特許第6688308号(P6688308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688308自動車、および、自動車の製造のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688308
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】自動車、および、自動車の製造のための方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   B60R16/02 621B
   B60R16/02 620B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-542284(P2017-542284)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公表番号】特表2017-533146(P2017-533146A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2015074360
(87)【国際公開番号】WO2016071111
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】102014222441.1
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーマイアー・アントン
(72)【発明者】
【氏名】トロッファー・フランツ
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−328460(JP,A)
【文献】 特開2001−233144(JP,A)
【文献】 特開2013−100022(JP,A)
【文献】 特開平07−203614(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0239663(US,A1)
【文献】 特開平11−28990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、特に、乗用車であって、
コクピットモジュール(2)内に設けられたマルチメディア制御装置(3)としての制御装置(3)と、
前記制御装置(3)を前記自動車の車内配線に接続するためのケーブルハーネス(4)であって、少なくとも1つのデータケーブル及び/または電源ケーブルを備えるケーブルハーネス(4)とを有し、
前記制御装置(3)が、前記ケーブルハーネス(4)の電気的な接触のための、少なくとも1つの接続部を有している自動車において、
前記接続部が、前記制御装置(3)の、前記自動車の室内の方に向けられた側に設けられていることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記制御装置(3)は、前記コクピットモジュール(2)の中央部分内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車。
【請求項3】
前記制御装置(3)は、組込みフレーム(5)を用いて、前記コクピットモジュール(2)のキャリア構造と結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車。
【請求項4】
前記制御装置(3)は、直接的に、前記コクピットモジュール(2)の前記キャリア構造と結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車。
【請求項5】
前記制御装置(3)は、車両横方向に延在する旋回軸線(9)を中心として、旋回可能に、前記コクピットモジュール(2)の前記キャリア構造と結合されていることを特徴とする請求項またはに記載の自動車。
【請求項6】
前記コクピットモジュール(2)は、このコクピットモジュールの、自動車の室内の方に向けられた側に、インストルメントパネル(6)を有しており、
インストルメントパネル(6)が、組立部品、特に、カバー部材(8)を備えており、 組立部品(8)が、少なくとも、開放された状態、および、閉鎖された状態を有しており、
前記組立部品(8)が、前記開放された状態において、前記インストルメントパネル(6)の開口部(7)を解放し、且つ、
前記組立部品(8)が、前記閉鎖された状態において、前記インストルメントパネル(6)の前記開口部(7)を覆い、
前記開放された状態において、前記ケーブルハーネス(4)の電気的な接触のための、前記制御装置(3)の少なくとも1つの接続部が、自動車の室内からアクセス可能である、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の自動車。
【請求項7】
自動車、特に、乗用車の製造のための方法であって、
以下の、
− コクピットモジュール(2)を事前組み立てし、
− 車内配線と、この車内配線にマルチメディア制御装置(3)としての制御装置(3)を接続するための、少なくとも1つのデータケーブル及び/または電源ケーブルを備えたケーブルハーネス(4)とを有する、自動車のボディーシェルを組み付け、
− 前記自動車のボディーシェル内に前記コクピットモジュール(2)を組込み且つ前記ボディーシェルに前記コクピットモジュール(2)を結合する、
ステップを有する方法において、
更に、
− 前記ケーブルハーネス(4)の電気的な接触のための、前記制御装置(3)の接続部を有する当該制御装置(3)の側が前記自動車の室内の方に向けられているようにして、前記コクピットモジュール(2)内に、特にコクピットモジュール(2)の中央部分内に前記制御装置(3)を装着し、
− 前記制御装置(3)の接続部に前記ケーブルハーネス(4)を接続する、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記コクピットモジュール(2)の事前組み立てのステップは、前記コクピットモジュール(2)内に、特にコクピットモジュールの中央部分内に、前記制御装置(3)を装着するステップを含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に従う、自動車、特に、乗用車、並びに、請求項8の上位概念に従う、自動車の製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車およびトラックのような自動車の、前方の内側フロント部分に設けられているエレメントは、全体としてコクピットと称されることが多い。
コクピットは、操作エレメントおよび表示エレメント(例えば、計器板の表示計器)、装飾エレメント(例えば、カバー部材)、物置エレメント(例えば、グローブボックス、または、灰皿)、および、更に別のエレメントを備えている。このコクピットの部分に設けられる多数のエレメントは、自動車の製造の際に、先ず、別のプリアセンブリ(事前組み立て)場所で、いわゆるコクピットモジュールに組み立てられる。
【0003】
同様に、自動車の電気的な制御装置もコクピットの部分に設けることが公知である。これは、特に次のような制御装置において顕著である。すなわち、自動車の運転者または運転助手にとって、走行中に制御装置の操作エレメントおよび表示エレメントにすぐ手が届かなければならないような制御装置である。例えば、コクピットには、規格化された大きさのラジオ機器を収容するためのいわゆるDIN(ドイツ工業規格)スロット(DIN−Schacht)を設けることがずっと一般的であった。
典型的には、そのようなラジオ機器は、ラジオ機器の前面側に、操作エレメントおよび表示エレメント、並びに、サウンド記憶媒体(例えば、音楽カセット、または、コンパクトディスク)を収容するための開口部を有し、さらに、ラジオ機器の背面側に、スピーカーケーブルおよびアンテナケーブルのための電気的な接続部を有している。ラジオ機器は、これらのケーブルと接続されてスロット内へと押し込まれることで、ラジオ機器の前面側がDINスロットを囲むコクピット表面と面一で終わるようになっていた。
【0004】
最新式の自動車では、マルチメディア制御装置がよく使用される。このマルチメディア制御装置の機能範囲は、従来のラジオ機器のものをはるかに凌駕する。例えば、この種のマルチメディア制御装置は、電話機能およびナビゲーション機能を備えている。また
、マルチメディア制御装置と接続された操作エレメントおよび表示エレメントも、もはやこのマルチメディア制御装置の前面側にそのまま設けられていないことが多く、むしろ、コクピットの他の位置に設けられている。それにも拘らず、マルチメディア制御装置は、今日でも基本的には従来のラジオ機器に関して先に述べたようにして自動車内に組み付けられている。即ち、先ず、マルチメディア制御装置の背面側に存在する接続部に接続ケーブルが接続される。
オーディオケーブルおよびアンテナケーブル以外に、データケーブルも接続されることが多く、これらが、例えばマルチメディア制御装置を別の操作エレメントおよび表示エレメントに接続する。次に
、マルチメディア制御装置は、コクピット内の、当該マルチメディア制御装置のために設けられたスロット内に押し込まれることで、前面側が、スロットを囲むコクピット表面と概ね面一で終端し、通常は、マルチメディア制御装置の前面側を覆うエレメント、例えば、デコレーションパネルのための十分なスペースがさらに設けられる。この従来技術は、例えば、出願人から販売された、3シリーズの車両モデルによって形成されるが、この車両モデルは、後で、添付の図との関連において更に詳細に説明される。
【0005】
従来技術による、自動車内におけるマルチメディア制御装置の上述の構成、および、上述の組み立て方法は、多くの欠点を有している。
第1の欠点は、マルチメディア制御装置の接続部に対して必要とされるケーブルを備えたケーブルハーネスが、少なくとも、このマルチメディア制御装置の組み付けの際にケーブルハーネスを組込みスロットから引き出せる程度に長くなければならないことにある。このケーブルハーネスがマルチメディア制御装置と接続され、このマルチメディア制御装置が組込みスロット内へと押し込まれると、このケーブルハーネスは、つまりは必要以上に長い。そのため、このケーブルハーネスの余分の長さのために、制御装置の後方に他に使い道のない空間を空けたままにしておかなければならず、これがまた欠点になる。
特に、この従来技術の欠点は、マルチメディア制御装置を事前組み立ての際にコクピットモジュール内へ組み込むんでおくことができない点にある。何故なら、マルチメディア制御装置は、マルチメディア制御装置の背面側で、(通常は、既に、自動車のボディーシェル内に敷設されている)ケーブルハーネスと先ず接続されなければならないこともまだあるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
この種の装置に関して、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底をなす課題は、コクピット部における既存の組み立てスペースを余すことなくもっと上手く利用し、ケーブルハーネスの必要とされる長さを短縮できる自動車を提供することである。更に、この課題は、自動車の製造のための、改善された方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する自動車、並びに、請求項8の特徴を有する方法によって解決される。有利な更なる構成は、従属請求項の対象である。
【発明の効果】
【0009】
冒頭に記載した様式の自動車、特に、乗用車は、
コクピットモジュール内に設けられた制御装置と、
前記制御装置を前記自動車の車内配線(ワイヤハーネス)(Boardnetz)に接続するためのケーブルハーネスであって少なくとも1つのデータケーブル及び/または電源ケーブルを備えるケーブルハーネスとを有し、
その際、前記制御装置が、前記ケーブルハーネスの電気的な接触のための、少なくとも1つの接続部を有している。
本発明によれば、この接続部は、制御装置の、自動車の室内の方に向けられた側に設けられている。換言すれば、ケーブルハーネスは、もはや(車両前部の方に向けられた)背面側においてではなく、むしろ(車両室内の方に向けられた)制御装置の前面側において接続される。
換言すれば、本発明の核心は、制御装置の組込み姿勢を、この制御装置の垂直軸線周りに180°回転することにある。即ち、制御装置そのものは、本発明に切り換えるために変更が加えられる必要はない。
【0010】
従来技術において公知の、コクピット部における制御装置の組込み姿勢の原因となった前提条件が、技術的な進捗によって無くなったことに発明者は気付いた。
第一に、先に記載したように、コクピット部内に設けられた制御装置の操作エレメントおよび表示エレメントは、制御装置の一体的な組立部品では既にないのが普通で、その代わり、切り離されて設けられ、データ配線を用いて制御装置に接続される。制御装置の前面側が、組込みスロットを囲むコクピット表面と概ね面一で終端するようにしてコクピット部に制御装置を配設する他の理由は、この制御装置が、サウンド記憶媒体およびデータ記憶媒体、特に、CD、および、DVDを収容するように構成されていたことにある。しかしながら、この種のサウンド記憶媒体およびデータ記憶媒体の重要性が減りつつあることから、この前提条件も同様に無くなった。
【0011】
制御装置が、接続部を、自動車の室内の方に向けられた側において(即ち、この制御装置の前面側に)有するというやり方で、従来技術におけるケーブルハーネスの余分なケーブル長さのために必要なスペースはなくすことができるか或いは他の使い方ができる。更に、このケーブルハーネスは、制御装置の接続の際に、もはや、組込みスロットから引き出される必要はない。即ち、ケーブルハーネスを、組み付けの目的のために、この制御装置の組み付けられた状態において必要である寸法よりも長く寸法設定することは、もはや必要ではない。
上記の代わりに、このケーブルハーネスの長さは、最終的な組込み姿勢が必要とする程度に長さを寸法設定することができる。本発明により、即ち、ケーブルハーネスの長さが長いことに起因する重量、および、起因するコストを削減することが可能になる。
【0012】
本発明は、更に、コクピット部における制御装置を、比較的柔軟に設けることを可能にする。例えば、制御装置は、更に後方へと(即ち、車両前面の方向に)移動することができる。これによって、コクピット部を開発する際に形状変更する余地を比較的大きくできる。
特に、目にすることのできるコクピット部の形状を変更する際に従前より存在する制限は無くなる。
【0013】
有利には、制御装置は、マルチメディア制御装置である。最新式の自動車のマルチメディア制御装置は、先に記載したように、多数の機能を備えている。これらの機能は、ラジオ信号およびテレビ信号の受信、並びに、サウンド記憶媒体またはデータ記憶媒体の読み取り、および、場合によっては書き込み、オーディオ信号の出力、操作エレメントおよび表示エレメント、電話機能、ナビゲーション機能の制御、を含んでいる。
しばしば、このマルチメディア制御装置は、いわゆる、リアシートエンターテイメント、即ち、後部座席の乗客に提供する娯楽用電子機器エレメントのための中央制御装置をも具現する。このマルチメディア制御装置は、今日的な自動車における上記の機能規模のゆえに、コクピット部に組み込まれる最も大きな制御装置の1つである。
本発明は、従って、特に有利には、このマルチメディア制御装置に対して適用可能である。本発明は、即ち、コクピットモジュールにおけるマルチメディア制御装置の組込み場所を、以前よりも柔軟に選択することを可能にする。この組込み場所において、マルチメディア制御装置は、本発明に従い組み込むことができ、その後、ケーブルハーネスをこのマルチメディア制御装置に接続することができる。過剰なケーブルハーネスの長さを収容するための、本発明がなければ必要になる組み立てスペースは省くことができるので、マルチメディア制御装置の組込みには、全体的に、より少ないスペースが必ず設けられることになる。
【0014】
本発明の更に有利な構成において、制御装置は、コクピットモジュールの中央部分に設けられている。
典型的に、運転者、および、運転助手にとって視認可能、もしくは、アクセス可能であるべき操作エレメントおよび表示エレメントは、コクピットの中央部分に設けられている。これには、例えば、ラジオ機器、および、空調装置の操作エレメントおよび表示エレメントが含まれる。そのため、先に記載したように、従来ではこういった操作エレメントおよび表示エレメントを有する制御装置、特に、ラジオ機器は、やはり中央部分に装着されていた。しかし、
コクピット部に格納すべきエレメントの数が増えるにつれて、また、制御装置の大きさが大きくなるにつれて、この中央部分において使用できるスペースはぎりぎりになる。そのため、従来の方法で組み付けられた制御装置は、コクピット部の形状を変更する際における自由度を制限するように働く。中央部分における制御装置に対して、特に、マルチメディア制御装置に対して本発明が適用されることで、この中央部分は、比較的柔軟に構成することができる。例えば、運転者に小物入れを提供することができる。この小物入れのために、従来は如何なるスペースも無かった。
【0015】
有利には、制御装置は、組込みフレームを用いて、コクピットモジュールのキャリア構造と結合されている。
先に記載したように、別の事前組み立て場所において組み付けられるコクピットモジュールは、キャリア構造を備えている。このキャリア構造がまた、一方にクロスビームを備えていてもよく、このクロスビームが車両ボディーシェルに固定されて、コクピットモジュールをボディーシェルに結合する。
このクロスビームは、金属から構成することができる。更に、このキャリア構造は、機能キャリア(Funktionstraeger)と称されるエレメントを備えていることもあるが、このエレメントには、コクピットモジュールの更に別のエレメントを固定することができる。この機能キャリアは、プラスチックから構成することができる。
このコクピットモジュールのキャリア構造は、異なる車両モデル間において、その具体的な構成がかなり違っていることがある。それにも拘らず、所定の制御装置モデルを、可能な限り柔軟に、異なる車両モデルに組み込み可能とするために、組込みフレームが有利である。その際、コクピットモジュールのキャリア構造における固定用の組込みフレームのエレメントは、それぞれの車両モデルに応じて異なるように構成することができるのに対して、制御装置の固定用の組込みフレームのエレメントは、変わらないように構成することができる。更に、組込みフレームを使用することで、例えば、交換時における制御装置の事後的な取り出しが容易になる。
【0016】
選択的な実施形態において、制御装置は、コクピットモジュールの前記キャリア構造と直接的に結合されている。
その場合には、如何なる組込みフレームも使用されない。この実施形態は、組込みフレームの先に記載した利点がさほど重要でない一方で材料および重量の節約に特に注意が払われる場合に推奨される。
【0017】
本発明の特に有利な更なる構成において、制御装置は、車両横方向に延在する旋回軸線を中心として旋回可能にコクピットモジュールのキャリア構造と結合されている。
先に記載したように、結合は、組込みフレームを用いて間接的にまたは直接的に行うことができる。制御装置が旋回可能であることで、組み付けの際の、特に制御装置へのケーブルハーネスの接続のステップの際の組込み姿勢とは、最終的な組込み姿勢が異なっているようにできる。換言すれば、組み付けの際の制御装置は、例えば、概ね水平の組込み姿勢にあるのでもよい。
ケーブルが接続された状態にあるときに、この制御装置は、制御装置が例えば概ね傾けられた姿勢をとるように旋回することができる。このようにして、コクピットモジュールにおいて使用できるスペースを更に柔軟に利用すること、そして、それにも拘らず制御装置の最適な組み付け位置を保証することが可能になる。
【0018】
更なる特別な実施形態において、コクピットモジュールは、このコクピットモジュールの、自動車の室内の方に向けられた側に、インストルメントパネルを有しており、
このインストルメントパネルが、組立部品、特に、カバー部材を備えており、
この組立部品が、少なくとも、開放された状態、および、閉鎖された状態を有しており、
前記組立部品が、前記開放された状態において、前記インストルメントパネルの開口部を解放し、且つ、
前記組立部品が、前記閉鎖された状態において、前記インストルメントパネルの前記開口部を覆い、
前記開放された状態において、前記ケーブルハーネスの電気的な接触のための、前記制御装置の少なくとも1つの接続部が、自動車の室内からアクセス可能とされている。
換言すれば、ケーブルハーネスのための制御装置の接続部は、インストルメントパネルの開口部を介して、必ずアクセスできることになる。このことは、組み付けの目的のためと同様に、事後的な診断および修理の目的のためにも有利である。この組立部品は、例えば、スイッチ、操作ノブ、または、コントロール照明器具のような、操作エレメント及び/または表示エレメントを備えている。この開口部を、簡単な方法で、開放、もしくは、閉鎖可能とするために、組立部品として、カバー部材、特に、デコレーションパネルを使用することもしかしながら有利である。
この実施形態における、本発明の重要な利点は、カバー部材が、少なくとも、制御装置の大きさをもはや有している必要がないことにある。むしろ、このカバー部材が、ケーブルハーネスのために制御装置の接続部にアクセスできるのに十分な大きさであれば足りる。即ち、本発明によれば、コクピットモジュール(このコクピットモジュールのインストルメントパネルをも含めて)を車両ボディーシェルと先ず結合すること、そして、その後やっと制御装置をケーブルハーネスと接続すること、そして、インストルメントパネルにおける開口部を通してコクピットモジュール内へと押し込むことは、もはや必要ではない。むしろ、この制御装置は、インストルメントパネルの組込みの前に、早々とコクピットモジュール内へと組み込むことができる。
このコクピットモジュールを車両ボディーシェル内へと組み込んだら、後はケーブルハーネスを制御装置に単に接続すればよいだけである。その後、この組立部品は、閉鎖された状態に変更される。こうして、例えばこのカバー部材が開口部に固定される。修理する場合、例えば、ケーブルハーネスの制御装置との電気的な接続に欠陥があると推測される場合、接続部へのアクセスを得るために、このカバー部材を開放しさえすればよい。
【0019】
自動車、特に、乗用車の製造のための、冒頭に記載した様式の方法は、以下のステップ、即ち、
− コクピットモジュールの事前組み立て(プリアセンブリ)、
− 車内配線と、この車内配線に制御装置を接続するためのケーブルハーネスであって、少なくとも1つのデータケーブル及び/または電源ケーブルを備えたケーブルハーネスと、を有する、自動車のボディーシェルの組み付け、
− 前記自動車のボディーシェル内への、前記コクピットモジュールの組込み、および、前記ボディーシェルとの前記コクピットモジュールの結合、
のステップを有する。
初めの二つのステップが、記載された順序で行われる必要は無く、むしろ、互いに依存せずに、即ち、例えば、平行しても、または、逆の順序でも実施され得ることは、自明のことである。
【0020】
最新式の自動車の全ての車内配線は、数千メートル(mehreren tausend Metern)の全長を有するケーブルから成っている。従って、これらのケーブルは、車両組み立ての際に、通常は、極めて早期の段階において敷設され、続いて、車内配線に接続された、自動車の種々の制御装置に順次接続される。
【0021】
効率の理由から、自動車の比較的大きなモジュール、即ち、例えば、コクピットモジュールは、できるだけ大規模に別の事前組み立て場所において組み付けられ、まとまったものとして本来の組み立てラインに引き渡される。既に記載された理由から、制御装置は、予めコクピット事前組み立ての際にコクピットモジュール内へと組み込まれるのではない。制御装置の組込みは、むしろケーブルハーネスが制御装置に接続されてから主組み立てラインにおいて行われる。
【0022】
本発明に従い、この方法は、以下の、更に別の、
− ケーブルハーネスの電気的な接触のための制御装置の接続部を有する当該制御装置の側が自動車の室内の方に向けられているように、
コクピットモジュール内、特に、このコクピットモジュールの中央部分内に制御装置を装着し、
− 前記制御装置の接続部に前記ケーブルハーネスを接続する、
ステップを有する。

特徴を示す二つの方法ステップが上記の順に実施されることが分かる。
この順序に、まさに本発明の工程的な形態(Auspraegung)による本発明の本質がある。即ち、従来技術においては、先ず制御装置が接続され、次にコクピットモジュール内に装着されるのに対して、本発明によれば、先ず制御装置が組み付けられ、次にケーブルハーネスが接続される。従って、(最終的な組み付け状態における)ケーブルハーネスの如何なる余分な長さも要らない。
更なる利点は、組み付けを実施する作業者がケーブルハーネスを接続している間、作業者が片手で制御装置を保持する必要が無いことにある。むしろ、この方法の発明によれば、制御装置がコクピットモジュール内の固定された位置にあるため、作業者にとってケーブルハーネスの接続がかなり楽なものにされている。
【0023】
この方法の特に有利な更なる構成において、コクピットモジュールの事前組み立てのステップは、前記コクピットモジュールにおいて、特に、このコクピットモジュールの中央部分に制御装置を装着するステップを含む。
換言すれば、この制御装置は、事前組み立て場所において既にコクピットモジュール内に装着されている。通常は、この事前組み立て場所においてインストルメントパネルが装着され、その際、ケーブルハーネスのための、制御装置の接続部へのアクセスを可能にする開口部は、開いたままである。組み立てラインでは、あとはケーブルハーネスが制御装置に接続され、この開口部が組立部品、例えばカバー部材で閉鎖されるだけでよい。
【0024】
以下で、本発明の更なる実施形態を、例示的な図に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術によるコクピット部の斜視図である。
図2】従来技術によるコクピットモジュールの中央部分の断面図である。
図3】第1の実施形態によるコクピットモジュールの中央部分の断面図である。
図4】第2の実施形態によるコクピットモジュールの中央部分の断面図である。
図5】第3の実施形態によるコクピットモジュールの中央部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
同じ参照符号は、図において本発明の図示された実施形態の同じ特徴を示す。図示された図並びに関連する説明が、単に本発明の実施例にだけ関する問題であることを指摘しておく。特に、図、及び/または、図の説明における、特徴を組み合わせた記述は、全ての上記特徴の実現を本発明が必ず必要とするという意味で捉えられるべきではない。本発明の他の実施形態は、より少ない、より多い、及び/または、他の、特徴を収受可能である。本発明の保護範囲、および、開示内容は、添付の請求の範囲、全ての説明から与えられる。
【0027】
図1は、従来技術によるコクピット部1の斜視図を示している。このコクピット部は、ここでは、出願人から販売された3シリーズモデルの車両によって形成される。図2は、図1内に示された切断線A−Aに沿っての、このコクピット部1の断面図を示している。ここで違うのは、開口部7を通してマルチメディア制御装置3を覗けるように図1では図示を省略されたカバー部材8が、図2では図示されていることである。
【0028】
コクピット部1は、コクピットモジュール2を備えており、このコクピットモジュールが、別の事前組み立て場所において製造され、その後、車両ボディーシェルと結合される。
図1および2には、同様に、コクピット部1の下側の中央部分も図示されており、この中央部分内に、灰皿、飲み物容器ホルダー、および、アームレストがある。この部分には、同様に、シフトチェンジレバー、および、ハンドブレーキレバーも設けられているが、ただしこれらは図1および2に図示されていない。記載された下側の中央部分は、コクピット部1の一部であるが、コクピットモジュール2の一部であってもよい。このことは、しかしながら、必ずそうでなければならないというものでもない。換言すれば、この下側の中央部分は、コクピット事前組み立て場所でコクピットモジュール2の部分として組み付けられるものでは必ずしもなく、その代わりに、本来の車両組み立てラインにおいても、組み付けることができる。
【0029】
コクピットモジュール2のインストルメントパネル6内における開口部7は、図1では、組込みフレーム5内に組み付けられたマルチメディア制御装置3を妨げなく見れるようにしている。図2では、カバー部材8がこの開口部7を閉鎖している。図示された実施例では、デコレーションパネルではなく、操作要素を備える組立部品8である。
【0030】
インストルメントパネル6の上側の部分には、インジケータ面が看取できる。従って、マルチメディア制御装置3は、それ自身は如何なるインジケータ面も有していないことが分かる。とはいえ、図1において、このマルチメディア制御装置3は、このマルチメディア制御装置の上側の部分に、CD、または、DVD形式でのサウンド記憶媒体またはデータ記憶媒体を収容するための、長手の開口部を有している。
図2に図示された(且つ、図1に図示されていない)、この開口部7を覆うカバー部材8は、CD−DVD収容スリットの位置に開口部を有しているので、利用者は、CD、または、DVDを挿入することができる。この図2に図示されているように、マルチメディア制御装置3の反対側に、即ち、背面側に、ケーブルハーネス4のデータケーブル、および、電源ケーブルのための接続部があり、この接続部が、マルチメディア制御装置3を自動車の車内配線に接続する。ここで、
車内配線の概念は、広く解釈されるべきであり、特に、自動車の電気的な供給ネットワーク、および、この自動車のデータバスシステムを含み、しかしまた、個別の(即ち、バスシステム、または、供給ネットワーク内に組み込まれていない)電気的な配線も含む。
【0031】
図示されたコクピット部1の組み付けは、先ず、コクピットモジュール2が車両ボディーシェルと結合されるように行われる。次に、事前に予め車両ボディーシェル内に敷設されたケーブルハーネス4が開口部7を通して導かれ、マルチメディア制御装置3に接続される。
この工程は、通常は、車両室内にいる作業員によって実施され、マルチメディア制御装置3を片手で開口部7の近くで保持し、他方の手でケーブルハーネス4をマルチメディア制御装置3の背面側の接続部に接続する。次に、ケーブルハーネス4、および、マルチメディア制御装置3は、開口部7を通して、コクピットモジュール2内へと押し込まれる。この最終的な組込み姿勢において、ケーブルハーネス4は、制御装置3の組込みフレーム5の後ろの、中空空間内に存在する。最後のステップにおいて、この開口部7は、カバー部材8で閉鎖される。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施形態によるコクピットモジュール2の中央部分の断面図を示している。
図2に図示された従来技術に比べると、このマルチメディア制御装置3は、垂直軸線周りに180°回転されている。即ち、このマルチメディア制御装置3の前面側と背面側とが入れ替えられている。
マルチメディア制御装置3の、自動車の室内の方に向けられた側にケーブルハーネス4が接続されていることが看取できる。従って、このマルチメディア制御装置3の背面側に、ケーブルハーネス4を収容するための如何なる中空空間も予め用意される必要がもう無いので、本発明によれば、必要になるスペースが全体的に低減されることになる。
本発明によれば、図2に図示された構成の組付けにおいて、メリットが生じる。即ち、別途のコクピット事前組み立てにおいて、マルチメディア制御装置3を予め組込みフレーム5内に組み付けることができる。車両ボディーシェルにコクピットモジュールを組み付けた後、ケーブルハーネス4は、あとマルチメディア制御装置3に接続しさえすればよいだけである。
これに関して、本実施例では、ケーブルハーネス4のためのマルチメディア制御装置3の接続部は、開口部7を介してアクセスすることができる。このケーブルハーネス4は、後の組込み姿勢ではそれ以上要らなくなる余分長を持たなくてよい。何故ならば、このケーブルハーネスが、もう後方から(即ち、組込みフレームの後ろの位置から)、開口部7を通して車両室内へと導かれる必要がないからである。図3において図示されたカバー部材8は、接続のステップの後に組み付けられて開口部7を閉鎖する。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態によるコクピットモジュール2の中央部分の断面図を示している。
この実施形態において、マルチメディア制御装置3、3′の組込みフレーム5、5′は、車両横方向に延在する旋回軸線9を中心として旋回可能に、コクピットモジュール2のキャリア構造に結合されている。
同様に、このマルチメディア制御装置3、3′を、直接的に、即ち、組込みフレーム5、5′無しに、旋回可能にキャリア構造に設けることは可能であるし且つ本発明に包含されている。
【0034】
マルチメディア制御装置3、3′の組込みフレーム5、5′が旋回可能であるというやり方で、このマルチメディア制御装置3、3′は、異なる位置に移動することができる。
図4において、2つの位置が、重ね合わせて図示されている。組込みフレーム5、5′、および、マルチメディア制御装置3、3′の、それぞれ2つの参照符号は、以下で、第1の位置3′、5′、および、第2の位置3、5を表示するために使用される。マルチメディア制御装置3′の、第1の位置3′、5′において、組込みフレーム5′は、破線で図示されている。
この第1の位置3′、5′において、組込みフレーム5′、および、マルチメディア制御装置3′は、コクピットモジュール2内に取り付けられている。このコクピットモジュール2は、次いで、車両ボディーシェル内に組み付けられる。
図4は、カバー部材8とマルチメディア制御装置3′とが、第1の位置3′、5′においてオーバラップしていることを明確に示している。つまり、マルチメディア制御装置3′が第1の位置3′、5′に存在している限り、このカバー部材8は、組み付けることができない。この第1の位置3′、5′において、ケーブルハーネス4のための、マルチメディア制御装置3′の接続部は、特に良好にアクセス可能である。ケーブルハーネス4がマルチメディア制御装置3′に接続されるとすぐにマルチメディア制御装置3′は旋回することができ、それにより、マルチメディア制御装置は、このマルチメディア制御装置の第1の位置3′、5′から第2の位置3、5に位置替えされる。
組込みフレーム5およびマルチメディア制御装置3の第2の位置3、5は、図4において実線で図示されている。このマルチメディア制御装置3が第2の位置3、5に存在する場合、カバー部材8は、十分なスペースが与えられ、開口部7に組み付けることができる。
この説明された実施形態のメリットは、コクピット部の形状変更の余地、および、使えるスペースが増大されることにある。従って、図4において、カバー部材が、小物入れを形成していることが見て取れ得る。この小物入れのためのスペースは、説明された実施形態における本発明の使用によって提供される。
【0035】
図5は、本発明の第3の実施形態によるコクピットモジュール2の中央部分の断面図を示している。
本発明のこの実施形態において、マルチメディア制御装置3は、コクピットモジュール2の下側の部分に設けられている。同様に、マルチメディア制御装置3とは異なる制御装置3であることも分かる。
制御装置3が−上述で説明された図1から4までにおいてとは異なり−、コクピットモジュール2の上側の中央部分にはもはや設けられていないというやり方で、この上側の中央部分は、更にもっと柔軟に構成することができ、例えば、もっと数が多く、もっと大きな小物入れを有するようにできる。
図5に図示された実施例において、マルチメディア制御装置3は、直接的に、コクピットモジュール2のキャリア構造に固定されている。即ち、如何なる組込みフレームも設けられていない。とはいえ、組込みフレームが設けられても構わない。
【0036】
この実施例において、組み付けは、既に説明されているように行われる。つまり、
制御装置3は、コクピット事前組み立ての際に、コクピットモジュール2内に組み付けられる。このコクピットモジュール2は、次いで、車両ボディーシェルに組み付けられる。
図5において、開口部7が、コクピット部1の下側の中央部分内における開口部7であることが、看取できる。図1および2との関連において既に言及されているように、この下側の部分は、必ずしもコクピットモジュール2の一部ではない。とはいえ、
コクピットモジュール2によって囲まれていないコクピット部1の部分に開口部7があるという図示されたケースは、明らかに本発明に包含されている。ケーブルハーネス4が制御装置3に接続された後に、開口部7は、カバー部材8で閉鎖される。示された実施例において、カバー部材8の上に、更に、飲み物ホルダーを備える、更に別の組立部品が組み付けられている。
【符号の説明】
【0037】
1 コクピット部
2 コクピットモジュール
3、3′ マルチメディア制御装置3
4 ケーブルハーネス
5、5′ 組込みフレーム
6 インストルメントパネル
7 開口部
8 カバー部材
9 旋回軸線
A−A コクピットモジュールの中央部分内における切断線
図1
図2
図3
図4
図5