特許第6688275号(P6688275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688275車両用電池パック保護構造およびそれを備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688275
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】車両用電池パック保護構造およびそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20200421BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20200421BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B60K1/04 Z
   H01M2/10 S
   B62D21/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-244080(P2017-244080)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-108099(P2019-108099A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
(72)【発明者】
【氏名】西塔 晃太
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0106484(KR,A)
【文献】 特開2009−23383(JP,A)
【文献】 特開2013−14312(JP,A)
【文献】 特開2017−121871(JP,A)
【文献】 特開2016−185739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04,
B62D 21/00,
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電池パックを保護する車両用電池パック保護構造であり、
前記車両用電池パックは、車両の幅方向に沿って配設された、複数の電池スタックから構成され、
前記車両用電池パックが収納される電池パック収納容器部と、
前記電池スタック同士の間において前記車両の前後方向に沿って延在し、前端部および後端部が前記電池パック収納容器部に接続する第1上部補強部材と、を具備し、
前記第1上部補強部材の中間部の下方部分に第1脆弱部を形成し、
前記第1上部補強部材の下面に第2上部補強部材を連結し、
前記第1上部補強部材の前記第1脆弱部が形成された部分には、前記第2上部補強部材は設けられないことを特徴とする車両用電池パック保護構造。
【請求項2】
前記第1上部補強部材は、前記車両用電池パックの上端と略同等の高さに配設されることを特徴とする請求項1に記載の車両用電池パック保護構造。
【請求項3】
前記第1上部補強部材は角形鋼管であり、前記第2上部補強部材は前記第1上部補強部材から離れる側に開口する溝形鋼であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電池パック保護構造。
【請求項4】
前記電池スタック同士の間には、保護プレートが配置され、
前記第2上部補強部材の開口に、前記保護プレートが配置されることを特徴とする請求項に記載の車両用電池パック保護構造。
【請求項5】
前記第1上部補強部材の前記第1脆弱部の近傍において、前記保護プレートに第2脆弱部を形成することを特徴とする請求項に記載の車両用電池パック保護構造。
【請求項6】
前記電池スタック同士の間に、複数の前記保護プレートが配置されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用電池パック保護構造。
【請求項7】
前記電池パック収納容器部は、前記前端部において幅方向に延びる前方補強フレームと、前記後端部において幅方向に延びる後方補強フレームと、を有し、
前記第1上部補強部材の前端は前記前方補強フレームに接続され、前記第1上部補強部材の後端は前記後方補強フレームに接続されることを特徴とする請求項1から請求項の何れかに記載の車両用電池パック保護構造。
【請求項8】
請求項1から請求項の何れかに記載された前記車両用電池パック保護構造を有することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池パック保護構造およびそれを備えた車両に関し、特に、車両が衝突した場合でも電池パックを効果的に保護できる車両用電池パック保護構造およびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車には、車両に駆動力を与えるモータを回転させるために、モータに電力を供給する大容量の車両用電池が搭載されている。
【0003】
この車両用電池は、十分な連続走行距離を確保する為に、重量が大きく更に占有容積が大きい。従って、この車両用電池は、例えばシートの下方やリアフロアの下方等に配置されている。
【0004】
特許文献1には、このような電気自動車等に於いて、バッテリの搭載安定性と音性能を向上するバッテリフレーム構造が記載されている。具体的には、バッテリを外枠フレームで周囲から囲み、対向する外枠フレームを跨がる門形のブリッジフレームを形成している。係る形状のブリッジフレームを形成することで、外枠フレームへ荷重が分散され、バッテリを支える底板の撓み変形が回避されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−240288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された発明では、バッテリフレーム構造を強化するためにブリッジフレームを配設しているが、ブリッジフレームは荷重分散等を目的として配設されているため、ブリッジフレームの機械的強度はそれほど大きくない。また、ブリッジフレームは車両の幅方向に沿って延びる長尺部材であるため、例えば、車両の前後方向に沿って衝撃が作用した場合、その衝撃をブリッジフレームで緩和することができない。
【0007】
よって、電気自動車等に後方からの衝突事故が発生した場合、バッテリフレームでその衝突エネルギを効果的に吸収することができず、バッテリを充分に保護することができない恐れがあった。
【0008】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、衝突事故等が発生したとしても車両用電池パックを保護することができる車両用電池パック保護構造およびそれを備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用電池パック保護構造は、車両用電池パックを保護する車両用電池パック保護構造であり、前記車両用電池パックは、車両の幅方向に沿って配設された、複数の電池スタックから構成され、前記車両用電池パックが収納される電池パック収納容器部と、前記電池スタック同士の間において前記車両の前後方向に沿って延在し、前端部および後端部が前記電池パック収納容器部に接続する第1上部補強部材と、を具備し、前記第1上部補強部材の中間部の下方部分に第1脆弱部を形成し、前記第1上部補強部材の下面に第2上部補強部材を連結し、前記第1上部補強部材の前記第1脆弱部が形成された部分には、前記第2上部補強部材は設けられないことを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記第1上部補強部材は、前記車両用電池パックの上端と略同等の高さに配設されることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記第1上部補強部材は角形鋼管であり、前記第2上部補強部材は前記第1上部補強部材から離れる側に開口する溝形鋼であることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記電池スタック同士の間には、保護プレートが配置され、前記第2上部補強部材の開口に、前記保護プレートが配置されることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記第1上部補強部材の前記第1脆弱部の近傍において、前記保護プレートに第2脆弱部を形成することを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記電池スタック同士の間に、複数の前記保護プレートが配置されることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記電池パック収納容器部は、前端部において幅方向に延びる前方補強フレームと、後端部において幅方向に延びる後方補強フレームと、を有し、前記第1上部補強部材の前端は前記前方補強フレームに接続され、前記第1上部補強部材の後端は前記後方補強フレームに接続されることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の車両では、上記の車両用電池パック保護構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用電池パック保護構造は、車両用電池パックを保護する車両用電池パック保護構造であり、前記車両用電池パックは、車両の幅方向に沿って配設された、複数の電池スタックから構成され、前記車両用電池パックが収納される電池パック収納容器部と、前記電池スタック同士の間において前記車両の前後方向に沿って延在し、前端部および後端部が前記電池パック収納容器部に接続する第1上部補強部材と、を具備し、前記第1上部補強部材の中間部の下方部分に第1脆弱部を形成し、前記第1上部補強部材の下面に第2上部補強部材を連結し、前記第1上部補強部材の前記第1脆弱部が形成された部分には、前記第2上部補強部材は設けられないことを特徴とする。
【0019】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記第1上部補強部材は、前記車両用電池パックの上端と略同等の高さに配設されることを特徴とする。従って、衝突事故が発生していない通常時に於いて、第1上部補強部材が上方に突出してしまうことが防止され、その上方に形成されるスペースを大きく確保することができる。
【0021】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記第1上部補強部材は角形鋼管であり、前記第2上部補強部材は前記第1上部補強部材から離れる側に開口する溝形鋼であることを特徴とする。従って、機械的強度が大きい角形鋼管から第1上部補強部材が構成されることで、衝突時に効果的に車両用電池パックを保護することができる。また、第2上部補強部材が溝形鋼であることで、衝突時の衝撃を変形で吸収すると共に、上記した変形を促進することができる。
【0022】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記電池スタック同士の間には、保護プレートが配置され、前記第2上部補強部材の開口に、前記保護プレートが配置されることを特徴とする。従って、衝突が発生した際に、第1上部補強部材と共に保護プレートを変形させることができ、衝突エネルギをより効果的に吸収し、車両用電池パックを更に効果的に保護することができる。
【0023】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記第1上部補強部材の前記第1脆弱部の近傍において、前記保護プレートに第2脆弱部を形成することを特徴とする。従って、衝突が発生した際に、第1上部補強部材と保護プレートとを前後方向に於いて同じ箇所で曲折させ、第1上部補強部材および保護プレートを車両用電池パックから離し、車両用電池パックを保護することができる。
【0024】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記電池スタック同士の間に、複数の前記保護プレートが配置されることを特徴とする。従って、複数の前記保護プレートが配置されることで、より多くの衝突エネルギを吸収することができる。
【0025】
更に、本発明の車両用電池パック保護構造では、前記電池パック収納容器部は、前端部において幅方向に延びる前方補強フレームと、後端部において幅方向に延びる後方補強フレームと、を有し、前記第1上部補強部材の前端は前記前方補強フレームに接続され、前記第1上部補強部材の後端は前記後方補強フレームに接続されることを特徴とする。従って、前記第1上部補強部材の前端および後端が、前方補強フレームおよび後方補強フレームに接続されることから、衝突が発生した際にこれらの部材で効果的に車両用電池パックを保護することができる。
【0026】
更に、本発明の車両では、上記の車両用電池パック保護構造を有することを特徴とする。従って、衝突対策が施された車両用電池パック保護構造を備えることにより、衝突時に於ける車両の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用電池パック保護構造を備えた車両を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用電池パック保護構造を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る車両用電池パック保護構造を示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る車両用電池パック保護構造を示す図であり、(A)は各補強部材を示す斜視図であり、(B)はその分解斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る車両用電池パック保護構造を示す図であり、衝突事故が発生した際に変形する各補強部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して、本形態に係る車両用電池パック保護構造21およびそれを備えた車両10を説明する。以下の説明では、上下前後左右の各方向を適宜用いて説明するが、左右とは車両10の進行方向を向いた場合の方向を示している。
【0029】
図1は、車両用電池パック保護構造21を備えた車両10を後方上方から見た斜視図である。ここでは、車両10の車体11の後端を覆うリアゲートを省いて図示している。車両10は、例えば、モータとエンジンとを駆動源として備えたハイブリッド自動車、または、モータのみを駆動源として備えた電気自動車である。
【0030】
車体11の車室内後方には後方シート12が配設されており、その後方にリアフロア13が配設されている。リアフロア13の下方に、収納スペース14が形成されており、車両用電池パック20および車両用電池パック保護構造21は収納スペース14の内部に配設されている。ここでは、車両用電池パック20および車両用電池パック保護構造21は、カバーにより覆われている。
【0031】
図2を参照して、車両用電池パック保護構造21を説明する。ここでは、車両用電池パック保護構造21を構成する各部材を上下方向に離して示している。
【0032】
車両用電池パック保護構造21は、複数の電池スタック37等からなる車両用電池パック20を保護するものである。また、車両用電池パック保護構造21は、車両用電池パック20が収納される電池パック収納容器部30と、第1上部補強部材50と、を具備している。第1上部補強部材50は、後述するように、電池スタック37等の間において車両10の前後方向に沿って延在する長尺部材であり、前端部および後端部が電池パック収納容器部30に接続する。
【0033】
電池パック収納容器部30は、車両用電池パック20を収容する収納容器31と、収納容器31の周辺部を支える各フレームから構成されている。収納容器31は、鉄やアルミニウムから成る鋼板または合成樹脂板を略箱形状に成形したものであり、車両用電池パック20を収容できる大きさを有しており、上面視に於いて左右方向に長い矩形形状を呈している。収納容器31の前方側辺には前方補強フレーム32が接続し、収納容器31の後方側辺には後方補強フレーム33が接続し、収納容器31の左方側辺には左方補強フレーム34が接続し、収納容器31の右方側辺には右方補強フレーム35が接続している。前方補強フレーム32等の各フレームは、例えば角形鋼管等の閉断面を有する鋼製長尺部材である。
【0034】
前方補強フレーム32および後方補強フレーム33の左右方向外側端部は、収納容器31の左右方向外側端部よりも、外側に向かって延びている。前方補強フレーム32および後方補強フレーム33の左右方向外側端部は、上記した車体11に連結される。
【0035】
左方補強フレーム34および右方補強フレーム35の前方側端部は、前方補強フレーム32の中間部に連結されている。左方補強フレーム34および右方補強フレーム35の後方側端部は、後方補強フレーム33の中間部に連結されている。
【0036】
上記した収納容器31に収納される車両用電池パック20は、右方側に配置される電池モジュール36、および、左方側に配置される電池モジュール41から構成される。ここでは、右方側の電池モジュール36を、電池パック収納容器部30から上方に離して示している。電池モジュール36、41は、車両10の製造工程では、艤装工程に於いて収納容器31に収納される。
【0037】
電池モジュール36では、電池スタック37および電池スタック38が左右方向に配列されている。電池スタック37および電池スタック38は、略箱形状のモジュール容器39に収納されている。モジュール容器39の左端では、曲折加工された帯状の鋼板から成る保護プレート40が、モジュール容器39の左方側開口に取り付けられている。ここでは、2つの保護プレート40が取り付けられている。これにより、保護プレート40で電池スタック37の左方側面を保護することができる。
【0038】
同様に、電池モジュール41では、電池スタック42および電池スタック43が左右方向に配列されている。電池スタック42および電池スタック43は、略箱形状のモジュール容器44に収納されている。モジュール容器44の右辺では、上記と同様に保護プレート45が電池スタック43を保護している。ここでは、斜視図の視点の関係上、保護プレート45を図示していない。
【0039】
上記した電池モジュール36と電池モジュール41との間、詳しくは、電池スタック37と電池スタック43との間には、第1上部補強部材50が設置される。第1上部補強部材50の前端部は前方補強フレーム32に接続し、その後端部は後方補強フレーム33に接続する。また、第1上部補強部材50の下面には第2上部補強部材51が固着されている。かかる構成は後に後述する。
【0040】
図3を参照して、車両用電池パック20を収納する車両用電池パック保護構造21を更に説明する。図3図2のA−A線に於ける断面図である。
【0041】
上記したように、収納容器31の内部に、右方から、電池スタック37および電池スタック38からなる電池モジュール36、並びに、電池スタック42および電池スタック43からなる電池モジュール41が収納されている。また、収納容器31の底面付近には、下部補強部材52が配設されている。下部補強部材52は、左右方向に蛇行形成された鋼板から成る。下部補強部材52を収納容器31の底面付近に配設することで、電池パック収納容器部30の下部の前後方向に対する機械的強度を高めることができる。
【0042】
第1上部補強部材50は、略四角形形状を呈する閉断面を有する角形鋼管である。機械的強度が高い角形鋼管から第1上部補強部材50を構成することで、電池パック収納容器部30の上部の前後方向に対する強度を高めることができる。
【0043】
第1上部補強部材50は、電池スタック37等の上端またはその近傍に配置されている。具体的には、第1上部補強部材50の上端は、電池スタック37等の上端と同じ高さかそれより下方に配置される。このようにすることで、第1上部補強部材50が上方に突出することがなく、図1に示したリアフロア13の上方に形成される収納スペース14を広く確保することができる。
【0044】
第1上部補強部材50の下面には、第2上部補強部材51が取り付けられている。第2上部補強部材51は、下方に向かって開口する溝形鋼である。第2上部補強部材51の上面は第1上部補強部材50の下面に密着している。第2上部補強部材51の上面および第1上部補強部材50の下面を貫通する締結手段であるボルト53により、第2上部補強部材51と第1上部補強部材50とは締結されている。
【0045】
第2上部補強部材51の内側に、保護プレート40および保護プレート45が配設されている。具体的には、第2上部補強部材51は、保護プレート40および保護プレート45の上方部分に填まり込んでいる。ここで、保護プレート40および保護プレート45は、第2上部補強部材51の内面に密着しても良いし、離間しても良い。このようにすることで、後述するように、車両衝突が発生した際に、第2上部補強部材51がガイドの如く機能し、保護プレート40および保護プレート45を、第1上部補強部材50と同様に、上方に向かって曲折変形させることができる。よって、衝突時において、保護プレート45が電池スタック43側に向かって左方に曲折することがなく、電池スタック43が損傷することを防止できる。同様に、保護プレート40が電池スタック37側に向かって右方に曲折することがなく、電池スタック37が損傷することを防止できる。
【0046】
図4の斜視図を参照して、第1上部補強部材50等を更に説明する。図4(A)は第1上部補強部材50、第2上部補強部材51、保護プレート45等を示す斜視図であり、図4(B)はこれらの部材を上下方向に離して示す分解斜視図である。
【0047】
図4(A)および図4(B)を参照して、上記したように第1上部補強部材50の下面に第2上部補強部材51が取り付けられている。ここで、第2上部補強部材51は、第1上部補強部材50の前方部分および後方部分に2つが取り付けられている。換言すると、前後方向に於いて、第1上部補強部材50の中央部付近に於いて、第2上部補強部材51は分断されている。このようにすることで、衝突時に於いて第1上部補強部材50を、その中央付近が上方に隆起するように変形させることができる。
【0048】
第1上部補強部材50の前後方向において略中央部分の下端部分を切り欠くことで、第1脆弱部54が形成されている。第1脆弱部54は、第1上部補強部材50を部分的に切り欠いたスリットである。上記したように、第1上部補強部材50は角形鋼管であるので、その断面は、下方側面、上方側面、左方側面および右方側面を有する。第1脆弱部54が形成された部分の断面では、下方側面が全域的に切除され、左方側面および右方側面の下端付近も切除されている。第1脆弱部54を左方から見た場合の形状は、例えば、略半円形状である。
【0049】
このようにすることで、第1脆弱部54が形成された部分の第1上部補強部材50を、他の部分の第1上部補強部材50よりも脆弱にすることがでる。よって、前後方向に沿って衝撃エネルギが与えられる衝突が発生した際に、第1上部補強部材50を、第1脆弱部54が形成された部分を曲折起点として、上方に向かって隆起するように曲折させることができる。
【0050】
また、第1上部補強部材50の第1脆弱部54が形成された部分の下方には、第2上部補強部材51が配設されていない。換言すると、第2上部補強部材51は、第1脆弱部54が形成された部分で分断されている。このようにすることで、第1脆弱部54が形成されている部分の強度を、他の部分よりも更に相対的に小さくすることができ、第1脆弱部54を起点として上記に向かって曲折させる効果を顕著にすることができる。
【0051】
保護プレート45の前後方向に於ける略中央部分の下端を略半円状に切り欠くことで、第2脆弱部55が形成されている。このようにすることで、保護プレート45の略中央部分の強度が他の部分よりも小さくなる。また、第2脆弱部55は、上記した第1脆弱部54の下方に形成されている。よって、衝突が発生した際に、保護プレート45は、その略中央部分を曲折起点として、上方に向かって凸形状となるように湾曲する。保護プレート40にも、保護プレート45と同様に、第2脆弱部55が形成されている。
【0052】
図5に、衝突により変形した第1上部補強部材50等を示す。前後方向に沿う衝突エネルギが作用したことにより、第1上部補強部材50は第1脆弱部54を曲折起点として、上方に向かって凸となるように曲折変形している。第1上部補強部材50が曲折変形することで、衝突エネルギが吸収され、図2に示した電池パック収納容器部30および車両用電池パック20が変形してしまうことを抑制することができる。特に、図1を参照して、車両10の後方から外部物体に衝突するような衝突事故が発生した場合、車両のサイドフレームで衝突エネルギを吸収することができない。本実施形態では、車両10の略中央部に第1上部補強部材50を配設しているので、係る衝突が発生した場合でも、衝突エネルギを第1上部補強部材50で吸収することができ、車両用電池パック20の破損や発火を防止できる。
【0053】
図3を参照して、衝突時に第1上部補強部材50は電池スタック43等から離れる方向に変形するので、衝突により変形した第1上部補強部材50が電池スタック43等を破壊してしまうことを防止できる。この時、第2上部補強部材51は、大きな変形が生じておらず、基本的にはストレート形状を保持している。
【0054】
衝突時に於いては、保護プレート40、45も、第2脆弱部55を曲折起点として、上方に向かって凸となるように曲折変形している。また、図3に示したように、保護プレート40、45は、第2上部補強部材51により左右方向に於いてガイドされている。よって、衝突時には、保護プレート40、45は、左方向または右後方に向かって湾曲することなく、上方に向かって曲折変形する。よって、図3を参照して、衝突により変形した保護プレート40、45が電池スタック43、37を破壊してしまうことを防止できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両
11 車体
12 後方シート
13 リアフロア
14 収納スペース
20 車両用電池パック
21 車両用電池パック保護構造
30 電池パック収納容器部
31 収納容器
32 前方補強フレーム
33 後方補強フレーム
34 左方補強フレーム
35 右方補強フレーム
36 電池モジュール
37 電池スタック
38 電池スタック
39 モジュール容器
40 保護プレート
41 電池モジュール
42 電池スタック
43 電池スタック
44 モジュール容器
45 保護プレート
50 第1上部補強部材
51 第2上部補強部材
52 下部補強部材
53 ボルト
54 第1脆弱部
55 第2脆弱部
図1
図2
図3
図4
図5