤を使用する老化細胞の除去の効果を評価する。ブレオマイシンを、上に記載されるように、6週齢のC57BL6/Jマウスに投与する。老化細胞破壊薬剤を、ブレオマイシン処理後の1週目および3週目の間に投与する。対照マウスを、ビヒクルで処置する。ブレオマイシン処置21日後に、老化細胞の除去および肺機能/組織病理を評価する。
【0365】
肺疾患(例えば、COPD)のための第2の動物モデルにおいて、マウスを、たばこ煙にさらした。煙にさらされたマウスに対する老化細胞破壊薬剤の効果を、老化細胞の除去、肺機能、および組織病理によって評価する。
【0366】
6週齢の3MR(n=35)またはINK−ATTAC(n=35)のマウスを、チャンバにおいて副流煙と主流煙の組み合せを生成する自動制御の喫煙マシンである、Teague TE−10システムから発生した、たばこ煙に慢性的にさらし、これは、様々な量の空気が煙の組み合わせと混合される収集および混合のチャンバに移送される。Johns Hopkins UniversityのCOPDコア施設から、COPDプロトコルを適用した (インターネットサイトの、 web .jhu .edu/Biswal/exposure_core/copd.html#Cigarette_Smoke) (Rangasamy et al., 2004, J. Clin. Invest. 114:1248−1259; Yao et al., 2012, J. Clin. Invest. 122:2032−2045)。マウスは、6か月間、週5日、1日当たり合計6時間のたばこ煙の曝露を受けた。各々の火のついたたばこ(1本のたばこ当たり、10.9mgの合計の粉粒体(TPM)、9.4mgのタール、および0.726mgのニコチン、および11.9mgの一酸化炭素を含有している3R4F研究のたばこ[University of Kentucky, Lexington, KY])を、1.05l/minの流速で、2秒間および1分ごとに合計8回吹き、35cm
3の標準の吹きを提供した。喫煙マシンを、一度に2本のたばこに火をつけることによって、副流煙(89%)および主流煙(11%)の組み合わせを提供するように調節した。喫煙チャンバの空気を、合計の浮遊粒子(80−120mg/m
3)および一酸化炭素(350ppm)のためにモニタリングした。7日目から、(10)INK−ATTACおよび(10)3MRのマウスを、それぞれ、AP20187(1週当たり3x)またはガンシクロビルで処置した(5日連続の処置後、16日間薬物を与えず、これを、実験の終了まで繰り返した)。等しい数のマウスが、対応するビヒクルを受けた。残りの30匹のマウス(15 INK−ATTACおよび15 3MR)を、均等に分け、各々の遺伝子組換えの株の5匹を、3つの異なる処置群に入れた。1つの群(n=10)は、ヌトリン3Aを受けた(10%のDMSO中に溶解した25mg/kg/PBS中の3%のTween−20、14日間連続して処置し、その後、14日間薬物を与えず、これを、実験の終了まで繰り返した)。1つの群(n=10)は、ABT−263(Navitoclax)を受け(15%のDMSO中に溶解した100mg/kg/5%のTween−20、7日間連続して処置し、その後、14日間薬物を与えず、これを、実験の終了まで繰り返した)、最後の群(n=10)は、ABT−263と同じ処置レジメンにしたがって、ABT−263に使用されたビヒクルのみを受けた(15%のDMSO/5%のTween−20)。たばこ煙への暴露を受けなかった追加の70の動物を、対照として実験に使用した。
【0367】
2か月のたばこ煙への曝露後、肺機能を、MouseSTAT PhysioSuiteのパルスオキシメータ(Kent Scientific)を使用して、酸素飽和度をモニタリングすることによって評価した。イソフルラン(1.5%)で動物に麻酔をかけ、鉄頭鉄唇を適用した。マウスを、30秒間モニタリングし、この期間にわたる平均の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO
2)測定を計算した。
図61に示されるように、AP20187、ガンシクロビル、ABT−263(Navi)、またはヌトリン3Aによる老化細胞の除去は、結果的に、未処置の対照と比較して、2か月間のたばこ煙への曝露後にマウスにおけるSpO
2レベルの統計的に有意な増加をもたらした。
【0368】
実験期間の終わりに、SCIREQ flexiVentのベンチレータおよび肺力学システムを使用するメタコリン誘発に対するマウスの気道過敏性(AHR)を、上に記載されるように検査する。AHR測定後、マウスを、前に記載したように、肺組織病理の詳細な分析のためにペントバルビタールの腹腔内注入によって死滅させる(Rangasamy et al., 2004, J. Clin. Invest. 114:1248−1259)。簡潔には、肺を、25cmの定圧で0.5%の低融点アガロースによって膨張させる。肺組織の一部を、老化マーカーのRNA抽出およびqRT−PCR分析のために収集する。肺の他の部分を、10%の中性ホルマリン中に固定し、パラフィンに埋め込む。断片(5μm)を、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色する。平均の肺胞直径、肺胞の長さ、および平均の線形の切片を、Image Pro Plus software (Media Cybernetics)を用いて、コンピュータ支援の形態計測によって判定する。
【0369】
COPDが完全に進行した後の老化細胞の除去の潜在的な治療効果は、3MRまたはINK−ATTACのマウスにおいて評価され得る。上に記載されるように、6週齢の3MRまたはINK−ATTACのマウスを、6か月間たばこ煙に慢性的にさらす。煙曝露の開始の6か月後に、3MRまたはINK−ATTACのマウスを、煙曝露の開始後9か月まで、それぞれ、ガンシクロビル(5日間連続の処置後、16日間薬物を与えない)またはAP20187(3x/週)で処置し、そのときに、老化細胞の除去、肺機能、および組織病理の評価を行う。
【0370】
実施例26
MDM2阻害剤、RG−7112の老化細胞破壊の活性を判定するためのインビトロの細胞アッセイ
肺線維芽細胞株IMR90(ヒト初代肺線維芽細胞、ATCC(登録商標)CCL−186TM、Manassas, Virginia)を、6ウェルのプレート中で播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって老化を誘発した。老化表現型を、少なくとも7日間進行させた。
【0371】
老化表現型が進行した後、細胞を、96ウェルのプレートへと再び播種し、老化細胞(照射された)および非老化細胞(放射されていない細胞)を、3日または6日の期間の間、100μMのMDM2阻害剤、RG−7112(
図62のAの構造を参照)から開始する8回の2倍の連続希釈にさらした。3日後、細胞生存率を、市販のCellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation, Madison, Wisconsin)を使用して測定した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
図62は、RG−7112(
図62のBを参照)への3日の曝露、および6日の後にIMR90細胞生存を示す(
図62のCを参照)。
【0372】
実施例27
化学療法関連の副作用を減少させるABT−263による老化細胞の除去の効果
疲労などの化学療法関連の副作用を減少させるABT−263などの老化細胞破壊薬剤の能力を、p16−3MRのトランシジェニックマウスにおいて検査した。ドキソルビシンに加えて、パクリタキセルも、動物に投与されたときに細胞老化を誘発する。p16−3MRのトランスジェニックマウスモデルの記載について実施例2を参照。
【0373】
パクリタキセルは、p16−3MRのトランシジェニックマウスにおける老化およびSASPを誘発する。マウスの群(n=4)を、20mg/kgのパクリタキセルまたはビヒクルによって2日ごとに3回処置した。パクリタキセルで処置したマウスにおける発光によって示されるように、老化が観察された(
図63のAを参照)。皮膚におけるmRNAのレベルを、標的遺伝子:p16、3MRトランスジーン、およびIL−6の各々のために判定した。
図63のBに示されるように、p16、3MR、およびIL−6の各々に対するmRNAのレベルは、ビヒクルで処置した動物と比較して、パクリタキセルで処置した動物において増加した。
【0374】
実験の概略図を、
図64に示す。この実験では、パクリタキセルを、2日ごとに3回、p16−3mrマウス(n=4)の群に投与した。パクリタキセルの3回目の投与の2日後に、ガンシクロビルを、25mg/kgで毎日3日(1、2、および3日目)腹腔内に投与した。ABT−263(100mg/kg)を、パクリタキセル投与後の7日間、毎日腹腔内に投与した。ABT−263の最後の投与の2日後に、すべての動物の群を、代謝ケージ(promethion,sable systems international, Las Vegas, NV)に収容し、回転数によって測定されるように自発運動をモニタリングした。データを、2日後に収集し、分析した。データを、
図64(左側)に示す。ABT−263およびガンシクロビルによる老化細胞の除去は、化学療法処置によって引き起こされた回転数の減少のおよそ70%を回復した。
【0375】
実施例28
老化を誘発する化学療法薬
異なる化学療法薬によって誘発された老化を検査するために、p16−3MR動物の群(n=4)を、サリドマイド(100mg/kg;7回の毎日の注入);ロミデプシン(1mg/kg;3回の注入);ポマリドマイド(5mg/kg;7回の毎日の注入);レナリドマイド(50mg/kg;7回の毎日の注入);5−アザシチジン(5mg/kg;3回の注入)で処置し、ドキソルビシン(10mg/kg、7日にわたる2−4回の注入)と比較した。薬物で処置した動物における発光のレベルを、
図65に示す。ポマリドマイド、レナリドマイド、およびドキソルビシンによる動物の処置は、結果として老化細胞の有意なレベルをもたらした(p<0.05)。
【0376】
実施例29
老化関連の経路
ナノLC MS/MSによるプロテオミクス解析を、老化した又は非老化のヒトの腹部の皮下前脂肪細胞の可溶化物上で行った。老化に弱いヒトにおける最も豊富な細胞タイプの1つである、前脂肪細胞を、コラゲナーゼ消化によって9人の異なる健康な腎臓移植ドナーの脂肪組織から抽出した。ドナーからの事前の同意を得た。10Gyの放射線または連続の継代培養によって、老化を誘発した。既存の薬物に弱く、細胞死を媒介し得る、経路を識別するために、バイオインフォマティクス法を使用した。
【0377】
細胞老化関連のβ−ガラクトシダーゼ(SA−β gal)の活性を、照射された細胞培養中に存在する老化細胞のパーセンテージを評価するために使用した。この実験において老化培養として考慮するために、細胞の75%以上は、SA−β galの活性を実証する必要があった。全細胞可溶化物および細胞上清の両方を、収集した。タンパク質を、1D SDS−PAGE上で分離した。ゲルの断片を、脱染し、縮小し、アルキル化し、トリプシン消化した。抽出したペプチドを、THERMO SCIENTIFIC(商標)Q Exactiveの質量分析計によってナノ−LC−MS/MSによって分析した。LCProgenesisソフトウェア(Nonlinear Dynamics, UK)を、タンパク質を識別し、定量化するために使用した。その後、データを、経路およびタンパク質ネットワークの分析のための、Ingenuity、Metacore、Cytoscape、および他のソフトウェアに送信した。経路の中で、老化中に変更されたのは、細胞生存シグナルおよび炎症性の経路に関係する経路であった。これらの経路は、少なくともPI3K/AKT、Srcキナーゼシグナル、インスリン/IGF−1シグナル、p38/MAPK、NF−κBシグナル、TGFβシグナル、およびmTOR/タンパク質翻訳を含む。
【0378】
図66は、放射後の様々な時間(24時間;3、6、8、11、15、20、および25日)に、これら及び関連する経路に含まれるタンパク質の確証的なウエスタンイムノブロットを示す。老化細胞のサンプル中のリン酸化されたポリペプチドを、
図66に示されるポリペプチドに特異的なホースラディッシュペルオキシダーゼで標識化した抗体(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)を使用することによって検出した。老化は、これらの細胞において25日目から30日目の間に完全に確立される。
【0379】
実施例30
p16−3MRマウスにおける老化細胞破壊薬剤によって減少された高脂肪供給誘発性の老化(HIGH FAT FEEDING−INDUCED SENESCENCE)
p16−3MRマウスの群(n=6)に、4か月間、高脂肪食(60%の脂肪)または通常の食事を与えた。老化細胞の存在を、発光を測定することによって判定した(即ち、p16陽性細胞)。
図67に示されるように、高脂肪食を与えた動物は、通常の食事を与えた動物と比較して、増加した数の老化細胞を有している。
【0380】
その後、老化細胞の除去が、脂肪組織中の老化細胞の存在を減少させたかどうかを判定するために、動物を、ガンシクロビルまたはビヒクルで処置した。動物の群を、ガンシクロビルまたはビヒクルで処置した。ガンシクロビル(25mg/kg)を、5日間連続して毎日投与した。腎周囲、精巣上体、または皮下鼠径部の脂肪組織における老化細胞の存在を、SA−β−Gal染色によって検出した。データを、ANOVAによって分析した。結果を、
図68に示す。老化細胞の存在の著しい減少が、精巣上体の脂肪中で観察された。p=<0.004。
【0381】
実施例31
老化細胞の除去は、グルコース耐性およびインスリン感性を改善する
p16−3MRマウスの群(n=9)に、4か月間、高脂肪食または通常の食事を与えた。その後、動物を、ガンシクロビル(5日間連続の25mg/kgのガンシクロビルの毎日の投与が3ラウンド)またはビヒクルで処置した。グルコースボーラス投与(glucose bolus)を、ゼロ時に与え、グルコース処分を判定するために、血中グルコースを、グルコースを送達した20、30、60、および120分後にモニタリングした(
図69Aを参照)。これを、「曲線下面積」(AUC)として定量化し(
図69Bおよび69Cを参照)、より高いAUC値は、グルコース不耐性を示している。ガンシクロビルで処置したマウスのAUCは、通常の食事を与えた動物ほど低くはないが、ビヒクルで処置したマウスのAUCより著しく低かった。ヘモグロビンA1cは、ガンシクロビルで処置したマウスにおいてより低く(
図69Cを参照)、これは、動物のより長期的なグルコース処理が改善されたことも示唆している。
【0382】
インスリン感性も測定した(インスリン耐性試験(ITT))。結果を、
図70に示す。ガンシクロビルで処置したマウスは、ゼロ時でのグルコースボーラスの投与の0、14、30、60、および120分後に血中グルコースのより大きな減少を示し(
図70Aを参照)、これは、老化細胞の除去が、インスリン感性を改善したことを示唆している。ガンシクロビルを野生型のマウスに投与したときのインスリン耐性試験の変化は観察されなかった(
図70Bを参照)。
【0383】
体重、身体組成、および食物摂取量の変化もモニタリングした。ガンシクロビルによる処置は、体重、脂肪のパーセントの測定によりモニタリングされた身体組成、または食物摂取量(1週当たりグラムで測定された)を変更しなかった。
【0384】
実施例32
BCL−2/BCL−XL阻害剤の老化細胞破壊の活性
A−1155463による処置後の細胞生存率を評価するために、細胞生存率アッセイを使用した。細胞数測定アッセイのための一般的なタイムラインおよび手順を、
図18に示し、実施例7に記載する。IMR90細胞(ヒト初代肺線維芽細胞を、6ウェルのプレートに播種し、10Gyのイオン化放射線(IR)によって、細胞の老化を引き起こした(0日目)。培地を、3日ごとにリフレッシュさせた。老化表現型を、7日間進行させ、その時点で、細胞数を数え、細胞のベースライン数を測定し、その後、96ウェルのプレートへ播種した。8日目に、老化細胞(照射された)および非老化細胞(放射されていない細胞)を、24時間の期間の間、A−1155463の連続希釈にさらした。各調整培地を、3回繰り返して播種した。細胞を、CellTiter−Glo(登録商標)(CTG) Luminescent Cell Viability Assay を使用して、細胞生存のために分析した。アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの量に基づいて培養中の生細胞の数を測定する。
【0385】
図72は、老化細胞および非老化細胞におけるA−1155463のIC50曲線を示す。IC50曲線は、処置後の細胞生存のパーセンテージのプロットである。
【0386】
上に記載される様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせられ得る。2014年1月28日に出願の、米国仮特許出願第61/932,704号;2014年1月28日に出願の、第61/932,711号;2014年4月15日に出願の、第61/979,911号;2014年5月23日に出願の、第62/002,709号;2014年8月27日に出願の、第62/042,708号;2014年9月2日に出願の、第62/044,664号;2014年9月30日に出願の、第62/057,820号;2014年9月30日に出願の、第62/057,825号;2014年9月30日に出願の、第62/057,828号;2014年10月8日に出願の、第62/061,627号;および2014年10月8日に出願の、第62/061,629号を含む、本明細書で言及される及び/又はApplication Data Sheetにリストされる、すべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公開は、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる。またさらなる実施形態を提供するために、様々な特許、出願および公開の概念を使用する必要がある場合、実施形態の態様は、変更可能である。
【0387】
これらおよび他の変更は、上述の記載に照らして実施形態に対して行なうことができる。一般に、以下の請求項において、使用される用語は、明細書および請求項に開示される特定の実施形態に請求項を限定するようには解釈されるべきでないが、そのような請求項が与えられる同等物の十分な範囲とともに、すべての考えられ得る実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、請求項は、開示によって限定されない。