特許第6688322号(P6688322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688322
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】燃料組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/192 20060101AFI20200421BHJP
   C10L 1/08 20060101ALI20200421BHJP
   C10L 10/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C10L1/192
   C10L1/08
   C10L10/00
【請求項の数】5
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-560718(P2017-560718)
(86)(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公表番号】特表2018-514637(P2018-514637A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016061294
(87)【国際公開番号】WO2016188858
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】62/165,232
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15178870.0
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100203769
【弁理士】
【氏名又は名称】大沢 勇久
(72)【発明者】
【氏名】ブルーアー,マーク・ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】トーマアイズ,ジョン・ソクラテス
(72)【発明者】
【氏名】モラレス,ジョン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,チーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スレルフォール−ホームズ,フィリップ・ナイジャル
(72)【発明者】
【氏名】バディージョ,ダミアン・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ラウンスウェイト,ニコラス・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】フィルビン,マイケル・ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】クラックネル,ロジャー・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】シュッツェ,アンドレア
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00626442(EP,A1)
【文献】 特表2009−532543(JP,A)
【文献】 特表2015−514853(JP,A)
【文献】 特表2013−518944(JP,A)
【文献】 特開2001−049284(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/095412(WO,A1)
【文献】 特開昭53−064206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00−1/32、10/00−10/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼エンジンに動力供給するための燃料組成物であって、
液体ベース燃料と;
少なくとも以下のモノマー:
一般式(I):
【化1】
(式中、
Rは、Hまたは−CHであり、
Aは、−CH−、−CH(CH)−、または−C(CH−であり、
Mは、六員環の炭素原子に共有結合しており、水素及びメチル基またはその複数からなる群から選択される)を有する少なくとも1種の二環式(メタ)アクリレートエステル;
直鎖または分岐状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよいC〜C24アルキル(メタ)アクリレートである少なくとも1種の脂肪アルキル(メタ)アクリレート;
・任意選択で少なくとも1種の芳香族ビニルモノマー;及び
・任意選択で他のエチレン性不飽和モノマー
を共重合させることにより得ることができるコポリマーと
を含み、
前記コポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,500,000〜50,000,000ダルトンである、燃料組成物。
【請求項2】
前記コポリマーの重量の35wt%以上の量の二環式(メタ)アクリレートエステル及び脂肪アルキル(メタ)アクリレートの合計を含む、請求項1記載の燃料組成物。
【請求項3】
前記コポリマーが、
・10〜95wt%の前記二環式(メタ)アクリレートエステル;
・5〜80wt%の前記脂肪アルキル(メタ)アクリレート;
・0〜65wt%の前記芳香族ビニルモノマー;
・0〜50wt%の前記他のエチレン性不飽和モノマー
を含み、上記モノマーの重量パーセントは、すべてのモノマーの総重量を基準としており、合計が100重量%である、請求項1または2に記載の燃料組成物。
【請求項4】
前記コポリマーが、
・20〜95wt%の前記二環式(メタ)アクリレートエステル;
・5〜40wt%の前記脂肪アルキル(メタ)アクリレート;
・0〜65wt%の前記芳香族ビニルモノマー;
・0〜50wt%の前記他のエチレン性不飽和モノマー
を含み、上記モノマーの重量パーセントは、すべてのモノマーの総重量を基準としており、合計が100重量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料組成物の、
(i)燃料霧化を補助すること;
(ii)点火遅れを減少させること;及び
(iii)前記組成物での燃焼点火エンジン運転の出力を改善することのうちの1つ以上を目的とした使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある特定のコポリマーを含有する燃料組成物に関する。また、本発明の態様は、燃料組成物におけるコポリマーの使用、及びコポリマーを含有する燃料組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、以前、ポリマーを含有する流体のレオロジーを改変するために使用されてきた。ガソリン及びディーゼル燃料等の液体燃料の流動及び噴霧特性を調節するために使用され得るポリマーが必要とされている。
【0003】
液体燃料は、効果的な燃焼のために、気化され、空気または酸素と混合されなければならない。中間蒸留物またはより重質の留分は、低い蒸気圧を有するため、霧化は、そのような燃料の噴霧燃焼の特に重要な側面である。
【0004】
霧化は、細かい液体燃料粒子を生成し、その広い表面積が、急速な蒸発を、ひいては迅速及び効率的な燃焼をもたらす。効率的な霧化であっても、化学量論的燃焼は達成され得ない。この点において、燃焼プロセス及び機器の時間及びサイズスケールにおいて完璧な混合の条件に達することができないことにより、制限が課される。したがって、完全燃焼を得るためには、システムに過剰の空気を供給することが必要である。
【0005】
完全燃焼を提供する範囲での過剰の空気は、燃焼効率を増加させるのに役立つ。しかしながら、過度に多量の空気は、熱回収の減少をもたらし得る。燃焼プロセスに関与しない酸素の全て、及び空気中の窒素の全ては、加熱され、したがってスタック外に熱を運搬する。さらに、過剰空気が多いほど、システムを通る質量流が大きく、熱伝達の時間スケールがより短い。したがって、効率的な燃焼及び熱回収を達成するには、最適化された燃焼チャンバ及び熱回収システム設計に加えて、霧化及び過剰空気の微妙なバランスが必要である。
【0006】
GB1569344は、燃焼効率の改善を目指した、燃料特性を改変するためのポリマー、特にポリ−イソブチレンの使用に関する。−75℃のガラス転移温度により例示される、取扱いが非常に困難であるというポリ−イソブチレンの問題が判明した。他の知られているポリマー、例えばポリ−ラウリルメタクリレートもまた、そのような低いTgの問題を有する。
【0007】
より高いTgを有する他のポリマーは、視覚的に、または曇り点の決定により判断されるように、燃料に対するポリマーの不十分な溶解度の問題を有することが判明したが、このことからそれらのポリマーは燃料レオロジーの変更には不適切である。
【0008】
容易に取り扱うことができ、燃料に対する十分な溶解度を有し、また改善された燃料効率を可能とし得る、石油系燃料のレオロジーを改変する能力を有する代替のポリマーが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、燃料を使用した内燃エンジン運転における燃焼効率にプラスの影響を与えることができる様式で、組成物のベース燃料のレオロジーを改変する能力を有するポリマーを含む燃料組成物成分を提供することである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、燃焼エンジンに動力供給するための燃料組成物であって、液体ベース燃料と;少なくとも以下のモノマー:
・1種以上の二環式(メタ)アクリレートエステル(a);
・1種以上の脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b);
・任意選択で、及び好ましくは、1種以上の芳香族ビニルモノマー(c);
・任意選択でさらなるエチレン性不飽和モノマーを共重合させることにより得ることができるコポリマーとを含む燃料組成物が提供される。
【0011】
本発明に関連して、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
二環式(メタ)アクリレートエステルは、二環式環、好ましくは六員炭素原子架橋環の任意の炭素原子に結合した(メタ)アクリロイル基を含有し、前記エステルは、デカヒドロナフチル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、及びアダマンチル(メタ)アクリレート等の生成物を含む。好ましいのは、一般式(I)
【化1】
(式中、
Rは、Hまたは−CHであり、
Aは、−CH−、−CH(CH)−または−C(CH−であり、
1つ以上のMは、二環式環の任意の炭素、好ましくは六員環の炭素原子に共有結合し、各Mは、水素、ハロゲン、メチル、及びメチルアミノまたはそれらの複数からなる群から独立して選択される)に従う生成物である。
【0013】
二環式(メタ)アクリレートエステルの限定されない例は、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、フェンチル(メタ)アクリレート、イソフェンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルメタクリレート、シス、(エンド) 3−メチルアミノ−2−ボルニル(メタ)アクリレート、1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2−オールメタクリレート(HCBOMA)及び1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2メタノールメタクリレート(HCBMA)、ならびにそのような二環式メタクリレートの混合物を含む。一実施形態において、二環式(メタ)アクリレートエステルは、2−ノルボルニルメチルメタクリレートではない。一実施形態において、二環式(メタ)アクリレートエステルは、ノルボルニル(メタ)アクリレートではない。塩素化化合物は、燃焼すると腐食性HClを放出し得るため、より好ましくない。好適な二環式メタクリレートエステルは、イソボルニルメタクリレートである。二環式(メタ)アクリレートエステル自体は知られており、知られている様式で調製することができる、または商業的供給源から得ることができる。
【0014】
二環式(メタ)アクリレートは、好ましくは、重合すると、液体燃料、より好ましくはディーゼル燃料に可溶性であるホモポリマーを形成するモノマーから選択される。
【0015】
本発明の脂肪アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基が、本明細書において、直鎖または分岐状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよい、C〜C24アルキル基、好ましくはC10〜C22基として定義される脂肪アルキル基に結合した化合物である。
【0016】
好ましくは、脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b)は、C〜C24アルキル(メタ)アクリレートであり、C〜C24アルキル基は、直鎖または分岐状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよい。
【0017】
脂肪アルキル(メタ)アクリレートの例は、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メタクリル酸エステル13.0(CAS#:90551−76−1)、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、メタクリル酸エステル17.4(CAS#:90551−84−1)、及びステアリル(メタ)アクリレートを含む。
【0018】
好ましい脂肪アルキル(メタ)アクリレートは、重合すると、ディーゼル燃料に可溶性であるホモポリマーを形成するモノマーから選択される。
【0019】
一実施形態において、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メタクリル酸エステル13.0(CAS#:90551−76−1)、メタクリル酸エステル17.4(CAS#:90551−84−1)、及び/またはステアリル(メタ)アクリレートが使用される。別の実施形態において、ラウリル(メタ)アクリレート及び/またはメタクリル酸エステル13.0(CAS#:90551−76−1)が使用される。好適には、ラウリルメタクリレートが使用される。
【0020】
芳香族ビニルモノマーは、芳香族基に結合したビニル基を含有する。その例は、スチレン、置換スチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、及びそれらの混合物を含む。好ましい置換スチレンは、オルト−、メタ−及び/またはパラ−アルキル、アルキルオキシまたはハロゲン置換スチレン、例えばメチルスチレン、tert−ブチルオキシスチレン、2−クロロスチレン及び4−クロロスチレンを含む。好ましくは、芳香族ビニルモノマーは、スチレンである。
【0021】
芳香族ビニルモノマーは、好ましくは、重合すると、液体燃料に可溶性ではない、より好ましくはディーゼル燃料に可溶性ではないホモポリマーを形成するモノマーから選択される。
【0022】
共重合プロセスに関与し得るさらなるモノマーは、上で定義されたモノマー(a)、(b)及び(c)とは異なるエチレン性不飽和モノマーである。そのような他のモノマーの例は、低級アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)(アクリレート)及びヘキシル(メタ)アクリレートを含むが、また4−tert−ブチルスチレン、当業者に知られているカチオン性、非イオン性及びアニオン性エチレン性不飽和モノマーを含み、限定されないが、エチレン性不飽和酸、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、(3−アクリルアミドプロピル)−トリメチル−アンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、及びN−ビニルカプロラクタムを含む。
【0023】
コポリマーは、当業者に知られているビニル付加重合、例えば、これらに限定されないが、溶液重合、沈殿重合、ならびに懸濁重合及びエマルション重合を含む分散重合のための従来の方法により合成されてもよい。
【0024】
一実施形態において、ポリマーは、懸濁重合により形成され、水に不溶性または水に難溶性であるモノマーは、水中の液滴として懸濁される。モノマー液滴懸濁は、機械的撹拌及び安定剤の添加により維持される。表面活性ポリマー、例えばセルロースエーテル、ポリ(ビニルアルコール−co−酢酸ビニル)、ポリ(ビニルピロリドン)、及びポリマーを含有する(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、ならびにコロイド状(水不溶性)無機粉末、例えばリン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、硫酸バリウム、カオリン、及びケイ酸マグネシウムが、安定剤として使用され得る。さらに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の少量の界面活性剤が、安定剤(複数種可)と共に使用され得る。重合は、油溶性開始剤を使用して開始される。好適な開始剤は、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等のペルオキシエステル、及び2,2′−アゾビス(2−メチル−ブチロ−ニトリル)等のアゾ化合物を含む。重合の完了時、固体ポリマー生成物は、濾過により反応媒体から分離することができ、水、酸、塩基または溶媒で洗浄して、未反応モノマーまたは遊離安定剤を除去することができる。
【0025】
別の実施形態において、ポリマーは、エマルション重合により形成され、1種以上のモノマーが水相に分散され、水溶性開始剤を使用して重合が開始される。モノマーは、典型的には、水に不溶性または水に難溶性であり、水相中のモノマー液滴を安定化するために、界面活性剤または石鹸が使用される。重合は、膨潤したミセル及びおラテックス粒子中で生じる。エマルション重合において存在し得る他の構成成分は、分子量を制御するためのメルカプタン(例えばドデシルメルカプタン)等の連鎖移動剤、及びpHを制御するための電解質を含む。好適な開始剤は、過硫酸塩のアルカリ金属またはアンモニウム塩、例えば過硫酸アンモニウム、水溶性アゾ化合物、例えば2,2′−アゾビス(2−アミノプロパン)二塩酸塩、ならびに酸化還元系、例えばFe(II)及びクメンヒドロペルオキシドならびにtert−ブチルヒドロペルオキシド−Fe(II)−アスコルビン酸ナトリウムを含む。好適な界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、例えば脂肪酸石鹸(例えば、ステアリン酸ナトリウムまたはカリウム)、硫酸塩及びスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、スルホコハク酸塩(例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム);非イオン性界面活性剤、例えばオクチルフェノールエトキシレートならびに直鎖及び分岐状アルコールエトキシレート;カチオン性界面活性剤、例えばセチルトリメチルアンモニウムクロリド;ならびに両性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤、ならびにアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の組み合わせが、最も一般的に使用される。ポリ(ビニルアルコール−co−酢酸ビニル)等のポリマー安定剤もまた、界面活性剤として使用され得る。水性媒体を含まない固体ポリマー生成物は、最終エマルションの不安定化/凝集に続く濾過、ラテックスからのポリマーの溶媒沈殿、またはラテックスの噴霧乾燥を含むいくつかのプロセスによって得ることができる。
【0026】
ある特定の界面活性剤及び開始剤系は、燃料中では望ましくない残渣をポリマー中に残留させる可能性があることが、当業者に認識される。これらは、硫黄含有種、一価及び多価金属イオン、及びハロゲン化物イオンを含み得る。そのような残渣を残留させない代替の界面活性剤及び開始剤を選択する、または任意の不要な残渣を除去もしくは最小限化する単離/精製プロセスを選択することができる。
【0027】
本発明において使用されるコポリマーに関して、モノマー組成物中に使用される二環式(メタ)アクリレートエステル(a)は、全モノマーの重量を基準として、1、5、10、または15wt%超であるが、好適には20、21、23、25、または30wt%以上であり、これは、そのようなコポリマーが、曇り点により決定されるように、燃料に対する所望の溶解度を有することが判明したためである。
【0028】
一実施形態において、コポリマーは、
10から95wt%の二環式(メタ)アクリレートエステル(a);
5から80wt%の脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b);
0から65wt%の芳香族ビニルモノマー(c);及び
モノマー(a)、(b)または(c)ではない、0から50wt%のさらなるエチレン性不飽和モノマー(d)から重合される。
【0029】
別の実施形態において、コポリマーは、
20から95wt%の前記二環式(メタ)アクリレートエステル(a);
5から80wt%の脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b);
0から65wt%の芳香族ビニルモノマー(c);及び
モノマー(a)、(b)または(c)ではない、0から50wt%のさらなるエチレン性不飽和モノマー(d)から重合される。
【0030】
本文書全体にわたり、コポリマーを構成するモノマーの重量パーセントは、使用されるモノマーの総重量を基準とし、モノマーの総重量は、合計100wt%である。
【0031】
さらなる実施形態において、コポリマーは、
20から95wt%の二環式(メタ)アクリレートエステル(a);
5から40wt%の脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b);
0から65wt%の芳香族ビニルモノマー(c);及び
モノマー(a)、(b)または(c)ではない、0から50wt%のさらなるエチレン性不飽和モノマー(d)から重合される。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明のコポリマーは、
40から90wt%の二環式(メタ)アクリレートエステル(a);
10から35wt%の脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b);
5から50wt%の芳香族ビニルモノマー(c);及び
モノマー(a)、(b)または(c)ではない、0から40wt%のさらなるエチレン性不飽和モノマー(d)から重合される。
【0033】
追加的な実施形態において、本発明のコポリマーは、
60から85wt%の二環式(メタ)アクリレートエステル(a);
15から25wt%の脂肪アルキル(メタ)アクリレート(b);
10から35wt%の芳香族ビニルモノマー(c);及び
モノマー(a)、(b)または(c)ではない、0から30wt%のさらなるエチレン性不飽和モノマー(d)から重合される。
【0034】
本発明において、また最も好適には実施形態のそれぞれに使用されるコポリマーにおいて、モノマー(a)及びモノマー(b)の総計が35wt.%以上、より好ましくは40%以上であることが好ましい。いくつかの実施形態において、モノマー(a)及びモノマー(b)の総計は、50%以上であり、さらなる実施形態において、総計は、全モノマー組成物の55wt.%以上である。
【0035】
本明細書において、また最も好適にはモノマー(a)及び(c)を利用する実施形態のそれぞれに使用されるコポリマーにおいて、モノマー(a)及びモノマー(c)の総計が、全モノマー組成物の30wt.%以上、より好ましくは35wt.%以上、さらにより好ましくは55%以上、最も好ましくは65wt.%以上であることが好ましい。いくつかの実施形態において、モノマー(a)及びモノマー(c)の総計は、20wt%以上、より好適には30wt%以上である。
【0036】
好ましくは、本発明において、また最も好適には実施形態のそれぞれに使用されるコポリマーにおいて、他のエチレン性不飽和モノマー(d)の量は、20wt%、15wt%、9wt%、または5wt%を超えず、ある特定の実施形態において、モノマーa)、b)及びc)は、一緒になって、ポリマーを形成するために使用されるモノマーの100wt%を構成する。
【0037】
但し、コポリマーは、少なくとも1種の二環式(メタ)アクリレートエステル、少なくとも1種の脂肪アルキル(メタ)アクリレート、及び少なくとも1種の低級アルキル(メタ)アクリレートで構成されなくてもよい。また、それらは、少なくとも1種の二環式(メタ)アクリレートエステル、少なくとも1種の脂肪アルキル(メタ)アクリレート、少なくとも1種の低級アルキル(メタ)アクリレート、及び少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーのコポリマーでなくてもよく、特に、二環式(メタ)アクリレートの重量パーセントが芳香族ビニルモノマーの量より15重量パーセント超高いコポリマーでなくてもよい。
【0038】
スチレンのホモポリマーは、B7ディーゼル燃料に可溶性ではないが、驚くべきことに、大量のこのモノマーは、イソボルニルメタクリレート及び脂肪アルキル(メタ)アクリレートと共重合して極めて可溶性のコポリマーを生成し得ることが認められた。例えば、例における各コモノマーの重量分率に基づいて、及び線形混合モデルを使用して、本明細書において実際に判明及び報告されたものよりも大幅に高い曇り点が推定される。好ましい実施形態において、コポリマーは、直線混合モデルを使用して計算された値より少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃低い曇り点を有する。
【0039】
所望により、特にポリマーの分子量及び分子量分布を制御するため、ならびに/またはポリマーの溶液のレオロジー挙動を制御するために、モノマーのミックス中に少量のジビニルベンゼンが使用され得る。典型的には、ジビニルベンゼンレベルは、5wt%未満、好ましくは2wt%未満、より好ましくは1wt%未満である。
【0040】
本発明において使用されるコポリマーにおいて、モノマーは、任意の様式、例えばブロックとして、またはランダムに配置され得る。好ましくは。コポリマーは、ランダムに配置されたコポリマーである。
【0041】
本明細書における好ましい実施形態において、コポリマーは、400,000から50,000,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0042】
本明細書において使用されるコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、実験の項のGPC−MALS法a)に従って測定された場合、好ましくは少なくとも400,000ダルトン(D)、一実施形態においては少なくとも500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、及び/または少なくとも1,000,000Dである。別の実施形態において、本発明において使用されるコポリマーのMwは、少なくとも1,500,000、好適には2,000,000D以上である。上限の分子量は、使用されることが意図される流体に対する溶解度により決定される。好適には、Mwは、50,000,000以下、好ましくは25,000,000未満である。一実施形態において、Mwは、20,000,000、15,000,000、10,000,000、7,500,000、6,000,000、及び/または5,000,000以下である。本発明における使用に関して定義される組成、及び1,000,000から50,000,000、好ましくは2,000,000から25,000,000Dの分子量を有するポリマーは、低濃度で有用であることが判明しており、これによって、これらのポリマーは、燃料における用途、特に燃料用の添加剤パッケージにおける使用に好適である。本発明において使用されるコポリマーの多分散性指数(PDI)、すなわちMw/Mnは、重大ではないことが判明しており、好適には、1または2または3から、10または8または6までの範囲内である。一実施形態において、PDIは、1から5、または1.5から4である。
【0043】
本発明において使用されるコポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により決定されるように、好ましくは50から190℃、より好ましくは65から150℃、別の実施形態においては95から130℃の範囲内である。本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、DSC Q200(TA Instruments、New Castle、Delaware)を使用して、以下のプログラムで測定された。
1)20℃で15分の等温でのDSC運転を開始する;
2)10℃/分で、材料のTgより約20℃上まで温度を傾斜させる;
3)その温度にて5分間等温で運転する;
4)Tgより20℃上から20℃/分で20℃まで温度を傾斜させる;
5)20℃にて5分間等温で運転する;
6)60秒毎に+/−1,280℃のプロセス条件で、変調モードを開始する;
7)2℃/分で180℃まで温度を傾斜させる。
【0044】
ポリマーの組成は、重合に供給されるモノマーの相対量から確実に推定され得る。代替として、コポリマーの組成は、Varian MR−400MHz及び/またはAgilent DD2 MR 500MHz NMR分光器を使用して、炭素−13NMRスペクトルから好適に決定される。
【0045】
本発明のポリマーは、燃焼エンジンを運転するのに好適な石油系燃料、例えば従来ガソリン及びディーゼル燃料として知られる燃料に有利に添加される。ポリマーは、好ましくは、燃焼効率改善効果を得るのに効果的な量で燃料に添加される。典型的には、本明細書において使用されるポリマーは、5000ppm(重量パーツパーミリオン)未満、例えば5ppmから、10ppmから、50ppmから、100ppmから、または500ppmから、好ましくは3000または1000ppmまでの濃度を達成するように、燃料に添加される。「ppm」という用語は、1kg当たり1mgに等しい。
【0046】
本発明において使用されるコポリマーは、(1)従来のポリマーよりも、石油系燃料の流動及び噴霧特性の調節に良好に適合する、(2)コポリマーのTgが、固体としてのポリマーの取扱いを可能にするのに十分高い、ならびに(3)それらが燃料における使用のための添加剤パッケージとして使用され得るという利点を有する。
【0047】
本明細書において使用されるコポリマーはまた、前記燃料のレオロジーを改変するために燃料組成物に添加され得ることが留意される。好適には、燃料組成物の粘度は、全燃料組成物の重量を基準として1%w/w未満、好ましくは0.5%w/w未満のコポリマーの溶解により増加され得る。
【0048】
本明細書において、ポリマーは、必要に応じて加熱後に、25℃のディーゼル燃料またはディーゼルベース燃料中の少なくとも2.0wt%のポリマー溶液が作製され得る場合、可溶性とみなされる。好ましくは、8℃のディーセル中の2.0wt%のポリマー溶液が作製され得る。好ましくは、本明細書における任意の実施形態のコポリマーは、以下で実験の項において説明されるように分析された場合、25℃未満の曇り点、より好ましくは15℃未満の曇り点、さらにより好ましくは5℃未満の曇り点を示す。
【0049】
一実施形態において、本発明の燃料組成物は、少なくとも以下のモノマー:
・少なくとも1種の二環式(メタ)アクリレートエステル、
・少なくとも1種の脂肪アルキル(メタ)アクリレート、
・任意選択で少なくとも1種の芳香族ビニルモノマー、及び
・任意選択で他のエチレン性不飽和モノマーを共重合させることにより得ることができる1種以上のコポリマーからなる、またはそれらを含むコポリマー成分を含有する。
【0050】
本発明の燃料組成物の一実施形態において、コポリマーまたは前記コポリマー成分は、好ましくは、燃料組成物中に、燃料組成物の総重量を基準として10ppmから100ppmの範囲内、より好ましくは25ppmから80ppmの範囲内の総量で存在する。
【0051】
好ましくは、前記コポリマー成分は、上述のような1種以上のコポリマーからなる。
【0052】
「〜からなる」という用語は、本明細書において使用される場合、「実質的に〜からなる」も包含するが、任意選択で、「完全に〜からなる」というその厳密な意味に限定され得る。
【0053】
コポリマー成分は、本明細書において、ベース燃料に添加される成分として理解されるべきである。好ましくは、コポリマー成分は、組成物を構成するコポリマー(複数種可)の唯一の源であってもよい、またはそのように考えられてもよいが、これは必須ではない。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、コポリマー成分は、コポリマー成分の全体的特性に対する実質的な影響を有さない少量の不純物、例えばコポリマー合成の副生成物を含んでもよい。そのような不純物は、例えば、最大約3wt%の量でコポリマー成分中に存在してもよい。本発明の実施形態において、3wt%までのそのような不純物は、コポリマー成分の一部とみなされてもよく、その場合、成分は、実質的にコポリマー化合物からなる。
【0055】
ベース燃料は、任意の好適な種類の液体ベース燃料であってもよい。
【0056】
ベース燃料は、少なくとも部分的に、誘導された、例えば石油、コールタールまたは天然ガスから誘導された化石燃料であってもよい。
【0057】
ベース燃料は、少なくとも部分的に生物由来であってもよい。生物由来成分は、少なくとも約0.1dpm/gCの炭素−14を含む。当技術分野において、約5700年の半減期を有する炭素−14は、生物学的に誘導された材料中に見られるが、化石燃料中には見られないことが知られている。炭素−14レベルは、液体シンチレーション計測によりその崩壊プロセス(炭素1グラム当たりの壊変毎分またはdpm/gC)を測定することによって決定され得る。
【0058】
ベース燃料は、少なくとも部分的に合成であってもよく、例えば、フィッシャートロプシュ合成により誘導されてもよい。
【0059】
便利には、ベース燃料は、任意の知られている様式で、例えば直流ストリーム、合成的に生成された芳香族炭化水素混合物、熱分解もしくは接触分解された炭化水素、水素化分解石油留分、接触改質炭化水素、またはこれらの混合物から誘導されてもよい。
【0060】
一実施形態において、ベース燃料は、蒸留物である。
【0061】
典型的には、ベース燃料は、炭化水素ベース燃料であってもよく、すなわち炭化水素を含んでもよい、またはそれからなってもよい。しかしながら、ベース燃料はまた、当技術分野において知られているように、含酸素添加剤、例えばアルコールまたはエステルを含んでもよい、またはそれらからなってもよい。
【0062】
ベース燃料自体は、2つ以上の異なる成分の混合物を含んでもよく、及び/または、例えば以下で説明されるように、添加剤が加えられてもよい。
【0063】
燃料中のコポリマーは、中間蒸留物またはより重質のベース燃料に関連した特定の利点を提供する。一実施形態において、ベース燃料は、中間蒸留物、例えばディーゼル及び/またはケロシンベース燃料を含む。
【0064】
好ましくは、ベース燃料は、ディーゼルベース燃料であってもよい。ディーゼルベース燃料は、ディーゼル燃料組成物における使用に、したがって圧縮点火(ディーゼル)エンジン内での燃焼に好適な、及び/またはそれ用に構成された、任意の燃料成分またはその混合物であってもよい。これは、典型的には、中間蒸留物ベース燃料である。
【0065】
ディーゼルベース燃料は、グレード及び使用に依存して、典型的には、150または180℃から370または410℃までの範囲内(ASTM D86またはEN ISO3405)で沸騰する。
【0066】
ディーゼルベース燃料は、任意の好適な様式で誘導され得る。ディーゼルベース燃料は、少なくとも部分的に石油から誘導されてもよい。ディーゼルベース燃料は、少なくとも部分的に、原油からの所望の範囲の留分の蒸留により得られてもよい。ディーゼルベース燃料は、少なくとも部分的に合成であってもよく、例えば、少なくとも部分的にフィッシャートロプシュ縮合の生成物であってもよい。ディーゼルベース燃料は、少なくとも部分的に生物学的起源から誘導されてもよい。
【0067】
石油誘導ディーゼルベース燃料は、典型的には、重質炭化水素の開裂により得られる1種以上の分解生成物を含む。石油誘導ガスオイルは、例えば、粗石油源を精製及び任意選択で(水素化)処理することにより得られてもよい。ディーゼルベース燃料は、そのような精製プロセスから得られた単一のガスオイルストリーム、または異なる処理経路により精製プロセスにおいて得られたいくつかのガスオイル留分のブレンドを含んでもよい。そのようなガスオイル留分の例は、直留ガスオイル、真空ガスオイル、熱分解プロセスにおいて得られるようなガスオイル、流体接触分解ユニット内で得られるような軽質及び重質循環油、ならびに水素化分解ユニットから得られるようなガスオイルである。任意選択で、石油誘導ガスオイルは、いくつかの石油誘導ケロシン留分を含んでもよい。
【0068】
好ましくは、そのような留分は、5から40、より好ましくは5から31、さらにより好ましくは6から25、最も好ましくは9から25の範囲内の炭素数を有する成分を含有し、そのような留分は、好ましくは、15℃で650から1000kg/mの密度、20℃で1から80mm/sの動粘度、及び150から410℃の沸点範囲を有する。
【0069】
そのようなガスオイルは、その硫黄含量をディーゼル燃料組成物中に含まれるのに好適なレベルまで低減するために、水素化脱硫(HDS)ユニット内で処理されてもよい。
【0070】
ディーゼルベース燃料は、フィッシャートロプシュ誘導ディーゼル燃料成分、典型的にはフィッシャートロプシュ誘導ガスオイルを含んでもよい、またはそれからなってもよい。
【0071】
本発明に関連して、「フィッシャートロプシュ誘導」という用語は、材料が、フィッシャートロプシュ縮合プロセスの合成生成物である、またはそれから誘導されることを意味する。「非フィッシャートロプシュ誘導」という用語は、それに従って解釈され得る。したがって、フィッシャートロプシュ誘導燃料または燃料成分は、添加された水素以外の実質的な部分が、フィッシャートロプシュ縮合プロセスから直接的または間接的に誘導される、炭化水素ストリームである。
【0072】
フィッシャートロプシュ燃料は、例えば、天然ガス、天然ガス液、石油もしくはシェール油、石油もしくはシェール油処理残渣、石炭またはバイオマスから誘導され得る。
【0073】
フィッシャートロプシュ反応は、適切な触媒の存在下、ならびに典型的には高い温度(例えば、125から300℃、好ましくは175から250℃)及び/または圧力(例えば、0.5から10MPa、好ましくは1.2から5MPa)で、一酸化炭素及び水素を、より長鎖の、通常はパラフィン性の炭化水素に変換する。
n(CO+2H)=(−CH−)+nHO+熱
所望により、2:1以外の水素:一酸化炭素比が使用され得る。
【0074】
一酸化炭素及び水素は、それ自体、有機、無機、天然または合成起源から、典型的には天然ガスまたは有機的に誘導されたメタンから誘導され得る。
【0075】
本発明において使用されるフィッシャートロプシュ誘導ディーゼルベース燃料は、精製もしくはフィッシャートロプシュ反応から直接的に、または、例えば分留もしくは水素化処理生成物をもたらすための精製または合成生成物の分留もしくは水素化処理により間接的に得られてもよい。水素化処理は、沸点範囲を調節するための水素化分解(例えば、GB B2077289及びEP−A−0147873を参照されたい)、ならびに/または分岐パラフィンの割合を増加させることにより低温流動特性を改善し得る水素異性化を含んでもよい。
【0076】
パラフィン系炭化水素のフィッシャートロプシュ合成のための典型的な触媒は、触媒活性成分として、元素周期表の第VIII族からの金属、特にルテニウム、鉄、コバルトまたはニッケルを含む。好適なそのような触媒は、例えばEP−A−0583836に記載されている。
【0077】
フィッシャートロプシュに基づくプロセスの例は、Shell(商標)「天然ガス液化」または「GtL」技術(以前はSMDS(シェル中間蒸留物合成)として知られ、「The Shell Middle Distillate Synthesis Process」,van der Burgt et al,5th Synfuels Worldwide Symposium,Washington DC,November 1985において発表された論文、及びShell International Petroleum Company Ltd,London,UKからの同表題の1989年11月の出版物において説明されている)である。このプロセスは、天然ガスから重質長鎖炭化水素(パラフィン)ワックスへの変換により、中間蒸留物範囲の生成物を生成し、次いでこのワックスは、水素転化及び分留され得る。
【0078】
本発明における使用のために、フィッシャートロプシュ誘導燃料成分は、好ましくは、天然ガス液化合成から誘導された任意の好適な成分(以降、GtL成分と呼ばれる)、または類似のフィッシャートロプシュ合成(例えば、ガス、バイオマスまたは石炭から液体への変換)から誘導された成分(以降、XtL成分と呼ばれる)である。フィッシャートロプシュ誘導成分は、好ましくは、GtL成分である。これは、BtL(バイオマス液化)成分であってもよい。一般に、好適なXtL成分は、例えば、当技術分野において知られているように、ケロシン、ディーゼル及びガスオイル留分から選択される中間蒸留物燃料成分であってもよく、そのような成分は、一般に、合成プロセス燃料または合成プロセス油として分類され得る。好ましくは、ディーゼル燃料成分としての使用のためのXtL成分は、ガスオイルである。
【0079】
ディーゼルベース燃料は、生物由来燃料成分(バイオ燃料成分)を含んでもよく、またはそれからなってもよい。そのような燃料成分は、通常のディーゼル沸点範囲内の沸点を有し得、直接的または間接的を問わず、生物学的起源から誘導されている。
【0080】
ディーゼル燃料成分に脂肪酸アルキルエステル(FAAE)、特に脂肪酸メチルエステル(FAME)を含めることが知られている。ディーゼル燃料に含まれるFAAEの例は、菜種油メチルエステル(RME)である。FAAEは、典型的には、生物学的起源から誘導可能であり、燃料生産及び消費プロセスの環境への影響を低減すること、または潤滑性を改善することを含む様々な理由で添加され得る。典型的には、FAAEは、便利には組成物が内燃エンジンまたは組成物で運転される他のシステムに導入される前に、ブレンド(すなわち物理的混合物)として燃料組成物に添加される。また、FAAEの添加前または添加後に、及び燃焼システムにおける組成物の使用前または使用中に、他の燃料成分及び/または燃料添加剤が組成物に組み込まれてもよい。添加されるFAAEの量は、任意の他のベース燃料及び問題のFAAEの性質、ならびに目標の曇り点に依存する。
【0081】
FAAE(本発明に関連して最も一般的に使用されるものはメチルエステルである)は、再生可能ディーゼル燃料(いわゆる「バイオディーゼル」燃料)としてすでに知られている。これは、それぞれ末端にアルコール分子が結合した長鎖カルボン酸分子(一般に10から22炭素原子の長さ)を含有する。植物油(リサイクルされた植物油を含む)及び動物脂肪(魚油を含む)等の有機的に誘導された油は、アルコール(典型的にはCiからC5アルコール)によるエステル交換プロセスに供され、典型的にはモノアルキル化された対応する脂肪エステルを形成し得る。好適には酸または塩基により、例えば塩基KOHにより触媒されるこのプロセスは、油の脂肪酸成分をそのグリセロール骨格から分離することにより、油に含有されるトリグリセリドを脂肪酸エステル及び遊離グリセロールに変換する。FAAEはまた、使用済み調理油から調製することができ、また脂肪酸からの標準的エステル化により調製することができる。
【0082】
本発明において、FAAEは、任意のアルキル化脂肪酸または脂肪酸の混合物であってもよい。その脂肪酸成分(複数可)は、好ましくは、生物学的起源、より好ましくは植物起源から誘導される。それらは、飽和または不飽和であってもよく、後者の場合、1つ以上、好ましくは6つまでの二重結合を有してもよい。それらは、直鎖または分岐状、環式もしくは多環式であってもよい。好適には、それらは、6から30個、好ましくは10から30個、より好適には10から22個または12から24個または16から18個の炭素原子を有し、酸基(複数可)−COHを含む。
【0083】
FAAEは、典型的には、その起源に依存して、異なる鎖長の異なる脂肪酸エステルの混合物を含む。
【0084】
FAAEは、好ましくは、天然脂肪油、例えばトール油から誘導される。FAAEは、好ましくは、C1からC5アルキルエステル、より好ましくはメチル、エチル、プロピル(好適にはiso−プロピル)またはブチルエステル、さらにより好ましくはメチルまたはエチルエステル、特にメチルエステルである。FAAEは、好適には、トール油のメチルエステルであってもよい。一般に、FAAEは、天然または合成、精製または未精製(「粗」)であってもよい。
【0085】
FAAEは、製造プロセスの結果として不純物または副生成物を含有してもよい。
【0086】
FAAEは、組成物が供される使用目的(例えばどの地理的領域であるか、及び1年のうちのいつであるか)を踏まえて、好適には、燃料組成物の残り、及び/またはそれが添加される別のベース油に適用される仕様に準拠する。特に、FAAEは、好ましくは、101℃超の引火点(IP34)、1.9から6.0mm/s、好ましくは3.5から5.0mm/sの40℃における動粘度(IP71)、15℃において845から910kg/m、好ましくは860から900kg/mの密度(IP365、EN ISO12185またはEN ISO3675)、500ppm未満の含水量(IP386)、360℃未満のT95(燃料の95%が蒸発した温度、IP123に従って測定)、0.8mgKOH/g未満、好ましくは0.5mgKOH/g未満の酸価(IP139)、及び燃料100g当たり125グラム未満、好ましくは120グラム未満または115グラム未満ののヨウ素(I2)のヨウ素価(IP84)を有する。FAAEはまた、好ましくは、0.2%w/w未満の遊離メタノール、0.02%w/w未満の遊離グリセロール及び96.5%w/w超のエステルを含有する(例えばガスクロマトグラフィー(GC)により)。一般に、FAAEは、ディーゼル燃料としての使用のための脂肪酸メチルエステルに関する欧州仕様EN 14214に適合することが好ましくなり得る。
【0087】
本発明のベース燃料中に、2種以上のFAAEが存在してもよい。
【0088】
好ましくは、ベース燃料または全燃料組成物中の脂肪酸アルキルエステル濃度は、以下のパラメータの1つ以上に合致する。(i)少なくとも1%v、(ii)少なくとも2%v、(iii)少なくとも3%v、(iv)少なくとも4%v、(v)少なくとも5%v、(vi)6%vまで、(vii)8%vまで、(viii)10%vまで、(xi)12%vまで、(x)35%vまでであり、(i)及び(x)、(ii)及び(ix)、(iii)及び(viii)、(iv)及び(vii)、ならびに(v)及び(vi)の特徴を有する範囲が、それぞれ徐々により好ましい。(v)及び(viii)の特徴を有する範囲もまた好ましい。
【0089】
ディーゼルベース燃料は、好適には、ディーゼル燃料組成物に関して以下に列挙されるような該当する現在の標準的ディーゼル燃料仕様(複数可)に準拠し得る。
【0090】
本発明の燃料組成物は、特に、ディーゼル燃料組成物であってもよい。本発明の燃料組成物は、任意の種類の圧縮点火(ディーゼル)エンジン内で使用されてもよく、及び/またはその使用に好適であってもよく、及び/またはその使用のために構成されてもよく、及び/またはその使用が意図されてもよい。本発明の燃料組成物は、特に、自動車燃料組成物であってもよい。
【0091】
ディーゼル燃料組成物は、標準ディーゼル燃料成分を含んでもよい。ディーゼル燃料組成物は、主要な割合のディーゼルベース燃料、例えば上述の種類のものを含んでもよい。「主要な割合」とは、典型的には、全体的組成物を基準として85%w/w以上、より好適には90または95%w/w以上、最も好ましくは98または99または99.5%w/w以上を意味する。
【0092】
本発明によるディーゼル燃料組成物において、ベース燃料自体は、上述の種類の2種以上のディーゼル燃料成分の混合物を含んでもよい。
【0093】
燃料組成物は、好適には、例えばEN590(欧州)またはASTM D975(米国)等の該当する現在の標準ディーゼル燃料仕様(複数可)に準拠し得る。例として、全体的組成物は、15℃で820から845kg/mの密度(ASTM D4052もしくはEN ISO3675)、360℃以下のT95沸点(ASTM D86もしくはEN ISO3405)、40以上、理想的には51以上の測定セタン価(ASTM D613)、2から4.5センチストークス(mm/s)の40℃における動粘度(VK40)(ASTM D445もしくはEN ISO3104)、55℃以上の引火点(ASTM D93もしくはEN ISO2719)、50mg/kg以下の硫黄含量(ASTM D2622もしくはEN ISO20846)、−10℃未満の曇り点(ASTM D2500/IP219/ISO3015)、及び/または11%w/w未満の多環式芳香族炭化水素(PAH)含量(EN12916)を有してもよい。全体的組成物は、例えばISO12156に従う高周波往復リグを使用して測定され、「HFRR磨耗傷」として表現される、460μm以下の潤滑性を有し得る。
【0094】
しかしながら、関連する仕様は、国ごとに、及び年々異なる可能性があり、また組成物の使用目的に依存し得る。さらに、全体的ブレンドの特性は、その個々の構成要素の特性とはしばしば大幅に異なり得るため、組成物は、これらの範囲外の特性を有する個々の燃料成分を含有し得る。
【0095】
本発明に従って調製されるディーゼル燃料は、好適には、5000ppm(重量パーツパーミリオン)以下、典型的には2000から5000ppm、または1000から2000ppm、または代替として1000ppmまでの硫黄を含有する。例えば、組成物は、例えば最大500ppm、好ましくは350ppm以下、最も好ましくは100または50またはさらには10ppm以下の硫黄を含有する、低硫黄もしくは超低硫黄燃料、または硫黄不含燃料であってもよい。
【0096】
本発明による燃料組成物、またはそのような組成物において使用されるベース燃料は、添加剤が加えられてもよく(添加剤含有)、または添加剤が加えられていなくてもよい(添加剤不含)。例えば製油所において添加剤が加えられる場合、燃料組成物は、例えばセタン増強添加剤、帯電防止剤、パイプライン摩擦低減剤、流動性改善剤(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはアクリレート/無水マレイン酸コポリマー)、潤滑性添加剤、酸化防止剤及びワックス沈降防止剤から選択される、少量の1種以上の添加剤を含有する。したがって、組成物は、コポリマーに加えて、低い割合(好ましくは1%w/w以下、より好ましくは0.5%w/w(5000ppm)以下、最も好ましくは0.2%w/w(2000ppm)以下)の1種以上の燃料添加剤を含有してもよい。
【0097】
組成物は、例えば、洗剤を含有してもよい。洗剤含有ディーゼル燃料添加剤は知られており、市販されている。そのような添加剤は、エンジン堆積物の蓄積を低減、除去または抑制することが意図されるレベルで、ディーゼル燃料に添加され得る。本発明の目的での燃料添加剤における使用に好適な洗剤の例は、ポリアミンのポリオレフィン置換スクシンイミドまたはスクシンアミド、例えばポリイソブチレンスクシンイミドまたはポリイソブチレンアミンスクシンアミド、脂肪族アミン、マンニッヒ塩基またはアミン及びポリオレフィン(例えばポリイソブチレン)無水マレイン酸を含む。スクシンイミド分散剤添加剤は、例えば、GB−A−960493、EP−A−0147240、EP−A−0482253、EP−A−0613938、EP−A−0557516及びWO−A−98/42808に記載されている。特に好ましいのは、ポリイソブチレンスクシンイミド等のポリオレフィン置換スクシンイミドである。
【0098】
本発明に従って調製される燃料組成物において使用可能な燃料添加剤混合物は、洗剤に加えて他の成分を含有してもよい。その例は、潤滑性向上剤;ヘーズ除去剤、例えばアルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー;消泡剤(例えば、ポリエーテル修飾ポリシロキサン);点火改善剤(セタン改善剤)(例えば、2−エチルヘキシルニトレート(EHN)、シクロヘキシルニトレート、ジ−tert−ブチルペルオキシド、及びUS−A−4208190のカラム2、27行目からカラム3、21行目までに開示されているもの);防錆剤(例えば、テトラプロペニルコハク酸のプロパン−1,2−ジオール半エステル、またはコハク酸誘導体の多価アルコールエステル(コハク酸誘導体は、そのアルファ炭素原子の少なくとも1つに、20から500個の炭素原子を含有する非置換または置換脂肪族炭化水素基を有する)、例えばポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル);腐食阻害剤;付香剤;磨耗防止添加剤;酸化防止剤(例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等のフェノール、またはN,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン);金属不活性化剤;燃焼改善剤;静電気拡散添加剤;低温流動性改善剤;ならびにワックス沈降防止剤である。
【0099】
そのような燃料添加剤混合物は、特に燃料組成物が低い(例えば500ppm以下の)硫黄含量を有する場合、潤滑性向上剤を含有してもよい。添加剤が加えられた燃料組成物において、潤滑性向上剤は、便利には、1000ppm未満、好ましくは50から1000ppmの間、より好ましくは70から1000ppmの間の濃度で存在する。好適な市販の潤滑性向上剤は、エステル系及び酸系添加剤を含む。
【0100】
また、燃料組成物が消泡剤を、より好ましくは防錆剤及び/または腐食阻害剤及び/または潤滑性向上添加剤と組み合わせて含有することも好ましくなり得る。
【0101】
別段に指定されない限り、添加剤が加えられた燃料組成物中のそれぞれのそのような添加剤成分の(活性物質)濃度は、好ましくは10000ppmまで、より好ましくは0.1から1000ppm、有利には0.1から300ppm、例えば0.1から150ppmの範囲内である。
【0102】
燃料組成物中の任意のヘーズ除去剤の(活性物質)濃度は、好ましくは、0.1から20ppm、より好ましくは1から15ppm、さらにより好ましくは1から10ppm、有利には1から5ppmの範囲内である。存在する任意の点火改善剤の(活性物質)濃度は、好ましくは2600ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、便利には300から1500ppmである。燃料組成物中の任意の洗剤の(活性物質)濃度は、好ましくは、5から1500ppm、より好ましくは10から750ppm、最も好ましくは20から500ppmの範囲内である。
【0103】
所望に応じて、上で列挙されたもの等の1種以上の添加剤成分は、添加剤濃縮物として、好ましくは好適な希釈剤(複数種可)と共に同時混合されてもよく、次いで、添加剤濃縮物は、ベース燃料または燃料組成物中に分散されてもよい。コポリマーは、本発明によれば、そのような添加剤配合物中に組み込まれてもよい。
【0104】
コポリマーの制御された事前溶解によって、より容易な燃料との混合/燃料への溶解が可能となるため、添加剤配合物または添加剤パッケージは、好適には、溶媒中の添加剤成分の溶解物である。
【0105】
ディーゼル燃料組成物において、燃料添加剤混合物は、例えば、任意選択で上述のような他の成分と一緒の洗剤、及びディーゼル燃料に適合する希釈剤を含有し、希釈剤は、鉱物油、Shell社により「SHELLSOL」という商標で販売されているもの等の溶媒、エステル等の極性溶媒、ならびに、特に、アルコール、例えばヘキサノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール及びアルコール混合物、例えばShell社により「LINEVOL」の商標で販売されているもの、特に、市販のC7〜9の第1級アルコールの混合物、またはC12〜14アルコール混合物であるLINEVOL 79アルコールであってもよい。
【0106】
燃料組成物中の添加剤の全含量は、好適には、0から10000ppmの間、好ましくは5000ppm未満であってもよい。
【0107】
本明細書において、成分の量(濃度、%v/v、ppm、%w/w)は、活性物質の量であり、すなわち、揮発性溶媒/希釈材料を除く。
【0108】
本発明は、燃料組成物の増加したセタン価と同様の性能上の利益を与えるために使用され得る。本発明は、追加的または代替的に、セタン価と同等の、またはそれに関連した燃料組成物の任意の特性を調節するため、例えば、組成物の燃焼性能を改善するため(例えば、燃料組成物で運転される燃料消費システムにおいて、点火遅れを短縮するため、常温始動を容易化するため、ならびに/または不完全燃焼及び/もしくは関連した排出を低減するため)、及び/または燃焼騒音を改善するため、及び/または出力を改善するために使用され得る。
【0109】
原則として、ベース燃料はまた、ディーゼルベース燃料以外のある種の液体ベース燃料を含んでもよい、またはそれからなってもよい。
【0110】
好適には、ベース燃料は、重質蒸留物燃料油を含んでもよい、またはそれからなってもよい。一実施形態において、ベース燃料は、工業用ガスオイルまたは家庭用灯油を含む。
【0111】
好適には、ベース燃料は、ケロシンベース燃料、ガソリンベース燃料またはそれらの混合物を含んでもよい、またはそれらからなってもよい。
【0112】
ケロシンベース燃料は、典型的には、グレード及び使用に依存して、130から300℃の通常のケロシン範囲内の沸点を有する。ケロシンベース燃料は、典型的には、15℃において775から840kg/m、好ましくは780から830kg/mの密度を有する(例えば、ASTM D4502またはIP365)。ケロシンベース燃料は、典型的には、130から160℃の範囲内の初留点及び220から300℃の範囲内の最終沸点を有する。その−20℃における動粘度(ASTM D445)は、好適には、1.2から8.0mm/sであってもよい。
【0113】
ガソリンベース燃料は、ガソリン燃料組成物における使用に、したがって火花点火(ガソリン)エンジン内での燃焼に好適な、及び/またはそれ用に構成された、任意の燃料成分またはその混合物であってもよい。
【0114】
典型的には、ガソリンベース燃料は、0から250℃(ASTM D86もしくはEN ISO3405)または20もしくは25から200もしくは230℃の範囲内で沸騰する炭化水素を含有する、液体炭化水素蒸留物燃料成分、またはそのような成分の混合物である。そのようなベース燃料の最適な沸点範囲及び蒸留曲線は、典型的には、それらの使用目的の条件、例えば、気候、季節及び任意の該当する地域の規制基準または消費者の好みにより変動する。
【0115】
ガソリンベース燃料は、例えば、石油、コールタール、天然ガスまたは木、特に石油から誘導され得る。ガソリンベース燃料は、合成であってもよく、例えば、フィッシャートロプシュ合成の生成物であってもよい。
【0116】
ガソリンベース燃料は、典型的には、80以上、または85、または90、または93、または94、または95、または98以上、例えば80から110、または85から115、または90から105、または93から102、または94から100のリサーチオクタン価(RON)(ASTM D2699またはEN25164)を有する。ガソリンベース燃料は、典型的には、70以上、または75、または80、または84または85以上、例えば70から110、75から105、または84から95のモーターオクタン価(MON)(ASTM D2700またはEN25163)を有する。
【0117】
ガソリンベース燃料は、好適には、低硫黄または超低硫黄含量、例えば最大1000ppm(重量パーツパーミリオン)、または500ppm以下、または100ppm以下、または50もしくはさらに10ppm以下の硫黄を有する。ガソリンベース燃料はまた、好適には、例えば最大0.005g/lの低い全鉛含量を有し、一実施形態において、ガソリンベース燃料は、鉛不含(「無鉛」)であり、すなわち中に鉛成分を有さない。
【0118】
ガソリンベース燃料は、典型的には、15℃で0.720から0.775kg/mの密度(ASTM D4052またはEN ISO3675)を有し得る。夏用ガソリン燃料における使用には、ベース燃料は、典型的には、45から70kPa、または45から60kPaの、37.8℃における蒸気圧(DVPE)(EN13016−1またはASTM D4953−06)を有し得る。冬用燃料における使用には、ベース燃料は、典型的には、50から100kPa、例えば50から80kPa、または60から90kPa、または65から95kPa、または70から100kPaのDVPEを有し得る。
【0119】
ガソリンベース燃料は、生物学的起源から誘導される1種以上のバイオ燃料成分を含んでもよい、またはそれからなってもよい。例えば、ガソリンベース燃料は、追加的な燃料成分として1種以上の含酸素添加剤、特に210℃未満の沸点を有するアルコールまたはエーテルを含んでもよい。好適なアルコールの例は、C1からC4、またはC1からC3脂肪族アルコール、特にエタノールを含む。好適なエーテルは、C5またはC5+エーテルを含む。ベース燃料は、当技術分野において周知の種類の1種以上のガソリン燃料添加剤を含んでもよい。ベース燃料は、改質ガソリンベース燃料、例えばエタノール等の含酸素添加剤の添加に対応するように改質されたものであってもよい。
【0120】
実施形態において、本発明の燃料組成物は、ガソリン燃料組成物である。
【0121】
ガソリン燃料組成物は、火花点火(ガソリン)内燃エンジンにおける使用に好適であってもよく、及び/またはそれ用に構成されてもよい。ガソリン燃料組成物は、特に、自動車燃料組成物であってもよい。
【0122】
ガソリン燃料組成物は、例えば、上述のような主要な割合のガソリンベース燃料を含んでもよい。これに関連して、「主要な割合」とは、典型的には、全体的燃料組成物を基準として85%w/w以上、より好適には90または95%w/w以上、最も好ましくは98または99または99.5%w/w以上を意味する。
【0123】
ガソリン燃料組成物は、好適には、例えば欧州連合におけるEN228等の該当する現在の標準ガソリン燃料仕様(複数可)に準拠し得る。例として、全体的配合物は、15℃で0.720から0.775kg/mの密度(ASTM D4052もしくはEN ISO3675)、210℃以下の最終沸点(ASTM D86もしくはEN ISO3405)、95.0以上のRON(ASTM D2699)、85.0以上のMON(ASTM D2700)、0から20%v/vのオレフィン性炭化水素含量(ASTM D1319)、及び/または0から5%w/wの酸素含量(EN1601)を有してもよい。
【0124】
しかしながら、関連する仕様は、国ごとに、及び年々異なる可能性があり、また組成物の使用目的に依存し得る。さらに、全体的ブレンドの特性は、その個々の構成要素の特性とはしばしば大幅に異なり得るため、組成物は、これらの範囲外の特性を有する個々の燃料成分を含有し得る。
【0125】
燃料組成物は、任意の好適な順番でその成分を単にブレンドすることにより調製され得る。第2の態様から、本発明は、燃料組成物をブレンドする方法であって、コポリマーをベース燃料とブレンドすることを含む方法を提供する。方法は、組成物を撹拌して、コポリマーをベース油中に分散または溶解することを含んでもよい。
【0126】
実施形態において、本発明は、少なくとも1,000リットル、または少なくとも5,000または10,000または20,000または50,000リットルのコポリマー含有燃料組成物を生成するために使用され得る。
【0127】
本発明の第3の態様によれば、燃料組成物中のコポリマーの、
(i)燃料組成物の霧化を補助すること;
(ii)組成物の点火遅れを減少させること;及び
(iii)組成物での燃焼点火エンジン運転の出力を改善することのうちの1つ以上を目的とした使用が提供される。
【0128】
本発明に関連して、燃料組成物におけるコポリマーの「使用」は、典型的には、1種以上の他の燃料成分、例えばベース燃料及び任意選択で1種以上の燃料添加剤、好ましくはディーゼルベース燃料及び任意選択で1種以上のディーゼル燃料添加剤とのブレンド(すなわち、物理的混合物)として、コポリマーを組成物中に組み込むことを意味する。コポリマーは、便利には、組成物で運転されるエンジンまたは他のシステムに組成物が導入される前に組み込まれる。その代わりに、またはそれに加えて、コポリマーの使用は、典型的には組成物をエンジンの燃焼チャンバ内に導入することにより、コポリマーを含有する燃料組成物で燃料消費システム、典型的には内燃エンジンを運転することを含んでもよい。これは、コポリマーを含有する燃料組成物で燃料消費システムにより駆動される車両を運転することを含んでもよい。そのような場合、燃料組成物は、好適には、ディーゼル燃料組成物であり、エンジンは、好適には、圧縮点火(ディーゼル)エンジンである。上述の様式でのコポリマーの「使用」はまた、コポリマーを、燃料組成物、特にディーゼル燃料組成物中でのその使用のための説明書と共に提供することを包含してもよい。コポリマー自体は、燃料添加剤としての使用に好適である、及び/またはそれが意図される組成物の一部として提供されてもよい。
【0129】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様による燃料組成物の、
(i)燃料霧化を補助すること;
(ii)点火遅れを減少させること;及び
(iii)組成物での燃焼点火エンジン運転の出力を改善することのうちの1つ以上を目的とした使用を提供する。
【0130】
燃焼エンジンは、好ましくは、内燃エンジンであり、より好ましくは、燃料組成物は、ディーゼル燃料組成物であり、燃焼エンジンは、圧縮点火(ディーゼル)エンジンである。
【0131】
補助すること、減少させること及び改善することの目的は、特に、上記コポリマーを実質的に含まない燃料組成物と相対的に達成され得る。
【0132】
本発明に従って調製または使用される燃料組成物は、改善、例えば点火遅れの減少及び/または出力の改善の利益があるという表示と共にマーケティングされてもよい。そのような組成物のマーケティングは、(a)関連した表示を含む容器内で組成物を提供すること;(b)表示を含む製品パンフレットと共に組成物を供給すること;(c)組成物を説明する出版物または貼紙に表示を提供すること(例えば販売場所で);及び(d)例えばラジオ、テレビまたはインターネットで放映される宣伝に表示を提供することを含んでもよい。任意選択で、そのような表示において、改善は、少なくとも部分的にコポリマーの存在によるものであってもよい。組成物の使用は、その調製中または調製後に、組成物から得られる関連特性(例えば点火遅れ、及び/または出力)を評価することを含んでもよい。これは、例えばコポリマーが組成物において関連した改善に寄与することを確認するために、コポリマーを組み込む前及び組み込んだ後の両方において関連特性を評価することを含んでもよい。
【0133】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたり、「含む(comprise)」及び「含有する」という用語ならびにそれらの用語の変形、例えば「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「含むがそれに限定されない」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数またはステップを除外しない。さらに、文脈により他の意味が必要とされない限り、単数形は複数形を包含し、特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈により他の意味が必要とされない限り、複数形と共に単数形を企図するものとして理解されるべきである。
【0134】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかに関連して説明された通りであってもよい。本発明の別の特徴は、以下の実施例から明らかとなる。一般的に、本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)において開示される特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。したがって、本発明の特定の態様、実施形態または例と併せて説明される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、適合しない場合を除いて、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または例に適用可能であることが理解されるべきである。例えば、誤解を避けるために、燃料組成物、ベース燃料またはコポリマーの任意選択的及び好ましい特徴は、燃料組成物、ベース燃料またはコポリマーが言及された本発明の全ての態様に適用される。
【0135】
さらに、別段に指定されない限り、本明細書において開示される任意の特徴は、同じまたは同様の目的を果たす代替の特徴により置き換えられてもよい。
【0136】
特性、例えば燃料組成物の濃度に対して上限及び下限が引用されている場合、上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせにより定義される値の範囲もまた暗示され得る。
【0137】
本明細書において、燃料及び燃料成分の特性への言及は、別段に指定されない限り、周囲条件下で、すなわち周囲圧力、及び16から22もしくは25℃、または18から22もしくは25℃、例えば約20℃の温度で測定された特性への言及である。
【0138】
ここで、以下の限定されない実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0139】
一連の例示的な本発明のコポリマー及び比較ポリマーを、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メタクリル酸エステルC13.0、及び他のモノマーの異なる組み合わせを使用して作製した。イソボルニルメタクリレートは、Sigma−AldrichまたはEvonik(VISIOMER(登録商標)terra IBOMA)から入手した。メタクリル酸エステル13.0は、Evonik(VISIOMER(登録商標)terra C13−MA)から入手した。スチレン、ならびにラウリル及びイソブチルメタクリレートの両方は、Sigma−Aldrichから入手した。
【0140】
分子量:
2つの異なる方法を使用して、ポリマー分子量を決定した。
【0141】
方法A:
GPC−MALSにより、40℃で分子量を決定した。定量は、ガードカラムのみを使用した分析による半バッチモードであった。試料は、約10mgを10mLのテトラヒドロフラン(移動相)中に溶解することにより調製した。必要に応じて、試料をテトラヒドロフランでさらに希釈した。
カラム:Phenogel Guard 10^6A(50mm×7.8mm);
流量:0.5ml/分THF;
注入:50μl;
カラム温度:40℃;
検出:Wyatt(登録商標)Dawn Heleos 18角度MALS 633nm及びWyatt Optilab T−REX屈折率検出器;
定量:ZimmまたはDebye 2次の1次、5から18角度。
【0142】
方法B:
GPC−MALSにより、分子量を決定した。試料は、約10mgを10mLのテトラヒドロフラン(移動相)中に溶解することにより調製した。
カラム:30cm×4.6mm10.0μm Phenogel 10^5A−公称限界100万;
移動相:安定化テトラヒドロフラン;
流量:0.40ml/分;
注入:100μl;
カラム温度:40℃;
検出:Wyatt Heleos MALSによるRI及びLS
【0143】
合成例S1。エマルション重合プロセスによるコポリマーの調製
【表1】
【0144】
重合手順
2Lの4口丸底フラスコに、オーバーヘッド型機械撹拌器、凝縮器及び窒素パージラインを備えたY字管、温度計、ならびに栓を装着する。フラスコに、脱イオン水及び界面活性剤を投入した。pHをチェックすると、4から5の所望範囲内であることが分かり、したがってpH調節は行わなかった。次いで、栓を通して表面下窒素パージを開始した。
【0145】
別個の容器内で、イソボルニルメタクリレート、スチレン、及びメタクリル酸エステル13.0を合わせた。
【0146】
次いで、t−ブチルヒドロペルオキシド(70%)0.0400gを脱イオン水3.75g中に溶解することにより、酸化剤溶液を調製した。
【0147】
窒素パージを維持しながら、モノマー混合物及びアセトン共溶媒を反応槽に徐々に添加した。添加中、撹拌速度を350rpmまで徐々に増加させた。
【0148】
モノマー混合物及びアセトン共溶媒の添加が完了してから数分後、撹拌速度を225rpmまで減速させた。恒温水浴を使用して、反応温度を約33℃にした。反応温度が約33℃となったら、酸化剤溶液を単回で反応混合物に添加した。
【0149】
別個の容器内で、アスコルビン酸ナトリウム0.0739g及び硫酸鉄(II)七水和物の脱イオン水中0.25wt.%溶液0.60gを、脱イオン水7.50g中に溶解することにより、還元剤溶液を調製した。
【0150】
酸化剤溶液を反応混合物に添加してから約5分後、反応温度は35℃であった。この時点で、窒素パージを維持しながら、暗青色の還元剤溶液をシリンジにより単回で反応槽に添加した。
【0151】
水浴を使用して加熱を継続した。発熱反応の発生が認められ、反応温度は、1時間後に約52℃の最大値まで上昇した。その後、これを、水浴を使用して43℃以上に維持した。反応が進行するにつれて、エマルションに青い色合いが認められ、次第により半透明となり、若干の粘度の増加が認められた。合計6時間の反応時間後、反応物を冷却し、チーズクロスを通して容器内に注いだ。(チーズクロス上に捕捉された)凝固物が認められ、粗粒を測定した。
【0152】
ポリマーラテックスの収量は、959gであった。固体(重量測定法により測定):30.23%.GPC−MALS(方法B)による分子量:Mw=5,700.000。
【0153】
希釈されていないエマルションポリマーを大過剰のメタノールに添加することにより、固体ポリマーを単離した。得られた沈殿物を真空濾過により収集し、メタノールで大規模に洗浄した。
【0154】
合成例S2S〜22。
合成例1の調製に使用された基本手順に従って、追加的なコポリマーを調製した。これらのポリマーの組成及び特性、ならびに合成例S1の組成及び特性を、以下の表1に要約する。
【表2】
【0155】
溶解度比較例1
280,000の報告されたMwを有するポリスチレンを、Sigma−Aldrichから入手した。
【0156】
溶解度比較例2
300kDのMw及び0.6の固有粘度を有するポリ(イソブチルメタクリレート)を、Polysciencesから入手した。
【0157】
溶解度比較例CE3〜CE6及びより好ましくない試料E7〜E10。
合成例S1の調製に使用された基本手順に従って、これらのコポリマーを調製した。
【0158】
これらのポリマーの組成及び特性、ならびに比較例1及び2の組成及び特性を、以下の表2に要約する。
【表3】
【0159】
ディーゼル燃料中のポリマー溶解度の評価
溶解度指数法:
キャップを有する20mLのバイアルに、ポリマー0.2gをディーゼル燃料9.8gに添加した。得られた混合物にゆるくキャップし、周囲室温(約25℃)で1時間激しく撹拌した。次いで、混合物を撹拌しながら約90℃に1時間加熱した。得られた混合物または溶液を周囲室温まで冷却し、24時間静置した。次いで、目視検査によりポリマー溶解度を決定し、任意のヘーズ、濁り、または他の相分離の兆候を示すポリマーは、不溶性であると判断した。次いで、混合物/溶液を8℃に設定された冷蔵庫内に24時間設置した。次いで、目視検査によりポリマー溶解度を決定し、任意のヘーズ、濁り、または他の相分離の兆候を示すポリマーは、不溶性であると判断した。
【0160】
曇り点決定法:
オーバーヘッド型機械撹拌器、温度計、凝縮器及びセプタム/栓を装着した4口の250mL丸底フラスコに、B7ディーゼル燃料50.0gに対するポリマー5.0gを投入した。得られた混合物を、均質溶液が得られるまで撹拌しながら70〜80℃に加熱した。いくつかの比較例の場合、例えばポリスチレンの場合、140℃で3時間の撹拌後であっても、ポリマーはB7ディーゼル燃料に溶解しなかった。得られた溶液の一部を、温かいうちに40mLバイアルに移した。約25℃超の曇り点を有するポリマーの場合、温度計を用いて手で撹拌しながら、溶液を約25℃に冷却した。報告された曇り点は、溶液が視覚的に濁った、または曇った温度である。約25℃未満の曇り点を有するポリマーの場合、氷/水浴またはドライアイス/アセトン浴を使用して、溶液が視覚的に濁った、または曇った点未満の温度まで溶液を冷却した。得られた濁った/曇った混合物を、温度計を用いて手で撹拌しながら、25℃まで徐々に温めた。報告された曇り点は、溶液が透明となった温度である。チェックとして、ポリマーの曇り点が決定されたら、温度計を用いて撹拌しながら透明溶液を徐々に冷却し(必要に応じて冷却浴を使用して)、曇り点を確認した。
【0161】
使用したB7ディーゼル燃料は、以下の表3に示される特性を有するB7 EN590仕様ディーゼルベース燃料であった。合成例の溶解度評価の結果を、以下の表4に要約する。
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【0162】
スチレンのホモポリマーは、B7ディーゼルベース燃料には可溶性ではないが、驚くべきことに、大量のこのモノマーは、イソボルニルメタクリレート及びラウリルメタクリレートと共重合して、極めて可溶性のコポリマーを生成し得る。例えば、例S5における各コモノマーの重量分率に基づき、このコポリマーの9.1wt.%における曇り点は、直線混合モデルを使用して、約78℃であると推定される。その代わり、これは19℃であり、予測値から大幅に、及び有益に異なる。同様に、40wt.%の不溶性コモノマースチレン及び18wt.%の別の不溶性モノマー、イソブチルメタクリレートを含有するS4の予測曇り点は、約61℃であり、これは、十分な溶解度の範囲を超えており、一方、実際の曇り点は16℃であり、これは有益にも十分な溶解度の好ましい範囲内である。また、これらのポリマーの測定Tgは65℃超であり、これはより好ましいTgの範囲内である。
【0163】
比較例CE4〜CE6において、脂肪アルキル(メタ)アクリレートは存在せず、これらのポリマーは、ディーゼルに対する望ましくない溶解度(25℃を超える曇り点)を有する。
【0164】
例E7〜E10は、望ましくない低いTgまたは望ましくない高い曇り点を有し、これによってそれらの取扱いが非常に困難となるため、より好ましくない。
【0165】
比較例7〜9。
CE7において、EP−A−0626442の例12を修正した。得られたポリマーは、約95kDのMwを有していた。分子量は、ポリマーが溶解される流体のレオロジーに効率的に影響するには低過ぎた。
【0166】
CE8おいてはUS4188219の調製4、及びCE9においてはEP1260278の例3を修正した。しかしながら、これらの例の両方の修正において、ポリマー材料を生成することはできなかった。
【0167】
ディーゼル燃料試験
試験のために、以下の燃料ブレンドを調製した。まず、ディーゼルベース燃料中で濃縮物を作製したが、この濃縮物は、少なくとも2.5wt%のコポリマーを含有し、これをその後さらなるディーゼルベース燃料で希釈して、所望のmg/kg濃度を有する燃料組成物を生成した。存在するコポリマーの量は、燃料組成物の総重量を基準としてppmで示される。使用したベース燃料は、上記の表3に示される仕様を有していた。
【表6】
【0168】
試験される燃料ブレンドを、Fueltech Solutions AS/Norwayから得られた燃焼調査ユニット(CRU)内での点火試験に供した。CRUは、現代のディーゼルエンジン内での燃焼条件を模擬することができる。これは、Proceedings of the Combustion Institute 35(2015)2967−2974に記載されている。CRUは、業界標準高圧コモンレールインジェクタに基づく噴射システムを特徴とする。以下の表に列挙される一定容積燃焼チャンバ内に燃料を噴射した。
【表7】
【0169】
CRUは、点火プロセスの圧力−温度チャートを提供し、このチャートから、点火遅れ(ID)、燃焼期間(BP)及び最大圧力増加(MPI)が決定され得る。点火遅れは、燃焼チャンバ内の圧力がその初期値を超えて0.2バールまで上昇するのに要する時間(ID0.2)として定義される。燃焼期間は、チャンバ圧力がその初期値プラス10%のMPIに等しくなる瞬間から、チャンバがその初期値プラス90%のMPIに等しくなる瞬間までの時間として定義される。
【0170】
得られた結果を、以下の表に列挙する。試験された各試料に対する放熱の最大速度(最大ROHR)及び放熱の最大速度までに要する時間(最大ROHRのT)のデータもまた表に示す。最大ROHRは、燃焼がどれほど激しいかの目安である。より高い数字は、燃料が点火したら、燃料を介して炎が移動する速度がより速いことを示す。
【表8】
【0171】
これらのデータは、ディーゼル燃料中で使用された場合、本明細書において使用されるようなコポリマーが、性能上の利益を提供したことを示している。ベース燃料に対するパーセント変化は、ほとんどの場合、99または95%信頼水準まで引用されている。
【0172】
これらのデータは、コポリマーを組み込んだ燃料組成物が、Tg及び/または曇り点特性を考慮してより好ましくないものであっても、燃焼特性を改善したことを示している。
【0173】
本発明の燃料組成物は、コポリマーを含まないベース燃料よりも早い点火(より短い点火遅れ)を示す。より短い点火遅れは、当技術分野において、常温始動能力を改善し、また燃焼騒音を低減することが知られている。点火遅れを減少させることにより、エンジンストロークの熱効率が改善され、より良好な燃焼が提供される。より短い点火遅れのこれらの利益は、ディーゼル燃料における増加したセタン価から得られる利益と同じ種類の利益である。
【0174】
より早い点火はまた、より多くの出力を提供し、したがって、より短い点火遅れは、エンジンの出力の改善の追加的な利点の指標である。
【0175】
点火遅れのデータは、わずかミリ秒での変化を示しているが、そのデータは、95%信頼水準で有意である。ディーゼルエンジンにおいて、クランクシャフトは、完全に360度回転する。2,000rpmで動作する車両では、1秒当たり12,000度のクランク回転(360×2000/60)がある。これは、1ミリ秒当たり12度のクランク回転に相当する。わずかミリ秒の点火遅れの短縮は、エンジン内での燃焼の段階における大きな差を意味し得る。
【0176】
また、高いROHRは、高い燃焼騒音に相関することが知られており、したがって、最大ROHR、及びそれに達するまでの時間の低減はまた、燃焼騒音の低減を示す。
【0177】
この理論に束縛されることを望まないが、改善された性能の利益は、燃料中のポリマーの使用に起因する改変されたレオロジーによるものであり、これが燃料の改善された霧化及びより完全な燃焼をもたらすと考えられる。
【0178】
エンジン試験
B5ディーゼルベース燃料である参照燃料、及び参照燃料と同じB5ディーゼルベース燃料であるが120ppmの合成例S19のポリマーが添加された燃料の2つの燃料を、エンジン試験に供した。
【0179】
このエンジン試験に使用されたエンジンは、以下の仕様を有するEuro 5エンジンであった。
【表9】
【0180】
エンジンを、4速及び最大負荷で2000rpmの一定エンジン速度に保持し、生成されたピーク圧力及びトルクを測定した。
【0181】
合成例S19のポリマーを含有する候補燃料は、参照燃料に比べ0.208%のトルクの利益を、及び参照燃料に比べ0.203%のピーク圧力の利益を提供した。
すなわち、本明細書は以下の発明の開示を包含する:
[1]燃焼エンジンに動力供給するための燃料組成物であって、
液体ベース燃料と;
少なくとも以下のモノマー:
・少なくとも1種の二環式(メタ)アクリレートエステル;
・少なくとも1種の脂肪アルキル(メタ)アクリレート;
・任意選択で少なくとも1種の芳香族ビニルモノマー;及び
・任意選択で他のエチレン性不飽和モノマーを共重合させることにより得ることができるコポリマーとを含む燃料組成物。
[2]前記脂肪アルキル(メタ)アクリレートは、C〜C24アルキル(メタ)アクリレートであり、C〜C24アルキル基は、直鎖または分岐状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよい、[1]に記載の燃料組成物。
[3]前記コポリマーは、400,000から50,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、[1]または[2]に記載の燃料組成物。
[4]前記二環式(メタ)アクリレートエステルは、一般式(I)
【化2】
(式中、
Rは、Hまたは−CHであり、
Aは、−CH−、−CH(CH)−または−C(CH−であり、
Mは、六員環の炭素原子に共有結合しており、水素及びメチル基またはその複数からなる群から選択される)のエステルである、[1]から[3]のいずれかに記載の燃料組成物。
[5]前記コポリマーは、
・10から95wt%の前記二環式(メタ)アクリレートエステルと;
・5から80wt%、好ましくは5〜40wt%の前記脂肪アルキル(メタ)アクリレートと;
・0から65wt%の前記芳香族ビニルモノマーと;
・0から50wt%の他のエチレン性不飽和モノマーとを、全体で100wt%まで含み、モノマーの重量パーセントは、全モノマーの総重量を基準とする、[1]から[4]のいずれかに記載の燃料組成物。
[6]前記コポリマーは、
・20から95wt%の前記二環式(メタ)アクリレートエステルと;
・5から80wt%、好ましくは5〜40wt%の前記脂肪アルキル(メタ)アクリレートと;
・0から65wt%の前記芳香族ビニルモノマーと;
・0から50wt%の他のエチレン性不飽和モノマーとを、全体で100wt%まで含み、前記モノマーの重量パーセントは、前記モノマー全ての総重量を基準とする、[1]から[5]のいずれかに記載の燃料組成物。
[7]前記コポリマーの重量の35wt%以上の量の二環式(メタ)アクリレートエステル及び脂肪アルキル(メタ)アクリレートの合計を含む、[1]から[6]のいずれかに記載の燃料組成物。
[8]前記コポリマーの重量の35wt%以上の量の二環式(メタ)アクリレートエステル及び芳香族ビニルモノマーの合計を含む、[1]から[7]のいずれかに記載の燃料組成物。
[9]前記少なくとも1種の二環式(メタ)アクリレートエステルは、イソボルニルメタクリレートを含むか、またはそれである、[1]から[8]のいずれかに記載の燃料組成物。
[10]前記少なくとも1種の脂肪アルキルメタクリレートは、ラウリル(メタ)アクリレート、メタクリル酸エステル13.0、及び/またはイソ−デカ(メタ)アクリレートを含むか、またはそれらである、[1]から[9]のいずれかに記載の燃料組成物。
[11]前記少なくとも1つの芳香族ビニルモノマーは、スチレンを含むか、またはそれである、[1]から[10]のいずれかに記載の燃料組成物。
[12]前記コポリマーは、少なくとも100,000Dの重量平均分子量を有する、[1]から[11]のいずれかに記載の燃料組成物。
[13]前記コポリマーは、50から190℃の範囲内のガラス転移温度を有する、[1]から[12]のいずれかに記載の燃料組成物。
[14]前記ベース燃料は、ディーゼルベース燃料であり、前記燃料組成物は、ディーゼル燃料組成物である、[1]から[13]のいずれかに記載の燃料組成物。
[15]前記燃料組成物中に存在するコポリマーの量は、前記燃料組成物の10重量ppmから100重量ppm、好ましくは25重量ppmから80重量ppmの範囲内である、[1]から[14]のいずれかに記載の燃料組成物。
[16][1]から[15]のいずれかに記載の燃料組成物をブレンドする方法であって、前記コポリマー、または前記コポリマーを含むコポリマー成分、または前記コポリマーを含有する添加剤パッケージを、前記ベース燃料とブレンドすることを含む方法。
[17]燃料組成物、好ましくはディーゼル燃料組成物中における、[1]から[13]のいずれかに記載のコポリマー、または前記コポリマーを含むコポリマー成分、または前記コポリマーを含有する添加剤パッケージの、
(i)前記燃料組成物の霧化を補助すること;
(ii)前記組成物の点火遅れを減少させること;及び
(iii)前記組成物での燃焼点火エンジン運転の出力を改善することのうちの1つ以上を目的とした使用。
[18][1]から[15]のいずれかに記載の燃料組成物の、
(i)燃料霧化を補助すること;
(ii)点火遅れを減少させること;及び
(iii)前記組成物での燃焼点火エンジン運転の出力を改善することのうちの1つ以上を目的とした使用。