【文献】
Journal of Virology, 2008, Vol.82, No.1, pp. 60-70
【文献】
Biotechnol. Bioeng., 2015, Vol. 112, No. 12, pp. 2505-2515
【文献】
PNAS, 2014, Vol. 111, No. 50, pp. 17965-17970
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12orf35遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該C12orf35遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、請求項3に記載のCHO細胞。
FAM60A遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該FAM60A遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、請求項6に記載のCHO細胞。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1. 概要
CMVワクチン接種に対する主要な標的のうちの1つが、五量体複合体(gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131)である。商業的規模で組み換えCMV五量体を生成するために、五量体の5種類のサブユニットを長時間にわたって十分な量で発現させることができ、かつ五量体複合体へと正しくアセンブルさせることができる、好適な構築物および好適な宿主を特定する必要がある。CMV五量体は、ヒトCMVに対する中和抗体の主要な標的である。
【0022】
CMV五量体は、宿主細胞としてHEK293を用いて組み換え生成されてきた。国際公開第2014/005959号を参照されたい。しかしながら、HEK293細胞株は、一時的遺伝子発現に最適な宿主細胞株の1種であると当技術分野では一般的に認識されている。Meyer et al., PLoS One, 2013 Jul 17;8(7):e68674. doi: 10.1371/journal.pone.0068674を参照されたい。しかしながら、一時的にトランスフェクションされたHEK293細胞中で長時間にわたって五量体の発現を維持することは困難であろう。さらに、国際公開第2014/005959号に開示された実施例では、五量体の5種類のサブユニットが5種類の異なるプラスミドを介してHEK293細胞に導入された。そのような構成では、実質的に等しいレベルで五量体サブユニットのそれぞれの発現を維持することは困難であろう。不均一なサブユニット量は、特にこれらのサブユニットがgH/gL二量体、gH/gL四量体(2コピーのgHおよび2コピーのgL)、gH/gL/pUL128/pUL130四量体などの混入複合体を形成する傾向を既に有していることを考えれば、五量体アセンブル効率を低下させ得る。さらに、gHをコードするプラスミドはネオマイシンにより選択され、gL、pUL128、pUL130、およびpUL131をそれぞれコードする4種類のプラスミドはすべてカナマイシンにより選択された。したがって、4種類すべてのプラスミドがカナマイシンにより選択されたので、宿主細胞での1種類のプラスミドの欠損は容易には検出できないが、1種類のプラスミドの欠損は五量体のアセンブルを妨げたであろう。
【0023】
本明細書中で開示および例示される通り、本発明者らは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いることにより、CMV五量体の組み換え生成の難しさを克服した。これらのCHO細胞では、gH、gL、pUL128、pUL130、pUL131(またはそれらの複合体形成性断片)をコードする配列が、CHO細胞のゲノムへと安定的にインテグレートされる。CHO細胞のゲノムへと五量体コード配列をインテグレートすることにより、本発明者らは、高効率およびゲノムによる安定性を伴って、組み換え五量体の安定的なゲノム発現を達成した。実施例の節に例示される通り、一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞と比較して、CHO安定的細胞株は100倍高い収率を一貫して実現し、このことがこれらのCHO細胞株をCMV五量体の商業的製造に特に好適にしたことが発見された。安定的インテグレーションはまた、5種類の外来性プラスミドを有する一時的にトランスフェクションされたHEK細胞と比較して、大規模細胞培養の容易な取り扱いも可能にする。実際に、最上位のクローンは、0.1g/L〜0.5g/Lもの高い収率で五量体を産生した。
【0024】
CMV五量体生成のための宿主細胞のさらなる改善もまた、本明細書中に提供される。特に、3種類の改変型宿主細胞が例示される:(i) C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が、対照と比較して減少している宿主細胞;(ii) FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性が、対照と比較して減少している宿主細胞;(iii) マトリプターゼの発現レベルまたは活性が、対照と比較して減少している宿主細胞。C12orf35タンパク質もしくはFAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性の減少は組み換えタンパク質の発現レベルの顕著な増加をもたらすことが発見された。マトリプターゼの発現レベルまたは活性の減少が組み換えタンパク質のタンパク質分解(「クリッピング」)を顕著に減少させることもまた発見された。これらの改変は、単独で、またはいずれかの組み合わせで用いることができる。
【0025】
したがって、gH、gL、pUL128、pUL130、pUL131(またはそれらの複合体形成性断片)を含むCMV五量体複合体をコードするポリヌクレオチド配列がゲノムDNAへと安定的にインテグレートされている哺乳動物宿主細胞、特にCHO細胞が、本明細書中に提供される。好適な条件で培養した場合、該CMV五量体複合体が該宿主細胞により発現される。
【0026】
本明細書中に記載される哺乳動物細胞により産生されるサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体もまた、本明細書中に提供される。
【0027】
gHまたはその複合体形成性断片、gLまたはその複合体形成性断片、pUL128またはその複合体形成性断片、pUL130またはその複合体形成性断片、およびpUL131またはその複合体形成性断片を含むサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体の製造プロセスもまた本明細書中に提供され、該プロセスは、以下のステップ:(i)本明細書中に記載される哺乳動物細胞を好適な条件下で培養し、それにより該五量体複合体を発現させるステップ;および培養物から該五量体複合体を回収するステップを含む。五量体複合体は、さらに精製することができる。このプロセスにより生成されるサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体もまた、本明細書中に提供される。
【0028】
本明細書中に記載される五量体複合体を含む組成物もまた、本明細書中に提供される。組成物は、in vivo投与に好適な精製型CMV五量体複合体を含むことができる。例えば、そのような組成物中の五量体複合体は、少なくとも85質量%、少なくとも86質量%、少なくとも87質量%、少なくとも88質量%、少なくとも89質量%、少なくとも90質量%、少なくとも91質量%、少なくとも92質量%、少なくとも93質量%、少なくとも94質量%、少なくとも95質量%、少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、または少なくとも99質量%の純度を有することができる。組成物は、アルミニウム塩、またはMF59などのアジュバントをさらに含むことができる。
【0029】
CMVに対する免疫応答の誘導での使用のための組成物もまた、本明細書中に提供される。CMVに対する免疫応答を誘導するための本明細書中に記載される組成物の使用、およびCMVに対する免疫応答を誘導するための医薬の製造での本明細書中に記載される組成物の使用もまた提供される。
【0030】
2. CMV五量体複合体およびコード配列
A. CMV五量体複合体
一態様では、本発明は、CMV五量体複合体を発現する哺乳動物宿主細胞を提供し、このとき、該五量体複合体は、(i) gHまたはその複合体形成性断片、(ii) gLまたはその複合体形成性断片、(iii) pUL128またはその複合体形成性断片、(iv) pUL130またはその複合体形成性断片、および(v) pUL131またはその複合体形成性断片を含む。CMV五量体複合体をコードするポリヌクレオチド配列は宿主細胞のゲノムDNAへとインテグレートされ、好適な条件で培養した場合、該CMV五量体複合体が該宿主細胞により発現される。
【0031】
一部の実施形態では、該五量体複合体は可溶性である。可溶性五量体複合体は、例えば、下記で詳細に説明される通り、gHサブユニットの膜貫通ドメインが欠失しているgHの断片を用いることにより、取得することができる。
【0032】
一部の実施形態では、該五量体複合体は、宿主細胞から分泌される。5種類すべてのサブユニットgH、gL、pUL128、pUL131、およびpUL131の存在が、ゴルジ装置へと運び出される前の、ERでの五量体複合体のアセンブルに十分であることが報告されている。Ryckman et al., J Virol. Jan 2008; 82(1): 60-70を参照されたい。あるいは、または加えて、適切なシグナルペプチドを、5種類のサブユニットのうちの1種以上で用いることができる(例えば、分泌シグナルを有する融合タンパク質を作製することにより)。分泌タンパク質を作製するためのシグナル配列(および発現カセット)は、当技術分野で公知である。一般的に、リーダーペプチドは、5〜30アミノ酸長であり、かつ典型的には新規合成されるタンパク質のN末端に存在する。シグナルペプチドのコアは、一般的に、一本鎖αヘリックス(single alpha-helix)を形成する傾向を有する疎水性アミノ酸の長い伸長部を含む。加えて、多くのシグナルペプチドは、正に荷電したアミノ酸の短いストレッチから始まり、これが、トランスロケーション中のポリペプチドの正しいトポロジーを強化することを補助する場合がある。シグナルペプチドの終端には、典型的には、シグナルペプチダーゼにより認識および切断されるアミノ酸のストレッチがある。シグナルペプチダーゼは、トランスロケーション中またはトランスロケーションの完了後に切断することができ、それにより遊離のシグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生じさせる。
【0033】
UL75遺伝子によりコードされるヒトCMV糖タンパク質H(gH)は、感染性に必須であり、かつアルファ、ベータおよびガンマヘルペスウイルスのメンバーの中で保存されているビリオン糖タンパク質である。gHはgLと共に安定な複合体を形成することができ、この複合体の形成は、gHの細胞表面発現を促進する。HSV-2およびEBVのgH/gL複合体の結晶構造に基づけば、gLサブユニットおよびgHのN末端残基が構造の一端で球状ドメインを形成し(「ヘッド」)、このドメインはgBとの相互作用および膜融合の活性化に関与する。ウイルス膜に近接するgHのC末端ドメイン(「テイル」)もまた膜融合に関与する。gHは宿主因子であるTLR2により認識される決定基を提示し、宿主因子であるTLR2とTLR1との間で形成されるヘテロ二量体と直接的に相互作用する。TLR2はNF-κB活性化および細胞からの炎症性サイトカイン応答を媒介する。
【0034】
CMV株であるMerlin株由来のgHは、配列番号1として示される(GI:52139248、742アミノ酸残基)。CMV株であるTowne株由来のgHは、配列番号2として示される(GI:138314、これもまた742アミノ酸残基)。Towne株由来のgHは、以下の部分を有することが特徴とされている:(i) 6個のN-グリコシル化部位(残基55、62、67、192、641および700);(ii)そのN末端の疎水性シグナル配列(アミノ酸残基1〜23);(iii)細胞外腔へと細胞から突き出しているエクトドメイン(残基24〜717);(iv)疎水性膜貫通(TM)ドメイン(残基718〜736);および(v) C末端細胞質ドメイン(残基737〜742)。配列番号2は、配列番号1、およびCMV株であるAD169株由来のgH(GI:138313、配列番号3)との間でそれぞれ99%および96%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0035】
典型的には、全長gHタンパク質のN末端シグナル配列は、宿主細胞のシグナルペプチダーゼにより切断されて、成熟gHタンパク質を生じる。そのようにして、本明細書中に記載される宿主細胞により発現されるgHタンパク質は、N末端シグナル配列を欠損している場合がある(例えば、gHがN末端シグナル配列のコード配列を欠損したヌクレオチド配列によりコードされる)。
【0036】
膜貫通(TM)ドメイン(例えば、配列番号2の残基718〜736)、C末端ドメイン(例えば、配列番号2の残基737〜742)、N末端シグナル配列(例えば、配列番号2の残基1〜23)、またはそれらの組み合わせを欠損するgH断片などの、gHの複合体形成性断片もまた、本発明に包含される。gHの複合体形成性断片は、別のCMVタンパク質との複合体を形成する能力を保持するgHタンパク質のいずれかの部分または一部分であり得る。一部の実施形態では、gHの複合体形成性断片は、五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成する。例えば、全長gH配列の発現は、gHのTMドメインが疎水性であるので、可溶性五量体複合体の精製の妨げになり得る。その代わりに、五量体複合体は、少なくともgHのTMドメインの一部分が欠失しているgH断片を含むことができる。
【0037】
例えば、N末端シグナル配列およびgHのエクトドメインは含むがTMドメインは含まないgH断片を用いることができる。好適なgH断片はまた、gHのエクトドメインの一部分(例えば、gHのエクトドメイン配列のうちの少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%)を含むが、TMドメインをまったく含まないか、または小さな部分のみを含むこともできる。あるいは、本明細書中に記載されるgH断片は、全長エクトドメインのN末端および/またはC末端にて1〜20アミノ酸残基を欠損している(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20アミノ酸残基、または1〜20残基、1〜15残基、1〜10残基、2〜20残基、2〜15残基、2〜10残基、5〜20残基、5〜15残基、もしくは5〜10残基を欠損する)。C末端ドメインの残基は、免疫原性には必要でないと考えられている。本明細書中に記載される好適なgH断片の一例が配列番号4として示され、これは配列番号1のアミノ酸残基1〜715に対応する。本明細書中に記載されるgH断片の別の例が配列番号5に示され、これはgHのN末端シグナル配列、TMドメインおよびC末端ドメインを欠損し、配列番号1のアミノ酸残基24〜715に対応する。記載されるgH断片の別の例は、N末端シグナル配列およびエクトドメイン(etcodomain)全体を含むが、C末端ドメインを欠損している。
【0038】
gHのエクトドメインは、gHの細胞外ドメインに対応する。gH(またはそのホモログもしくは変異体)のエクトドメインの位置および長さは、例えば、gHのアミノ酸配列を配列番号1とアライメントするステップ、および配列番号1の残基24〜717にアラインする配列を特定するステップによる、その配列と配列番号1、2、3、4または5とのペアワイズアライメントに基づいて予測することができる。同様に、シグナル配列、TMドメイン、およびC末端ドメインの位置は、gHのアミノ酸配列を配列番号1、2、3、4または5とアライメントするステップ、および対応する領域(例えば、それぞれ、配列番号1の残基1〜23(シグナル配列)、718〜736(TM)および737〜742(C末端ドメイン))とアラインする配列を特定するステップにより予測することができる。あるいは、エクトドメイン、シグナル配列、TMドメイン、およびC末端ドメインの位置および長さは、所定のgH配列の長さに沿った疎水性のコンピュータ分析に基づいて予測することができる。シグナル配列およびTMドメインは最高レベルの疎水性を有し、かつこれら2種類の領域は、それよりも疎水性が低いエクトドメインに隣接する。
【0039】
好適なgHの複合体形成性断片はまた、共免疫沈降アッセイ、架橋、または蛍光染色による共局在などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって取得または決定することもできる。SDS-PAGEまたはウエスタンブロッティングもまた用いることができる(例えば、5種類すべてのサブユニットがゲル電気泳動中に存在することを示すことにより)。一部の実施形態では、gHの複合体形成性断片は、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0040】
他の好適なgHタンパク質は、配列番号1、2、3、4、または5に対する様々な程度の同一性を有するgH変異体、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に示される配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なgH変異体であり得る。一部の実施形態では、gH変異体タンパク質は:(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0041】
ヒトCMV糖タンパク質L(gL)は、UL115遺伝子によりコードされる。gLはウイルス複製に必須であると考えられ、かつgLのすべての公知の機能的特性はgHとのその二量体化に直接的に関連する。gL/gH複合体は、宿主細胞へのウイルス侵入をもたらすウイルス膜と形質膜との融合に必要とされる。CMV株であるMerlin株由来のgL(GI:39842115、配列番号6)およびCMV株であるTowne株由来のgL(GI:239909463、配列番号7)は、278アミノ酸長であると報告されている。HCMV株であるAD169株由来のgL(GI:2506510、配列番号8)は、278アミノ酸長であり、そのN末端のシグナル配列(アミノ酸残基1〜35)、2箇所のN-グリコシル化部位(残基74および114)を含み、TMドメインを欠損していることが報告されている。配列番号6のN末端シグナル配列は、アミノ酸残基1〜30を含むと予測される。配列番号7は、配列番号6と98%のアミノ酸配列同一性を共有する。22〜39種類の臨床単離株、ならびに実験室株AD169株、Towne株およびToledo株由来の全長gL遺伝子の配列決定により、単離株同士でのアミノ酸配列中の2%未満の変異が明らかになった。
【0042】
典型的には、全長gLタンパク質のN末端シグナル配列は、宿主細胞のシグナルペプチダーゼにより切断されて、成熟gLタンパク質を生じる。そのようにして、本明細書中に記載される宿主細胞により発現されるgLタンパク質は、N末端シグナル配列を欠損している場合がある(例えば、gLがN末端シグナル配列のコード配列を欠損したヌクレオチド配列によりコードされる)。シグナル配列を欠損したgLの一例は配列番号9であり、これは、配列番号6のアミノ酸残基31〜278を含み、かつ配列番号6のN末端シグナル配列を欠損している。他のgLタンパク質のシグナル配列は、上記の通りの配列アライメントまたは配列分析ツールにより決定することができる。
【0043】
gLの複合体形成性断片もまた、本発明に包含される。gLの複合体形成性断片は、別のCMVタンパク質との複合体を形成する能力を保持するgLタンパク質のいずれかの部分または一部分であり得る。一部の実施形態では、gLの複合体形成性断片は、五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成する。
【0044】
好適なgLの複合体形成性断片は、共免疫沈降アッセイ、架橋、または蛍光染色による共局在などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって取得または決定することができる。SDS-PAGEまたはウエスタンブロッティングもまた用いることができる(例えば、5種類すべてのサブユニットがゲル電気泳動中に存在することを示すことにより)。一部の実施形態では、gLの複合体形成性断片は、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8、もしくは配列番号9に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0045】
他の好適なgLタンパク質は、配列番号6、7、8、または9に対する様々な程度の同一性を有するgL変異体(および変異体の断片)、例えば、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9に示される配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なgL変異体であり得る。一部の実施形態では、gL変異体タンパク質は:(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8、もしくは配列番号9に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0046】
ヒトCMV株であるMerlin株由来のpUL128(GI:39842124、配列番号10)は、130個のアミノ酸残基を有し、かつ未成熟停止(premature termination)を引き起こす1ヌクレオチド置換を含むことが報告されている。ヒトCMV株であるTowne株由来のpUL128(GI:39841882、配列番号11)およびAD169株由来のpUL128(GI:59803078,、配列番号12)は、171アミノ酸残基を有することが報告されている。配列番号10および12は、配列番号10の全長にわたって99%超の配列同一性を共有するが;しかしながら、翻訳の未成熟停止により、配列番号10は、配列番号12のC末端41アミノ酸残基を有しない(配列番号12の全長にわたって約75%の配列同一性)。
【0047】
pUL128は、配列番号10の残基1〜27に位置するN末端シグナル配列を有すると予測されているが、TMドメインは欠損していると予測されている。全長pUL128タンパク質のN末端シグナル配列は、宿主細胞のシグナルペプチダーゼにより切断されて、成熟pUL128タンパク質を生じることができる。そのようにして、本明細書中に記載される宿主細胞により発現されるpUL128タンパク質は、N末端シグナル配列を欠損している場合がある(例えば、pUL128がN末端シグナル配列のコード配列を欠損したヌクレオチド配列によりコードされる)。成熟pUL128タンパク質の一例は配列番号13であり、これはN末端シグナル配列を欠損しており、配列番号11のアミノ酸残基28〜171に対応する。配列番号13はまた、配列番号12のアミノ酸残基28〜171とも適合する。
【0048】
pUL128の複合体形成性断片もまた、本発明に包含される。pUL128の複合体形成性断片は、別のCMVタンパク質との複合体を形成する能力を保持するpUL128タンパク質のいずれかの部分または一部分であり得る。一部の実施形態では、pUL128の複合体形成性断片は、五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成する。
【0049】
好適なpUL128の複合体形成性断片は、共免疫沈降アッセイ、架橋、または蛍光染色による共局在などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって取得または決定することができる。SDS-PAGEまたはウエスタンブロッティングもまた用いることができる(例えば、5種類すべてのサブユニットがゲル電気泳動中に存在することを示すことにより)。一部の実施形態では、pUL128の複合体形成性断片は、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号10、配列番号11、配列番号12、もしくは配列番号13に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0050】
他の好適なpUL128タンパク質は、配列番号10、11、12、または13に対する様々な程度の同一性を有するpUL128変異体(および変異体の断片)、例えば、配列番号10、配列番号11、配列番号12、または配列番号13に示される配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なpUL128変異体であり得る。一部の実施形態では、pUL128変異体タンパク質は:(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号10、配列番号11、配列番号12、もしくは配列番号13に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0051】
UL130は、UL131A-128遺伝子座の中央の最大(214コドン)の遺伝子である。遺伝子の概念上の翻訳は、親水性タンパク質の前に位置する長い(25アミノ酸)N末端シグナル配列を予測し、2箇所の考えられるN結合グリコシル化部位(Asn85およびAsn118)を推定上のケモカインドメイン(アミノ酸46〜120)内に有し、追加のN-グリコシル化部位(Asn201)を固有のC末端領域の末端近くに有する。pUL130はTMドメインを欠損していると予測される。これは、感染細胞からは非効率的に分泌されるが、ゴルジ成熟型としてビリオンエンベロープに取り込まれる内腔糖タンパク質であると報告されている。ヒトCMV株であるMerlin株およびTowne株由来のpUL130の配列が、公衆に利用可能である(それぞれ、GI:39842125、配列番号14、214アミノ酸残基;およびGI:239909473、配列番号15、229アミノ酸残基)。配列番号15は、pUL130のC末端領域中にフレームシフト突然変異を含むことが報告されており、これは、配列番号14の全長にわたって、HCMV配列番号14に対して94%の同一性を共有する。
【0052】
全長pUL130タンパク質のN末端シグナル配列は、宿主細胞のシグナルペプチダーゼにより切断されて、成熟pUL130タンパク質を生じることができる。そのようにして、本明細書中に記載される宿主細胞により発現されるpUL130タンパク質は、N末端シグナル配列を欠損している場合がある(例えば、pUL130がN末端シグナル配列のコード配列を欠損したヌクレオチド配列によりコードされる)。成熟pUL130タンパク質の一例は配列番号16であり、これは、N末端シグナル配列を欠損しており、配列番号14のアミノ酸残基26〜214に対応する。
【0053】
pUL130の複合体形成性断片もまた、本発明に包含される。pUL130の複合体形成性断片は、別のCMVタンパク質との複合体を形成する能力を保持するpUL130タンパク質のいずれかの部分または一部分であり得る。一部の実施形態では、pUL130の複合体形成性断片は、五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成する。
【0054】
好適なpUL30の複合体形成性断片は、共免疫沈降アッセイ、架橋、または蛍光染色による共局在などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって取得または決定することができる。SDS-PAGEまたはウエスタンブロッティングもまた用いることができる(例えば、5種類すべてのサブユニットがゲル電気泳動中に存在することを示すことにより)。一部の実施形態では、pUL130の複合体形成性断片は、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号14、配列番号15、もしくは配列番号16に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0055】
他の好適なpUL130タンパク質は、配列番号14、15、または16に対する様々な程度の同一性を有するpUL130変異体(および変異体の断片)、例えば、配列番号14、配列番号15、または配列番号16に示される配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なpUL130変異体であり得る。一部の実施形態では、pUL130変異体タンパク質は:(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号14、配列番号15、もしくは配列番号16に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0056】
pUL131A機能は、内皮細胞のみならず、上皮細胞でも、ヒトCMV複製に必要とされる。ヒトCMV株であるMerlin株由来のpUL131A(GI:39842126、配列番号17、129アミノ酸)およびTowne株由来のpUL131A(GI:239909474、配列番号18、129アミノ酸)およびAD169株由来のpUL131A(GI:219879712、配列番号19、76アミノ酸)が報告されている。pUL131Aは配列番号18の残基1〜18に位置するN末端シグナル配列を含み、かつTMドメインを欠損していることが予測されている。AD169株由来のpUL131Aは1塩基対挿入を含むと報告されており、これはフレームシフトを生じさせる。配列番号17はN末端28アミノ酸にわたって配列番号19に対して96%同一であるが、AD169株UL131A遺伝子中のフレームシフトによって、配列番号17の全長にわたっては配列番号19に対して36%しか同一でない。
【0057】
全長pUL131タンパク質のN末端シグナル配列は、宿主細胞のシグナルペプチダーゼにより切断されて、成熟pUL131タンパク質を生じることができる。そのようにして、本明細書中に記載される宿主細胞により発現されるpUL131タンパク質は、N末端シグナル配列を欠損している場合がある(例えば、pUL131がN末端シグナル配列のコード配列を欠損したヌクレオチド配列によりコードされる)。成熟pUL130タンパク質の一例は配列番号20であり、これはN末端シグナル配列を欠損しており、配列番号17のアミノ酸残基19〜129に対応する。配列番号35もまた、配列番号18のアミノ酸残基19〜129に対応する。
【0058】
pUL131の複合体形成性断片もまた、本発明に包含される。pUL131の複合体形成性断片は、別のCMVタンパク質との複合体を形成する能力を保持するpUL131タンパク質のいずれかの部分または一部分であり得る。一部の実施形態では、pUL131の複合体形成性断片は、五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成する。
【0059】
好適なpUL31の複合体形成性断片は、共免疫沈降アッセイ、架橋、または蛍光染色による共局在などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって取得または決定することができる。SDS-PAGEまたはウエスタンブロッティングもまた用いることができる(例えば、5種類すべてのサブユニットがゲル電気泳動中に存在することを示すことにより)。一部の実施形態では、pUL131の複合体形成性断片は、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号17、配列番号18、配列番号19、もしくは配列番号20に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0060】
他の好適なpUL131タンパク質は、配列番号17、18、19、または20に対する様々な程度の同一性を有するpUL131変異体(および変異体の断片)、例えば、配列番号17、配列番号18、配列番号19、または配列番号20に示される配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なpUL131変異体であり得る。一部の実施形態では、pUL131変異体タンパク質は:(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;(ii)配列番号17、配列番号18、配列番号19、もしくは配列番号20に由来する少なくとも1箇所のエピトープを含み;かつ/または(iii) CMVビリオンと免疫学的に交差反応する抗体をin vivoで生起することができる。
【0061】
一部の実施形態では、本明細書中に記載されるgH、gL、pUL128、pUL130、pUL131(またはその断片)は、N末端伸長部またはC末端伸長部などの追加のアミノ酸残基を含むことができる。そのような伸長部は、タンパク質の検出(例えば、モノクローナル抗体による検出のためのエピトープタグ)および/または精製(例えば、ニッケルキレート樹脂上での精製を可能にするためのポリヒスチジンタグ)を容易にすることができる1種以上のタグを含むことができる。アフィニティー精製タグの例としては、例えば、Hisタグ(ヘキサヒスチジン(配列番号36)、金属イオンに結合する)、マルトース結合性タンパク質(MBP)(アミロースに結合する)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)(グルタチオンに結合する)、FLAGタグ(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(配列番号37)、抗flag抗体に結合する)、Strepタグ(Ala-Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly(配列番号38)、またはTrp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(配列番号39)、ストレプトアビジンまたはその誘導体に結合する)が挙げられる。
【0062】
一部の実施形態では、切断可能リンカーを用いることができる。これにより、例えば、リンカーを切断することが可能な薬剤の添加により、精製された複合体からタグを分離することができるようになる。多数の様々な切断可能リンカーが、当業者に公知である。そのようなリンカーは、例えば、光解離性結合への照射または酸触媒加水分解により切断することができる。プロテアーゼ認識部位を組み込んであり、かつ好適なプロテアーゼ酵素の添加により切断できるポリペプチドリンカーもある。
【0063】
他の実施形態では、例えば、臨床上の安全性および有効性の理由のためには、外来性のタグ配列を含まないgH、gL、pUL128、pUL130、pUL131(またはその断片)タンパク質を得ることが、より望ましい場合がある。
【0064】
gH、gL、pUL130タンパク質はときには糖タンパク質と称されるが、この名称は、これらのタンパク質が本発明と共に用いられる場合にグリコシル化されていなければならないことを意味するものと解釈するべきではない。具体的なウイルス株を上記で参照してきたが、異なるCMV株由来のCMVタンパク質gH、gL、pUL128、pUL130、pUL131(またはその断片)を用いることができることが理解されるべきである。非限定的な例として、他のCMV株には、Towne株、Toledo株、AD169株、Merlin株、TB20株、およびVR1814株が含まれる。
【0065】
B. CMVタンパク質および複合体をコードする核酸
ゲノムインテグレーション、およびその後のCMV五量体の発現のための、CMVタンパク質および複合体をコードする核酸もまた、本明細書中に提供される。
【0066】
本明細書中に記載されるCMVタンパク質および複合体をコードする1種以上の核酸構築物を、ゲノムインテグレーションのために用いることができる。例えば、5種類すべてのサブユニットgH、gL、pUL128、pUL130、pUL131(またはその断片)をコードする単一の核酸構築物を、宿主細胞に導入することができる。あるいは、5種類のサブユニット(またはその断片)のコード配列を、2つ以上の核酸構築物に担持させることができ、続いてそれを同時にまたは順次、宿主細胞へと導入する。
【0067】
例えば、1つの例示的実施形態では、本発明は、gH、gL、pUL128、pUL130、およびpUL131のエクトドメインをコードする単一の核酸構築物を提供する。別の例示的実施形態では、本発明は、gH、gL、pUL128、pUL130、およびpUL131のエクトドメインをコードする2つの核酸構築物を提供する。
図1を参照されたい。両方の例で、ゲノムインテグレーションが成功裏に達成された。
【0068】
核酸構築物は、1個以上のイントロンを含むゲノムDNA、またはcDNAを含むことができる。一部の遺伝子は、イントロンが存在する場合に、より効率的に発現される。pUL128をコードする生来型ゲノム配列は2個のイントロンを含み、pUL131をコードする生来型ゲノム配列は1個のエキソンを含み、その一方で、pUL130をコードする生来型ゲノム配列はいかなるイントロンも含まない。pUL128をコードする生来型ゲノム配列は3個のエキソンを含み、pUL131をコードする生来型ゲノム配列は2個のエキソンを含み、pUL130をコードする生来型ゲノム配列は1個のエキソンを含む。特に、核酸配列は、前記哺乳動物細胞での外来性ポリペプチドの発現に好適である。
【0069】
gH、gL、pUL128、pUL130、および/またはpUL131(またはその断片)のコード配列を含むベクターもまた、本明細書中に提供される。例示的なベクターとしては、自律的に複製することができるか、または哺乳動物細胞中で複製されることができるプラスミドが挙げられる。典型的な発現ベクターは、発現構築物中のコード配列の発現調節に有用な、好適なプロモーター、エンハンサー、およびターミネーターを含む。ベクターはまた、形質転換された宿主細胞の選択のための表現形質をもたらす(アンピシリンまたはネオマイシンなどの抗生物質に対する抵抗性を賦与するなど)選択マーカーも含むことができる。
【0070】
好適なプロモーターとしては、例えば、CMVプロモーター、アデノウイルス、EF1α、GAPDHメタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーターなどが挙げられる。プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。1種以上のベクターを用いることができる(例えば、5種類すべてのサブユニットまたはその断片をコードする、1つのベクター;または5種類のサブユニットまたはその断片を併せてコードする2つ以上のベクター);例えば、
図1を参照されたい。
【0071】
宿主細胞がCHO細胞である場合、プロモーター、エンハンサー、またはターミネーターはCHO細胞中で活性である。1つの頻繁に用いられるプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期(IE)遺伝子に対するプロモーターである。この遺伝子のプロモーターは、広範囲の細胞タイプでの高レベルの導入遺伝子発現を導く。このプロモーターの活性は、17bp、18bp、19bp、および21bpの一連の不完全反復に依存し、この反復の一部は、NF-κB cAMP応答性エレメント結合性タンパク質(cAMP responsive binding protein;CREB)および核因子-1ファミリーの転写因子に結合する。
【0072】
強力なプロモーターは、CHO細胞でのhCMVコアプロモーター/エンハンサー断片(米国特許第5,168,062号に記載されている)のものと同等またはそれより高い頻度でmRNAの開始を生じさせるものである。そのようなプロモーターは、米国特許第5,589,392号に記載されている通りの細胞タイプ依存的強力プロモーター、または偏在的に活性な強力プロモーターであり得る。例示的な構成的に活性なウイルスプロモーターとしては、例えば、SV40ウイルスの初期および後期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)もしくはマウスサイトメガロウイルス(mCMV)の前初期プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター(TK)、またはラウス肉腫ウイルスの長い末端反復プロモーター(RS-LTR)が挙げられる。他の例としては、例えば、米国特許第5,385,839号および/または欧州特許出願公開第323 997-A1号に記載される2.1kb PstI断片により定義されるhCMV-MIEプロモーターまたはプロモーター活性を有するその機能的部分が挙げられる。
【0073】
内部リボソーム侵入部位(IRES)および2Aペプチド配列もまた用いることができる。IRESおよび2Aペプチドは、複数の配列の共発現に関して代替的なアプローチを提供する。IRESは、タンパク質合成のさらに大きなプロセスのうちの一部分として、メッセンジャーRNA(mRNA)配列の途中での翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列である。通常は、真核生物では、翻訳はmRNA分子の5’末端のみで開始することができる。IRESエレメントは、1つの転写産物での複数の遺伝子の発現を可能にする。1つの転写産物から複数のタンパク質を発現する、IRESに基づくポリシストロン性ベクターは、選択から非発現クローンが漏れることを減少させることができる。
【0074】
2Aペプチドは、1個のオープンリーディングフレーム中の複数のタンパク質をポリタンパク質へと翻訳することを可能にし、このポリタンパク質は続いて、リボソームをスキップする機構を介して個別のタンパク質へと切断される。2Aペプチドは、複数のタンパク質生成物のよりバランスの取れた発現を提供することができる。
【0075】
例示的なIRES配列としては、例えば、EV71 IRES、EMCV IRES、HCV IRESが挙げられる。
【0076】
ゲノムインテグレーションに関して、インテグレーションは、部位特異的であるかまたはランダムであり得る。部位特異的組み換えは、本明細書中に記載される核酸構築物へと相同性配列を導入することにより実現できる。そのような相同性配列は、宿主ゲノム中の特異的な標的部位での内在性配列と実質的にマッチする。あるいは、ランダムなインテグレーションを用いることができる。ときには、タンパク質の発現レベルはインテグレーション部位によって変化する場合がある。したがって、所望の発現レベルを達成するクローンを特定するために、組み換えタンパク質の発現レベルに従って、多数のクローンを選択することが望ましい場合がある。
【0077】
3. 宿主細胞
別の態様では、本発明は、五量体コード配列が宿主細胞のゲノムに安定的にインテグレートされており、かつ、好適な条件下で培養した場合に、本明細書中に開示される通りのCMV五量体を発現する宿主細胞を提供する。一部の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞はげっ歯類細胞である。
【0078】
げっ歯類細胞株の例としては、例えば、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞(例えば、BHK21、BH TK)、マウスセルトリ(TM4)細胞、バッファローラット肝臓(BRL 3A)細胞、マウス乳癌(MMT)細胞、ラット肝臓癌(HTC)細胞、マウス骨髄腫(NS0)細胞、ネズミハイブリドーマ(Sp2/0)細胞、マウス胸腺腫(EL4)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびCHO細胞誘導体、ネズミ胎児(NIH/3T3、3T3 Li)細胞、ラット心筋(H9c2)細胞、マウス筋芽細胞(C2C12)、およびマウス腎臓(miMCD-3)細胞が挙げられる。
【0079】
一実施形態では、げっ歯類細胞はCHO細胞である。好適なCHO細胞としては、例えば、DUXB11細胞株およびDG44細胞株が挙げられる。これらの2種類の細胞株は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)活性を欠損しており、したがって、増殖に関してヌクレオチド前駆体の外因性供給源に依存する。DHFR欠損は、外来性DNAのゲノムインテグレーションおよび安定的な発現に関して選択するために好適な、容易に操作できる表現型である。ゲノムインテグレーションは、対象となる遺伝子およびDHFR遺伝子の発現カセットを細胞にトランスフェクションすることにより達成される。トランスフェクション後、細胞は、ヌクレオチド前駆体を含まない選択培地中に置かれる。
【0080】
DHFR欠損細胞株での組み換えタンパク質発現は、培養物へのメトトレキサート(MTX)の添加によりさらに強化することができ、それにより、高コピー数の導入発現ベクターを選択できる。MTXはDHFR酵素の競合的阻害剤である。ヌクレオチド前駆体の非存在に加えてこの追加の選択圧を加えることにより、DHFR選択マーカーおよび、大多数の場合には対象となる遺伝子を含むインテグレートされた発現ベクターの自発的増幅を行なっている細胞の少数集団の選択および単離が可能になる。複数コピーの遺伝子の存在は、外来性タンパク質の高レベルの発現を達成する助けになる。あるいは、本明細書中に開示される実施例に例示される通り、MTX選択は、DHFR欠損とは独立して行なうことができる(すなわち、元々のDHFR有効な宿主細胞を選択するためにMTXを用いる)。
【0081】
別の好適なCHO細胞株は、野生型CHO-K1細胞株、およびその誘導体であるCHO-K1SVである。
【0082】
CHO-K1細胞株のための1つの一般的に用いられる選択方法は、グルタミン合成酵素(GS)選択である。グルタミンの外因性供給源の非存在下では、細胞生存はグルタミンを生成するためのGS酵素に依存する。ネズミ骨髄腫由来NS/0細胞およびCHO細胞などの比較的低い内在性GS酵素活性を有する宿主細胞株を用いると、この方法は、発現ベクター中のGS選択マーカーおよびグルタミン不含選択培地を用いる場合に簡潔な選択スキームを可能にする。DHFR/MTX系と同様に、GSの競合的阻害剤であるメチオニンスルホキシミン(MSX)を培地に添加して、追加の圧を加え、かつインテグレートされたベクターからの高レベルの発現を駆動するCHO細胞に対する選択を行なうことができる。
【0083】
CHO-K1細胞、またはいずれかの他の一般的に用いられるCHO細胞はまた、上記の通りにDHFR欠損に基づいて選択することもできる。例えば、CHO-K1細胞、またはCHO細胞のいずれかの他のタイプは、欠失などのDHFR欠損を有することができ、このとき、少なくとも1コピーのジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子のゲノム配列、または該DHFR遺伝子のコード配列のうちの少なくとも30%(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%)が欠失している。DHFR欠損を導入するための他の方法は、内在性DHFR遺伝子中に突然変異をつくり出すことを含む。細胞株は、上記の通り、培養物へとメトトレキサート(MTX)を添加することによりさらに強化できる。
【0084】
CHO-K1細胞、またはいずれかの他の一般的に用いられるCHO細胞はまた、DHFR欠損を用いるかまたは用いずに、MTXに基づいて選択することもできる。本明細書中に提供される例では、CHO細胞は、DHFR欠損を用いずに、MTXに基づいて選択された(すなわち、ゲノムインテグレーションに用いた元来のCHO細胞はDHFR有効である)。そのようなシステムでは、典型的には、外来性配列(例えば、CMVタンパク質をコードする配列)のコピー数は、概して低い。本明細書中に記載される実施例中の細胞株は、非常に限定された数のインテグレーション部位(例えば、1〜2箇所のインテグレーション部位)に、CMVタンパク質をコードする外来性配列を約1〜10コピー有すると推定される。一般的には、DFHR欠損細胞株を用いる場合、外来性配列のコピー数は典型的にははるかに大きく、ときには数百コピーほども多い。両方の方法が本明細書中に開示されるCHO細胞株を作製するために好適であると予測されるが、コピー数が大きい場合には、宿主細胞は、細胞株の継代および/または増殖中に1コピー以上の外来性配列を欠損する場合がある。
【0085】
本明細書中に記載される本発明に対して好適な他のCHO細胞系統としては、例えば、CHO-ICAM-1細胞、およびCHO-hIFNγ細胞が挙げられる。これらの遺伝的に改変された細胞は、細胞の特異的遺伝子または発現領域への組み換えDNAの安定的挿入、挿入DNAの増幅、および組み換えタンパク質の高レベル発現を示す細胞の選択を可能にする。
【0086】
European Collection of Cell Cultures(ECACC)から入手可能な例示的CHO細胞株を表1に列記する。表1に列記されたいずれのCHO細胞も用いることができる。
【表1】
【0087】
様々なCHO細胞株がAmerican Type Culture Collection(ATCC)からも入手可能であり、CHO細胞株hCBE11(ATCC(登録商標) PTA-3357
TM)、E77.4(ATCC(登録商標) PTA-3765
TM)、hLT-B: R-hG1 CHO #14(ATCC(登録商標) CRL-11965
TM)、MOR-CHO-MORAb-003-RCB(ATCC(登録商標) PTA-7552
TM)、AQ.C2クローン11B(ATCC(登録商標) PTA-3274
TM)、AQ.C2クローン11B(ATCC(登録商標) PTA-3274
TM)、CHO-DG44中のhsAQC2(ATCC(登録商標) PTA-3356
TM)、xrs5(ATCC(登録商標) CRL-2348
TM)、CHO-K1(ATCC(登録商標) CCL-61
TM)、Lec1[元々はPro-5WgaRI3Cという名称](ATCC(登録商標) CRL-1735
TM)、Pro-5(ATCC(登録商標) CRL-1781
TM)、ACY1-E(ATCC(登録商標) 65421
TM)、ACY1-E(ATCC(登録商標) 65420
TM)、pgsE-606(ATCC(登録商標) CRL-2246
TM)、CHO-CD36(ATCC(登録商標) CRL-2092
TM)、pgsC-605(ATCC(登録商標) CRL-2245
TM)、MC2/3(ATCC(登録商標) CRL-2143
TM)、CHO-ICAM-1(ATCC(登録商標) CRL-2093
TM)、およびpgsB-618(ATCC(登録商標) CRL-2241
TM)などがある。これらのCHO細胞株のうちのいずれの1つでも用いることができる。
【0088】
他の市販のCHO細胞株としては、例えば、Life Technologies社からのFreeStyle
TM CHO-S細胞およびFlp-In
TM-CHO細胞株が挙げられる。
【0089】
一般的なCHO細胞での組み換えタンパク質の発現方法が開示されている。例えば、米国特許第4,816,567号および同第5,981,214号を参照されたい。
【0090】
CHO細胞に加えて、他の哺乳動物細胞もまた宿主として用いることができる。例示的なげっ歯類細胞としては、BHK21細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、EL4細胞、NIH/3T3細胞、3T3-L1細胞、ES-D3細胞、H9c2細胞、C2C12細胞、YB2/0、mimcd 3細胞等が挙げられる。例示的なヒト細胞としては、SH-SY5Y細胞、IM 32細胞、LAN細胞、MCFIOA細胞、293T細胞、SK-BR3細胞、huvec細胞、huasmc細胞、HKB-1細胞、hmsc細胞、U293細胞、HE 293細胞、PERC6(登録商標)細胞、Jurkai細胞、HT-29細胞、lncap.FGC細胞、A549細胞、MDA MB453細胞、hepg2細胞、THP-1細胞、bxpc-3細胞、Capan-1細胞、DU145細胞、およびPC-3細胞が挙げられる。
【0091】
例えば、細胞株PERC6(登録商標)、マウス骨髄腫NS0細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、およびヒト胚性腎細胞株(HEK293)は、組み換えタンパク質製造に対する規制当局の承認を得た。
【0092】
本明細書中に提供される方法で有用な非ヒト霊長類細胞株の例としては、サル腎臓(CVI-76)細胞、アフリカミドリザル腎臓(VERO-76)細胞、ミドリザル線維芽細胞(COS-1)、およびSV40により形質転換されたサル腎臓(CVI)細胞(COS-7)の細胞株が挙げられる。追加の哺乳動物細胞株が当業者に公知であり、American Type Culture Collectionカタログ(Manassas、VA)に掲載されている。
【0093】
一部の実施形態では、宿主細胞は懸濁培養中での増殖に好適である。懸濁適合性(suspension-competent)宿主細胞は、一般的に単分散であるか、または実質的な凝集をせずに緩やかな凝集体として増殖する。懸濁適合性宿主細胞としては、適合化または操作をせずに懸濁培養に好適である細胞(例えば、造血細胞、リンパ系細胞)および接着依存性細胞(例えば、上皮細胞、線維芽細胞)を改変または適合化することにより懸濁適合性にされた細胞が挙げられる。
【0094】
一部の実施形態では、宿主細胞は接着培養で増殖および維持される接着依存性細胞である。本明細書中に提供される方法で有用なヒト接着性細胞株の例としては、ヒト神経芽腫(SH-SY5 Y、IMR32、およびLANS)細胞株、ヒト子宮頸癌(HeLa)細胞株、ヒト乳房上皮(MCFIOA)細胞株、ヒト胚性腎(293T)細胞株、およびヒト乳癌(SK-BR3)細胞株が挙げられる。
【0095】
C12orf35遺伝子およびC12orf35タンパク質
一部の実施形態では、宿主細胞は、対照と比較してC12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が減少している細胞である。一部の実施形態では、そのような細胞はCHO細胞である。米国特許仮出願第61/919,313号(2013年12月20日出願、参照により本明細書中に組み入れられる)が、C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が対照と比較して減少している哺乳動物細胞の詳細な説明を提供している。
【0096】
様々な対照を用いることができる。対応する野生型細胞からのC12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性を対照として用いることができる。あるいは、対照は、文献またはデータベース中に特定することができる所定のレベルまたは閾値レベルであり得る。
【0097】
ヒトC12orf35遺伝子とは、12番染色体オープンリーディングフレーム35をコードするヌクレオチド配列を意味する。コードされるC12orf35タンパク質は特性決定されていない。Kiaa1551と命名されたヒトC12orf35遺伝子のモンゴルキヌゲネズミ(Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター))ホモログは、8番染色体に位置すると考えられている。ヒトC12orf35遺伝子のマウス(Mus musculus)ホモログは、6番染色体に位置すると考えられている。CHO C12orf35遺伝子に対するgene IDは、GenBank gene ID No. 100762086として公開されており;ヒトC12orf35遺伝子に対するgene IDは、GenBank gene ID No. 55196として公開されている。チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)でのC12orf35遺伝子、コード配列および予測されるC12orf35タンパク質に関する情報もまた、登録番号NCBI: XM_003512865によりGenBankで利用可能である。
【0098】
C12orf35遺伝子は、例えば、ヒト、マウスおよびハムスターなどの哺乳動物種などの真核細胞中で内因性に発現されている。C12orf35遺伝子によりコードされる予測上のタンパク質は、1500残基を超える大型のタンパク質である。配列表は、ハムスター(配列番号21および22)、ヒト(配列番号23および24)、およびマウス(配列番号35)などの様々な哺乳動物種の内在性C12orf35遺伝子によりコードされるタンパク質の例示的アミノ酸配列または推定上のアミノ酸配列を示す。チャイニーズハムスター由来のC12orf35のCDS(コードDNA配列)が、配列番号25として示される。さらに、チャイニーズハムスター由来のC12orf35 mRNAの5’UTR(配列番号26を参照されたい)および3’UTR(配列番号27を参照されたい)部分が配列決定された。
【0099】
ヒトでは、C12orf35遺伝子は、KIAA1551とも称される。遺伝子C12orf35はまた、ハムスターではC12orf35likeもしくはC12orf35ホモログ、またはマウスでは2810474O19Rikとも称される。異なる名称が、該タンパク質または遺伝子に関して異なる生物種で指定されている場合があり、非限定的な代替名(別名)もまた上記の表2に列記されている。簡潔にするために、本開示中では、異なる生物種に由来するホモログおよびオルソログはすべて「C12orf35遺伝子」または「C12orf35タンパク質」と呼称される。
【0100】
この科学的な背景にかかわらず、対照と比較してC12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が減少している場合に(例えば、C12orf35遺伝子を欠失させることにより、または突然変異を導入することにより)、組み換えタンパク質の収率が顕著に改善することは、驚くべきことでありかつ予想外である。そのようにして、C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が減少している哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、五量体複合体の組み換え生成に特に好適である。
【0101】
C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性の減少は、様々な手段により実現できる。例えば、C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性は、遺伝子ノックアウト、遺伝子突然変異、遺伝子欠失、遺伝子サイレンシングまたは上記のいずれかの組み合わせにより減少させることができる。遺伝子ノックアウトは、それにより遺伝子の機能を破壊することによって遺伝子を作動不能にする遺伝学的技術である。例えば、コード配列に核酸を挿入し、それにより遺伝子機能を破壊することができる。さらに、全長C12orf35遺伝子(またはその断片)を欠失させ、それにより機能的C12orf35タンパク質の発現を実質的に排除するようにすることができる。例えば、欠失は、C12orf35遺伝子のコード配列のうちの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%であり得る。別の選択肢は、C12orf35タンパク質を非機能性にするかまたは機能性を減少させる、コード配列への1箇所以上の突然変異を導入することである。例えば、1箇所以上のフレームシフト突然変異を導入して、C12orf35タンパク質を非機能性にするかまたは機能性を減少させることができる。あるいは、または加えて、1箇所以上の終止コドンをコード配列に導入して、それにより切断型の非機能性または低機能性タンパク質を得ることができる。他の選択肢としては、限定するものではないが、例えば、プロモーター欠失を導入することによる、またはプロモーターと転写開始部位との間に構築物を導入することによる、プロモーター、5’および/もしくは3’ UTRまたは他の調節エレメント中の1箇所以上の突然変異が挙げられる。標的遺伝子の発現を抑制または排除するための遺伝子破壊法もまた、当業者に周知である。
【0102】
各細胞はそのゲノム中に2コピーのC12orf35遺伝子を有するので、一部の実施形態では、C12orf35遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該C12orf35遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している。一部の実施形態では、C12orf35遺伝子のゲノム配列の両方のコピー(または各コピー由来の該C12orf35遺伝子のコード配列の少なくとも50%)が欠失している。
【0103】
一部の実施形態では、欠失配列はCHO細胞の8番染色体のテロメア領域の一部分を含む。テロメア領域は、染色分体のそれぞれの端部にある反復ヌクレオチド配列の領域であり、劣化から、または隣接する染色体との融合から染色体の端部を保護する。一部の実施形態では、CHO細胞の8番染色体のテロメア領域のヌクレオチド配列のうちの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%が欠失している。
【0104】
一部の実施形態では、欠失配列は、Bicd1、Amn1、メチルトランスフェラーゼ様タンパク質20、Dennd5b、FAM60A、Caprin2、Ipo8、RPS4Y2、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の欠失をさらに含む。
【0105】
一部の実施形態では、C12orf35遺伝子(またはその断片)の欠失は、染色体切断によるものである。染色体切断は、例えば、MTX、アフィジコリンまたはハイグロマイシンなどの染色体切断を促す毒性薬剤を用いて真核細胞を処理することにより、誘導することができる。染色体切断を誘導するための他の選択肢としては、限定するものではないが、放射線照射(radiation)、光照射(irradiation)、変異誘発物質(mutagen)、発癌性物質およびブレオマイシンが挙げられる。染色体切断は、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)の最中に自発的に生じる場合もある。染色体切断を誘導するための方法は当業者にも公知であり、したがって、ここで詳細に説明する必要はない。染色体切断を誘導した後、所望の切断点(C12orf35遺伝子、またはその断片の欠失を生じる)を有する真核細胞を、例えば、DNAを分析することにより、または本開示の第5の態様に従う方法を用いることにより、特定することができる。例えば、C12orf35遺伝子または遺伝子C12orf35のセントロメア側に位置する遺伝子が発現されているか、発現が減少しているか、または遺伝子が発現されていないかを決定するために、処理された細胞の発現プロファイルを分析することができる。例えば、マウスまたはハムスター細胞の場合、C12orf35遺伝子が発現されているか否かを分析することができ、あるいは、またはそれに加えて、メチルトランスフェラーゼ様タンパク質20、Dennd5b、FAM60A、Caprin2、Ipo8、Tmtc1もしくは上記の遺伝子のテロメア側に位置する遺伝子(これに関してテロメア側とは、テロメア端部の方向へ向かうことを意味する)からなる群より選択される1種以上の遺伝子が細胞により発現されているか、かつ/または発現が減少もしくは実質的に除去されているか否かを分析することができる。
【0106】
C12orf35タンパク質の発現レベルの減少は、例えば、アンチセンス核酸分子、またはRNA干渉を媒介する分子による転写後遺伝子サイレンシングにより、達成することができる。非限定的な例としては、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられ、これらのすべてが当技術分野で周知である。
【0107】
C12orf35タンパク質の発現レベルは、当技術分野で公知の方法により、例えば、C12orf35タンパク質をコードするmRNAのレベル、またはC12orf35タンパク質それ自体のレベルを測定することにより評価できる。そのような方法としては、例えば、ノーザンブロッティング、FACS、ImageStream、ウエスタンブロッティング、qPCR、RT-PCR、qRT-PCR、ELISA、Luminex、Multiplex、などが挙げられる。
【0108】
一部の実施形態では、C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性は、対照と比較して、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも75倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、減少している。
【0109】
FAM60A遺伝子およびFAM60Aタンパク質
一部の実施形態では、宿主細胞は、対照と比較してFAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性が減少している細胞である。一部の実施形態では、そのような細胞はCHO細胞である。米国特許仮出願第61/919,340号(2013年12月20日出願、参照により本明細書中に組み入れられる)が、FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性が減少している哺乳動物細胞の詳細な説明を提供している。
【0110】
様々な対照を、上述の通りに用いることができる。対応する野生型細胞からのFAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性を対照として用いることができる。あるいは、対照は、文献またはデータベース中に特定することができる所定のレベルまたは閾値レベルであり得る。
【0111】
FAM60Aタンパク質は、転写抑制で機能するSIN3ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)複合体(SIN3/HDAC複合体)のサブユニットである(Munoz et al., 2012, THE Journal of Biological Chemistry VOL. 287, NO. 39, pp. 32346-32353;Smith et al., 2012, Mol Cell Proteomics 11 (12): 1815-1828)。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ヒストンからのアセチル基の除去を触媒する。リジンでのヒストンのアセチル化は、クロマチン構造を修飾するための主要な機構である。ヒストンアセチル化は、弛緩した、転写が活発なクロマチン状態を促進するが、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)により触媒される脱アセチル化は、サイレントな不活性状態を支持する。データベース分析により、大多数の後生動物では少なくとも1種類のFAM60Aオルソログの存在が明らかになったが、線形動物では存在が見出されなかった。FAM60A遺伝子は後生動物で保存されており、かつ完全に配列決定されているすべての脊椎動物およびほとんどの無脊椎動物のゲノム中に見出すことができる。FAM60Aホモログの配列類似性研究は、ゲノム中にはこのファミリーの1種類の代表的メンバーのみしかない場合が大部分であることを示している。わずかな例外はある。Smith et al, 2012によれば、FAM60Aタンパク質は、いかなる公知のタンパク質ドメインも有しない固有の配列を有する。さらに、ヒトプロテオーム中の他の既知のタンパク質に対するいかなる配列相同性も示さないことが、Smith et al 2012により記載された。異なる生物種由来のFAM60Aタンパク質同士の配列比較により、FAM60Aタンパク質が一般的に以下の3つの領域を含むことが示された:(1)すべての後生動物中で高度に保存されたセグメントを含むN末端、(2)脊椎動物同士では高度に保存されているが、無脊椎動物では変動的な長さの保存されていないスペーサーからなる中央領域、(3)すべての後生動物中で高度に保存されたセグメントを含むC末端。つまり、最も高い保存性が、FAM60A N末端領域およびC末端領域で観察された。
【0112】
研究により、FAM60Aタンパク質が、特に哺乳動物細胞などの種々の真核細胞タイプで、SIN3/HDAC複合体と会合することが示されている。しかしながら、現在までに、FAM60Aタンパク質に関する機能的情報は限られている。最近の機能的研究(Smith et al, 2012を参照されたい)により、FAM60Aタンパク質が遺伝子発現を抑制する場合があり、かつ遺伝子の特異的なサブセットを調節することが示されている。Smith et al 2012は、癌の進行、転移、細胞移動および免疫学的監視などのプロセスで中心的役割を果たすTGF-βシグナル伝達経路の調節でのFAM60Aタンパク質の働きを報告している。FAM60Aタンパク質がTGF-βシグナル伝達経路の構成要素の転写抑制因子として機能することを示唆する知見がある一方で、このFAM60Aタンパク質機能は、SIN3-HDAC複合体でのその働きを介して可能になっているようである。FAM60Aコード配列に対するsiRNAを用いた種々の癌細胞株でのFAM60Aタンパク質の枯渇は、標準的な癌細胞形態の変化をもたらした。さらに、FAM60Aタンパク質レベルは、U2OS細胞の細胞周期の経過中に周期的に変化することが見出された(Munoz et al, 2012)。U2OSヒト骨肉腫(bone osteosarcoma)でのFAM60A siRNAを用いたFAM60Aノックダウン実験により、FAM60Aタンパク質が、サイクリンD1遺伝子発現を抑制することが明らかになった。
【0113】
この科学的な背景にかかわらず、哺乳動物細胞でFAM60Aタンパク質の発現または活性を減少させることにより、組み換え発現に対して重要な細胞の他の特性に悪影響を及ぼすことなく、組み換えタンパク質の発現の安定性が増加することは、驚くべきことであった。タンパク質FAM60Aの作用と細胞の長期培養中の発現安定性との相関は、予期せぬものであった。そのようにして、FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性が減少している哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、五量体複合体の組み換え生成に特に好適である。
【0114】
FAM60A遺伝子は後生動物、したがってヒト、マウス、ラットおよびハムスターなどの哺乳動物種で内因的に発現され、かつFAM60Aのアミノ酸配列は哺乳動物種ならびに脊椎動物で高度に保存されている。異なる名称が、該タンパク質または遺伝子に関して異なる生物種で指定されている場合があり、非限定的な代替名(別名)もまた表2に列記されている(下記)。簡潔にするために、本開示中では、異なる生物種に由来するホモログおよびオルソログはすべて「FAM60A遺伝子」または「FAM60Aタンパク質」と呼称される。
【0115】
配列表は、様々な脊椎動物種、つまりヒト(Homo sapiens)(配列番号28)、マウス(Mus musculus)(配列番号29)、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)(配列番号30)の既知および/または予測上のFAM60Aタンパク質の例示的アミノ酸配列を示す。チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)の予測上のFAM60A cDNAが、配列番号31に示される(コード配列14〜679;NCBI参照配列:XM_003505482.1も参照されたい)。FAM60Aタンパク質は文献には詳細に記載されていない。したがって、対照と比較して内因性タンパク質FAM60Aの発現レベルまたは活性が減少するように宿主細胞のゲノムを変化させた場合に組み換え宿主細胞の発現安定性が改善し得ることは、驚くべきことであった。FAM60Aタンパク質が、対象となる組み換え生成物の発現安定性に影響することは、予期せぬことであった。
【0116】
FAM60Aタンパク質をコードするFAM60A遺伝子の配列は、ヒト(Homo sapiens)(NCBI Gene-ID: 58516);ラット(Rattus norvegicus)(NCBI Gene-ID: 686611);マウス(Mus musculus)(NCBI Gene-ID: 56306);ウシ(Bos Taurus)(NCBI Gene-ID: 538649)その他の生物で報告されている。転写産物変異体は、生物種依存的に、かつ様々な数で存在し得る(例えば、ヒトFAM60A遺伝子はUTRが異なるが同じタンパク質をコードする3種類の推定上の転写産物アイソフォームを発現する)。
【0117】
FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性の減少は、様々な手段により実現できる。例えば、FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性は、遺伝子ノックアウト、遺伝子突然変異、遺伝子欠失、遺伝子サイレンシングまたは上記のいずれかの組み合わせにより減少させることができる。遺伝子ノックアウトは、それにより遺伝子の機能を破壊することによって遺伝子を作動不能にする遺伝学的技術である。例えば、コード配列に核酸を挿入し、それにより遺伝子機能を破壊することができる。さらに、全長FAM60A遺伝子(またはその断片)を欠失させ、それにより機能的FAM60Aタンパク質の発現を実質的に排除するようにすることができる。例えば、欠失は、FAM60A遺伝子のコード配列のうちの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%であり得る。別の選択肢は、FAM60Aタンパク質を非機能性にするかまたは機能性を減少させる、コード配列への1箇所以上の突然変異を導入することである。例えば、1箇所以上のフレームシフト突然変異を導入して、FAM60Aタンパク質を非機能性にするかまたは機能性を減少させることができる。あるいは、または加えて、1箇所以上の終止コドンをコード配列に導入して、それにより切断型の非機能性または低機能性タンパク質を得ることができる。他の選択肢としては、限定するものではないが、例えば、プロモーター欠失を導入することによる、またはプロモーターと転写開始部位との間に構築物を導入することによる、プロモーター、5’および/もしくは3’ UTRまたは他の調節エレメント中の1箇所以上の突然変異が挙げられる。標的遺伝子の発現を抑制または排除するための遺伝子破壊法もまた、当業者に周知である。
【0118】
各細胞はそのゲノム中に2コピーのFAM60A遺伝子を有するので、一部の実施形態では、FAM60A遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該FAM60A遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している。一部の実施形態では、FAM60A遺伝子のゲノム配列の両方のコピー(または各コピー由来の該FAM60A遺伝子のコード配列の少なくとも50%)が欠失している。
【0119】
一部の実施形態では、欠失配列はCHO細胞の8番染色体のテロメア領域の一部分を含む。テロメア領域は、染色分体のそれぞれの端部にある反復ヌクレオチド配列の領域であり、劣化から、または隣接する染色体との融合から染色体の端部を保護する。一部の実施形態では、CHO細胞の8番染色体のテロメア領域のヌクレオチド配列のうちの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%が欠失している。
【0120】
一部の実施形態では、欠失配列は、Caprin2およびIpo8、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の欠失をさらに含む。
【0121】
一部の実施形態では、FAM60A遺伝子の欠失は、染色体切断によるものである。染色体切断は、上記の方法により誘導することができる。染色体切断を誘導した後、所望の切断点(遺伝子FAM60Aの欠失を生じる)を有する細胞を、例えば、DNAを分析することにより、または本開示の第5の態様に従う方法を用いることにより、特定することができる。例えば、FAM60A遺伝子または遺伝子FAM60Aのセントロメア側に位置する遺伝子が発現されているか、発現が減少しているか、または遺伝子が発現されていないかを決定するために、処理された細胞の発現プロファイルを分析することができる。例えば、マウスまたはハムスター細胞の場合、FAM60A遺伝子が発現されているか否かを分析することができ、あるいは、またはそれに加えて、Bicd1、C12orf35、メチルトランスフェラーゼ様タンパク質20、Dennd5b、Caprin2、Ipo8、Tmtc1もしくは上記の遺伝子のテロメア側に位置する遺伝子(これに関してテロメア側とは、テロメア端部の方向へ向かうことを意味する)からなる群より選択される1種以上の遺伝子が細胞により発現されているか、かつ/または発現が減少もしくは実質的に除去されているか否かを分析することができる。
【0122】
FAM60Aタンパク質の発現レベルの減少は、例えば、アンチセンス核酸分子、またはRNA干渉を媒介する分子による転写後遺伝子サイレンシングにより、達成することができる。非限定的な例としては、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられ、これらのすべてが当技術分野で周知である。
【0123】
FAM60Aタンパク質の発現レベルは、当技術分野で公知の方法により、例えば、FAM60Aタンパク質をコードするmRNAのレベル、またはFAM60Aタンパク質それ自体のレベルを測定することにより評価できる。そのような方法としては、例えば、ノーザンブロッティング、FACS、ImageStream、ウエスタンブロッティング、qPCR、RT-PCR、qRT-PCR、ELISA、Luminex、Multiplex、などが挙げられる。
【0124】
一部の実施形態では、FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性は、対照と比較して、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも75倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、減少している。
【0125】
マトリプターゼ遺伝子およびマトリプターゼ
一部の実施形態では、宿主細胞は、対照と比較してマトリプターゼの発現レベルまたは活性が減少している細胞である。一部の実施形態では、そのような細胞はCHO細胞である。米国特許仮出願第61/985,589号(2014年4月29日出願、参照により本明細書中に組み入れられる)および同第第61/994,310号(2014年5月16日出願、参照により本明細書中に組み入れられる)が、マトリプターゼの発現レベルまたは活性が減少している哺乳動物細胞の詳細な説明を提供している。
【0126】
様々な対照を、上述の通りに用いることができる。対応する野生型細胞からのマトリプターゼの発現レベルまたは活性を対照として用いることができる。あるいは、対照は、文献またはデータベース中に特定することができる所定のレベルまたは閾値レベルであり得る。
【0127】
マトリプターゼは、培養乳癌細胞中の新規ゼラチン分解活性として、1993年に最初に報告された。マトリプターゼは、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TTSP)のファミリーに属する。マトリプターゼのオルソログが、哺乳動物種をはじめとする様々な脊椎動物種に存在し、例えば、ヒト、チンパンジー、イヌ、マウス、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュ、ミドリフグ(spotted green pufferfish)およびトラフグ(tiger pufferfish)で特定され、このことは、保存された進化上の機能を示唆する。マトリプターゼは、EC 3.4.21.109としてIUBMB酵素分類に記載されている。マトリプターゼはまた、膜型セリンプロテアーゼ1(MT-SP1)および腫瘍原性の抑制因子14(suppressor of tumorigenicity-14)(ST14)としても知られる(Chen et al, The Transmembrane Serine Protease Matriptase: Implications for Cellular Biology and Human Diseases J Med Sci 2012; 32 (3): 097-108を参照されたい)。マトリプターゼは、細胞質側N末端(cytoplasmatic N-Terminus)に近接した一回膜貫通ドメインを有する一体型膜タンパク質である。細胞外部分はステム領域(1個のSEAドメイン、2個のCUBドメインおよび4個のLDLRAドメインを含む)およびC末端セリンプロテアーゼドメインからなり、C末端セリンプロテアーゼドメインは、他のTTSPと構造的に非常に似通っており、かつ触媒活性に必須の保存されたヒスチジン/アスパラギン酸/セリン(HDS)触媒三残基(catalytic triad)を含む(例えば、List et al, Matriptase: Potent Proteolysis on the cell Surface; Mol Med 12 (1-3) 1-7, January-March 2006およびChen et al, The Transmembrane Serine Protease Matriptase: Implications for Cellular Biology and Human Diseases J Med Sci 2012; 32 (3): 097-108を参照されたい)。マトリプターゼは、皮膚、乳房、肺、表皮、角膜、唾液腺、口腔および鼻腔、甲状腺、胸腺、食道、気管、細気管支、肺胞(alveoli)、胃、膵臓、胆嚢、十二指腸、小腸、結腸、直腸、腎臓、副腎、膀胱、尿管、精嚢、精巣上体、前立腺、卵巣、子宮および膣などの多数の器官系の上皮で発現されていると記載されている(List et al, 2006およびChen et al, 2012を参照されたい)。マトリプターゼは、不活性な酵素前駆体(zymogen)として合成され、複雑なプロセスを経てその活性形態へと変換される。細胞内タンパク質分解切断を含む活性化プロセスに関する詳細が、List et al 2006およびChen et al 2012にヒトマトリプターゼについて記載されている。マトリプターゼは、細胞外腔に向かう触媒ドメインを有するII型膜貫通型タンパク質として膜に結合している。さらに、それぞれの細胞外部分でのマトリプターゼの無視できない脱落(shedding)がin vivoで生じることが、文献に記載されている(List et al, 2006およびChen et al 2012を参照されたい)。マトリプターゼは、複合体の形態で、例えば、クニッツ型セリンプロテアーゼ阻害因子HAI-1と複合体を形成して脱落(shed)することが文献に記載されている。様々な研究により、HAI-1の除去または単一点突然変異でさえもゴルジ画分中のマトリプターゼの蓄積をもたらすことが示されたので、ヒト細胞では、特異的阻害因子HAI-1が細胞膜へのマトリプターゼの輸送を促進することが示唆される。文献中には、HAI-2、アンチトロンビン、α-1アンチトリプシンおよびα-2-アンチプラスミンなどの、HAI-1以外のマトリプターゼの数種類の異なる内在性阻害因子が記載されている。さらに、マトリプターゼの他の阻害因子もまた記載されている(例えば、Chen et al, 2012を参照されたい)。文献中には、マトリプターゼが、皮膚バリア機能、上皮の完全性、毛包発達、および胸腺ホメオスタシスなどの正常生理学、ならびに変形性関節症、アテローム性硬化症(atheroscleorisis)、および腫瘍進行、浸潤、および転移などのヒト病理での多数の役割を果たしている可能性があることが記載されている。
【0128】
タンパク質の組み換え生成に無関係なこの科学的な背景にかかわらず、マトリプターゼが細胞培養培地へと宿主細胞により分泌される組み換え生成タンパク質のクリッピングに関与しているプロテアーゼであるという本開示の知見は、非常に驚くべきものであった。特に哺乳動物細胞などの脊椎動物細胞で発現される多数の様々なプロテアーゼを考慮に入れれば、このタンパク質の発現レベルまたは活性を減少させることにより細胞培養培地中での対象となる分泌型ポリペプチドのクリッピングを顕著に減少させることができることは、さらにまた驚くべきことであった。これらの有利な作用は、他のプロテアーゼでは、密接に関連したプロテアーゼであってさえも見られていない。そのようにして、マトリプターゼの発現レベルまたは活性が減少した哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)は、五量体複合体の組み換え生成に特に好適である。
【0129】
配列表は、ハムスター(配列番号32;NCBI参照配列:XP_003495890)、ヒト(配列番号33;NCBI参照配列:NP_068813)、マウス(配列番号34;NCBI参照配列:NP_035306)などの種々の脊椎動物種由来のマトリプターゼの例示的アミノ酸配列を示す。
【0130】
種々の哺乳動物種由来のマトリプターゼをコードするヌクレオチド配列もまた報告されている。例えば、チャイニーズハムスター(NCBI Gene-ID: 100755225);ヒト(Homo sapiens)(NCBI Gene-ID: 6768);マウス(Mus musculus)(NCBI Gene-ID: 19143);ラット(Rattus norvegicus)(NCBI Gene-ID: 114093);チンパンジー(Pan Troglodytes)(NCBI Gene-ID: 100188950)その他を参照されたい。一部のマトリプターゼ遺伝子に対する同義語が表3に列記され、「ST14」または「St14」が一般的に用いられる。
【0131】
表3に示される通り、マトリプターゼは、「腫瘍原性の抑制因子14タンパク質」(suppressor of tumorigenicity 14 protein)(例えば、ヒトに関して)および「腫瘍原性の抑制因子14タンパク質ホモログ」(suppressor of tumorigenicity 14 protein homolog)(例えば、マウスおよびチャイニーズハムスターで)とも称される。簡潔にするために、本開示では、異なる生物種由来のホモログおよびオルソログは、すべて「マトリプターゼ遺伝子」または「マトリプターゼ」(タンパク質)と呼称される。
【0132】
マトリプターゼの機能的変異体(野生型マトリプターゼと実質的に同じ触媒活性を有する変異体)もまた、本明細書中に記載される。例えば、マトリプターゼ変異体は、配列番号32〜34の配列のうちのいずれか1種に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である配列を含むことができ、かつ、野生型マトリプターゼタンパク質と同じかまたは実質的に同じ触媒活性を有する。マトリプターゼ変異体の触媒活性は、例えば、P1位のArgまたはLysを含む種々の合成基質を切断し、かつP2位のAlaおよびGlyなどの小さな側鎖アミノ酸を好む化学反応により、評価することができる(EC 3.4.21.109を参照されたい)。
【0133】
マトリプターゼの機能的断片(全長マトリプターゼと実質的に同じ触媒活性を有する断片)もまた本明細書中に記載される。マトリプターゼの機能的断片は、本明細書中に開示される全長マトリプターゼの連続するアミノ酸のサブセットであり得、全長タンパク質配列と同じかまたは実質的に同じ触媒活性を有する。マトリプターゼ断片の触媒活性は、例えば、P1位のArgまたはLysを含む種々の合成基質を切断し、かつP2位のAlaおよびGlyなどの小さな側鎖アミノ酸を好む化学反応により、評価することができる(EC 3.4.21.109を参照されたい)。
【0134】
マトリプターゼの発現レベルまたは活性の減少は、様々な手段により実現できる。例えば、マトリプターゼの発現レベルまたは活性は、遺伝子ノックアウト、遺伝子突然変異、遺伝子欠失、遺伝子サイレンシングまたは上記のいずれかの組み合わせにより減少させることができる。遺伝子ノックアウトは、それにより遺伝子の機能を破壊することによって遺伝子を作動不能にする遺伝学的技術である。例えば、コード配列に核酸を挿入し、それにより遺伝子機能を破壊することができる。さらに、全長マトリプターゼ遺伝子(またはその断片)を欠失させ、それにより機能的マトリプターゼの発現を実質的に排除するようにすることができる。例えば、欠失は、マトリプターゼ遺伝子のコード配列のうちの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%であり得る。別の選択肢は、マトリプターゼを非機能性にするかまたは機能性を減少させる、コード配列への1箇所以上の突然変異を導入することである。例えば、1箇所以上のフレームシフト突然変異を導入して、マトリプターゼを非機能性にするかまたは機能性を減少させることができる。あるいは、または加えて、1箇所以上の終止コドンをコード配列に導入して、それにより切断型の非機能性または低機能性タンパク質を得ることができる。他の選択肢としては、限定するものではないが、例えば、プロモーター欠失を導入することによる、またはプロモーターと転写開始部位との間に構築物を導入することによる、プロモーター、5’および/もしくは3’ UTRまたは他の調節エレメント中の1箇所以上の突然変異が挙げられる。標的遺伝子の発現を抑制または排除するための遺伝子破壊法もまた、当業者に周知である。
【0135】
各細胞はそのゲノム中に2コピーのマトリプターゼ遺伝子を有するので、一部の実施形態では、マトリプターゼ遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該マトリプターゼ遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%、または該マトリプターゼ遺伝子の機能的断片が欠失している。一部の実施形態では、マトリプターゼ遺伝子のゲノム配列の両方のコピー(または各コピー由来の該マトリプターゼ遺伝子のコード配列の、もしくは該マトリプターゼ遺伝子の機能的断片の少なくとも50%)が欠失している。
【0136】
一部の実施形態では、宿主細胞は、マトリプターゼ遺伝子のエキソン2中に突然変異を含む。数種類の異なる機能的スプライシング変異体が存在するので、エキソン2は、マトリプターゼ活性を変化させるための標的として特に好適である。つまり、エキソン1、エキソン2およびエキソン3などのマトリプターゼのN末端近傍のエキソンは、1箇所以上の突然変異、特に1箇所以上のフレームシフト突然変異を導入するために有利である。これらのエキソンのうちの1つでのフレームシフト突然変異は、配列中の前の方での終止コドンを最も可能性高くもたらす。突然変異はまた、例えば、エキソン4〜19から選択される後続のエキソンのうちの1つに導入することもできる。
【0137】
一部の実施形態では、マトリプターゼは、触媒ドメイン中に突然変異を含む。触媒ドメインは、酵素反応を引き起こすために、その基質と相互作用する酵素の領域である。1箇所以上の突然変異をこのドメインに導入して、タンパク質の触媒活性を対照と比較して減少させることができる。触媒ドメインは、エキソン16、17、18および19によりコードされる配列を含む。突然変異は、欠失、挿入、置換、またはそれらの組み合わせであり得る。突然変異は、触媒ドメインをコードする配列中に、フレームシフト突然変異、特異的点突然変異、終止コドン突然変異、またはそれらの組み換え(recombination)を引き起こし得る。例えば、G827R-マトリプターゼまたはS805A-マトリプターゼなどのマトリプターゼの触媒不活性突然変異体も、文献に記載されている(Desilets et al, The Journal of Biological Chemistry Vol. 283, No. 16, pp. 10535-10542, 2008を参照されたい)。さらに、組み換えマトリプターゼの触媒ドメインの結晶構造が公知である。この構造および配列データから、当業者は、マトリプターゼの触媒機能を害するための突然変異に対するさらなる特異的標的を導き出すことができる。
【0138】
マトリプターゼの発現レベルの減少は、例えば、アンチセンス核酸分子、またはRNA干渉を媒介する分子による転写後遺伝子サイレンシングにより、達成することができる。非限定的な例としては、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられ、これらのすべてが当技術分野で周知である。
【0139】
マトリプターゼの発現レベルは、当技術分野で公知の方法により、例えば、マトリプターゼをコードするmRNAのレベル、またはマトリプターゼそれ自体のレベルを測定することにより評価できる。そのような方法としては、例えば、ノーザンブロッティング、FACS、ImageStream、ウエスタンブロッティング、qPCR、RT-PCR、qRT-PCR、ELISA、Luminex、Multiplex、などが挙げられる。マトリプターゼの活性は、例えば、その酵素活性に従って評価することができる。
【0140】
一部の実施形態では、マトリプターゼの発現レベルまたは活性は、対照と比較して、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも75倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、減少している。
【表2】
【表3】
【0141】
好適な宿主細胞は、本明細書中に記載される改変のいずれかの組み合わせを有することができ、例えば、対照と比較して該細胞中ではC12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が減少しており、かつ対照と比較して該細胞中ではFAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性が減少している細胞であり得る。他の組み合わせとしては、例えば、C12orf35タンパク質発現レベルまたは活性の減少およびマトリプターゼ発現レベルまたは活性の減少;FAM60Aタンパク質発現レベルまたは活性の減少、およびマトリプターゼ発現レベルまたは活性の減少;C12orf35タンパク質発現レベルまたは活性の減少、FAM60Aタンパク質発現レベルまたは活性の減少、およびマトリプターゼ発現レベルまたは活性の減少;C12orf35タンパク質発現レベルまたは活性の減少、および選択マーカーとしてのジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)配列の包含などが挙げられる。
【0142】
本明細書中に記載される宿主細胞は、大規模培養に対して好適である。例えば、細胞培養物は、10L、30L、50L、100L、150L、200L、300L、500L、1000L、2000L、3000L、4000L、5000L、10,000Lまたはそれ以上であり得る。一部の実施形態では、細胞培養物のサイズは、10L〜5000L、10L〜10,000L、10L〜20,000L、10L〜50,000L、40L〜50,000L、100L〜50,000L、500L〜50,000L、1000L〜50,000L、2000L〜50,000L、3000L〜50,000L、4000L〜50,000L、4500L〜50,000L、1000L〜10,000L、1000L〜20,000L、1000L〜25,000L、1000L〜30,000L、15L〜2000L、40L〜1000L、100L〜500L、200L〜400Lの範囲、またはそれらの間のいずれかの整数であり得る。
【0143】
細胞培養のための培地成分は当技術分野で公知であり、例えば、緩衝剤、アミノ酸含有量、ビタミン含有量、塩含有量、鉱物含有量、血清含有量、炭素源含有量、脂肪含有量、核酸含有量、ホルモン含有量、微量元素含有量、アンモニア含有量、補因子含有量、指示剤含有量、小分子含有量、加水分解物含有量および酵素調節因子含有量が挙げられる。
【0144】
4. 細胞培養物からの五量体複合体の精製
本明細書中に記載される方法に従って生成される五量体複合体は、いずれかの好適な方法を用いて宿主細胞から回収し、かつ精製することができる。好適な方法としては、沈殿法ならびに疎水性相互作用、イオン交換、アフィニティー、キレート、およびサイズ排除などの種々のタイプのクロマトグラフィー法が挙げられ、それらのすべてが当技術分野で公知である。好適な精製スキームは、これらのうちの2種類以上または他の好適な方法を用いて作成することができる。所望であれば、五量体複合体のサブユニットのうちの1種以上が、エピトープタグまたはHISタグ、Strepタグなどの精製を容易にする「タグ」を含むことができる。そのようなタグ付けされたポリペプチドは、例えば、馴化培地から、キレートクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーにより、慣習的に精製することができる。任意により、タグ配列は、精製後に切断することができる。
【0145】
例えば、国際公開第2014/005959号には、アフィニティークロマトグラフィーによる五量体複合体の例示的精製方法が開示されている。
【0146】
一部の実施形態では、五量体複合体の1種以上のサブユニットが、アフィニティー精製のためのタグを含む。アフィニティー精製タグの例としては、例えば、Hisタグ(金属イオンに結合する)、抗体(プロテインAまたはプロテインGに結合する)、マルトース結合性タンパク質(MBP)(アミロースに結合する)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)(グルタチオンに結合する)、FLAGタグ(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(配列番号37))(抗flag抗体に結合する)、Strepタグ(ストレプトアビジンまたはその誘導体に結合する)が挙げられる。
【0147】
gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131五量体複合体の構造は明らかになっていない。しかしながら、アフィニティー精製タグが五量体複合体の形成を妨げる部位に、または複合体の内部に埋まる部位に連結される場合、アフィニティー精製はうまく行かないであろう。以下の部位は、タグが五量体複合体の形成を妨げるようには見えず、かつアセンブルした五量体の表面に露出していると思われるので、アフィニティー精製タグの連結のために好適であると考えられる: (i) pUL130のC末端領域、(ii) pUL130のN末端領域、(iii) pUL131のC末端領域、(iv) pUL131のN末端領域、(v) pUL128のC末端領域、(vi) pUL128のN末端領域、またはそれらの組み合わせ。
【0148】
一部の実施形態では、五量体複合体は、精製タグを含まない。
【0149】
別の好適な方法は、イオン交換クロマトグラフィーである。イオン交換クロマトグラフィーに有用な材料の例としては、DEAE-セルロース、QAE-セルロース、DEAE-セファロース(DEAE-cephalose)、QAE-セファロース(QAE-cephalose)、DEAE-Toyopearl、QAE-Toyopearl、Mono Q、Mono S、Qセファロース、SPセファロース等が挙げられる。1つの例示的実施形態では、方法はMono Sカラムを用いる。別の例示的実施形態では、方法はMono Qカラムを用いる。
【0150】
一部の実施形態では、CMV五量体複合体の収率は、少なくとも約0.01g/L、少なくとも約0.02g/L、少なくとも約0.03g/L、少なくとも約0.05g/L、少なくとも約0.06g/L、少なくとも約0.07g/L、少なくとも約0.08g/L、少なくとも約0.09g/L、少なくとも約0.1g/L、少なくとも約0.15g/L、少なくとも約0.20g/L、少なくとも約0.25g/L、少なくとも約0.3g/L、少なくとも約0.35g/L、少なくとも約0.4g/L、少なくとも約0.45g/L、少なくとも約0.5g/L、少なくとも約0.55g/L、少なくとも約0.6g/L、少なくとも約0.65g/L、少なくとも約0.7g/L、少なくとも約0.75g/L、少なくとも約0.8g/L、少なくとも約0.85g/L、少なくとも約0.9g/L、少なくとも約0.95g/L、または少なくとも約1.0g/Lである。
【0151】
5. 定義
CMVタンパク質(gH、gL、pUL128、pUL130、またはpUL131など)の「複合体形成性断片」との用語は、別のCMVタンパク質との複合体を形成する能力を保持するタンパク質のいずれかの部分または一部分を意味する。そのような複合体としては、例えば、gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131五量体複合体が挙げられる。五量体複合体を形成する能力を保持する断片はまた、「五量体形成性断片」とも称される。
【0152】
「大規模培養物」とは、少なくとも約10Lのサイズ(例えば、少なくとも約10L、少なくとも約20L、少なくとも約30L、少なくとも約40L、少なくとも約50L、少なくとも約60L、少なくとも約70L、少なくとも約80L、少なくとも約90L、少なくとも約100L、少なくとも約150L、少なくとも約200L、少なくとも約250L、少なくとも約300L、少なくとも約400L、少なくとも約500L、少なくとも約600L、少なくとも約700L、少なくとも約800L、少なくとも約900L、少なくとも約1000L、少なくとも約2000L、少なくとも約3000L、少なくとも約4000L、少なくとも約5000L、少なくとも約6000L、少なくとも約10,000L、少なくとも約15,000L、少なくとも約20,000L、少なくとも約25,000L、少なくとも約30,000L、少なくとも約35,000L、少なくとも約40,000L、少なくとも約45,000L、少なくとも約50,000L、少なくとも約55,000L、少なくとも約60,000L、少なくとも約65,000L、少なくとも約70,000L、少なくとも約75,000L、少なくとも約80,000L、少なくとも約85,000L、少なくとも約90,000L、少なくとも約95,000L、少なくとも約100,000Lの容量など)である培養物を意味する。
【0153】
「可溶性」五量体複合体とは、gHサブユニットが膜貫通ドメインを含まないgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体を意味する。
【0154】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈が許す場合には、「含む」(comprising)との用語およびその変形(「comprises」または「comprising」など)は、いずれかの他の整数を必ずしも排除することなく、記載された整数(1つまたは複数個)を含むものと解釈されるべきである。
【0155】
配列同一性は、標準化されたアルゴリズムを用いてアライメントされた2種類のポリヌクレオチド配列間でマッチする残基、または2種類のポリヌクレオチド配列間でマッチするヌクレオチドの割合(%)に従って算出される。そのようなアルゴリズムは、標準化されかつ再現性のある様式で、2種類の配列の間のアライメントを最適化するために、比較されている配列中にギャップを挿入し、それにより2種類の配列のより意味のある比較を実現することができる。同一性%は、規定された配列全体の長さにわたって測定する場合があり、またはより短い長さにわたって、例えば、より長い規定された配列から取得される断片、例えば、少なくとも45個、少なくとも60個、少なくとも90個、少なくとも120個、少なくとも150個、少なくとも210個または少なくとも450個の連続する残基またはヌクレオチドの断片の長さにわたって、測定される場合がある。長さが明記されていない場合、配列同一性は、2種類の配列の短い方の全長にわたって算出される。
【0156】
本発明は、限定的であると解釈されるべきではない以下の実施例により、さらに説明される。
【実施例】
【0157】
本実施例は、五量体サブユニットのコード配列が染色体に安定的にインテグレートされたCHO細胞株によりCMV五量体タンパク質複合体を生成することに関する。細胞株は、CHO安定的細胞株とも称される。
【0158】
本実施例に示される通り、これらの安定的CHO細胞株は、5種類すべてのサブユニットが天然のコンホメーションでアセンブルした機能的CMV五量体を産生した。収率は高く、それにより、商業的大規模での五量体複合体の産生を可能にする。これらの細胞株は、五量体を用いるCMVワクチンの大規模製造に対して特に好適である。
【0159】
本実施例に示される通り、gHエクトドメイン、gL、pUL128、pUL130およびpUL131をコードするヌクレオチド配列を、個々の構成要素の発現を駆動するサブゲノムプロモーターおよびIRESを含む、単一または二重の発現ベクター中にクローニングした(
図1)。具体的には、gHエクトドメイン、全長gL、pUL128、pUL130およびpUL131のコード配列を、哺乳動物培養発現に対してコドン最適化し、合成し、CMVプロモーター(gHおよびUL128に関して)およびEV71 IRES(gL、UL130、UL131に関して)により発現に関して駆動される単一発現ベクター(NeoおよびDHFR選択を用いる);またはデュアル発現ベクターであって、一方はCMVプロモーターにより駆動されるgH、およびCMVプロモーターもしくはEV71 IRESにより駆動されるgLのための、NeoおよびDHFR選択を用いるものであり、もう一方はCMVプロモーターにより駆動されるUL128、EV71 IRESにより駆動されるUL130およびUL131のための、HygおよびFrα選択を用いるものであるデュアル発現ベクターへとクローニングした(
図1)。精製を容易にするために、Hisタグおよび/またはStrepタグなどのアフィニティー精製タグをgHエクトドメインおよび/またはUL130のC末端に導入した。FACSサブクローニングを容易にするために、gHエクトドメインのC末端に、終止コドンおよびgHの膜貫通ドメインも導入した(
図1)。
【0160】
1つまたは複数の発現プラスミドを、(i) CHOC8TD細胞株、(ii) CHOHPT3細胞株および(iii) CHOC8TDマトリプターゼKO細胞株を含むCHO宿主細胞のパネルにトランスフェクションした。
【0161】
CHOC8TDは、CHO K1細胞株に由来し、染色体のテロメア領域を欠失させることによりさらに改変されており、したがってこの細胞株は以下の特徴を有する:(i)欠失した8番染色体テロメア;(ii)高い生産性および良好な細胞増殖;および(iii)高度なタンパク質分解の問題の可能性。CHOHPT3は、低下したタンパク質分解活性を示すCHO K1細胞株であり、したがってこの細胞株は以下の特徴を有する:(i) CHOC8TDよりも減少したタンパク質分解、および(ii) CHOC8TDよりも減少した増殖、生産性およびクローニング効率。CHOC8TDマトリプターゼKOは、CHOC8TDから誘導され、マトリプターゼがノックアウトされており、したがってこの細胞株は以下の特徴を有する:(i)ノックアウトされたマトリプターゼ(セリンプロテアーゼ);および(ii)減少したタンパク質分解。
【0162】
gH、gL、UL128、UL130およびUL131のコード配列を含む1つまたは複数の発現プラスミドを、AMAXAヌクレオフェクションを用いて3種類すべての宿主細胞にトランスフェクションした。単一ベクター戦略では、トランスフェクションされた細胞はG418およびMTXにより順次選択された。デュアルベクター戦略に関しては、トランスフェクションされた細胞はHygおよび続いてMTXにより順次選択された。
【0163】
生き残った細胞のプールをバッチ培養して五量体タンパク質を産生させて、間接ELISAを用いて収率に関して、ウエスタンブロッティングおよびSDS-PAGEを用いてgH/gL混入およびgL分解に関してタンパク質を評価した。五量体収率および細胞増殖に基づいて、CHOC8TD宿主細胞を用いたベクター戦略2によるCHOトランスフェクトプール(
図1)が、単一細胞クローニングのために選択された(
図2に示される発現プラスミド)。選択されたクローンは、高い収率および少ないgH/gL混入を示す。
【0164】
単一クローンを、五量体特異的mAbを用いてFACSによりソーティングした(約200)。上位30クローンを、間接ELISAを用いて評価された五量体力価に基づいて最初に選択し、上位12クローンまでさらに下方選択した(down-selected)。フェッドバッチ培養およびそれに続くStrepアフィニティー精製は、上位12クローンが300mg/L超の収率および高い純度で五量体を産生できることを示した(
図3)。実際には、上位のクローンは約0.3g/L〜約0.5g/Lの収率で五量体を産生した。精製されたタンパク質複合体を、五量体に対するmAbのパネルを用いて結合性に関して評価し、主要なエピトープがすべて存在することが示された。
【0165】
上位12クローンを、14週間の安定性研究を通してさらに評価した(
図4)。制御バッチおよび非制御バッチを、細胞増殖および五量体力価に関して評価し、クローンVF7が選択された。
【0166】
最上位クローンVF7を用いた五量体のバイオリアクター生成もまた評価された。このクローンは、100mg/L超の精製された五量体を産生した(
図5)。
【0167】
本明細書中に例示される通り、安定的CHO細胞を、五量体を発現させるために用いることができる。これは、HEK293細胞による一時的発現とは対照的である。本発明のCHO安定的細胞株は、一貫して100倍高い収率で五量体タンパク質を産生し得る。
【0168】
本明細書中に例示される通りの、五量体の5種類すべてのサブユニットのコード配列が染色体へとインテグレートされている安定的CHO細胞株を作製できることは、非常に注目に値する。安定的細胞株が作製できるか否かに関しては、1種類のタンパク質に対してさえも、不確定性が常に存在する。例えば、安定的細胞株を作製するためにCHO細胞へとヒトIGF-1のコード配列を導入した場合には、得られたIGF-1/CHO細胞株が細胞増殖阻害および低い力価を示したことが見出された。この最大力価測定値は、約8μg/mLであり、これは100mg/Lの抗体力価(モル質量に基づく)に対応する。これと比較して、バイオリアクタープロセスでの組み換え抗体の平均力価測定値は約3g/Lである。IGF-1の低力価の一因は、IGF-1発現細胞の減少した細胞増殖および低い細胞生存率であった。抗体発現プロセス中に、CHO-K1誘導細胞は最大で 2×10
7細胞/mLまで増殖し、細胞生存率は最初の230〜260時間の培養時間の間、97%超である。これと比較して、IGF-1を発現するCHO-K1誘導細胞は、最大で0.5×10
7細胞/mLまでしか増殖せず、細胞生存率は2日後に97%より下まで既に低下していた。追加の詳細に関しては、米国特許仮出願第61/738466号(2012年12月18日出願)、およびPCT出願公開第2014/097113号(2013年12月16日)を参照されたい。
【0169】
したがって、5種類すべてのCMV五量体サブユニットのコード配列をCHO細胞ゲノムへと安定的にインテグレートしなければならないので、本発明者らは、明らかなさらなる困難に直面した。本発明者らは、高い収率を示す選択されたクローンにより立証される通り、その天然のコンホメーションで、すべての主要なエピトープを含む組み換え産生された五量体により、これらの困難を克服した。
【0170】
上記の個々の節で言及された本発明の様々な特徴および実施形態が、適宜、他の節に準用される。結果として、1つの節に詳述される特徴を、適宜、他の節に詳述される特徴と組み合わせることができる。
【0171】
本明細書は、本明細書中で引用される参考文献の教示を踏まえて、最も完全に理解される。本明細書中の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供し、本発明の範囲を限定するものと理解するべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明に包含されることを容易に認識する。本開示中に引用されるすべての刊行物、特許、およびGenBank配列は、その全体で参照により組み入れられる。参照により組み入れられた資料が本明細書と矛盾するかまたは整合しない程度まで、本明細書はいかなるそのような資料にも優先するであろう。本明細書中のいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本発明の先行技術であることの承認ではない。
【0172】
当業者は、慣用の実験方法以上のものを用いずに、本明細書中に記載される本発明の具体的実施形態に対する多数の等価物を認識するか、またはそれを究明することができるであろう。そのような等価物は、以下の実施形態に包含されることが意図される。
【0173】
本発明の特定の実施形態は、以下のものを含む:
1. サイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体をコードする1種以上のポリヌクレオチド配列を含む組み換え哺乳動物細胞であって、
該五量体複合体は、gHまたはその複合体形成性断片、gLまたはその複合体形成性断片、pUL128またはその複合体形成性断片、pUL130またはその複合体形成性断片、およびpUL131またはその複合体形成性断片を含み;
該1種以上のポリヌクレオチド配列は該哺乳動物細胞のゲノムDNAにインテグレートされている、上記哺乳動物細胞。
2. チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態1に記載の哺乳動物細胞。
3. 前記CHO細胞が、CHO-K1細胞、CHO-DUXB11、またはCHO-DG44細胞である、実施形態2に記載の哺乳動物細胞。
4. C12orf35タンパク質の発現レベルまたは活性が、対照と比較して前記細胞中で減少している、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
5. C12orf35遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該C12orf35遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、実施形態4に記載の哺乳動物細胞。
6. C12orf35遺伝子のゲノム配列の両方のコピー、または各コピー由来の該C12orf35遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、実施形態5に記載の哺乳動物細胞。
7. C12orf35遺伝子を含むCHO細胞の8番染色体のテロメア領域のうちの少なくとも1コピーが欠失している、実施形態4または5に記載の哺乳動物細胞。
8. 前記テロメア領域が、Bicd1、Amn1、メチルトランスフェラーゼ様タンパク質20、Dennd5b、FAM60A、Caprin2、Ipo8、RPS4Y2およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子をさらに含む、実施形態7に記載の哺乳動物細胞。
9. 前記C12orf35タンパク質が、配列番号21、22、23、24および35からなる群より選択される配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも80%同一である配列を含む、実施形態4〜8のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
10. 前記C12orf35遺伝子が、配列番号25に対して少なくとも80%同一である配列を含む、実施形態4〜9のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
【0174】
11. 前記C12orf35遺伝子のプロモーター、5'UTR、または3'UTR中に突然変異を含む、実施形態4に記載の哺乳動物細胞。
12. 前記C12orf35タンパク質が、対照と比較してその活性を減少させる突然変異を含む、実施形態4に記載の哺乳動物細胞。
13. FAM60Aタンパク質の発現レベルまたは活性が対照と比較して前記細胞中で減少している、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
14. FAM60A遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該FAM60A遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、実施形態13に記載の哺乳動物細胞。
15. FAM60A遺伝子のゲノム配列の両方のコピー、または各コピー由来の該FAM60A遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、実施形態14に記載の哺乳動物細胞。
16. 前記欠失配列が、CHO細胞の8番染色体のテロメア領域の一部分を含む、実施形態13または14に記載の哺乳動物細胞。
17. 前記欠失配列が、Caprin2およびIpo8、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子をさらに含む、実施形態16に記載の哺乳動物細胞。
18. 前記FAM60Aタンパク質が、配列番号28、29、および30からなる群より選択される配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも80%同一である配列を含む、実施形態13〜17のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
19. 前記FAM60A遺伝子が、配列番号31に対して少なくとも80%同一である配列を含む、実施形態13〜18のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
20. 前記FAM60A遺伝子のプロモーター、5'UTR、または3'UTR中に突然変異を含む、実施形態13に記載の哺乳動物細胞。
【0175】
21. 前記FAM60Aタンパク質が、対照と比較してその活性を減少させる突然変異を含む、実施形態13に記載の哺乳動物細胞。
22. マトリプターゼの発現レベルまたは活性が、対照と比較して前記細胞中で減少している、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
23. マトリプターゼ遺伝子のゲノム配列のうちの少なくとも1コピー、または該マトリプターゼ遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、実施形態22に記載の哺乳動物細胞。
24. マトリプターゼ遺伝子のゲノム配列の両方のコピー、または各コピー由来の該マトリプターゼ遺伝子のコード配列のうちの少なくとも50%が欠失している、実施形態23に記載の哺乳動物細胞。
25. 前記マトリプターゼが、配列番号32、33、および34からなる群より選択される配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも80%同一である配列を含む、実施形態22〜25のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
26. マトリプターゼ遺伝子のエキソン2中に突然変異を含む、実施形態22に記載の哺乳動物細胞。
27. マトリプターゼ遺伝子のプロモーター、5'UTR、または3'UTR中に突然変異を含む、実施形態22に記載の哺乳動物細胞。
28. 前記マトリプターゼが、対照と比較してその活性を減少させる突然変異を含む、実施形態22に記載の哺乳動物細胞。
29. 前記マトリプターゼが、触媒ドメイン中に突然変異を含む、実施形態28に記載の哺乳動物細胞。
30. 前記哺乳動物細胞中の内在性ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)が欠損している、実施形態1〜29のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
【0176】
31. 前記哺乳動物細胞中の内在性ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)が有効(competent)である、実施形態1〜29のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
32. 前記gHの複合体形成性断片が全長gHタンパク質のシグナル配列を含まない、実施形態1〜31のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
33. 前記gHの複合体形成性断片が全長gHタンパク質の膜貫通ドメインを含まない、実施形態1〜32のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
34. 前記gHの複合体形成性断片が全長gHタンパク質のエクトドメインを含む、実施形態1〜33のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
35. 前記gHが、配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択される配列を含む、実施形態1〜34のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
36. 前記gHの複合体形成性断片が、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;かつ(ii)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5からの少なくとも1つのエピトープを含む、実施形態1〜35のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
37. 前記gLの複合体形成性断片が全長gLタンパク質のシグナル配列を含まない、実施形態1〜36のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
38. 前記gLが、配列番号6、7、8、および9からなる群より選択される配列を含む、実施形態1〜37のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
39. 前記gLの複合体形成性断片が、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;かつ(ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9からの少なくとも1つのエピトープを含む、実施形態1〜38のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
40. 前記pUL128の複合体形成性断片が全長pUL128タンパク質のシグナル配列を含まない、実施形態1〜39のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
【0177】
41. 前記pUL128が、配列番号10、11、12、および13からなる群より選択される配列を含む、実施形態1〜40のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
42. 前記pUL128の複合体形成性断片が、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;かつ(ii)配列番号10、配列番号11、配列番号12、または配列番号13からの少なくとも1つのエピトープを含む、実施形態1〜41のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
43. 前記pUL130の複合体形成性断片が全長pUL130タンパク質のシグナル配列を含まない、実施形態1〜42のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
44. 前記pUL130が、配列番号14、15、および16からなる群より選択される配列を含む、実施形態1〜43のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
45. 前記pUL130の複合体形成性断片が、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;かつ(ii)配列番号14、配列番号15、または配列番号16からの少なくとも1つのエピトープを含む、実施形態1〜44のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
46. 前記pUL131の複合体形成性断片が全長pUL131タンパク質のシグナル配列を含まない、実施形態1〜45のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
47. 前記pUL131が、配列番号17、18、19、および20からなる群より選択される配列を含む、実施形態1〜46のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
48. 前記pUL131の複合体形成性断片が、(i)五量体gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体の一部分を形成し;かつ(ii)配列番号17、配列番号18、配列番号19、または配列番号20からの少なくとも1つのエピトープを含む、実施形態1〜47のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
49. 前記五量体複合体が可溶性である、実施形態1〜48のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
50. 前記五量体複合体が宿主細胞から分泌される、実施形態1〜49のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞。
【0178】
51. 実施形態1〜50のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞を含む大規模培養物であって、少なくとも20リットルのサイズである、上記大規模培養物。
52. 実施形態1〜51のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞を含む大規模培養物であって、少なくとも50リットルのサイズである、上記大規模培養物。
53. CMV五量体複合体の収率が少なくとも0.05g/Lである、実施形態51または52に記載の大規模培養物。
54. CMV五量体複合体の収率が少なくとも0.1g/Lである、実施形態51または52に記載の大規模培養物。
55. 実施形態1〜50のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞、または実施形態51〜54のいずれか1つに記載の大規模培養物により生成されるサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体。
56. 実施形態55に記載の五量体複合体を含む組成物。
57. サイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体を生成するプロセスであって、該五量体複合体が、gHまたはその複合体形成性断片、gLまたはその複合体形成性断片、pUL128またはその複合体形成性断片、pUL130またはその複合体形成性断片、およびpUL131またはその複合体形成性断片を含み;
該方法が以下のステップ:
(i)好適な条件下で実施形態1〜50のいずれか1つに記載の哺乳動物細胞を培養し、それにより該五量体複合体を発現させるステップ;および
(ii)培養物から該五量体複合体を回収するステップ
を含む、上記プロセス。
58. 前記五量体複合体を精製するステップをさらに含む、実施形態57に記載のプロセス。
59. 実施形態57または58に記載のプロセスにより生成されたサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体。
60. 実施形態59に記載の五量体複合体を含む組成物。
【0179】
61. 前記五量体複合体が少なくとも95質量%の純度を有する、実施形態56または60に記載の組成物。
62. アルミニウム塩またはMF59などのアジュバントをさらに含む、実施形態61に記載の組成物。
63. CMVに対する免疫応答の誘導での使用のための、実施形態61または62に記載の組成物。
64. 前記五量体複合体が免疫原性である、実施形態55に記載のサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体。
65. 前記五量体複合体に対する抗体が中和抗体である、実施形態64に記載のサイトメガロウイルス(CMV)五量体複合体。