(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688265
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】輸送機器用断熱吸音材
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20200421BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20200421BHJP
B64C 1/40 20060101ALI20200421BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20200421BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
G10K11/16 110
G10K11/162
B64C1/40
C04B38/00 303A
B62D29/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-163699(P2017-163699)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-38478(P2019-38478A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2018年3月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 和貴
(72)【発明者】
【氏名】塚原 啓二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】塚田 慧
(72)【発明者】
【氏名】小出 仁
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大介
【審査官】
柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/121400(WO,A1)
【文献】
特開2004−210558(JP,A)
【文献】
特表2012−521924(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/081760(WO,A1)
【文献】
特開平04−305048(JP,A)
【文献】
特開平11−324707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
G10K 11/162
B62D 29/04
B64C 1/40
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維と結合剤からなる多孔体を有する輸送機器用断熱吸音材であって、
前記多孔体の嵩密度が、2kg/m3〜18kg/m3であり、
圧縮率30%で圧縮した際の、圧縮応力は100N/m2以上であり、
輸送機器の胴体の外板と内板の間に、挟持された状態で設置される、輸送機器用断熱吸音材。
【請求項2】
前記多孔体が、気孔であるセルと、前記セルを囲む無機繊維からなるセル壁とを含み、前記セルと前記セル壁が多数連なっている請求項1記載の輸送機器用断熱吸音材。
【請求項3】
前記多孔体が耐火性フィルムに包装されている請求項1又は2記載の輸送機器用断熱吸音材。
【請求項4】
前記結合剤が、カップリング剤及び無機結合材から選択される1以上である請求項1〜3のいずれか記載の輸送機器用断熱吸音材。
【請求項5】
前記多孔体が無機繊維、界面活性剤及び結合剤、又は無機繊維及び結合剤のみからなる請求項1〜4のいずれか記載の輸送機器用断熱吸音材。
【請求項6】
前記多孔体が発泡体である請求項1〜5のいずれか記載の輸送機器用断熱吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等の輸送機器の胴体の壁等に使用される輸送機器用断熱吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の壁面等には、火災に備え断熱性が求められ、さらに、機体内外の音を吸収し機内の快適性を保つために吸音性も求められる。従って、航空機の胴体の壁は、外板と内板で二重になっていてその間には、断熱吸音材が設置されている。このような断熱吸音材として、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の有機スポンジ材料が使用されている(特許文献1等)。有機スポンジ材料は、断熱吸音材料として優れるが、耐熱性が低く火災時に燃え、火災発生時における乗客の避難のための時間を確保しづらい等の問題が生じやすい。
【0003】
また、断熱吸音材として、ガラス繊維が使用されている(特許文献2等)。ガラス繊維は有機系材料に比較して耐熱性が高い。通常、ガラス繊維マットをフィルムに詰めた断熱材を、ピンで壁面に固定して使用している。胴体両側の壁面に設置するときは、壁面に沿ってほぼ垂直に設置される。しかし、ガラス繊維マットは、圧縮応力が低く、離発着、飛行中の振動によりフィルム内で自重のためずり落ちる等の問題があった。そのため性能が低下し、メンテナンスにより入れ替えが必要であった。
【0004】
特許文献3には、表面を荷電させた無機繊維を、逆符号の親水基を有する界面活性剤を用いて発泡させて発泡体を得ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4639226号公報
【特許文献2】特許5021316号公報
【特許文献3】国際公開公報第2016/121400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、不燃性であり、かつ、自重でずり落ち難い輸送機器用断熱吸音材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、無機繊維質からなる多孔体が、圧縮応力と復元率に優れ、2つの部材の間に介在させて垂直に設置しても自重でずり落ち難いことを見い出した。さらに、この多孔体は吸音性、断熱性、耐火性に優れ、軽量である。
【0008】
本発明によれば、以下の輸送機器用断熱吸音材が提供される。
1.無機繊維からなる多孔体を有する輸送機器用断熱吸音材。
2.前記多孔体が、気孔であるセルと、前記セルを囲む無機繊維からなるセル壁とを含み、前記セルと前記セル壁が多数連なっている1記載の輸送機器用断熱吸音材。
3.前記多孔体の嵩密度が、2kg/m
3〜18kg/m
3である1又は2記載の輸送機器用断熱吸音材。
4.前記多孔体が耐火性フィルムに包装されている1〜3のいずれか記載の輸送機器用断熱吸音材。
5.輸送機器の胴体の外板と内板の間に設置されるための1〜4のいずれか記載の輸送機器用断熱吸音材。
6.1〜4のいずれか記載の輸送機器用断熱吸音材を、胴体の外板と内板の間に設置した輸送機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不燃性であり、かつ、自重でずり落ち難い輸送機器用断熱吸音材が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の輸送機器用断熱吸音材は、無機繊維から構成される多孔体からなる。多孔体として、セル構造を有する多孔体(スポンジ)を用いることができる。
図1にセル構造を示す。セル構造は、気孔(セル)とそれを囲むセル壁が多数連なった構造である。セル壁は無機繊維から構成される。平均セル径は通常100〜1500μmであり、例えば130〜1000μm又は150〜800μmである。
【0012】
セル径を大きくすると嵩密度が減る傾向にある。セル構造の多孔体の嵩密度は、セル壁の厚さに影響を受ける。
一般に嵩密度を大きくすると、圧縮応力は高くなる。一方、輸送機器に使用する部材は軽量であることが求められる。多孔体の嵩密度は、好ましくは2〜18kg/m
3であり、より好ましくは3〜17kg/m
3である。さらに好ましくは4〜16kg/m
3である。
【0013】
多孔体に用いる無機繊維の平均繊維径は、好ましくは0.1〜2.5μmであり、例えば0.15〜1.0μmである。
【0014】
圧縮率30%で圧縮した際の、圧縮応力は好ましくは100N/m
2以上であり、より好ましくは150N/m
2以上である。上限は通常2000N/m
2以下である。
さらに、圧縮率30%で圧縮した後の復元率は好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
圧縮応力と復元率が高い程、挟持されて設置される場所において位置がずれない。
【0015】
嵩密度、圧縮応力、復元率及び平均セル径は、実施例に記載の方法で測定できる。なお、嵩密度は、例えば、後述する発泡体の製造方法において、無機繊維に対する界面活性処理方法、無機繊維の濃度(含有割合)、発泡倍率、気泡量、気泡径等により調整(制御)できる。
【0016】
本発明で用いる無機繊維は、例えばセラミック繊維、生体溶解性繊維(アルカリアースシリケート繊維、ロックウール等)及びガラス繊維から選択される1以上を用いることができる。石綿繊維は用いないことが望まれる。
【0017】
生体溶解性無機繊維は、例えば、40℃における生理食塩水溶解率が1%以上の無機繊維である。
生理食塩水溶解率は、例えば、次のようにして測定される。すなわち、先ず、無機繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転の水平振動を50時間継続して加える。その後、ろ過により得られた濾液に含有されている各元素(主要元素でよい)の濃度(mg/L)をICP発光分析装置により測定する。そして、測定された各元素の濃度と、溶解前の無機繊維における各元素の含有量(質量%)と、に基づいて、生理食塩水溶解率(%)を算出する。すなわち、例えば、測定元素が、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)である場合には、次の式により、生理食塩水溶解率C(%)を算出する;C(%)=[ろ液量(L)×(a1+a2+a3+a4)×100]/[溶解前の無機繊維の質量(mg)×(b1+b2+b3+b4)/100]。この式において、a1、a2、a3及びa4は、それぞれ測定されたケイ素、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの濃度(mg/L)であり、b1、b2、b3及びb4は、それぞれ溶解前の無機繊維におけるケイ素、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの含有量(質量%)である。
【0018】
生体溶解性繊維は例えば以下の組成を有する。
SiO
2とZrO
2とAl
2O
3とTiO
2の合計 50重量%〜82重量%
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との合計 18重量%〜50重量%
【0019】
また、生体溶解性繊維は例えば以下の組成を有して構成されることも可能である。
SiO
2 50〜82重量%
CaOとMgOとの合計 10〜43重量%
【0020】
また、本発明で用いる多孔体(発泡体等)は、無機成分の他、カップリング剤等の有機成分を含むことができる。
【0021】
本発明で用いる多孔体は以下の方法で製造できる。本製造方法は、無機繊維質発泡体の製造を含み、発泡体の製法は、無機繊維分散液を作成する作成工程と、無機繊維分散液を発泡させる発泡工程と、発泡体を乾燥する脱水工程(分散媒の除去工程)と、結合剤を付与する結合剤付与工程とを含んで構成される。界面活性剤が残留していると結合剤の反応が悪くなる場合は、結合剤の付着を促すために、発泡体を所定温度で焼成を行う焼成工程を、結合剤付与工程の前に追加してもよい。尚、結合剤は、発泡用の分散液に事前に入れておき、発泡体作成後に熱処理してもよい。
【0022】
前記作成工程の一態様は、無機繊維の表面をアルカリ性又は酸性の処理液に接触させることにより、負又は正に荷電させる荷電ステップと、荷電した無機繊維に界面活性剤を添加させて分散液を作成する界面活性剤添加ステップとを含む。無機繊維の表面を負に荷電させたときは、カチオン性界面活性剤を、又は、無機繊維の表面を正に荷電させたときは、アニオン性界面活性剤を添加することが好ましい。
【0023】
前記荷電ステップでは、アルカリ性又は酸性の処理液を用いてpH調整することにより、無機繊維の表面のゼータ電位を制御する。具体的には、無機繊維の表面のゼータ電位をマイナス又はプラスとする。
【0024】
界面活性剤添加ステップでは、好ましくは、前記荷電した無機繊維に対し、逆符号の親水基を有する界面活性剤を添加し、界面活性剤の親水基側を無機繊維の表面に吸着させて疎水基側を無機繊維の表面と反対側に配置させることで無機繊維(最外面)を疎水化する。このように界面活性剤を無機繊維の表面に吸着させて無機繊維表面を疎水化した状態において、後述の発泡工程によって空気を導入して発泡させると、無機繊維表面の疎水基側に泡の形成が助長されて良好に発泡した発泡体を得ることができる。換言すれば、無機繊維表面のゼータ電位を制御することで、無機繊維に界面活性剤を相互作用させて繊維を疎水化させ、無機繊維の周りに泡を係止(付着)し易くして発泡させた発泡体(スポンジ構造)を形成する。
【0025】
なお、前記無機繊維にはセラミック繊維、生体溶解性繊維(アルカリアースシリケート繊維、ロックウール等)、ガラス繊維等を用いることができる。また、前記処理液には、水に溶解してpHを変化させることができるものであればよく、無機化合物の酸又は塩基、有機化合物の酸又は塩基を用いることができる。無機繊維の表面のゼータ電位は、0でない値を示すこと、例えば−5mV〜−70mV、−7mV〜−60mV、−10mV〜−45mV、+5mV〜+65mV、+7mV〜+60mV又は、+10mV〜+45mVとする。繊維の種類により、所定のゼータ電位にするためのpHは異なるため、pHを一義的に特定することはできないが、例えば、ゼータ電位が0となるpHが7である繊維を用いる場合(等電点pHが7)、pH7より高いpHで負に荷電し、pH7より低いpHで正に荷電させることができる。また、例えば、ゼータ電位が0となるpHが2である繊維を用いる場合(等電点pHが2)、pH2より高いpHで負に荷電し、pH2より低いpHで正に荷電させることができる。尚、ゼータ電位は、所定のpHに調整した水系の分散媒中に繊維を分散させ、繊維の汎用ゼータ電位計(例えばModelFPA、AFG Analytik社製)を用いて測定することで得られる。
【0026】
また、前記作成工程における荷電ステップと界面活性剤添加ステップとは経時的又は同時に実施し得る。荷電ステップと界面活性剤添加ステップとを同時に実施する場合、処理液、無機繊維及び界面活性剤を一緒に混ぜることができる。一方、荷電ステップと界面活性剤添加ステップとを経時的に実施する場合、無機繊維を、予め処理液で開繊、分散して荷電し、その後、界面活性剤と混ぜることができる。また、前記作成工程の他の態様としては、界面活性剤を用いることなく、両親媒性物質、疎水性の官能基を有するシランカップリング剤、疎水性の官能基を有するチタンカップリング剤等による表面処理によって少なくとも表面を疎水化した無機繊維を分散液(分散媒)に入れて作成することも可能である。尚、この工程のカップリング剤は発泡体を形成するために疎水化の状態にするためのものである。後の結合剤付与工程で用いるカップリング剤は発泡体の形態が水に濡れることにより崩壊することを防止するためのものである。
【0027】
分散液における界面活性剤の量は無機繊維より適宜調整できるが、例えば、ガラス繊維100重量部に対し、界面活性剤を0.01〜1.0重量部としてよい。前記界面活性剤は、好ましくは0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.2〜0.7重量部とすることが可能である。尚、界面活性剤の添加量は、少なすぎると無機繊維の表面を十分に疎水化できず発泡性が低下する恐れがあり、一方で界面活性剤の量が多すぎると界面活性剤同士が付着し無機繊維の表面を十分に疎水化できない恐れがある点に鑑みて調整され得る。
【0028】
また、分散液は、有機結合剤(樹脂エマルジョン、ゴム(エラストマー)成分(アラビアゴム等)又はマグネシウム酸化物若しくは水酸化物を含まないで構成され得る。
【0029】
前記発泡工程では、処理液と無機繊維と界面活性剤とが混合されてなる無機繊維分散液に気泡供給装置から空気(気泡)を供給して発泡させる。なお、気泡供給装置を用いることなく、攪拌によって無機繊維分散液に空気(気泡)を供給して発泡させてもよい。かかる気泡供給装置によって、気泡径又は気泡量を調整することにより、セル径や嵩密度を調整できる。
【0030】
前記脱水工程では、発泡体を所定時間(例えば4時間)、常温又は常温外の所定温度下で分散液に含まれていた分散媒を乾燥(自然乾燥を含む)することによって脱水する。
【0031】
前記焼成工程では、発泡体を高温度(例えば450℃)で焼成し、界面活性剤を除去する。なお、焼成工程は、前記脱水工程と同時に実施することが可能である。
【0032】
前記結合剤付与工程に用いる結合剤として、繊維同士を結合する結合剤を用いることができ、例えば、カップリング剤、無機結合剤等である。カップリング剤を用いるとき、発泡体と、カップリング剤と水蒸気を反応させて付与する。具体的には、カップリング剤を加熱して発生した蒸気を発泡体に付着させて、水蒸気と反応させる。水蒸気で処理することにより、カップリング剤が加水分解、脱水縮合されて、発泡体に付着する。例えば、閉鎖容器(外から容器内に気体は混入しないが、内部の加熱による圧力の上昇が可能な程度の密閉容器)内で発泡体とカップリング剤蒸気を接触させる。接触後、閉鎖容器に水を入れて水蒸気を発生させてカップリング剤と反応させる。尚、カップリング剤を多く付与させるときは、前記の処理に代えて又は前記の処理に加えて、発泡体にカップリング剤を直接含浸させて加熱してもよい。その後水蒸気と接触させる。
【0033】
無機結合剤の例として、SiO
2系(SiO
2粒子、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、Al
2O
3系(Al
2O
3粒子、ポリ塩化アルミニウム等の塩基性酸アルミニウム等)、リン酸塩、粘土鉱物(合成、天然)等が挙げられる。
カップリング剤の例として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としてメチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
結合剤の量は無機繊維により適宜調整でき限定されないが、例えば、1〜10重量%程度である。
【0035】
多孔体は、無機繊維、界面活性剤及び結合剤、又は無機繊維及び結合剤から本質的になってもよく、これらのみからなってもよい。ここで本質的になるとは95重量%以上、98重量%以上又は99重量%以上がこれらからなることをいう。尚、本発明の多孔体は、エアロゲル又はエアロゲルと無機繊維の複合材料を除くことができる。
【0036】
好ましくは、多孔体は、耐火性フィルムで包装して使用する。耐火性フィルムとして、金属箔、セラミックス繊維やガラス繊維のクロスや不織布等が挙げられる。必要に応して、本発明の断熱吸音材はピンで留めて設置する。
【実施例】
【0037】
以下、具体的な実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1〜4
平均繊維径0.22μmのマイクロガラス繊維(融点400℃以上)を、pH10のアンモニア水に濃度0.5重量%となるように分散させて繊維表面のゼータ電位を−55mVに調整して処理した。次に、カチオン性界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(商品名;コータミン24P、花王株式会社製))を、繊維100重量部に対して、界面活性剤の固形物換算で0.5重量部添加して、撹拌混合した。このときノズルを用いて空気を取り込み発泡させた。ノズルから出る泡の量を変えることにより発泡体の嵩密度を変えた。得られた湿潤発泡体を乾燥させ、電気炉を用いて450℃にて1時間処理し、発泡体に付着している界面活性剤を除去した。次に、カップリング剤を付与した。カップリング剤はメチルトリエトキシシラン(商品名;KBE−13、信越化学工業製)を用い、密閉容器内にシランカップリング剤を入れ、160℃程度に加熱し、シランカップリング剤の蒸気を発生させ、発泡体を4時間処理した。次に、カップリング剤の反応を進行させるため、閉鎖容器内へ水を8g添加し、水蒸気を発生させ、発泡体を2時間処理した。さらに閉鎖容器内にて、発泡体重量1gあたり10g程度のカップリング剤を直接塗布し、105℃にて4時間加熱した。その後、上記と同様にカップリング剤の半分の質量に相当する水を容器にいれ、105℃にて2時間処理した。発泡体はセル構造を有していた。平均セル径は約170〜約240μmであった。
【0039】
無機繊維と発泡体の特性の測定方法は以下の通りである。
・平均繊維径
ランダムに選択した繊維400本について繊維径を測定し、平均値を求めた。
【0040】
・嵩密度
発泡体のサンプルを圧縮しない状態で嵩密度を測定した。寸法計測装置(例えばノギス)を用いて、サンプルの縦、横、高さの寸法を計測した。次に、サンプルの重量を計測し、以下の式により嵩密度を算出した。結果を表1に示す。
嵩密度=重量÷縦寸法÷横寸法÷高さ
【0041】
・平均セル径(平均円相当径)
発泡体からサンプルを切断し、X線マイクロCTスキャナ(BRUKER社製SkyScan1272)を用いて、解像度5μm/pixelにて線透過像を撮影した。得られたX線透過像から、付属のソフト(NRrecon及びDATAVIEWER)を用いて3次元像を合成し、サンプル内部の断面像を作成した。得られた断面像の全細孔を計測し円相当径の平均を算出した。
【0042】
・圧縮応力
以下の式に示すように、サンプル圧縮時の荷重値を、サンプル寸法計測により求めた面積(縦寸法と横寸法)で除算して算出した。圧縮率は、圧縮前のサンプルの厚さを100%としたとき70%の厚さとなる30%とした。圧縮時の荷重は、材料試験機(オートグラフ、島津製作所)を用いて圧縮率30%まで圧縮(2mm/min)した際の荷重値とした。結果を表1に示す。
圧縮応力N/m
2=荷重(N)÷サンプル面積(m
2)
【0043】
・復元率
圧縮応力の測定と同様に、サンプルを圧縮率30%の厚さまで圧縮した後解放した。圧縮解放後のサンプルの厚さを計測し、以下の式から復元率を算出した。結果を表1に示す。
復元率(%)=圧縮解放後の厚さ÷圧縮前の厚さ×100
【0044】
比較例1
発泡体の代わりに、航空機用に市販されているガラス繊維マット(製品名:Microlite(登録商標) AA Premium NR Blankets、JohnsManville社(US)製)を用いて、実施例と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例5
平均繊維径0.4μmの繊維を用いた他は、実施例1と同様にして、発泡体(嵩密度9.0kg/m
3)を作製した。
この発泡体の厚さ10.3mmのサンプルについて、JIS A 1405−2(垂直入射吸音率、背面空気層無し)に準じて吸音率測定システム(ブリュエル・ケアー社測定システム)を用いて吸音率を測定した。比較として、比較例1と同様のJohnsManville社のガラスマット(嵩密度9.8kg/m
3)の厚さ10.6mmのサンプルについて、同様に吸音率を測定した。実施例5のサンプルは、1/3オクターブ周波数3000〜5000Hzにおいて80%以上の吸音率が示され、比較例1のサンプルより3〜19%高かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の輸送機器用断熱吸音材は、航空機、車両、船舶等の輸送機器に使用でき、特に胴体の外板と内板の間に設置して使用できる。