(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定子の周方向において、異なる組の前記第1スロットがmスロット間隔で設けられ、異なる組どうしの前記第1スロットの間にm−1個の前記第2スロットが設けられている請求項1に記載の回転電機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、固定子巻線が1極対おきに交互に巻かれているため、減極動作時に3相の起磁力分布がアンバランスとなる。そのため、特定の相の電圧が高くなり、高速動作範囲が制限されるという不都合が生じる。また、トルクリップルが増加し、振動、騒音が悪化するという不都合が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、高速動作範囲の拡大を図り、かつ適正に回転電機を駆動させることができる回転電機及び回転電機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成の符号を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
第1の手段では、回転電機において、
回転子(22)と、
周方向に設けられた複数のスロット(34)に固定子巻線(11,12)が巻装されてなる固定子(23)と、
を備え、前記固定子巻線は、3相の相巻線を、2の累乗数であるn組有して構成されており、
前記スロットは、同じ組かつ同じ相であって、通電の向きを同一とする前記相巻線が収容された第1スロット(34A)と、異なる組かつ同じ相の前記相巻線が収容された第2スロット(34B)とを有し、
前記固定子において周方向に所定間隔で前記第1スロット及び前記第2スロットがそれぞれ設けられており、
前記3相の相巻線は、相ごとの巻線間隔をそれぞれ等しくして前記固定子に巻装されている。
【0008】
同じ組かつ同じ相であって、通電の向きを同一とする相巻線が収容された第1スロットでは、該当する相巻線の通電により起磁力が足し合わされる。また、異なる組かつ同じ相の相巻線が収容された第2スロットでは、該当する相巻線の通電の態様に応じて、異なる組の相巻線どうしで磁気力が足し合わされるか、又は起磁力が相殺される。この場合、各組で相巻線の通電方向が切り替えられることで、第2スロットにおいて起磁力が足し合わされる状態と起磁力が相殺される状態とが切り替えられ、ひいては回転電機の極数を切り替えることが可能となる。回転電機の極数の切り替えにより、回転電機の動作範囲を拡大できる。
【0009】
本手段では特に、3相の相巻線は相ごとの巻線間隔がそれぞれ等しくなっているため、いずれの極数であっても、各相が発生する起磁力の間隔が等しくなる。そのため、起磁力の円周方向アンバランスに起因したトルクリップルを低減でき、振動や騒音の低減を図ることができる。また、同様の理由により相電圧のばらつきが抑えられるため、高速動作範囲を一層拡大することができる。
【0010】
第2の手段では、前記固定子の周方向において、異なる組の前記第1スロットがmスロット間隔で設けられ、異なる組どうしの前記第1スロットの間にm−1個の前記第2スロットが設けられている。
【0011】
上記構成では、固定子の周方向において、mスロット間隔の第1スロットを基準にして各第1スロットの間にm−1個の第2スロットが配置されており、回転電機の各極数モードにおいて、起磁力が生じるスロット、すなわち2組の相巻線の通電方向が同じになるスロットを周方向に等間隔で配置する上で有利な構成を実現できる。これにより、いずれの極数モードにあっても、起磁力を円周方向にバランス良く生じさせることができる。
【0012】
第3の手段では、前記第2スロットには、異なる組の相巻線が各組同数で収容されている。
【0013】
上記構成によれば、いずれの極数でも、各相巻線において同じ電流振幅で動作させることが可能となる。この場合、電力変換部の各相の電圧・電流定格が同じでよいため、電力変換部の構成部品を共通化でき、コストを低減できる。
【0014】
第4の手段では、前記固定子巻線は、前記n組の相巻線として、2^(A−1)組の相巻線を有するものであり、前記第2スロットには、互いに異なる複数の組み合わせで各2組の相巻線が収容されるスロットが含まれており、極数をA段階で切り替えることが可能となっている。
【0015】
上記構成では、異なる組かつ同じ相の相巻線が収容される第2スロットについて、どの組の相巻線の通電を反転させるかによって、極数をA段階で切り替えることが可能となる。これにより、複数のトルク特性を好適に実現可能となる。
【0016】
第5の手段では、前記n組の相巻線は、第1組目〜第n組目の相巻線よりなり、前記第2スロットには、相ごとに第1組目〜第n組目の相巻線のうち2組ずつの各々異なる組み合わせであるn−1種類の相巻線が収容されたスロットが含まれている。
【0017】
上記構成によれば、各第2スロットに収容される2組ずつの相巻線の組み合わせが、相ごとにn−1種類となっている。この場合、相ごとにn−1種類の組み合わせを有する各第2スロットを用い、その第2スロットに対して適宜の通電を行うことにより、極数比の切り替えを多段で実施する上で有利な構成を実現できる。
【0018】
第6の手段では、回転電機システムにおいて、上記の回転電機と、前記回転電機における前記各相巻線の通電を制御する制御部(15)と、を備え、前記制御部は、前記第2スロットに収容された前記異なる組の相巻線について通電方向を全て同じにして、前記各相巻線の通電を実施する第1通電制御部と、前記第2スロットに収容された前記異なる組の相巻線について各相巻線の通電方向を異ならせて、前記各相巻線の通電を実施する第2通電制御部と、前記第1通電制御部による前記各相巻線の通電と、前記第2通電制御部による前記各相巻線の通電とを切り替える切替部と、を備える。
【0019】
上記のとおり通電制御が実施されることにより、第1スロット及び第2スロットにおいて各組の相巻線の起磁力が足し合わされる状態と、第1スロットのみにおいて各組の相巻線の起磁力が足し合わされる状態、すなわち第2スロットで起磁力が相殺される状態との切替が可能となる。これにより、回転電機に対する駆動要求等に応じて、極数を適正に切り替えることが可能となる。
【0020】
第7の手段では、前記回転電機において、前記第2スロットには、互いに異なる複数の組み合わせで各2組の相巻線が収容されるスロットが含まれており、前記第2通電制御部は、前記各相巻線の通電に際し、全ての前記第2スロットのうち一部の第2スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第1処理と、全ての第2スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第2処理とを選択的に実施する。
【0021】
上記構成によれば、各相巻線の通電に際し、全ての第2スロットのうち一部の第2スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第1処理と、全ての第2スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第2処理とが選択的に実施される。この場合、第1処理と第2処理とを実施することで、回転電機における極数を3段階以上で適正に切り替えることが可能となる。
【0022】
第8の手段では、前記第1通電制御部は、前記回転電機の極数をX1として通電制御を実施し、前記第2通電制御部は、前記回転電機の極数を、X1の1/BであるX2として通電制御を実施する場合に、前記各相巻線に対する通電周波数を1/Bとする。
【0023】
上記構成によれば、回転電機の極数を1/Bに減らす場合に、各相巻線に対する通電周波数を1/Bとするため、極数切替に伴い電力変化の電気角位相が変わっても、回転電機において所望の回転速度での運転を実施できる。
【0024】
第9の手段では、前記n組の相巻線には、相巻線ごとに電力変換部(61〜64,71〜78)が設けられており、前記制御部は、前記各電力変換部において電力変換を実施させることにより、前記回転電機における前記各相巻線の通電を制御する。
【0025】
上記構成によれば、各組の相巻線が各々個別の電力変換部により並列駆動されるため、回転電機の駆動に際して冗長性を確保することができる。
【0026】
以下には、本開示の回転電機とは異なる従来の回転電機を比較対象として、本開示の回転電機の効果を説明する。ここで、従来技術としては、特開2015−226425号公報に記載された極数切替型誘導機を想定している。すなわち、当該誘導機では、3相駆動用に分布巻にて巻回された固定子巻線が、2台の3相インバータに1極対おきに交互に接続された構成にあって、2台のインバータにおいて電流位相差が同相、逆相で切り替えられることで、誘導機の極数が2:1で切り替えられるようになっている。
【0027】
図36には、本開示の回転電機と従来の回転電機とについて起磁力分布の違いを示している。また、本開示の回転電機と従来の回転電機とについて、
図37には、トルク波形の比較結果を示し、
図38には、コイル鎖交磁束の比較結果を示し、
図39には、相電圧の比較結果を示し、
図40には、1インバータ駆動時及び2インバータ駆動時のトルク比較結果(冗長性検証結果)を示す。
【0028】
従来の回転電機では、固定子巻線が1極対おきに交互に巻かれているため、極数を少なくした4極動作時において3相の起磁力分布がアンバランスとなる。そのため、
図37に示すように、トルクリップルが大きくなることや、
図38に示すように、コイル鎖交磁束の振幅が大きくなること、
図39に示すように、相電圧の振幅が大きくなることが考えられる。また、
図40に示すように、1インバータ駆動時におけるトルクリップルが大きくなる。
【0029】
これに対し、本開示の回転電機では、4極動作時におけるトルクリップルの低減や、コイル鎖交磁束の振幅低減、相電圧の振幅低減等を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態における回転電機は、例えば車両動力源として用いられるものとなっている。ただし、回転電機は、産業用、車両用、家電用、OA機器用、遊技機用などとして広く用いられることが可能となっている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0032】
(第1実施形態)
図1に示すように、回転電機システムは、多相多重巻線を有する回転電機10と、その回転電機10の各固定子巻線11,12に接続されたインバータ13,14と、各インバータ13,14の通電状態を制御する制御部15と、各インバータ13,14との間で電力の授受を行う電源部16とを有している。回転電機10は、例えば3相2重巻線式の誘導機である。本実施形態において、回転電機10は、発電機能及び力行機能を備えるモータジェネレータであり、発電機及び電動機の機能を統合したISG(Integrated Starter Generator)として構成されている。固定子巻線11は、U1相、V1相、W1相の各相巻線よりなり、固定子巻線12は、U2相、V2相、W2相の各相巻線よりなる。
【0033】
インバータ13,14は、周知のとおり複数のスイッチング素子を有する電力変換回路であり、該スイッチング素子のスイッチングにより各固定子巻線11、12の通電が行われる。インバータ13により、固定子巻線11におけるU1相、V1相、W1相の通電が行われ、インバータ14により、固定子巻線12におけるU2相、V2相、W2相の通電が行われる。
【0034】
制御部15は、マイコンを主体として各種制御を実施する電子制御装置である。制御部15は、回転電機10の制御量(例えばトルクや回転速度)を、車両運転状態や電源部16の蓄電状態等に基づく指令値に制御すべく、各インバータ13,14を操作する。詳しくは、制御部15は、インバータ13,14を構成する各スイッチング素子を操作すべく、回転電機10の各相の電流を検出する電流センサ17や、回転電機10の回転角を検出する回転角センサ18(例えばレゾルバ)等の検出値を取り込む。そして、制御部15は、上記各種センサの検出値等に基づく周知の正弦波PWM制御等によってスイッチング素子ごとにハイロー2値の操作信号を生成し、その操作信号をインバータ13,14に出力することで、各スイッチング素子のオンオフを操作する。こうしたスイッチング素子の操作により、回転電機10の固定子巻線11,12に流れる電流が所定の電流指令値に制御される。
【0035】
図2に、本システムが搭載される車両100の構成を示す。車両100は、例えば回転電機10を走行動力源とする電気自動車、又は走行動力源として回転電機10と不図示のエンジンとを有するハイブリッド自動車である。車両100において、回転電機10は、車両走行の動力源として動力伝達機構101に設けられている。回転電機10にて発生する動力によりドライブシャフト102と共に車輪103が回転する。例えば電源部16からの直流電力がインバータ13,14にて交流電力に変換され、その交流電力が回転電機10に供給されることで車両100が走行する。
【0036】
次に、回転電機10の構成を
図3及び
図4を用いて説明する。なお、
図4では説明の便宜上、固定子巻線11,12の図示を省略している。
【0037】
回転電機10は、回転軸21に固定された回転子22と、回転子22を包囲する位置に設けられた固定子23と、これら回転子22及び固定子23を収容するハウジング24とを備えている。回転子22及び固定子23は同軸に配置されている。ハウジング24には軸受け25,26が設けられ、この軸受け25,26により回転軸21及び回転子22が回転自在に支持されている。
【0038】
回転子22は回転子コア31を有し、その回転子コア31の外周部(すなわち固定子23の内周部に対して径方向に対向する側)には、周方向に複数の導体32が設けられている。回転子コア31は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層し、カシメ等により固定することで構成されている。回転子22は誘導型ロータとして構成されている。
【0039】
固定子23は、周方向に複数のスロット34を有する円環状の固定子コア35を備えており、各スロット34に分布巻で3相2組の固定子巻線11,12が巻装されている。つまり、固定子巻線11,12は、共通の固定子23に対して巻装されている。
図1に示すように、固定子巻線11は、電気角で120°ずつずれたU1相、V1相、W1相の各相巻線を有し、これら各相巻線が中性点N1で接続されている。また、固定子巻線12は、電気角で120°ずつずれたU2相、V2相、W2相の各相巻線を有し、これら各相巻線が中性点N2で接続されている。
【0040】
固定子コア35は、円環状の複数の電磁鋼板を軸方向に積層し、カシメ等により固定することで構成されている。固定子コア35は、円環状のヨーク36と、ヨーク36から径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース37とを有し、隣り合うティース37の間にスロット34が形成されている。各ティース37は、周方向に等間隔でそれぞれ設けられている。各スロット34は、固定子コア35の径方向を長手として延びる開口形状をなしている。本実施形態では、コア周方向に等間隔で24個のスロット34が形成されており、各スロット34には#1〜#24のスロット番号が付されている。
【0041】
各スロット34には、内外2重で固定子巻線11,12が巻装されるようになっており、
図5には、各スロット34に固定子巻線11,12が巻装された状態が示されている。なお、スロット34内において各巻線を囲む部分は絶縁材である。
図5では、2組の固定子巻線11,12のうち一方の固定子巻線11を、他方の固定子巻線12よりも濃い網掛けで示している。回転電機10は、3相の相巻線を、2の累乗数であるn組有して構成されるものであり、本実施形態では、n=2であり、2組の相巻線を有するものとなっている。
【0042】
本実施形態の回転電機10は、固定子コア35のスロット34として、同じ組かつ同じ相であって、通電の向きを同一とする相巻線が収容された単一スロット34Aと、異なる組かつ同じ相の相巻線が収容された混合スロット34Bとを有し、固定子コア35において周方向に所定間隔で単一スロット34A及び混合スロット34Bがそれぞれ設けられている。なお、単一スロット34Aが「第1スロット」に相当し、混合スロット34Bが「第2スロット」に相当する。その詳細を以下に説明する。
【0043】
図6には、各固定子巻線11,12について#1〜#24の各スロット34への巻装状態が示されている。
図6において、例えば#1スロットでは、外側にU1相巻線、内側にU1相巻線が巻装され、これら内外の各巻線に互いに同じ向きで通電が行われるようになっている。また、#2スロットでは、外側にW1相巻線、内側にW2相巻線が巻装されている。この場合、#1スロットには、同じ組かつ同じ相であって、通電の向きを同一とする相巻線が収容されており、#1スロットは単一スロット34Aである。また、#2スロットには、異なる組かつ同じ相の相巻線が収容されており、#2スロットは混合スロット34Bである。
【0044】
同様にして、#3,#5,#7等の各スロット(奇数番号スロット)は単一スロット34Aであり、#4,#6,#8等の各スロット(偶数番号スロット)は混合スロット34Bである。本実施形態では、固定子コア35において単一スロット34Aと混合スロット34Bとが交互に配置されている。要するに、単一スロット34Aは、相ごとに周方向に所定間隔で設けられ、隣り合う単一スロット34Aの間に混合スロット34Bが設けられている。
【0045】
ここで、固定子巻線11,12は、複数の導体セグメントを連結することで構成されている。具体的には、
図9に示すように、導体セグメント40は、基本構成として、一対の直線部41と、一対の直線部41の一端どうしを連結するターン部42とを有する略U字状をなしている。そして、その導体セグメント40を所定スロット数の間隔でスロット34に挿入した状態で、直線部41においてターン部42とは反対側をコア周方向に折り曲げ、異なる導体セグメント40どうしの直線部41を互いに接合することにより、一連の固定子巻線11,12が構成されるようになっている。各スロット34には、導体セグメント40の直線部41からなる導体が2つずつ収容されている。
【0046】
図3に示すように、固定子23において軸方向一端側には、導体セグメント40のターン部42により第1コイルエンド51が形成され、他端側には、導体セグメント40の直線部41どうしの接合により第2コイルエンド52が形成されるようになっている。
【0047】
図7には、説明のため、
図6の結線図において固定子巻線11のU1相巻線と固定子巻線12のU2相巻線だけ(つまり、異なる組かつ同じ相の相巻線)を抽出して示している。
図7において、実線がU1相巻線であり、破線がU2相巻線である。U1相巻線及びU2相巻線を構成する各導体セグメント40は、3スロット間隔で固定子コア35に挿入され、第2コイルエンド52では、9スロット間隔で2つの導体セグメント40どうしが接続されている。この場合、各固定子巻線11,12では、第2コイルエンド52でのスロット間隔が、第1コイルエンド51でのスロット間隔(3スロット間隔)に対して、相数である3倍のスロット間隔(9スロット間隔)となっている。
【0048】
また、
図8には、説明のため、
図6の結線図において固定子巻線11,12のうち固定子巻線11だけを抽出して示している。
図8において、実線がU1相巻線であり、破線がV1相巻線であり、一点鎖線がW1相巻線である。固定子巻線11においてU1相、V1相、W1相の各相巻線は、コア周方向の1周分を3等分して均等に固定子コア35に巻装されている。つまり、通電順序が隣り合う各相の相巻線が、周方向に一定のスロット間隔(8スロット間隔)で固定子コア35に巻装されている。各相の相巻線は、各相において周方向に8スロット間隔分ずれた状態で、いずれも同様の巻線パターンとなっている。この各相の相巻線の巻線パターンのずれは、通電順序における所定の電気角(120deg)のずれとなっている。固定子巻線11においては、U1−V1間、V1−W1間、W1−U1間の周方向巻線間隔が等しく、固定子巻線12においては、U2−V2間、V2−W2間、W2−U2間の周方向巻線間隔が等しいものとなっている。
【0049】
次に、制御部15による各固定子巻線11,12の通電制御について説明する。本実施形態では、混合スロット34B内の各相巻線(異なる組かつ同じ相の相巻線)について通電による極性を反転させることにより、回転電機10の極数切り替えを実施する構成としている。つまり、制御部15は、混合スロット34B内の2組の相巻線(導体)について通電方向を全て同じにして、各相巻線の通電を実施する第1通電制御と、混合スロット34B内の2組の相巻線のうち一方の相巻線の通電方向を反転させて、各相巻線の通電を実施する第2通電制御とを実施するとともに、第1通電制御による各相巻線の通電と、第2通電制御による各相巻線の通電との切り替えを適宜実施する。
【0050】
本実施形態では、回転電機10の極数を8とする8極モードと、極数を4とする4極モードとの切り替えを可能としている。8極モードで回転電機10を作動させる場合、制御部15は、次の数式1で表される電流を各相巻線に通電させる。なお、Aは電流振幅、ωは8極時の電気角周波数(rad/sec)、αは電流位相である。
(数式1)
IU1=A・sin(ωt+α11)
IV1=A・sin(ωt+α11−2π/3)
IW1=A・sin(ωt+α11+2π/3)
IU2=A・sin(ωt+α11)
IV2=A・sin(ωt+α11−2π/3)
IW2=A・sin(ωt+α11+2π/3)
また、4極モードで回転電機10を作動させる場合、制御部15は、次の数式2で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式2)
IU1=A・sin(ωt/2+α12)
IV1=A・sin(ωt/2+α12+2π/3)
IW1=A・sin(ωt/2+α12−2π/3)
IU2=−A・sin(ωt/2+α12)
IV2=−A・sin(ωt/2+α12+2π/3)
IW2=−A・sin(ωt/2+α12−2π/3)
図10及び
図11は、各スロット34における各相巻線の通電状況と、U相、V相、W相における起磁力波形とを示す図である。
図10は8極モードでの起磁力波形を示し、
図11は4極モードでの起磁力波形を示す。
図10,
図11では、スロット34の並びを半周分展開して示している。なお、各相におけるアンダーバーの有無は通電方向の違いを示している。
【0051】
図10では、例えばU相において、#1,#4,#7,#10でスロット34内の2組の相巻線に同じ方向に電流が流れ、それら各スロットでの電流の向きに応じて#1,#4,#7,#10において起磁力の向きが反転する。このとき、混合スロット34Bである#4,#10スロットでは、U1相及びU2相の通電方向が同じになっている。そのため、単一スロット34A(#1,#7)、及び混合スロット34B(#4,#10)においてそれぞれU相磁極が反転する。
【0052】
V相及びW相においても同様である。V相においては、単一スロット34A(#3,#9)、及び混合スロット34B(#6,#12)においてそれぞれV相磁極が反転する。また、W相においては、単一スロット34A(#5,#11)、及び混合スロット34B(#2,#8)においてそれぞれW相磁極が反転する。
【0053】
上記
図10に示す通電により、固定子23の起磁力分布は全節巻の8極となり、回転電機10は8極モードで動作する。
【0054】
また、
図11では、例えばU相において、#1,#4,#7,#10のうち単一スロット34Aである#1,#7で2組の相巻線に同じ方向に電流が流れ、混合スロット34Bである#4,#10で2組の相巻線に異なる方向に電流が流れる。このとき、混合スロット34Bである#4,#10スロットでは、U1相及びU2相の通電方向が異なるため、2組の相巻線の通電に伴い生じる起磁力が相殺される。そのため、単一スロット34A(#1,#7)でのみU相磁極が反転する。
【0055】
V相及びW相においても同様である。V相においては、単一スロット34A(#3,#9)でのみV相磁極が反転する。また、W相においては、単一スロット34A(#5,#11)でのみW相磁極が反転する。
【0056】
上記
図11に示す通電により、固定子23の起磁力分布は4極となり、回転電機10は4極モードで動作する。
【0057】
混合スロット34Bにおいては、上記の数式1,2で示すとおり、固定子巻線12における各相の相電流の位相を正逆反転させることで、2組の相巻線に流れる電流の向きを互いに逆にしている。
【0058】
また、上記数式2では、上記数式1と比べて、各相巻線に対する通電周波数が1/2となっている。これにより、8極から4極への極数切替に伴い電力変化の電気角位相が変わっても、回転電機10において所望の回転速度での運転を実施できる。
【0059】
制御部15は、8極モード及び4極モードでのトルク特性を加味して、回転電機10の極数切り替えを実施する。この場合、
図12に示すように、低回転域では、8極と4極とのうち8極の方がトルクが大きく、高回転域では、4極の方がトルクが大きい。このトルク特性に基づいて、制御部15は、例えば回転速度Nx未満の領域では8極通電制御を実施し、回転速度Nx以上の領域では4極通電制御を実施する。
【0060】
車両走行状態を併せ考慮すると、制御部15は、車両駆動要求に応じて回転電機10の極数切り替えを実施する。例えば、低速・発進時には8極モード(多極モード)として高トルクを出力し、高速走行時には4極モード(少極モード)として高回転動作を行うようにするとよい。
【0061】
図13は、回転電機10の通電制御の手順を示すフローチャートであり、本処理は制御部15により所定周期で実施される。
【0062】
図13において、ステップS11では、8極モードの実施時であるか否かを判定する。このとき、例えば車両100の低速走行時又は発進時であれば、ステップS11を肯定してステップS12に進む。ステップS12では、上記の数式1により各相の相電流を制御することで、回転電機10を8極モードで作動させる。このとき、混合スロット34B内の2組の相巻線がいずれも同じ方向に通電される。
【0063】
また、ステップS13では、4極モードの実施時であるか否かを判定する。このとき、例えば車両100の高速走行時であれば、ステップS13を肯定してステップS14に進む。ステップS14では、上記の数式2により各相の相電流を制御することで、回転電機10を4極モードで作動させる。このとき、混合スロット34B内の2組の相巻線が互いに異なる方向に通電される。なお、ステップS11,S13が「切替部」に相当し、ステップS12が「第1通電制御部」に相当し、ステップS14が「第2通電制御部」に相当する。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0065】
固定子コア35のスロット34として、単一スロット34Aと混合スロット34Bとを設け、その混合スロット34Bに収容される各組の相巻線について通電方向を切り替えることにより回転電機10の極数を切り替えるようにした。この場合、極数の切り替えにより、回転電機10の動作範囲を拡大できる。
【0066】
3相の相巻線を、相ごとの巻線間隔をそれぞれ等しくして固定子コア35に巻装したため、いずれの極数モードであっても、各相が発生する起磁力の間隔が等しくなる。そのため、起磁力の円周方向アンバランスに起因したトルクリップルを低減でき、振動や騒音の低減を図ることができる。また、同様の理由により相電圧のばらつきが抑えられるため、高速動作範囲を一層拡大することができる。
【0067】
本実施形態では、固定子コア35の周方向において、単一スロット34Aと混合スロット34Bとを1つずつ交互に配置した。つまり、コア周方向において、互いに異なる組の単一スロット34Aが2スロット間隔で設けられ、その異なる組どうしの単一スロット34Aの間に1個の混合スロット34Bが設けられている。この場合、回転電機10においていずれの極数モード(8極モード、4極モード)にあっても、起磁力が生じるスロット、すなわち2組の相巻線の通電方向が同じになるスロットがコア周方向に等間隔で配置される。これにより、いずれの極数モードにあっても、起磁力を円周方向にバランス良く生じさせることができる。
【0068】
混合スロット34Bに、異なる組の相巻線を各組同数(本実施形態では1つずつ)で収容したため、いずれの極数でも、各相巻線において同じ電流振幅で動作させることが可能となる。この場合、インバータ13,14の各相の電圧・電流定格が同じでよいため、インバータ13,14の構成部品を共通化でき、コストを低減できる。
【0069】
混合スロット34Bに収容された異なる組の相巻線について通電方向を全て同じにして、各相巻線の通電を実施する第1通電制御と、混合スロット34Bに収容された異なる組の相巻線について各相巻線の通電方向を異ならせて、各相巻線の通電を実施する第2通電制御とを実施するとともに、それら各通電制御による各相巻線の通電を適宜切り替える構成とした。これにより、単一スロット34A及び混合スロット34Bにおいて各組の相巻線の起磁力が足し合わされる状態と、単一スロット34Aのみにおいて各組の相巻線の起磁力が足し合わされる状態、すなわち混合スロット34Bで起磁力が相殺される状態との切替が可能となる。これにより、回転電機10に対する駆動要求等に応じて、極数を適正に切り替えることが可能となる。
【0070】
低回転域では8極モードで回転電機10を駆動させ、高回転域では4極モードで回転電機10を駆動させる構成とした。そのため、自動車駆動用の回転電機10として用いられる場合において、低速高トルクと高速動作との両立が求められる場合に適正な駆動を実現することができる。
【0071】
回転電機10の極数を、8極から4極に切り替える場合(1/2にする場合)に、各相巻線に対する通電周波数を1/2とする構成とした。これにより、極数切替に伴い電力変化の電気角位相が変わっても、回転電機10において所望の回転速度での運転を実施できる。
【0072】
車両100において、モータ電流制御により回転電機10の極数を切り替えるようにしたため、電池容量を増やすことなく回転電機10の動作範囲を拡大でき、システムの小型・軽量化、低コスト化を図ることができる。また、モータ力行領域及び回生領域の拡大によって燃費を向上することができる。
【0073】
回転電機10を誘導機とした構成においては、固定子23の極数に準じて回転子22の極数が切り替えられる。この場合、かご型ロータなど構造が単純で堅牢な既存のロータそのまま使用できるため、メンテナンスが容易であり、高い信頼性を確保できる。また安価であり、コストを抑えられる。
【0074】
以下に、別の実施形態を説明する。便宜上、以下には第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0075】
(第2実施形態)
回転電機10においてスロット数を変更してもよく、例えばスロット数を2倍にする。
図14では、固定子コア35において、コア周方向に等間隔で48個のスロット34が形成されており、各スロット34には#1〜#48のスロット番号が付されている。各スロット34には、内外2重で固定子巻線11,12が巻装されるようになっている。
図14では、2組の固定子巻線11,12のうち一方の固定子巻線11を、他方の固定子巻線12よりも濃い網掛けで示している。
【0076】
上述の構成と同様に、固定子コア35には、同じ組かつ同じ相であって、通電の向きを同一とする相巻線が収容される単一スロット34Aと、異なる組かつ同じ相の相巻線が収容される混合スロット34Bとが設けられ、コア周方向に所定間隔で単一スロット34A及び混合スロット34Bがそれぞれ設けられている。
図14では、単一スロット34Aと混合スロット34Bとが2つずつ交互に設けられている。例えば#1,#2スロットが単一スロット34A、#3,#4スロットが混合スロット34Bである。本構成においても、混合スロット34B内の各相巻線(異なる組かつ同じ相の相巻線)について通電による極性を反転させることにより、回転電機10の極数切り替えが実施される。
【0077】
図15には、各固定子巻線11,12について#1〜#48の各スロット34への巻装状態が示されている。また、
図16及び
図17には、各スロット34における各相巻線の通電状況と、U相、V相、W相における起磁力波形とが示されている。
図16には8極モードでの起磁力波形を示し、
図17には4極モードでの起磁力波形を示す。
図16,
図17では、スロット34の並びを半周分展開して示している。
【0078】
図15において、固定子巻線11のU1相、V1相、W1相の各相巻線と、固定子巻線12のU2相、V2相、W2相の各相巻線は、それぞれコア周方向の1周分を3等分して均等に固定子コア35に巻装されている。つまり、通電順序が隣り合う各相の相巻線が、周方向に一定のスロット間隔(16スロット間隔)で固定子コア35に巻装されている。各相の相巻線は、各相において周方向に16スロット間隔分ずれた状態で、いずれも同様の巻線パターンとなっている。
【0079】
図16に示す8極モードでは、例えばU相において混合スロット34Bである#7,#8スロット及び#19,#20スロットにおいて、U1相及びU2相の通電方向がそれぞれ同じになっている。そのため、2スロットずつを1まとめとする各単一スロット34A(#1及び#2、#13及び#14)及び各混合スロット34B(#7及び#8、#19及び#20)においてそれぞれU相磁極が反転する。V相及びW相においても同様である。上記
図16に示す通電により、固定子23の起磁力分布は全節巻の8極となり、回転電機10は8極モードで動作する。
【0080】
また、
図17に示す4極モードでは、例えばU相において混合スロット34Bである#7,#8スロット及び#19,#20スロットにおいて、U1相及びU2相の通電方向が異なるため、2組の相巻線の通電に伴い生じる起磁力が相殺される。そのため、単一スロット34A(#1及び#2、#13及び#14)でのみU相磁極が反転する。V相及びW相においても同様である。上記
図17に示す通電により、固定子23の起磁力分布は4極となり、回転電機10は4極モードで動作する。
【0081】
上記構成の回転電機10では、第1実施形態と同様に、固定子コア35の単一スロット34A及び混合スロット34Bのうち混合スロット34Bに収容される各組の相巻線について通電方向を切り替えることにより回転電機10の極数を切り替えるようにした。この場合、極数の切り替えにより、回転電機10の動作範囲を拡大できる。また、3相の相巻線を、相ごとの巻線間隔をそれぞれ等しくして固定子コア35に巻装したため、各相が発生する起磁力の間隔が等しくなり、トルクリップルの低減や高速動作範囲の拡大を図ることができる。
【0082】
本実施形態では、固定子コア35の周方向において、単一スロット34Aと混合スロット34Bとを2つずつ交互に配置した。つまり、コア周方向において、異なる組の単一スロット34Aが3スロット間隔で設けられ、その異なる組どうしの単一スロット34Aの間に2個の混合スロット34Bが設けられている。この場合、回転電機10においていずれの極数モード(8極モード、4極モード)にあっても、起磁力が生じるスロット、すなわち2組の相巻線の通電方向が同じになるスロットがコア周方向に等間隔で配置される。これにより、いずれの極数モードにあっても、起磁力を円周方向にバランス良く生じさせることができる。
【0083】
固定子巻線11,12を短節巻にしてもよい。具体的な構成を
図18に示す。
図18において(a)は8極モードで通電される場合の通電状態を示し、(b)は4極モードで通電される場合の通電状態を示している。
図18では、
図16及び
図17と比べて、各スロットにおける通電パターンは同じであり、違いは、スロット34の内径側の相巻線を1スロット分ずらすことで短節巻としていることである。
【0084】
固定子巻線11,12を長節巻にしてもよい。具体的な構成を
図19に示す。
図19において(a)は8極モードで通電される場合の通電状態を示し、(b)は4極モードで通電される場合の通電状態を示している。
図19では、
図16及び
図17と比べて、各スロットにおける通電パターンは同じであり、違いは、スロット34の内径側の相巻線を1スロット分ずらすことで長節巻としていることである。
【0085】
(第3実施形態)
第3実施形態では、回転電機10において、16極から4極への切替を可能とする構成としている。この場合、極数が4:1の極数比で切り替えられる。
図20及び
図21には、各スロット34における各相巻線の通電状況と、U相+V相+W相の起磁力波形とが示されている。
図20には16極モードでの起磁力波形を示し、
図21には4極モードでの起磁力波形を示す。
図20,
図21では、スロット34の並びを半周分展開して示している。
【0086】
本構成では、
図20に示すように、4スロット間隔で異なる組の単一スロット34Aが設けられ、各単一スロット34Aの間に、3つずつ混合スロット34Bが設けられている。この場合、
図20に示す16極モードでは、各混合スロット34Bにおいて、2組の相巻線の通電方向がいずれも同じになっている。そのため、単一スロット34A及び混合スロット34Bにおいてそれぞれ磁極が反転する。
図20に示す通電により、固定子23の起磁力分布は全節巻の16極となり、回転電機10は16極モードで動作する。
【0087】
また、
図21に示す4極モードでは、各混合スロット34Bにおいて、2組の相巻線の通電方向が異なるため、2組の相巻線の通電に伴い生じる起磁力が相殺される。そのため、単一スロット34Aでのみ磁極が反転する。
図21に示す通電により、固定子23の起磁力分布は4極となり、回転電機10は4極モードで動作する。
【0088】
制御部15は、16極モードで回転電機10を作動させる場合、次の数式3で表される電流を各相巻線に通電させ、4極モードで回転電機10を作動させる場合、次の数式4で表される電流を各相巻線に通電させる。なお、数式4は、上述の数式2と同じである。
(数式3)
IU1=A・sin(2ωt+α11)
IV1=A・sin(2ωt+α11−2π/3)
IW1=A・sin(2ωt+α11+2π/3)
IU2=A・sin(2ωt+α11)
IV2=A・sin(2ωt+α11−2π/3)
IW2=A・sin(2ωt+α11+2π/3)
(数式4)
IU1=A・sin(ωt/2+α12)
IV1=A・sin(ωt/2+α12+2π/3)
IW1=A・sin(ωt/2+α12−2π/3)
IU2=−A・sin(ωt/2+α12)
IV2=−A・sin(ωt/2+α12+2π/3)
IW2=−A・sin(ωt/2+α12−2π/3)
なお、数式3では電気角周波数ωを2倍にし、数式4では電気角周波数ωを1/2倍にしているが、これに代えて、数式3では電気角周波数ωを等倍にし、数式4では電気角周波数ωを1/4倍にしてもよい。要は、4極モードでは、16極モードと比べて、電気角周波数ωを1/4にすればよい。ただし、電気角周波数ωを1/2にすることも可能である。
【0089】
(第4実施形態)
第4実施形態では、混合スロット34Bに、異なる組の相巻線を各組2つずつ収容する構成としている。
【0090】
図22では、固定子コア35において、コア周方向において等間隔で24個のスロット34が形成されており、各スロット34には#1〜#24のスロット番号が付されている。各スロット34には、内外4重で固定子巻線11,12が巻装されるようになっている。
図22では、2組の固定子巻線11,12のうち一方の固定子巻線11を、他方の固定子巻線12よりも濃い網掛けで示している。
【0091】
上述の構成と同様に、固定子コア35には、同じ組かつ同じ相であって、通電の向きを同一とする相巻線が収容される単一スロット34Aと、異なる組かつ同じ相の相巻線が収容される混合スロット34Bとが設けられ、コア周方向に所定間隔で単一スロット34A及び混合スロット34Bがそれぞれ設けられている。本構成では特に、単一スロット34Aには、同じ組かつ同じ相の相巻線(導体)が4つ収容され、混合スロット34Bには、異なる組かつ同じ相の相巻線(導体)が2つずつ収容されている。単一スロット34Aと混合スロット34Bとは1つずつ交互に設けられている。本構成においても、混合スロット34B内の各相巻線(異なる組かつ同じ相の相巻線)について通電による極性を反転させることにより、回転電機10の極数切り替えが実施される。なお、各スロット34に収容する相巻線(導体)の数は偶数であれば任意でよく、例えば6つ又は8つの相巻線を収容する構成であってもよい。
【0092】
図23及び
図24には、各スロット34における各相巻線の通電状況と、U相+V相+W相の起磁力波形とが示されている。
図23には8極モードでの起磁力波形を示し、
図24には4極モードでの起磁力波形を示す。
図23,
図24では、スロット34の並びを半周分展開して示している。
【0093】
図23では、混合スロット34Bにおいて、各組の相巻線の通電方向がいずれも同じになっている。そのため、単一スロット34A及び混合スロット34Bにおいてそれぞれ磁極が反転する。
図23に示す通電により、固定子23の起磁力分布は全節巻の8極となり、回転電機10は8極モードで動作する。
【0094】
また、
図24では、各混合スロット34Bにおいて、各組の相巻線の通電方向が異なるため、2組の相巻線の通電に伴い生じる起磁力が相殺される。そのため、単一スロット34Aでのみ磁極が反転する。
図24に示す通電により、固定子23の起磁力分布は4極となり、回転電機10は4極モードで動作する。
【0095】
(第5実施形態)
本実施形態では、回転電機10において固定子コア35に4組の固定子巻線(相巻線)が巻装されている。そして、
図25に示すように、4組の固定子巻線にそれぞれ対応させるようにして4つのインバータ61〜64が設けられている。各インバータ61〜64がそれぞれ「電力変換部」に相当する。なお、各インバータ61〜64が1つの電力変換装置として構成されていてもよい。本実施形態では、4組の固定子巻線について各々3相の相巻線の電流を制御し、その通電制御により極数を3段階で切り替える構成としている。2^(A−1)組の相巻線を有し、極数をA段階で切り替えることを可能とするとした構成に対応させると、A=3である。
【0096】
本実施形態では、回転電機10の極数を16とする16極モードと、極数を4とする4極モードと、極数を2とする2極モードとの切り替えを可能としている。
【0097】
図26〜
図28は、48スロットの回転電機10において各極数モードでの各相巻線の通電パターンを示す図である。
図26は16極モードでの通電パターンを示し、
図27は4極モードでの通電パターンを示し、
図28は2極モードでの通電パターンを示す。なお、各相におけるアンダーバーの有無は通電方向の違いを示している。
【0098】
本実施形態では、#1〜#48の各スロットのうち#1,#9,#17,#25,#33,#41が単一スロットであり、それ以外が全て混合スロットである。この場合、第1組目〜第4組目の相巻線のうち第1組目の相巻線、及び第4組目の相巻線にてそれぞれ単一スロットが構成されている。混合スロットは、いずれも異なる組かつ同じ相の相巻線が収容されるスロットであるが、第1組目〜第4組目のいずれの相巻線が組み合わされるかはスロット毎に異なっている。つまり、混合スロットには、互いに異なる複数の組み合わせで各2組の相巻線が収容されるスロットが含まれている。更に言えば、混合スロットには、相ごとに第1組目〜第4組目の相巻線のうち2組ずつの各々異なる組み合わせである3種類(n−1種類)の相巻線が収容されたスロットが含まれている。例えばU相について言えば、2組ずつの組み合わせは、U1−U2,U2−U3,U3−U4の3種類である。説明の便宜上、
図26では、単一スロットに該当するスロットに網掛けを付している。また、
図27,
図28では、単一スロットに加え、各混合スロットのうち2組の相巻線の通電方向が同じになる混合スロット(すなわち起磁力が生じるスロット)について網掛けを付している。
【0099】
図26に示す16極モードでは、全ての混合スロットにおいて、2組の相巻線の通電方向がいずれも同じになっている。そのため、単一スロット及び混合スロットにおいてそれぞれ磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の16極となり、回転電機10は16極モードで動作する。
【0100】
図27に示す4極モードでは、全ての混合スロットのうち第2組及び第3組の相巻線が収容された#5,#13,#21,#29,#37,#45のスロット(網掛けを付した混合スロット)において、2組の相巻線の通電方向が同じになっている。つまり、単一スロットと、上記の#5,#13,#21,#29,#37,#45の混合スロットとにおいてそれぞれ磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の4極となり、回転電機10は4極モードで動作する。
【0101】
図28に示す2極モードでは、全ての混合スロットにおいて2組の相巻線の通電方向が異なっている。この場合、単一スロットのみにおいて磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の2極となり、回転電機10は2極モードで動作する。
【0102】
制御部15は、16極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式5で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式5)
IU1=A・sin(2ωt+α21)
IV1=A・sin(2ωt+α21−2π/3)
IW1=A・sin(2ωt+α21+2π/3)
IU2=A・sin(2ωt+α21)
IV2=A・sin(2ωt+α21−2π/3)
IW2=A・sin(2ωt+α21+2π/3)
IU3=A・sin(2ωt+α21)
IV3=A・sin(2ωt+α21−2π/3)
IW3=A・sin(2ωt+α21+2π/3)
IU4=A・sin(2ωt+α21)
IV4=A・sin(2ωt+α21−2π/3)
IW4=A・sin(2ωt+α21+2π/3)
また、制御部15は、4極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式6で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式6)
IU1=A・sin(ωt/2+α22)
IV1=A・sin(ωt/2+α22−2π/3)
IW1=A・sin(ωt/2+α22+2π/3)
IU2=−A・sin(ωt/2+α22)
IV2=−A・sin(ωt/2+α22−2π/3)
IW2=−A・sin(ωt/2+α22+2π/3)
IU3=−A・sin(ωt/2+α22)
IV3=−A・sin(ωt/2+α22−2π/3)
IW3=−A・sin(ωt/2+α22+2π/3)
IU4=A・sin(ωt/2+α22)
IV4=A・sin(ωt/2+α22−2π/3)
IW4=A・sin(ωt/2+α22+2π/3)
また、制御部15は、2極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式7で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式7)
IU1=A・sin(ωt/4+α23)
IV1=A・sin(ωt/4+α23+2π/3)
IW1=A・sin(ωt/4+α23−2π/3)
IU2=−A・sin(ωt/4+α23)
IV2=−A・sin(ωt/4+α23+2π/3)
IW2=−A・sin(ωt/4+α23−2π/3)
IU3=A・sin(ωt/4+α23)
IV3=A・sin(ωt/4+α23+2π/3)
IW3=A・sin(ωt/4+α23−2π/3)
IU4=−A・sin(ωt/4+α23)
IV4=−A・sin(ωt/4+α23+2π/3)
IW4=−A・sin(ωt/4+α23−2π/3)
ここで、各極数モードでの通電制御について補足説明する。16極モードでは、制御部15は、上記の数式5から分かるように、各組各相の通電電流を全て同じ向きとする。これにより、
図26に示すように、単一スロットと全ての混合スロットとにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が最大値(16極)となる。
【0103】
また、4極モードでは、制御部15は、上記の数式6から分かるように、各組各相の通電電流のうち、第2組及び第3組の通電電流(IU2,IV2,IW2,IU3,IV3,IW3)の向きを逆にする。この場合、例えばU相の混合スロットにおける相巻線の組み合わせである、U1−U2,U2−U3,U3−U4のうち、U2−U3の組み合わせでは通電方向が同じになり、U1−U2,U3−U4の組み合わせでは通電方向が互いに逆になる。これにより、
図27に示すように、単一スロットと、一部の混合スロット(第2及び第3組目の組み合わせである混合スロット)とにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が4極となる。
【0104】
また、2極モードでは、制御部15は、上記の数式7から分かるように、各組各相の通電電流のうち、第2組及び第4組の通電電流(IU2,IV2,IW2,IU4,IV4,IW4)の向きを逆にする。この場合、例えばU相の混合スロットにおける相巻線の組み合わせである、U1−U2,U2−U3,U3−U4の全てにおいて通電方向が互いに逆になる。これにより、
図28に示すように、単一スロットのみにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が2極となる。
【0105】
要するに、制御部15は、
図26〜
図28に示すように、各相巻線の通電に際し、全ての混合スロットのうち一部の混合スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第1処理(
図27参照)と、全ての混合スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第2処理(
図28参照)とを選択的に実施する。
【0106】
本実施形態の上記構成によれば、各混合スロットに収容される2組ずつの相巻線の組み合わせが、相ごとに3種類に異なるものとなっている。この場合、相ごとに3種類の組み合わせを有する各混合スロットを用い、その混合スロットに対して適宜の通電を行うことにより、極数比を多段で実施する上で有利な構成を実現できる。
【0107】
また、各相巻線の通電時において、全ての混合スロットのうち一部の混合スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第1処理と、全ての混合スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第2処理とを選択的に実施する構成にしたため、回転電機10における極数を3段階以上で適正に切り替えることが可能となる。
【0108】
4組の相巻線に、相巻線ごとにインバータ61〜64を設け、制御部15が、各インバータ61〜64において電力変換を実施させて回転電機10における各相巻線の通電を制御するようにした。この場合、各組の相巻線が各々個別のインバータ61〜64により並列駆動されるため、回転電機10の駆動に際して冗長性を確保することができる。
【0109】
(第6実施形態)
本実施形態では、回転電機10において固定子コア35に8組の固定子巻線(相巻線)が巻装されている。そして、
図29に示すように、8組の固定子巻線にそれぞれ対応させるようにして8つのインバータ71〜78が設けられている。各インバータ71〜78がそれぞれ「電力変換部」に相当する。本実施形態では、8組の固定子巻線について各々3相の相巻線の電流を制御し、その通電制御により極数を4段階で切り替える構成としている。2^(A−1)組の相巻線を有し、極数をA段階で切り替えることを可能とするとした構成に対応させると、A=4である。
【0110】
本実施形態では、回転電機10の極数を16とする16極モードと、極数を8とする8極モードと、極数を4とする4極モードと、極数を2とする2極モードとの切り替えを可能としている。
【0111】
図30〜
図33は、48スロットの回転電機10において各極数モードでの各相巻線の通電パターンを示す図である。
図30は16極モードでの通電パターンを示し、
図31は8極モードでの通電パターンを示し、
図32は4極モードでの通電パターンを示し、
図33は2極モードでの通電パターンを示す。なお、各相におけるアンダーバーの有無は通電方向の違いを示している。
【0112】
本実施形態では、#1〜#48の各スロットのうち#1,#9,#17,#25,#33,#41が単一スロットであり、それ以外が全て混合スロットである。この場合、第1組目〜第8組目の相巻線のうち第1組目の相巻線、及び第8組目の相巻線にてそれぞれ単一スロットが構成されている。混合スロットは、いずれも異なる組かつ同じ相の相巻線が収容されるスロットであるが、第1組目〜第8組目のいずれの相巻線が組み合わされるかはスロット毎に異なっている。混合スロットには、相ごとに第1組目〜第8組目の相巻線のうち2組ずつの各々異なる組み合わせである7種類(n−1種類)の相巻線が収容されたスロットが含まれている。説明の便宜上、
図30では、単一スロットに該当するスロットに網掛けを付している。また、
図31〜
図33では、単一スロットに加え、各混合スロットのうち2組の相巻線の通電方向が同じになる混合スロット(すなわち起磁力が生じるスロット)について網掛けを付している。
【0113】
図30に示す16極モードでは、全ての混合スロットにおいて、2組の相巻線の通電方向がいずれも同じになっている。そのため、単一スロット及び混合スロットにおいてそれぞれ磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の16極となり、回転電機10は16極モードで動作する。
【0114】
図31に示す8極モードでは、全ての混合スロットのうち、
・第2組及び第3組の相巻線が収容された#7,#11,#23,#27,#39,#43のスロット、
・第4組及び第5組の相巻線が収容された#5,#13,#21,#29,#37,#45のスロット、
・第6組及び第7組の相巻線が収容された#3,#15,#19,#31,#35,#47のスロット(いずれも網掛けを付した混合スロット)において、2組の相巻線の通電方向が同じになっている。つまり、単一スロットと、上記の各混合スロットとにおいてそれぞれ磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の8極となり、回転電機10は8極モードで動作する。
【0115】
図32に示す4極モードでは、全ての混合スロットのうち第4組及び第5組の相巻線が収容された#5,#13,#21,#29,#37,#45のスロット(網掛けを付した混合スロット)において、2組の相巻線の通電方向が同じになっている。つまり、単一スロットと、上記の各混合スロットとにおいてそれぞれ磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の4極となり、回転電機10は4極モードで動作する。
【0116】
図33に示す2極モードでは、全ての混合スロットにおいて2組の相巻線の通電方向が異なっている。この場合、単一スロットのみにおいて磁極が反転する。これにより、固定子23の起磁力分布は全節巻の2極となり、回転電機10は2極モードで動作する。
【0117】
制御部15は、16極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式8で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式8)
IU1=A・sin(2ωt+α31)
IV1=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW1=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU2=A・sin(2ωt+α31)
IV2=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW2=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU3=A・sin(2ωt+α31)
IV3=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW3=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU4=A・sin(2ωt+α31)
IV4=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW4=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU5=A・sin(2ωt+α31)
IV5=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW5=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU6=A・sin(2ωt+α31)
IV6=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW6=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU7=A・sin(2ωt+α31)
IV7=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW7=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
IU8=A・sin(2ωt+α31)
IV8=A・sin(2ωt+α31−2π/3)
IW8=A・sin(2ωt+α31+2π/3)
また、制御部15は、8極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式9で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式9)
IU1=A・sin(ωt+α32)
IV1=A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW1=A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU2=−A・sin(ωt+α32)
IV2=−A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW2=−A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU3=−A・sin(ωt+α32)
IV3=−A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW3=−A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU4=A・sin(ωt+α32)
IV4=A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW4=A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU5=A・sin(ωt+α32)
IV5=A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW5=A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU6=−A・sin(ωt+α32)
IV6=−A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW6=−A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU7=−A・sin(ωt+α32)
IV7=−A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW7=−A・sin(ωt+α32−2π/3)
IU8=A・sin(ωt+α32)
IV8=A・sin(ωt+α32+2π/3)
IW8=A・sin(ωt+α32−2π/3)
また、制御部15は、4極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式10で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式10)
IU1=A・sin(ωt/2+α33)
IV1=A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW1=A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU2=−A・sin(ωt/2+α33)
IV2=−A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW2=−A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU3=A・sin(ωt/2+α33)
IV3=A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW3=A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU4=−A・sin(ωt/2+α33)
IV4=−A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW4=−A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU5=−A・sin(ωt/2+α33)
IV5=−A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW5=−A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU6=A・sin(ωt/2+α33)
IV6=A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW6=A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU7=−A・sin(ωt/2+α33)
IV7=−A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW7=−A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
IU8=A・sin(ωt/2+α33)
IV8=A・sin(ωt/2+α33−2π/3)
IW8=A・sin(ωt/2+α33+2π/3)
また、制御部15は、2極モードで回転電機10を作動させる場合に、次の数式11で表される電流を各相巻線に通電させる。
(数式11)
IU1=A・sin(ωt/4+α34)
IV1=A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW1=A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU2=−A・sin(ωt/4+α34)
IV2=−A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW2=−A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU3=A・sin(ωt/4+α34)
IV3=A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW3=A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU4=−A・sin(ωt/4+α34)
IV4=−A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW4=−A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU5=A・sin(ωt/4+α34)
IV5=A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW5=A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU6=−A・sin(ωt/4+α34)
IV6=−A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW6=−A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU7=A・sin(ωt/4+α34)
IV7=A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW7=A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
IU8=−A・sin(ωt/4+α34)
IV8=−A・sin(ωt/4+α34+2π/3)
IW8=−A・sin(ωt/4+α34−2π/3)
ここで、各極数モードでの通電制御について補足説明する。16極モードでは、制御部15は、上記の数式8から分かるように、各組各相の通電電流を全て同じ向きとする。これにより、
図30に示すように、単一スロットと全ての混合スロットとにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が最大値(16極)となる。
【0118】
また、8極モードでは、制御部15は、上記の数式9から分かるように、各組各相の通電電流のうち、第2組、第3組、第6組及び第7組の通電電流(IU2,IV2,IW2,IU3,IV3,IW3,IU6,IV6,IW6,IU7,IV7,IW7)の向きを逆にする。この場合、例えばU相の混合スロットにおける相巻線の組み合わせである、U1−U2,U2−U3,U3−U4,U4−U5,U5−U6,U6−U7,U7−U8のうち、U2−U3,U4−U5,U6−U7の組み合わせでは通電方向が同じになり、それ以外の組み合わせでは通電方向が互いに逆になる。これにより、
図31に示すように、単一スロットと、一部の混合スロット(第2及び第3組目、第4及び第5組目、第6及び第7組目の組み合わせである混合スロット)とにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が8極となる。
【0119】
また、4極モードでは、制御部15は、上記の数式10から分かるように、各組各相の通電電流のうち、第2組、第4組、第5組及び第7組の通電電流(IU2,IV2,IW2,IU4,IV4,IW4,IU5,IV5,IW5,IU7,IV7,IW7)の向きを逆にする。この場合、例えばU相の混合スロットにおける相巻線の組み合わせである、U1−U2,U2−U3,U3−U4,U4−U5,U5−U6,U6−U7,U7−U8のうち、U4−U5の組み合わせでは通電方向が同じになり、それ以外の組み合わせでは通電方向が互いに逆になる。これにより、
図32に示すように、単一スロットと、一部の混合スロット(第4及び第5組目の組み合わせである混合スロット)とにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が4極となる。
【0120】
また、2極モードでは、制御部15は、上記の数式11から分かるように、各組各相の通電電流のうち、第2組、第4組、第6組及び第8組の通電電流(IU2,IV2,IW2,IU4,IV4,IW4,IU6,IV6,IW6,IU8,IV8,IW8)の向きを逆にする。この場合、例えばU相の混合スロットにおける相巻線の組み合わせである、U1−U2,U2−U3,U3−U4,U4−U5,U5−U6,U6−U7,U7−U8の全てにおいて通電方向が互いに逆になる。これにより、
図33に示すように、単一スロットのみにおいて同一スロット内の2組の相巻線の通電方向が同じになり、回転電機10の極数が2極となる。
【0121】
要するに、制御部15は、
図30〜
図33に示すように、各相巻線の通電に際し、全ての混合スロットのうち一部の混合スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第1処理(
図31,
図32参照)と、全ての混合スロットについて各相巻線の通電方向を異ならせる第2処理(
図33参照)とを選択的に実施する。
【0122】
本実施形態の上記構成によれば、各混合スロットに収容される2組ずつの相巻線の組み合わせが、相ごとに7種類に異なるものとなっている。この場合、相ごとに7種類の組み合わせを有する各混合スロットを用い、その混合スロットに対して適宜の通電を行うことにより、極数比を多段で実施する上で有利な構成を実現できる。
【0123】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0124】
・例えば
図1の構成では、各固定子巻線11,12(2組の相巻線)をそれぞれ3相インバータ13,14に接続する構成としたが、これを変更してもよい。例えば
図34に示すように、各固定子巻線11,12(2組の相巻線)を6相インバータ81に接続する構成としてもよい。
【0125】
・上記各実施形態では、スロット34内において径方向内側及び径方向外側に各組の相巻線を並べて設けたが、これに限定されず、スロット34内において周方向に各組の相巻線を並べて設ける構成であってもよい。
【0126】
・回転電機10において、回転子22を、永久磁石を用いたロータとして構成してもよい。
図35には、
図4の誘導型ロータを永久磁石型ロータに置き換えた事例を示す。この場合、回転子22は、回転子コア91と、回転子コア91の外周部に設けられた永久磁石92とにより構成されている。回転子22では、永久磁石92による固定磁極と回転子コア91による磁極とが円周方向に並び、固定子起磁力に応じて回転子コア91による磁極の極性が反転することで、回転子22の極数が切り替わるようになっている。永久磁石92を使用することで、二次導体による電磁石なしで回転子磁極を構成できるため、回転子22を低損失化でき、回転電機10を高効率化できる。また、冷却機能を簡素化でき、体格を小型化できる。