(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688295
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】運動ニューロン病(例えばALS)の治療における使用のためのレボシメンダン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/50 20060101AFI20200421BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
A61K31/50
A61P21/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-519906(P2017-519906)
(86)(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公表番号】特表2017-531006(P2017-531006A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】FI2015000039
(87)【国際公開番号】WO2016059287
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年9月10日
(31)【優先権主張番号】20140278
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】300046083
【氏名又は名称】オリオン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドステット、ケン
【審査官】
鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−535457(JP,A)
【文献】
Am. J. Respir. Crit. Care Med.,2012年,Vol.185, No.1,pp.90-95
【文献】
JOURNAL OF MEDICAL ULTRASONICS,2003年,Vol.30, Supplement,p.S89 [76-SY042]
【文献】
Nat Med.,2012年,Vol.18, No.3,pp.452-455
【文献】
Russell A.J. et al.,Activation of fast skeletal muscle troponin as a potential therapeutic approach for treating neuromuscular diseases,Nat Med. Vol.18, No.3, pp.452-455 Author manuscript(PMCID: PMC3296825) [online],2012年 9月 1日,12pages,[2020年3月17日検索], インターネット<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3296825/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に伴う骨格筋の筋力または機能の喪失の緩和用のレボシメンダンまたはその活性代謝物(R)−N−[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]アセトアミドまたはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を含む医薬。
【請求項2】
骨格筋が、骨または他の結合組織に結合し、少なくとも1つの関節をまたいでいる横紋筋である請求項1記載の医薬。
【請求項3】
関節が滑膜関節である請求項2記載の医薬。
【請求項4】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(R)−N−[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]アセトアミドまたはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩が経口投与される請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
レボシメンダンまたはその薬学的に許容され得る塩を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
レボシメンダンの活性代謝物(R)−N−[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]アセトアミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を医薬として用いる、運動ニューロン病の治療方法および運動ニューロン病に伴う骨格筋の筋力または機能の喪失の緩和に関する。
【背景技術】
【0002】
制限された神経筋入力または神経筋接合部でのシグナル伝達不全による筋力低下は、重大な機能障害を生じ、運動ニューロン病と呼ばれる深刻な疾患の死亡率を増加させる原因となり得る。そのような運動ニューロン病としては、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)および重症筋無力症(MG)が挙げられる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの変性疾患であり、初期には進行性の筋肉の機能不全を引き起こし、最終的には筋麻痺となる。疾患の進行は、典型的には、きわめて直線的であり、発症から3〜5年で呼吸不全から死亡する。しかしながら、進行速度には個々の患者間でばらつきがあり、生存についても同様に患者間でばらつきがある(非特許文献1)。
【0003】
残念なことに、疾患の進行を遅らせ、ALSを患う患者の生活の質を改善するための根拠に基づく選択肢はほとんどない(非特許文献2)。病気の進行を遅らせることは極めて重要であるが、機能的能力を改善する治療は、たとえ疾患の根本的な病態生理学的基盤を直接変えなくとも、ALSの患者のためになるであろう。多大な努力にもかかわらず、神経筋機能を改善する治療はまだ上市されていない。したがって、神経入力に対する筋肉の応答、または筋肉収縮の力および持久力を治療的に増強することができれば、たとえそれらの根本的な疾患の進行が続いたとしても、ALS患者の機能的な状態を直接的に維持または改善し得る。
【0004】
レボシメンダン、すなわち[[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]ヒドラゾノ]プロパンジニトリルの(−)−エナンチオマーは、現在急性非代償性重症心不全を患う患者の短期治療に使用されている。レボシメンダンは、心筋フィラメントのカルシウムに対する感受性を高めることにより心臓の収縮性を増加させる。レボシメンダンは、レボシメンダンの投与後にヒトにおいて存在する活性代謝物、(R)−N−[4−(1,4,5,6−テトラヒドロ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリダジニル)フェニル]アセトアミド(II)を有する。レボシメンダンの持続性の血行力学的作用は、この活性代謝物(II)による。(非特許文献3よび4参照)。
【0005】
ALSなどの運動ニューロン疾患を患う患者の機能的状態を改善することのできる医薬が緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Caroscio JT et al., Neurol Clin 5(1), 1987, 1-8.
【非特許文献2】Miller RG et al., Neurology 73(15), 2009, 1218-1226.
【非特許文献3】Szilagyi S, et al., Eur J Pharmacol. 2004, 486(1):67-74.
【非特許文献4】Kivikko M, et al., Circulation, 2003, 107(1):81-6.
【発明の概要】
【0007】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)の経口投与により、重症筋無力症の実験モデルにおいて、骨格筋機能を改善できることが今回見出された。このモデルでは、筋肉のニコチン性アセチルコリン受容体に対して作用する抗体により神経筋接合部の機能が障害を受け、それゆえ動物において筋力低下を引き起こしている。結果は、レボシメンダンおよびその活性代謝物(II)が、運動ニューロン病などの神経筋入力の低下した疾患の治療に有用であることを示している。
【0008】
一つの実施形態において、本発明は、運動ニューロン病の治療方法であって、それを必要とする患者にレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を投与することを含む方法を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病を患う患者における筋力または筋肉の機能の喪失を緩和する方法であって、それを必要とする患者にレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を投与することを含む方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、患者における運動ニューロン病に伴う骨格筋の筋力または機能の喪失を緩和する方法であって、レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病の治療における使用のためのレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩である化合物を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病に伴う筋力または筋肉の機能の喪失の緩和における使用のためのレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩である化合物を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病に伴う骨格筋の筋力または機能の喪失の緩和における使用のためのレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩である化合物を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病の治療に使用するための医薬の製造におけるレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩の使用を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病に伴う筋力または筋肉の機能の喪失の緩和に使用するための医薬の製造におけるレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩の使用を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、運動ニューロン病に伴う骨格筋の筋力または機能の喪失の緩和に使用するための医薬の製造におけるレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩の使用を提供する。
【0017】
上述の運動ニューロン病としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症(MG)、脊髄性筋萎縮症(SMA)またはシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】重症筋無力症モデルにおける薬物治療の効果を示す。動物が回転ロッド(ロータロッド)に留まることのできる時間の長さのベースラインからの変化率を示す。測定は、2日目の経口薬物治療後0.5時間、1時間および2時間で行った。治療群は、ビヒクル、レボシメンダンおよび活性代謝物(II)であった。OR−1896は、レボシメンダンの活性代謝物(II)を意味する。
【
図2】重症筋無力症モデルにおける薬物治療の効果を示す。トレッドミル上を走る動物の運動時間の変化を示す。測定は、3日目の経口薬物治療後2時間で行った。OR−1896は、レボシメンダンの活性代謝物(II)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、運動ニューロン病の治療方法、および運動ニューロン病における筋肉、特に骨格筋の筋力または機能の喪失の緩和方法に関する。本明細書において使用する場合、用語「運動ニューロン病」は、原発的には、運動ニューロン、神経筋入力または神経筋接合部でのシグナル変換に影響を与える(必ずしも排他的ではなく)疾患を意味する。上述の運動ニューロン病としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症(MG)、脊髄性筋萎縮症(SMA)またはシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。本明細書において使用する場合、用語「骨格筋」は、骨または他の結合組織に結合し、通常少なくとも1つの関節をまたいでいる横紋筋を意味する。本明細書において使用する場合、用語「緩和する」とは、減少するまたは阻害することを意味する。
【0020】
本発明の一実施態様によれば、レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩、が運動ニューロン病に伴う骨格筋の筋力または機能の喪失を緩和するために使用される。本発明の別の実施態様によれば、その骨格筋は、骨または他の結合組織に結合し、少なくとも一つの関節をまたいでいる横紋筋である。本発明のまた別の実施態様によれば、関節は滑膜関節である。
【0021】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩の投与は、経口または直腸などの経腸;静脈内などの非経口;または経皮;または経粘膜によりすることができる。経口投与は、好ましい投与経路である。
【0022】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)または薬学的に許容され得るいずれかの塩は、毎日または1日に数回または1週間に1回もしくは2週間に1回など定期的に、患者の必要に応じて投与することができる。
【0023】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)は、適切には、患者の年齢、体重、状態により、約0.1〜10mg、好ましくは約0.2〜5mgの範囲の日用量で、1日1回、または1日数回に分けてヒトに経口で投与され得る。ヒトにおける運動ニューロン病の長期治療については、通常、比較的低用量の経口用量が好ましく、例えば経口の日用量、約0.1〜約5mg、好ましくは約0.2〜約4mg、より好ましくは約0.25〜約3mg、例えば約0.5〜2mgが好ましい。
【0024】
レボシメンダンは、静脈注入により、約0.01〜5μg/kg/分、典型的には約0.02〜3μg/kg/分、例えば約0.05〜0.4μg/kg/分の注入速度を用いて投与することができる。活性代謝物(II)は、約0.001〜約1μg/kg/分、好ましくは約0.005〜約0.5μg/kg/分の注入速度を用いて静脈内に投与することができる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、本発明の活性成分は、運動ニューロン病を患う患者に、運動ニューロン病に有用な一つ以上の他の活性成分と一緒に、例えばリルゾールと一緒に投与すしてもよい。
【0026】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩は、本技術分野において既知の原理を用い、本発明による治療に適切な薬の剤形に製剤化することができる。本発明の活性成分は、そのまま、または好ましくは適切な薬学的賦形剤と組み合わせて、活性性化合物の製剤中の含有量が約0.5〜100重量%である錠剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、エマルジョン、懸濁液または溶液などの形態で患者に投与することができる。組成物に適切な成分の選択は、当業者にとってルーチンなものである。適切な担体、溶媒、ゲル形成成分、分散液形成成分、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、湿潤化合物、放出制御成分およびこの技術分野において通常使用される他の成分も使用することができる。
【0027】
錠剤またはカプセル剤での活性成分の経口投与について、適切な担体および賦形剤としては、例えば、微結晶性セルロース、アルギニン酸、コーンスターチ、ステアリン酸、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウムおよびタルクなどが挙げられる。放出制御については、経口組成物の放出制御成分を使用することができる。典型的な放出制御成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ゲル形成ポリマー、またはそれらの混合物;水素添加大豆油、硬化ヒマシ油またはヒマ種子油(Cutina HRの商品名で販売されている)、綿実油(SterotexまたはLubritabの商品名で販売されている)などの植物固形油またはそれらの混合物などの植物油脂;グリセリルトリステアレート、グリセリルトリパルミテート、グルセリルトリミリステート、グリセリルトリベヘネート(Compritolの商品名で販売されている)などの飽和脂肪酸のトリグリセリドまたはそれらの混合物、およびグリセリルパルミトステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0028】
錠剤は、一つの活性成分または複数の活性成分を担体および賦形剤と混合し、粉末状混合物を錠剤に圧縮することにより製造することができる。カプセル剤は、活性成分を担体および賦形剤と混合し、粉末状混合物をカプセル、例えば硬ゼラチンまたはHPMCカプセルに収容することにより製造することができる。典型的には、錠剤またはカプセル剤は、約0.1〜5mg、より典型的には約0.2〜3mg、例えば0.25〜2mg、または0.25〜1mgのレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を含む。
【0029】
注射剤または注入剤などの静脈内投与に適切な製剤は、活性成分およびビヒクルの無菌等張溶液、好ましくは水溶液を含む。典型的には、静脈内注入溶液は、約0.01〜0.1mg/mlのレボシメンダンまたはその活性代謝物(II)またはそれらの薬学的に許容され得るいずれかの塩を含む。医薬製剤は、使用前に水性ビヒクルで希釈される静脈内注入濃縮物の形態であってもよい。そのような濃縮物は、ビヒクルとして、無水エタノールなどの薬学的に許容され得る有機溶媒を含んでもよい。
【0030】
レボシメンダンまたはその活性代謝物(II)の塩は、既知の方法により製造することができる。薬学的に許容され得る塩は、活性医薬として有用であるが、好ましい塩は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との塩である。
【実施例】
【0031】
製剤例
実施例1.経口カプセル
レボシメンダン 1.0mg
微結晶性セルロース 96.4mg
アルギン酸 30.0mg
ステアリン酸 5.3mg
硬ゼラチンカプセル サイズ3
【0032】
カプセルの形態の医薬製剤は、成分を混合し、そして硬ゼラチンカプセルにその粉末状混合物を収容することにより製造した。
【0033】
実施例2.静脈注入用の濃縮溶液
(a)レボシメンダン 2.5mg/ml
(b)Kollidon PF12 10mg/ml
(c)クエン酸 2mg/ml
(d)無水エタノール 1mlまで添加(785mg)
【0034】
濃縮溶液は、クエン酸、Kollidon PF12およびレボシメンダンを無菌製剤ベッセル中で無水エタノールに撹拌しながら溶解することにより製造した。得られたバルク溶液を、滅菌フィルター(0.22μm)を通してろ過した。その後、滅菌ろ過したバルク溶液を8mlおよび10mlの注射バイアルに無菌で充填し(充填容量5mlおよび10mlで)、そしてゴム栓を閉めた。
【0035】
静脈注入用の濃縮溶液は使用前に水性ビヒクルで希釈される。典型的には、濃縮溶液は、レボシメンダンの量が、通常、約0.001〜1.0mg/ml、好ましくは約0.01〜0.1mg/mlの範囲内である水性静脈内溶液が得られるように、5%ブドウ糖溶液または0.9%NaCl溶液などの水性等張ビヒクルで希釈される。
【0036】
実験1
雌性Lewisラットの抗体誘発重症筋無力症モデルでのレボシメンダンおよびその代謝物(II)の効果
【0037】
方法
レボシメンダンおよびその活性代謝物(II)の骨格筋力低下に対する効果を、重症筋無力症の実験モデル(Russell AJ et al., Nat Med 18(3), 2012, 452-5)において調べた。重症筋無力症は、nAChRα1/3/5抗体(SC−58604、サンタクルーズバイオテクノロジー社)を500μg/kg、腹腔内に0日目に注射することにより雌性Lewisラットにおいて誘発した。抗体の投与後48時間でのベースラインから、筋力の40〜70%低下した動物を、治療群:1)ビヒクル対照(n=6)(0.5%Methocel 5ml/kg経口)、2)レボシメンダン(n=6)(0.25mg/kg経口)、3)活性代謝物(II)(n=6)(0.025mg/kg経口)に無作為に抽出した。
【0038】
加速ロータロッドテスト(ロータロッド、Ugo Basile、コメーリオ、イタリア)を用いて、協調性、バランスおよび運動技能獲得を調べた。スムーズに4〜40rpmまで5分間かけて加速するロッドにラットを置いた。各動物がロッド上に留まっていることのできた時間の長さを記録した。3回の連続測定を行った。ラットを、抗体注射の一日前に4回、抗体注射の日に2回、このテストについて訓練した。異なる薬物治療のロータロッド応答に対する効果を、2日目、即ち重症筋無力症の誘発後48時間での経口治療後0.5時間、1時間および2時間後に測定した。
【0039】
運動能力測定は、呼吸ガス分析システムに連結した気密性トレッドミル(Accupacer treadmill、アキュスカムインスツルメント(Accuscan Instruments)、米国)で測定した。リハーサルおよび運動能力測定は、ラットを15分間トレッドミルチャンバーに慣れさせることから開始した(レストミル)。運動プログラムは、ラットが電気ショック刺激にもかかわらず速度を維持することができなくなるまで、10m/分での15分間の走行から構成された。ラットを、抗体注射の一日前に3回、抗体注射の日に2回、このテストについて訓練した。異なる薬物治療のトレッドミル応答に対する効果を、3日目(重症筋無力症の誘発後72時間)での経口治療後1時間および2時間後に測定した。
【0040】
結果
ロータロッドテストにおける異なる薬物治療の効果を
図1に示す。レボシメンダンおよびその活性代謝物(II)は、単回経口投与後0.5〜1時間をピークとする急性および一過性の筋肉機能の改善をもたらす。薬物応答期間は、レボシメンダン(t
1/2 0.7時間)および活性代謝物(II)(ラットでt
1/2 5時間)の薬物動態と相関する。
【0041】
トレッドミルテストにおける異なる薬物治療の効果を
図2に示す。レボシメンダンおよびその活性代謝物(II)の骨格筋機能に対する陽性の効果は、3日目での反復投薬の投与後2時間で見られた。