特許第6688229号(P6688229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリアインク ディスプレイズ,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688229
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】二粒子全内部反射画像ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20190101AFI20200421BHJP
【FI】
   G02F1/167
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-567369(P2016-567369)
(86)(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公表番号】特表2017-516145(P2017-516145A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】US2015030349
(87)【国際公開番号】WO2015175518
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】61/992,095
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516091477
【氏名又は名称】クリアインク ディスプレイズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CLEARINK DISPLAYS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100181021
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 剛輝
(72)【発明者】
【氏名】ション ロー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー イー.プレン
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−535005(JP,A)
【文献】 特表2009−531721(JP,A)
【文献】 特開2007−047370(JP,A)
【文献】 特開2007−183378(JP,A)
【文献】 特開昭55−004067(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0209418(US,A1)
【文献】 MOSSMAN, Michele A. et al.,A novel reflective image display using total internal reflection,DISPLAYS,2004年11月 2日,Volume 25, issue 5,215-221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/165−1/19
G09F 9/30
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面シートと、前面電極と、無機材料を含む誘電体層と、を有する前面アセンブリであって、前記前面電極は、前記前面シートと前記誘電体層との間に配置され、前記前面シートは更に、少なくとも1つの凸状突起を含む、前記前面アセンブリと、
前記前面アセンブリとともにギャップを形成する背面アセンブリであって、バックプレーン及び背面電極を有し、前記背面電極は前記誘電体層と対向して配置される、前記背面アセンブリと、
前記ギャップ内にある液状媒体と、
前記液状媒体内に分散した、正の電荷を帯び光を吸収する複数の電気泳動可動粒子と、負の電荷を帯び光を吸収する複数の電気泳動可動粒子と、
を備える全内部反射(TIR)画像ディスプレイ。
【請求項2】
前記背面電極は更に、薄膜トランジスタアレイ、直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイ、又はこれらの組合せを備える、請求項1に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項3】
横断壁を更に備える、請求項1または請求項2に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項4】
スペーサ構造物を更に備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項5】
前記背面アセンブリは更に、前記背面電極上に誘電体層を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項6】
指向性前面照明を更に備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項7】
色フィルタ層を更に備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項8】
エッジ封止材を更に備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項9】
前記凸状突起は半球状構造を画定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項10】
前記凸状突起は、前記複数の、負又は正の電荷を帯びた粒子を均一に分散させるように構成された構造を画定する、請求項1から9のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項11】
前記正の電荷を帯び光を吸収する複数の電気泳動可動粒子は第1の光学特性を有し、前記負の電荷を帯び光を吸収する複数の電気泳動可動粒子は第2の光学特性を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の全内部反射画像ディスプレイ。
【請求項12】
全内部反射画像ディスプレイを暗い状態から明るい状態に切り替える方法であって、
第1の非ゼロ電圧を印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有し光を吸収する、複数の第1の電気泳動帯電粒子を、前記ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、暗い状態を形成するステップと、
実質的にゼロの電圧又は電圧パルスを印加することにより、前記第1の電荷及び前記第1の光学特性を有する、前記第1の複数の電気泳動帯電粒子と、第2の電荷及び第1の光学特性を有し光を吸収する、複数の第2の電気泳動帯電粒子とを、前記ディスプレイの前記前面シートの前記表面から遠ざけて、明るい状態を形成するステップと、
第2の非ゼロ電圧を印加することにより、前記第2の電荷及び前記第1の光学特性を有する、前記第2の複数の電気泳動帯電粒子を、前記ディスプレイの前記前面シートの前記表面に引き付けて、暗い状態を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
全内部反射画像ディスプレイを第1の光学状態から明るい状態に切り替え、第2の光学状態に切り替える方法であって、
第1の非ゼロ電圧を印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有し光を吸収する、第1の複数の電気泳動帯電粒子を、前記ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、第1の光学状態を形成するステップと、
実質的にゼロの電圧又は電圧パルスを印加することにより、前記第1の電荷及び前記第1の光学特性を有する、前記第1の複数の電気泳動帯電粒子と、反対の電荷及び第2の光学特性を有し光を吸収する、複数の第2の電気泳動帯電粒子とを、前記ディスプレイの前記前面シートの前記表面から遠ざけて、明るい状態を形成するステップと、
第2の非ゼロ電圧を印加することにより、前記複数の第2の電気泳動帯電粒子を、前記ディスプレイの前記前面シートの前記表面に引き付けて、第2の光学状態を形成するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年5月12日に出願された米国仮特許出願第61/992,095号明細書の出願日利益を主張するものであり、この出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、全般的には、高輝度、広視野角のディスプレイにおける全内部反射(TIR)のフラストレーションに関する。具体的には、本開示の実施形態は、相反する電荷を帯びた粒子で構成される直流(DC)平衡式全内部反射ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的には、従来の全内部反射(TIR)画像ディスプレイにおける光変調は、前面シートの表面のエバネッセント波領域を出入りする電気泳動可動粒子の動きによって制御される。前面シートは、光を全内部反射することが可能な、凸状突起などの複数の構造物で構成されてよい。前面シートは、典型的には、透明な電極層を更に含む。背面シートは、背面電極層を含んでよい。液体中に懸濁している電気泳動可動粒子からなる電気泳動媒体が、前面シートと背面シートとの間に配置される。電気泳動可動粒子は、電圧が印加されることによって、電気泳動媒体内を移動する。典型的には、これらの粒子は、正又は負のいずれかの電荷を帯び、単一光学特性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの粒子がディスプレイの動作中に前面又は背面の電極に電気泳動的に移動すると、ディスプレイは、直流(DC)不平衡モードで動作していることになる。反対側の、又は相反する電極に反対の極性の電圧が印加されることが、潜在的にディスプレイ部品の劣化を引き起こし、従って、ディスプレイの寿命を短くし、ユーザエクスペリエンスを損ねる可能性がある。
【0005】
本開示のこれらの実施形態及び他の実施形態について、以下の例示的且つ非限定的な図面を参照して説明する。これらの図面において、類似の要素には類似の参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】暗い状態における、相反する電荷を帯びた粒子を含む反射画像ディスプレイを概略的に示す図である。
図1B】高輝度状態における、相反する電荷を帯びた粒子を含む反射画像ディスプレイを概略的に示す図である。
図1C】暗い状態における、相反する電荷を帯びた粒子を含む反射画像ディスプレイを概略的に示す図である。
図2】本開示の一実施形態による、図1(A〜C)に描かれたディスプレイの動作を表すグラフである。
図3】電圧バイアス依存の暗い状態、灰色状態、及び高輝度状態を引き起こす方法を概略的に示す図である。
図4】電圧バイアス依存の暗い状態、灰色状態、及び高輝度状態を引き起こす方法を概略的に示す図である。
図5A】第1の光学状態における、光学特性が異なる帯電粒子を有する反射画像ディスプレイを概略的に示す図である。
図5B】明るい状態における、光学特性が異なる帯電粒子を有する反射画像ディスプレイを概略的に示す図である。
図5C】第2の光学状態における、光学特性が異なる帯電粒子を有する反射画像ディスプレイを概略的に示す図である。
図6】本開示の実施形態による一例示的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
当業者のより深い理解が得られるように、以下の説明全体を通して、具体的な詳細を示している。しかしながら、本開示が無用に不明瞭になることを避ける為に、よく知られている要素については図示又は詳細な説明をしていない場合がある。従って、本明細書の記載及び図面は、限定的ではなく例示的であると見なされたい。
【0008】
特定の実施形態では、本開示は、DC平衡二粒子TIR画像ディスプレイを提供する。非ゼロ電圧バイアスの印加により、TIRをフラストレートして光吸収状態又は暗い状態を生成する為に、実質的に同一の運動性及び実質的に同一の光学特性(即ち、色)を有する、相反する電荷を帯びた電気泳動可動粒子が使用される。
【0009】
特定の実施形態では、DC平衡式という用語は、2つ以上の相反する電極が実質的に同一の電荷を帯びることを意味してよい。従って、或る粒子が前面電極に移動した場合は、電荷を平衡させる為に、別の1つ(又は複数)の粒子が、反対の電荷を帯びた電極に移動しなければならない。一粒子ディスプレイの場合は、いかなる時点においても、電極がどのようにバイアスされているかに応じて、1つの粒子だけが一方の電極から他方の電極に移動する。本開示の特定の実施形態では、電極がどのようにバイアスされているかに応じて、2つ(又は複数)の粒子が移動する。
【0010】
特定の実施形態では、粒子の光学特性は、粒子の色として定義されてよい。色は、ディスプレイを見ている裸眼が知覚できてよい。光学特性という用語及び色という用語は、区別なく使用されてよい。粒子の色又は光学特性は、粒子が光を吸収又は反射する性質の結果であってよい。本開示の原理から逸脱しない限り、粒子の他の光学特性が使用されてもよい。
【0011】
特定の実施形態では、DC平衡式ディスプレイには、第1の電荷を帯びた電気泳動可動粒子を一方の電極に引き付けると、反対の電荷を帯びた電気泳動可動粒子も反対の電極に引き付けられてよいディスプレイが含まれてよい。非ゼロ電圧バイアスを印加することにより、反対の電荷を帯びた粒子を1つ以上、反対の電極に移動させることが可能である。特定の実施形態では、相反する電荷を帯びた粒子同士の光学特性又は色が実質的に同一であると、DC平衡が光学状態の変化を引き起こさない可能性がある。
【0012】
例示的一実装形態では、電極間に0Vが印加されると、両種類の粒子が、ディスプレイの前面のエバネッセント波領域から移動する。これによって、全内部反射(TIR)のフラストレーションが防がれ、ディスプレイが高輝度状態又は白色状態になる。高輝度状態は、ディスプレイの明るい状態とも称されてよい。電圧の連続体を印加することにより、灰色状態の連続体を達成することが可能である。この電圧の連続体は、明るい状態と暗い状態との間になるように構成されてよい。更に、本明細書に記載のDC平衡式システムは、LCD型の(又は他の同様の)ディスプレイシステムで利用されている既存の駆動用電子回路と直接互換であってよい。これにより、一粒子TIR画像ディスプレイの場合に必要とされた、適切な駆動用電子回路の開発での大きな投資を行わずに済む。更に本明細書では、本開示の原理を使用する多色ディスプレイの実施形態についても説明する。
【0013】
2種類の帯電粒子(負の電荷を帯びた粒子と正の電荷を帯びた粒子)を有するディスプレイに関して例示的実施形態を説明するが、本開示の原理はこれに限定されないことに留意されたい。ディスプレイ内に平衡電荷を実質的に与える別の実施形態が、3種類以上の帯電粒子(例えば、蓄積すると全電荷が平衡する、より強い電荷を帯びた粒子と、より弱い電荷を帯びた粒子)を含むように形成されてよい。
【0014】
図1Aから図1Cは、様々な動作状態における、相反する電荷を帯びた粒子を含む反射画像ディスプレイの一部分を描いたものである。具体的には、図1Aから図1Cの実施形態は、正の電荷を帯びた複数の粒子と負の電荷を帯びた複数の粒子とを含むDC平衡式TIRディスプレイシステムを概略的に示している。これらの帯電粒子は、参照しやすいように、負又は正の粒子としてマーキングされている。これらの粒子の光学特性(例えば、色)は、実質的に同一又は同等であってよい。本開示の一実施形態では、電気泳動移動度、拡散率、直径、及び光吸収断面の大きさは、正の粒子の場合も負の粒子の場合も実質的に同等となる。そのような実施形態は、両方の極性において画像応答が実質的に同等であることを可能し、これによって、両方の極性の同じ電圧が印加された場合に、その電圧の大きさに対する光吸収量の変化が確実に同等になる。
【0015】
図1Aから図1Cを参照すると、ディスプレイ100が、ギャップ又はキャビティによって隔てられた上部アセンブリ102及び下部アセンブリ104を含む。上部アセンブリは、少なくとも1つの表面構造、例えば、凸状又は半球状の突起108を含む前面シート106を含む。半球状突起108は、光線を全内部反射することが可能な起伏面を形成する。凸状部分は、正又は負の電荷を帯びた複数の粒子をディスプレイの1つ以上の領域に集中させるように構成された構造を画定してよい。別の実施形態では、凸状部分は更に、正又は負の電荷を帯びた複数の粒子を前面シートの表面上に実質的に均一に分散させるように構成された構造を画定してよい。
【0016】
上部アセンブリは更に、前面透明電極層110を含み、これは、半球状アレイ108の表面上に配置されてよい。透明電極層110は、インジウム・スズ酸化物(ITO)、又は金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)の薄層、又は導電ポリマー、又はこれらの組合せを含んでよい。
【0017】
上部アセンブリ102は更に、前面電極層110の上に配置された誘電体層112を含んでよい。誘電体層112は、有機材料(例えば、ポリマー)、無機材料、又はこれらの組合せを含んでよい。誘電体層では、パリレン族ポリマーが使用されてよい。一実施形態では、誘電体層は、概ねコンフォーマル且つピンホールフリーである。
【0018】
図1Aから図1Cの実施形態では、ディスプレイ100の下部アセンブリ104はバックプレーン114を含み、バックプレーン114は、背面電極として動作する上部電極層116を有する。電極層116は、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイを含んでよい。電極層116は金属で作られてよく、例えば、銅、アルミニウム、金、又は銀で作られてよい。電極層116は、ポリマーマトリックス形式の導電粒子(例えば、ナノワイヤ又はナノ粒子)で作られてよい。図示されていないが、誘電体層は、背面電極層を保護し、粒子粘着を実質的に解消する為に、任意選択で、背面電極に貼り付けられてよい。
【0019】
誘電体層112と背面電極層116との間に形成されたギャップ又はキャビティに、低屈折率の液状媒体118が配置される。液状媒体118は、分散光を吸収する、負の電荷を帯びた複数の粒子120と、分散光を吸収する、正の電荷を帯びた複数の粒子122と、を受け入れることが可能である。低屈折率の媒体として、フルオロ液があってよく、例えば、Fluorinert(商標)FC−770、FC−43、FC−75、Novec(商標)649又は7500があってよい。
【0020】
外部電圧源(図示せず)によって媒体118全体に電界を印加することにより、粒子120及び122を電気泳動的に移動させることが可能である。粒子120、122は、有機材料、又は無機材料、又は有機材料と無機材料の組合せから作られてよい。一例示的実施形態では、相反する電荷を帯びた粒子同士の光吸収の光学特性及び性質が実質的に同一であってよい。
【0021】
例えば、図1Aに描かれるように、前面電極層110に、正の電圧バイアス(例えば、+10V)が、十分な継続時間(例えば、5〜10ミリ秒)にわたって印加されると、負の電荷を帯びた粒子120が前面電極110に引き付けられる。TIRがフラストレートされて、相対反射率が低下し、一方、正の電荷を帯びた電気泳動可動粒子122が、背面電極層116に引き付けられ、背面電極層116に向かって移動する。入射光線、例えば、典型的な光線124が、前面誘電体層112にある負の電荷を帯びた粒子によって吸収され、これによって、画像ディスプレイは暗い状態になる。更に、ディスプレイ100は、DC平衡モードで動作していてよい。画像シーケンシング中のディスプレイ装置において、負の電荷を帯びた光吸収粒子を駆動する正電圧の累積時間と、正の電荷を帯びた光吸収粒子を駆動する負電圧の累積時間と、は実質的に同一である。
【0022】
従来の電気泳動ディスプレイでは、画像シーケンスで駆動シーケンスを制御することが可能である。画像シーケンスによっては、正の駆動時間と負の駆動時間とを平衡させることができない場合がある。その結果、ディスプレイ装置内に分極が発生する場合があり、これは、その後の画質を害する可能性がある。本開示の実施形態は、この欠点及び他の欠点を克服する為に、いかなる画像シーケンスに対してもDC平衡駆動シーケンスを使用できるように、画像シーケンスを駆動シーケンスから切り離すことを可能にする。
【0023】
図1Bは、0V(図示せず)が印加され、その結果として、ディスプレイが高輝度状態又は白色状態(明るい状態と称されてもよい)になった様子を示している。0Vにおいては、負の電荷を帯びた電気泳動可動粒子120が、前面電極110の近くのエバネッセント波領域から遠ざかることにより、複数の半球状突起108の表面において光線の全内部反射の発生が可能になり、これにより画像ディスプレイが明るい状態になる。図1Bでは、TIRは、入射光線126が全内部反射されて光線128となり、半再帰反射として光源に戻る形で示されている。図1Bは、更に、正の電荷を帯びた粒子122が背面電極116から遠ざかる様子を示している。
【0024】
更に別の実施形態では、いわゆる電圧パルス印加によって、ディスプレイが高輝度状態又は白色状態になり、これが維持されることが可能である。電気泳動可動粒子120は、まず、適切な電圧の印加によって、エバネッセント波領域から出されることが必要である。例えば、ディスプレイ100が、図1Aに描かれた状態、即ち、帯電粒子が電極110及び116に沿って並ぶ状態であるとする。更に、背面電極層116に+10Vバイアスが印加され、前面電極層110に−10Vバイアスが印加されてから、正の電荷を帯びた粒子122が背面電極116から前面電極110まで移動するのに約20ミリ秒かかるとする。また、負の電荷を帯びた粒子120が前面電極110から背面電極116まで移動するのに約20ミリ秒かかるとする。最初に、背面電極に約+10V、前面電極に約−10Vを約10ミリ秒の継続時間にわたって印加すると、負の電荷を帯びた粒子120がエバネッセント波領域から出て、前面電極と背面電極との間のほぼ中程まで移動する。これにより、入射光線のTIRの結果として、ディスプレイが白色状態又は高輝度状態になる。次に、その後に、相反する極性であって継続時間の短い交番電圧による電圧パルス印加を行うことにより、ディスプレイ100の安定した高輝度状態を維持することが可能である。
【0025】
例えば、一例示的電圧パルス印加方法では、+5Vを5ミリ秒、その後、−5Vを5ミリ秒印加してよい。このパルス印加方法は、指定された継続時間にわたって続けることが可能である。様々な時間長に対するパルス長は、目的及び所望の結果に応じて様々であってよい。
【0026】
別の例示的実施形態では、少なくとも約1ナノ秒のパルス長が使用されてよい。エネルギを節約する為に、各パルスの間の、パルス以外の時間長を様々にすることが行われてよい。極性、電圧の大きさ、電圧パルス継続時間、電圧パルス以外の継続時間が様々である、非限定的な多様なパルス電圧が、ディスプレイ、媒体118の粘度、前面電極と背面電極との間のギャップ距離、粒子上の電荷の大きさ及び濃度、粒子の移動度、及び所望の目的に応じて使用されてもよい。
【0027】
図1Cは、その後の、図1Aの装置の暗い状態を示す。図1Cに示されるように、負の電圧バイアス、例えば、−10Vを前面電極110に印加すると、正の電荷を帯びた粒子122が、前面電極110に引き付けられ、前面電極110に向かって移動する。この状態では、粒子122は、半球状面の近くに集まり、エバネッセント波領域に入ってTIRをフラストレートする。この結果、画像ディスプレイは、光を吸収する暗い状態になる。この、光を吸収する暗い状態は、図1Cでは、入射光線130が、光を吸収する、正の電荷を帯びた粒子122によって吸収される形で示されている。図1Cに概略的に示されるように、負の電荷を帯びた粒子120は、背面電極116に引き付けられる。図1A及び図1Cに示されるように、十分な継続時間の非ゼロ電圧(例えば、+10V又は−10V)を媒体118全体に印加すると、粒子は前面電極層及び背面電極層に引き付けられる。この粒子の引き付けの結果として、TIRがフラストレートされて、画像ディスプレイが暗い状態になるのみならず、ディスプレイがDC平衡状態になる。
【0028】
図2は、図1(A〜C)の間のディスプレイの相対反射率の関係を示すグラフである。具体的には、図2は、正の電荷を帯びた粒子と負の電荷を帯びた粒子の両方を有する二粒子TIR式ディスプレイの全内部反射及び光吸収の電圧バイアス依存性を示す。図2では、x軸は、測定が実施されていた時間であり、y軸は、結果としての相対反射率の測定値である。反射率の測定値は、暗い部屋で、鏡面光線がマスクされるように、環状照明が、サンプルの表面に垂直な方向に対して約5度から約30度の角度でサンプルを照らすことによって取得されてよい。輝度のベースラインとして、Labsphere Spectralon SRS−99−020、AS−01161−060などの反射率標準が使用されてもよい。反射率を測定する為に、Topcon BM−9などの輝度計が使用されてよい。
【0029】
前面電極110及び液状媒体118全体に+10Vを印加すると、相対反射率は低下する(図2、+10Vの見出しの下の実線)。これは、負の電荷を帯びた粒子120が、複数の半球状突起の表面に隣接する前面電極及び誘電体層に引き付けられた結果である。ここで、負の電荷を帯びた粒子120がディスプレイ100のエバネッセント波領域に入ると、TIRがフラストレートされる(図1Aを参照)。電圧パルス印加が後に続く、指定されたパルス時間の0V又は負電圧バイアスが印加されると、図1Aの負の電荷を帯びた粒子120がエバネッセント波領域から出て遠ざかり、入射光線のTIRによって明るい状態になる。図2に示されるように、相対反射率は上昇する(0Vの見出しの下の実線)。前面電極に負電圧バイアス、例えば、−10Vを印加すると、正の電荷を帯びた粒子122が前面電極110に向かって、半球の近くに移動し、TIRがフラストレートされて、相対反射率が低下する(図2、−10Vの見出しの下の点線)。これによって、画像ディスプレイ100が暗い状態になる(図1を参照)。前面電極に0V又は正電圧バイアスが印加されると、正の電荷を帯びた粒子122がエバネッセント波領域から遠ざかり、図2の0Vの見出しの下の点線で示されるように相対反射率が上昇する為、入射光線のTIRによって高輝度状態になる。本明細書において既述の電圧パルス印加により、高輝度状態又は明るい状態の安定を維持することが可能である。
【0030】
図3は、ディスプレイ200を電圧バイアス依存の暗い状態、灰色状態、及び高輝度状態にする方法を概略的に示す。図3の画像ディスプレイ200は、図1のディスプレイ100に関して説明された黒色状態、白色状態、及び灰色状態を描写する、相反する電荷を帯びた粒子を含む。ディスプレイ200は、ギャップ又はキャビティによって隔てられた上部アセンブリ202及び下部アセンブリ204を含む。ギャップ(図示せず)の領域が、エバネッセント領域を画定してよい。一実施形態では、半球状面の近くのギャップ内の領域がエバネッセント領域である。
【0031】
上部アセンブリ202は、少なくとも1つの表面構造、例えば、光線を全内部反射することが可能な凸状又は半球状の突起208を有する前面シート206と、半球状突起の表面上に配置された前面透明電極層210と、前面電極層210の上に配置された誘電体層212と、を含む。図示されていないが、誘電体層は、任意選択で、背面電極に貼り付けられてよい。図3Aから図3Cは、ディスプレイ200の下部アセンブリ204を示しており、下部アセンブリ204は更にバックプレーン214を含み、バックプレーン214は、背面電極として動作する上部電極層216を有する。電極層216は、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイを含んでよい。上部アセンブリ202と下部アセンブリ204との間に配置されたギャップ218に、液状媒体218が配置されてよい。一実施形態では、液状媒体218は低屈折率である。媒体218は、分散光を吸収する、負の電荷を帯びた複数の粒子220と、分散光を吸収する、正の電荷を帯びた複数の粒子222と、を含んでよい。ディスプレイ200は更に、電圧源(図示せず)を含んでよい。
【0032】
本開示の二粒子TIR式反射ディスプレイ200は、DC平衡灰色状態レベルを生成することが可能である。図3の実施形態では、前面電極層210にバイアス(−10V)を印加すると、正の電荷を帯びた粒子222が、複数の半球状突起208の起伏面の近くの前面電極210及び誘電体層212に引き付けられる。かなりの量の粒子222が、TIRをフラストレートし、画像ディスプレイ200を暗い状態又は光を吸収する状態にすることが可能である。このことは、典型的な光線232が帯電粒子222によって吸収される形で示されている。負の電荷を帯びた粒子220が、DC平衡の為に+10Vでバイアスされている背面電極216に集まる。−10Vは例示を目的としたものに過ぎず、これは他の任意の電圧であってよく、必要とされる電圧強度は、粒子表面の電荷密度、及び粒子移動度に依存することに留意されたい。
【0033】
例えば、印加電圧を−10Vから−5Vに減らすと、正の電荷を帯びた粒子222の一部がエバネッセント波領域から出る。その結果、光線の一部が吸収される。この状態は、典型的な光線234が粒子222に吸収される形で概略的に示されている。更に、入射光線236が全内部反射され、反射光線238として現れる形で表されるように、光線の一部は全内部反射される。従って、中間的な電圧が印加されて、光線の一部が吸収され、一部が反射されると、ディスプレイ200には、灰色状態を含む反射画像が生成される。
【0034】
印加電圧が0Vに近づくにつれて、より多くの光線が全内部反射される。これは、エバネッセント波領域から出る粒子の数が増える為である。0Vに達すると、正の電荷を帯びた粒子222のほぼ全てがエバネッセント波領域から出る可能性があり、その結果、ディスプレイは高輝度状態又は白色状態になる。このことは、入射光線240が全内部反射され、半再帰反射光線242として現れる形で示されている。一実施形態では、印加する非ゼロ電圧バイパスを、例えば、図3のディスプレイ200に示されるように−10Vから0Vまで減らすことにより、灰色状態レベルの連続体を生成することが可能である。本明細書に記載のように明るい状態又は高輝度状態を維持する為に、電圧パルス印加が用いられてもよい。
【0035】
図4は、ディスプレイ300を電圧バイアス依存の暗い状態、灰色状態、及び高輝度状態にする方法を概略的に示す。図4は更に、DC平衡システムにおける印加電圧バイアスの連続体に依存する、可能な灰色状態の連続体を示す。図4の画像ディスプレイ300は、黒色状態、白色状態、及び灰色状態を描写する、相反する電荷を帯びた粒子を含み、ディスプレイ100と同様である。ディスプレイ300は、ギャップ又はキャビティによって隔てられた上部アセンブリ302及び下部アセンブリ304を含む。上部アセンブリは、少なくとも1つの表面構造、例えば、光線を全内部反射することが可能な凸状又は半球状の突起308を含む前面シート306と、半球状突起の表面上に配置された前面透明電極層310と、前面電極層310の上に配置された誘電体層312と、を含む。また、ディスプレイ300に含まれる下部アセンブリ304は更にバックプレーン314を含み、バックプレーン314は、背面電極として動作する上部電極層116を有する。電極層316は、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイを含んでよい。図示されていないが、誘電体層は、任意選択で、背面電極に貼り付けられてよい。上部アセンブリ302と下部アセンブリ304との間に配置されたギャップ318に、液状媒体318が配置されてよい。一実施形態では、媒体318は低屈折率である。媒体318は、分散光を吸収する、負の電荷を帯びた複数の粒子320と、分散光を吸収する、正の電荷を帯びた複数の粒子322と、を含む。ディスプレイ300は更に、電圧源(図示せず)を含んでよい。
【0036】
本開示の二粒子型TIR反射ディスプレイ300は、DC平衡灰色状態レベルを生成することが可能である。このシナリオでは、負の電荷を帯びた粒子320の実質的に全てが、前面電極310及び複数の半球308の近くの誘電体層312の表面の近くに集まることが可能なように、前面電極に+10Vを印加することが可能である。実質的に全ての入射光線が吸収されると、ディスプレイは暗い状態になる。このことは、典型的な入射光線340が、負の電荷を帯びた粒子320によって吸収される形で示されている。正の電荷を帯びた粒子322は、DC平衡の為に−10Vが印加されている背面電極に集まる。印加電圧を、例えば、+5Vまで減らすと、エバネッセント波領域から出る負の電荷を帯びた粒子320の数が増えるか、負の電荷を帯びた粒子320の連続体がエバネッセント波領域から出る。その結果、一部の入射光線、例えば、典型的な光線342が、表面に残っている光吸収粒子320によって吸収され、その一方で、一部の光線が全内部反射され、例えば、典型的な入射光線344が半再帰反射光線346として現れる。このように、吸収された光線と全内部反射された光線とが混ざり合ってDC平衡した灰色状態になる。印加電圧を更に0Vまで減らすと、全ての粒子がエバネッセント波領域から出て遠ざかる。この粒子の移動によって、実質的に全ての入射光線が全内部反射されて明るい状態になる。このことは、典型的な光線348が半再帰反射光線350として現れる形で示されている。明るい状態は、本明細書に記載の電圧パルス印加によって維持することが可能である。
【0037】
図1図3、及び図4の実施形態では、異なる電荷を帯び、同一光学特性(例えば、黒色)を有する粒子が相反する電荷を帯びた電極に引き付けられる二粒子TIR式DC平衡反射画像ディスプレイが示された。図3及び図4のディスプレイは、黒色状態と、白色状態と、可能な灰色状態の連続体とを表示することが可能な例示的実施形態である。図1図3、及び図4の実施形態はまた、従来のLCD駆動用電子回路に適合するものであってよい。
【0038】
別の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、色フィルタアレイを更に含んでよい。色フィルタアレイは、赤、青、緑、又はシアン、マゼンタ、黄のサブピクセルを含んでよい。
【0039】
別の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、薄膜トランジスタアレイ、又は直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイ、又はこれらの組合せを更に含んでよい。
【0040】
別の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、指向性前面照明を更に含んでよい。指向性前面照明は更に、光源、光ガイド、光抽出素子アレイ、又はこれらの組合せを含んでよい。光源は、発光ダイオード(LED)、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、又は表面実装技術(SMT)による白熱灯であってよい。
【0041】
別の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、上部アセンブリと下部アセンブリとの間のギャップ間隔を制御する少なくとも1つのスペーサ構造物を更に含んでよい。スペーサ構造物は、限定はされないが、球体、ビード、立方体、円筒、又は角柱の形状であってよい。スペーサ構造は、限定はされないが、ポリマー、ガラス、金属、又は他の有機又は無機材料で構成されてよい。
【0042】
別の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、横断壁を更に含んでよい。横断壁は、粒子の移動や沈降を防ぐべく、粒子及び媒体を閉じ込める為のウェル又はコンパートメントをディスプレイ内に作成することに使用されてよい。このウェル又はコンパートメントは、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形が規則的又は不規則に配列された形状であってよい。横断壁は、ガラス、ポリマー、又は他の有機又は無機材料で構成されてよい。
【0043】
別の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、少なくとも1つのエッジ封止材を更に含んでよい。ディスプレイの少なくとも1つのエッジに沿って、エッジ封止材が使用されてよい。このエッジ封止材の形成に使用される封止材料は、熱又は光化学で硬化する材料であってよい。エッジ封止材は、エポキシ、シリコン、又は他のポリマーベースの材料であってよい。
【0044】
他の実施形態では、図1図3、又は図4に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ100、200、及び300のうちのいずれかが、薄膜トランジスタ、或いはパターン化又は直接駆動アレイ、指向性前面照明、色フィルタアレイ、少なくとも1つのスペーサ構造物又は横断壁、少なくとも1つのエッジ封止材、又はこれらの組合せを更に含んでよい。
【0045】
本開示の実施形態は、暗い状態、明るい状態、及び灰色状態に限定されない。別の実施形態では、二粒子反射画像を修正することにより、色フィルタアレイを必要とせずに多色表示を生成することが可能である。例えば、負の電荷を帯びた粒子は、第1の光学特性(即ち、色)(例えば、赤)を有してよい。正の電荷を帯びた粒子は、第2の光学特性(例えば、黒)を有してよい。第3の白色光学状態は、複数の凸状又は半球状突起の表面における入射光線の全内部反射によって生成されてよい。
【0046】
前面電極に正の電圧バイアスを印加することにより、負の電荷を帯びた赤の粒子を前面に引き付けて、TIRをフラストレートし、赤の画像状態を生成することが可能である。前面電極に負の電圧バイアスを印加することにより、正の電荷を帯びた黒の粒子を前面に引き付けて、TIRをフラストレートし、黒の画像状態を生成することが可能である。0Vを印加することにより、粒子をエバネッセント波領域から出させて、入力光線が全内部反射されることを可能にして、高輝度又は白色の画像状態を生成することが可能である。多様な色の粒子が使用されてよく、これらは、説明された赤及び黒に限定されない。
【0047】
図5Aから図5Cは、光学特性が異なる帯電粒子を有するディスプレイが様々な動作状態にある様子を概略的に示している。具体的には、図5Aから図5Cは、様々な動作状態にある、DC平衡モードのTIR式ディスプレイ400の一部分を描いたものである。画像ディスプレイ400の設計は、図1Aから図1Cのディスプレイ100と実質的に同様であるが、異なる点として、第1の光学特性を有する、正の電荷を帯びた、第1の複数の粒子と、第2の光学特性を有する、負の電荷を帯びた、第2の複数の粒子と、の両方を含む。一実施形態では、電気泳動移動度及び拡散率の大きさは、光学特性が異なる正負の粒子の両方において実質的に同等であってよい。これにより、印加電圧の大きさに対して粒子の挙動が同様になるようにする為に、画像応答を両極性において同様にすることが可能である。
【0048】
ディスプレイ400は、ギャップ又はキャビティによって隔てられた上部アセンブリ402及び下部アセンブリ404を含む。上部アセンブリは、少なくとも1つの表面構造、例えば、光線を全内部反射することが可能な凸状又は半球状の突起408を更に含む前面シート406と、半球状突起の表面上に配置された前面透明電極層410と、前面電極層410の上に配置された誘電体層412と、を含む。図5Aから図5Cに示される下部アセンブリ404は、バックプレーン414を有し、バックプレーン414は、背面電極として動作する上部電極層416を有する。電極層416は、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイを含んでよい。図示されていないが、誘電体層は、任意選択で、背面電極に貼り付けられてよい。上部アセンブリ402と下部アセンブリ404との間に配置されたギャップ418に、低屈折率の液状媒体418が配置されてよい。媒体418は、第1の光学特性の、分散光を吸収する、負の電荷を帯びた複数の粒子420と、第2の光学特性の、分散光を吸収する、正の電荷を帯びた複数の粒子422と、を含む。光学特性が異なる粒子420、422は、有機材料、又は無機材料、又は有機材料と無機材料の組合せから作られてよい。粒子420、422は、外部電圧源(図示せず)によって媒体418全体に電界を印加することにより、電気泳動的に移動することが可能であってよい。光学特性が2つである粒子が示されているが、本開示の原理は、3つ以上(複数)の光学特性の粒子についても適用されてよく、本開示の実施形態は、光学特性が2つだけの粒子に限定されない。
【0049】
例えば、図5Aに描かれるように、前面電極層410に、正の電圧バイアス(例えば、+10V)が印加されると、第1の光学特性(例えば、赤)の、負の電荷を帯びた粒子420が、前面電極410及び誘電体層412に引き付けられる。この、複数の半球408の近くの場所では、TIRがフラストレートされて、相対反射率が低下する。第2の光学特性(例えば、黒)の、正の電荷を帯びた電気泳動可動粒子422が、−10Vの電圧バイアスを有する背面電極層416に引き付けられ、背面電極層416に向かって移動する。その結果、TIRがフラストレートされ、入射光線、例えば、典型的な光線424が、前面誘電体層412にある負の電荷を帯びた粒子によって吸収される。これによって、画像ディスプレイは、負の電荷を帯びた粒子420の光学特性と同じ色(例えば、赤など)である、第1の光学状態になる。
【0050】
図5Bは、0Vが印加されて、ディスプレイが高輝度又は白色の光学状態になる様子を描いたものである。印加電圧がゼロの場合、負の電荷を帯びた電気泳動可動粒子420が、複数の半球状突起408の表面の近くのエバネッセント波領域から実質的に遠ざかる。これにより、光線が全内部反射されて、画像ディスプレイが白色状態又は高輝度状態になることが可能である。このことは、入射光線426が全内部反射されて光線428となり、これが光源に向かって半再帰反射される形で示されている。更に、正の電荷を帯びた粒子422は、背面電極層416から遠ざけられる。この白色状態又は高輝度状態は、本明細書において既述の電圧パルス印加の後に、適切な電圧及び継続時間により粒子をエバネッセント波領域から出させることにより、維持可能である。
【0051】
図5Cに示されるように、負の電圧バイアス、例えば、−10Vを前面電極に印加すると、例えば、黒であって、負の電荷を帯びた粒子420の第1の光学特性とは異なる、第2の光学特性の、正の電荷を帯びた電気泳動可動粒子422が、前面電極410及び誘電体層412に引き付けられ、それらに向かって移動する。この場所では、正の電荷を帯びた粒子422は、複数の半球408の表面の近くにあって、それらの粒子はエバネッセント波領域に入る。その結果、TIRがフラストレートされ、入射光線、例えば、典型的な光線430が、前面誘電体層412にある、第2の光学特性の、正の電荷を帯びた粒子422によって吸収される。これによって、画像ディスプレイは第2の光学状態になり、これはディスプレイを見ているユーザには黒に見える。更に、負の電荷を帯びた粒子420は、背面電極層416に引き付けられる。図5A及び図5Cに示されるように、非ゼロ電圧バイアス(例えば、+10V又は−10V)を媒体418全体に印加すると、両粒子は前面電極層及び背面電極層に引き付けられる。この結果として、TIRがフラストレートされて多色反射画像ディスプレイが少なくとも3つの異なる色になるだけでなく、ディスプレイがDC平衡になる可能性もある。このディスプレイ400は、複数の色を表示することが可能であって、また、既存のLCD駆動用電子回路に適合することが可能である。
【0052】
図5Aから図5Cのディスプレイ400は、正及び負の電荷を帯びた粒子の様々な光学状態の混合の結果として得られる様々なDC平衡光学状態(即ち、色)を示すことも可能である。これは、電圧バイアスの連続体を印加することによって行われてよい。
【0053】
他の実施形態では、図5に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ400は更に、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、或いは直接駆動アレイ又は電極のパターン化アレイを含んでよい。
【0054】
別の実施形態では、図5に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ400は更に、指向性前面照明を含んでよい。
【0055】
別の実施形態では、図5に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ400は更に、少なくとも1つのスペーサ構造物を含んでよい。
【0056】
別の実施形態では、図5に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ400は更に、横断壁を含んでよい。
【0057】
別の実施形態では、図5に示された二粒子全内部反射画像ディスプレイ400は更に、少なくとも1つのエッジ封止材を含んでよい。
【0058】
他の実施形態では、ディスプレイ400は更に、薄膜トランジスタアレイ、直接駆動アレイ、パターン化アレイ、指向性前面照明、少なくとも1つのスペーサ構造物又は横断壁、少なくとも1つのエッジ封止材、又はこれらの組合せの任意の組合せを含んでよい。
【0059】
本明細書に記載のディスプレイの実施形態は、限定はされないが、電子書籍リーダー、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブル、携帯電話、スマートカード、看板、時計、棚ラベル、フラッシュドライブ、及び屋外広告板又は屋外看板などの用途に使用されてよい。
【0060】
図6は、本開示の実施形態による一例示的方法である。図6の実施形態は、図1及び図3から図5に関して開示されたようなディスプレイにおいて実施されてよい。図6の方法は、まずステップ600で、第1の非ゼロ電圧を印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、複数の第1の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、暗い状態を形成する。
【0061】
ステップ610では、実質的にゼロの電圧又は電圧パルスを印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、第1の複数の電気泳動帯電粒子と、第2の電荷及び第1の光学特性を有する、複数の第2の電気泳動帯電粒子とを、ディスプレイの前面シートの表面から遠ざけて、明るい状態を形成する。第1の粒子と第2の粒子は別物であってよく、或いは、第1の粒子と第2の粒子は、実質的に同じ粒子を意味してもよい。一代替実施形態では、ステップ610は、実質的にゼロの電圧又は電圧パルスを印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、第1の複数の電気泳動帯電粒子と、反対の電荷及び第2の光学特性を有する、複数の第2の電気泳動帯電粒子とを、ディスプレイの前面シートの表面から遠ざけて、明るい状態を形成するステップを含んでよい。
【0062】
ステップ620では、第2の非ゼロ電圧を印加することにより、第2の電荷及び第1の光学特性を有する、第2の複数の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、暗い状態を形成する。一代替実施形態では、ステップ620は、第2の非ゼロ電圧を印加することにより、第2の電荷及び第1の光学特性を有する、第2の複数の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、暗い状態を形成するステップを含んでよい。
【0063】
以下の非限定的な実施形態は、本開示の実施形態の更なる説明である。実施例1の対象は、全内部反射(TIR)画像ディスプレイであって、このディスプレイは、前面シートと、前面電極と、誘電体層と、を有する前面アセンブリであって、前面電極は、前面シートと誘電体層との間に配置され、前面シートは更に、少なくとも1つの凸状突起を含む、前面アセンブリと、前面アセンブリとともにギャップを形成する背面アセンブリであって、バックプレーン及び背面電極を有し、背面電極は誘電体層と対向して配置される、背面アセンブリと、ギャップ内にある低屈折率媒体と、低屈折率媒体内に分散した、正の電荷を帯びた複数の電気泳動可動粒子と、負の電荷を帯びた複数の電気泳動可動粒子と、を含む。
【0064】
実施例2の対象は、実施例1のディスプレイであって、背面電極が更に、薄膜トランジスタアレイ、直接駆動アレイ、又は電極のパターン化アレイ、又はこれらの組合せを含む。
【0065】
実施例3の対象は、実施例2のディスプレイであって、横断壁を更に含む。
【0066】
実施例4の対象は、実施例1〜3のいずれかのディスプレイであって、スペーサ構造物を更に含む。
【0067】
実施例5の対象は、実施例1〜4のいずれかのディスプレイであって、背面アセンブリが更に、背面電極上に誘電体層を含む。
【0068】
実施例6の対象は、実施例1〜5のいずれかのディスプレイであって、指向性前面照明を更に含む。
【0069】
実施例7の対象は、実施例1〜6のいずれかのディスプレイであって、色フィルタ層を更に含む。
【0070】
実施例8の対象は、実施例1〜7のいずれかのディスプレイであって、エッジ封止材を更に含む。
【0071】
実施例9の対象は、実施例1〜8のいずれかのディスプレイであって、横断壁とエッジ封止材と指向性前面照明とを更に含む。
【0072】
実施例10の対象は、実施例1〜9のいずれかのディスプレイであって、凸状部分は半球状構造を画定する。
【0073】
実施例11の対象は、実施例1〜10のいずれかのディスプレイであって、凸状部分は、複数の、負又は正の電荷を帯びた粒子を均一に分散させるように構成された構造を画定する。
【0074】
実施例12の対象は、実施例1〜11のいずれかのディスプレイであって、正の電荷を帯びた複数の電気泳動可動粒子は第1の光学特性を有し、負の電荷を帯びた複数の電気泳動可動粒子は第2の光学特性を有する。
【0075】
実施例13の対象は、実施例1〜12のいずれかのディスプレイであって、横断壁を更に含む。
【0076】
実施例14の対象は、実施例1〜13のいずれかのディスプレイであって、スペーサ構造物を更に含む。
【0077】
実施例15の対象は、実施例1〜14のいずれかのディスプレイであって、背面アセンブリは更に、背面電極上に誘電体層を含む。
【0078】
実施例16の対象は、実施例1〜15のいずれかのディスプレイであって、指向性前面照明を更に含む。
【0079】
実施例17の対象は、実施例1〜16のいずれかのディスプレイであって、スペーサ構造物とエッジ封止材と指向性前面照明とを更に含む。
【0080】
実施例18の対象は、実施例1〜17のいずれかのディスプレイであって、横断壁とエッジ封止材と指向性前面照明とを更に含む。
【0081】
実施例19の対象は、全内部反射画像ディスプレイを暗い状態から明るい状態に切り替える方法であって、この方法は、第1の非ゼロ電圧を印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、複数の第1の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、暗い状態を形成するステップと、実質的にゼロの電圧又は電圧パルスを印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、第1の複数の電気泳動帯電粒子と、第2の電荷及び第1の光学特性を有する、複数の第2の電気泳動帯電粒子とを、ディスプレイの前面シートの表面から遠ざけて、明るい状態を形成するステップと、第2の非ゼロ電圧を印加することにより、第2の電荷及び第1の光学特性を有する、第2の複数の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、暗い状態を形成するステップと、を含む。
【0082】
実施例20の対象は、全内部反射画像ディスプレイを第1の光学状態から明るい状態に切り替え、第2の光学状態に切り替える方法であって、この方法は、第1の非ゼロ電圧を印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、第1の複数の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、第1の光学状態を形成するステップと、実質的にゼロの電圧又は電圧パルスを印加することにより、第1の電荷及び第1の光学特性を有する、第1の複数の電気泳動帯電粒子と、反対の電荷及び第2の光学特性を有する、複数の第2の電気泳動帯電粒子とを、ディスプレイの前面シートの表面から遠ざけて、明るい状態を形成するステップと、第2の非ゼロ電圧を印加することにより、第2の電荷及び第2の光学特性を有する、複数の電気泳動帯電粒子を、ディスプレイの前面シートの表面に引き付けて、第2の光学状態を形成するステップと、を含む。
【0083】
本明細書において示した各例示的実施形態に関して本開示の原理を説明してきたが、本開示の原理はこれらに限定されず、それらに対するあらゆる修正形態、変形形態、又は置換形態を包含する。
図1A-C】
図2
図3
図4
図5A-C】
図6