特許第6688318号(P6688318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688318
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】多重侵入切断アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20200421BHJP
   C12Q 1/6818 20180101ALI20200421BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20200421BHJP
   C12Q 1/6823 20180101ALI20200421BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20200421BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20200421BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20200421BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20200421BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20200421BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C12Q1/6806 Z
   C12Q1/6818 Z
   C12Q1/6876 Z
   C12Q1/6823 Z
   C12Q1/6844 Z
   C12N15/11 Z
   C12N9/00
   G01N21/64 C
   G01N21/64 F
   G01N21/78 C
   G01N33/53 M
【請求項の数】68
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2017-557066(P2017-557066)
(86)(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公表番号】特表2018-520641(P2018-520641A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】US2016030416
(87)【国際公開番号】WO2016179093
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】62/156,043
(32)【優先日】2015年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500169900
【氏名又は名称】ジェン−プローブ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン, パトリック エル.
(72)【発明者】
【氏名】キング, ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ホール, ジェフ
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−502210(JP,A)
【文献】 特表2006−510372(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0122105(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0199936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68−1/6897
C12N 15/00−15/90
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる標的核酸のうちのどれが試験試料中に存在するかを決定する方法であって、
(a)前記試験試料に由来する核酸を含有する反応混合物中で、多重侵入切断アッセイの複数の二次反応を連続的に起こさせるステップであって、それぞれの前記二次反応が異なる温度条件下で活性であり、それぞれの二次反応がただ1つの前記標的核酸に特異的である、ステップ;
(b)それぞれの前記異なる温度条件下で蛍光シグナルの産生について前記反応混合物をモニタリングするステップであって、それぞれの前記異なる温度条件がただ1つの前記二次反応を可能にし、それぞれの前記二次反応が同じ蛍光シグナルを産生する、ステップ;および
(c)それぞれの前記異なる温度条件下、前記反応混合物中で産生された前記蛍光シグナルに基づいて、前記標的核酸のうちのどれが前記試験試料中に存在するかを決定するステップ
を含み、
前記試験試料が多重核酸増幅反応の産物を含み、前記複数の標的核酸のそれぞれが前記多重核酸増幅反応の産物である方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、熱安定性DNAポリメラーゼ酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異なる温度条件のそれぞれが、他とは5℃〜30℃異なる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記異なる温度条件のそれぞれが、他とは5℃〜15℃異なる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)が、それぞれの前記異なる温度条件下、前記反応混合物中で産生された前記蛍光シグナルの量に基づいて、前記標的核酸のうちのどれが前記試験試料中に存在するかを決定することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)が、それぞれの前記異なる温度条件下、前記反応混合物中での前記蛍光シグナルの産生率に基づいて、前記標的核酸のうちのどれが前記試験試料中に存在するかを決定することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
試験試料が第1の標的核酸と、第2の標的核酸の一方または両方を含有するかどうかを決定する方法であって、
(a)(i)前記試験試料、
(ii)前記第1の標的核酸の検出に特異的な第1の侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの第1のセットであって、前記第1の侵入切断アッセイが、一次反応と二次反応とを含み、前記オリゴヌクレオチドの第1のセットが、
前記第1の標的核酸に特異的な第1の侵入プローブ、
前記第1の標的核酸に特異的な第1の一次プローブ、および
第1のFRETカセット
を含む、第1のセット、
(iii)前記第2の標的核酸の検出に特異的な第2の侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの第2のセットであって、前記第2の侵入切断アッセイが一次反応と二次反応とを含み、前記オリゴヌクレオチドの第2のセットが、
前記第2の標的核酸に特異的な第2の侵入プローブ、
前記第2の標的核酸に特異的な第2の一次プローブ、および
第2のFRETカセット
を含み、前記第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分が両方とも同じFRETカセットに結合する場合に、前記ドナー部分からの放出がクエンチされるようなエネルギー移動関係にある前記ドナー部分と前記アクセプター部分とを含み、
前記第1のFRETカセットの前記ドナー部分は、前記第2のFRETカセットの前記ドナー部分と同一である、第2のセット、および
(iv)フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素
のそれぞれを組み合わせることにより反応混合物を調製するステップ;
(b)第1の温度で第1の期間にわたって前記反応混合物をインキュベートするステップであって、前記第1の温度が前記第1の侵入切断アッセイの前記一次および二次反応を可能にし、それにより、前記試験試料が前記第1の標的核酸を含む場合、前記第1のFRETカセットの前記ドナー部分と関連する第1のシグナルが生成される、ステップ;
(c)ステップ(b)中に生成された可能性がある前記第1のシグナルのいずれかを、前記試験試料中の前記第1の標的核酸の存在の指示として測定するステップ;
(d)第2の温度で第2の期間にわたって前記反応混合物をインキュベートするステップであって、前記第2の温度が前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応を可能にし、それにより、前記試験試料が前記第2の標的核酸を含む場合、前記第2のFRETカセットの前記ドナー部分と関連する第2のシグナルが生成される、ステップ;
(e)ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを、前記試験試料中の前記第2の標的核酸の存在の指示として測定するステップ;ならびに
(f)前記試料が前記第1の標的核酸を含有するかどうかを、ステップ(c)で測定された前記第1のシグナルから、および前記試料が前記第2の標的核酸を含有するかどうかを、ステップ(e)で測定された前記第2のシグナルから決定するステップであって、
前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応は、ステップ(d)における前記第2の温度でバックグラウンドシグナルよりも大きいシグナルを実質的に生成せず、
前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応は、ステップ(b)における前記第1の温度でバックグラウンドシグナルよりも大きいシグナルを実質的に生成しない、ステップを含む方法。
【請求項8】
前記第2の侵入切断アッセイの前記一次反応が、ステップ(b)における前記第1の温度またはステップ(d)における前記第2の温度で起こる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の侵入切断アッセイの前記一次反応が、ステップ(b)における前記第1の温度で起こり、ステップ(d)における前記第2の温度では起こらない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の侵入切断アッセイの前記一次反応が、ステップ(d)における前記第2の温度で起こり、ステップ(b)における前記第1の温度では起こらない、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ドナー部分がフルオロフォアである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベートするステップにおける前記第1および第2の温度が5〜30℃異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記インキュベートするステップにおける前記第1および第2の温度が5〜15℃異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(e)が、ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することを含み、それにより、ステップ(d)で生成された前記シグナルの変化率が確立される、請求項7または12に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)が、ステップ(b)中に生成された可能性がある前記第1のシグナルの規模を同定することを含み、
ステップ(f)が、前記同定された規模が前記第1の標的核酸を検出するための規模閾値を超える場合、前記第1の標的核酸が前記試料中に存在すると決定することをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)が、ステップ(b)中に生成された可能性がある前記第1のシグナルの規模を同定することを含み、
ステップ(f)が、前記同定された規模が前記第1の標的核酸を検出するための規模閾値を超えない場合、前記第1の標的核酸が前記試料中に存在しないと決定することをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(e)が、ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することを含み、
それにより、ステップ(d)で生成された前記シグナルの変化率が確立され、
ステップ(f)が、前記変化率が前記第2の標的核酸を検出するための速度閾値を超える場合、前記第2の標的核酸が前記試料中に存在すると決定することをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(e)が、ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することを含み、
それにより、ステップ(d)で生成された前記シグナルの変化率が確立され、
ステップ(f)が、前記変化率が前記第2の標的核酸を検出するための速度閾値を超えない場合、前記第2の標的核酸が前記試料中に存在しないと決定することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記変化率が、時間依存的な変化率である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記変化率が、サイクル依存的な変化率である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の標的を検出するための閾値が閾値速度である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)の前記第1の温度が、ステップ(d)の前記第2の温度よりも高い、請求項7から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(f)において前記第1の標的核酸を検出するための閾値が、閾値規模である、請求項7から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)〜(e)が、ステップ(f)を実施する前に複数回連続的に反復される、請求項7から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
温度依存的多重侵入切断アッセイを実施するためのキットであって、1または複数のレセプタクル中に含有される第1および第2のFRETカセットを含み、前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれが、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれが、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、等価なドナー部分であり、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、キット。
【請求項26】
前記第1および第2のFRETカセットが、単一のレセプタクル中に含有される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一である、請求項25または26に記載のキット。
【請求項28】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一のフルオロフォアである、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一である、請求項25から28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一のクエンチャー部分である、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
1または複数のさらなるレセプタクル中に、第1および第2の一次プローブをさらに含み、前記第1および第2の一次プローブのそれぞれが3’標的ハイブリダイジング配列および5’フラップ配列を含み、
前記第1の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第1の標的核酸の第1の領域と相補的であり、前記第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第2の標的核酸の第1の領域と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が互いに異なり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が、それぞれ、前記第1および第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が互いに異なり、そして
前記第1のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第1の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度が、前記第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第2の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なる、
請求項25から30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜30℃異なる、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜15℃異なる、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記第1および第2のFRETカセットと、前記第1および第2の一次プローブとが単一のレセプタクル中に含有される、請求項31から33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
1または複数のさらなるレセプタクル中に、第1および第2の侵入プローブをさらに含み、前記第1の侵入プローブが前記第1の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第1の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置され、前記第2の侵入プローブが、前記第2の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第2の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置される、請求項31から34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項36】
前記第1および第2のFRETカセットと、前記第1および第2の侵入プローブとが単一のレセプタクル中に含有される、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記FRETカセットまたは前記一次プローブを含有しないレセプタクル中に、フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含む、請求項25から36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、請求項25から37のいずれか一項に記載のキット。
【請求項39】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、請求項25から39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
前記第1および第2のFRETカセットがそれぞれ、溶液中で遊離している、請求項25から41のいずれか一項に記載のキット。
【請求項43】
第1および第2のFRETカセットの混合物を含む、温度依存的多重侵入切断アッセイを実施するための物質の組成物であって、前記FRETカセットのそれぞれが異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれがドナー部分とアクセプター部分とを含み、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が等価なドナー部分であり、
前記第1のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、完全に相補的な第1の5’フラップ配列との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度が、前記第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、完全に相補的な第2の5’フラップ配列との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なり、前記第1および第2の5’フラップ配列が互いに異なり、
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、組成物。
【請求項44】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一のフルオロフォアである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一である、請求項43から45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一のクエンチャー部分である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜30℃異なる、請求項43から47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜15℃異なる、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、請求項43から49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、請求項43に記載の組成物。
【請求項53】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、請求項5に記載の組成物。
【請求項54】
フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含む、請求項43から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれが溶液中で遊離している、請求項43から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
多重侵入切断アッセイにおける2またはそれ超の標的核酸を検出するための反応混合物であって、
(a)第1および第2のFRETカセットがそれぞれ、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、前記第1および第2のFRETカセットがそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が等価なドナー部分である、前記第1および第2のFRETカセット;ならびに
(b)第1および第2の一次プローブがそれぞれ、3’標的ハイブリダイジング配列および5’フラップ配列を含み、
前記第1の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第1の標的核酸の第1の領域と相補的であり、前記第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第2の標的核酸の第1の領域と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が互いに異なり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が、それぞれ、前記第1および第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が互いに異なる、
前記第1および第2の一次プローブ;ならびに
(c)第1の侵入プローブが前記第1の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第1の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置され、第2の侵入プローブが前記第2の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第2の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置される、前記第1および第2の侵入プローブ
を含み、
前記第1のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第1の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度が、前記第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第2の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なり、
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、反応混合物。
【請求項57】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一である、請求項5に記載の反応混合物。
【請求項58】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一のフルオロフォアである、請求項5に記載の反応混合物。
【請求項59】
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一である、請求項5から5のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項60】
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一のクエンチャー部分である、請求項59に記載の反応混合物。
【請求項61】
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜30℃異なる、請求項5から6のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項62】
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜15℃異なる、請求項6に記載の反応混合物。
【請求項63】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、請求項5から6のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項64】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、請求項6に記載の反応混合物。
【請求項65】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、請求項6に記載の反応混合物。
【請求項66】
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、請求項6に記載の反応混合物。
【請求項67】
前記第1および第2のFRETカセットがそれぞれ溶液中で遊離しており、前記第1および第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列がそれぞれ一本鎖状態にある、請求項5から6のいずれかに記載の反応混合物。
【請求項68】
フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含む、請求項5から6のいずれかに記載の反応混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2015年5月1日に出願された米国仮出願番号第62/156,043号の利益を主張しており、その内容は、本明細書によって本明細書中に援用される。
【0002】
分野
本開示は、一般に、バイオテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本開示は、単一チャネル蛍光モニタリングを使用する時間的区別を用いる複数の標的核酸の独立した検出を可能にする多重侵入切断アッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
標的増幅および/またはハイブリダイゼーションに基づくシグナル増幅を使用する特異的核酸配列の検出は、生物、単一ヌクレオチド多型、突然変異などを同定するための柔軟な手法である。核酸増幅技術は、等温増幅(例えば、転写媒介性増幅、または「TMA」)反応、および熱サイクリングを含む反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、または「PCR」)を含む。これらの他に、検出の前に標的コピーレベルを増加させる必要性を迂回することさえできるシグナル増幅反応もある。侵入切断反応は、例示的なシグナル増幅反応の代表である。
【0004】
ハイブリダイゼーションに基づくアッセイにしても、または増幅に基づくアッセイにしても、いくつか、または多くの有益な核酸アッセイは、単一の反応混合物中で複数の標的を検出または定量することができる「多重化」に依拠する。一般的な多重反応は、試験試料中に存在し得る複数の核酸分析物の標的コピーレベルを最初に増加させることを含む。「多重増幅」と一般に呼ばれるこのプロセスの後、増幅された標的の集団塊を検出するか、または異なるリポーター部分で標識されたユニークなプローブを使用する増幅された標的の集団中の個々を検出することが多い。
【0005】
不幸なことに、多重核酸分析を実行する能力には大きな制約がある。例えば、望ましくない副反応には関与しないオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーの開発は複雑であり得る。複数の検出標識の使用も、検出可能な波長の範囲に制限がある分析機器上に異なる検出「チャネル」を必要とし得る。一部の例では、1より多い標的を検出するための単一の検出可能標識の使用は、シグナル生成の原因である標的を同定する能力を損なう。
増幅された核酸の多重検出のために設計されたいくつかのアッセイは、複数の標的核酸の検出のための単一のリポーターに依拠してきた。例えば、米国特許出願公開第2012/0003646A1号は、同一のアクリジニウムエステル標識を担持する異なるプローブを使用した増幅された内部対照(IC)と増幅されたウイルス標的配列との検出を開示した。両方の増幅産物は、単一セットのアッセイ条件下で同時に検出されたが、これは、結果が独立に、またはシグナルの起源を区別する様式で集積されないことを意味する。示差閾値分析を適用して、ICのみ、または組合せとしての内部対照と標的との組合せの存在を確立した。この手法により、ウイルス分析物を検出することができたが、内部対照および分析物に起因する個々の寄与は依然として曖昧であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0003646号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多重核酸検出の歴史を考慮し、およびさらに、多重アッセイを行うための自動化システムへの要求を考慮すれば、現存の選択肢を超えたものが依然として必要とされている。本開示は、単一の検出可能標識のみをモニタリングすることを含む手順において、複数の分析物を検出し、互いに区別することができる手法を提供することによって、これらの必要に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本開示の態様は、複数の異なる標的核酸のうちのどれが試験試料中に存在するかを決定する方法に関する。一態様では、方法は、試験試料に由来する核酸を含有する反応混合物中で、多重侵入切断アッセイの複数の二次反応を連続的に起こさせるステップであって、それぞれの二次反応が異なる温度条件下で活性であり、それぞれの二次反応がただ1つの標的核酸に特異的である、ステップを含む。方法は、それぞれの異なる温度条件下で蛍光シグナルの産生について反応混合物をモニタリングするステップであって、それぞれの異なる温度条件がただ1つの二次反応を可能にし、それぞれの二次反応が同じ蛍光シグナルを産生する、ステップをさらに含む。さらに、方法は、それぞれの異なる温度条件下、反応混合物中で産生された蛍光シグナルに基づいて、標的核酸のうちのどれが試験試料中に存在するかを決定するステップを含む。第1の好ましい実施形態では、試験試料は、核酸増幅反応の産物を含み、それぞれの複数の標的核酸は、核酸増幅反応の産物である。第2の好ましい実施形態では、試験試料は、多重核酸増幅反応の産物を含み、それぞれの複数の標的核酸は、多重核酸増幅反応の産物である。一般的に好ましい実施形態によれば、反応混合物は、熱安定性DNAポリメラーゼ酵素を含む。別の一般的に好ましい実施形態によれば、それぞれの異なる温度条件は、互いに5℃〜30℃異なる。好ましくは、それぞれの異なる温度条件は、互いに5℃〜15℃異なってもよい。別の一般的に好ましい実施形態によれば、決定ステップは、それぞれの異なる温度条件下、反応混合物中で産生された蛍光シグナルの量に基づいて、標的核酸のうちのどれが試験試料中に存在するかを決定することを含む。別の一般的に好ましい実施形態によれば、決定ステップは、それぞれの異なる温度条件下、反応混合物中での蛍光シグナルの産生率に基づいて、標的核酸のうちのどれが試験試料中に存在するかを決定することを含む。
【0009】
別の態様では、開示される手法は、試験試料が第1の標的核酸と、第2の標的核酸との一方または両方を含有するかどうかを決定する方法に関する。方法は、(i)試験試料;(ii)第1の標的核酸の検出に特異的な第1の侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの第1のセットであって、第1の侵入切断アッセイが一次反応と二次反応とを含み、オリゴヌクレオチドの第1のセットが第1の標的核酸に特異的な第1の侵入プローブ、第1の標的核酸に特異的な第1の一次プローブ、および第1のFRETカセットを含む、第1のセット;(iii)第2の標的核酸の検出に特異的な第2の侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの第2のセットであって、第2の侵入切断アッセイが一次反応と二次反応とを含み、オリゴヌクレオチドの第2のセットが第2の標的核酸に特異的な第2の侵入プローブ、第2の標的核酸に特異的な第2の一次プローブ、および第2のFRETカセットを含む、第2のセット;ならびに(iv)フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素のそれぞれを混合することにより、反応混合物を調製するステップから始まる。注目すべきことに、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分が両方とも同じFRETカセットに結合し、第1のFRETカセットのドナー部分が第2のFRETカセットのドナー部分と同一である場合、ドナー部分からの放出がクエンチされるようなエネルギー移動関係にあるドナー部分とアクセプター部分とを含む。方法は、最初に、第1の温度で第1の期間にわたって反応混合物をインキュベートするステップであって、第1の温度が第1の侵入切断アッセイの一次および二次反応を可能にし、それにより、試験試料が第1の標的核酸を含む場合、第1のFRETカセットのドナー部分と関連する第1のシグナルが生成される、ステップをさらに含む。方法は、第1のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第1のシグナルのいずれかを、試験試料中の第1の標的核酸の存在の指示として最初に測定するステップをさらに含む。方法は、第2の温度で第2の期間にわたって反応混合物の第2のインキュベーションを行うステップであって、第2の温度が第2の侵入切断アッセイの二次反応を可能にし、それにより、試験試料が第2の標的核酸を含む場合、第2のFRETカセットのドナー部分と関連する第2のシグナルが生成される、ステップをさらに含む。方法は、第2のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第2のシグナルのいずれかを、試験試料中の第2の標的核酸の存在の指示として測定する第2のステップをさらに含む。最後に、試料が第1の標的核酸を含有するかどうかを、第1の測定ステップにおいて測定された第1のシグナルから、および試料が第2の標的核酸を含有するかどうかを、第2の測定ステップにおいて測定された第2のシグナルから決定するステップがある。一般的に言うと、第1の侵入切断アッセイの二次反応は、第2のインキュベーションステップにおける第2の温度でバックグラウンドシグナルより大きいシグナルを実質的に生成せず、第2の侵入切断アッセイの二次反応は、第1のインキュベーションステップにおける第1の温度でバックグラウンドシグナルより大きいシグナルを実質的に生成しない。1つの好ましい実施形態では、第2の侵入切断アッセイの一次反応は、第1のインキュベーションステップにおける第1の温度で、または第2のインキュベーションステップにおける第2の温度で起こる。例えば、第2の侵入切断アッセイの一次反応は、第1のインキュベーションステップにおける第1の温度で起こってもよく、第2のインキュベーションステップにおける第2の温度で起こらなくてもよい。あるいは、第2の侵入切断アッセイの一次反応は、第2のインキュベーションステップにおける第2の温度で起こってもよく、第1のインキュベーションステップにおける第1の温度で起こらなくてもよい。別の好ましい実施形態では、ドナー部分は、フルオロフォアである。さらに別の好ましい実施形態では、インキュベーションステップにおける第1および第2の温度は、5〜30℃異なる。より好ましくは、インキュベーションステップにおける第1および第2の温度は、5〜15℃異なる。インキュベーションステップにおける第1および第2の温度が5〜30℃または5〜15℃異なるかどうかに関係なく、第2の測定ステップは、第2のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することによって、第2のインキュベーションステップにおいて生成されたシグナルの変化率を確立することを含んでもよい。さらに異なる好ましい実施形態では、第1の測定ステップは、第1のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第1のシグナルの規模を同定することを含んでもよく、決定ステップは、同定された規模が第1の標的核酸を検出するための規模閾値を超える場合、第1の標的核酸が試料中に存在すると決定することをさらに含む。さらに異なる好ましい実施形態では、第1の測定ステップは、第1のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第1のシグナルの規模を同定することを含んでもよく、検出ステップは、同定された規模が第1の標的核酸を検出するための規模閾値を超えない場合、第1の標的核酸が試料中に存在しないと決定することをさらに含む。さらに異なる好ましい実施形態では、第2の測定ステップは、第2のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することによって、第2のインキュベーションステップにおいて生成されたシグナルの変化率を確立することを含んでもよく、決定ステップは、変化率が第2の標的核酸を検出するための速度閾値を超える場合、第2の標的核酸が試料中に存在すると決定することをさらに含む。さらに異なる好ましい実施形態では、第2の測定ステップは、第2のインキュベーションステップ中に生成された可能性がある第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することによって、第2のインキュベーションステップにおいて生成されたシグナルの変化率を確立することを含んでもよく、決定ステップは、変化率が第2の標的核酸を検出するための速度閾値を超えない場合、第2の標的核酸が試料中に存在しないと決定することをさらに含む。一部の実施形態では、第2のインキュベーションステップにおいて生成されたシグナルの変化率が確立される場合、変化率は時間依存的な変化率である。一部の他の実施形態では、第2のインキュベーションステップにおいて生成されたシグナルの変化率が確立される場合、変化率は周期依存的な変化率である。さらに他の実施形態では、第2の標的を検出するための閾値は、閾値速度であってもよい。ある特定の一般的に好ましい実施形態では、第1のインキュベーションステップの第1の温度は、第2のインキュベーションステップの第2の温度より高い。ある特定の一般的に好ましい実施形態では、決定ステップにおいて第1の標的核酸を検出するための閾値は、閾値規模である。ある特定の一般的に好ましい実施形態では、第1のインキュベーションステップおよび測定ステップ、ならびに第2のインキュベーションステップおよび測定ステップは、決定ステップを実施する前に複数回連続的に繰り返される。
【0010】
別の態様では、開示される手法は、試験試料が第1の標的核酸または第2の標的核酸を含有するかどうかを、反応混合物中で実行される多重侵入切断アッセイを用いて決定するためのコンピュータプログラム製品に関する。コンピュータプログラム製品は、コンピュータにいくつかのステップを実行させる非一時的な命令を含む。最初に、多重侵入切断アッセイの反応混合物中のフルオロフォアからの放出を検出する蛍光光度計を用いて、第2の標的核酸ではなく、第1の標的核酸に特異的な第1の侵入切断アッセイの二次反応、および第1の標的核酸ではなく、第2の標的核酸に特異的な第2の侵入切断アッセイの二次反応により生成される蛍光シグナルをモニタリングすることにより、試験データのセットを収集するステップが存在する。第1の侵入切断アッセイは、第1の標的核酸の存在を示すフルオロフォアを使用し、第2の侵入切断アッセイは、第2の標的核酸の存在を示すフルオロフォアを使用する。第1の侵入切断アッセイの二次反応は、第2の侵入切断アッセイの二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第1の温度で進行する。同様に、第2の侵入切断アッセイの二次反応は、第1の侵入切断アッセイの二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第2の温度で進行する。試験データのセットは、第1の侵入切断アッセイの二次反応が実質的に完了した後および第2の侵入切断アッセイの二次反応が実質的に始まる前に測定された第1のバックグラウンドシグナル;ならびに第2の侵入切断アッセイの二次反応が第2の温度で始まった後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナルを含む。次に、試験データのセットの少なくとも1つのさらなるシグナルがどれほど迅速に第1のバックグラウンドシグナルを超えて増大するかを示す速度を算出するステップが存在する。次に、試験データのセットおよび算出ステップの速度と、第1の標的核酸または第2の標的核酸を含まなかった対照反応混合物を、蛍光光度計を用いてモニタリングすることにより生成された結果を含む対照データのセットとを比較するステップが存在する。対照データのセットは、対照バックグラウンドシグナル;一定期間にわたる第2の温度での対照反応混合物のインキュベーション後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナル;および対照データのセットの少なくとも1つのさらなるシグナルがどれほど迅速に対照バックグラウンドシグナルを超えて増大するかを示す算出された速度を含む。最後に、以下の決定のうちの1つを出力するステップが存在する:(i)第1のバックグラウンドシグナルが対照バックグラウンドシグナルより実質的に大きい場合、試験試料は第1の標的核酸を含有する;(ii)第1のバックグラウンドシグナルが対照バックグラウンドシグナルと実質的に同じである場合、試験試料は第1の標的核酸を含有しない;(iii)算出ステップにおいて算出された速度が対照データのセットからの算出された速度を超える場合、試験試料は第2の標的核酸を含有する;および(iv)算出ステップにおいて算出された速度が対照データのセットからの算出された速度を超えない場合、試験試料は第2の標的核酸を含有しない。1つの好ましい実施形態では、出力ステップは、表示デバイスに、決定の有形記録を生成するよう命令することを含む。この場合、算出ステップは、直線の勾配を算出することを含んでもよい。あるいは、表示デバイスはプリンターであってもよく、有形記録は印刷記録であってもよい。一般的に言えば、収集ステップは、試験データのセットに関する数値を受け取ること、次いで、その数値を電子表計算中で選別することを含んでもよい。別の一般的な実施形態によれば、算出された速度は、RFU/分の単位にある。さらに別の一般的な実施形態によれば、算出ステップは、直線の勾配を算出することを含む。好ましくは、算出ステップにおいて算出された速度は、RFU/分の単位にある。さらに別の一般的な実施形態によれば、比較ステップにおいて使用される蛍光光度計は、収集ステップにおいて使用されるものと同じ蛍光光度計である。さらに別の一般的な実施形態によれば、反応混合物は、核酸を増幅し、検出する機器中に配置された反応ベッセル中に含有され、収集ステップはただ1つの温度で実施される。さらに別の一般的な実施形態によれば、コンピュータプログラム製品はコンピュータにロードされ、収集ステップは、1より多い温度で生成された蛍光シグナルを時間の関数としてモニタリングすることによって試験データのセットを収集することを含まない。
【0011】
別の態様では、開示される手法は、コンピュータに特定のステップを実行させる非一時的な命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。最初に、第1の侵入切断アッセイが、反応混合物中のフルオロフォアを使用する、他の二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第1の温度で、反応混合物中で行われる、試験試料中の第1の標的核酸を検出する第1の侵入切断アッセイの二次反応中のフルオロフォアからの放出をモニタリングすることによって蛍光シグナルデータの第1のセットを収集するステップが存在する。蛍光シグナルデータの第1のセットは、反応混合物中のフルオロフォアから増大した蛍光を生成する任意の先行する二次反応が終結した後であるが、第1の侵入切断アッセイの二次反応が実質的に始まる前に決定された第1のバックグラウンドシグナル;および第1の侵入切断アッセイの二次反応が始まった後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナルを含む。次に、第2の侵入切断アッセイが、反応混合物中のフルオロフォアを使用する、他の二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第2の温度で反応混合物中で行われる、試験試料中の第2の標的核酸を検出する第2の侵入切断アッセイの二次反応中のフルオロフォアからの放出をモニタリングすることによって蛍光シグナルデータの第2のセットを収集するステップが存在する。蛍光シグナルデータの第2のセットは、反応混合物中のフルオロフォアから増大した蛍光を生成する任意の先行する二次反応が終結した後であるが、第2の侵入切断アッセイの二次反応が実質的に始まる前に決定された第2のバックグラウンドシグナル;および第2の侵入切断アッセイの二次反応が始まった後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナルを含む。次に、それぞれの、蛍光シグナルデータの第1および第2のセットから、第1の改変されたデータセットおよび第2の改変されたデータセットのそれぞれを調製するステップが存在する。改変された第1のデータセットは、蛍光シグナルデータの第1のセットの少なくとも1つのさらなるシグナルのそれぞれから第1のバックグラウンドシグナルを減算することによって調製される。改変された第1のデータセットは、試験試料中の第1の核酸の存在に起因する蛍光シグナルを示す。改変された第2のデータセットは、蛍光シグナルデータの第2のセットの少なくとも1つのさらなるシグナルのそれぞれから第2のバックグラウンドシグナルを減算することによって調製される。改変された第1のデータセットは、試験試料中の第1の核酸の存在に起因する蛍光シグナルを示す。最後に、それぞれ、改変された第1および第2のデータセットに基づいて、第1の標的核酸および第2の標的核酸のそれぞれの有無を示す結果を出力するステップが存在する。1つの好ましい実施形態では、2つの収集ステップは、それぞれの、蛍光シグナルデータの第1のおよび第2のセットに関する数値を受け取ること、次いで、その数値を電子表計算中で選別することを含む。別の好ましい実施形態では、第1の温度は、第2の温度よりも高い。さらに別の好ましい実施形態では、第1の温度は、第2の温度よりも低い。さらに別の好ましい実施形態では、出力ステップは、表示デバイスに、結果の有形記録を生成するように命令することを含む。例えば、表示デバイスはプリンターであってもよく、有形記録は紙に印刷された記録であってもよい。さらに別の好ましい実施形態では、コンピュータは、第1の温度から第2の温度に反応混合物を複数回サイクリングさせる装置の構成要素である。さらに別の好ましい実施形態では、コンピュータプログラム製品はコンピュータにロードされ、コンピュータは第1の温度から第2の温度に反応混合物を複数回サイクリングさせる装置の構成要素である。
【0012】
別の態様では、開示される手法は、反応混合物中で実行された多重侵入切断アッセイを使用して第1および第2の分析物標的核酸のそれぞれの有無を独立に決定するためのシステムに関する。システムの構成要素は、反応混合物を含有する反応ベッセルを受け取る温度制御されたインキュベータである。温度制御されたインキュベータは、多重侵入切断アッセイの第1の二次反応を起こさせる第1の期間にわたって第1の温度で反応混合物をインキュベートした後、多重侵入切断アッセイの第2の二次反応を起こさせる第2の期間にわたって第2の温度で反応混合物をインキュベートするように構成される。システムの別の構成要素は、それぞれの第1および第2の期間にそれぞれの第1および第2の温度において反応混合物中で生成され得る所定の波長範囲の任意の蛍光シグナルを、単一の検出チャネル中で測定する蛍光光度計である。システムの別の構成要素は、蛍光光度計との連絡にあるコンピュータである。コンピュータは、それぞれの期間に生成された測定された蛍光シグナルの増大と、分析物標的核酸の異なる1つの存在とを関連付けるようにプログラムされる。コンピュータは、第1の期間での任意の測定された蛍光シグナルの増大を、第1の分析物標的核酸の存在と関連付け、第2の分析物標的核酸の存在とは関連付けない。同様に、コンピュータは、第2の期間での任意の測定された蛍光シグナルの増大を、第2の分析物標的核酸の存在と関連付け、第1の分析物標的核酸の存在とは関連付けない。システムの別の構成要素は、それぞれの第1および第2の分析物標的核酸の有無を示す有形記録を生成する、コンピュータと連絡した出力デバイスである。好ましい実施形態では、第1および第2の温度は、5℃〜30℃異なる。1つの一般的に好ましい実施形態によれば、温度制御されたインキュベータは、サーマルサイクラーを含む。別の一般的に好ましい実施形態によれば、温度制御されたインキュベータは、1または複数の温度制御されたチャンバを含む。例えば、それぞれの1または複数の温度制御されたチャンバは、一定の温度を維持することができる。別の一般的に好ましい実施形態によれば、出力デバイスはプリンターであり、出力デバイスにより生成される有形記録は紙に印刷される。別の一般的に好ましい実施形態によれば、温度制御されたインキュベータは複数の温度制御されたチャンバを含み、システムは、複数の温度制御されたチャンバ内での反応ベッセルの位置の変化を指令するコントローラをさらに含む。別の一般的に好ましい実施形態によれば、反応混合物を含有する反応ベッセルは、複数ウェルプレート、個々のチューブ、またはチューブの線形アレイを含む複数チューブユニットのいずれかである。別の一般的に好ましい実施形態によれば、単一の検出チャネルは、ROXの蛍光放出ではなく、フルオレセインの蛍光放出を測定する。別の一般的に好ましい実施形態によれば、単一の検出チャネルは、フルオレセインの蛍光放出ではなく、ROXの蛍光放出を測定する。別の一般的に好ましい実施形態によれば、温度制御されたインキュベータは、第1の期間にわたって第1の温度で反応混合物をインキュベートし、第2の期間にわたって第2の温度で反応混合物をインキュベートする多重侵入切断アッセイに特異的なソフトウェア命令によって構成される。別の一般的に好ましい実施形態によれば、第1の温度は、第2の温度よりも高い。別の一般的に好ましい実施形態によれば、第1の温度は、第2の温度よりも低い。別の一般的に好ましい実施形態によれば、蛍光光度計は、複数の検出チャネルを含み、第1および第2の分析物標的核酸を独立に検出するために、ただ1つの検出チャネルが使用される。
【0013】
他の態様では、本開示は、温度依存的多重侵入切断アッセイを実施するためのキットに関する。キットは、1または複数のレセプタクル中に第1および第2のFRETカセットを含み、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、異なる5’フラップハイブリダイズ配列を有し、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は等価なドナー部分である。ある特定の好ましいキットでは、第1および第2のFRETカセットは、単一のレセプタクル中に含有される。他の好ましいキットでは、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は同一である。例えば、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、同一のフルオロフォアであってもよい。任意選択で、第1および第2のFRETカセットのアクセプター部分は同一である。この場合、第1および第2のFRETカセットのアクセプター部分は、同一のクエンチャー部分であってもよい。任意選択で、キットは、1または複数のさらなるレセプタクル中に、第1および第2の一次プローブを含んでもよく、第1および第2の一次プローブはそれぞれ、3’標的ハイブリダイジング配列および5’フラップ配列を含み、ここで、第1の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は第1の標的核酸の第1の領域と相補的であり、第2の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は第2の標的核酸の第1の領域と相補的であり、第1および第2の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は互いに異なり、第1および第2の一次プローブの5’フラップ配列はそれぞれ、第1および第2のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と相補的であり、第1および第2の一次プローブの5’フラップ配列は互いに異なり、第1のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と、第1の一次プローブの5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度は、第2のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と第2の一次プローブの5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なる。例示的実施形態では、第1および第2のハイブリッドの融解温度は、5℃〜30℃異なる。より好ましくは、第1および第2のハイブリッドの融解温度は、5℃〜15℃異なる。任意選択で、第1および第2のFRETカセットと、第1および第2の一次プローブとは、単一のレセプタクル中に含有される。あるいは、キットは、1または複数のさらなるレセプタクル中に、第1および第2の侵入プローブをさらに含んでもよく、ここで、第1の侵入プローブは、第1の標的核酸の第2の領域と相補的であり、第1の標的核酸の第1および第2の領域は互いに隣接して配置され、第2の侵入プローブは第2の標的核酸の第2の領域と相補的であり、第2の標的核酸の第1および第2の領域は互いに隣接して配置される。例示的な好ましい実施形態では、第1および第2のFRETカセットと、第1および第2の侵入プローブとは、単一のレセプタクル中に含有される。一般に、キットは、FRETカセットまたは一次プローブを含有しないレセプタクル中に、フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含んでもよい。一般に、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す。例えば、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す。一般に、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す。好ましくは、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す。より好ましくは、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す。一般的な例示的実施形態では、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、溶液中で遊離している。
【0014】
別の態様では、開示される手法は、物質の組成物および関連する反応混合物に一般的に関する。例示的実施形態では、組成物は、第1および第2のFRETカセットの混合物を含み、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は等価なドナー部分である。例示的な好ましい実施形態では、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は同一である。例えば、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、同一のフルオロフォアであってもよい。任意選択で、第1および第2のFRETカセットのアクセプター部分は同一である。この場合、第1および第2のFRETカセットのアクセプター部分は同一のクエンチャー部分であってもよい。一般に、第1のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と、完全に相補的な第1の5’フラップ配列との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度は、第2のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と、完全に相補的な第2の5’フラップ配列との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なり、第1および第2の5’フラップ配列は互いに異なる。例示的実施形態では、第1および第2のハイブリッドの融解温度は、5℃〜30℃異なる。より好ましくは、第1および第2のハイブリッドの融解温度は、5℃〜15℃異なる。一般的に言えば、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、好ましくは、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す。例えば、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示してもよい。好ましくは、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す。より好ましくは、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す。さらにより好ましくは、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す。一般的に言えば、組成物、キットおよび反応混合物は、フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含んでもよい。同様に、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、溶液中で遊離していてもよく、第1および第2のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列は、それぞれ一本鎖状態にあってもよい。本開示の他の実施形態は、多重侵入切断アッセイにおいて2またはそれ超の標的核酸を検出するための反応混合物に関する。例示的実施形態では、反応混合物は、第1および第2のFRETカセットを含み、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、第1および第2のFRETカセットのドナー部分は等価なドナー部分であり、反応混合物は第1および第2の一次プローブをさらに含み、第1および第2の一次プローブはそれぞれ、3’標的ハイブリダイジング配列および5’フラップ配列を含み、第1の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は第1の標的核酸の第1の領域と相補的であり、第2の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は第2の標的核酸の第1の領域と相補的であり、第1および第2の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は互いに異なり、第1および第2の一次プローブの3’標的ハイブリダイジング配列は、それぞれ、第1および第2のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と相補的であり、第1および第2の一次プローブの5’フラップ配列は互いに異なり、反応混合物は第1および第2の侵入プローブをさらに含み、第1の侵入プローブは第1の標的核酸の第2の領域と相補的であり、第1の標的核酸の第1および第2の領域は互いに隣接して配置され、第2の侵入プローブは第2の標的核酸の第2の領域と相補的であり、第2の標的核酸の第1および第2の領域は互いに隣接して配置される。本開示による反応混合物の別の例では、第1のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と、第1の一次プローブの5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度は、第2のFRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列と、第2の一次プローブの5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なる。
【0015】
定義
本明細書で使用される用語「試料」とは、目的の分析物(例えば、微生物、ウイルス、遺伝子などの核酸、または分析物中の、もしくはそれに由来する核酸配列を含むその成分)を含有してもよい標本を指す。試料は、生物標本または環境起源などの任意の起源に由来するものであってもよい。生物標本は、分析物または分析物中の、もしくはそれに由来する核酸を含有してもよい生きている生物または死んだ生物に由来する任意の組織または材料を含む。生物試料の例としては、膣スワブ試料、呼吸器組織、滲出液(例えば、気管支肺胞洗浄)、生検、痰、末梢血、血漿、血清、リンパ節、胃腸組織、糞便、尿、または他の流体、組織もしくは材料が挙げられる。環境試料の例としては、水、氷、土壌、スラリー、デブリ、生物膜、浮遊微小粒子、およびエアロゾルが挙げられる。試料は、濾過、遠心分離、沈降化、またはマトリックスもしくは支持体などの媒体への付着を使用することによる試料の処置から得られるものなどの、プロセッシングされた標本または材料であってもよい。試料の他のプロセッシングは、組織、細胞凝集物、または細胞を物理的または機械的に破壊して、核酸を含む細胞内成分を、酵素、緩衝液、塩、界面活性剤などの他の成分を含有してもよい溶液中に放出させるための処理を含んでもよい。ときには、分析物の存在について試験される試料を、「試験試料」と呼んでもよい。
【0016】
本明細書で使用される「侵入切断アッセイ」は、2つの異なる侵入切断構造の酵素的切断によって標的核酸を検出または定量する手順である。侵入切断アッセイのための試薬は、構造特異的5’ヌクレアーゼ;および3つのオリゴヌクレオチド(「侵入プローブ」、「一次プローブ」および「FRETカセット」)を含む。侵入切断アッセイは、単一の反応混合物中で2つの侵入シグナル増幅反応(すなわち、「一次反応」および「二次反応」)を順次組み合わせる。
【0017】
「第1」および「第2」の侵入切断アッセイに対する参照は、一方が他方に先行すると示す必要なしに、一方の侵入切断アッセイと別のものとを区別するための識別子を単に提供するものである。
【0018】
「反応混合物」は、単一の反応ベッセル中の試薬(例えば、オリゴヌクレオチド、標的核酸、酵素など)の組合せである。
【0019】
本明細書で使用される「多重」アッセイは、1回のアッセイの実行において複数の分析物(2またはそれ超)を測定するアッセイの型である。それは、反応混合物あたり1の分析物を測定する手順とは区別される。多重侵入切断アッセイは、単一の反応ベッセル中で、2またはそれ超の異なる侵入切断アッセイのための試薬を組み合わせることによって実行される。好ましくは、同じ種の蛍光リポーターが、それぞれの多重アッセイにおいて検出される。
【0020】
本明細書で使用される用語「侵入切断構造」(または単に「切断構造」)とは、(1)標的核酸、(2)上流核酸(例えば、侵入プローブオリゴヌクレオチド)、および(3)下流核酸(例えば、一次プローブオリゴヌクレオチド)を含む構造を指し、上流および下流核酸は、標的核酸の連続領域にアニーリングし、重複が、上流核酸の3’部分と、下流核酸と標的核酸との間に形成される二本鎖との間で形成される。重複は、上流核酸の重複塩基(単数または複数)が標的核酸と相補的であるかどうかに関係なく、また、これらの塩基が天然の塩基であるか、または非天然の塩基であるかに関係なく、上流および下流核酸に由来する1または複数の塩基が標的核酸塩基に対して同じ位置を占める場合に起こる。一部の実施形態では、下流の二本鎖と重複する上流核酸の3’部分は、例えば、米国特許第6,090,543号に開示された、芳香環構造などの非塩基化学部分である。一部の実施形態では、1または複数の核酸を、例えば、核酸ステムループなどの共有結合を介して、または核酸でない化学的連結(例えば、複数炭素の鎖)を介して、互いに結合させることができる。侵入切断構造はまた、切断された5’フラップがFRETカセットにハイブリダイズするとき(すなわち、「標的核酸」と「下流核酸」とがステムループ構成において共有結結合するとき)に作出される。切断された5’フラップにハイブリダイズするFRETカセットの「標的核酸」配列は、「5’フラップハイブリダイジング配列」と称され得る。
【0021】
本明細書で使用される用語「相補的」とは、二本鎖の水素結合した領域を形成することができる核酸塩基配列を指す。核酸塩基配列は、「完全に相補的」であってもよく(すなわち、1つの配列中のそれぞれの核酸塩基が第2の配列中の対応する核酸塩基と対形成することができる)、またはそれらは「部分的に相補的」であってもよい(すなわち、1つの配列中の少なくとも1つの核酸塩基が、第2の配列中の対応する核酸塩基と水素結合することができない)。核酸塩基配列は、同じか、または異なるポリヌクレオチド中にあってもよい。
【0022】
本明細書で使用される用語「ハイブリッド」とは、二本鎖の水素結合した領域を含む核酸構造を指す。そのような構造は、完全に、または部分的に二本鎖であってもよく、RNA:RNA、RNA:DNAおよびDNA:DNA二本鎖分子ならびにその類似体を含む。例として、「ハイブリッド」は、FRETカセットの相補的5’フラップハイブリダイジング配列にハイブリダイズした切断された5’フラップ配列を含む。
【0023】
本明細書で使用される用語「切断形態」とは、1または複数のヌクレアーゼの作用により、ポリヌクレオチドの残りから切断されたポリヌクレオチドの一部を指す。例として、5’フラップ配列は、一次プローブがエンドヌクレアーゼ(例えば、FEN酵素)により切断された場合、「切断形態」にあり、それによって、一次プローブの標的ハイブリダイジング配列から5’フラップ配列を分離する。
【0024】
本明細書で使用される用語「フラップエンドヌクレアーゼ」または「FEN」(例えば、「FEN酵素」)とは、一本鎖DNAと二本鎖DNAとの間の連結部に重複するヌクレオチドが存在するように、核酸の他方の鎖で置換された一方の鎖上に、一本鎖5’突出部、またはフラップを含有する二本鎖を有するDNA構造に対して構造特異的エンドヌクレアーゼとして作用する核酸分解酵素のクラスを指す。FEN酵素は、一本鎖DNAと二本鎖DNAの連結部の3’側に隣接するホスホジエステル結合の加水分解的切断を触媒し、突出部(overhang)、または「フラップ」を遊離する(Trends Biochem. Sci. 23巻:331〜336頁(1998年)およびAnnu. Rev. Biochem. 73巻:589〜615頁(2004年)を参照されたい)。FEN酵素は、個々の酵素、多サブユニット酵素であってもよく、またはDNAポリメラーゼなどの、別の酵素もしくはタンパク質複合体の活性として存在してもよい。フラップエンドヌクレアーゼは、熱安定性であり得る。本明細書に開示される方法において有用なFEN酵素の例は、米国特許第5,614,402号;第5,795,763号;第6,090,606号;ならびにWO98/23774;WO02/070755;WO01/90337;およびWO03/073067により同定される公開されたPCT出願(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。市販のFEN酵素の特定例としては、Cleavase(登録商標)酵素(Hologic,Inc.)が挙げられる。
【0025】
ポリヌクレオチドを参照して本明細書で使用される用語「一本鎖状態」とは、塩基対形成に利用可能であるポリヌクレオチドの領域を指す。自己相補的領域を有する一本鎖ポリヌクレオチドの場合、用語「一本鎖状態」は、塩基対形成に利用可能である自己相補的ポリヌクレオチドの領域に対する参照である。例として、FRETカセットの5’フラップハイブリダイジング配列は、相補的5’フラップ配列にハイブリダイズする前に一本鎖状態にある。
【0026】
本明細書で使用される用語「プローブ」とは、標的核酸と相互作用して、検出可能な複合体を形成するオリゴヌクレオチドを指す。例としては、侵入プローブおよび一次プローブが挙げられる。「侵入プローブ」とは、一次プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションの領域の近傍の位置で標的核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを指し、侵入プローブオリゴヌクレオチドは、一次プローブオリゴヌクレオチドと標的核酸の間のハイブリダイゼーションの領域と重複する部分(例えば、その標的と相補的であるにしても、またはそうでなくても、化学的部分、またはヌクレオチド)を含む。「一次プローブ」は、標的核酸にハイブリダイズする標的特異的領域を含み、標的核酸と相補的ではない「5’フラップ」領域をさらに含む。
【0027】
本明細書で使用される用語「一次反応」とは、切断された5’フラップが生成される、一次プローブの酵素的切断を指す。切断された5’フラップの配列は、一次プローブの5’フラップ配列(すなわち、標的核酸と相補的ではない配列)であり、一次プローブの標的特異的領域(すなわち、標的核酸と相補的な配列)からその3’末端のある塩基である。
【0028】
本明細書で使用される用語「二次反応」とは、検出可能なシグナルを生成するFRETカセットの酵素的切断(切断された5’フラップのハイブリダイゼーション後の)を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、反応生成物が生成される場合、反応は「活性」である。例えば、必要な成分(例えば、FRETカセット、FRETカセットに特異的な切断された5’フラップ、およびFEN酵素)を含有する反応混合物が、反応混合物中のFRETカセットへの切断された5’フラップのサイクリングハイブリダイゼーションを可能にし、FRETカセットの切断およびドナー部分とアクセプター部分との分離をもたらす温度でインキュベートされる場合、二次反応は活性である。
【0030】
本明細書で使用される場合、一次または二次反応を行うために使用される「温度条件」とは、反応が起こるのを許容する温度、または温度範囲を指す。異なる反応の異なる温度プロファイルは、1つの反応が起こるのを許容する温度条件が、異なる反応が起こるのを許容しないことを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「最適」(およびその文法的変形)反応条件とは、反応が起こるのを促進する、または許容するための最も好ましい反応条件を指す。例えば、二次反応を実施するための最適温度は、FRETカセットが反応混合物中で最も効率的に切断される温度である(例えば、反応温度の関数としてのシグナルノイズ比のプロット上のピークに対応する)。同様に、最適温度範囲は、反応が起こるのを促進する、または許容するための最も好ましい温度条件の範囲である。ある特定の例示的実施形態では、好ましい最適温度範囲は、最適温度プラスまたはマイナス5℃、より好ましくは、プラスまたはマイナス3℃、さらにより好ましくは、プラスまたはマイナス2℃、さらにより好ましくは、プラスまたはマイナス1℃を含んでもよい。
【0032】
本明細書で使用される用語「ドナー」とは、第1の波長で吸収し、第2の、より長い波長で放出する部分(例えば、フルオロフォア)を指す。用語「アクセプター」とは、それがドナー基の近くにある場合(例えば、1〜100nm)、ドナーから放出されたエネルギーの一部または多くを吸収することができる、フルオロフォア、クロモフォア、またはクエンチャーなどの部分を指す。アクセプターは、ドナーの放出スペクトルと重複する吸収スペクトルを有してもよい。一般的には、アクセプターがフルオロフォアである場合、それは第3のさらにより長い波長で再放出する;それがクロモフォアまたはクエンチャーである場合、それは光子を放出することなくドナーから吸収されたエネルギーを遊離する。一部の好ましい実施形態では、ドナーおよび/またはアクセプター部分のエネルギーレベルの変化が検出される(例えば、ドナーおよび/またはアクセプター部分の間またはそれからの、エネルギー移動を測定することによる、例えば、光放出を検出することによる)。一部の好ましい実施形態では、アクセプター部分の放出スペクトルは、ドナー部分の放出スペクトルと異なり、その部分からの放出(例えば、光および/またはエネルギーの)を互いに区別する(例えば、スペクトル分解する)ことができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「結合される」(例えば、2つの物が「結合される」)とは、一緒に化学的に結合されることを意味する。例えば、フルオロフォア部分は、それがFRETカセットの構造に化学的に結合される場合、FRETカセットに「結合される」。
【0034】
本明細書で使用される用語「FRETカセット」とは、ドナーおよびアクセプター部分の、同じFRETカセットへの結合が、検出可能なエネルギー放出(例えば、蛍光放出)を実質的に抑制する(例えば、クエンチする)、ドナー部分と近隣のアクセプター部分とを含むオリゴヌクレオチド、好ましくは、ヘアピン構造を指す。相補的な切断された5’フラップにハイブリダイズして、侵入切断構造を形成するFRETカセットの部分(すなわち、FEN酵素のための基質)のヌクレオチド塩基配列は、本明細書では5’フラップハイブリダイジング配列と呼ばれる。これに関して、2つの5’フラップハイブリダイジング配列は、それらの配列がその全長にわたって同じではない場合、互いに「異なる」と言われる。二次反応におけるFEN酵素によるFRETカセットの切断は、ドナー部分とアクセプター部分とを分離し、その結果、抑制を軽減し、シグナルの生成を可能にする。一部の実施形態では、ドナー部分とアクセプター部分は、蛍光共鳴エネルギー移動(例えば、「FRET」)により相互作用する。他の実施形態では、FRETカセットのドナーとアクセプターは、非FRET機構により相互作用する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「相互作用」標識対とは、同じFRETカセットに結合され、互いにエネルギー移動関係にある(すなわち、FRETまたは非FRET機構によるかに関係がない)ドナー部分とアクセプター部分を指す。ドナー部分とアクセプター部分が、例えば、二次反応においてFRETカセットの切断によって分離される場合、シグナル(例えば、蛍光シグナル)が生成され得る。異なる切断された5’フラップに特異的にハイブリダイズする異なるFRETカセットは、それぞれ、同じ相互作用標識対を含んでもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「等価」(例えば、「等価なドナー−アクセプター対」または「等価なドナー」または「等価なフルオロフォア」部分)とは、検出可能な化学種の励起および放出スペクトルが、波長範囲により十分に類似するか、または重複しており、シグナルをモニタリングするために使用される機器の同じチャネルにおける蛍光放出波長の検出が可能になることを意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語「スペクトル重複」とは、少なくとも1つの共通の波長を有する2またはそれ超の光スペクトルを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、アクセプター部分(例えば、クエンチャー)が十分に近接しているため、ドナーからの光子の放出が防止される場合、ドナー部分(例えば、フルオロフォア)からの放出は「クエンチされる」。例えば、ドナー部分とアクセプター部分が両方とも同じFRETカセットに結合する場合、ドナー部分からの放出はクエンチされる。
【0039】
本明細書で使用される用語「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対形成を参照して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比などの因子によって影響される。
【0040】
本明細書で使用される用語「Tm」は、「融解温度」を参照して使用される。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖に半分解離する温度である。核酸のTmを算出するための式は、当技術分野で周知である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「特異的」は、ただ1つ(もしくは特定の示される基のみ)に対する特定の効果を有すること、または特定の方法でただ1つ(もしくは特定の示される基のみ)に影響することなどの、ただ1つ(または特定の示される基のみ)に関することを意味する。例えば、FRETカセットに特異的な切断された5’フラップは、そのFRETカセットにハイブリダイズする、侵入切断構造を形成する、および切断反応を促進することができるが、異なるFRETカセット(例えば、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有するFRETカセット)にハイブリダイズして、切断反応を促進することができない。
【0042】
本明細書で使用される用語「特異的にハイブリダイズする」とは、所与のハイブリダイゼーション条件下で、プローブまたはプライマーが、標的配列を含む試料中の実質的に標的配列にのみ検出可能にハイブリダイズする(すなわち、非標的配列への検出可能なハイブリダイゼーションがほとんどない、または全くない)ことを意味する。
【0043】
FEN酵素などの酵素を参照して使用される場合、用語「熱安定性」とは、酵素が高温(すなわち、約55℃またはそれ超)で機能的であるか、または活性である(すなわち、触媒反応を実施することができる)ことを示す。一部の実施形態では、酵素は、65℃またはそれ超(例えば、75℃、85℃、95℃など)の高温で機能的であるか、または活性である。
【0044】
本明細書で使用される用語「標的核酸」および「標的配列」とは、検出または分析される核酸を指す。かくして、「標的」は、他の核酸または核酸配列から区別されることが求められる。例えば、増幅反応を参照して使用される場合、これらの用語は、反応によって増幅される核酸または核酸の一部を指してもよいが、多型性を参照して使用される場合、それらは考えられる多型性を含有する核酸の一部を指してもよい。侵入切断反応を参照して使用される場合、これらの用語は、少なくとも第1の核酸分子(例えば、一次プローブオリゴヌクレオチド)との少なくとも部分的相補性を有し、また、第2の核酸分子(例えば、侵入プローブオリゴヌクレオチド)との少なくとも部分的相補性も有する配列を含有する核酸分子を指す。ある生物に由来する標的核酸は、限定されるものではないが、ゲノムDNAおよびRNA、メッセンジャーRNA、構造RNA、リボソームおよびtRNA、ならびにsnRNA、siRNAおよびマイクロRNA(miRNA)などの低分子RNAを含む、任意の核酸種を含んでもよい。
【0045】
本明細書で使用される用語「増幅された」とは、分子、部分または効果の存在量の増加を指す。例えば、PCRなどのin vitroでの複製により、標的核酸を増幅することができる。
【0046】
核酸増幅を参照して使用される、本明細書で使用される用語「増幅方法」は、目的の核酸の存在量を特異的に増幅するプロセスを意味する。いくつかの増幅方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、またはPCR)は、熱変性、鋳型分子へのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング、およびアリーニングしたプライマーの核酸ポリメラーゼ伸長の反復サイクルを含む。これらのステップのそれぞれに必要な条件および時間は、当技術分野で周知である。いくつかの増幅方法は、単一の温度で行われ、「等温」と見なされる。増幅産物の蓄積は、指数的または直線的であってもよい。いくつかの増幅方法(「標的増幅」法)は、標的配列を多数回コピーすることによってその存在量を増幅する(例えば、PCR、NASBA、TMA、鎖置換増幅、リガーゼ連鎖反応、LAMP、ICAN、RPA、SPA、HADなど)が、いくつかの増幅方法は、標的配列を含有するか、または含有しなくてもよい核酸種の存在量を増幅するが、その増幅は、反応における特定の標的配列の存在を示す(例えば、ローリングサークル増幅、RAM増幅)。後者の方法は、「シグナル増幅」方法と呼ばれることもある。いくつかのシグナル増幅方法は、出発核酸を変換して、例えば、出発核酸を切断して、切断産物を形成させることにより、または例えば、重合もしくはライゲーションによりそれを伸長することにより、核酸種の存在量を増加させることができる。標的増幅法を、シグナル分子に適用することができる(例えば、PCRを使用して、ライゲーション、切断、もしくは非標的コピー反応の産物のより多くのコピーを産生することができる)、またはその逆である。
【0047】
本明細書で使用される用語「ポリメラーゼ連鎖反応」および「PCR」とは、DNAの断片がin vitroで標的核酸から複製される酵素的反応を指す。この反応は一般的に、鋳型依存的DNAポリメラーゼを用いて標的核酸の各鎖上でプライマーを伸長させて、その鎖の一部の相補的コピーを産生することを含む。連鎖反応は、例えば、加熱によるDNA鎖の変性、次いで、プライマーのアニーリングおよび伸長を可能にする冷却の反復サイクルを含み、フランキングし、プライマー結合部位を含む標的核酸の領域のコピーの指数的蓄積をもたらす。RNA標的核酸がPCRにより増幅される場合、それは一般的には、逆転写することができる酵素を用いてDNAコピー鎖に変換される。例示的酵素としては、MMLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、ならびに当業者ならば精通している他の酵素が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、2またはそれ超のヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド)、好ましくは、少なくとも5個のヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも約10〜15個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約15〜30個のヌクレオチド、またはそれより長いものを含む分子と定義される(例えば、オリゴヌクレオチドは、典型的には、200残基長未満(例えば、15〜100ヌクレオチド)であるが、本明細書で使用される場合、この用語はより長いポリヌクレオチド鎖も包含することが意図される)。正確なサイズは、多くの因子に依存し、次いで、オリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、その長さで呼ばれることが多い。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24マー」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイズすること、または他のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることにより、二次および三次構造を形成することができる。そのような構造としては、限定されるものではないが、二本鎖、ヘアピン、十字形、屈曲形、および三本鎖が挙げられる。オリゴヌクレオチドを、化学合成、DNA複製、逆転写、PCR、またはその組合せなどの、任意の様式で生成することができる。一部の実施形態では、侵入切断構造を形成するオリゴヌクレオチドは、反応において生成される(例えば、酵素的伸長反応におけるプライマーの伸長による)。本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用してもよく、非天然のモノマー、またはその一部を含んでもよい。より具体的には、オリゴヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、その置換形態およびアルファアノマー形態、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、2’−O−メチル改変、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、スペーサーなどの、天然の、および/または改変されたモノマーまたは連結の線状または環状オリゴマーを含んでもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「シグナル」は、電磁気エネルギー(例えば、光)などの、エネルギーの検出可能な量またはインパルスである。適切に刺激されたフルオロフォアからの光の放出は、蛍光シグナルの一例である。一部の実施形態では、「シグナル」は、検出機器(例えば、蛍光光度計)の単一チャネル中で検出される凝集エネルギーを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「バックグラウンド」シグナルは、標的核酸特異的反応が起こるのを許容しない条件下で生成されるシグナル(例えば、蛍光シグナル)である。例えば、切断された5’フラップではなく、FRETカセットおよびFEN酵素を含む二次反応において生成されるシグナルは、バックグラウンドシグナルを産生する。一部の例では、バックグラウンドシグナルは、標的核酸を除く「陰性対照」の痕跡において測定される。
【0051】
本明細書で使用される場合、光学エネルギーセンサーを装備したデバイスなどの、エネルギーセンサーデバイスの「チャネル」は、他のバンドの波長を除いて検出または定量することができる規定のバンドの波長を指す。例えば、蛍光光度計の1つの検出チャネルは、単一の事象として一定範囲の波長にわたって1または複数の蛍光標識により放出される光エネルギーを検出することができる。蛍光の結果として放出される光を、所与の波長で、またはあるバンドの波長にわたって、相対蛍光単位(RFU)として定量することができる。一般的な蛍光検出チャネルの例としては、約510〜530nm(例えば、「FAM」検出チャネルにとって一般的)、約560〜580nm(例えば、「HEX」検出チャネルにとって一般的)、約610〜650nm(例えば、「テキサスレッド」検出チャネルにとって一般的)、約675〜690nm(例えば、「Cy5」検出チャネルにとって一般的)、および約705〜730nm(例えば、「Quasar 705」検出チャネルにとって一般的)の範囲の蛍光放出波長を検出するものが挙げられる。Cy5およびAlexa Fluor(登録商標)647は、蛍光光度計のCy5チャネルにおいて検出することができる2つの異なるフルオロフォアの例である。
【0052】
本明細書で使用される用語「対立遺伝子」とは、所与の配列のバリアント形態(例えば、限定されるものではないが、1もしくは複数の単一ヌクレオチド多型または「SNP」を含有する遺伝子)を指す。多数の遺伝子が、集団中に複数の対立遺伝子形態で存在する。遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を担持する2倍体生物は、その遺伝子についてヘテロ接合性であると言われるが、ホモ接合体は2コピーの同じ対立遺伝子を担持する。
【0053】
用語「野生型」(本明細書では「WT」とも)は、天然の供給源から単離された場合、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団中に最も頻繁に観察されるものであり、かくして、「正常」または「野生型」形態の遺伝子と任意に指定される。対照的に、用語「改変された」、「突然変異体」(本明細書では「Mut」とも)、および「バリアント」とは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合、配列および/または機能的特性の改変(すなわち、変化した特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「閾値」または「閾値カットオフ」とは、カットオフの上および下の結果が反対の結論をもたらす、実験結果を解釈するために使用される定量限界を指す。例えば、カットオフの下にある測定されたシグナルは、特定の標的の非存在を示し得るが、同じカットオフを超える測定されたシグナルは、その標的の存在を示し得る。慣例により、カットオフを満たす(すなわち、正確にカットオフ値を有する)結果は、カットオフを超える結果として同じ解釈を与えられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「閾値サイクル数」とは、リアルタイムの実行曲線シグナルが任意の値または閾値と交差するときの時間またはサイクル数を測定する増幅の指標を指す。「TTime」および「Ct」決定は、閾値に基づく増幅の指標の例である。他の方法は、リアルタイム実行曲線の誘導分析を実施することを含む。本開示の目的のために、TArcおよびOTArcを使用して、リアルタイム実行曲線シグナルが任意の値(例えば、それぞれ、曲率の最大角または最小角に対応する)と交差するときを決定することもできる。TTime決定の方法は、米国特許第8,615,368号に開示されている;Ct決定の方法はEP0640828B1号に開示されている;誘導体に基づく方法は、米国特許第6,303,305号に開示されている;ならびにTArcおよびOTArc決定の方法は、米国特許第7,739,054号に開示されている。当業者であれば、閾値サイクル数を決定するために使用することもできる変法に気付くであろう。
【0056】
本明細書で使用される場合、「内部較正」核酸は、in vitroでの核酸増幅反応において増幅することができ、同じ反応中で同時増幅される分析物核酸(例えば、試験試料に由来する標的核酸)と区別可能である核酸である。「内部」とは、較正核酸が分析物標的核酸、またはその断片と同じ反応混合物内で増幅および検出されることを意味する。一部の実施形態では、内部較正核酸は、定量しようとする分析物核酸を増幅するために使用されるのと同じプライマーによって増幅される。他の実施形態では、異なるプライマーがこの目的のために使用される。一般的に言えば、分析物核酸と、内部較正核酸とは、侵入切断反応によって識別することができる少なくとも1個のヌクレオチド位置が異なる。これにより、増幅された内部較正核酸と分析物標的核酸とを独立に検出するための多重化侵入切断アッセイが可能になる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「較正標準」は、既知または所定量の内部較正核酸を含む組成物である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「反応ベッセル(vessel)」または「反応レセプタクル(receptacle)」は、反応混合物を含有する容器である。例としては、複数ウェルプレートの個々のウェル、およびプラスチックチューブ(例えば、多チューブユニットの形成された線形アレイ内の個々のチューブなどを含む)が挙げられる。しかしながら、任意の好適な容器を、反応混合物を含有させるために使用することができることが理解されるべきである。
【0059】
本明細書で使用される場合、侵入切断反応の語句「時間的」分離または単離とは、少なくとも二次反応が異なる時間に起こる(すなわち、二次反応が同時に起こらない)、全て、同じ反応混合物中の単一のフルオロフォアおよび/または検出チャネルの補助により検出される複数の反応を指す。例えば、多重化侵入切断アッセイの二次反応を互いに時間的に単離するために、温度変化を使用することができる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「連続」(およびその文法的変形)とは、同時的よりもむしろ連続的に起こる事象またはステップの収集物を指す。例えば、複数の反応を連続的に実施することとは、反応が一連に(順々に)実行され、同時には実行されないことを意味する。同様に、複数の反応が起こるのを連続的に許容することとは、反応が、例えば、適切な温度条件を提供することによって、同時ではなく、一連に(順々に)起こるのを許容されることを意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、反応が起こるのを「許容すること」とは、反応混合物中に存在しても、または存在しなくてもよい、特定の核酸(例えば、標的DNA、または切断された5’フラップ)の存在について試験するための反応混合物によって、試薬および条件が提供されることを意味する。例えば、侵入切断アッセイの一次反応が起こるのを「許容すること」とは、標的DNAもまた反応混合物中で利用可能であり、一次反応に参加する場合、一次プローブの切断および切断された5’フラップの遊離を可能にする適切な緩衝液および温度条件下で、反応混合物が、侵入プローブ、5’フラップ配列を含む一次プローブ、およびFEN酵素を含むことを意味する。同様に、侵入切断アッセイの二次反応が起こるのを「許容すること」とは、FRETカセットに特異的な切断された5’フラップもまた反応混合物中で利用可能であり、二次反応に参加する場合、FRETカセットの切断を可能にする適切な緩衝液および温度条件下で、反応混合物がFRETカセットとFEN酵素とを含むことを意味する。さらに、反応が起こるのを「許容する」(または「許容する」もしくは「許容性である」)温度条件は、反応を進行させる、またはそれを可能にするのに資する温度条件である。
【0062】
本明細書で使用される場合、二次侵入切断反応の「速度」とは、蛍光シグナルの変化率を指す。例えば、率を、時間またはサイクル数の関数として測定することができる。
【0063】
本明細書で使用される用語「溶液中で遊離している」とは、液体媒体中の、またはそれを含有する固相支持体上に固定(fix)も固定化(immobilize)もされていない分子(例えば、ポリヌクレオチド)を指す。例として、FRETカセットは、それらが液体媒体中に自由に分散しており、シリカビーズ、磁気反応粒子またはマイクロタイタープレートなどの固相支持体に結合していない場合、「溶液中で遊離している」。
【0064】
「キット」とは、互いに同時に使用を意図される材料の包装された組合せを意味する。開示される技術に従って有用なキットは、様々な試薬を含有する1または複数のベッセルまたはチューブを含んでもよい。キットはさらに、「有形の」形態(例えば、印刷された情報、コンピュータで読取り可能な媒体上に電子的に記録された、またはそうでなければバーコードなどの機械で読取り可能な媒体上に記録された)の指示書、または他の情報を含んでもよい。
【0065】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の態様および実施形態をさらに証明するために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の説明と共に、1または複数のこれらの図面を参照することによって、より良好に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1A〜1Bは、本開示による侵入切断アッセイのオリゴヌクレオチド成分の概説を含む。異なるオリゴヌクレオチド成分が、アッセイの一次および二次反応に参加する。野生型(WT)および突然変異体(Mut)配列が示される。図1Aは、一次および二次反応のそれぞれに関する侵入切断構造を示す。上の侵入切断構造は、侵入プローブおよび一次プローブにハイブリダイズした野生型標的DNAを含み、2つのプローブは野生型標的DNAに特異的である。下の侵入切断構造は、野生型一次プローブに由来する切断された5’フラップ、およびFRET1カセットを含む。FRET1カセットの5’フラップハイブリダイジング配列は、野生型一次プローブに由来する切断された5’フラップに特異的である。図1Bは、突然変異体一次プローブが、野生型標的DNAとの相互作用後に切断されない方法を示す。
【0067】
図2図2は、反応温度(x軸)の関数としての侵入切断反応の典型的なシグナルプロファイルを示す。y軸は、試験した反応条件のそれぞれに関するシグナルノイズ比を提示する。1.00の値は、バックグラウンドを超える反応が実質的にないことを示す。曲線に沿った異なる時点での侵入切断アッセイのオリゴヌクレオチド試薬のサイクリング状態は、上方/下方の矢印で示される。
【0068】
図3図3は、3つの異なる温度条件下での3つの多重侵入切断アッセイのそれぞれの活性を示す模式図である。
【0069】
図4図4は、それぞれのアッセイが、一次反応については同じ最適温度で動作するが、二次反応については異なる最適温度で動作する、2つの異なる侵入切断アッセイを例示する略図である。上のアッセイでは、一次反応および二次反応は共に64℃で動作する。下のアッセイでは、一次反応は64℃で動作するが、二次反応は43℃で動作する。64℃で、下の二次反応は実質的に起こらないが、43℃では、上の二次反応は実質的に起こらない。略図の左部分は、一次反応の結果得られる切断された構造を例示する。
【0070】
図5図5は、第1のフルオロフォア(「Red」)を担持するFRETカセットを使用して4つの野生型標的核酸を検出するためのオリゴヌクレオチド、および第2のフルオロフォア(「FAM」)を担持するFRETカセットを使用して4つの突然変異型標的核酸を検出するための試薬を示す略図である。上方/下方の矢印の対になったセットは、図面の左側に示された最適温度でハイブリダイゼーション/解離によりサイクリングするオリゴヌクレオチドを示す。標的核酸の3’末端、侵入プローブ、一次プローブ、およびFRETカセットと相互作用する切断された5’フラップを、矢印頭部で示す。5’フラップ(および切断された5’フラップ)の長さは、FRETカセットとの相互作用のためのTmに影響する。当業者であれば、G−C含量を使用してTmを変化させることができることを理解する(以下を参照されたい)。
【0071】
図6図6は、4つの異なる標的核酸、多重侵入切断アッセイにおいて使用することができるオリゴヌクレオチド試薬、多重内の異なる個々の侵入切断アッセイに関する段階的最適温度、および例の結果(PCRサイクル数/読取り時間増分の関数としての蛍光)を示す略図である。4つの標的核酸(すなわち、野生型第II因子、野生型MTHFR667、突然変異型第V因子、および野生型MTHFR1298)およびその関連する最適温度を、左に示す。4つの標的核酸を増幅するためのプライマーは、矢印頭部を有する線で示される。その対応する標的核酸にハイブリダイズした侵入プローブが示される。それぞれの侵入プローブに隣接して、一対の一次プローブが示される(それぞれ、野生型または突然変異型標的核酸に特異的である)。野生型配列は実線で示される;および突然変異配列は破線で示される。5’フラップ配列の差異は、異なるTmと関連する。FRETカセットの対(それぞれ異なる5’フラップに関するもの)も示される。図面の右側は、全体の蛍光が段階的温度プロファイル中にどのように累積するかを示す図表による結果を示す。
【0072】
図7図7は、逆転写(すなわち、44℃)、一次侵入切断反応(すなわち、64℃)、および二次侵入切断反応(すなわち、ヒト特異的アッセイについては64℃、Prevotella特異的アッセイについては43℃で実行される)を行うために使用されるステップを示すワークフロー表示図である。二次反応中に示された蛍光標識の蓄積を、時間の関数としてモニタリングした。
【0073】
図8A図8A〜8Cは、二重侵入切断アッセイにおいて得られた結果に関するグラフプロットの収集物である。第1の侵入切断アッセイの一次および二次侵入切断反応(すなわち、ヒト標的配列を検出するため)は、64℃で起こった。第2の侵入切断アッセイの一次侵入切断反応(すなわち、Prevotella属の細菌に由来するリボソーム標的配列を検出するため)も、64℃で起こった。第2の侵入切断アッセイの二次侵入切断反応は、43℃で起こった。時間の関数としての蛍光シグナルの蓄積は、43℃で行った反応の部分の間でのみ示される。図8A中のグラフは、(a)ヒトまたは細菌標的配列を含有しなかった陰性対照試料(下の線);(b)ヒト標的配列ではなく、Prevotella標的配列を含有する試料(中央の線);および(c)Prevotella標的配列とヒト標的配列の両方を含有する試料(上の線)に関する結果を示す。図8Bは、フルオレセインにより産生された最小蛍光シグナル(RFUで測定)のプロットを示し、図8Aに示されたプロットのy切片に対応する。図8Cは、43℃でのインキュベーション中にフルオレセインについて測定された蛍光蓄積の速度に関するプロットを示す。
図8BC図8A〜8Cは、二重侵入切断アッセイにおいて得られた結果に関するグラフプロットの収集物である。第1の侵入切断アッセイの一次および二次侵入切断反応(すなわち、ヒト標的配列を検出するため)は、64℃で起こった。第2の侵入切断アッセイの一次侵入切断反応(すなわち、Prevotella属の細菌に由来するリボソーム標的配列を検出するため)も、64℃で起こった。第2の侵入切断アッセイの二次侵入切断反応は、43℃で起こった。時間の関数としての蛍光シグナルの蓄積は、43℃で行った反応の部分の間でのみ示される。図8A中のグラフは、(a)ヒトまたは細菌標的配列を含有しなかった陰性対照試料(下の線);(b)ヒト標的配列ではなく、Prevotella標的配列を含有する試料(中央の線);および(c)Prevotella標的配列とヒト標的配列の両方を含有する試料(上の線)に関する結果を示す。図8Bは、フルオレセインにより産生された最小蛍光シグナル(RFUで測定)のプロットを示し、図8Aに示されたプロットのy切片に対応する。図8Cは、43℃でのインキュベーション中にフルオレセインについて測定された蛍光蓄積の速度に関するプロットを示す。
【0074】
図9図9A〜9Bは、ヒト血液凝固カスケードのタンパク質をコードする核酸を検出するための多重侵入切断アッセイのリアルタイムおよび終点形式の部分で取られた蛍光読取り値を示すグラフである。両グラフは、PCRサイクル数および読取り時間の関数としての蛍光(RFU)を示す。ROXチャネルで測定されたシグナル(白丸)を、野生型第II因子および第V因子、ならびに突然変異型MTHFR1298を検出するために使用した。FAMチャネルで測定されたシグナル(白菱形)を、突然変異型第II因子および第V因子、ならびに野生型MTHFR1298を検出するために使用した。図9Aは、反応混合物中の2つの第II因子侵入切断アッセイのリアルタイムモニタリング中に取られた生の蛍光読取り値、ならびに第V因子およびMTHFR1298を検出するための終点形式の侵入切断アッセイ中に取られた読取り値を示す。図9Bは、多重アッセイにおける異なる標的核酸のそれぞれの検出のための活性を強調するためにバックグラウンドを差し引いた後の、図9Aに由来するデータを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
多重形式で侵入切断アッセイを実施するための組成物、方法、反応混合物、キット、コンピュータプログラム製品、およびシステムが本明細書に開示される。異なる侵入切断アッセイから生じる蛍光放出が、好ましくは、同じフルオロフォア種から生じる、蛍光光度計を含む自動化システムの単一の(すなわち、共有の)検出チャネルを使用して、複数の標的核酸中の個々の存在を示す反応産物が検出される。一般的に言えば、開示される手法は、多重反応混合物中での反応産物形成の時間的分離に依拠する。時間的分離は、所定の温度範囲での1つの侵入切断反応(例えば、1つの二次反応)の選択的活性化を許容するオリゴヌクレオチドの使用の結果生じるが、同時に、同じ反応混合物中の異なるセットのオリゴヌクレオチドにより媒介される他の侵入切断反応(例えば、異なる二次反応)は抑制される。簡単に言うと、二次反応の時間的分離は、二次反応が反応産物を同時に活発に合成していないということである。制御された温度シフトの結果生じる時間的分離は有効であることが本明細書で示され、2つ、より好ましくは3つ、さらにより好ましくは4つの識別可能な侵入切断反応の多重化がここで可能である。開示される技術によれば、それぞれ、異なる標的核酸の存在を示すシグナルを生成する、複数の侵入切断反応を、異なる標的のうちのどれが試験試料中に存在するかを識別する能力を損なうことなく、ただ1つのフルオロフォアおよび検出チャネルを使用してモニタリングすることができる。
【0076】
開示される技術は、所望の結果を達成するための侵入切断反応の空間的分離に依拠しない。オリゴヌクレオチドの固定化(例えば、ビーズまたは平面への)に関する要件はなく、したがって、開示される技術は、マイクロアレイを使用して以前に用いられていた手法とは有意に異なる。実際、開示される技術は、好ましくは、溶液中で遊離した(すなわち、固定化されていない)オリゴヌクレオチド試薬を用い、単一の反応混合物中で複数の侵入切断反応を実行し、区別することができる。
【0077】
同様に、本技術は、標的核酸にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの熱融解を、温度変化の関数としてモニタリングする、融解曲線分析とは有意に異なる。開示される技術によれば、特定の標的核酸の存在を示すシグナルは、一定の温度で生成および収集される。異なる標的核酸の存在を示すシグナルは、反応温度のシフトおよび保持の後に異なる温度で生成および収集される。簡単に言うと、本技術は、温度の関数としてハイブリダイゼーションの強度またはアビディティをモニタリングすることによって標的核酸を同定または定量せず、一度、シグナルが生成されたら、シグナル(例えば、蛍光シグナル)の減少を含まない。蓄積されたシグナルの収集が関係する限りにおいて、本技術は、融解曲線分析を使用して標的同一性の割り当てを行う技術と適合しない。さらに、ハイブリダイゼーション強度は、SNPの位置ではなく、配列変化(例えば、SNP)の存在に関して有用であり得る天然の変化によって影響される。開示される技術は、単一の検出チャネルを使用して複数のSNPを検出することができるという実用的な利点を有する。
【0078】
侵入切断アッセイ
本開示による侵入切断アッセイのオリゴヌクレオチド成分を、図1A〜1B中の図によって例示する。アッセイは、標的核酸の存在を必要とする侵入切断構造を形成するための手段を提供する。アッセイはさらに、侵入切断構造を切断して、別個の切断産物を遊離することを含む。例えば、FEN酵素を使用して、標的依存的侵入切断構造を切断し、それによって、試料中の特定の標的核酸配列の存在を示す切断産物を得る。2つのオリゴヌクレオチドが標的核酸鎖にハイブリダイズし、それらが以下に記載されるような重複侵入切断構造を形成する場合、侵入切断は周知の機構によって起こり得る。切断剤(例えば、FEN酵素)と上流のオリゴヌクレオチド(すなわち、侵入プローブ)との相互作用により、別個の断片が産生されるように、切断剤に、内部部位で下流のオリゴヌクレオチド(すなわち、一次プローブ)を切断させることができる。次いで、「切断された5’フラップ」と呼ばれることもある断片は、検出可能なシグナル(例えば、蛍光シグナル)を生成するその後の反応に侵入プローブとして参加することができる。そのような実施形態は、米国特許第5,846,717号、第5,985,557号、第5,994,069号、第6,001,567号、および第6,090,543号、WO97/27214、WO98/42873、Nat.Biotech.、17巻:292頁(1999年)、PNAS、97巻:8272頁(2000年)に記載されており、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。実際、これらの参考文献に開示されたINVADERアッセイは、本明細書に開示される技術における侵入切断アッセイとしての使用にとって非常に好ましい。より具体的には、単一の反応混合物中で混合した場合、およびFRETカセットを標識するために共通のフルオロフォアを使用した場合、複数のINVADER反応が、本明細書に開示される多重適用にとって非常に好ましい。
【0079】
開示される多重侵入切断アッセイを、重複オリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションにより形成される複合体を切断する構造特異的酵素(例えば、FEN酵素)を使用することによって、特異的DNAおよびRNA配列を検出するために使用することができる。反応温度(例えば、一次プローブのTmに近い、または一致する)により、一定の温度で(すなわち、温度サイクリングなしに)それぞれの標的核酸について多コピーの一次プローブを切断することができる。次いで、これらの切断された5’フラップは、標識されたFRETカセットの切断を指令する。FRETカセットオリゴヌクレオチドを、内部色素またはクエンチャー部分によりクエンチされる蛍光色素を用いて5’末端標識することができる。切断のときに、FRETカセットから遊離されるクエンチされていない蛍光標識を、標準的な蛍光モニタリング技術(例えば、蛍光プレートリーダー)を使用して検出することができる。
【0080】
開示される多重侵入切断アッセイを、ゲノムDNA、またはRNAを逆転写することにより合成されるcDNAなどの、増幅されなかった、ならびに増幅されたDNA中の特異的標的配列を検出するために使用することができる。図1Aに図示される実施形態では、アッセイは、標的特異的蛍光シグナルを生成する2つのカスケードステップ(一次反応および二次反応)を使用する。便宜上、以下の考察における対立遺伝子は、この用語が全ての遺伝子変化または標的配列に適用されない場合であっても、野生型(WT)および突然変異体(Mut)として記載される。一次反応(図1A、上部分)において、WT一次プローブおよび侵入プローブは、縦一列に標的核酸にハイブリダイズして、重複構造を形成する。対形成していない「フラップ」は、WT一次プローブの5’末端に含まれる。構造特異的酵素(例えば、Hologic,Inc.から入手可能なCleavase(登録商標)酵素)は、重複を認識し、対形成していない5’フラップおよび切断塩基を切断除去する。二次反応(図1A、下部分)においては、この切断産物は、WT FRETカセット上の侵入プローブとして働き、再度、構造特異的酵素によって認識される構造を作出する。単一のFRETカセット上の2つの色素が切断により分離される場合(図1A中の矢印で示される)、バックグラウンド蛍光を超える検出可能な蛍光シグナルが産生される。結果として、この第2の侵入切断構造の切断は、蛍光の増加をもたらし、WT対立遺伝子(またはアッセイが検出可能なシグナルを生成するために突然変異対立遺伝子について構成される場合、突然変異対立遺伝子)の存在を示す。
【0081】
一次プローブオリゴヌクレオチドおよび標的ヌクレオチド配列が、切断部位に完全にハイブリダイズしない場合(例えば、図1Bに示されるMut一次プローブおよびWT標的に関して)、重複構造は形成せず、切断は抑制される。本手順において使用される構造特異的酵素(例えば、Hologic,Inc.から入手可能なCleavase(登録商標)酵素)は、非重複構造よりも効率的に重複構造を切断し、それにより、対立遺伝子の識別を容易にする。
【0082】
一次反応は、検出される標的核酸に対するものである。侵入プローブおよび一次プローブはモル過剰で供給されるため、標的核酸は、第1の侵入切断における限定成分である。第2の侵入切断反応では、限定的なのは遊離フラップである。これらの2つの切断反応が連続的に実施される場合、複合反応からの蛍光シグナルは、標的核酸量に関して直線的に蓄積する。
【0083】
ある特定の実施形態では、開示される手法を使用して、単一(すなわち、共有)の検出チャネルを使用して反応中に存在する1または複数の標的核酸の量を決定することができる。第1の侵入切断反応(例えば、標的)および第2の侵入切断反応(例えば、遊離フラップ)の上記限定因子に基づいて、所与の反応中のそれぞれの標的核酸のレベルを定量することができる。所与の標的核酸のための2つの侵入切断反応は、同時的であるか、または時間的に分離していてもよいが、検出される他の標的核酸のための第2の侵入切断反応は、定量を可能とするためには互いに時間的に異なっていなければならない。そのような実施形態における出発標的核酸濃度を決定するための計算例は、PNAS、97巻:8272頁(2000年)に記載されている。
【0084】
ある特定の実施形態では、標的核酸配列は、検出の前に逆転写されるか、またはさらには増幅される(例えば、合成核酸が生成されるように)。一部の実施形態では、標的核酸は、ゲノムDNAを含む。他の実施形態では、標的核酸は、合成DNAまたはRNAを含む。一部の好ましい実施形態では、試料内の合成DNAは、精製されたポリメラーゼを使用して作出される。一部の好ましい実施形態では、精製ポリメラーゼを使用する合成DNAの作出は、PCRの使用を含む。他の好ましい実施形態では、本開示の方法と共に使用するのに好適な、精製DNAポリメラーゼを使用する合成DNAの作出は、ローリングサークル増幅の使用を含む(例えば、米国特許第6,210,884号、第6,183,960号および第6,235,502号に記載され、その全体が参照により本明細書に組込まれる)。他の好ましい実施形態では、合成DNAの作出は、ゲノムDNA試料上の複数の部位からプライミングすることによってゲノムDNAをコピーすることを含む。一部の実施形態では、ゲノムDNA試料上の複数の部位からのプライミングは、短い(例えば、約8ヌクレオチドより少ない)オリゴヌクレオチドプライマーの使用を含む。他の実施形態では、ゲノムDNA上の複数の部位からのプライミングは、ニック二本鎖ゲノムDNA中の3’末端の伸長を含む(すなわち、3’ヒドロキシル基がDNAの二本鎖領域の一方の鎖の破壊または切断によって伸長に利用可能になった)。本開示の方法および組成物と共に使用するのに好適な、ニックゲノムDNA上で精製ポリメラーゼを使用して合成DNAを作製するいくつかの例が、米国特許第6,117,634号および第6,197,557号、および公開PCT出願WO98/39485に提供され、それぞれ、あらゆる目的で参照により本明細書に組込まれる。
【0085】
本開示は、温度サイクリング(すなわち、標的核酸鎖の定期的変性のため)または核酸合成(すなわち、標的もしくはプローブ核酸鎖の重合に基づく置換のため)を使用する必要なく、オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションおよびプローブの切断の複数ラウンドの間に標的核酸が再使用または再循環されるアッセイをさらに提供する。切断反応が、プローブが標的鎖上で連続的に置き換えられる条件下で実行される場合(例えば、プローブ−プローブ置換により、もしくはプローブ/標的の会合と解離との平衡により、またはこれらの機構を含む組合せにより(J. Mol. Biol. 97巻:511〜520頁(2000年)を参照されたい)、複数のプローブが同じ標的にハイブリダイズすることができ、複数の切断、および複数の切断産物の生成を可能にする。
【0086】
有用なフルオロフォアおよびクエンチャー
本開示による多重化侵入切断アッセイは多重化侵入切断アッセイにより生成される蛍光シグナルを検出するためにただ1つの検出チャネルを用い、好ましくは、シグナル生成のために同じフルオロフォアを使用するが、フルオロフォアの同一性は変動してもよい。開示される技術のFRETカセットにおける使用のための好適なフルオロフォアとしては、限定されるものではないが、フルオレセイン、ローダミン、Redmond Red色素、Yakima Yellow色素、ヘキサクロロ−フルオレセイン、TAMRA色素、ROX色素、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7、4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、4,4−ジフルオロ−5,p−メトキシフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、4,4−ジフルオロ−5−スチリル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−S−インダセン−プロピオン酸、6−カルボキシ−X−ローダミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、テキサスレッド、エオシン、フルオレセイン、4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、4,4−ジフルオロ−5,p−エトキシフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン3−プロピオン酸および4,4−ジフルオロ−5−スチリル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−S−インダセン−プロピオン酸、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン(TET)、21,4’,51,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)、2’−クロロ−5’−フルオロ−7’,8’−融合フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(NED)、2’−クロロ−7’−フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(VIC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンザ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル(NBD)、クマリン、ダンシルクロリド、アミノ−メチルクマリン(AMCA)、エリスロシン、BODIPY色素、CASCADE BLUE色素、OREGON GREEN色素、ピレン、リサミン、キサンテン、アクリジン、オキサジン、フィコエリトリン、QUANTUM DYE、チアゾールオレンジ−エチジウムヘテロダイマーなどが挙げられる。
【0087】
開示される技術のFRETカセットにおける使用のための好適なクエンチャーとしては、限定されるものではないが、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7などのシアニン色素、テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)およびテトラプロパノ−6−カルボキシローダミン(ROX)などのローダミン色素、DABSYL色素、シアニン色素、ニトロチアゾールブルー(NTB)、アントラキノン、マラカイトグリーン、ニトロチアゾール、またはニトロイミダゾール化合物、QSY7(Molecular Probes、Eugene、OR)、エクリプスクエンチャー(Epoch Biosciences,Inc.、Logan UT)などが挙げられる。代替的なクエンチャーとしては、Black Hole Quencher色素、特に、BHQ−1、BHQ−2、およびBHQ−3(Biosearch Technologies、Petaluma CA);BlackBerry(登録商標)Quenchers(Berry & Associates、East Dexter、MI);およびIowa Black(登録商標)(Integrated DNA Technologies、Coralville、IA)が挙げられる。FRET構成における使用のための部分の対または群の選択における様々な分子の吸収および放出スペクトルなどの因子の分析は、当業者には周知である。
【0088】
侵入切断アッセイの温度依存性
図2は、一次および二次反応が同じ反応温度で同時に起こるように設計された、図1Aに示されるオリゴヌクレオチド成分を使用して実行される典型的な侵入切断アッセイの温度プロファイルを示す。一般的に言えば、侵入切断反応のための最適温度(すなわち、図2に示される曲線の最大値に対応する)は、サイクリングプローブ(例えば、一次プローブまたは切断された5’フラップ)のTmで、またはその3℃以内に存在する。同じ指針は、一次および二次侵入切断反応が異なる最適温度条件下で起こる侵入切断アッセイにも適用される。図2に示される例では、標的核酸への侵入プローブのハイブリダイゼーションに関するTmは、約68℃であった。標的核酸への一次プローブのハイブリダイゼーションに関するTmは、約62℃であった。FRETカセットへの切断された5’フラップのハイブリダイゼーションに関するTmは、約62℃であった。シグナル生成反応を、異なる温度で標準的な試薬および手順を使用して実行した後、蛍光終点読取り値を、標的核酸を含まない同様の反応からの結果と比較した場合(すなわち、シグナルノイズ比として)、図面に示されるベル状の曲線が得られた。再度、重要な知見は、最大の反応活性が実質的にはTmで起こり、Tmは曲線のピークに一致したことであった。同様に、曲線上の肩は急勾配であり、Tm、または曲線のピークの約5℃上および下でほぼバックグラウンドまで減少した。アッセイは、明らかに温度依存的であり、反応温度が、反応中でサイクリングするオリゴヌクレオチドのTmの±3℃以内にある場合、最大蛍光シグナルを生成した。この例では、一次プローブの標的アニーリング領域、および切断された5’フラップは、それぞれ、標的核酸およびFRETカセットのサイクリングをオンおよびオフにした。本発明者らは、5〜10℃離れた曲線ピークを有する、2つの侵入切断反応を、同じ反応混合物中のそれぞれのTmに対応する温度で、またはそれに近い温度で独立に行うことができることをこれから引き出した。
【0089】
図2に例示されるように、侵入プローブは、侵入切断アッセイのための最適温度で、またはそれより下で標的核酸にハイブリダイズしたままである。全ての例でそうなわけでなないが、この例では、侵入プローブは侵入切断アッセイのための最適温度より実質的に上の温度で標的核酸に結合したままではない。オリゴヌクレオチドのサイクリングもまた、アッセイ温度プロファイルに依存し、この例では、切断された5’フラップおよび一次プローブは、最適温度でサイクリングを受ける。最適温度より実質的に下では、オリゴヌクレオチドはそのそれぞれの相補的核酸に安定に結合したままであるため、サイクリングしない。最適温度より実質的に上では、オリゴヌクレオチドは、そのそれぞれの相補体に安定にアニーリングすることができないため、サイクリングしない。
【0090】
多重検出
本開示は、試験試料中に含有される複数の標的核酸配列を、リポーターとしてのわずか1つの型の蛍光部分の単一チャネル検出を使用して、単一の反応混合物中で検出することができる、多重侵入切断アッセイの使用を提供する。一部の実施形態では、多重侵入切断アッセイは、再度、リポーターとしての単一の型の蛍光部分の検出を使用する単一の反応混合物中での複数の標的核酸配列の検出を含む定量アッセイである。
【0091】
本開示によれば、多重侵入切断アッセイ反応混合物の調製は、それぞれのアッセイが異なる最適温度で動作し、各反応において生成されるシグナルが、同じ蛍光検出チャネルを使用して、好ましくは、同じフルオロフォアを使用して検出される、少なくとも2つの別々の侵入切断アッセイのオリゴヌクレオチド試薬を混合すること(例えば、単一の反応ベッセル中で)を含む。FEN酵素がさらに含まれる。一部の実施形態では、これらの多重アッセイは、それぞれのアッセイの一次および二次反応を行うための最適温度が、多重アッセイにおける他のアッセイの一次および二次反応を行うための最適温度と、少なくとも5〜30℃、より好ましくは、約10〜30℃、さらにより好ましくは10〜20℃、またはさらには10〜15℃異なる、少なくとも2つの異なる侵入切断アッセイのための試薬を、単一の反応混合物中で混合する。他の実施形態では、これらの多重アッセイは、それぞれのアッセイの一次反応を行うための最適温度が実質的に類似するが、異なるアッセイの二次反応を行うための最適温度が少なくとも5〜30℃、より好ましくは、約10〜30℃、さらにより好ましくは10〜20℃、またはさらには10〜15℃異なる、少なくとも2つの異なる侵入切断アッセイのための試薬を、単一の反応混合物中で混合する。一部の好ましい実施形態では、3、4、もしくはさらには5またはそれ超の異なる侵入切断アッセイを多重化することができる。
【0092】
多重アッセイのそれぞれの侵入切断アッセイは、一次反応のための2つの標的配列特異的な、非標識オリゴヌクレオチド:上流の侵入プローブオリゴヌクレオチド、および下流の一次プローブオリゴヌクレオチドを含む。侵入プローブオリゴヌクレオチドは、一般に、一次切断反応を行うために使用される温度での標的核酸への安定なハイブリダイゼーションのために設計されるが、一次プローブは同じ温度条件下で標的鎖と自由に会合および解離するように設計される。一次プローブは、試験試料中に含有される標的核酸と相補的でない5’フラップ配列を含む(図1を参照されたい)。一次切断反応は、切断されなかった一次プローブが、重複する侵入プローブオリゴヌクレオチドに隣接してハイブリダイズする場合にのみ起こる。それぞれの侵入切断アッセイは、フルオロフォアからの放出が、2つの部分が同じFRETカセットに連結される場合にクエンチされるようなエネルギー移動関係にある第1の色素(例えば、フルオロフォア)および第2の色素(例えば、クエンチャー)を有するFRETカセットをさらに含む。一部の実施形態では、多重アッセイにおいて異なる標的を検出するために複数のFRETカセットが存在する例において、同じフルオロフォアが使用される。
【0093】
多重アッセイにおいて異なる標的核酸を検出すること、および互いを区別することは、反応混合物を様々な最適温度でインキュベートする間に産生される検出可能なシグナルをモニタリングおよび/または定量することを含む。例えば、第1の侵入切断アッセイ(第1の標的核酸に特異的である)のための最適温度で多重反応をインキュベートすることは、第1の標的核酸が反応混合物中に存在する場合、検出可能なシグナルを産生することができる。産生されるシグナルの量は、存在する第1の標的核酸の量に比例する。異なる最適温度を有する(すなわち、第1の侵入切断アッセイの最適温度と、少なくとも5℃、より好ましくは5〜30℃、より好ましくは10〜30℃、さらにより好ましくは10〜20℃、さらにより好ましくは10〜15℃異なる)多重化された第2の侵入切断アッセイの少なくとも二次反応は、第1の侵入切断アッセイが活性である時点で実質的に不活性である。したがって、多重反応を第1の最適温度でインキュベートする間に測定されるシグナルは、第1の侵入切断アッセイの活性を反映するに過ぎない。第2の侵入切断アッセイのための最適温度への反応温度シフト後、第1の侵入切断アッセイは実質的に不活性である。第2の切断アッセイにより生成されるシグナルは、第1の侵入切断アッセイが活性であった場合、多重反応混合物中で生成されたシグナルに累積される。したがって、第1の侵入切断アッセイの終わり(またはあるいは、第1の侵入切断アッセイの終了後であるが、第2の侵入切断アッセイが実質的にシグナルを生成し始める前)に測定されるシグナルの量は、第1の標的核酸の存在を示すために有用である。同様に、第2の標的核酸の存在は、第1の侵入切断アッセイにより生成されるシグナルの寄与を差し引いた後、第2の侵入切断アッセイの終わりに測定されるシグナルの量によって示される。
【0094】
開示される技術の一態様は、特定の核酸が試験試料中に存在するかどうかを、測定されたシグナルから決定することを含む。一部の実施形態では、これは、測定されたシグナルの規模を、静的閾値などの閾値と比較することによって行われる。例えば、標的核酸の有無を決定するために5,000RFUの閾値基準を確立することができる。この値を超えるシグナル測定値は、試料が目的の標的核酸を含有することを示してもよい。この値より低いシグナル測定値は、必要なシグナルを産生するには不十分な量の標的が存在することを示してもよく、試料が目的の標的核酸を含有しなかったとの決定を行うことができる。勿論、多重侵入切断アッセイにおける異なる標的核酸の有無を、異なるシグナル規模と、異なる閾値基準との比較によって決定することができる。典型的には、特定の標的のための侵入切断アッセイと関連するシグナル規模(例えば、二次反応において生成される蛍光シグナル)を、反応期間の終わりに、好ましくは、二次反応が停止したが、多重アッセイにおいて検出される異なる標的核酸のための侵入切断アッセイ(例えば、二次反応において生成される蛍光シグナル)からシグナルが増大し始める前に測定する。異なる標的核酸のためのそれぞれの二次反応が起こる際に、測定された蛍光は反応混合物中で増大することができることが明らかであるべきである。
【0095】
試験試料中の標的核酸の有無を決定するための代替的な手法は、閾値基準に対して時間依存的な蛍光蓄積率(「速度」と呼ばれることもある)を比較することを含む。この例では、目的の標的核酸を含有すると判定されるためには、算出された速度が、試験試料のある特定の最小閾値速度を超えることが必要であり得る。閾値速度値より低い算出された速度を、標的核酸の非存在を示すものと判定することができる。再度、標的核酸の有無に関する決定は、閾値基準との比較を含む。
【0096】
一般的に言えば、また、上記考察を考慮すれば、測定されたシグナルは、2つの方法のいずれかにおいて閾値を超えると言われる。第1に、測定されたシグナルの規模が、閾値規模値を超える(すなわち、それより大きい)か、または超えない(すなわち、それより小さい)場合、測定されたシグナルをその規模を単位として評価することができる。上に示されたように、閾値を超えることは、好ましくは、標的核酸の存在を示すが、閾値より下への低下は、好ましくはその非存在を示す。第2に、測定されるシグナルを、既知の期間または固定期間にわたって測定することができ、その場合、速度を算出することができる。ここで、算出された速度を、試験試料中の標的核酸の存在を確立するのに必要とされる閾値速度に対して比較することができる。より具体的には、速度閾値を超える(すなわち、それより大きい)か、または超えない(すなわち、それより小さい)速度を、標的核酸の有無を決定するために使用することができる。上に示されたように、閾値を超える速度は、好ましくは、標的核酸の存在を示すが、速度閾値より下への低下は、好ましくはその非存在を示す。両手法とも、実施例に例示される。
【0097】
FRETカセットを標識するための等価なドナー部分の使用
一般的に言えば、異なる標的配列を検出するための多重アッセイにおいて使用される第1および第2のFRETカセットは、等価であり、同一であってもよいドナー部分(例えば、フルオロフォア)を含むべきである。これにより、第2の切断反応が起こったことを示す単一チャネル検出が容易になる。より具体的には、検出機器の単一チャネルにおける蛍光放出によって検出される部分は、等価物(すなわち、等価なフルオロフォア)である。等価なドナー部分が外部エネルギー源によって直接励起されるかどうか、またはそれらがエネルギー移動関係にある近隣の第2の部分からエネルギーを受け取るかどうかは、設計選択の問題である。注目すべきことに、第1のフルオロフォアから第2のフルオロフォアへのエネルギー移動、次いで、第2のフルオロフォアからの検出可能な波長の放出の詳細は、米国特許第6,150,097号で考察されており、その開示は参照により組み込まれる。
【0098】
等価である2つのドナー部分は、共通の(すなわち、共有された)波長範囲によって励起され、任意の検出範囲にわたって測定可能な強度で放出しながら、異なる最大値のその放出スペクトルを示してもよい。これに関して、検出される異なるドナー(または検出可能な蛍光放出を産生する部分)は、有利には、スペクトル放出「クロストーク」を示す(「裏抜け」または「クロスオーバー」と呼ばれることもある)。当業者であれば、異なる標識されたプローブをその放出波長によって区別しようとする場合、等価なドナーのこの特徴が通常望ましくなく、したがって避けられることを理解できる。一部の実施形態では、等価なドナーの放出スペクトルは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、放出波長の範囲にわたって重複している。同一のドナー(すなわち、同じドナーでそれぞれ標識される第1および第2のFRETカセット)は、100%の重複を示す。例えば、等価なCy3およびAlexa Fluor(登録商標)555(Molecular Probes,Inc.の登録商標)色素は、類似する励起プロファイル、および実質的に同一の(すなわち、約100%)放出プロファイルを共有することが公知である。
【0099】
上に示されたように、等価なドナーからの蛍光放出を、蛍光モニタリング機器の単一チャネル中で検出することができる。異なるドナー部分により生成される波長の伝送を可能にする蛍光モニタリング機器の光学フィルターセット、または調節可能な波長範囲を選択することにより、これを達成することができる。一部の実施形態では、異なるFRETカセットを異なるドナー部分(例えば、異なるフルオロフォア)で標識する場合、異なるドナーは0nm〜60nm、より好ましくは、0nm〜50nm、より好ましくは0nm〜40nm、より好ましくは0nm〜30nm、より好ましくは0nm〜20nm、またはより好ましくは0nm〜10nm異なる放出最大波長を有することが好ましい。当業者であれば、様々な組合せのドナー部分が、本明細書に開示される技術の文脈において等価であると考えられることを理解できる。例えば、第1のFRETカセットを、ROXドナー色素(575nmの最大励起;602nmの最大放出)で標識することができ、第2のFRETカセットを、Alexa Fluor(登録商標)568(Molecular Probes,Inc.の登録商標)色素(578nmの最大励起;603nmの最大放出)で標識することができる。かくして、等価であるが、同一ではないドナー部分は、開示される技術に従って組み合わせて使用することができるFRETカセットを標識するのに有用である。
【0100】
等価なドナーおよびアクセプターを有するFRETカセットを設計するときに従うための最も単純な手法は、同一のドナー部分(例えば、同一のフルオロフォア)および同一のアクセプター部分(例えば、同一のクエンチャー)を用いて異なるFRETカセットを標識することを含む。
【0101】
多重侵入切断アッセイにおける使用のためのオリゴヌクレオチドの設計
本明細書に開示される多重技術は、侵入切断アッセイのオリゴヌクレオチド成分の設計における柔軟性を利用する。侵入切断反応は、温度依存的であり、反応を実施するための使用される温度がサイクリングするように設計されるオリゴヌクレオチド配列(すなわち、標的核酸にハイブリダイズする一次プローブの配列;およびFRETカセットにアニーリングする切断された5’フラップの配列)のTmに実質的に一致する場合に時間の関数として増大するシグナルを生成する。サイクリングはこのTmより約5℃下では実質的に起こらず、したがって、実質的にシグナル生成はない。このTmより約5℃上では、オリゴは実質的にアニーリングせず、したがって、実質的にシグナル生成はない。この手法により、反応温度がシフトした後、特定の標的配列を示すシグナルが収集される期間にわたって一定に維持される場合、多重化侵入切断反応の活性を、時間的に分離することができる。
【0102】
一次切断反応を実行するために使用される温度での侵入プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションの安定性は、基準としてTmを使用して制御される。より具体的には、侵入プローブオリゴヌクレオチド(侵入切断アッセイ中に標的核酸のサイクリングをオンオフしない)は、一般に、標的核酸への一次プローブのハイブリダイゼーションのためのTmよりも5〜20℃、より好ましくは、5〜15℃高いTmで標的核酸にハイブリダイズするように設計される。これは、標的核酸への一次プローブの結合のためのTmに一致する温度で反応を行う場合に、侵入プローブが実質的にハイブリダイズしたままであることを意味する。
【0103】
ある特定の実施形態では、多重アッセイにおける特定の侵入切断アッセイのための一次プローブは、切断された5’フラップ(すなわち、一次プローブから切断される)の、その切断されたフラップを検出するために使用されるFRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmと実質的に類似するTmで標的核酸にハイブリダイズする。このTmは、好ましくは、反応の意図される最適温度の2℃以内、より好ましくは、1℃以内である。この場合、一次切断反応および二次切断反応は、類似する温度プロファイルを共有する。特定の標的核酸の検出のための一次および二次反応は両方とも、直線的サイクリング反応を個別に受け、同じセットの温度条件(すなわち、一次および二次侵入切断反応のTmと実質的に一致する)下で切断された5’フラップおよび切断されたFRETカセットを生じる。同様に、特定の侵入切断アッセイの一次および二次切断反応は両方とも、反応温度を少なくとも5℃または10℃上昇または下降させた場合、実質的に不活性である。
【0104】
ある特定の実施形態では、多重アッセイにおける複数の侵入切断アッセイのための一次プローブは、互いに実質的に類似するTmでそのそれぞれの標的核酸にハイブリダイズする。このTmは、好ましくは、反応の意図される最適温度の2℃以内、より好ましくは、1℃以内である。この配置は、それぞれの対応する標的核酸の存在を特異的に示す切断された5’フラップを生成する、単一の温度条件下の複数の一次侵入切断反応を許容する。非常に重要なことに、異なる切断された5’フラップの、これらの切断された5’フラップの検出のために使用されるFRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmは、少なくとも5℃、より好ましくは5〜30℃、さらにより好ましくは10〜30℃、さらにより好ましくは10〜20℃、さらにより好ましくは10〜15℃、互いに異なっていなければならない。この場合、二次切断反応は、同じ反応混合物中の同じ反応温度条件下で両方とも活性ではない。一方の二次反応が活性である場合、他方は不活性である。
【0105】
本開示によるオリゴヌクレオチドの設計および選択に、既存のソフトウェアプログラムを援用することができる。例えば、US2006/0147955A1は、侵入プローブ(すなわち、「INVADERオリゴヌクレオチド」)および選択された標的領域にハイブリダイズする下流の一次プローブを設計するために使用することができるソフトウェアアプリケーション(「INVADER CREATOR」と呼ばれる)を記載している。このソフトウェアは、多重化のための候補侵入切断アッセイを生成するために使用することができる、プローブに関するTm推定値を算出する。勿論、同じ手順を、5’フラップ配列および一致したFRETカセットの設計に適用することができる。
【0106】
一度、侵入プローブ、標的非相補的5’フラップを有する一次プローブ、およびFRETカセットが設計されたら、オリゴヌクレオチドを合成し、日常的な試験にかけて、意図される性能特性を検証することができる。より具体的には、侵入プローブと一次プローブを、対応する標的核酸、FRETカセット、FEN酵素、および他の試薬と組み合わせて、アッセイ全体のTmプロファイルを検証することができる。当業者であれば、例示的な反応条件に精通している。
【0107】
温度依存的多重化:多重反応の時間的単離
アッセイ設計の一般的特徴を、図3に例示される例を参照して理解することができる。この図面は、3つの反応温度条件を例示し、3つのアッセイがそれぞれ、異なる標的核酸を検出する、3つの多重化侵入切断アッセイの状態(例えば、多重アッセイを行うためのオリゴヌクレオチド試薬)を図式化する。異なる標的の存在を示すシグナルを検出するために使用されるFRETカセットは全て、同じフルオロフォアおよびクエンチャー対で標識される。3つの異なる侵入切断アッセイ(すなわち、「第1」、「第2」および「第3」の侵入切断アッセイ)は、それぞれ、63℃、53℃および43℃の最適温度を有すると示される。この例示において、特定の標的核酸の検出と関連する一次および二次切断反応は両方とも、同じ温度で起こる。実際、この例示における一次および二次切断反応は、異なる温度条件下では行われない。
【0108】
図3の左パネルは、第1の温度条件下では、第1の侵入切断アッセイのみが検出可能な蛍光シグナルを活発に生成することを示す(すなわち、63℃の反応温度として例示される)。より具体的には、第1のアッセイの一次および二次切断反応が起こり、フルオロフォアが第1のFRETカセットの切断によって遊離する。考察のために、第1の一次プローブの、その相補的標的核酸へのハイブリダイゼーションのためのTm、および第1の切断された5’フラップの、第1のFRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmは、それぞれ約63℃であってもよい。第1の温度条件下で示されるように、第2および第3の侵入切断アッセイのための切断反応を促進するのに必要とされるオリゴヌクレオチドはその対応する標的核酸またはFRETカセットにハイブリダイズしないため、第2の侵入切断アッセイも第3の侵入切断アッセイも活性ではない。反応が第1の温度条件下で維持される間に測定される蛍光シグナルは、試験を受ける試料中の第1の標的核酸の有無を決定するために使用される。多重アッセイにおける第1の侵入切断アッセイの終わりでの累積蛍光シグナルは、図面の左パネルの左下の角に示されるバーで表示される。
【0109】
図3の中央パネルは、温度を第2の温度条件にシフトさせる効果を示す(すなわち、53℃の反応温度として例示される)。第2の侵入切断アッセイのみが検出可能な蛍光シグナルを活発に生成する。ここで、第2のアッセイ(第1または第3のアッセイではなく)の一次および二次切断反応が起こっており、第2のFRETカセットの切断によって遊離されるフルオロフォアは、第1の温度条件下で起こった第1の侵入切断アッセイにより生成された蛍光シグナルを超える増加として検出される。考察のために、第2の一次プローブの、その相補的標的核酸へのハイブリダイゼーションのためのTm、および第2の切断された5’フラップの、第2のFRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmは、それぞれ約53℃であってもよい。第2の温度条件下で例示されるように、第1の侵入切断アッセイは実質的に不活性であり、蛍光シグナルを生成しない。これは、第1の一次プローブおよび第1の切断された5’フラップが、それぞれ、第1の標的核酸および第1のFRETカセットに安定にハイブリダイズしたままであるためである。これらのオリゴヌクレオチドは、切断反応産物の量を増加させるのに必要とされるサイクリングハイブリダイゼーション反応に参加することができない。第3の侵入切断アッセイもまた第2の温度条件下(53℃)では不活性であるが、これは、この反応温度が十分に高く、第3の一次プローブがその相補的配列にアニーリングして、切断された5’フラップを生成するのに必要とされるサイクリング反応に参加することができないためである。第2の侵入切断アッセイの終わりでの累積蛍光シグナル(すなわち、多重アッセイの第1および第2の侵入切断アッセイ中に累積したシグナルである)は、図3の中央パネルの左下の角に示されるバーで表示される。
【0110】
図3の右パネルは、温度を第3の温度条件にシフトさせる効果を示す(すなわち、43℃の反応温度として例示される)。第3の侵入切断アッセイのみが、検出可能な蛍光シグナルを活発に生成する。ここで、第3のアッセイ(第1または第2のアッセイではなく)の一次および二次切断反応が起こっており、第3のFRETカセットの切断から遊離されるフルオロフォアは、それぞれ、第1および第2の温度条件下で起こった第1および第2の侵入切断アッセイにより生成された蛍光シグナルを超える増加として検出される。考察のために、第3の一次プローブの、その相補的標的核酸へのハイブリダイゼーションのためのTm、および第3の切断された5’フラップの、第3のFRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmは、それぞれ約43℃であってもよい。第3の温度条件下で例示されるように、第1の侵入切断アッセイは実質的に不活性であり、蛍光シグナルを生成しない。これは、第1の一次プローブおよび第1の切断された5’フラップが、それぞれ、第1の標的核酸および第1のFRETカセットに安定にハイブリダイズしたままであるためである。第2の侵入切断アッセイも、実質的に不活性であり、蛍光シグナルを生成しない。これは、第2の一次プローブおよび第2の切断された5’フラップが、それぞれ、第2の標的核酸および第2のFRETカセットに安定にハイブリダイズするためである。かくして、第1および第2の侵入切断アッセイのオリゴヌクレオチドは、切断反応産物の量を増加させるのに必要とされるサイクリングハイブリダイゼーション反応に参加することができない。第3の侵入切断アッセイの終わりでの累積蛍光シグナルは、図3の右パネルの左下の角に示されるバーで表示される。
【0111】
シグナルを生成するためにただ1つのフルオロフォア種が使用される場合であっても、それぞれの異なる多重化アッセイと関連する蛍光シグナルを容易に決定することができることが上記考察から明らかであるべきである。一部の実施形態では、第1の侵入切断アッセイの二次反応から得られるシグナル量(その後の二次反応が温度シフトにより実質的に開始される前)を使用して、試験試料中の第1の標的核酸の有無を決定することができる。第2の侵入切断アッセイの終わりでの測定、次いで、第1の侵入切断アッセイに起因するシグナル量の減算により;またはあるいは、第1の侵入切断アッセイに起因するシグナルを超える増加を決定するために時間の関数としてシグナル累積をモニタリングすることにより、第2の侵入切断アッセイの二次反応から得られるシグナル量を決定することができる。第2の侵入切断アッセイに特に起因するシグナル量を使用して、試験試料中の第2の標的核酸の有無を決定することができる。第3の侵入切断アッセイに起因するシグナルを、第3の侵入切断アッセイの終わりでの測定、次いで、第1および第2の侵入切断アッセイに起因するシグナル量の減算により決定することができる;またはあるいは、第1および第2の侵入切断アッセイに起因するシグナルを超える増加を決定するために時間の関数として測定することができる。第3の侵入切断アッセイに特に起因するシグナル量を使用して、試験試料中の第3の標的核酸の有無を決定することができる。
【0112】
最後に、特定の標的核酸の存在を示す蛍光シグナルを検出するために使用される異なるFRETカセットの数に関係なく、それぞれの標的のユニークな検出を許容する様式で異なる標的核酸の検出を許容するためには、単一の蛍光部分(例えば、フルオレセイン)で十分であることも明らかであるべきである。
【0113】
共通の一次反応最適温度および異なる二次反応最適温度を用いる多重侵入切断アッセイ
一部の実施形態では、2またはそれ超の異なる侵入切断アッセイのための試薬を、単一の反応混合物中で組み合わせ、それらのそれぞれの一次反応を同時に(すなわち、同じ時間に、同じ温度条件下で)実行し、それらのそれぞれの二次反応を、異なる温度条件下で異なる時間に実行する。異なる一次反応から生じる切断された5’フラップは、それぞれ、同じフルオロフォア部分を担持する、そのそれぞれのFRETカセットに異なるTmでハイブリダイズする。図4に示されるように、そのそれぞれの最適温度での二次切断反応の実施により、2またはそれ超の侵入切断アッセイを独立にモニタリングすることができる。リポーターとしての単一のフルオロフォア、および蛍光モニタリング機器(例えば、蛍光光度計)の単一の検出チャネルを使用して、少なくとも2つの異なる結果を得ることができる。さらに、複数の標的特異的一次反応が同時に、また同じ温度で起こり得るとしても、本発明者らは、所定の速度を使用して全ての標的に関する定量結果をさらに得ることができる。速度は、酵素反応速度により支配され、酵素の初速は基質濃度に依存する。したがって、FRETが切断される率は、一次反応において作出されるフラップの数に依存し、次いで、標的の濃度に依存する。複数の一次反応を組み合わせる場合であっても、量的な差異は二次反応に依然として反映される。
【0114】
図4は、2つの異なる侵入切断アッセイを多重形式で行うためのオリゴヌクレオチド試薬を例示する。図面の左上部分は、第1の侵入プローブおよび第1の一次プローブにハイブリダイズした第1の標的核酸(例えば、ヒト起源の)を示し、第1の一次プローブの、第1の標的核酸へのハイブリダイゼーションのためのTmは64℃である。好ましくは、第1の侵入プローブは、一次反応を実行するために使用される温度条件下での安定なハイブリダイゼーションを保証するために、この値より5〜20℃、より好ましくは5〜15℃高いTmで第1の標的にハイブリダイズする。図面の右上部分は、ハイブリダイゼーションが64℃のTmを特徴とする、第1の切断された5’フラップ(すなわち、第1の一次反応における切断事象によって生成される)の、第1のFRETカセットへのハイブリダイゼーションを示す。図面の左下部分は、第2の侵入プローブおよび第2の一次プローブにハイブリダイズした第2の標的核酸(例えば、細菌起源;Prevotellaのもの)を示し、第2の一次プローブの、第2の標的核酸へのハイブリダイゼーションのためのTmも64℃である。好ましくは、第2の侵入プローブは、一次反応を実行するために使用される温度条件下での安定なハイブリダイゼーションを保証するために、この値より5〜20℃、より好ましくは5〜15℃高いTmで第2の標的にハイブリダイズする。図面の右下部分は、43℃のTmを特徴とする、第2の切断された5’フラップ(すなわち、第2の一次反応における切断事象により生成される)の、第2のFRETカセットへのハイブリダイゼーションを示す。一部の好ましい実施形態では、第1および第2のFRETカセットの構造は同一である。しかしながら、重要なことは、第1および第2の切断された5’フラップの構造が異なるということである。これにより、第1および第2の切断された5’フラップが異なるTmでFRETカセットにハイブリダイズすることが保証される。この例では、2つの切断された5’フラップのTmは21℃異なり、これは、少なくとも5℃、より好ましくは5〜30℃、より好ましくは10〜30℃の好ましい差異と一致している。
【0115】
ヒトおよびPrevotella細菌の標的核酸、第1および第2の侵入プローブ、第1および第2の一次プローブ、第1および第2のFRETカセット(それぞれ、同じ相互作用標識対を担持する)、およびFEN酵素を含む例示的反応混合物は、2つの標的核酸を独立に検出するのに有用である。64℃で一定期間にわたって反応混合物をインキュベートすることにより、図4に例示される3員構築物の両方に関する一次切断反応が促進され、それにより、ヒトおよび細菌に特異的な一次プローブの両方に由来する切断された5’フラップが産生される。同様に、64℃のインキュベーション中の第1のFRETカセットから切断されたフルオロフォアを、任意選択で、反応混合物中の第1の標的核酸(例えば、ヒト核酸)の存在の指示として検出および定量することができる。しかしながら、第2の切断された5’フラップは少なくとも5℃低いTmを有し、したがって、アニーリングおよびサイクリングが実質的に起こらないため、フルオロフォアは、64℃のインキュベーション中に第2のFRETカセットから切断されない。一定期間にわたって反応混合物を43℃にシフトすることにより、第1のFRETカセットのさらなる切断が抑制されるが、第2の切断された5’フラップと第2のFRETカセットとの間のサイクリング相互作用が促進される。結果として、第2のFRETカセットから切断されたフルオロフォアを、反応混合物中の第2の標的核酸の存在を示すものとして検出および定量することができる。
【0116】
異なる温度ステップ中に産生される蛍光シグナルを、それぞれの異なる標的核酸を独立に検出するために使用することができる。64℃の温度ステップの終わりに、またはあるいは、少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃、温度をシフトさせた後であるが、いずれの場合も、第2の切断された5’フラップおよび第2のFRETカセットの二次反応が実質的に始まる前に産生される蛍光シグナルを、反応混合物中の第1の標的核酸の存在を確立するために使用することができる。43℃のインキュベーションステップ中に産生される蛍光シグナルを、反応混合物中の第2の標的核酸の存在を確立するために使用することができる。
【0117】
多重侵入切断アッセイを使用する検出と共にリアルタイム核酸増幅を統合するアッセイ
自動化機器の単一のフルオロフォアおよび/または検出チャネルのみを用いる、多重化侵入切断アッセイを有利に使用して、複数の核酸増幅反応(例えば、PCR反応)のリアルタイムモニタリングを実行することができる。この手法により、2、3、4、さらには5つのリアルタイム実行曲線を、用いられるそれぞれの蛍光色素について得ることができる。本明細書に開示される方法を実行するための適切なソフトウェアにより構成された場合、従来の4チャネルのリアルタイムPCR機器は、単一の反応混合物から8〜20のリアルタイム実行曲線結果を生成することができる。
【0118】
一部の実施形態では、反応混合物中で反応サイクルまたは時間の関数としてモニタリングされる少なくとも1つの増幅された標的核酸は、試験を受ける試料中に含まれる分析物標的核酸を起源とする。好ましくは、反応混合物は、既知濃度のコピーレベルの対照または較正標準として働く、多重侵入切断アッセイにおいて検出される、増幅された、または増幅されなかった標的核酸をさらに含む。例えば、増幅される1つの標的核酸は、既知のコピーレベルで反応混合物に添加される較正標準であってもよい。あるいは、増幅される2つの標的核酸は、既知のコピーレベルで反応混合物に添加される較正標準であってもよい。較正標準は、互いに、また、例えば、単一のヌクレオチド差異の存在によって分析物標的核酸から区別可能である。
【0119】
統合アッセイを実行し、結果を分析するためのいくつかの選択肢がある。大まかに言えば、従うことができる2つの一般的な形式:(1)アンプリコン検出のために多重侵入切断反応を使用する増幅産物のPCR後分析(すなわち、いわゆる「終点」検出);および(2)増幅反応が起こっている際に多重侵入切断アッセイを使用する複数の核酸反応の同時的モニタリング(すなわち、いわゆる「リアルタイム」モニタリング)がある。これらの2つの形式を、個別に使用するか、または同じアッセイにおいて組み合わせて使用することができる。
【0120】
終点検出の例は、第1の段階で1または複数の増幅産物を生成するPCR反応、次いで、増幅反応が完了した後の増幅産物の検出である。これは、同じ増幅された標的核酸内の複数の異なる標的、または複数の異なる配列の検出を含んでもよい。多重侵入切断アッセイは、それぞれ、ただ1つのフルオロフォアおよび/または検出チャネルを使用して独立に検出される、複数の異なる配列の検出を含む。
【0121】
リアルタイムモニタリングの例は、多重侵入切断アッセイを使用して、反応が起こっている間(例えば、増幅反応の個別のサイクルの間)に複数の増幅された標的核酸をモニタリングしながら、複数の異なる増幅産物を生成する多重PCR反応である。再度、モニタリングされるそれぞれの増幅産物は、ただ1つのフルオロフォアおよび/または検出チャネルを使用して独立に検出される。
【0122】
組合せ形式の例は、増幅反応の終わりでの少なくとも1つの他の増幅された標的核酸の検出(すなわち、終点検出)と共に、反応が起こっている際の少なくとも1つの増幅された標的核酸をモニタリングしながら(すなわち、リアルタイムモニタリング)、複数の増幅産物を生成する多重PCR反応である。リアルタイムモニタリングおよび終点検出反応の両方をただ1つのフルオロフォアおよび/または分析機器の検出チャネルを使用して同じ反応混合物中で多重侵入切断反応として実行することができる。
【0123】
多重侵入切断アッセイを使用する核酸増幅の時間依存的モニタリングを含む統合技術は、異なる反応温度で動作する複数の侵入切断反応を組み合わせること、次いで、単一の蛍光色素をモニタリングしながら段階的な温度プロファイルに従って反応を実施および評価することを含む。図5は、4つの標的核酸配列のそれぞれ(すなわち、第II因子、MTHFR677、第V因子;およびMTHFR1298)が野生型(「WT」)または突然変異体(「Mut」)形態(すなわち、8つの異なる標的配列である)で存在し得るモデルシステムを例示する。図5の左部分は、異なるアッセイが異なる標的核酸のそれぞれに特異的である、異なる侵入切断アッセイのための試薬を図示する。図中に示されるように、野生型標的核酸に特異的な侵入切断アッセイ試薬のセットは、同じフルオロフォア−クエンチャー対を担持することができる。同様に、突然変異遺伝子型に特異的な侵入切断アッセイ試薬のセットは、互いに同じであるが、野生型配列の検出に使用される対とは異なるフルオロフォア−クエンチャー対を担持することができる。上流/下流の矢印は、一次プローブと、そのそれぞれの標的核酸とのサイクリングハイブリダイゼーション/解離;および切断された5’フラップと、相互作用標識対を含むそのそれぞれのFRETカセットとのサイクリングハイブリダイゼーション/解離を表す。サイクリングは、侵入切断反応最適温度で起こり、このモデルシステムでは、第II因子侵入切断アッセイについては72℃、MTHFR677侵入切断アッセイについては63℃;第V因子侵入切断アッセイについては53℃;およびMTHFR1298侵入切断アッセイについては43℃であると示される。
【0124】
完全な反応混合物(標的核酸鋳型、PCRプライマー、DNA前駆体(すなわち、dNTP)、8つの異なる侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチド試薬、熱安定性DNAポリメラーゼ、および熱安定性FEN酵素を含む)を、熱サイクリングにかけ、核酸増幅手順の間に規則的なサイクル間隔で蛍光をモニタリングし、次いで、終点検出を行うことができる。侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチド試薬は、4つの標的核酸のそれぞれのための1つの侵入プローブ(WTとMut遺伝子型を区別する必要はない)、4つの標的核酸のそれぞれのための1つのWTおよび1つのMut一次プローブ、ならびに8つの異なる一次プローブのそれぞれのための1つのFRETカセット(すなわち、4つの標的核酸のそれぞれのための1つのWTおよびMut)を含む。温度サイクリングは一般に、二本鎖核酸を変性させるための初期の高温インキュベーション、次いで、プライマーのアニーリング、プライマー伸長を可能にする一連のサイクル、ならびに蛍光シグナル発生を可能にする少なくとも1つの一次および二次反応を含む。DNA重合ステップの終わりでの多重化侵入切断反応を使用する標的核酸の検出は、検出されるそれぞれの異なる標的核酸について単一の温度で一次および二次反応を実施することにより、または全ての一次反応を単一の温度で起こさせた後、個々の二次反応を起こさせるために段階的な温度サイクルにかけることにより、または1もしくは複数の温度で2もしくはそれ超の一次反応を起こさせた後、個々の二次反応を起こさせるために段階的な温度サイクルにかけることにより行ってもよい。
【0125】
リアルタイムおよび任意選択の終点読取り中に収集された蛍光シグナルデータのプロセッシングにより、異なる標的核酸を独立に検出することができる。一般的な用語では、反応混合物中で起こるそれぞれの異なる二次反応(すなわち、同じフルオロフォアを使用して連続様式で)は、リアルタイムでモニタリングされても、または終点読取りとしてモニタリングされても、累積様式で蛍光レベルを付加する。測定された蛍光を、特定の二次反応に割り当て、手順を通して追跡することができる。多重侵入切断アッセイにおける他の(例えば、先行する)二次反応に起因する寄与を差し引くことにより、個々の反応に起因する蛍光シグナルを単離することができるようになる。これは、リアルタイムおよび終点蛍光データの集合に当てはまり、両方とも以下の実施例2に示される。
【0126】
図6は、4つの標的核酸をどのように増幅することができるかを例示する;PCRプライマーの位置を示す(矢印で示される);侵入プローブの、異なる標的核酸へのハイブリダイゼーションを図式化する;および4つの侵入切断アッセイのそれぞれにおける使用のための2つの一次プローブおよび2つのFRETカセットを例示する。1つの一次プローブおよびその一次プローブの切断された5’フラップと相補的な領域を有するそれぞれのFRETカセットを、野生型および突然変異配列のそれぞれのために使用する。段階的な温度プロファイルは、侵入切断アッセイが特定の温度で活性であることを例示する。図面の右側の4つの囲んだリアルタイム実行曲線の略図は、野生型、第II因子、MTHFR677、およびMTHFR1298の検出;ならびに突然変異型の第V因子の検出と一致する結果を示す。第II因子核酸標的は、終点プロトコールを使用したMTHFR677、第V因子、およびMTHFR1298を検出する同じアッセイにおけるリアルタイムモニタリングによって検出される。単一チャネルに出現する蛍光が以前のステップにおいて検出された蛍光レベルに累積することが異なる実行曲線の検査から明らかである。
【0127】
温度のサイクリング
一部の実施形態では、異なる標的核酸に特異的な侵入切断反応により生成される蛍光シグナルに対応する、異なる温度ステップ中に取られる連続蛍光読取り値は、温度シフトが高温から低温に向かって順に起こる際に取られる。
【0128】
一部の実施形態では、多重侵入切断アッセイにおける異なる侵入切断アッセイの複数の一次反応は、共通の温度(すなわち、一次反応は共通の温度プロファイルを共有する)で起こり、異なる二次反応は異なる温度で、異なる標的核酸の存在を示す蛍光シグナルを生成する。この場合、蛍光読取りの連続ステップは、好ましくは、高温から低温に向かって順に起こる。
【0129】
一部の好ましい実施形態では、複数の核酸増幅産物の合成を、PCR反応などの核酸増幅反応中に反復サイクル(例えば、変性/プライマーアニーリング/プライマー伸長/蛍光読取りの完全なサイクル毎に1回;またはさらには1サイクルおきに1回)モニタリングする場合、多重化侵入切断アッセイ(例えば、同じ反応混合物中の異なる標的核酸を検出する2つのアッセイ)のための一次反応は、プライマー伸長のために使用される温度などの、共通の温度で起こってもよく、蛍光シグナルを生成する二次反応は、プライマー伸長反応を実施するために使用される温度よりも低いステップの温度で起こってもよく、ここで、異なる温度ステップは、少なくとも5℃、より好ましくは約5〜15℃、さらにより好ましくは5〜10℃離れている。温度ステップ間の差異により、多重アッセイにおける1つの二次反応を単一の時間で実行およびモニタリングすることができる。実際、異なる標的核酸の存在を示す2つの二次反応は、単一の時間で、または単一の温度ステップ中に起こるべきではない。この手法により、それぞれの多重化アッセイが反応進行の指標として同じフルオロフォアを使用する、異なる標的核酸に特異的な2、3、およびおそらく、さらには4またはそれ超の侵入切断アッセイを、単一の反応混合物中で組み合わせ、独立にモニタリングすることができる。PCR反応を特に参照すれば、蛍光シグナルを読み取るために使用される最低温度から、二本鎖核酸の変性のために使用される温度への急速な増大は、累積蛍光シグナルの小さな増大を可能にし得るが、結果の妥当性に影響することは公知ではない。これは、反応サイクル中の特定の温度ステップ中に生成される蛍光シグナルの規模がそれぞれのステップにおいて対応するベースラインまたはバックグラウンド値と比較されるからである。このように、特定の二次反応の特定のステップと関連する蛍光シグナルの量を決定することができる。
【0130】
オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション特性に影響する改変
多重化する能力を、反応条件(オリゴ濃度、酵素レベル、緩衝液、反応プロファイルなど)を調整することによってさらに増強することができる。この最適化は、蛍光色素あたり少なくとも3、より好ましくは4、おそらく5の回答を得る能力をもたらし得る。
【0131】
一部の実施形態では、本開示は、侵入切断アッセイにおいて使用されるオリゴヌクレオチド(すなわち、侵入プローブ、一次プローブ、および切断された5’フラップ)のハイブリダイゼーションおよびTmプロファイル特性を変化させるための方法を提供する。この手法により、多重化侵入切断アッセイの最適温度を調節し、したがって、互いに独立した少なくとも二次反応を維持することができる。オリゴヌクレオチドを変化させるためのある特定の例示的技術を、以下に提供する。
【0132】
i.ミスマッチオリゴヌクレオチド
一部の実施形態では、本開示は、少なくとも4〜6、もしくは10またはそれ超のヌクレオチドによって任意の切断部位から除去された位置で対応する標的配列と、1または複数(好ましくは、1)のミスマッチを有するオリゴヌクレオチドを提供する。開示される技術は、特定の機構に限定されない。実際、開示される技術を実行するために、その機構の理解は必要ない。それにも拘わらず、1または複数のミスマッチの存在は、オリゴヌクレオチドを標的に結合させるが、ミスマッチがない対応するオリゴヌクレオチドと比較して親和性が低下し、それによって、その標的核酸へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのためのTmに影響することが企図される。
【0133】
ii.電荷改変オリゴヌクレオチド
他の実施形態では、開示される技術は、結合効率を変化させるための電荷改変オリゴヌクレオチドを用いる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,780,982号を参照されたい)。一部の実施形態では、電荷改変オリゴヌクレオチドは、「電荷タグ」を含む。正に荷電した部分は、常に正の電荷を担持する必要はない。本明細書で使用される用語「正に荷電した部分」とは、その意図される使用の反応条件下で(例えば、所望の反応条件のpHの下で目的の分子に結合する場合)、正味の正電荷を有する化学構造を指す。実際、本開示の一部の好ましい実施形態では、正に荷電した部分は、それが適切な反応条件に導入されるまで正電荷を担持しない。これはまた、「pH依存的」および「pH非依存的」正電荷と考えられる。pH依存的電荷は、ある特定のpH条件下でのみ電荷を有するものであるが、pH非依存的電荷は、pH条件とは関係なく電荷を有するものである。
【0134】
別の実体に結合した場合、正に荷電した部分、または「電荷タグ」を、式:X−−Y(式中、Xは実体(例えば、核酸分子など)であり、Yは電荷タグである)で表すことができる。電荷タグを、直接的に、または中間体を介して(例えば、連結基を介して)、任意の好適な手段(例えば、共有結合、イオン相互作用など)により他の実体に結合させることができる。好ましい実施形態では、Xが核酸分子である場合、電荷タグは核酸分子の3’または5’末端のいずれかに結合される。
【0135】
電荷タグは、様々な成分を含有してもよい。例えば、電荷タグYを、式:Y−−Y(式中、Yは正電荷を電荷タグに提供する化学成分を含み、Yは別の所望の成分である)で表すことができる。Yは、例えば、色素、正電荷を電荷タグに提供する別の化学成分、他の分子の電荷タグへの結合のための官能基、ヌクレオチドなどであってもよい。そのような構造が別の実体Xに結合される場合、YまたはYのいずれかを、Xに結合させることができる。X−−Y−−YまたはX−−Y−−Y
【0136】
開示される技術は、正電荷を電荷タグに提供する化学成分の性質によって制限されない。そのような化学成分としては、限定されるものではないが、アミン(1級、2級、および3級アミン)、アンモニウム、およびホスホニウムが挙げられる。化学成分はまた、1または複数の正に荷電した金属イオンを捕捉する、またはそうでなければそれと会合する化学複合体を含んでもよい。
【0137】
本開示の好ましい実施形態では、電荷タグは、核酸分子(例えば、DNA分子)に結合される。電荷タグを、核酸分子上で直接合成するか、または例えば、固体支持体上もしくは液相中で合成した後、核酸分子または任意の他の所望の分子に結合させることができる。本開示の一部の好ましい実施形態では、核酸分子に結合される電荷タグは、H−ホスホネート化学、新規ホスホラミダイトの含有、またはその両方の組合せにより合成された1または複数の成分を含む。例えば、本開示の組成物は、[X]−−[Y−−Y−−Y−−Y](式中、[X]は核酸分子であり、[Y...]は電荷タグである)などの構造を含む。一部の実施形態では、Yは色素であり、YはH−ホスホネート化学を使用して合成され、正電荷を電荷タグに提供する化学成分を含み、Yは正に荷電したホスホラミダイトであり、Yはヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。Y成分はいずれも、互いに互換性である。
【0138】
上で考察されたように、電荷タグの1または複数の成分を、H−ホスホネート化学を使用して合成することができる。本明細書に記載の方法を使用する電荷タグの製造は、様々な電荷タグの設計のための便利かつ柔軟性のあるモジュラー手法を提供する。その導入以来、固相H−ホスホネート化学(B. C. Froehler、Methods in Molecular Biology、20巻:33頁、S. Agrawal編、Humana Press;Totowa、N.J. [1993年])は、天然の、改変された、および標識されたオリゴヌクレオチドおよびDNAプローブの化学合成における効率的な手段として認識されている。当業者であれば、この手法により、完全に改変されたホスホジエステル骨格を有するオリゴヌクレオチド断片の合成(例えば、オリゴヌクレオチドホスホロチオエート;Froechler [1993年]、上掲)またはホスホジエステル骨格の特定部分のみが改変されたオリゴヌクレオチド断片の合成(Agrawalら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、85巻:7079頁[1988年]、Froehler、Tetrahedron Lett. 27巻:5575頁[1986年]、Froehlerら、Nucl. Acids Res. 16巻:4831頁[1988年])が可能になることを知っている。H−ホスホネート化学の使用により、異なる型の改変の、オリゴヌクレオチド分子への導入が可能になる(Agrawalら、Froehler[1986年]、上掲、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc.、110巻:4470頁[1988年]、AgrawalおよびZamecnik、Nucl. Acid Res.18巻:5419頁[1990年]、Handongら、Bioconjugate Chem. 8巻:49頁[1997年]、Vinogradovら、Bioconjugate Chem. 7巻:3頁[1995年]、Schultzら、Tetrahedron Lett.36巻:8407頁[1995年])が、しかしながら、ホスホラミデート連結によるホスホジエステル連結の置き換えは、その有効性および合成の柔軟性のため最もよくある変化の1つである。FroehlerおよびLetsingerは、ホスホジエステル結合が正に荷電した基(例えば、3級アミノ基;Froehler[1986年]、Froehlerら[1988年]、およびLetsingerら、上掲)を担持するホスホラミデート連結により完全または部分的に置き換えられた改変オリゴヌクレオチドの合成においてこの手法を初めて使用した。
【0139】
開示される技術の一部の実施形態では、電荷タグは、H−ホスホネート化学を使用して生成される。電荷タグを、核酸分子の末端に集合させるか、または別々に合成し、核酸分子に結合させることができる。任意の好適なホスホリル化剤を、電荷タグの合成において使用することができる。例えば、添加される成分は、構造:A−B−−P(式中、Aは保護基であり、Bは任意の所望の官能基(例えば、正電荷を電荷タグに提供する官能基)であり、Pはリンを含有する化学基である)を含有してもよい。好ましい実施形態では、Bは、正電荷を電荷タグに提供することができる化学基を含む。しかしながら、一部の実施形態では、Bは、正に荷電した基の、電荷タグへの合成後の結合を可能にする官能基である。
【0140】
他の実施形態では、正に荷電したホスホラミダイト(PCP)および中性ホスホラミダイト(NP)が、正電荷および構造モジュレーションの両方を、合成された電荷平衡CREオリゴヌクレオチド中に導入するために用いられる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,780,982号を参照されたい)。
【0141】
ホスホラミダイト試薬を使用した標準的なカップリングプロトコール(オリゴヌクレオチドの化学合成と適合する)は、ホスホジエステル連結の形成に起因する、それぞれの実施されるカップリングステップあたり1つの負電荷の、成長している分子への導入と関連する。
【0142】
iii.核酸改変剤
オリゴヌクレオチド結合のハイブリダイゼーション強度を改変する任意の内部(例えば、オリゴヌクレオチドに対して)または外部因子が、本開示の方法および組成物と共に使用するのに好適である。それが侵入切断および/またはPCR化学に対して阻害的ではないか、または限られた阻害効果を有する限り、これが当てはまる。
【0143】
一部の実施形態では、本開示は、挿入剤を含むオリゴヌクレオチドを提供する。挿入剤は、DNA中の続く塩基の間にそれ自身を挿入することができる薬剤である。一部の実施形態では、挿入剤は、核酸の結合特性を変化させる。
【0144】
挿入剤の例は、当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、臭化エチジウム、プソラレンおよび誘導体、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、フルオロクマリン、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウムポリピリジル、およびアントラマイシンが挙げられる。
【0145】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率を改変する(例えば、増大させるか、または低下させる)ために、副溝DNA結合剤が使用される。副溝結合剤の例としては、限定されるものではないが、デュオカルマイシン(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるBoger、Pure & Appl. Chem.、66巻、4号、837〜844頁を参照されたい)、ネトロプシン、ビスベンズイミダゾール、芳香族ジアミジン、レキシトロプシン、ジスタマイシン、および非融合芳香族系に基づく有機ジカチオン(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,613,787号を参照されたい)が挙げられる。
【0146】
さらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率を変化させるために、改変塩基が使用される。例えば、一部の実施形態では、荷電した基を含む改変塩基が使用される。例としては、限定されるものではないが、改変オリゴヌクレオチド中での「T」ヌクレオチドの、「アミノ−T」との置換が挙げられる。
【0147】
さらに他の実施形態では、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を変化させる基の共有結合によって、オリゴヌクレオチドの1または複数のヌクレオチドが改変される。例としては、限定されるものではないが、アミノ酸のヌクレオチドへの結合が挙げられる。
【0148】
さらに他の実施形態では、ハイブリダイゼーション特性を変化させるために、塩基類似体を有するオリゴヌクレオチドが使用される。例えば、一部の実施形態では、水素結合を形成しないが、塩基スタッキングには依然として参加するヌクレオチドが使用される。例としては、限定されるものではないが、2,4−ジフルオロトルエンなどの非極性芳香族ヌクレオシド類似体ならびに5−ニトロインドールおよび3−ニトロピロールなどの「ユニバーサル」塩基が挙げられる。他の実施形態では、水素結合能力を保持する塩基類似体が使用される(例えば、それぞれあらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願US20040106108A1およびWO04/065550A3を参照されたい)。
【0149】
iv.オリゴヌクレオチド長
さらに他の実施形態では、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を変化させるために、オリゴヌクレオチド長を変化させる。
【0150】
v.二次構造
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率を変化させるために、二次構造が用いられる。例えば、一部の実施形態では、2またはそれ超のオリゴヌクレオチドが、同じ標的配列にハイブリダイズするように設計される。一方のオリゴヌクレオチドは、最小の二次構造を有するように設計される。標的配列認識を保持するが、二次構造を有するさらなるオリゴヌクレオチドが設計される。二次構造を有するオリゴヌクレオチドは、変化したハイブリダイゼーション特性を示すことが企図される。
【0151】
vi.反応条件
さらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション特性を変化させるために反応条件が改変される。核酸ハイブリダイゼーション条件に影響するパラメータの例としては、限定されるものではないが、イオン強度、緩衝液組成、pH、および添加剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびタンパク質)が挙げられる。
【0152】
vii.積み重ねオリゴヌクレオチド
さらなる実施形態では、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション特性を変化させるために隣接してハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが使用される。核酸の短い鎖がより長い鎖に沿って連続的に整列する場合、骨格が実際に連続している場合であっても、塩基対はヘリックスに沿って積み重なることができるため、それぞれのハイブリダイゼーションは、近隣の断片のハイブリダイゼーションによって安定化される。この結合の協調性は、より長い核酸に単独でハイブリダイズする断片について予想されるものを超える相互作用の安定性をそれぞれの断片に与えることができる。協調的結合における摂動の事象(例えば、連続二本鎖間の境目での、またはその近くでのミスマッチによる)においては、この協調性を減少させるか、または除去することができる。本開示の一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1または複数の隣接してハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと異なる様式で協調するように構成され、異なるハイブリダイゼーション特性を提供する。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、隣接オリゴヌクレオチドとの境目の近くに1または複数のミスマッチ塩基を含み、ミスマッチを欠くオリゴヌクレオチドと比較して、結合の協調性を変化させるか、または破壊する。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、隣接塩基との積み重ね相互作用を軽減するように選択された1または複数の塩基類似体を含む。さらに他の実施形態では、協調性を変化させ、かくして、ハイブリダイゼーション特性を変化させるために、1または複数のヌクレオチドのギャップ(例えば、トランケートされたプローブの使用による)を使用することが想定される。
【0153】
viii.他の手法
オリゴヌクレオチドに特徴的なハイブリダイゼーションを変化させるための任意の他の方法を、開示される技術と共に使用することもできる。他の例としては、限定されるものではないが、緩衝液条件(例えば、グアノシンクオーターの使用)またはタンパク質/核酸相互作用(例えば、核酸配列に結合するか、またはそれを変化させる核酸結合タンパク質または酵素のための結合部位を作出することによる)に応答して、配列が異なるハイブリダイゼーション挙動の影響を受けやすくなるオリゴヌクレオチドまたは標的中での配列の使用;懸垂末端の使用(例えば、懸垂末端の安定化および積み重ねのため);磁場での核酸の濃縮を可能にする鉄または他の磁性剤の結合;特定のオリゴヌクレオチドを滴定する薬剤の使用などが挙げられる。
【0154】
多重侵入切断アッセイを行うための自動化システム
一部の実施形態では、開示される多重侵入切断アッセイは、温度制御されたインキュベータおよびそこに含有される試料をモニタリングするための付属の蛍光光度計を含む自動化核酸分析装置を使用して実行される。蛍光光度計は、蛍光放出を、好ましくは、反応時間の関数として測定する。
【0155】
一般的に言えば、有用な自動化分析装置は、1または複数の温度制御されたインキュベータ(例えば、チャンバまたは熱ブロック);蛍光放出の検出による反応混合物中での反応進行のモニタリングを可能にする光学システム;反応ベッセルの位置および/または熱ブロックの温度の変化を指令するコントローラ;ならびに蛍光放出データを収集、分析し、試料中の複数の標的核酸の存在または量に関する出力を提供するコンピュータまたはプロセッサを含む。好ましい実施形態では、反応進行のモニタリングは、反応進行を時間の関数としてモニタリングすることを含む。
【0156】
一部の実施形態では、自動化システムは、それぞれのチャンバが実質的に一定の温度を維持し、反応ベッセルまたはレセプタクルがそこに含有される反応混合物の温度を変化させるためにチャンバの中と外に移動する、複数の温度制御チャンバを含む。一部の実施形態では、自動化システムは、試験のための単離および精製された核酸を使用して多重侵入切断アッセイを実施する前に核酸を単離および精製するステップをさらに実施する(例えば、米国特許第8,349,564号(この特許の開示はあらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。自動化されたin vitroでの診断試験のためのPanther(商標)システム(Hologic,Inc.)は、本明細書に開示される技術を実行するために使用することができる機器の一例である。
【0157】
一部の実施形態では、自動化システムは、反応ベッセルまたはレセプタクルを受容し、そこに含有される反応混合物の温度を変化させるために温度を変化させる、単一の温度制御チャンバまたは熱ブロックを含む。温度の変化は、好ましくは、熱サイクリングデバイスの統合構成要素または熱サイクリングデバイスと連絡する(例えば、有線または無線接続により)スタンドアローン型のプログラム可能なコンピュータであってよい、プログラム可能なコンピュータによって制御される。当業者であれば、核酸増幅反応(例えば、PCR反応)を行うためのいくつかの熱サイクリング機器およびシステムを知っており、これらの機器およびシステムを、開示される技術によって多重侵入切断アッセイを実施するためにどのように容易に使用することができるかを理解できる。本明細書に記載の方法を実行するために使用することができるデバイスの例としては、Mx3005P(商標)リアルタイムPCRシステム(Stratagene);およびLightCycler(登録商標)480機器(Roche Diagnostics)が挙げられ、両方とも核酸を増幅および検出するのに有用なプレートに基づくリアルタイムPCRデバイスである。使用することができる他のシステムとしては、4色検出、および反応ベッセルとして複数ウェルプレートまたはチューブの任意選択の使用を提供する、Chromo4(商標)Real−Time PCRシステム(BioRad)が挙げられる。さらに他のシステムとしては、Applied Biosystems 7500 Fast Real−Time PCRシステム(Applied Biosystems);およびViiA(商標)7 Real−Time PCRシステム(Life Technologies)が挙げられる。これらのデバイスおよびシステムは、モニタリングされる反応を実施しながら、固定された位置に保持する、反応混合物の温度を調整するための熱ブロックを含む。
【0158】
好ましくは、多重侵入切断アッセイを実施するための反応混合物は、第1の酵素反応(例えば、逆転写、5’フラップ切断、FRETカセット切断など)が開始される時間までに完成し、他のものとは独立にそれぞれの標的の存在を示すシグナルを検出するステップの前に追加の試薬を添加する必要はない。かくして、第1の酵素反応が開始した後に追加の試薬を必要とすることなく、反応ベッセル(例えば、密閉および密封された反応ベッセルを含む)中で、方法を実行することができる。一部の好ましい実施形態では、方法は、増幅されなかったゲノムDNAを使用して実行される。一部の好ましい実施形態では、方法は、侵入プローブおよび一次プローブのハイブリダイゼーションのためのDNA標的を作出する逆転写に続く侵入切断反応を含む。一部の好ましい実施形態では、方法は、侵入プローブおよび一次プローブのハイブリダイゼーションのためのDNA標的を作出するPCR反応に続く侵入切断反応を含む。一部の好ましい実施形態では、シグナル増幅、感度、および侵入切断反応を使用してシグナルを定量する能力のため、ポリメラーゼ連鎖反応のみを使用する場合、限られたサイクルのみを使用する必要がある(例えば、少なくとも1サイクルであるが、20、15、12、10以下、またはそれ未満のサイクル)。
【0159】
好ましいコンピュータ制御およびデータプロセッシングシステム
本明細書に開示される方法は、コンピュータまたは同様のプロセッシングデバイス(以後、「コンピュータ」)を使用して都合良く実装される。異なる好ましい実施形態では、多重侵入切断アッセイを実行および分析するためのソフトウェアまたは機械で実行可能な命令を、フリースタンド型コンピュータのメモリ構成要素、または好ましくは時間の関数として、分析を受けている蛍光シグナルの規模をモニタリングするために使用されるデバイスに連結されたコンピュータのメモリ構成要素中にロードするか、またはそうでなければ保持することができる。非常に好ましい実施形態では、多重侵入切断手順を実行するためのソフトウェアは、時間の関数として反応混合物中で生成された蛍光シグナルをモニタリングすることができるデバイスの統合部分に連結された、または統合部分であるコンピュータのメモリ構成要素中に保持される。リアルタイム核酸増幅を実施およびモニタリングするためのコンピュータ制御された機器を、適切なソフトウェア命令を用いる改変により、多重侵入切断アッセイを実行するために適合させることができる。
【0160】
核酸増幅デバイスおよび/またはリアルタイム増幅デバイスの検出システムを制御するためのコントローラシステムのいずれかまたは両方を、プログラムされた命令またはユーザーが入力した命令に従ってこれらの機器の動作を命令するように機能する適切にプログラムされたコンピュータにカップリングさせることができる。コンピュータは、好ましくは、これらの機器からデータおよび情報を受け取り、この情報を解釈し、操作し、それをユーザーに報告する。
【0161】
一般に、コンピュータは、典型的には、パラメータ場のセットへのユーザー入力の形態、または予めプログラムされた命令(例えば、様々な異なる特定の操作について予めプログラムされた)の形態の、ユーザー命令を受け取るための適切なソフトウェアを含む。予めプログラムされた命令は、バーコードなどの、機械で読み取り可能なコードの形態を取ってもよい。ソフトウェアは、これらの命令を、所望の操作を実行するためのリアルタイム増幅コントローラの運転を命令するための適切な言語に変換する。コンピュータはまた、システム内に含まれる1または複数のセンサー/検出器からデータを受信し、プログラミングに従ってそのデータを解釈することもできる。システムは、好ましくは、多重アッセイ中の侵入切断アッセイの異なる二次反応の実施中に蓄積された蛍光の規模および/または変化率を分析するソフトウェアを含む。一部の実施形態では、ソフトウェアは、多重アッセイの複数の侵入切断アッセイの単一の二次反応の温度条件下、一定時間に蓄積された蛍光の規模、またはあるいは、蛍光シグナル蓄積率を独立に分析する。一部の実施形態では、ソフトウェアは、次いで、測定されたシグナルの量、またはあるいは、シグナル蓄積率を比較して、閾値との比較により、標的核酸が検出されたかどうかを決定する。
【0162】
好ましくは、多重侵入切断アッセイを実行および/または分析するために使用されるコンピュータが、リアルタイム核酸増幅反応を実施および分析するための装置の統合構成要素である場合、装置は、好ましくは、温度制御されたインキュベータ、シグナルを収集するための検出デバイス、シグナルを分析するための分析デバイス(例えば、コンピュータまたはプロセッサ)およびデバイスを分析することにより得られるか、または生成されるデータを表示するための出力デバイスを含む。分析デバイスを、当技術分野で公知の入力デバイスを介して温度制御されたインキュベータに接続する、および/またはデータ表示のために当技術分野で公知の出力デバイスに接続することができる。一部の実施形態では、温度制御されたインキュベータは、温度サイクリングを行うことができる。
【0163】
以下に考察されるように、開示される方法と共に有用である装置の様々な構成要素は、当業者であれば精通している従来の構成要素である。温度制御されたインキュベータは、複数の反応チューブ、または反応試料を、標準的な増幅反応チューブまたは複数ウェルプレートのウェル中の温度制御ブロック中に保持することができる従来の設計のものであってもよい。一態様では、検出システムは、1または複数の蛍光標識から光学シグナルを検出するのに好適である。検出システムの出力(例えば、二次反応中に生成されたものに対応するシグナル)を、データ保存および操作のためにコンピュータに供給することができる。一実施形態では、システムは、複数の異なる型の蛍光標識などの、複数の異なる型の光学シグナルを検出し、マイクロプレート蛍光リーダーの能力を有する。検出システムは、好ましくは、可視光レーザーまたは紫外線ランプまたはハロゲンランプであってもよい励起光源、励起光を個々の反応チューブに分配するため、および反応チューブから蛍光を受け取るための多重デバイス、波長によって励起光から蛍光を分離するためのフィルタリング手段、ならびに蛍光強度を測定するための検出手段を含有する多重化蛍光光度計である。好ましくは、温度制御されたインキュベータの検出システムは、フルオロフォア選択の可撓性、高感度および優れたシグナルノイズ比を可能にする広い検出範囲を提供する。検出システムにより受け取られる光学シグナルは、一般に、プロセッサによって操作することができるシグナルに変換され、プロセッサと連絡するユーザーデバイスのディスプレイ上でユーザーが見ることができるデータを提供する。ユーザーデバイスは、ユーザーインタフェースを含むか、またはキーボードおよびビデオモニターを含む従来の市販のコンピュータシステムであってもよい。ユーザーデバイスによって表示することができるデータの例としては、増幅プロット、散乱プロット、アセンブリ中の全てのチューブまたは反応ベッセルに関する、および使用される全ての標識に関する試料値スクリーン、光学シグナル強度スクリーン(例えば、蛍光シグナル強度スクリーン)、速度スクリーン(例えば、時間の関数としての蛍光強度の変化を示す)、最終コール結果、テキスト報告などが挙げられる。
【0164】
データプロセッシング方法を実施するためのソフトウェアに基づく製品(例えば、様々な手順ステップを実行するようにコンピュータに命令するためのソフトウェアの有形の実施形態)は、本開示の範囲内に含まれる。これらのものは、磁気媒体、光学媒体、「フラッシュ」メモリデバイス、およびコンピュータネットワークなどの、コンピュータ可読媒体上に保存された非一時的な(例えば、「有形」実施形態)ソフトウェア命令を含む。同様に、本開示は、核酸を増幅し、核酸増幅産物を検出し、結果を処理して試験試料中の標的に関する定量結果を指示するシステムまたは装置を包含する。装置の様々な構成要素は、協調様式で機能することが好ましいが、構成要素は統合型アセンブリ(例えば、単一の筐体上)の一部である必要はない。しかしながら、好ましい実施形態では、装置の構成要素は、一緒に接続される。有線および無線接続による接続が、「接続される」の意味に含まれる。
【0165】
特に、コンピュータが本明細書に開示される蓄積蛍光の分析を実行するようにプログラムされた、核酸を増幅し、サイクル数または時間の関数としてアンプリコン合成をモニタリングするデバイスに連結されたコンピュータを含む装置またはシステムが、本開示の範囲内にある。本開示による例示的システムは、温度制御されたインキュベータ、および少なくとも2、より好ましくは3、さらにより好ましくは4またはそれ超の波長の蛍光放出をモニタリングし、区別することができる蛍光光度計を含む。これらの放出を使用して、標的アンプリコン合成を示し、さらに使用して、同時に実施することができる多重侵入切断アッセイの回数を拡張することができる。
【0166】
データプロセッシングソフトウェア
多重侵入切断アッセイからのデータをプロセッシングするコンピュータ中にロードおよび実装されるソフトウェアは、典型的には、ある特定のデータを「収集すること」を含む初期ステップを命令する。これは、データファイルから定量情報を回収すること、およびその情報がソフトウェアと共に動作する電子表計算に適切に入力されることを保証することを含む。ソフトウェアが試験またはプロセッシングを受ける反応混合物中の蛍光シグナルをモニタリングする(例えば、時間の関数として)蛍光光度計を装備した分析システムのコンピュータ構成要素中にロードされる場合、データを、直接または間接に(例えば、機械インタフェースにより)、機器の蛍光光度計から収集することができる。データを収集するステップはまた、ある特定のプロセッシングステップ、例えば、直線の勾配を算出するステップ、変化率を算出するステップなども包含する。そのようなプロセッシングステップの結果を、収集されたデータの一部と考えて、関連情報がソフトウェアによって指令されるその後の操作に利用可能であることを保証することができる。
【0167】
一般的に言えば、収集されたデータは、本明細書に開示される多重方法と関連する。より具体的には、データは、単一のフルオロフォアにより反応混合物中で産生された蛍光シグナルの規模に関する情報を含み、ここで、複数の異なる侵入切断アッセイの二次反応は全体の蛍光読取りに寄与した。一部の例では、「陰性対照」反応(すなわち、分析物核酸を含まない反応)からの結果が、収集データに含まれる。一般的には、特定の反応が始まる前の蛍光シグナル規模を反映する、「バックグラウンド」シグナルも収集される。単一の手順の中に複数のバックグラウンド蛍光読取り値が存在してもよい。バックグラウンド読取り値は、特定の二次反応が始まって、蛍光シグナルの有意な増大を生成する前の蛍光の検出可能レベルを示す。これを、反応が始まる前に取った蛍光読取り値から決定することができるが、反応が始まった直後の、蛍光の意味のある変化を観察するための十分なシグナルを産生する十分な時間がないうちに決定することができる。
【0168】
ソフトウェアの別の特徴は、試験を受ける試料中の異なる標的核酸の存在または量に関する決定を行う前に、収集されたデータセットに由来する異なる要素を「比較すること」を含む。比較ステップは、2つの数値間の差異が、有意性を割り当てるのに使用される閾値より上または下であるかどうかを単に決定することを含んでもよい。例えば、試験試料と対照試料との蛍光読取り値の決定された差異が有意であるかどうかを決定するために、閾値を使用することができる。当業者であれば、この目的のための閾値の設定が陽性対照(目的の標的核酸を含有することが分かっている、プロセッシングされた試料)の使用を含んでもよく、一般的には、日常的な努力のみを含むことを理解できる。差異が有意性のレベルに上昇するかどうかは、用語「実質的により高い」(すなわち、有意差)または「実質的に同じ」(例えば、本質的に等しい)の使用によって表されることもある。
【0169】
ソフトウェア命令はまた、ある特定の「決定」を行うこと、次いで、これらの決定の記録を「出力すること」も指令する。決定は、コンピュータ上に保存するか、またはソフトウェアと共に提供することができる、標準的な参照テーブルをチェックすることに依拠してもよい。参照テーブルにおけるエントリーの例は、ある特定の基準が満たされたかどうかに基づいて標的核酸の有無に関する決定を割り当てることを含む。バックグラウンドシグナルが実質的に同じか、または異なっていたかどうか;および時間またはサイクル依存的な変化割合(例えば、直線の勾配によって判定される)が、対照値を超えるか、または超えないかどうかが、そのような基準の例である。出力される決定は、紙に印刷された記録などの有形の(例えば、非一時的な)出力の形態を取ってもよい。あるいは、出力される決定は、電子表示またはコンピュータモニター上に提示される情報の形態を取ってもよい。
【0170】
多重侵入切断アッセイと共に有用であるソフトウェアの一部の好ましい例は、単独で、または終点結果と組み合わせた、リアルタイム核酸増幅結果のプロセッシングにとって特に有用である。
【0171】
再度、これらの適用のためのソフトウェア命令は、多重侵入切断アッセイに関するある特定のデータを収集することを含む初期ステップを指令する。典型的には、このデータは、特定の二次反応が実質的に始まって、蛍光シグナルの増大をもたらす前に測定された蛍光シグナルのバックグラウンド読取り値に関する。同様に、特定の二次反応が始まった後に測定された少なくとも1つの蛍光シグナルが存在する。反応が特定の時点で活性または不活性であるかどうかを、反応温度を調整して、二次反応のための最適温度に一致させるか、または少なくとも5℃異なるようにすること(その点で、反応中のサイクリングが実質的に減少する)によって制御することができる。1より多い標的核酸の増幅を、リアルタイム形式を使用して多重侵入切断アッセイにおいてモニタリングする場合、ソフトウェアは、本質的には、バックグラウンド状態を、異なる二次反応と関連する以前の読取り値に関する最終的な蛍光シグナル読取りに割り当てることができ、バックグラウンドレベルを超える増大を、モニタリングされる新しい二次反応と関連付ける。ソフトウェアは、反応混合物からの蛍光放出の進行的増大を追跡し、必要に応じて、複数の二次反応の一方または他方に増分増加を割り当てる。
【0172】
リアルタイム形式アッセイ(すなわち、反応サイクルが起こっているときに増幅された標的核酸の検出に適用される多重侵入切断アッセイ)の後、多重侵入切断アッセイの終点決定を行う場合、アッセイの終点部分でモニタリングされる標的核酸に起因する蛍光シグナルの規模を、アッセイのリアルタイムでモニタリングされる部分の最終的な蛍光読取り値に対応する、終点蛍光シグナル読取り値と、「バックグラウンド」との差異としてソフトウェアによって算出する。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、二次反応が異なる温度条件下で起こる間に、2つの多重化侵入切断アッセイ(すなわち、一方はヒト標的核酸に特異的であり、他方は細菌標的核酸に特異的である)の一次反応をどのように単一の温度条件下で実行することができるかを示す。蛍光シグナルを、2つの温度条件の下側で行われた線形二次反応中に時間の関数としてモニタリングした。2つの多重化二次反応のうちの一方のみが、任意の時間に2つの温度条件のそれぞれの下で活性であった。これにより、多重化二次反応が時間的に単離されていることが確認された。
【0174】
実施例1は、単一の蛍光リポーターを含む単一の反応混合物中の複数の標的を検出するために使用される多重侵入切断アッセイを示した手順および結果を記載する。結果により、複数の標的核酸が独立に検出されたことが確認された。
【0175】
(実施例1)
多重侵入切断アッセイにおけるヒトおよび細菌の標的核酸の検出
様々な生物試料に由来するrRNAを検出するための完全反応混合物を、自動化in vitro診断試験のためにPanther(商標)システム(Hologic,Inc.)を使用して調製した。反応混合物は、試験試料中に存在し得るヒトまたはPrevotella細菌rRNAと相補的な第1鎖cDNAを合成するのに必要なオリゴヌクレオチドプライマーおよび試薬(例えば、4種のデオキシリボヌクレオチド、緩衝液、塩など)を含んでいた。反応混合物はさらに、2つの標的のそれぞれについて:1つの侵入プローブ;5’フラップ配列を含む1つの一次プローブ;およびフルオレセイン(FAM)フルオロフォアとEclipseクエンチャー(Epoch Biosciences,Inc.)との組合せで標識された1つのFRETカセットを含んでいた。かくして、それぞれのFRETカセットは、エネルギー移動関係にある同じ相互作用標識対を含み、フルオレセイン部分がクエンチャーとして同じFRETカセットに結合した場合に蛍光放出がクエンチされた。ヒト標的cDNAの、ヒト特異的侵入プローブおよび一次プローブとのハイブリダイゼーションのためのTmは、それぞれ、69℃および64℃であった。ヒト特異的一次プローブから切断された5’フラップの、FRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmは、63℃であった。細菌標的cDNAと、細菌特異的侵入プローブおよび一次プローブとのハイブリダイゼーションのためのTmは、それぞれ、約68℃〜70℃(例えば、69℃)および約63℃〜65℃(例えば、64℃)の範囲であった。細菌特異的一次プローブから切断された5’フラップの、FRETカセットへのハイブリダイゼーションのためのTmは、43℃であった。
【0176】
図7は、リアルタイム蛍光モニタリングのために構成されたPanther(商標)システム上での、多重侵入切断アッセイを含む、侵入切断アッセイを行うための試料ワークフロー図を例示する。長方形は、機器中の異なるステーションおよび温度での期間を表す。反応混合物の成分を、試験試料を含有する単一の反応ベッセル中、2つのアリコートで分注した。試薬の添加はAmpLoadステーション中で行い、ロボットピペッティングが試薬を反応ベッセルに送達した。オリゴヌクレオチド(すなわち、逆転写酵素プライマー、侵入プローブ、一次プローブ、およびFRETカセット)および試薬(緩衝液、塩、dNTP)を1つのアリコートに送達したが、MMLV逆転写酵素および熱安定性Cleavase(登録商標)X酵素(Hologic,Inc.)を第2のアリコートに送達した。一度、反応混合物が完成したら、全ての結果が得られるまで、反応ベッセルに追加の試薬を添加しなかった。ヒトまたは細菌DNAを含有しなかった標本輸送媒体を使用する試験は、陰性対照として役立った。同様に、rRNAを含有するヒトおよび細菌の細胞溶解物は、それぞれ、ヒトおよび細菌核酸の存在に関する陽性対照として役立った。
【0177】
反応混合物を、本質的には図7中のワークフロー図に従って自動化されたPanther(商標)機器上でプロセッシングした。反応混合物を、44℃で約5分間インキュベートして、逆転写のプロセスによる2つの(すなわち、ヒトおよび細菌)標的配列のそれぞれからのcDNA鎖の合成を可能にした。次いで、混合物を含有する反応ベッセルを、約26分間、64℃のインキュベータに移した。この高温インキュベーション中には、蛍光読取り値を取らなかった。ヒト特異的アッセイのための一次および二次侵入切断反応、ならびにPrevotella特異的アッセイのための一次侵入切断反応(二次侵入切断反応ではない)は、64℃のインキュベーション中に起こった。次に、混合物を含有する反応ベッセルを、43℃のインキュベータに移し、そこではPrevotella特異的アッセイの二次侵入切断反応のみが起こった。ヒト特異的アッセイの侵入切断反応はいずれも、43℃でのインキュベーション中に活性ではなかった。Prevotella特異的アッセイの一次侵入切断反応も、43℃でのインキュベーション中に活性ではなかった。時間の関数としての蛍光モニタリングが43℃の温度条件下で開始する前に、約1分間経過していた。自動化Panther(商標)機器上の蛍光光度計の単一チャネルを使用して、43℃で約50分間、蛍光シグナルをモニタリングした。より具体的には、フルオレセインからの放出を、反応進行の指標としてモニタリングした。
【0178】
図8Aは、43℃のインキュベーション中の反応時間の関数としての生の蛍光を示す。この図面は、陰性対照試料(下側の線);Prevotella細菌標的核酸を含むが、ヒト標的核酸を含まない試料(中央の線);およびPrevotella細菌標的とヒト標的核酸の両方を含む試料(上側の線)について得られた組合せ結果を提示する。陰性対照は、予想通り、蛍光読取り値が時間と共にわずかに増加する、低レベルのベースライン活性を示した。Prevotella細菌標的を含むが、ヒト標的核酸を含まない反応混合物は、陰性対照と実質的に同じレベルの出発蛍光から開始し、次いで、時間と共に着実に増加した。これは、Prevotella標的の存在を示し、ヒト標的核酸に特異的な二次反応が測定された蛍光シグナルに寄与しないことをさらに示していた。別の言い方をすれば、ヒト標的核酸に特異的な侵入切断アッセイは、ヒト標的核酸を含まなかった試料でも64℃でインキュベートする間に行われたのだが、検出可能なシグナルを生成しなかった。ヒト標的の検出のための二次反応は、蛍光が43℃の温度条件下で読み取られた時点で既に完了していたため、ヒトと細菌の両方の標的核酸を含む試験について得られた結果は、より高い出発レベルの蛍光から開始した。より高い出発蛍光読取り値は、試験を受ける試料中のヒト標的核酸の存在を示していた。蛍光のさらなる時間依存的増大により、細菌標的核酸も試験される試料中に存在することが示された。さらに、プロット上の中央および上側の線の実質的に類似する勾配は、蛍光を43℃のインキュベーション中に読み取った場合、細菌標的核酸に特異的な二次反応のみが活性であることを示していた。これは再度、両方の標的核酸の検出のために同じ蛍光リポーターを使用した場合であっても、多重アッセイにおける2つの二次反応の時間的単離を証明していた。
【0179】
図8Bは、図8Aに示されたものと類似する結果から誘導されたデータを提示する。43℃のインキュベーションの開始時に測定された最小蛍光シグナル(y軸)を、様々な試料について示す。これらのものは、高レベルのヒト標的を有するが、低レベルの細菌標的核酸を有する試料(186E_2および191L_2);低レベルのヒトと細菌の両方の標的核酸を有する試料(BV−10_2);低レベルのヒト標的を有するが、高レベルの細菌標的核酸を有する試料(CS_P_Gvag_2);高レベルのヒトと細菌の両方の標的核酸を有する試料(CS_P_Gvag_H_2);ヒトまたは細菌の標的核酸を含まない陰性対照(STM);および高レベルのヒト標的を含むが、低レベルの細菌標的核酸を含む2つの陽性対照試料(TP−07_2およびTP−08_2)を含んでいた。43℃のインキュベーションの開始時の最小蛍光の規模は、試験を受ける試料がヒト標的核酸を含むかどうかを示していた。この決定を、64℃のインキュベーション中に(すなわち、ヒト標的に特異的な一次および二次侵入切断反応が活性であったときに)蛍光シグナルの出現をモニタリングすることによって行うことができたが、本明細書に記載の手法は、それが不要であることを示していた。その代わりに、終点測定を使用して決定を行うことができた。
【0180】
図8Cはまた、図8Aに示されたものと類似する結果から誘導されたデータを提示する。この例では、蓄積された蛍光シグナルの速度を、図8Aのものと類似する線の勾配から決定した。速度測定値は、異なる試験試料が細菌標的核酸を含むかどうかを決定するのに有用であった。図8Aに示される上側の線および中央の線が、陰性対照の線の勾配よりも実質的に大きい正の勾配を特徴とすることが明らかであるべきである。同様に、図8Cに示される2つの試料は、実質的に陰性対照を超える速度を示し、それにより、これらの試料が細菌標的核酸を含んでいたことを示している。
【0181】
以下の実施例は、ヒト血液凝固カスケードの異なるタンパク質をコードする3つの標的核酸の組合せ(すなわち、第II因子、第V因子、およびMTHFR1298)の多重PCR増幅を例示する。3つの増幅された標的はそれぞれ、SNPによって区別される野生型または突然変異配列を含有していた。野生型または突然変異配列に特異的な多重侵入切断アッセイを使用して、異なる増幅された標的を検出した。ヒトは二倍体生物であり、3つの遺伝子標的が増幅されたため、9つの可能な遺伝子型を検出することができた(すなわち、ホモ接合野生型/ホモ接合突然変異型/ヘテロ接合体)。3つの増幅された標的のための単一のフルオロフォアおよび検出チャネル、ならびに残りの3つの標的のための異なるフルオロフォアおよび検出チャネルを使用する単一の多重侵入切断アッセイにおける終点検出およびリアルタイムモニタリングの組合せを例示するために。この手法により、それぞれの増幅された標的について、2つの異なるSNPのうちのどれが存在するかを同定することができた。
【0182】
実施例2は、単一のフルオロフォアを用いる多重侵入切断アッセイを、リアルタイム形式と終点形式の両方において使用して、標的核酸の独立した検出を可能にすることができる方法を示す手順を記載する。この例では、反応混合物中の3つの異なる標的核酸を検出するために、単一のフルオロフォアを使用した。SNPにより区別される3つの異なる配列を検出するために、多重形式も使用して第2のフルオロフォアを使用した。
【0183】
(実施例2)
リアルタイムモニタリングと終点検出の両方を使用する多重侵入切断アッセイとの統合型多重PCR
Mx3005PリアルタイムPCR機器(Stratagene)上での使用のために、単一の反応混合物を調製した。反応混合物は、以下の3つのヒト遺伝子配列:第II因子、第V因子、およびMTHFR1298のSNP含有断片を増幅するためのPCRプライマー対の独立したセットを含有していた。同様に、反応混合物は、一次プローブ対のセット(一方は野生型配列に特異的な各セットの一次プローブであり、他方は同じ増幅遺伝子中の突然変異SNP配列に特異的である)と共に、3つの標的遺伝子のそれぞれのための増幅産物中で高度に保存された配列を指向する侵入プローブを含んでいた。したがって、反応混合物は、それぞれ、異なる5’フラップ配列を有する6つの一次プローブを含有していた。一次プローブの1つから切断された5’フラップがただ1つのFRETカセットに見出される相補的配列にハイブリダイズすることができる、それぞれの一次プローブのための、3つの対になったセットのFRETカセットも存在していた。Redmond Red色素およびEclipseクエンチャーで標識されたFRETカセットを、野生型第II因子および第V因子、ならびに突然変異型MTHFR1298を検出する侵入切断アッセイのために使用した。これらのFRETカセットの切断により生成される蛍光放出シグナルを、PCR機器のROXチャネルにおいて検出した。FAMおよびEclipseクエンチャーまたはBlackBerry(登録商標)クエンチャーBBQ−650(登録商標)−dTで標識されたFRETカセットを、突然変異型第II因子および第V因子、ならびに野生型MTHFR1298を検出する侵入切断アッセイのために使用した。より具体的には、第II因子およびMTHFR1298標的核酸の存在を示す切断された5’フラップを検出するためのFRETカセットはBBQ−650(登録商標)−dTクエンチャーを担持していたが、第V因子標的核酸の存在を示す切断された5’フラップを検出するためのFRETカセットはEclipseクエンチャーを担持していた。これらのFRETカセットの切断により生成される蛍光放出シグナルは、PCR機器のFAMチャネル中で検出された。MTHFR677標的核酸を増幅および検出するためのオリゴヌクレオチドを省略したことを除いて、オリゴヌクレオチドの配置は本質的には図6に図示される。最後に、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、pH緩衝剤、および塩に加えて、熱安定性Taq DNAポリメラーゼおよびCleavase(登録商標)2.0酵素を含有させて、反応混合物を完成させた。
【0184】
熱サイクリングおよび蛍光検出およびモニタリングを、本質的には以下のように行った。反応混合物を、25℃で30秒間、初期化した。手順の開始時に、95℃で2分間、1回インキュベートすることにより、核酸を変性させた。この後、94℃で5秒間、および72℃で20秒間の40サイクルを行った。プライマー伸長と、第II因子の増幅された核酸を検出するための一次および二次侵入切断反応から得られる蛍光シグナルの検出は両方とも、72℃のインキュベーションステップ中に起こった。同様に、第V因子を検出するための、二次侵入切断反応ではなく、一次侵入切断反応も、72℃のインキュベーションステップ中に起こった。この後、99℃で5分間のインキュベーションを行って、Taq DNAポリメラーゼ酵素のさらなる活動を実質的に阻害した。次に、58℃で20秒間の9サイクル(すなわち、3分間のステップ)を実行し、第V因子を検出するための侵入切断アッセイの一次侵入切断反応ではなく、二次侵入切断反応中に生成された蛍光シグナルをモニタリングした。この後、43℃で20秒間の12サイクル(すなわち、4分間のステップ)を行い、その間、MTHFR1298標的核酸に特異的な侵入切断アッセイの一次および二次侵入切断反応が起こり、その間、蛍光シグナルを測定した。このように、異なる侵入切断アッセイのための少なくとも二次反応の時間を隔て、それにより生成された蛍光シグナルを手順の各サイクルまたはステップでの多重化アッセイの1つに起因すると考えた。より具体的には、様々な間隔中に読み取られた蛍光シグナルの規模をプロセッシングして、シグナルを、検出される6つの標的核酸の1つに対応する二次反応に起因すると考えることができた。これは本質的には、二次反応を評価する前のバックグラウンド蛍光シグナルの減算を含んでいた。例えば、58℃で第V因子を検出するための二次反応に起因する蛍光シグナルの規模を、第II因子シグナルについて72℃での最後の読取り後に決定された蛍光シグナル、またはあるいは、58℃で読み取った第1の蛍光シグナルの規模を、それぞれの58℃の蛍光読取り値から減算することによって決定することができた。
【0185】
結果は、3つの異なる野生型標的核酸配列を、1つのフルオロフォアを担持するFRETカセットを使用してそれぞれ独立に検出することができ、一方、3つのSNPを、異なるフルオロフォアを担持するFRETカセットを使用してそれぞれ独立に検出することができることを示していた。図9Aは、反応サイクル数の関数としての生の蛍光読取り値を提示する。図9Bは、特定のフルオロフォアを用いる3つの多重化侵入切断アッセイの1つの検出に起因する蛍光増加を単離するためのバックグラウンド減算後の図9Aに由来するデータを提示する。より具体的には、第II因子を検出するための侵入切断反応の二次反応中に生成された蛍光を検出するために使用される72℃のインキュベーション温度で測定された初期蛍光読取り値の規模を、72℃で取ったその後の全ての蛍光読取り値から減算した。これを、ROXチャネルシグナル(WT第II因子の検出を表す)、および別にFAMチャネルシグナル(第II因子SNP配列の検出を表す)について収集されたデータセットについて行った。同様に、58℃のインキュベーションからの第1の蛍光読取り値を、58℃で行ったインキュベーションのためのバックグラウンド蛍光として使用した。値を、58℃で取ったその後の全ての蛍光読取り値から減算して、第V因子WTおよびMut配列の検出のためのデータセットを標準化した。最後に、43℃のインキュベーション中に収集されたデータセットに由来する第1の蛍光読取り値を、44℃のインキュベーション中に読み取った蛍光値から減産したバックグラウンド値として使用した(MTHFR1298)。かくして、この図面は、FAMおよびROXチャネルのそれぞれについてのバックグラウンド減算された蛍光読取り値を提示し、2つの蛍光標識のそれぞれを、3つの異なる標的核酸配列を検出および識別するためにどのように使用したかを例示する。
【0186】
実施例3は、単一の較正標準に対して標的核酸の存在および濃度を確立するために使用することができる手順を一般的に記載する。
【0187】
(実施例3)
時間依存的様式とは無関係の複数の多重化侵入切断アッセイのモニタリング
分析物標的核酸について試験される試料と、既知量の第1の較正標準との両方を含有する反応混合物を調製する。本実施例において使用される既知量の第1の較正標準は、1,000コピー/mlである。反応混合物を単一のチューブに入れ、蛍光光度計を装備し、コンピュータに接続された熱サイクリング機器のブロック中に入れる。コンピュータは、熱サイクリングのプロファイルを制御し、特定の温度間隔中に特定の期間にわたって蛍光読取り値を記録する。第1の較正標準は、異なる侵入切断アッセイの使用により区別することができるヌクレオチドの差異を除いて、増幅される分析物標的核酸の部分と実質的に類似する核酸配列を含む。増幅された第1の較正標準を検出するが、増幅された分析物標的核酸を検出しない第1の侵入切断アッセイは、侵入プローブ、第1の5’フラップを含む第1の一次プローブ、およびフルオレセイン部分と、Eclipseクエンチャーなどの、適切なクエンチャー部分とを含む第1のFRETカセットを含む。増幅された分析物標的核酸を検出するが、増幅された第1の較正標準を検出しない第2の侵入切断アッセイは、同じ侵入プローブ、第2の5’フラップを含む第2の一次プローブ、およびフルオレセイン部分と、Eclipseクエンチャーなどの適切なクエンチャー部分とを含む第2のFRETカセットを含む。反応混合物は、熱安定性DNAポリメラーゼおよびCleavase(登録商標)酵素(Hologic,Inc.)をさらに含む。侵入切断アッセイの異なる二次反応のための最適温度は、少なくとも10℃異なる。第1の侵入切断アッセイの一次および二次反応は、72℃の最適温度を有する。第2の侵入切断アッセイは、72℃の最適温度を有する一次反応、および58℃の最適温度を有する二次反応を用いる。分析物標的核酸および第1の較正標準は、熱安定性DNAポリメラーゼおよび実質的に類似するDNAプライマーセットを使用して反応混合物中で同時に増幅される。熱サイクリング条件は、核酸を変性させるための94℃で5秒間;72℃で20秒間;および58℃で20秒間の40サイクルを含む。72℃のステップは、全ての核酸増幅産物の合成を可能にする;全ての一次侵入切断反応を起こさせる;および第1の較正標準に特異的な二次反応(分析物標的核酸に特異的な二次反応ではない)を起こさせる。58℃のステップは、分析物標的核酸に特異的な二次反応(第1の較正標準に特異的な二次反応ではない)を起こさせる。フルオレセイン放出波長の蛍光読取り値を、PCR機器の蛍光光度計を使用して、72℃および58℃の温度サイクル中に取る。コンピュータは、蛍光データ入力を受信し、情報をプロセッシングする。
【0188】
熱サイクリングプロファイルの各サイクル中に、72℃の温度ステップ中の蛍光増加の規模は、第1の較正標準アンプリコン産生の増加に起因し、58℃の温度ステップ中の蛍光増加の規模は、分析物標的核酸アンプリコンの産生の増加に起因する。サイクル数の関数としての得られる蛍光の異なるS状プロットを、バックグラウンド減算後に確立し、それぞれの実行曲線が所定の蛍光閾値と交差する点を決定する。両アッセイは、同じ閾値を有する必要はない。第1の較正標準を表す実行曲線は、「正常性能」のウィンドウ内にあるサイクル数25(例えば、24〜26サイクル)で閾値と交差し、25のCt値を確立する。「正常性能」のウィンドウは、アッセイ開発中に確立され、試料/対照抽出が好適に効率的であったこと(すなわち、予想される対照鋳型の量を提供するのに十分に高い)、および反応が性能に影響し得る検出可能な阻害剤を含まないことを示す。分析物標的核酸の増幅を表す実行曲線は、サイクル数22で閾値と交差する。データの1つの解釈に従って、コンピュータはサイクル閾値の決定を行い、試験される試料が1,000コピー/mlより多い量の分析物標的核酸を含有することを示す結果を出力する。分析物標的核酸のS状プロットについて決定されたCt値が25より大きい値を有していた場合、コンピュータはその代わりに、試験される試料が1,000コピー/mlより少ない量の分析物標的核酸を含有することを示す出力を生成する。データの代替的な解釈に従って、コンピュータは、サイクル閾値の決定を行い、内部較正因子について決定されたCt値が「正常範囲」内にある場合、試験される試料が、内部較正因子と標的分析物との間の既知の増幅効率(3サイクルは約10倍の濃度差に等しい)に基づいて10,000コピー/mlの分析物標的核酸を含有することを示す結果を出力する。分析物標的核酸のS状プロットについて決定されたCt値が31の値を有していた場合、コンピュータは、試験される試料が約10コピー/mlの濃度の分析物標的核酸を含有することを示す出力を生成する。
【0189】
実施例4は、標的核酸を定量するために、どのように多重侵入切断アッセイを使用することができるかをさらに例示する。
【0190】
(実施例4)
分析物標的核酸を定量するための複数の多重化侵入切断アッセイの使用
実施例3の下で記載された手順を、10,000コピー/mlの第2の較正標準を含むように改変する。第2の較正標準を、第1の較正標準および分析物標的核酸を増幅するものと同じプライマーセットを使用して増幅する。第2の較正標準の構造は、第1の較正標準と分析物標的核酸とを区別する位置の1または複数のヌクレオチドがユニークである(すなわち、第1の較正標準および分析物標的核酸のそれぞれにおいてその位置のヌクレオチドと異なる)ことを除いて、第1の較正標準の構造と実質的に同一である。多重反応混合物中の第3の侵入切断アッセイを使用して、分析物標的核酸または第1の較正標準ではなく、第2の較正標準を検出する。第3の侵入切断アッセイは、侵入プローブ、第3の5’フラップを含む第3の一次プローブ、およびフルオレセイン部分と、Eclipseクエンチャーなどの適切なクエンチャー部分とを含む第3のFRETカセットを含む。第2の較正標準を検出する侵入切断アッセイの一次および二次反応の最適温度は43℃であり、したがって、他の侵入切断アッセイの最適温度と少なくとも10℃異なる。分析物標的核酸、第1の較正標準、および第2の較正標準を、同じDNAプライマーセットを使用して反応混合物中で同時に増幅する。熱サイクリング条件は、核酸を変性させるための94℃で5秒間;72℃で20秒間;58℃で20秒間;および43℃で20秒間の40サイクルを含む。72℃のステップは、全ての核酸増幅産物の合成を可能にする;全ての一次侵入切断反応を起こさせる;および第1の較正標準に特異的な二次反応(分析物標的核酸、または第2の較正標準に特異的な二次反応ではない)を起こさせる。58℃のステップは、分析物標的核酸に特異的な二次反応(第1の較正標準、または第2の較正標準に特異的な二次反応ではない)を起こさせる。43℃のステップは、第2の較正標準に特異的な二次反応(第1の較正標準、または分析物標的核酸に特異的な二次反応ではない)を起こさせる。フルオレセイン放出波長の蛍光読取り値を、PCR機器の蛍光光度計を使用して72℃、58℃、および43℃の温度サイクル中に取る。コンピュータは、蛍光データ入力を受信し、情報をプロセッシングする。
【0191】
熱サイクリングプロファイルの各サイクル中に、72℃の温度ステップ中の蛍光増加の規模は、第1の較正標準アンプリコン産生の増加に起因し、58℃の温度ステップ中の蛍光増加の規模は、分析物標的核酸アンプリコン産生の増加に起因し、43℃の温度ステップ中の蛍光増加の規模は、第2の較正標準アンプリコン産生の増加に起因する。サイクル数の関数としての蛍光の異なるS状プロットを、バックグラウンド蛍光減算後に確立し、各実行曲線が2,000RFUの所定の蛍光閾値と交差する点を決定する。第1の較正標準の増幅を表す実行曲線は、サイクル数25で閾値と交差し、25のCt値を確立する。第2の較正標準の増幅を表す実行曲線は、サイクル数20で閾値と交差し、20のCt値を確立する。分析物標的核酸の増幅を表す実行曲線は、サイクル数22で閾値と交差し、22のCt値を確立する。コンピュータは、これらの決定を行い、試験される試料が1,000コピー/ml〜10,000コピー/mlの量の分析物標的核酸を含有することを示す結果を出力する。あるいは、コンピュータは、2つの較正標準について決定されたCt値(すなわち、20および25)を使用して較正曲線または直線を確立し、次いで、較正曲線または直線を使用して、決定されたCt値から分析物標的核酸の量を決定する。例えば、コンピュータと連絡するプリンターは、分析物標的核酸が1x10e3.6(すなわち、約3,980)コピー/mlのレベルで存在することを示す印刷用紙記録を出力する。
【0192】
本明細書に開示される手法を、ある特定の好ましい実施形態を参照してかなり詳細に説明し、示してきたが、当業者であれば、他の実施形態も容易に理解できる。したがって、本開示は、添付の特許請求の精神および範囲内に包含される全ての改変および変更を含むと見なされる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
複数の異なる標的核酸のうちのどれが試験試料中に存在するかを決定する方法であって、
(a)前記試験試料に由来する核酸を含有する反応混合物中で、多重侵入切断アッセイの複数の二次反応を連続的に起こさせるステップであって、それぞれの前記二次反応が異なる温度条件下で活性であり、それぞれの二次反応がただ1つの前記標的核酸に特異的である、ステップ;
(b)それぞれの前記異なる温度条件下で蛍光シグナルの産生について前記反応混合物をモニタリングするステップであって、それぞれの前記異なる温度条件がただ1つの前記二次反応を可能にし、それぞれの前記二次反応が同じ蛍光シグナルを産生する、ステップ;および
(c)それぞれの前記異なる温度条件下、前記反応混合物中で産生された前記蛍光シグナルに基づいて、前記標的核酸のうちのどれが前記試験試料中に存在するかを決定するステップ
を含む方法。
(項目2)
前記試験試料が核酸増幅反応の産物を含み、前記複数の標的核酸のそれぞれが前記核酸増幅反応の産物である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記試験試料が多重核酸増幅反応の産物を含み、前記複数の標的核酸のそれぞれが前記多重核酸増幅反応の産物である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記反応混合物が、熱安定性DNAポリメラーゼ酵素を含む、項目1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記異なる温度条件のそれぞれが、他とは5℃〜30℃異なる、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記異なる温度条件のそれぞれが、他とは5℃〜15℃異なる、項目5に記載の方法。
(項目7)
ステップ(c)が、それぞれの前記異なる温度条件下、前記反応混合物中で産生された前記蛍光シグナルの量に基づいて、前記標的核酸のうちのどれが前記試験試料中に存在するかを決定することを含む、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
ステップ(c)が、それぞれの前記異なる温度条件下、前記反応混合物中での前記蛍光シグナルの産生率に基づいて、前記標的核酸のうちのどれが前記試験試料中に存在するかを決定することを含む、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
試験試料が第1の標的核酸と、第2の標的核酸の一方または両方を含有するかどうかを決定する方法であって、
(a)(i)前記試験試料、
(ii)前記第1の標的核酸の検出に特異的な第1の侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの第1のセットであって、前記第1の侵入切断アッセイが、一次反応と二次反応とを含み、前記オリゴヌクレオチドの第1のセットが、
前記第1の標的核酸に特異的な第1の侵入プローブ、
前記第1の標的核酸に特異的な第1の一次プローブ、および
第1のFRETカセット
を含む、第1のセット、
(iii)前記第2の標的核酸の検出に特異的な第2の侵入切断アッセイを行うためのオリゴヌクレオチドの第2のセットであって、前記第2の侵入切断アッセイが一次反応と二次反応とを含み、前記オリゴヌクレオチドの第2のセットが、
前記第2の標的核酸に特異的な第2の侵入プローブ、
前記第2の標的核酸に特異的な第2の一次プローブ、および
第2のFRETカセット
を含み、前記第1および第2のFRETカセットはそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分が両方とも同じFRETカセットに結合する場合に、前記ドナー部分からの放出がクエンチされるようなエネルギー移動関係にある前記ドナー部分と前記アクセプター部分とを含み、
前記第1のFRETカセットの前記ドナー部分は、前記第2のFRETカセットの前記ドナー部分と同一である、第2のセット、および
(iv)フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素
のそれぞれを組み合わせることにより反応混合物を調製するステップ;
(b)第1の温度で第1の期間にわたって前記反応混合物をインキュベートするステップであって、前記第1の温度が前記第1の侵入切断アッセイの前記一次および二次反応を可能にし、それにより、前記試験試料が前記第1の標的核酸を含む場合、前記第1のFRETカセットの前記ドナー部分と関連する第1のシグナルが生成される、ステップ;
(c)ステップ(b)中に生成された可能性がある前記第1のシグナルのいずれかを、前記試験試料中の前記第1の標的核酸の存在の指示として測定するステップ;
(d)第2の温度で第2の期間にわたって前記反応混合物をインキュベートするステップであって、前記第2の温度が前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応を可能にし、それにより、前記試験試料が前記第2の標的核酸を含む場合、前記第2のFRETカセットの前記ドナー部分と関連する第2のシグナルが生成される、ステップ;
(e)ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを、前記試験試料中の前記第2の標的核酸の存在の指示として測定するステップ;ならびに
(f)前記試料が前記第1の標的核酸を含有するかどうかを、ステップ(c)で測定された前記第1のシグナルから、および前記試料が前記第2の標的核酸を含有するかどうかを、ステップ(e)で測定された前記第2のシグナルから決定するステップであって、
前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応は、ステップ(d)における前記第2の温度でバックグラウンドシグナルよりも大きいシグナルを実質的に生成せず、
前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応は、ステップ(b)における前記第1の温度でバックグラウンドシグナルよりも大きいシグナルを実質的に生成しない、ステップ
を含む方法。
(項目10)
前記第2の侵入切断アッセイの前記一次反応が、ステップ(b)における前記第1の温度またはステップ(d)における前記第2の温度で起こる、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記第2の侵入切断アッセイの前記一次反応が、ステップ(b)における前記第1の温度で起こり、ステップ(d)における前記第2の温度では起こらない、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記第2の侵入切断アッセイの前記一次反応が、ステップ(d)における前記第2の温度で起こり、ステップ(b)における前記第1の温度では起こらない、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記ドナー部分がフルオロフォアである、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記インキュベートするステップにおける前記第1および第2の温度が5〜30℃異なる、項目9に記載の方法。
(項目15)
前記インキュベートするステップにおける前記第1および第2の温度が5〜15℃異なる、項目14に記載の方法。
(項目16)
ステップ(e)が、ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することを含み、それにより、ステップ(d)で生成された前記シグナルの変化率が確立される、項目9または14に記載の方法。
(項目17)
ステップ(c)が、ステップ(b)中に生成された可能性がある前記第1のシグナルの規模を同定することを含み、
ステップ(f)が、前記同定された規模が前記第1の標的核酸を検出するための規模閾値を超える場合、前記第1の標的核酸が前記試料中に存在すると決定することをさらに含む、
項目9に記載の方法。
(項目18)
ステップ(c)が、ステップ(b)中に生成された可能性がある前記第1のシグナルの規模を同定することを含み、
ステップ(f)が、前記同定された規模が前記第1の標的核酸を検出するための規模閾値を超えない場合、前記第1の標的核酸が前記試料中に存在しないと決定することをさらに含む、
項目9に記載の方法。
(項目19)
ステップ(e)が、ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することを含み、
それにより、ステップ(d)で生成された前記シグナルの変化率が確立され、
ステップ(f)が、前記変化率が前記第2の標的核酸を検出するための速度閾値を超える場合、前記第2の標的核酸が前記試料中に存在すると決定することをさらに含む、
項目9に記載の方法。
(項目20)
ステップ(e)が、ステップ(d)中に生成された可能性がある前記第2のシグナルのいずれかを経時的に測定することを含み、
それにより、ステップ(d)で生成された前記シグナルの変化率が確立され、
ステップ(f)が、前記変化率が前記第2の標的核酸を検出するための速度閾値を超えない場合、前記第2の標的核酸が前記試料中に存在しないと決定することをさらに含む、
項目9に記載の方法。
(項目21)
前記変化率が、時間依存的な変化率である、項目16に記載の方法。
(項目22)
前記変化率が、サイクル依存的な変化率である、項目16に記載の方法。
(項目23)
前記第2の標的を検出するための閾値が閾値速度である、項目16に記載の方法。
(項目24)
ステップ(b)の前記第1の温度が、ステップ(d)の前記第2の温度よりも高い、項目9から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
ステップ(f)において前記第1の標的核酸を検出するための閾値が、閾値規模である、項目9から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
ステップ(b)〜(e)が、ステップ(f)を実施する前に複数回連続的に反復される、項目9から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
試験試料が第1の標的核酸または第2の標的核酸を含有するかどうかを、反応混合物中で実行される多重侵入切断アッセイを用いて決定するためのコンピュータプログラム製品であって、
(a)前記多重侵入切断アッセイの前記反応混合物中のフルオロフォアからの放出を検出する蛍光光度計を用いて、
(i)第1の侵入切断アッセイが前記第1の標的核酸の存在を示すために前記フルオロフォアを使用する、前記第2の標的核酸ではなく、前記第1の標的核酸に特異的な前記第1の侵入切断アッセイの二次反応、および
(ii)第2の侵入切断アッセイが前記第2の標的核酸の存在を示すために前記フルオロフォアを使用する、前記第1の標的核酸ではなく、前記第2の標的核酸に特異的な前記第2の侵入切断アッセイの二次反応
により生成された蛍光シグナルをモニタリングすることにより、試験データのセットを収集するステップであって、
前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応は、前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第1の温度で進行し、
前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応は、前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第2の温度で進行し、
試験データの前記セットが
前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応が実質的に完了した後、および前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応が実質的に始まる前に測定された第1のバックグラウンドシグナル、および
前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応が前記第2の温度で始まった後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナル
を含む、ステップ;
(b)試験データの前記セットの前記少なくとも1つのさらなるシグナルがどれぐらい迅速に前記第1のバックグラウンドシグナルを超えて増加するかを示す速度を算出するステップ、
(c)ステップ(b)の試験データの前記セットおよび前記速度を、対照データのセットとを比較するステップであって、対照データの前記セットが、前記第1の標的核酸または前記第2の標的核酸を含まなかった対照反応混合物を、蛍光光度計を用いてモニタリングすることによって生成された結果を含み、
対照データの前記セットが、
対照バックグラウンドシグナル、
一定期間にわたる前記第2の温度での前記対照反応混合物のインキュベーション後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナル、および
対照データの前記セットの前記少なくとも1つのさらなるシグナルがどれぐらい迅速に前記対照バックグラウンドシグナルを超えて増加するかを示す算出された速度
を含む、ステップ、ならびに
(d)以下の決定のうちの1つ:
(i)前記第1のバックグラウンドシグナルが前記対照バックグラウンドシグナルより実質的に大きい場合、前記試験試料が前記第1の標的核酸を含有する、
(ii)前記第1のバックグラウンドシグナルが前記対照バックグラウンドシグナルと実質的に同じである場合、前記試験試料が前記第1の標的核酸を含有しない、
(iii)ステップ(b)で算出された前記速度が対照データの前記セットからの前記算出された速度を超える場合、前記試験試料が前記第2の標的核酸を含有する、および
(iv)ステップ(b)で算出された前記速度が対照データの前記セットからの前記算出された速度を超えない場合、前記試験試料が前記第2の標的核酸を含有しない
を出力するステップ
をコンピュータに実行させる非一時的な命令を含むコンピュータプログラム製品。
(項目28)
ステップ(d)が、表示デバイスに、前記決定の有形記録を作成するように命令することを含む、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目29)
ステップ(b)が、直線の勾配を算出することを含む、項目28に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目30)
前記表示デバイスがプリンターであり、前記有形記録が印刷された記録である、項目28に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目31)
ステップ(a)が、試験データの前記セットに関する数値を受け取ること、次いで、前記数値を電子表計算中で選別することを含む、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目32)
ステップ(b)で算出された前記速度が、RFU/分の単位である、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目33)
ステップ(b)が、直線の勾配を算出することを含む、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目34)
ステップ(b)で算出された前記速度が、RFU/分の単位である、項目33に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目35)
ステップ(c)の前記蛍光光度計が、ステップ(a)の前記蛍光光度計である、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目36)
前記反応混合物が、核酸を増幅および検出する機器中に配置された反応ベッセル中に含有され、収集ステップ(a)がただ1つの温度で実施される、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目37)
前記コンピュータプログラム製品が、前記コンピュータ中にロードされ、収集ステップ(a)が、1より多い温度で生成された蛍光シグナルを時間の関数としてモニタリングすることにより、試験データの前記セットを収集することを含まない、項目27に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目38)
コンピュータに、
(a)試験試料中の第1の標的核酸を検出する第1の侵入切断アッセイの二次反応におけるフルオロフォアからの放出をモニタリングすることによって蛍光シグナルデータの第1のセットを収集するステップであって、前記第1の侵入切断アッセイが、反応混合物中の前記フルオロフォアを使用する、他の二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第1の温度の前記反応混合物中で行われ、
蛍光シグナルデータの前記第1のセットが、
前記反応混合物中の前記フルオロフォアから増大した蛍光を生成する任意の先行する二次反応が行われた後であるが、前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応が実質的に始まる前に決定された第1のバックグラウンドシグナル、および
前記第1の侵入切断アッセイの前記二次反応が始まった後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナル
を含む、ステップ;
(b)前記試験試料中の第2の標的核酸を検出する第2の侵入切断アッセイの二次反応における前記フルオロフォアからの放出をモニタリングすることによって蛍光シグナルデータの第2のセットを収集するステップであって、前記第2の侵入切断アッセイが、前記反応混合物中の前記フルオロフォアを使用する、他の二次反応による蛍光シグナルの生成を実質的に可能にしない第2の温度の前記反応混合物中で行われ、
蛍光シグナルデータの前記第2のセットが、
前記反応混合物中の前記フルオロフォアから増大した蛍光を生成する任意の先行する二次反応が行われた後であるが、前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応が実質的に始まる前に決定された第2のバックグラウンドシグナル、および
前記第2の侵入切断アッセイの前記二次反応が始まった後に収集された少なくとも1つのさらなるシグナル
を含む、ステップ;
(c)それぞれの、蛍光シグナルデータの第1および第2のセットから、第1の改変されたデータセットおよび第2の改変されたデータセットのそれぞれを調製するステップであって、
前記改変された第1のデータセットが、蛍光シグナルデータの前記第1のセットの前記少なくとも1つのさらなるシグナルのそれぞれから、前記第1のバックグラウンドシグナルを減算することにより調製され、前記改変された第1のデータセットが、前記試験試料中の前記第1の核酸の存在に起因する蛍光シグナルを示し、
前記改変された第2のデータセットが、蛍光シグナルデータの前記第2のセットの前記少なくとも1つのさらなるシグナルのそれぞれから、前記第2のバックグラウンドシグナルを減算することにより準備され、前記改変された第1のデータセットが、前記試験試料中の前記第1の核酸の存在に起因する蛍光シグナルを示す、
ステップ;ならびに
(d)それぞれ、前記改変された第1および第2のデータセットに基づいて、前記第1の標的核酸および第2の標的核酸のそれぞれの有無を示す結果を出力するステップ
を実行させる非一時的な命令を含むコンピュータプログラム製品。
(項目39)
ステップ(a)および(b)が、前記それぞれの、蛍光シグナルデータの第1および第2のセットに関する数値を受け取ること、次いで、前記数値を、電子表計算中で選別することを含む、項目38に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目40)
前記第1の温度が、前記第2の温度よりも高い、項目38に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目41)
前記第1の温度が、前記第2の温度よりも低い、項目38に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目42)
ステップ(d)が、表示デバイスに、前記結果の有形記録を作成するように命令することを含む、項目38に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目43)
前記表示デバイスがプリンターであり、前記有形記録が紙に印刷された記録である、項目42に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目44)
前記コンピュータが、前記反応混合物を、前記第1の温度から前記第2の温度まで複数回サイクリングさせる装置の構成要素である、項目38に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目45)
前記コンピュータプログラム製品が前記コンピュータ中にロードされ、前記コンピュータが、前記反応混合物を、前記第1の温度から前記第2の温度まで複数回サイクリングさせる装置の構成要素である、項目38に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目46)
反応混合物中で実行される多重侵入切断アッセイを使用して第1および第2の分析物標的核酸のそれぞれの有無を独立に決定するためのシステムであって、
(a)前記反応混合物を含有する反応ベッセルを受容する温度制御されたインキュベータであって、前記多重侵入切断アッセイの第1の二次反応を起こさせる第1の期間にわたって第1の温度で前記反応混合物をインキュベートした後、前記多重侵入切断アッセイの第2の二次反応を起こさせる第2の期間にわたって第2の温度で前記反応混合物をインキュベートするように構成された、温度制御されたインキュベータ;
(b)前記それぞれの第1および第2の期間中に前記第1および第2の温度のそれぞれにおいて前記反応混合物中で生成され得る所定の波長範囲の任意の蛍光シグナルを、単一の検出チャネル中で測定する蛍光光度計;
(c)前記蛍光光度計と連絡するコンピュータであって、前記コンピュータが、それぞれの前記期間中に生成された測定された蛍光シグナル増加を、異なる1つの前記分析物標的核酸の存在と関連付けるようにプログラムされ、
前記コンピュータが、前記第1の期間中の任意の測定された蛍光シグナル増加を、前記第1の分析物標的核酸の存在と関連付け、前記第2の分析物標的核酸の存在とは関連付けず、
前記コンピュータが、前記第2の期間中の任意の測定された蛍光シグナル増加を、前記第2の分析物標的核酸の存在と関連付け、前記第1の分析物標的核酸の存在とは関連付けない、
コンピュータ;ならびに
(d)前記第1および第2の分析物標的核酸のそれぞれの有無を示す有形記録を生成する、前記コンピュータと連絡する出力デバイス
を含むシステム。
(項目47)
前記第1および第2の温度が5℃〜30℃異なる、項目46に記載のシステム。
(項目48)
前記温度制御されたインキュベータが、サーマルサイクラーを含む、項目46または47に記載のシステム。
(項目49)
前記温度制御されたインキュベータが、1または複数の温度制御されたチャンバを含む、項目46または47に記載のシステム。
(項目50)
前記1または複数の温度制御されたチャンバのそれぞれが一定の温度を維持する、項目49に記載のシステム。
(項目51)
前記出力デバイスがプリンターであり、前記出力デバイスにより生成される前記有形記録が紙に印刷される、項目46から50のいずれか一項に記載のシステム。
(項目52)
前記温度制御されたインキュベータが複数の温度制御されたチャンバを含み、前記システムが前記複数の温度制御されたチャンバ内の前記反応ベッセルの位置の変化を指令するコントローラをさらに含む、項目46または47に記載のシステム。
(項目53)
前記反応混合物を含有する前記反応ベッセルが、複数ウェルプレート、個々のチューブ、またはチューブの線形アレイを含む複数チューブユニットのいずれかである、項目46から52のいずれか一項に記載のシステム。
(項目54)
前記単一の検出チャネルが、フルオレセインの蛍光放出を測定するが、ROXの蛍光放出は測定しない、項目46から53のいずれか一項に記載のシステム。
(項目55)
前記単一の検出チャネルが、ROXの蛍光放出を測定するが、フルオレセインの蛍光放出は測定しない、項目46から53のいずれか一項に記載のシステム。
(項目56)
前記温度制御されたインキュベータが、前記第1の期間にわたって前記第1の温度で前記反応混合物をインキュベートし、前記第2の期間にわたって前記第2の温度で前記反応混合物をインキュベートするように、前記多重侵入切断アッセイに特異的なソフトウェア命令によって構成される、項目46から55のいずれか一項に記載のシステム。
(項目57)
前記第1の温度が、前記第2の温度よりも高い、項目46から56のいずれか一項に記載のシステム。
(項目58)
前記第1の温度が、前記第2の温度よりも低い、項目46から56のいずれか一項に記載のシステム。
(項目59)
前記蛍光光度計が複数の検出チャネルを含み、前記第1および第2の分析物標的核酸を独立に検出するためにただ1つの前記検出チャネルが使用される、項目46から58のいずれか一項に記載のシステム。
(項目60)
温度依存的多重侵入切断アッセイを実施するためのキットであって、1または複数のレセプタクル中に含有される第1および第2のFRETカセットを含み、前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれが、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれが、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、等価なドナー部分である、キット。
(項目61)
前記第1および第2のFRETカセットが、単一のレセプタクル中に含有される、項目60に記載のキット。
(項目62)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一である、項目60または61に記載のキット。
(項目63)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一のフルオロフォアである、項目62に記載のキット。
(項目64)
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一である、項目60から63のいずれか一項に記載のキット。
(項目65)
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一のクエンチャー部分である、項目64に記載のキット。
(項目66)
1または複数のさらなるレセプタクル中に、第1および第2の一次プローブをさらに含み、前記第1および第2の一次プローブのそれぞれが3’標的ハイブリダイジング配列および5’フラップ配列を含み、
前記第1の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第1の標的核酸の第1の領域と相補的であり、前記第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第2の標的核酸の第1の領域と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が互いに異なり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が、それぞれ、前記第1および第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が互いに異なり、そして
前記第1のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第1の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度が、前記第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第2の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なる、
項目60から65のいずれか一項に記載のキット。
(項目67)
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜30℃異なる、項目66に記載のキット。
(項目68)
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜15℃異なる、項目67に記載のキット。
(項目69)
前記第1および第2のFRETカセットと、前記第1および第2の一次プローブとが単一のレセプタクル中に含有される、項目66から68のいずれか一項に記載のキット。
(項目70)
1または複数のさらなるレセプタクル中に、第1および第2の侵入プローブをさらに含み、前記第1の侵入プローブが前記第1の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第1の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置され、前記第2の侵入プローブが、前記第2の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第2の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置される、項目66から69のいずれか一項に記載のキット。
(項目71)
前記第1および第2のFRETカセットと、前記第1および第2の侵入プローブとが単一のレセプタクル中に含有される、項目70に記載のキット。
(項目72)
前記FRETカセットまたは前記一次プローブを含有しないレセプタクル中に、フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含む、項目60から71のいずれか一項に記載のキット。
(項目73)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、項目60から72のいずれか一項に記載のキット。
(項目74)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、項目73に記載のキット。
(項目75)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目60から74のいずれか一項に記載のキット。
(項目76)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目75に記載のキット。
(項目77)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目76に記載のキット。
(項目78)
前記第1および第2のFRETカセットがそれぞれ、溶液中で遊離している、項目60から77のいずれか一項に記載のキット。
(項目79)
第1および第2のFRETカセットの混合物を含む物質の組成物であって、前記FRETカセットのそれぞれが異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれがドナー部分とアクセプター部分とを含み、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が等価なドナー部分である、組成物。
(項目80)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一である、項目79に記載の組成物。
(項目81)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一のフルオロフォアである、項目80に記載の組成物。
(項目82)
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一である、項目79から81のいずれか一項に記載の組成物。
(項目83)
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一のクエンチャー部分である、項目82に記載の組成物。
(項目84)
前記第1のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、完全に相補的な第1の5’フラップ配列との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度が、前記第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、完全に相補的な第2の5’フラップ配列との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なり、前記第1および第2の5’フラップ配列が互いに異なる、項目79から83のいずれか一項に記載の組成物。
(項目85)
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜30℃異なる、項目84に記載の組成物。
(項目86)
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜15℃異なる、項目85に記載の組成物。
(項目87)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、項目79から86のいずれか一項に記載の組成物。
(項目88)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、項目87に記載の組成物。
(項目89)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目79から88のいずれか一項に記載の組成物。
(項目90)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目89に記載の組成物。
(項目91)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目90に記載の組成物。
(項目92)
フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含む、項目79から91のいずれか一項に記載の組成物。
(項目93)
前記第1および第2のFRETカセットのそれぞれが溶液中で遊離している、項目79から92のいずれか一項に記載のキット。
(項目94)
多重侵入切断アッセイにおける2またはそれ超の標的核酸を検出するための反応混合物であって、
(a)第1および第2のFRETカセットがそれぞれ、異なる5’フラップハイブリダイジング配列を有し、前記第1および第2のFRETカセットがそれぞれ、ドナー部分とアクセプター部分とを含み、前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が等価なドナー部分である、前記第1および第2のFRETカセット;ならびに
(b)第1および第2の一次プローブがそれぞれ、3’標的ハイブリダイジング配列および5’フラップ配列を含み、
前記第1の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第1の標的核酸の第1の領域と相補的であり、前記第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が第2の標的核酸の第1の領域と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記3’標的ハイブリダイジング配列が互いに異なり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が、それぞれ、前記第1および第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と相補的であり、
前記第1および第2の一次プローブの前記5’フラップ配列が互いに異なる、
前記第1および第2の一次プローブ;ならびに
(c)第1の侵入プローブが前記第1の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第1の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置され、第2の侵入プローブが前記第2の標的核酸の第2の領域と相補的であり、前記第2の標的核酸の前記第1および第2の領域が互いに隣接して配置される、前記第1および第2の侵入プローブ
を含む、反応混合物。
(項目95)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一である、項目94に記載の反応混合物。
(項目96)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が同一のフルオロフォアである、項目95に記載の反応混合物。
(項目97)
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一である、項目94から96のいずれか一項に記載の反応混合物。
(項目98)
前記第1および第2のFRETカセットの前記アクセプター部分が同一のクエンチャー部分である、項目97に記載の反応混合物。
(項目99)
前記第1のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第1の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第1のハイブリッドの融解温度が、前記第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列と、前記第2の一次プローブの前記5’フラップ配列の切断形態との間に形成される第2のハイブリッドの融解温度と少なくとも5℃異なる、項目94から98のいずれか一項に記載の反応混合物。
(項目100)
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜30℃異なる、項目99に記載の反応混合物。
(項目101)
前記第1および第2のハイブリッドの融解温度が5℃〜15℃異なる、項目100に記載の反応混合物。
(項目102)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、500nm〜750nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、項目94から101のいずれか一項に記載の反応混合物。
(項目103)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、510nm〜530nm、560nm〜580nm、610nm〜650nm、675nm〜690nm、または705nm〜730nmの範囲内の測定可能な強度を有する放出スペクトルを示す、項目102に記載の反応混合物。
(項目104)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜15nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目94から103のいずれか一項に記載の反応混合物。
(項目105)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜10nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目104に記載の反応混合物。
(項目106)
前記第1および第2のFRETカセットの前記ドナー部分が、0nm〜5nm異なるピーク放出波長を有する放出スペクトルを示す、項目105に記載の反応混合物。
(項目107)
前記第1および第2のFRETカセットがそれぞれ溶液中で遊離しており、前記第1および第2のFRETカセットの前記5’フラップハイブリダイジング配列がそれぞれ一本鎖状態にある、項目94から106のいずれかに記載の反応混合物。
(項目108)
フラップエンドヌクレアーゼ(FEN)酵素をさらに含む、項目94から107のいずれかに記載の反応混合物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8BC
図9