(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0087]本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明白に他を表さない限り、複数の対象物を含む。同様に、「または」という単語は、文脈が明白に他を表さない限り、「および」を含むことを意図する。「AまたはBを含む」がA、B、またはAおよびBを含むことを意味するように、「含む」という用語は、包含的に定義される。
【0029】
[0088]「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、互換的に使用され、同じ意味を有する。同様に、「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」などの用語は、互換的に使用され、同じ意味を有する。具体的には、用語の各々は、「備える」の慣習的な米国特許法定義に一致して定義され、したがって、「少なくとも以下の」を意味するオープンな(open)用語であると解釈され、追加の特徴、制限、態様などを除外しないとも解釈される。したがって、たとえば、「構成要素aと、構成要素bと、構成要素cとを有するデバイス」は、デバイスが少なくとも構成要素aと、bと、cとを含むことを意味する。同様に、「ステップaと、ステップbと、ステップcとを含む方法」は、方法が少なくともステップaと、ステップbと、ステップcとを含むことを意味する。さらに、ステップおよびプロセスは、本明細書では特定の順序で概説されることがあるが、順序付けステップおよびプロセスが変化し得ることは、当業者には認識されよう。
【0030】
[0089]本明細書で使用されるとき、「対向部」または「対向要素」という用語は範囲の広い用語であり、限定するものではないが、本明細書で説明するように、面、タイル、小片、または1つもしくは複数の物質を操作してチューブ内もしくはスライドガラス上の検体を処理することが可能な別の構造(たとえば、
図47などの略円筒状対向部)を指す。いくつかの実施形態では、対向要素としては、1つまたは複数のスペーサ、間隙作成要素、またはスライドガラスに対して対向要素を配置するための他の機構があり得る。いくつかの実施形態では、対向部は、あらかじめ規定された区域からの流体の損失を防止または軽減するための手段を含むことがある。他の実施形態では、対向部は、1つまたは複数の流体制御要素を含むことがある。したがって、本明細書で使用されるとき、「対向部」または「対向部要素」という用語は、これらの特徴(たとえば、スペーサ、間隙作成要素、流体制御要素など)の任意の組み合わせを含んでよい。
【0031】
[0090]本明細書で使用されるとき、「試料」という用語は、限定するものではないが、とりわけ細菌、酵母、原生動物、およびアメーバなどの単細胞生物、多細胞生物(癌などの、診断または研究される健康状態または疾患によって冒された健康なまたは外見上は健康なヒト被験者またはヒト患者からの試料を含む、植物または動物など)を含む任意の生体から取得された、これによって排出された、またはこれによって分泌された任意の固体試料または流体試料であってよい。たとえば、生物学的試料は、たとえば、血液、血漿、血清、尿、胆汁、腹水、唾液、脳脊髄液、眼房水もしくは硝子体液、または任意の体分泌液、濾出物、滲出液(たとえば、感染症または炎症の膿瘍または他の任意の部位から取得された流体)、または関節(たとえば、正常な関節または疾患によって冒された関節)から取得された流体、から取得された生物学的流体であってよい。生物学的試料はまた、任意の臓器または組織(腫瘍生検などの生検検体または剖検検体を含む)から取得された試料であってもよく、または細胞(初代細胞であろうと培養細胞であろうと)もしくは任意の細胞、組織、もしくは臓器によって条件付けられた培地を含むことができる。いくつかの例では、生物学的試料は核抽出物である。いくつかの例では、試料は、開示する細胞ペレット切片試料の品質管理試料などの品質管理試料である。他の例では、試料は検査試料である。試料は、当業者によって当技術分野で知られている任意の方法を使用して調製可能である。試料は、ルーチン的なスクリーニングのための被験者から、または遺伝子異常、感染症、もしくは腫瘍形成などの疾病をもつ疑いのある被験者から、取得可能である。開示する方法の説明する実施形態は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝子異常、疾患、疾病などをもたない試料にも適用可能である。試料は、1つまたは複数の検出プローブによって具体的に結び付けられた複数のターゲットを含むことができる。
【0032】
[0091]
図1は、対向受け器480と駆動機構530とを含む対向アクチュエータ525を示す。対向受け器480は、一連の液体を操作し検体に向けるために使用可能な対向部470を保持する。対向受け器480は、クランプ536と、主本体部540とを含むことができる。クランプ536は、対向部470の取り付け端部950を保持するために協働する1対のあご542A、542Bを含む。対向部470は、捕捉用端部543まで延びる主本体部541を含む。主本体部541は、ピボット550によって駆動機構530に枢動自在に結合される。駆動機構530は、リンクアセンブリ560と、リニアアクチュエータアセンブリ562とを含むことができる。リンクアセンブリ560はピボット550を含み、ピボット550は、1つまたは複数の回転軸(たとえば2つの回転軸)のまわりでの回転を可能にし、1つまたは複数の転がり玉軸受、ピボット、蝶番、または所望の動きを提供する他の機構を含むことができる。リニアアクチュエータアセンブリ562は、エネルギー供給可能な駆動デバイス570(たとえば、ステッパモータ、駆動モータ、ソレノイドなど)と、可動要素572(たとえば、親ねじ、駆動ロッドなど)と、レールアセンブリ574(たとえば、キャリッジ/レールアセンブリ、ケージ化玉軸受直線レールアセンブリ(caged ball bearing linear rail assembly)など)とを含むことができる。
【0033】
[0092]対向受け器480は、リンクアセンブリ560を介してリニアアクチュエータアセンブリ562によって作動可能である。リニアアクチュエータアセンブリ562は、ピン576、578を後退させ、対向受け器480を開いた構成に駆動することができ、静止カム(たとえば
図2のカム575)は、ピン576、578と係合し、対向受け器480を開いた構成に駆動することができる。
図1の図示の実施形態を含むいくつかの実施形態では、開いた構成の対向受け器480は、対向部470をゆるく保持することができる。対向受け器480は、1つまたは複数の付勢部材(たとえば、ばね、空気圧アクチュエータなど)によって、閉じた構成に移動可能である。リニアアクチュエータアセンブリ562が延びると、ピン576、578は、上方に、かつ互いに近づくことができ、したがって、付勢部材は対向受け器480を閉じる。
【0034】
[0093]対向アクチュエータ525は、限定するものではないが、対向部470の存在、対向部470の位置、対向部470によって覆われる処理液体の1つまたは複数の特性などを検出するために、1つまたは複数のセンサも含むことができる。センサとしては、限定するものではないが、対向受け器480または他の適切な構成要素に結合または内蔵可能である、接触覚センサ、電気機械的センサ、光センサ、または化学センサがあり得る。センサの数、位置、および構成は、所望のモニタリング機能を達成するように選択可能である。
【0035】
[0094]
図2は、本技術の一実施形態によるスライドガラス243を保持する湿潤モジュール430の等角図である。湿潤モジュール430は、対向アクチュエータ525と、スライドガラスホルダプラテン601と、マニホルドアセンブリ606とを含む。回転作動状態の対向アクチュエータ525は、スライドガラス243に沿って対向部470を前後に回転させるために延長または後退可能である。リンクアセンブリ560(
図1)の回転継手(rotary joint)の動き、重力、および/または液体毛管力は、対向部470の所望の動きを維持する助けとなることができる。いくつかの実施形態では、対向アクチュエータ525は、対向部470を連続的または定期的に回転させ(たとえば、長手方向に回転させる、側方に回転させる、または両方)て、液体の体積を撹拌し、液体の帯(たとえば液体の流体層)を移動させ(たとえば、平行移動させる、広げる、狭くするなど)、(たとえば蒸発を加減するように)蒸発を制御し、かつ/または処理液体を他の方法で管理することができる。
【0036】
[0095]マニホルドアセンブリ606は、1対のセンサ620a、620b(総称して「620」)と、1つまたは複数の弁630とを含む。センサ620は、作動流体の圧力を検出することができ、検出された圧力を示す1つまたは複数の信号を送ることができる。流体ライン638は、加圧源640をマニホルド641に流体学的に結合することができる。流体ライン642、644は、マニホルド641を液体除去デバイス655およびスライドガラスホルダプラテン601に流体学的に結合する。液体除去デバイス655は、対向部470とスライドガラス243の間の液体を、廃棄物ポート643を介して除去することができる。ライン644は、真空を引いて、スライドガラス243をスライドガラスホルダプラテン601上に保持するために使用可能である。
【0037】
[0096]
図3Aおよび
図3Bは、本技術の一実施形態によるスライドガラスホルダプラテン601の等角図である。
図3Aのスライドガラスホルダプラテン601は、スライドガラス243を支持する。
図3Bのスライドガラスホルダプラテン601は空である。スライドガラスホルダプラテン601は、支持要素650と、取り付け基部651とを含むことができる。支持要素650は、接点または接触面679(
図3B)を有する、隆起したスライドガラス受け入れ領域680を含む。ポート683(
図3B)は、真空を引いて、接触面679に対してスライドガラス243を保持するように配置される。ポート683は、吸引カップであってもよいし、接触面679に対するスライドガラス243の間に強い真空を引くことを容易にするように構成された他の機構であってもよい。
【0038】
[0097]支持要素650は、取り付け基部651の外壁652内に配置された内壁681を含む。内壁681と外壁652は、加熱可能な側壁682を形成する。いくつかの実施形態では、側壁682は、接触面679の両面に配置可能であり、スライドガラス243、処理流体、および/または検体の温度を制御するために、周囲空気に熱エネルギーを出力することができる。いくつかの実施形態では、側壁682はまた、スライドガラス243全体を側方から囲むように配置可能である。取り付け基部651は、支持要素650を他の構成要素から絶縁できる絶縁材料(たとえば、プラスチック、ゴム、ポリマーなど)から作製可能である。いくつかの実施形態では、取り付け基部651は、支持要素650の材料の熱伝導性よりも実質的に低い熱伝導性を有する材料から作製される。取り付け基部651は、支持要素650を囲んで保護し、対向アクチュエータ525が結合可能な結合領域657を含むことができる。
【0039】
[0098]支持要素650は、低い熱伝導性を有する1つまたは複数の低熱伝達性材料を含む、コーティングされていない要素であってよい。低熱伝達性材料としては、限定するものではないが、鉄鋼、ステンレス鋼、または25℃で約10W/(m*K)〜25℃で約25W/(m*K)の範囲内の熱伝導性を有する他の材料があり得る。一実施形態では、低熱伝達性材料は、25℃にて16W/(m*K)の熱伝導性を有するステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、支持要素650は、重量で大部分はステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、加熱要素653(
図4)とスライドガラス243のすぐ間の支持要素650の材料の少なくとも大部分は、重量でステンレス鋼を含む。ステンレス鋼支持要素650は、比較的長い作動寿命を提供する目的で検体を処理するために使用される液体に対して耐食性であってよい。いくつかの実施形態では、支持要素650は、アンチモン(25℃でk=18.5W/(m*K))またはクロムニッケル鋼(たとえば、18重量%のCrおよび8重量%のNiであり、25℃で約16.3W/(m*K)の熱伝導性を有する)を含む。他の実施形態では、支持要素650は、25℃で約35W/(m*K)の熱伝導性を有する鉛または類似の熱伝導性を有する他の金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、支持要素650は、銅または真鍮よりも低い熱伝導性を有する材料から作製可能である。取り付け基部651は、支持要素650の熱伝導性よりも低い熱伝導性を有する絶縁材料から作製可能である。したがって、取り付け基部651は、支持要素650を熱的に絶縁することができる。
【0040】
[0099]
図4は、スライドガラスホルダプラテン601の正面、底面、左側面図である。
図5は、スライドガラスホルダプラテン601の底面図である。スライドガラスホルダプラテン601は加熱要素653を含むことができ、加熱要素653は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換することができ、限定するものではないが、1つまたは複数の掃引線、リード線、抵抗体(たとえば、熱エネルギーを生じる能動要素)、ヒューズなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、加熱要素653は、抵抗加熱器とすることができる。必要な場合または所望される場合、他のタイプの加熱器も使用することができる。いくつかの実施形態では、加熱要素653は、所望の熱伝達パターンを達成するために、熱エネルギーを支持要素650に出力することができる。熱は、支持要素650を介してスライドガラス243に不均一に伝達されて、蒸発熱損失を補償することができる。接触面679に沿った不均一な熱伝達は、接触面679に沿った不均一な温度プロファイルを生じることがある。略均一な温度プロファイルは、スライドガラス243の処理ゾーン671(
図3A)にわたって生じることが可能である。処理ゾーン671は、染色領域、取り付け領域、または1つもしくは複数の検体を担持するのに好適なスライドガラス243の上面もしくは検体支承面687(
図3A)の区域とすることができる。
【0041】
[00100]
図5の加熱要素653は、2つの細長いスライドガラス加熱部分660a、660b(総称して660)と、2つの端部加熱部分665a、665b(総称して「665」)とを含むことができる。細長い部分660は、熱エネルギーを、スライドガラス243の長手方向に延びる縁部分に送達する。端部加熱部分665は、熱エネルギーを処理ゾーン671の端部に送達する。細長い部分660および端部加熱部分665は互いに結合されて、複数の断片からなる(multi−piece)加熱要素653を形成することができる。細長い部分660および端部加熱部分665は、同じ伝導性または異なる熱伝導性を有する材料から作製可能である。各部分660、665は、異なる量の熱エネルギーを出力するように個別に動作され得る。他の実施形態では、加熱要素653は、均一な厚さまたは可変の厚さを有する1つの断片からなる構造を有することができる。1つの断片からなる加熱要素653は、1つの材料から作製可能である。
【0042】
[00101]細長い部分660および端部加熱部分665は一緒に、くぼみ670の形態をした対流冷却機構を画定する。くぼみ670は、熱エネルギーが加えられた場所で熱エネルギーを保つ助けとなるために支持要素650内で熱を隔離する助けとなることができ、スライドガラスホルダプラテン601の熱的質量を減少または制限する助けとなることもできる。くぼみ670は、
図5に示されるように、実質的に方形の形状を有する開口であってよい。しかしながら、くぼみ670は、支持要素650の接触面679に沿った所望の熱分布に基づいて、他の形状を有することができる。
【0043】
[00102]
図6Aは、スライドガラスホルダプラテン601の断面等角図である。支持要素650は、受け入れ領域680と、側壁682と、溝(channel)684とを含む。受け入れ領域680は、スライドガラス243を、動作中に溝684の中に集まり得る流体から離間するように保つ。溝684は、スライドガラス243の縁部813、815から落ちる液体を集めることができる。いくつかの実施形態では、スライドガラス243は、液体がスライドガラス243と接触面679の間に毛管作用で運ばれる(wicking)のを防止するために、受け入れ領域680から外側に十分な距離(たとえば、0.5mm、0.75mm、1mm、2mm、4mm、または6mm)延びることができる。
【0044】
[00103]スライドガラスホルダプラテン601は、複数のステップからなる製造プロセスで作製可能である。支持要素650は、機械加工プロセス、スタンピングプロセスなどによって形成可能である。支持要素650は、取り付け基部651を形成するようにオーバーモールド成形可能であり、取り付け基部651は、射出成形プロセス、圧縮成形プロセス、または他の適切な製造プロセスを使用して成形された絶縁材料から作製可能である。例示的な非限定的な絶縁材料としては、限定するものではないが、プラスチック、ポリマー、セラミックなどがある。支持要素650および取り付け基部651は、液体が支持要素650と取り付け基部651の間を伝わることを阻止または防止するために、依然として互いにしっかりと結合されたままであることができる。たとえば、支持要素650と取り付け基部651の間の境界面は、シール材を利用してまたは利用せずに液密シールを形成することができる。しかしながら、シール材、接着剤、および/または締着具が、支持要素650をしっかりと取り付け基部651に結合するために使用可能である。図示の支持要素650は、取り付け基部651に対する支持要素650の移動を最小限にする、制限する、または実質的に防止する助けとなるためのロック機構690、692を含む。
【0045】
[00104]
図6Bは、スライドガラスホルダプラテン601の断面図である。対向部470は液体802と接触し(engage)、液体802は検体807と接触する。側壁682は、スライドガラス243の上方に垂直に延びることができる。側壁682がスライドガラス243を越えて垂直に延びる距離は、対流(たとえば、周囲空気を通る対流)、蒸発などにより熱損失を引き起こし得る気流を管理する(たとえば、制限する、最小限にする、実質的に防止するなど)ように選択可能である。たとえば、スライドガラスホルダプラテン601および対向部470は、液体802の蒸発速度を約毎分7マイクロリットル、毎分5マイクロリットル、毎分3マイクロリットル、または他の最大蒸発速度以下に保つことによって、蒸発を加減することができる。いくつかの実施形態では、スライドガラスホルダプラテン601および対向部470は、液体802の蒸発速度を約毎分7マイクロリットル〜約毎分1マイクロリットルの範囲内に保つことができる。そのような実施形態は、蒸発損失を加減することができる。側壁682および対向部470は、流体802を周囲環境から熱的に隔離する助けとなるように協働することもできる。
【0046】
[00105]対向部470の側面部分811は、スライドガラス243の縁部813を越えて外側に延び、したがって、側面部分811は、スライドガラス243の縁部813よりも側壁682に近い。間隙819の幅W
G1は、側面部分811からスライドガラス縁部813までの距離D
1よりも小さくてよい。対向部470の側面部分812は、縁部815を越えて外側に延びる。間隙817の幅W
G2は、側面部分812からスライドガラス縁部815までの距離D
2よりも小さくてよい。いくつかの実施形態では、幅W
G1は、左側壁682と縁部813の間の距離の約10%、25%、または50%に等しいかまたはそれよりも小さくてよい。同様に、幅W
G2は、右側壁682とスライドガラス縁部815の間の距離の約10%、25%、または50%に等しいかまたはそれよりも小さくてよい。幅W
G1、W
G2は、対向部470のわずかな横方向移動により便利な取り扱いが容易になることを可能にしながら蒸発損失を阻止または制限するのに十分に小さくてよい。いくつかの実施形態では、幅W
G1、W
G2は、約1mm、2mm、4mm、または他の適切な幅に等しいかまたはそれよりも小さい。
【0047】
[00106]
図7は、湿潤モジュール430の上面平面図である。
図8は、
図7の線8−8に沿った湿潤モジュール430の一部分の断面図である。
図9は、
図7の線9−9に沿った湿潤モジュール430の一部分の断面図である。
図7および
図8を参照すると、センサ694は、貯蔵部697内の液体を検出するように配置される。センサ694は、貯蔵部697の底部696の近くに配置されたサーミスタ素子695を含むことができる。サーミスタ素子695と接触するのに十分な体積の液体が集められると、センサ694は、コントローラなどの別の構成要素に信号を送る。貯蔵部697における閾値体積の液体の検出は、湿潤モジュール430の故障を示すことがある。故障が検出されると、湿潤モジュール430は、湿潤モジュール430がたとえば、検査され、掃除され、または別の方法で維持され得るまで、使用不能にされることがある。
【0048】
[00107]
図8および
図9を参照すると、湿潤モジュール430は対流システム700を含み、対流システム700は、流れ発生器710と、管711と、管711の通路713によって画定される流路712(想像線で示される)とを含む。流れ発生器710としては、限定するものではないが、1つまたは複数のファン、送風機、または、支持要素650、スライドガラス243、および/もしくはスライドガラス243上に担持された物品(たとえば、検体、試薬など)の裏側を冷却するために対流流体(たとえば、空気、冷媒など)の十分な流れを流路712に沿って生成することが可能な他の適切な構成要素があり得る。
【0049】
[00108]流れ発生器710は、スライドガラス243の第1の端部732の下に位置する支持要素650の端部730に向かって対流流体を送達することができる。対流流体は、対流流体の流れを加速できるテーパ付き区画720を通って垂直に伝わることができる。加速された流れは水平に向けられ、スライドガラスプラテン601の下を流れる。対流流体は、スライドガラス243の冷却を容易にして促進するために、支持要素650と直接接触することができる。たとえば、対流流体は、くぼみ670に流れ込み、これに沿って流れて、支持要素650から熱エネルギーを吸収することができる。支持要素650は、スライドガラス243から熱エネルギーを吸収して、上面687を冷却し、最終的には、液体、検体、または上面687上の他の任意の物品もしくは物質を冷却する。暖められた流体は、くぼみ670を越えて流れ、スライドガラス243のラベル端部752の下に配置された支持要素650の端部750の下を進む。空気は、出口760を通って周囲環境まで下方に流れる。
【0050】
[00109]対流システム700は、スライドガラス243を迅速に冷却するために使用可能である。たとえば、対流システム700は、約2.5℃/秒に等しいかまたはこれよりも大きい速度で液体および/または検体を冷却する助けとなることができる。一実施形態では、検体の温度は約95℃とすることができ、約4分またはそれ未満で、約30℃に等しいかまたはそれよりも小さい温度に冷却可能である。他の冷却速度は、対流流体の流量、対流流体の温度などを増加または減少させることによって達成され得る。加熱サイクル中、対流システム700は、所望される場合、オフとすることができる。
【0051】
[00110]
図10は、
図7の線10−10に沿ったスライドガラスホルダプラテン601の一部分の断面図である。液体802の温度は、液体802の特性、検体の特性(たとえば、検体の厚さ、検体の組成など)、および実行されるべきプロセスに基づいて選択された目標温度範囲内に維持可能である。スライドガラス243の縁部に最も近い液体802の領域は、液体802の中央領域よりも多く蒸発するので、スライドガラス243の周囲および液体802の周囲は、補償なしで、より低い温度になる傾向がある。高温プロセス(たとえば抗原回収)の場合の蒸発熱損失は、低温プロセス(たとえば洗浄)の場合の蒸発損失よりも大きいことがある。検体807および/または液体802に沿った著しい温度変化は、処理の変化につながることがあるので、湿潤モジュール430は、高温プロセスおよび低温プロセスにおける蒸発熱損失を含む蒸発熱損失を補償することによって、スライドガラス243の所望の温度プロファイルを維持することができる。湿潤モジュール430は、液体802の帯および/または検体807を実質的に均等に加熱するために、面687に沿って実質的に均一な温度プロファイルを生じることができる。均一な温度プロファイルは、検体807全体を一貫して処理するために、周囲環境の変化とは無関係に維持可能である。
【0052】
[00111]
図10Aは、受け入れ領域680の幅に沿った場所とスライドガラス243に伝導される熱エネルギーのプロットである。
図10Bは、受け入れ領域680の幅に沿った場所と支持要素650の接触面679の温度のプロットである。
図10Cは、スライドガラス243の上面687に沿った場所のプロットである。
図10Bと
図10Cの比較から、支持要素650の接触面679に沿った温度プロファイルは、スライドガラス243の上面687に沿った温度プロファイルと異なることが示される。
【0053】
[00112]
図10Aを参照すると、加熱要素653は、熱エネルギーを伝導によってスライドガラス243に不均一に伝達することができる。熱は、依然として、蒸発熱損失が比較的高い染色領域の周辺に集中されたままである。熱エネルギーは、伝導によってくぼみ670より上方にある支持要素650の部分に直接伝達されないので、不均一な温度プロファイルが支持要素650の接触面679に沿って生じ、液体802の蒸発に関連する不均一な熱損失を補償することができる。補償によって、実質的に均一な温度プロファイルが、スライドガラス上面687に沿って生じることができる。
図10Cに示されるように、スライドガラス上面687に沿った温度は、目標温度範囲(2つの水平破線によって表される)内に保たれることが可能である。抗原回収のための一実施形態では、実質的に均一な温度プロファイルは、所望の温度の5%に等しいかまたはそれよりも小さい温度変化を有することができ、スライドガラス上面687の大部分にわたることができる。スライドガラス上面687は、たとえば、約95℃の平均温度または目標温度に保たれ、約90.25℃から約99.75℃の範囲内に保たれることが可能である。いくつかの実施形態では、加熱器要素653は、スライドガラス上面687の大部分にわたって、約4%よりも少ない温度変化を生じる。他の実施形態では、スライドガラス上面687の大部分にわたって、5%よりも小さい温度変化が存在することができる。スライドガラス上面687は、たとえば、約95℃の平均温度に保たれ、約92.63℃から約97.38℃の範囲内に保たれることが可能である。いくつかの実施形態では、許容できる温度変化が、ユーザによって入力可能である。
【0054】
[00113]
図11は、本技術の一実施形態による加熱ゾーンの上面図である。高加熱ゾーン820は、中間加熱ゾーン824を囲む。中間加熱ゾーン824は、低加熱ゾーン822を囲む。加熱要素653からの熱は、主に上方に伝わって、高加熱ゾーン820を画定する。高加熱ゾーン820は、スライドガラス243の染色区域の周辺の下に位置することができる。低加熱ゾーン822は、一般に、くぼみ670と、1つまたは複数の検体が通常配置される中央処理区域(たとえば染色区域)に対応することができる。加熱ゾーン820、822、824の温度は、その加熱ゾーンの真上のスライドガラスに沿って、蒸発の速度にだいたい反比例することができる。たとえば、低加熱ゾーン822は、一般に、実質的に蒸発損失がない液体802の帯の中部の下に配置可能である。高加熱ゾーン820は、一般に、比較的高い蒸発損失を経験する液体802の帯の周囲の下に配置される。
【0055】
[00114]
図12は、本技術の一実施形態によるスライドガラスを加熱するための方法900を示す流れ図である。901では、検体支承スライドガラス243(
図3A)は、支持要素650(
図3B)の接触面679の上に配置可能である。スライドガラス243は、スライドガラスホルダプラテン601によってあらかじめ加熱可能である。液体は、加熱されたスライドガラス243上に送達可能である。あるいは、スライドガラスホルダプラテン601は、液体を送達した後、スライドガラス243を加熱することができる。
【0056】
[00115]902では、対向部470は、液体を操作するために使用され、蒸発を軽減および制御することができ、このことは、温度、濃度、および毛管体積(capillary volume)に影響を与えることができる。いくつかの実施形態では、液体は蒸発することができ、熱損失をもたらし、いくつかの実施形態では液体802の濃度の変化ももたらす。ディスペンサは、追加の液体を所望のときに送達し、液体の体積を所望の範囲に保ち、液体の所望の濃度を維持することなどができる。液体の現在の体積が目標平衡体積よりも少ない場合、コントローラは、液体の現在の体積が平衡体積に到達するまで液体を送達するようにディスペンサに指示することができる。液体の現在の体積が目標平衡体積よりも多い場合、コントローラは、液体の現在の体積が平衡体積に到達するまで液体の送達をやめるようにディスペンサに指示することができる。液体がひとたび目標平衡体積に到達すると、コントローラは、液体を平衡体積に維持するように、所望の速度(たとえば、固定速度または可変速度)で追加の流体を液体に供給するようにディスペンサに指示することができる。送達速度は、液体の蒸発速度に基づいて選択可能である。
【0057】
[00116]903では、接触面679は、不均一な温度プロファイルを有することができ、したがって、スライドガラス243の上面687は、接触面679の不均一なプロファイルよりも均一な温度プロファイルを有する。スライドガラス243の取り付け区域の実質的に全体は、実質的に均一なプロファイルを有することができる。これによって、一貫した処理の場合、取り付け面と接触する検体の任意の部分がほぼ均一な温度に維持されることが保証される。検体が取り付け面に沿ってわずかに移動する場合でも、検体は、一貫して処理可能である。
【0058】
[00117]904では、液体802の蒸発に関連する熱損失は、接触面679に沿って不均一な温度プロファイルを生じることによって補償可能である。支持要素650および加熱側壁682は、スライドガラス243の温度を制御するために使用可能である。
【0059】
[00118]流体が染色面を横切って繰り返し操作されることによって、質量ならびに熱エネルギー混合の両方の意味で、流体が、スライドガラス面と接触する流体の主要部(body)内の異なる領域間で混合するという結果になる。温度は、スライドガラスの面を横切って均一に制御され、したがって、1)スライドガラスの下の伝導性加熱要素、2)流体操作から生じる熱混合、および3)周囲の環境に対する蒸発熱損失、の相互作用によって影響される。流体操作は、操作スピードおよび指定の体積に対する距離などの要因によって制御される。したがって、スライドガラスの下の伝導性要素の熱プロファイルは、流体操作要因に対する最適なスライドガラス上温度の均一性に関して適切に設計されなければならない。
【0060】
[00119]
図13は、スライドガラスホルダプラテン601、ディスペンサアセンブリ633、および蒸発の加減された検体プロセスステーションのコントローラ144を示す。ディスペンサアセンブリ633は、流体ライン623を介してディスペンサ622に流体学的に結合された流体源621を含む。流体源621としては、限定するものではないが、1つまたは複数の容器(たとえば、パーキングステーションすなわち保持ステーションから取り出された容器など)、貯蔵部、または他の適切な流体源(たとえば、バルク試薬貯蔵部)があり得、一以上の弁、ポンプなどを含むことができる。ディスペンサ622は、導管625の配列を介して液体を出力することができる。
図13の図示の実施形態を含むいくつかの実施形態では、ディスペンサ622は8つの導管625を含むが、任意の数の導管が使用可能である。さらに、ディスペンサアセンブリ633は、スライドガラスホルダプラテン601の設計に応じて複数のディスペンサを含むことができる。追加または代替として、ディスペンサは、液体をスライドガラス上に送達することができ、流体源621または別の流体源に流体結合可能である。対向部470は、ディスペンサ160、162の一方または両方が液体をスライドガラス上に送達することを可能にするように配置可能である。いくつかの実施形態では、ディスペンサ622は、パーキングステーション142の容器からバルク液体を送達し、ディスペンサ160、162は、パーキングステーション140の容器から液体を送達する。
【0061】
[00120]コントローラ144は、処理液体の体積を平衡体積範囲内に保つように検体処理ステーションの配列を制御することが可能である。液体の体積が平衡体積範囲を上回る場合、液体は、比較的高い速度で蒸発することができ、液体の濃度を大幅に変更することがある。液体の体積が平衡体積範囲を下回る場合、検体を適切に処理するのに不十分な体積の液体が存在することがある。さらに、不十分な体積の液体は、処理中に、望ましくないほど小さい体積の液体撹拌をもたらすことがある。平衡体積範囲は、液体の組成、所望の処理温度、または液体802の所望の撹拌に基づいて選択可能である。液体802の平衡体積は、蒸発損失を目標レベルより下に保ちながら検体の全適用範囲(full coverage)を提供する流体体積に(特定の温度または温度の範囲で)対応することができる。ディスペンサ622は、液体の体積を平衡体積範囲内に保つ、枯渇した試薬を補充するなどのために、固定速度(たとえば、蒸発速度に基づく速度)で液体を定期的に補う補充デバイスとして機能することができる。
【0062】
[00121]目標処理温度または目標処理温度範囲および全蒸発速度では、コントローラ144は、平衡体積の目標範囲を決定することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ144は、メモリ629および/または入力デバイス628から全蒸発速度情報を受け取ることができる。入力デバイス628としては、データサーバ、または要求時に、もしくは定期的にデータベースからの情報を提供することができる他の類似のデバイスがあり得る。全蒸発速度情報は、経験的調査から取得され、データベースに格納されることが可能である。他の実施形態では、入力デバイス628は、情報(たとえば、目標処理温度、目標処理温度範囲、補充速度など)をスライドガラスのラベルから取得する読み取り器であってよい。
【0063】
[00122]コントローラ144は、情報(たとえば、ルックアップテーブル、温度設定点、デューティサイクル、電力設定、周囲温度および/または湿度などの環境情報、処理プロトコールなど)をメモリ629から受け取ることができる。入力デバイス628は、手動入力デバイス(たとえば、キーボード、タッチスクリーンなど)であってもよいし、コントローラ144からの要求時に情報を自動的に提供できる自動入力デバイス(たとえば、コンピュータ、データ記憶デバイス、サーバ、ネットワークなど)であってもよい。メモリ629は、プロセスによって異なる命令を記憶することができる。プログラム命令の1つの記憶されたシーケンスは、検体807を洗浄剤と接触させるために使用可能であり、プログラム命令の別のシーケンスは、試薬(たとえば着色剤)を検体に適用するために使用可能である。コントローラ144は、検体を洗浄剤および試薬で順次処理するためにプログラム命令のシーケンスを実行するプログラム可能なプロセッサ631を含むことができる。スライドガラスホルダプラテン601は、プログラム命令の第1のシーケンスを実行すると、スライドガラスを第1の目標温度に加熱することができ、プログラム命令の第2のシーケンスを実行すると、スライドガラスを第2の目標温度に冷却することができる。プログラム命令の任意の数のシーケンスが、プロトコールのさまざまな段階を実行するために実行可能である。
【0064】
[00123]コントローラ144はまた、ディスペンサ622が追加の液体をスライドガラス上へと送達するように湿潤モジュール430を制御するようにプログラム可能である。流体送達の速度は、たとえば、処理情報(たとえば、プロトコール、撹拌情報、処理時間など)、全蒸発速度情報(たとえば、特定の条件下での蒸発速度、特定のタイプの液体に対する実際の蒸発速度など)などに基づくことができる。液体の現在の体積は、スライドガラス上の液体の初期体積および記憶された蒸発速度に基づいて決定可能である。記憶された蒸発速度は、システム100に入力されてもよいし、システム100によって決定されてもよい。コントローラ144は、あらかじめ(たとえばパイロットラン)平衡体積を計算することができ、システム100は、決定された平衡体積を、同じ種類の液体の初期体積として使用することができる。次いで、コントローラ144は、ある速度(たとえば、パイロットランによって決定された速度)で追加の液体を提供するようにディスペンサ622に指示することができる。転がす方向、転がすスピード、および転がす頻度は、液体のタイプに応じて調整可能である。転がす速度は、全蒸発速度に直接的な影響を与えることができる。転がす速度が速いほど、高い蒸発速度をもたらすことができる。プロトコールを生成するために経験的な全蒸発体積情報を集めるとき、これは、考慮される要因となることができる。
【0065】
[00124]コントローラ144の電源627は、加熱要素(たとえば
図6Aおよび
図6Bの加熱要素653)に電気的に結合可能である。電源627は、1つまたは複数の電池、燃料電池などであってよい。電源627はまた、システムの他の構成要素に電気エネルギーを送達することができる。他の実施形態では、電源627はAC電源であってよい。
【0066】
[00125]
図14は、開示する技術の一実施形態による、平衡体積と処理液体の全蒸発速度を示すプロットである。x軸は平衡体積(EV、単位:μL)を表し、y軸は全蒸発速度(TER、単位:μL/秒)を表す。線T
1およびT
2はそれぞれ、温度T
1および温度T
2におけるTERとEVの関係を表す。図示の実施形態では、T
1はT
2よりも高い。コントローラ144は、全蒸発速度情報をメモリ629、入力デバイス628などから受け取ることができる。全蒸発速度情報は、測定され、メモリ629に記憶されることが可能である。全蒸発速度情報は、さまざまな濃度における液体の蒸発速度を含むことができる。コントローラ144が所定の温度(たとえばT
1)および全蒸発速度情報(たとえば「A」μL/秒)を受け取った後、コントローラ144は、
図14のグラフに基づいて液体のEV値(たとえば「B」μL)を決定することができる。式1は、
図14で説明される関係に相当する。線T
1およびT
2の傾きは、以下の、温度に依存した蒸発定数(K)を表す。
【0067】
TER=K×EV 式1
[00126]液体の平衡体積がひとたび決定されると、コントローラ144は、それをスライドガラスの推定体積と比較することができ、必要な場合に追加の流体を供給するようにディスペンサ622に指示することができる。液体の現在の体積が、目標平衡体積よりも小さい場合、コントローラ144は、より多くの追加の液体を提供するようにディスペンサ622に指示することができる。
【0068】
[00127]
図15は、開示する技術の一実施形態による、時間とスライドガラスの適用範囲を示すプロットである。
図16A〜
図20Bは、取り付け区域671の対向する端部732、735の間で交互に移動されることによって全適用範囲を提供するために染色区域671全体(所望される場合、ラベル907およびある程度の余白を除く)に沿って液体802を移動させることによって、
図15に示される適用範囲を達成する1つの方法を示す。全適用範囲は、過小湿潤および過剰湿潤に関連する問題を最小限にする、制限する、または実質的に防止する助けとなることができる。過小湿潤では、液体802は、染色区域671全体よりも小さく接触し、したがって、検体807は、接触しない、したがって処置/染色されない危険性があることがある。過剰湿潤では、液体802は、染色区域671全体よりも大きく接触し、スライドガラス243から流出する傾向があることがある。液体802は、その後のプロセスにおける無効な液体除去の危険性があり、試薬の持ち越し汚染および関連する染色品質の劣化という結果になることがある。液体802が着色剤である場合、検体807全体が、一貫した(たとえば均一な)染色のために接触される。液体802が洗浄剤である場合、全適用範囲によって、特に試薬処置の後、検体807全体が徹底的に洗浄されることが保証される。方法のさまざまな段階について、以下で詳細に説明する。
【0069】
[00128]
図16Aおよび
図16Bは、
図15の時刻0における、対向アクチュエータ(図示せず)によって保持された対向部810と取り付け区域端部732との間の液体の帯802の側面図および上面図である。対向部810とスライドガラス243は、液体の帯802(たとえば、流体層、薄膜など)を形成する。
図16Bの液体の帯802は、想像線で示されている。間隙930(たとえば毛管間隙)は、約30マイクロリットル〜約350マイクロリットルの最小保持容量を有することができる。他の最小保持容量および最大保持容量は、必要な場合または所望される場合に可能であり、間隙の高さ、対向部の半径、流体の特性、および運動スピードに依存する。最小保持容量は、間隙930に含有され、染色区域671上のどこにでも位置してよい検体807に効果的に適用され得る液体の最小体積であってよい。最大保持容量は、流体制御の損失、たとえば側縁部または流体目標区域の外部への流体の溢流なしに間隙930に含有され得る液体の最大体積である。間隙930の狭くなった領域は小さな液体体積を収容することができるので、可変の高さの間隙930は、均一な高さの間隙よりも広範囲の液体体積を収容することができる。
【0070】
[00129]対向部810は、(矢印961によって示される)液体の帯802をスライドガラス243の長手方向軸951の方向に変位させるためにスライドガラス243に沿って転がされる。
図17Aおよび
図17Bでは、液体の帯802は、長手方向軸951の方向に液体の帯802の側面958を移動させることによって広げられている(
図15の0.25秒に相当する)。液体の帯802の側面956は、依然としてスライドガラス243の縁部960にあることができる。いくつかの実施形態では、液体の帯802は、狭くなった幅W
N1(
図16B)から広がった幅W
Sに広げられ得る。幅W
N1、W
Sはスライドガラス243の長手方向軸951と実質的に平行であってよく、液体の帯802の長さLは長手方向軸951に実質的に垂直であってよい。
【0071】
[00130]
図18Aおよび
図18Bは、
図15の0.5秒に相当する、液体の帯802がスライドガラス243に沿って移動した後の液体の帯802を示す。液体の帯802は、毛管作用を使用して変位される。毛管作用としては、限定するものではないが、接着力、凝集力、および/または表面張力により間隙930を通って液体が自然発生的に這うという現象による液体の帯802の移動があり得る。いくつかの実施形態では、幅W
Sは、一般に、液体の帯802を変位させる間、維持される。他の実施形態では、幅W
Sは、液体の帯802を移動させる間、5%よりも小さく増加または減少され得る。いくつかの実施形態では、対向部810は、帯がスライドガラスを横切って移動するとき可変の幅W
Sを有するために不均一な曲率または構成を有することができる。
【0072】
[00131]
図19Aおよび
図19Bは、
図15の0.75秒に相当する、端部735に配置された液体の帯802を示す。液体の帯802の側面958は、対向部810の端部952と取り付け区域671の端部735の間で捕捉可能である。ラベル907は、液体802を捕捉する助けとなることができる。たとえば、ラベル907は、全体的にまたは部分的に、疎水性材料から作製可能である。対向部810が
図20Aの過剰に転がされた位置に移動すると、液体の帯802の幅W
Sは、
図15の1秒に相当する、狭くなった幅W
N2に減少可能である。液体の帯802の幅は、間隙930の端部970において液体802の実質的にすべてを捕捉しながら、減少可能である。たとえば、液体802の少なくとも90体積%は、依然として捕捉されたままであることがある。いくつかの実施形態では、液体802の少なくとも95体積%は、依然として捕捉されたままであることがある。さらに他の実施形態では、液体の帯802の幅が減少されるとき、液体802の実質的にすべては、依然として捕捉されたままであることがある。
【0073】
[00132]圧縮された幅W
N2は、狭くなった液体の帯802全体が検体807から離間されるように、幅W
Sよりも実質的に狭くてよい。いくつかの実施形態では、狭くなった幅W
N2は、幅W
Sの約50%、25%、または10%に等しいかまたはそれよりも小さくてよい。そのような実施形態は、1つまたは複数の検体を担持するスライドガラスを処理するのに特に好適であることがある。染色区域671の比較的大きな区域は、液体の毛細管現象による這い上がり(wicking)または漏出を防止する間、狭くなった帯によって覆われない。いくつかの実施形態では、幅W
N2は、幅W
Sの約40%、30%、または20%に等しいかまたはそれよりも小さくてよい。幅W
N1は、幅W
N2にほぼ等しくすることができる。有利には、対向アクチュエータ525は、液体の帯802の可変の狭窄化を提供するために増加または減少するように動作可能である。
【0074】
[00133]
図20Aおよび
図20Bの対向部810は、液体の帯802を
図16Aに示される位置に移動させるためにスライドガラス243を横切って転がして戻され得る。対向部810は、スライドガラス243にわたって前後に液体802を移動させるために、可変速度または一定の速度で任意の回数、前後に転がされ得る。液体802が洗浄液である場合、この洗浄液は、徹底的な洗浄を提供するために、検体807にわたって迅速に前後に渡され得る。液体802が着色剤である場合、液体の帯802は、検体807の幅W
spec(スライドガラス243の長手方向軸951と平行な方向に測定される)全体にわたって均一な染色を提供するために、検体807にわたって前後に渡され得る。1つまたは複数の洗浄周期は、染色周期の間に実行可能である。スライドガラス上での混合も、必要な場合または所望される場合、実行可能である。
【0075】
[00134]処理プロトコールは、さまざまな処理基準(たとえば、化学的要件、吸収要件、可溶性の制限、粘度など)を満たすために、異なる転がりスピードおよび異なる液体体積を必要とすることがある。検体807がパラフィン包埋検体である場合、比較的少量の脱蝋(de−waxing)溶液(たとえば、12マイクロリットルのキシレン)が間隙930へと送達可能である。対向部810は、転がされ(たとえば、スライドガラス243の上面から離間された仮想面に沿って転がされる、上面に沿って転がされる、横に転がされる、長手方向に転がされるなど)てもよいし、液体802を適用するために別の方法で操作され(たとえば、回転される、平行移動される、または両方)てもよい。脱蝋後、比較的大量の試薬が、間隙930へと送達可能である。たとえば、約50マイクロリットル〜約500マイクロリットルの体積の着色剤が間隙930へと送達可能である。着色剤は検体807に送達され、次いで、その後、除去される。
【0076】
[00135]
図16A〜
図20Bに示される方法は、アッセイステップ(たとえば、抗体およびクロモゲンアッセイ)を実行するために使用可能である。アッセイステップは、比較的低い温度で実行可能である。スライドガラスホルダプラテン601は、検体および/または処理液体を約35℃〜約40℃の範囲の温度に保つことができる。一実施形態では、液体および/または検体は、約37℃の温度に保たれる。ディスペンサ(たとえば、
図13のディスペンサ622)は、約30〜約350マイクロリットルの目標体積を維持するために追加の液体を送達することができる。いくつかのプロトコールでは、ディスペンサは、毎分約4〜約5.1マイクロリットルから毎分約5.6マイクロリットルの速度で追加の液体を送達する。そのような実施形態では、液体(たとえば
図10の液体802)の体積は、約±1℃の平均スライドガラス温度許容誤差、毎秒約25〜60ミリメートルの対向部転がりスピードで、約10%〜90%の相対湿度、約15℃〜約32℃の周囲温度に基づいて、約15分の期間にわたって約90マイクロリットル〜約175マイクロリットルの範囲で保たれ得る。蒸発速度は、転がりスピードにほぼ比例し得る。転がりスピードが毎秒約20ミリメートルである場合、毎分約3.8マイクロリットル〜毎分約4.2マイクロリットルの補充速度は、約115マイクロリットル〜約200マイクロリットルの体積を維持することができる。転がりスピードが毎秒約40ミリメートルである場合、毎分約5.1マイクロリットル〜毎分約5.6マイクロリットルの補充速度は、約115マイクロリットル〜約200マイクロリットルの液体802の体積を維持することができる。毎秒約90ミリメートルという高い転がりスピードでは、約110マイクロリットル〜約200マイクロリットルの体積を維持するために、補充速度は毎分約7.6マイクロリットル〜毎分約8.4マイクロリットルとすることができる。より速いスピードが可能であることがあるが、間隙の高さ、対向部の半径、および流体の性質に依存する。湿度および周囲温度は、低温で蒸発速度に影響を与えることができるが、たとえば72℃よりも高い温度という高温では、あまり影響を与えないことがある。いくつかの実施形態では、本明細書で説明するように、特に1つまたは複数の流体制御要素が対向部設計に組み込まれている場合、毛管間隙は、300マイクロリットルのスライドガラス体積に効果的に使用可能であり、完全に覆うための毎分の回転数は最小で、補充も最小限である。
【0077】
[00136]目標とされる回収の場合、転がりスピードは毎秒約100ミリメートルとすることができ、補充速度は毎分72マイクロリットルとすることができる。抗原回収の場合、転がりスピードは毎秒約180ミリメートルとすることができ、補充速度は毎分105マイクロリットルとすることができる。処理条件に基づいて、他の補充速度が選択可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素が対向部設計に組み込まれている場合、温度が高く、スライドガラス体積が大きい(300から500マイクロリットル)と、補充の必要性が減少または実質的に解消され得る。
【0078】
[00137]上記で説明したように、対向要素は、流体を操作するために、静止したスライドガラスに対して移動可能である。他の実施形態では、スライドガラスは、流体を操作するために、静止した対向要素に対して移動される。さらに他の実施形態では、スライドガラスと対向要素の両方が、流体を操作するために移動される。対向部810(
図16Aおよび
図16B)および対向部2012(
図28)は非限定的な例示的対向要素であり、
図21〜
図38に関連して詳細に説明する。いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の流体制御要素または他の流体損失を防止もしくは軽減するための手段は、流体が流体担持間隙内または流体操作面もしくは他のあらかじめ規定された区域の上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0079】
[00138]
図21〜
図34は、対向部810の一実施形態を示す。対向部810は、本体1459と、ポート1374と、スロット1356とを含むことができる。本体1459が、間隙作成要素の第1の列1450と、間隙作成要素の第2の列1452と、検体処理領域1453とを含む。検体処理領域1453がスライドガラスと面し、液体と連動または係合するとき、液体は、ポート1374を介して除去可能である。スロット1356は、対向アクチュエータの機構を受け取ることができる。本体1459はまた、対向部810と位置合わせするために使用されるキー止め(keying)機構1362、1364(たとえば、穴、突出部など)を含むことができる。図示の機構1362、1364は穴である。
【0080】
[00139]
図21は、間隙作成要素1450、1452の2つの列の間の検体処理領域1453を示す。対向部810は、スライドガラスに対して所望の処理領域1453(たとえば、対向部810の面1460全体、対向部810の上面1460の大部分、間隙作成要素1450、1452の間の領域など)を提供するような寸法に設定され得る縁部1454、1456を有する。
【0081】
[00140]
図22は、間隙作成要素1450、1452の間に配置された例示的な液体の帯802(想像線で示される)を示す。液体の帯802は、間隙作成要素1450、1452と接触することなく対向部810の長さに沿って移動することができる。液体の帯802は、間隙作成要素1450、1452のいずれかのまわりの液体の蓄積なしに変位され得る。
【0082】
[00141]間隙作成要素1450、1452は、所望の体積の流体(たとえば最小体積の流体)で検体を処理する助けとなることができる。間隙作成要素1450、1452はまた、隣接する要素間での毛細管現象による這い上がりを減少させる、制限する、または実質的に防止するために、互いから離間可能である。液体802が間隙作成要素1450、1452のうちの一方に到達する場合、液体802は、隣接する間隙作成要素に流れることなく、その間隙作成要素とスライドガラスの間の接触境界に存在することができる。間隙作成要素1450、1452は、処理領域1453に近接した液体を保つように対向部810の縁部1454、1456から離間される。さらに、別の物体が縁部1454、1456と接触する場合でも、液体802は、対向部810の下からの毛細管現象による這い上がりを防止するように、縁部1454、1456から十分離れた場所に保たれる。
【0083】
[00142]間隙作成要素1450、1452の列は、対向部810の長さに沿って長手方向に延びる。間隙作成要素1450、1452の各列の対向する間隙作成要素は、スライドガラスが、側方に位置合わせされた間隙作成要素1450、1452と接触できるように、概ね側方に位置合わせされる。対向部810がスライドガラスに沿って移動されるとき、スライドガラスは、側方に位置合わせされた間隙作成要素1450、1452と連続して接触させられる。
【0084】
[00143]間隙作成要素1450、1452の列の各々は、互いに全体的に類似してよい。したがって、間隙作成要素1450、1452の列のうちの一方の説明は、別段に規定されていない限り、他方に等しく適用される。間隙作成要素1450の列は、約5個の間隙作成要素から約60個の間隙作成要素を含むことができ、隣接する間隙作成要素間の平均距離は、約1.27mm(0.05インチ)から約15.24mm(0.6インチ)の範囲である。
図21および
図22の図示の実施形態を含むいくつかの実施形態では、間隙作成要素1450の列は、面1460全体から外側に突き出す19個の間隙作成要素を含む。他の実施形態では、間隙作成要素1450の列は、約10個の間隙作成要素から約40個の間隙作成要素を含む。上方から見られるように(
図22を参照されたい)、間隙作成要素1450の列は、略直線状の構成を有する。他の実施形態では、間隙作成要素1450の列は、ジグザグ構成、蛇行した構成、または他の任意の構成もしくはパターンを有する。
【0085】
[00144]間隙作成要素1450は、互いから均等にまたは不均等に離隔されてよい。隣接する間隙作成要素1450間の距離は、間隙作成要素1450の高さよりも大きく、かつ/または対向部810の本体1459の厚さT(
図24)よりも小さくてよい。必要な場合または所望される場合、他の間隙作成配置も可能である。いくつかの実施形態では、厚さTは約2mm(0.08インチ)である。縁部1454、1456間の幅Wは、約15.24mm(0.6インチ)〜約38mm(1.5インチ)の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、幅Wは約30mm(1.2インチ)であり、縁部1454、1456は実質的に平行とすることができる。他の幅も可能である。
【0086】
[00145]
図22を参照すると、列1450、1452間の距離Dは、検体の寸法およびスライドガラスの寸法に基づいて選択可能である。いくつかの実施形態では、距離Dは、約6.35mm(0.25インチ)〜約25mm(1インチ)の範囲である。スライドガラスが標準的な顕微鏡スライドガラスである場合、距離Dは、約12.7mm(0.5インチ)よりも小さくてよい。
【0087】
[00146]
図24は、間隙作成要素1450のうちの1つを示す。間隙作成要素1450の高さHは、流体を操作する機能に基づいて選択可能である。検体が、約0.038mm(0.0015インチ)よりも薄い厚さを有する組織切片である場合、間隙作成要素1450は、約0.038mm(0.0015インチ)に等しいかまたはそれよりも小さい高さHを有することができる。間隙作成要素1450がスライドガラスと接触する場合、毛管間隙(たとえば
図16A〜
図16Bの間隙930)の最小高さは、0.038mm(0.0015インチ)に等しくすることができる。いくつかの実施形態では、高さHは、約0.025mm(0.001インチ)〜約0.127mm(0.005インチ)の範囲である。いくつかの実施形態では、高さHは、約30ミクロン、20ミクロン、または10ミクロンよりも薄い厚さを有する薄い組織切片を処理するために、約0.076mm(0.003インチ)(たとえば、0.076mm(0.003インチ)±0.0127mm(0.0005インチ))である。
【0088】
[00147]間隙作成要素1450、1452のパターン、数、寸法、および構成は、検体と液体の間の所望の相互作用に基づいて選択可能である。対向部810が間隙作成要素の域(field)を含む場合、間隙作成要素は、異なるパターンを形成するように対向部810にわたって均等にまたは不均等に分布可能であり、異なるパターンとしては、限定するものではないが、1つまたは複数の列、配列、幾何学的形状などがあり得る。
【0089】
[00148]間隙作成要素1450は、部分的に球状のへこみ、部分的に楕円形のへこみなどとすることができる。図示の間隙作成要素1450は、実質的に部分的に球状のへこみである。検体が十分大きいまたは検体がスライドガラスの一方の側面に向かって移動する場合、へこみの形をした間隙作成要素1450は、検体に損傷を与えるまたは検体をスライドガラスに移すことなく、検体の上で摺動することができる。他の実施形態では、間隙作成要素1450は、多面体突出部、円錐形突出部、円錐台形突出部、または多角形状および円弧形状の別の組み合わせの形をとることができる。
【0090】
[00149]
図23の本体1459は、約5cm(2インチ)〜約76cm(30インチ)の範囲の曲率半径Rを有する単純弧の形状である。いくつかの実施形態では、曲率半径Rは、約38cm(15インチ)または約74cm(20インチ)である。プロファイル誤差(deviation)の公称半径は、約2.54mm(0.1インチ)に等しいかまたはそれよりも小さくすることができる。プロファイルの実半径は、約0.254mm(0.01インチ)よりも小さく外れることができる。そのような実施形態は、上方から見られるように、略方形形状を有し、かつスライドガラスの幅に及ぶ液体帯を生じるのに好適であり、特定の体積に対して、スライドガラスに沿った長さにおいて小さい分散を有する。曲率半径Rは、処理されるべき検体の数、流体撹拌の量、処理液体の性質、間隙作成要素1450、1452の高さなどに基づいて選択可能である。他の実施形態では、対向部810は、複雑な弧(たとえば楕円形の弧)、複合弧などの形状をとる。さらに他の実施形態では、対向部810は、実質的に平面状とすることができる。幅Wを横切る面は、略水平とすることができる。
【0091】
[00150]対向部810は、全体的にまたは部分的に、ポリマー、プラスチック、エラストマー、複合物、セラミック、ガラス、または金属、ならびに処理流体および検体に化学的に適合した他の任意の材料から作製可能である。例示的なプラスチックとしては、限定するものではないが、ポリエチレン(たとえば、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、配合物など)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、ポロエチレンイミン(PEI)またはそれらの組み合わせがある。いくつかの実施形態では、対向部810は、単一の材料から作製可能である。他の実施形態では、対向部810の異なる部分は、異なる材料から作製される。対向部810が使い捨てである場合、対向部810は、全体的にまたは部分的に、比較的安価な材料から作成可能である。対向部810が剛性である場合、対向部810は、全体的にまたは部分的に、ポリカーボネート、ウレタン、ポリエステル、金属被覆されたプレートなどから作成可能である。
【0092】
[00151]
図23を再び参照すると、端部952は、テーパ付き領域1461の形をした捕捉機構を含む。テーパ付き領域1461は、液体の帯を捕捉するように配置される。対向部810が過剰に転がされるので、液体の帯は、テーパ付き領域1461に接触して粘着することができる。曲面1463は、液体が粘着できる大きな表面積を提供する。図示のテーパ付き領域1461は、液体の帯を捕捉するように標準的な顕微鏡スライドガラスと協働するために、約2.032mm(0.08インチ)に等しいかまたはそれよりも小さい曲率半径を有する。必要な場合または所望される場合、他の曲率半径も使用可能である。いくつかの実施形態では、丸い縁部1461の曲率は、対向部810の幅Wにわたって均一である。他の実施形態では、丸い縁部1461の曲率は、対向部810の幅Wにわたって可変である。
【0093】
[00152]対向部810は、相互汚染を防止するために、使い捨てであってよい。本明細書で使用されるとき、「使い捨て」という用語は、対向要素、処理液体などのシステムまたは構成要素(または構成要素の組み合わせ)に適用されるとき、範囲の広い用語であり、一般に、限定するものではないが、問題のシステムまたは構成要素は有限回数使用され、次いで捨てられることを意味する。対向要素などのいくつかの使い捨て構成要素は1回のみ使用され、次いで捨てられる。いくつかの実施形態では、処理装置の複数の構成要素は、持ち越し汚染をさらに防止または制限するために使い捨てである。他の実施形態では、構成要素は使い捨てでなく、任意の回数使用可能である。たとえば、使い捨てでない対向要素は、対向要素の特性を感知できるほど変えることなく、さまざまなタイプの清掃プロセスおよび/または滅菌プロセスに供されることがある。
【0094】
[00153]スライドガラスの面上のある体積の流体が毛管力に応じて長手方向に前進するとき、流体内の流れは、主に、ランダムに方向付けられるのではなく、移動の方向と位置合わせすることが予想される。したがって、関連する流体力学は、乱流型(regime)よりも層流型に、より多く対応することがある。層流型では、側方混合(たとえば移動の方向に略垂直な混合)は、比較的制限されることがある。ある体積の流体が、対向部を使用してスライドガラスに沿って比較的速いスピードで前進させられるとき、流体の慣性は、流体のうちのいくらかを、スライドガラスの縁部を越えて流すことができる。流体と接触する粗いまたはざらざらした面はまた、いくらかの増加した乱流を誘発し、側方混合を増加させることができるが、この面は、特に染色反応との関連で望ましくないことがある泡を、流体内で形成させることもできる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、粗いまたはテクスチャ付きの面は、試薬をより緊密に「保持し」、洗浄効率を減少させる傾向があると考えられる。
【0095】
[00154]さらに、処理中に検体処理領域1453または802の中に流体を維持することが望ましい。しかしながら、いくつかの条件下では、流体は、検体処理領域1453または802を越えて流れることがあり、このことは、対向部のある程度の移動と、生成され流体に伝達される力によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態では、流体の局所慣性によって、流体の一部分は、対向部とスライドガラスとの間で毛管空間の縁部に沿って外側に駆動可能である。いくつかの実施形態では、これが、視覚的なスライドガラス境界を越えた流体の縁部(または半月状面)の拡張である「小疱形成」をもたらし得る。いくつかの例では、流体は、毛管空間から逃げることがある。これらの状況の各々では、任意の処理ステップ中に検体処理領域1453または802の中に実質的に流体を維持することが望ましい。
【0096】
[00155]いくつかの例では、対向部上または毛管空間内での流体の流れは、流体と対向部基板の材料との間の何らかの物理的および/もしくは化学的相互作用またはその欠如により強化され得る。たとえば、スライドガラスの任意の縁部からの流体の吸い上げは、マイクロ流体環境を画定する幾何学的境界の性質および構成によって強化または阻止されることがある。いくつかの例では、いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、間隙作成要素のまわりでの局所的な移動、流水圧差、および面における表面張力を含む、流体パケットの移動の動的な力により、対向部の上方境界に沿った流体の外側移動を阻止するものは少ない。
【0097】
[00156]したがって、流体がスライドガラスの縁部を越えて流れない、たとえば、流体が対向部の縁部の方へ流れる、気泡状になる、または何らかのあらかじめ規定された領域を越えて逃げる(本明細書では、総称して「流体制御の損失」または「流体制御の損失イベント」と呼ばれる)ように、対向部が、流体パケットの機械的制御の損失を防止するまたは軽減するための手段を含むことが望ましい。そのような手段を組み込むことによって、本明細書で説明するように、撹拌体積、平行移動サイクル頻度、または対向部の行程もしくは加速に対する制限の減少を用いることなく、(そのような手段を組み込まない対向部と比較して)流体の制御の損失が少なくされ得ることが示されている。実際には、出願人らは、そのような手段の追加によって、約500μLまでの動的撹拌体積または境界のための流体の制御の損失が実質的に解消されることを示した。出願人らは、そのような手段を含む対向部が、少なくとも流体の制御の部分的損失を以前に生じさせた平行移動制限、円弧速度、および加速度を可能にしたことも示した。
【0098】
[00157]いくつかの実施形態では、対向部810は、対向部とスライドガラスとの間の毛管空間の縁部に沿って流体を含むおよび/または流体の損失を防止もしくは軽減するための手段を含む。いくつかの実施形態では、流体制御の損失を防止または軽減する手段は、対向部810に組み込まれた1つまたは複数の物理的および/または化学的特徴から選択される。いくつかの実施形態では、物理的および/または化学的特徴は、流体と対向部、スライドガラス、または両方との間の界面現象を修正する。いくつかの実施形態では、流体制御の損失を防止または軽減するための手段としては、そのまわりでの一般的な撹拌エネルギー(動的対向部の力を含む力のすべての原因となる)は閉じ込めの損失を防止するのに十分なほど低い機能的境界(以下では「境界」)を生じさせる特徴がある。いくつかの実施形態では、手段としては、対向部の表面特性(たとえば、コーティング、所望の流体適用範囲区域のテクスチャもしくは区域から変化する滑らかさもしくは粗さのテクスチャもしくは区域の組み込み、不整な表面領域、エッチングまたはマイクロエッチングが施された領域、表面電荷の修正、またはそれらの任意の組み合わせ)の修正があり得る。
【0099】
[00158]いくつかの実施形態では、流体制御の損失イベントを防止または軽減する手段は、マイクロ流体環境を画定する幾何学的境界である。いくつかの実施形態では、幾何学的境界は、対向部内の面の切れ目、溝、または裂け目である。いくつかの実施形態では、面の切れ目、溝、または裂け目は、流体には鋭角な縁部付きの障壁などの障壁として見えるのに十分なほど大きい幅を有する。他の実施形態では、縁部を越える不連続面とともに、くっきりした、明確な境または縁部を含む対向部の面内の不連続点は、対向部の面上または対向部とスライドガラスとの間の毛管空間(または、それに関しては、毛管空間が形成され得る、たとえばチューブ、毛細管、ピペットの場合、互いの近位にある任意の2つの材料)内に流体を含むのに十分に力のバランスを変更すると考えられる。幾何学的境界(「流体制御要素」)は、上記で説明したように、流体制御の損失を防止または軽減するように機能するならば、任意の形状、大きさ、または構成を有してよい。当業者は、流体の性質、境界を形成する材料、および毛管間隙の寸法に基づいて、流体制御要素の適切な形状、大きさ、または構成を選択することが可能である。
【0100】
[00159]
図39は、さまざまな流体制御要素実施形態を通る断面を示す。もちろん、
図39に示される実施形態は、上記で説明した不連続点を有する面の非限定的な例に過ぎない。
図39の各例では、流体制御要素は、角度シータを有する縁部(不連続点)と、その縁部1512を越えた不連続面とを有する。
図39A〜
図39Cに示されるものなどの、いくつかの実施形態では、対向部は、対向部の縁部1513と同時に存在する斜角付き縁部を形成する切れ目を含む。
図39D〜
図39Gに示されるものなどの、いくつかの実施形態では、対向部は、対向部内で「段付き縁部」を形成する切れ目、溝、または裂け目を含む。いくつかの実施形態では、流体制御要素は、
図39H〜
図39Jに示される面などの、円弧状、半円、またはU字形の不連続面を有する(これらの特定の実施形態は、「段付き縁部」を示しているが、円弧状または半円形の斜角付き縁部も企図される)。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、流体制御要素(たとえば、縁部(シータ)および縁部1512を越えた面)は、流体には境界と見え、流体制御の損失を防止または軽減する助けとなると考えられる。いかなる角度も、不連続点を導入するように機能することができるが、角度(シータ)が急なほど、提供される不連続点は有効である(たとえば、90°以上の角度は、より鋭角な不連続点よりも改善された不連続点をもたらすことができる)ことも考えられる。たとえば、いくつかの実施形態では、80°および100°の角度は、90°と比較すると、やや有効性の劣る性能を提供する。
【0101】
[00160]縁部の角度(シータ)またはその縁部に対するタンジェントを変化させることに加えて、面1512の長さを変化させ、したがって、その結果生じる対向部への切れ目の深さを変化させることも可能である。たとえば、
図39Aおよび
図39Bの斜角付き縁部は同じ角度シータを有することがあるが、面1512、1514は異なる長さを有することがある(たとえば、いくつかの実施形態では、面1513および1514全体は、流体によって到達不可能であってよい。同様に、面1514は、流体によって到達不可能であってよい)。同様に、段付き縁部内の溝の距離も変化されてよい(面1514)。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、面の長さ1512および段付き溝1514の幅は、特定の流体がスライドガラスを越えて逃げる可能性に直接的に関連すると考えられる。もちろん、任意の1つの対向部上の異なる流体制御要素は、異なる長さの面1512(または、それに関しては、異なる長さの面1514)の任意の組み合わせを含んでよい。したがって、最適化された面の長さまたは幅は、流体および求められる作動パラメータに基づいて選択されてよい。
【0102】
[00161]
図40〜
図42に示すように、流体制御要素1500、1501、1502は、対向部上のさまざまなところに配置されてよい。いくつかの実施形態では、流体制御要素は、1500、1501、または1502のいずれか1つなどの、単一の流体制御要素のみを含むことがある。あるいは、他の実施形態では、対向部は、2つ以上の流体制御要素を含むことがある。たとえば、対向部は、流体制御要素1500および1501、流体制御要素1500および1502、または流体制御要素1500、1501、および1502を有することがある。さらに、もちろん、流体制御要素1500、1501、または1502のいずれかは、
図39に示される構成を含む、任意の斜角付き縁部構成または任意の段付き縁部構成などの、任意の構成を有してよい。
【0103】
[00162]いくつかの実施形態では、流体制御要素1501、1502が、スペーサの間または間隙作成要素1450、1452と対向部縁部1454、1456との間に配置される。いくつかの実施形態では、流体制御要素1501、1502は、間隙作成要素1450、1452と平行または略平行に配設される。
図41に示すように、流体制御要素1501、1502は、斜角付き縁部を備え(
図39A〜
図39Cを参照されたい)、対向部縁部1454、1456と連続的である。
図42に示すように、流体制御要素1501、1502は、段付き縁部を備え(
図39D〜
図39Gを参照されたい)、間隙作成要素1450、1452と縁部1454、1456との間で離隔される。実施形態は、
図21および
図22に示すものなどの流体制御要素または間隙作成要素に関連する他の手段を示すことがあるが、本明細書で説明する実施形態の各々は、間隙作成要素を有さないそれらのデバイスもしくは対向部、またはスペーサ、突出部などを組み込んだものに等しく適用されてよい(たとえば、
図28および
図29を参照されたい)。
【0104】
[00163]他の実施形態では、
図40〜
図42を再び参照すると、流体制御要素1500は、ポート1374と対向部1510の取り付け端部との間に配置されることがある。これらの実施形態では、流体制御要素1500は、間隙作成要素1450、1452に垂直または略垂直に配設されてよい。
【0105】
[00164]流体制御要素は、対向部の長さまたは幅全体にわたってもよいし、その任意の長さまたは幅の一部分のみにわたってもよい。いくつかの実施形態では、流体制御要素は互いに隣接的である(
図44Aを参照されたい)。他の実施形態では、流体制御要素は連続的である(
図44Bを参照されたい)。もちろん、任意の2つの流体制御要素は、互いに隣接的であるかまたは連続的であるかのどちらであってもよい。単に例として、流体制御要素1501、1502は、対向部の長手方向長さの少なくとも約80%に沿って、間隙作成要素と平行に延びる(及ぶ)ことがある。別の例では、流体制御要素1501、1502は、対向部の長手方向長さの少なくとも約85%に沿ってわたる(及ぶ)ことがあり、1501、1502の各々は、流体制御要素1500と連続的である。同様に、再び例として、流体制御要素1500は、対向部の取り付け端部において幅の少なくとも約80%に沿って延びることがある。
【0106】
[00165]さらに、対向部の長さまたは幅全体に及ばないそれらの流体制御要素の場合、流体制御要素は、対向部の長さまたは幅の任意の部分で始まり、終わってよい。たとえば、流体制御要素1501は、対向部の捕捉端部から10mmのところで始まり、対向部の長手方向長さの約90%に沿って延びる。あるいは、流体制御要素1501は対向部の長手方向長さ(取り付け領域の長さを含まない)に沿って、中心が置かれてよい、および/またはその長さの約75%に沿って延びてよい。
【0107】
[00166]流体制御要素1500、1501、1502は、(i)間隙作成要素1450、1452、(ii)対向部の縁部1454、1456、(iii)ポート1374、または(iv)対向部1510の取り付け端部から、適宜任意の距離のところに離隔されてよい。
図43A〜43Bに示すように、流体制御要素1501、1502は、間隙作成要素1450、1452との間は距離D1、縁部1454、1456との間は距離D2、離隔される。
図43Cに示すように、流体制御要素1500は、間隙作成要素1454、1456から距離D4、ポート1374から距離D3、取り付け端部1510から距離D5、離隔される。対向部の両側の異なる流体制御要素は、対向部縁部から異なってまたは同じように離隔されてもよいし(距離D2)、間隙作成要素から異なってまたは同じように離隔されてもよい(距離D1)。もちろん、距離は、流体およびスライドガラス/対向部の材料に基づいて変化してよい。いくつかの実施形態では、流体制御要素は、下方境界(スライドガラス)に対する上方(または対向部)境界の最大距離が流体の密度および表面張力(および他の要因)に比例するように離隔される。
【0108】
[00167]もちろん、流体制御要素の間隔、装置、構成、および選択が可変であり、たとえば、対向部、それとともに使用されるスライドガラス、および結果として生じる毛管空間の大きさに依存することは、当業者には認識されよう。さらに、いかなる構成も、流体の化学的特性および流体内の界面活性剤の存在にも依存してよい。したがって、流体制御要素は、重力の影響によって撹拌が広がる、対向部とスライドガラスとの間の毛管空間を画定する流体境界内に位置するべきであることは、当業者には認識されよう。たとえば、間隙作成要素の第1のセットと平行な第1の流体制御要素は斜角付き縁部を含み、間隙作成要素の第2のセットと平行な第2の流体制御要素は段付き縁部を含むことは完全に可能である。さらに、流体制御要素の各々は、同じまたは異なる縁部角度(シータ)を含んでもよいし、縁部1512、1514を越えて同じまたは異なる長さの面を含んでもよい(
図39を参照されたい)。さらに、流体制御要素の各々は、同じまたは異なるように配設または離隔されることがある(たとえば、間隙作成要素の両側の段付き縁部は、対向部縁部から同じ距離離隔される必要はない)。
【0109】
[00168]いくつかの実施形態では、流体制御要素がセグメント化されることがある。たとえば、単一の流体制御要素、たとえば1501を有するのではなく、流体制御要素は、複数のより小さな流体制御要素(セグメント)、たとえば1501a、1501b、…、1501(n)に分割されることがあり、ここで、(n)はn番目のセグメントを表す。いくつかの実施形態では、セグメントの数は、約2から約200の間の範囲であり、各々は、互いから同じまたは異なる距離離隔される。任意の数のセグメントが、まとめられると、特性が求められる最小限を達成し、あらかじめ規定された区域を越えてスライドガラスの縁部から離れた流体の損失を適切に防止または軽減するならば、セグメントは、任意の個々の流体制御要素を備えてよい。単に例として、流体制御要素1501、1502は、それぞれ
図45Aに示すように、対向部の長手方向平面に沿って、かつ間隙作成要素1454、1456と平行な、3つ以上の個別のセグメント内に形成されてよい。
図45Bおよび
図45Cは、セグメント化された流体制御要素1500などの、セグメント化された流体制御要素の追加の実施形態を示す。任意の流体制御要素のセグメントは、同様にまたは異なるように(均等または不均等を含む)離隔されてよく、任意の2つのセグメント間の距離に関する制限はない。セグメントはまた、任意の形状、たとえば、隣接するまたは近接する円弧、円、正方形、長方形であってよい(たとえば、
図45Cを参照されたい)。
【0110】
[00169]流体制御要素は、研磨されてもよい(滑らか、または鏡のように滑らか)し、粗くてもよい。本明細書で使用されるとき、「粗い」という用語は、斜角付き縁部または段付き縁部の製作中またはその後にもたらされた面の凸凹を指す。いくつかの実施形態では、滑らかな面は、粗い縁部よりも流体の拡散を阻止すると考えられる。これは、拡大されると、粗い面は、次の接点へのより短い行程距離、ならびにベクトル化された吸い上げ経路を液体分子に提供することがわかる。
【0111】
[00170]同様に、流体制御要素は、縁部の化学的性質またはその静電的性質を変えるために、コーティングで処置されることがある。たとえば、流体制御要素の疎水性を増減するまたは親水性を増減し、その程度はもちろん、流体および対向部を構成する材料に依存するコーティングが適用されることがある。さらに、処理領域1453を構成する第1の材料と間隙作成要素1450、1452と対向部縁部1454、1456との間の領域を構成する第2の材料とを含む対向部を選ぶことが可能であり、材料は、流体制御要素と組み合わされたとき、流体制御の損失イベントの防止または軽減がさらに強化されるように選択される。
【0112】
[00171]いくつかの実施形態では、流体制御要素は、対向部を機械加工、ミリング、またはこれに斜角をつけることによって、あらかじめ制作された対向部上に直接的に生じさせられる。他の実施形態では、対向部は、斜角付き縁部または段付き縁部を提供するように成形される。当業者は、所望の流体制御要素を生ずるために適切な製造プロセスを選択することが可能である。生産プロセスの後に、任意の適切なコーティングが適用されてよい。
【0113】
[00172]同様に、流体制御要素は、対向部のスペーサまたは突出部とさまざまな縁部との間などで、
図28および
図29に示されたそれらの実施形態に対して類似の様式で配設可能である。さらに、間隙作成要素、スペーサ、突出部などを欠いているものですら、流体制御要素または他の手段が任意の対向部上に組み込まれてよいことは、完全に可能である。それらの実施形態では、流体制御要素は依然として、流体が流体処理領域を越えて移動するのを防止または軽減するために、デバイスまたは対向部の縁部に沿って、またはその近くに追加されてよい(たとえば、
図46Bを参照されたい)。そのうえ、流体制御要素または本明細書で説明する他の手段は、流体担持間隙を形成することが可能な任意のデバイスまたは対向部に適用されてよい。実際は、例として、本明細書で説明する実施形態のいずれも、毛管空間によって分離された任意の2つの材料に適用されてよい。
【0114】
[00173]いくつかの実施形態では、対向部は、
図47に示された実施形態に示すように、略円筒状形状を有する。円筒状の対向部は、回転エネルギーを対向部に供給するために、ピンまたはそれに接続された他の手段を有することがある。対向部のピンは、任意の大きさまたは形状であってよい。したがって、
図47の対向部は、並進運動および回転運動ことが可能なことがある(回転運動が、いかなる並進運動とも無関係である場合)。円筒状形状は、第1の端部に第1の直径を、第2の端部に第2の直径を有することがある。さらに、半径r
1、r
2、r
3、およびr
4(「ピン」の中心によって定義されるなど)は、同じであってもよいし、互いに異なってもよい。さらに、もちろん、半径は任意の大きさであってよく、
図47に示す構成と異なってよい。たとえば、半径r
1はr
2よりも大きくてよい。同様に、半径r
4はr
3よりも大きくてよい。いくつかの実施形態では、
図47に示されるように、異なる半径の使用によって、対向部とスライドガラスとの間の毛管空間内での流体の混合が強化されると考えられる。いくつかの実施形態では、略円筒状対向部は、(本明細書で説明するように)1つまたは複数の流体制御要素または流体制御の損失を防止または軽減する他の手段を備える。いくつかの実施形態では、略円筒状対向部は、対向部の長さ全体または実質的に長さ全体に延びる1つまたは複数の流体制御要素を備える(本明細書で説明するように、この形態を有する流体制御要素は、角度または不連続点を生じると考えられる)。流体制御要素は、本明細書で説明する形状のいずれかを有してよく、また、ここでも連続的であってもよいし、セグメント化されてもよい。
【0115】
[00174]いくつかの実施形態では、流体制御要素が、毛細管または毛管ピペットに追加されることがある。そこで、流体制御要素は、毛細管またはピペット内のエッチングされた空間または他の面不連続点であってよい(たとえば、
図46Aを参照されたい)。
【0116】
[00175]スライドガラスの上を前進させられたある体積の流体が、検体との相互作用を介して消費される反応物(たとえば、酸化剤、クロモゲン、または別の適切な組織化学的反応物)を含むとき、流体内での限られた側方混合は、反応物の濃度における望ましくない不均質性を引き起こすことがある。たとえば、検体は、スライドガラスの幅にわたって不均一な表面積または反応部位の密度を有することができ、これは、スライドガラスの上で前進させられる流体の体積が異なる領域内で異なる速度で反応物を枯渇させることができる。拡散混合だけでは、これらの不均質性を平衡させるのに不適切なことがある。たとえば、多数の反応物は、比較的高い分子量を有し、比較的ゆっくりと拡散し、したがって、側方拡散は、そのような反応物の濃度を平衡させるのに不十分なことがある。いくつかの検体処理反応は、反応物濃度に大きく依存する。動的流体プロトコールでは、検体の上を前進させられる流体の体積の異なる領域(たとえば、流体のボーラス、流体の薄膜など)が異なる反応物濃度を有するとき、検体の対応する領域は異なる速度で処理可能であり、不均一な検体処理(たとえば検体の不均一な染色)という結果になる。これは、比較的均一な検体処理が望ましいときに問題となり得る。不均一な染色は、流体移動の異方性に関連する非ランダムなパターン(たとえば縞模様パターン)の形をとることが多い。静的な流体処理(たとえばインキュベーション)では、組織特性の変化は、処理の不規則性につながることがある。しかしながら、そのような不規則性は、動的な流体染色プロトコールに関連する処理の不一致よりも著しく少ない処理の不一致という結果になることがある。
【0117】
[00176]不均一な染色の一例が
図25に示されており、
図25は、スライドガラス2000およびスライドガラス2000の面上に配置された6つの方形検体2002(1つが特定されている)の平面図である。検体2002は互いから離間され、2等分平面2004に対して略対称的に分布される。2等分平面2004は、スライドガラス2000の中心線に沿って延び、スライドガラス2000の長さと略平行である。検体2002の内側領域2002a(1つが
図25で特定されている)は、検体2002の外側領域2002b(1つが識別されている)よりも2等分平面2004に近い。流体2005(破線で示される)の体積は、スライドガラス2000の上を移動可能である。たとえば、流体2005の体積は、スライドガラス2000に沿って長手方向(矢印2007によって示される)に移動可能である。内側領域2002aは、外側領域2002bよりも強い着色剤強度を発生させることがある。理論に拘束されることを望むものではないが、2等分平面2004のまわりでの反応部位の欠如(たとえば、側方に隣接する検体2002間の間隙における反応部位の欠如)は、2等分平面2004からより遠い流体2005の一部分に比べて、2等分平面2004に近接する流体の体積の一部分において、反応物濃度の局所的な増加を引き起こし得ることが可能である。たとえば、流体2005の内側領域2001aにおける反応物の濃度は、流体2005の外側領域2001bにおける反応物の濃度よりも高いことがある。この濃度差は、
図25に示される不均一な染色を引き起こすことがある。
【0118】
[00177]不均一な染色の別の例が
図26に示されており、
図26は、スライドガラス2006およびスライドガラス2006の面上に配置された1つの不規則な形状の検体2008の平面図である。検体2008は、2等分平面2010に対して対称ではない。具体的には、2等分平面2010の片側にある検体2008の第1の領域2008aは、2等分平面2010の他方の側にある検体2008の第2の領域2008bよりも小さい。流体2009の体積(破線で示される)を長手方向にスライドガラス2006の上で矢印2011によって示される方向に前進させた後、第1の領域2008aは、第2の領域2008bよりも強い着色剤強度を発生させることがある。同じく、理論に拘束されることを望むものではないが、第1の領域2008aに関連する、第2の領域2008bと比べてより少数の反応部位は、第1の領域2008aの上で前進させられる流体2009の部分2013aに、第2の領域2008bの上で前進させられる流体の部分2013bよりも高い反応物濃度を発生させることができ、この濃度差は、
図26に示される不均一な染色を引き起こし得ることが可能である。さらに他の例では、検体に関連する反応部位の数および/またはタイプの自然な変化は、検体が2等分平面または他の基準平面に対して対称であるときでも、不均一な染色を引き起こし得る。他の現象も、
図25および
図26に示される不均一な染色に類似したまたはこれと異なる不均一な染色をもたらすことがある。
【0119】
[00178]
図27は、処理期間中(たとえば、反応物を含む流体の体積が検体の上を前進させられる間)の検体処理反応の一例に対するx軸上の平均リアルタイム反応物濃度とy軸上の反応速度を示すプロットである。処理期間中、検体処理反応は、反応物を次第に消費させる。多数の検体処理反応では、閾値反応物濃度([R]
threshold)がある。この閾値反応物濃度より上では、反応はゼロ次(すなわち、反応物濃度とは全体的に無関係である)であり、この閾値反応物濃度より下では、反応はゼロ次でない(たとえば、1次または2次である)。したがって、場合によっては、反応物濃度が、流体の体積の異なる部分内で変化する濃度レベルを生じさせるために減少した場合でも、減少したレベルが依然として[R]
thresholdよりも上である限り、検体の異なる領域における反応速度は、依然として概ね同じままであることができる。しかしながら、中でも反応物のコスト、可溶性、中毒(たとえば、酵素中毒)、および選択性などのさまざまな要因は、比較的に高い初期反応物濃度を使用することを、技術的に難しく、かつ/または望ましくなくすることがある。したがって、流体の体積内での初期反応物濃度は、流体の異なる部分内のリアルタイム反応物濃度が処理期間中に[R]
thresholdより下に低下することを防止するのに不十分であることが多い。そのうえ、検体に関連する反応部位の数、検体のサイズ、反応部位の分布、および反応物減少に影響を与える他の要因は、多くの場合、検体の間で大きく変化し、制御するのが実際的でないことがある。検体は、たとえば、約0.01平方センチメートルの面積と比較的低い抗原負荷を有する単一針生検から、約10平方センチメートルの面積および比較的高い抗原負荷を有する一片の組織まで、さまざまであることがある。流体の体積の側方混合は、単一針生検、組織の片、および他のタイプの検体の略均一な処理を容易にすることができる。対向部は、流体の体積を側方に混合するように構成可能である。
【0120】
[00179]
図28、
図29、および
図30はそれぞれ、本技術の一実施形態により構成された対向部2012の等角図、上面平面図、および側立面図である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、
図28および
図29に示す対向部に組み込まれる。
図31は、対向部2012の一部分の詳細図である。場合によっては、対向部2012は、上記で説明した現象のうちの1つもしくは複数および/または不均一な染色に関連する他の現象を少なくとも部分的に補償するために、側方混合を提供することができる。たとえば、本技術のいくつかの実施形態による増強された側方混合は、検体処理反応を実行する前、その間、またはその後に、流体の体積全体にわたる反応物の概ね一様な分布を容易にすることができる。そのうえ、増強された側方混合は、流体の体積全体にわたる均一な温度、(表1を参照されたい)および濃度プロファイルを達成するため、すすぎ効率を増加させるため、補充後(たとえば、蒸発を少なくとも部分的に補償するために流体を追加した後)に流体の均質化を増加させるため、ならびに/または他の適切なプロセスを強化するために有用であり得る。
【0122】
[00180]
図28〜
図31を参照すると、対向部2012は、流体操作面2016を有する非平面状(たとえば、円弧状および/または反りのつけられた)本体2014を含むことができる。対向部2012は、流体操作面2016の第1の側面部分2016aにおける第1のスペーサ2018と、流体操作面2016の第2の側面部分2016bにおける第2のスペーサ2020とをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020はそれぞれ、第1の複数の分離した突出部2022および第2の複数の分離した突出部2022(2022a〜zと個々に識別される)を含む。突出部2022は、たとえば、離間された間隙作成要素、出っ張り、点、隆起、障壁、壁、または他の適切な間隙作成構造とすることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0123】
[00181]流体操作面2016は、第1の側面部分2016aと第2の側面部分2016bの間に中央領域または処理領域2016cを含むことができる。たとえば、第1の側面部分2016aおよび第2の側面部分2016bは、2等分平面2024の両側で互いから離間され得る(
図29)。2等分平面2024は、中央領域2016cを通って延び、流体操作面2016の幅に対して中央に配置され、対向部2012の長さと略平行であることができる。いくつかの実施形態では、流体操作面2016の幅は、縁部1454と1456の間の距離のほぼ全体にわたって延びる。他の実施形態では、流体操作面2016の幅は、縁部1454と1456の間の距離の一部のみにわたって延びることができる。本体2014は、流体操作面2016において可撓性であっても剛性であってもよく、成形されたポリマーまたは別の適切な成形された材料もしくは成形されていない材料から作製可能である。
【0124】
[00182]これらの図には示されていないが、対向部(円弧状または略円筒状である対向部を含む)は、1つまたは複数の流体制御要素または流体操作面2016からの流体の損失を防止および/もしくは軽減する他の手段(そのような本明細書で説明するもの)を含むことがある。もう一度、第1の流体制御要素または他の物理的手段もしくは化学的手段は、対向部の第1の側面部分における第1のスペーサ、突出部、または間隙作成要素と対向部の第1の縁部との間に配置されることがあり、第2の流体制御要素または他の手段は、対向部の第2の側面における第2のスペーサ、突出部、または間隙作成要素と対向部の第2の縁部との間に配置されることがある。第3の流体制御要素または他の手段も、ポート1374の下などの、対向部の第3の縁部に沿って配置されることがある。流体制御要素または他の手段は、本明細書で説明する形状、大きさ、配置、構成などのいずれかを有してよく、いかなる形であれ化学的に変性されてもよい。
【0125】
[00183]
図32は、対向部2012とともに使用するのに好適なスライドガラス2026の平面図である。スライドガラス2026は検体支承面2028を含むことができ、検体支承面2028は、流体操作面2016の第1の側面部分2016aに概ね対応する第1の側面部分2028aと、流体操作面2016の第2の側面部分2016bに概ね対応する第2の側面部分2028bと、流体操作面2016の中央領域2016cに概ね対応する中央領域2028cとを有する。検体2030は、検体支承面2028の中央領域2028c上に配置可能である。
図28〜
図32を一緒に参照すると、対向部2012およびスライドガラス2026は、互いに近接して配置されるように構成可能であり、第1のスペーサ2018は第1の側面部分2028aと少なくとも部分的に接触し、第2のスペーサ2020は第2の側面部分2028bと少なくとも部分的に接触する。
【0126】
[00184]対向部2012およびスライドガラス2026は、流体操作面2016の中央領域2016cの一部分と検体支承面2028の中央領域2028cの対応する部分の間に流体担持間隙(図示せず)を形成するように構成可能である。中央領域2016cは、転がり作用(たとえば、転がり毛管作用)による流体担持間隙内での流体(図示せず)の制御された操作を容易にするように湾曲してよい。このようにして、流体は、検体2030の上を延びる処理経路2031(
図32)に沿って前進可能である。流体は、処理経路2031の第1の端部部分2031aから、処理経路2031の中部部分2031bを経由して、処理経路2031の第2の端部部分2031cに、次いで中部部分2031bの上を通って第1の端部部分2031aに戻るなど、循環的に前進可能である。中央領域2016cは、約5.2cm(2インチ)から約76.2cm(30インチ)、約25.4cm(10インチ)から約50.8cm(20インチ)、または別の適切な範囲内の曲率半径R(
図30および
図31)を有することができる。いくつかの実施形態では、Rは約38.1cm(15インチ)である。流体担持間隙を形成する中央領域2016c、2028cの一部分は、2等分平面2024に対して中央におかれてもよいし、中心を外れてもよい。いくつかの実施形態では、流体担持間隙は、第1のスペーサ2018および/または第2のスペーサ2020から離間される。他の実施形態では、流体担持間隙は、第1のスペーサ2018および/または第2のスペーサ2020に、またはこれを通って、またはこれを越えて延びることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0127】
[00185]
図33は、対向部2012と、スライドガラス2026を支持するように構成されたプラテン2034とを含む、検体処理アセンブリ2032の部分的な概略側立面図である。対向部2012とスライドガラス2026(たとえば、プラテン2034を介して)は、流体担持間隙を形成する中央領域2016c、2028cの一部分を変化させるために(たとえば、スライドガラス2026の長さにわたって流体担持間隙を前進させるために)、流体操作行動を介して相互作用するように構成可能である。流体操作行動としては、たとえば、回転軸(図示せず)において、スライドガラス2026に対して対向部2012を回転させる、対向部2012に対してスライドガラス2026を回転させる、または両方があり得る。
【0128】
[00186]検体処理アセンブリ2032は、対向部2012およびプラテン2034に動作可能に接続されたアクチュエータ2036を含むことができる。他の実施形態では、アクチュエータ2036は、対向部2012のみに動作可能に接続可能であってもよいし、プラテン2034のみに動作可能に接続可能であってもよいし、別の適切な構成を有してもよい。アクチュエータ2036は、回転軸または平面において、プラテン2034に対して対向部2012を移動させる(たとえば、回転させるまたは傾斜させる)、対向部2012に対してプラテン2034を移動させる(たとえば、回転させる、傾斜させるなど)、または両方であるように構成可能である。回転平面は、たとえば、2等分平面2024(
図29)と略平行な(たとえば、同じ)平面とすることができる。検体処理アセンブリ2032は、アクチュエータ2036に動作可能に接続されたコントローラ2038と、コントローラ2038に動作可能に接続されたユーザインタフェース2040とをさらに含むことができる。コントローラ2038は、プロセッサ2042とメモリ2044とを含むことができ、実行時にアクチュエータ2036に流体操作行動を実行させる命令(たとえば、非一時的な命令、命令のシーケンスなど)によりプログラム可能である。
【0129】
[00187]
図28〜
図33を一緒に参照すると、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、増強された側方混合を提供するために流体担持間隙のプロファイルまたは断面(たとえば、スライドガラス2026の長さに対して横軸方向の、流体担持間隙のプロファイルまたは横断面)を変化させるように構成可能である。いくつかの実施形態では、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、流体の体積において側方流れを生じさせるように、スライドガラス2026に対する流体操作面2016の方位を変更する。対向部2012の両側における突出部2022の対は、スライドガラス2026に対する対向部2012の少なくとも一部分の傾斜を変えるために異なる高さを有することができる。この様式で、または別の適切な様式で、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020はそれぞれ、流体操作行動中に、流体操作面2016の第1の側面部分2016aおよび第2の側面部分2016bを検体支承面2028の第1の側面部分2028aおよび第2の側面部分2028bから異なるように離間することができる。第1のスペーサ2018は、回転軸と平行な第1の高さプロファイルを有することができ、第2のスペーサ2020は、第1の高さプロファイルと異なる、回転軸と平行な第2の高さプロファイルを有することができる。異なる突出部2022がそれぞれ第1の側面部分2028aおよび第2の側面部分2028bと接触するので、第1の高さプロファイルと第2の高さプロファイルの差は、流体担持間隙の形状を変更させ、それによって、流体担持間隙内の流体を側方に移動させることができる。この側方移動は、たとえば、層流型に関連することが多い不十分な側方混合を少なくとも部分的に軽減できる無秩序な移流を引き起こすことができる。
【0130】
[00188]いくつかの実施形態では、第1の高さプロファイルおよび第2の高さプロファイルはそれぞれ、縁部1461(
図28)に向かっての下降(step down)および上昇(step up)を含むことができる。たとえば、突出部2022h〜sは第1の高さH
1(
図31)を有することができ、突出部2022a〜gおよび2022t〜zは、第2の高さH
2(
図31)を有することができ、H
1はH
2よりも低い。H
1は、たとえば、約0.0254mm(0.001インチ)から約0.1016mm(0.004インチ)であってもよいし、約0.0508mm(0.002インチ)から約0.0889mm(0.0035インチ)であってもよいし、別の適切な範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、H
1は約0.0762mm(0.003インチ)である。H
2は、たとえば、約0.1016mm(0.004インチ)から約0.2032mm(0.008インチ)であってもよいし、約0.127mm(0.005インチ)から約0.1778mm(0.007インチ)であってもよいし、別の適切な範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、H
2は約0.1524mm(0.006インチ)である。H
1とH
2の比は、たとえば、約1:1.25から約1:3であってもよいし、約1:1.5から約1:2.5であってもよいし、別の適切な範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、H
1とH
2の比は約1:2である。H
1、H
2、およびH
1とH
2の比に関する他の適切な値も可能である。そのうえ、他の適切な高さプロファイルが可能である。たとえば、第1の高さプロファイル、第2の高さプロファイル、または両方は、急激にではなく、次第に変化することができる。別の例として、第1の高さプロファイル、第2の高さプロファイル、または両方は、複数の高さ勾配を含むことができる。さらに別の例として、第1の高さプロファイル、第2の高さプロファイル、または両方は、流体操作行動の少なくとも一部分の間、第2の側面部分2016b、2028bが離間されている間、第1の側面部分2016a、2028aが接触することを可能にする、かつ/または第1の側面部分2016a、2028aが離間されている間、第2の側面部分2016b、2028bが接触することを可能にすることができる。
【0131】
[00189]対向部2012およびスライドガラス2026は、第1の端部状態から、第1の端部状態と第2の端部状態の間の中間状態の範囲を通って、第2の端部状態に移動可能である。
図34A、
図35A、および
図36Aはそれぞれ、第1の端部状態における、中間状態の範囲内の中間状態における、および第2の端部状態における、対向部2012およびスライドガラス2026の側立面図である。
図34B、
図35B、および
図36Bはそれぞれ、
図34Aの線34B−34Bに沿った、
図35Aの線ライン35B−35Bに沿った、および
図36Aの線36B−36Bに沿った、断面図である。
図34C、
図35C、および
図36Cはそれぞれ、第1の端部状態、中間状態、および第2の状態の対向部2012およびスライドガラス2026によって形成される流体担持間隙2046の拡大図であり、強調された傾きが
図34Cおよび
図36Cに示されている。場合によっては、対向部2012は、中間状態では転がり位置にあることがあり、第1の端部状態および第2の端部状態のうちの一方または両方では、過剰転がり位置または方向転換(turnaround)位置にあることがある。
【0132】
[00190]
図34A〜
図36Cを一緒に参照すると、第1の端部状態から第2の端部状態に、中間状態の範囲を通って移動することは、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020の異なる部分をそれぞれ検体支承面2028の第1の側面部分2028aおよび第2の側面部分2028bと接触させ、接触を解消させることができる。たとえば、第1の端部状態(
図34A〜C)では、第1のスペーサ2018の第1の部分(たとえば突出部2022a〜d)および第2のスペーサ2020の第1の部分(たとえば突出部2022n〜q)が、検体支承面2028と接触することができる。第2の端部状態(
図36A〜C)では、第1のスペーサ2018の第2の部分(たとえば突出部2022j〜m)および第2のスペーサ2020の第2の部分(たとえば突出部2022w〜z)が、検体支承面2028と接触することができる。中間状態(
図36A〜Cに示される状態)の範囲内では、第1のスペーサ2018の第3の部分(たとえば突出部2022e〜i)および第2のスペーサ2020の第3の部分(たとえば突出部2022r〜v)が、検体支承面2028と接触することができる。第1のスペーサ2018の第1の部分および第2の部分は、流体操作面2016の第1の側面部分2016aに沿って離間可能であり、第1のスペーサ2018の第3の部分はそれらの間に配置される。同様に、第2のスペーサ2020の第1の部分および第2の部分は、流体操作面2016の第2の側面部分2016bに沿って離間可能であり、第2のスペーサ2020の第3の部分はそれらの間に配置される。
【0133】
[00191]流体操作行動中、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、流体操作面2016の少なくとも一部分を、回転軸または平面と平行でない平面(たとえば回転平面に略垂直な平面)内で回転させることができる。たとえば、対向部2012は、スライドガラス2026に沿って転がされるとき、側方方向に揺動するまたは左右に傾斜することができる。場合によっては、流体操作行動としては、対向部2012および/またはスライドガラス2026を回転平面内で反対方向に移動させることがある。このことは、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020によって引き起こされる流体の側方移動を逆転させるだけでなく、処理経路2031(
図32)に沿って流体担持間隙2046内での流体の移動を逆転させることができる。たとえば、対向部2012が、第1の方向2048と異なる第2の方向2050(
図34Aおよび
図35A)にスライドガラス2026に対して回転し、対向部2012およびスライドガラス2026が第1の端部状態から第2の端部状態に向かって移動する間、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、流体操作面2016の少なくとも一部分を第1の方向2048(
図34Bおよび
図35B)に回転させるように構成可能である。同様に、対向部2012が、第3の方向2052と異なる第4の方向2054(
図36A)にスライドガラス2026に対して回転し、対向部2012およびスライドガラス2026が第2の端部状態から第1の端部状態に向かって移動する間、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、流体操作面2016の少なくとも一部分を第3の方向2052(
図36B)に回転させるように構成可能である。いくつかの実施形態では、第1の方向2048と第3の方向2052は概ね反対であり、かつ/または第2の方向2050と第4の方向2054は概ね反対である。
【0134】
[00192]対向部2012が異なる位置に移動するにつれて、流体担持間隙2046の横断面は変化することができる。流体担持間隙2046の横断面は、くさび形であってもよいし、三角形であってもよいし、非対称的な流路を提供するのに適した他の適切な構成を有してもよい。たとえば、流路は、対向部2012が過剰に転がされた位置に向かって移動する(
図36A)とき、非対称的な断面を有することができ、対向部2012が中間位置にある(
図35A)とき、対称的な断面を有することができる。場合によっては、側方混合は、主に、転がり動きの一方または両方の方向転換の一部分で実行可能である。他の場合には、側方混合は、転がり動きの全体を通じて比較的一貫して実行可能である。流路(たとえば、流体操作行動中に流体担持間隙2046が移動する三次元空間)の全体的な外形は、2等分平面2024(
図29)の両側で概ね等しい体積を有する形状および2等分平面2024の両側で異なる体積を有する形状などの、さまざまな適切な形状を有することができる。いくつかの実施形態では、流路の少なくとも一部分は、実質的に鞍形の形状、部分的に球状の形状、部分的に円錐台形形状、略三角形の形状、またはくさび形状などを有することができる。流路の異なる部分は、異なる形状を有することができる。対向部2012の異なる部分は、そのような流路を画定するために、非平面状構成(たとえば、鞍形の形状、部分的に球状の形状、部分的に円錐台形形状など)、平面状構成などを有することができる。
【0135】
[00193]いくつかの実施形態では、対向部2012およびスライドガラス2026が第1の端部状態にあるとき、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、回転軸に垂直な第1の平面(たとえば
図34Aの線34B−34Bに対応する平面)における流体担持間隙2046の断面に、2等分平面2024(
図29)に対する第1の非対称性を持たせるように構成可能である。同様に、対向部2012およびスライドガラス2026が第2の端部状態にあるとき、第1のスペーサ2018および第2のスペーサ2020は、回転軸に垂直な第2の平面(たとえば
図36Aの線36B−36Bに対応する平面)における流体担持間隙2046の断面に、2等分平面2024に対する第2の非対称性を持たせるように構成可能である。第1の非対称性と第2の非対称性は、互いに対して概ね反対とすることができる。第1の非対称性は、第1のスペーサ2018に向かって第1の方向における流体担持間隙2046の体積測定テーパ(volumetric taper)に対応することができ、第2の非対称性は、第2のスペーサ2020に向かって第2の方向における流体担持間隙2046の体積測定テーパに対応することができる。流体担持間隙2046の変化する体積測定テーパは、流体担持間隙2046内の流体(および反応物)を、変位により体積測定テーパの方向と反対の方向に移動させる、かつ/または毛管作用により体積測定テーパの方向に移動させることができる。わかりやすいように、流体は
図34B、
図35B、
図36Bに示されていないが、流体は、流体間隙Fに位置することができる。両方のタイプの移動は、流体の側方混合を増強することができる。流体担持間隙2046の変化する体積測定テーパはまた、流体担持間隙2046内の流体に、流体の側方混合を増強できるかつ/または他の利益を有することができる、他の追加のおよび/または代替の影響を与える。
【0136】
[00194]スペーサ2018、2020の高さプロファイルは、流体の概ね等しい側方混合を反対方向に引き起こすように選択可能である。たとえば、対向部の両側のスペーサ2018、2020の高さプロファイルは異なってよい。このことは、第1の状態から第2の状態に対向部2012が移動するときに生じる側方混合の影響を、対向部2012およびスライドガラス2026が第2の状態から第1の状態に戻るときに概ね逆転させることができる。第1のスペーサ2018の第1の部分が、第2のスペーサ2020の第1の部分の平均的高さよりも高い平均的高さを有し、第1のスペーサ2018の第2の部分が、第2のスペーサ2020の第1の部分の平均的高さよりも低い平均的高さを有するとき、第1のスペーサ2018の第1の部分および第2の部分を合わせた平均的高さは、第2のスペーサ2020の第1の部分および第2の部分を合わせた平均的高さにほとんど等しくてよい。第1のスペーサ2018の第3の部分の平均的高さも、第2のスペーサ2020の第3の部分の平均的高さにほとんど等しくてよい。これらの属性は、2等分平面2024(
図29)に垂直な平面(たとえば、図示されていない2等分平面)に対する概ね対称的な体積測定分布(volumetric distribution)を容易にすることができる。そのうえ、これらの属性は、流体担持間隙2046が、検体2030を担持するスライドガラス2026の中央領域の上を通る間、流体担持間隙2046を比較的対称的にさせることができる。このことは、検体2030の異なる領域に近接する流体の一部分の体積測定の一貫性(volumetric consistency)を増加させることができる。
【0137】
[00195]上記で説明したように、増強された側方混合は、検体のより均一な染色を容易にすることができる。たとえば、少なくともいくつかの酵素染色反応では、増強された側方混合は、酵素の作用を損なわせるのに十分に高い初期反応物濃度を使用することなく、広範囲の検体変化にわたって、許容できるレベルの着色剤均一性を可能にすることができる。例示的な一例では、検体2030(
図32)は、処理経路2031と平行な2等分平面(図示せず)の両側に異なる抗原負荷を有することができる。2等分平面の片側の抗原負荷は、たとえば、約50%から約500%であってもよいし、約100%から約300%であってもよいし、2等分平面の他方の側の抗原負荷よりも大きな別の適切な範囲内であってもよい。
【0138】
[00196]対向部2012は、反応物(たとえば、過酸化水素などの酸化剤)を別の反応物(たとえば3,3’−ジアミノベンジジンなどのクロモゲン)と共に含む流体を検体2030の上を前進させるために使用可能である。流体は、たとえば、約10ミリメートル/秒から約40ミリメートル/秒、約20ミリメートル/秒から約30ミリメートル/秒、または別の適切な範囲内のスピードで、前進可能である。場合によっては、流体は、約25ミリメートル/秒のスピードで前進させられる。流体は、たとえば約50マイクロリットルから約500マイクロリットル、約50マイクロリットルから約250マイクロリットル、約75マイクロリットルから約125マイクロリットル、または別の適切な範囲内の体積を有することができる。場合によっては、流体は、約500マイクロリットルの体積を有する。反応物の一方または両方の濃度は、ゼロ次の酵素染色反応を概ね維持するための最小濃度の約100%から約300%、約100%から約200%、または別の適切な範囲内とすることができる。反応物が酸化剤(たとえば過酸化水素)であるとき、より高い濃度の反応物が、場合によっては、抗体を介して検体2030上の抗原に結合された酵素(たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼ)の作用を損なわせることができる。
【0139】
[00197]対向部2012はまた、スライドガラスの混合時に、平面毛管間隙システムを有するこれまで不可能であった特徴を実行するために使用可能である。一実施形態では、少量の濃縮された試薬または格納バッファ(storage buffer)内の試薬が、バイアルから試薬ピペットに吸い込まれる。この試薬は、スライドガラスに移送され、スライドガラス上に分注される。より大量の希釈剤流体がピペットを通してスライドガラス上に分注され、試薬を希釈し、流体のバルクを提供して、目標体積要件を満たす。緩衝液でない流体の使用は、化学力学を変更することなく、多種多様の試薬に追加可能であることもわかっている。このプロセスはまた、残りの成分を開始濃度のままにしておきながら、いくつかの成分を選択的に希釈することによって、クロモゲン試薬の比(または他の混合比)を修正するために使用可能である。このプロセスは、意図する着色剤強度を増強するためにも使用可能である。多数のステップでは、最終的な着色剤強度は、スライドガラス上の濃度を即座に修正することによって調整可能である。試薬および希釈体積がひとたびスライドガラス上にあると、対向部は、スライドガラスの表面上での均一な分布を提供する薄層状試薬と希釈剤の混合を提供することができる。このように適用される試薬がスライドガラス上に順次落下されるので、これらの試薬は、スライドガラス上に比較的分離した層を形成し、この層は、対向部および対向アクチュエータアセンブリの直角移動による混合を容易にする。
【0140】
[00198]
図37および
図38は、対向部2012で処理された検体を有するスライドガラス2000、2006の平面図である。図
25および図
26に示される染色の不均一性とは対照的に、図
37および図
38は、比較的均一な染色の例を示す。少なくとも部分的に、増強された側方混合により、染色後、検体2002(
図37)および2008(
図38)は、約15%よりも低い、約10%よりも低い、または別の適切な範囲内の着色剤強度勾配を有することができる。場合によっては、検体2002、2008は、約5%の着色剤強度勾配および/または裸眼に概ね検出不可能な着色剤強度勾配を有する。他の有益な染色結果も可能である。いくつかの実施形態では、対向部2012は、1つまたは複数の検体にわたって実質的に均一な処理を達成するために、システム100とともに使用可能である。
【0141】
[00199]本明細書で開示されるスライドガラスは、2.54cm(1インチ)×7.62cm(3インチ)の顕微鏡スライドガラスであってもよいし、25mm×75mmの顕微鏡スライドガラスであってもよいし、25mm×76mmの顕微鏡スライドガラスであってもよいし、別のタイプの平らなまたは実質的に平らな基板であってもよい、さらには管であってもよい(たとえば、
図46Aを参照されたい)。「実質的に平らな基板」とは、限定するものではないが、少なくとも1つの実質的に平らな面を有する任意の物体を指すが、より一般的には、物体の両側に2つの実質的に対向する面を有する任意の物体を指し、さらにより一般的には、対向する実質的に平らな面を有する任意の物体であって、対向する面はサイズが概ね等しいが、物体上の他の任意の面よりも大きい、物体を指す。いくつかの実施形態では、実質的に平らな基板は、プラスチック、ゴム、セラミック、ガラス、シリコン、半導体材料、金属、これらの組み合わせなどを含む任意の適切な材料を含むことができる。実質的に平らな基板の非限定的例としては、平らなカバー、SELDIチップおよびMALDIチップ、シリコンウェハ、または少なくとも1つの実質的に平らな面を有する他の略平面状の物体がある。
【0142】
[00200]前述の内容から、本開示の特定の実施形態について例示の目的で本明細書において説明してきたが、本開示の少なくともいくつかの実施形態の説明を不必要に曖昧にするのを避けるために、よく知られている構造および機能は詳細に図示または説明されていないことが理解されるであろう。本明細書で説明したシステムは、分析のために生物検体を準備するための広範囲のプロセスを実行することができる。文脈で許されるとき、単数または複数の用語はそれぞれ、複数または単数の用語も含み得る。「または」という単語が、その単語が、2つ以上の項目の一覧に関する他の項目から排他的な単一の項目のみを意味することに限定されるべきであることを示す明示的な句に関連しない限り、そのような一覧における「または」の使用は、(a)一覧中の任意の単一の項目、(b)一覧中のすべての項目、または(c)一覧中の項目の任意の組み合わせを含むと解釈されるものとする。単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明白に他を表さない限り、複数の対象物を含む。したがって、たとえば、「検体」の言及は、2つ以上の検体、3つ以上の検体、または4つ以上の検体などの1つまたは複数の検体を指す。
【0143】
[00201]上記で説明したさまざまな実施形態は、他の実施形態を提供するために組み合わせ可能である。本明細書で説明する実施形態、特徴、システム、デバイス、材料、方法、および技法は、いくつかの実施形態では、米国特許出願第13/509,785号、米国特許出願第13/157,231号、米国特許第7,468,161号、米国特許出願第13/509,785号、2012年12月26日に出願された、AUTOMATED SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHODS OF USING THE SAMEという名称の米国特許出願第61/746,085号(代理人整理番号79687−8020.US00)、2012年12月26日に出願された、SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHODS FOR MODERATING EVAPORATIONという名称の米国特許出願第61/746,087号(代理人整理番号79687−8024.US00)、2012年12月26日に出願された、SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHOD FOR UNIFORMLY HEATING SLIDESという名称の米国特許出願第61/746,089号(代理人整理番号79687−8025.US00)、および2012年12月26日に出願された、SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHODS FOR ALIGNING SLIDESという名称の米国特許出願第61/746,091号(代理人整理番号79687−8026.US00)検体、および国際出願第PCT/US2010/056752号に記載される実施形態、特徴、システム、デバイス、材料、方法、および技法のうちの任意の1つまたは複数に類似してよく、これらの出願のすべては、その全体が参照により組み込まれる。さらに、本明細書で説明する実施形態、特徴、システム、デバイス、材料、方法、および技法は、いくつかの実施形態では、上述の国際出願第PCT/US2010/056752号、米国特許出願第13/509,785号、2012年12月26日に出願された、AUTOMATED SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHODS OF USING THE SAMEという名称の米国特許出願第61/746,085号(代理人整理番号79687−8020.US00)、2012年12月26日に出願された、SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHODS FOR MODERATING EVAPORATIONという名称の米国特許出願第61/746,087号(代理人整理番号79687−8024.US00)、2012年12月26日に出願された、SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHOD FOR UNIFORMLY HEATING SLIDESという名称の米国特許出願第61/746,089号(代理人整理番号79687−8025.US00)、および2012年12月26日に出願された、SPECIMEN PROCESSING SYSTEMS AND METHODS FOR ALIGNING SLIDESという名称の米国特許出願第61/746,091号(代理人整理番号79687−8026.US00)、および米国特許第7,468,161号に開示されている実施形態、特徴、システム、デバイス、材料、方法、および技法のうちの任意の1つまたは複数に適用されてもよいし、これらと共に使用されてもよい。開示した実施形態の態様は、必要な場合、さらに他の実施形態を提供する目的で、さまざまな特許、出願、および公報の概念を用いるために修正されてよい。
【0144】
[00202]上記およびその他の変更が、上記で詳述した説明を考慮して実施形態に加えられてよい。たとえば、シール要素は、1つの断片または複数の断片からなる構造を有することができ、任意の数の保持機構を含むことができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を付与される等価物の全範囲と共に、あらゆる可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって制限されるものではない。
追加の実施形態
[00203]いくつかの実施形態では、システムは、熱損失を補償するスライドガラスにわたって温度プロファイルを生じるために伝導によって個々のスライドガラスを加熱することができる1つまたは複数の自動スライドガラスホルダを含む。熱損失は、スライドガラスとスライドガラスに近接して配された対向部との間隙内の液体の蒸発によって引き起こされ得る。一実施形態では、スライドガラスホルダは、スライドガラス支持面を有し、スライドガラスがスライドガラス支持面上に位置するときにスライドガラスの検体支承面が実質的に均一な温度プロファイルを有するように、スライドガラスと接触するスライドガラス支持面に沿って不均一な温度プロファイルを生じさせる。いくつかの実施形態では、不均一な温度プロファイルはスライドガラス支持面にわたって生じるが、実質的に均一な温度プロファイルはスライドガラスの取り付け面に沿って生じる。本技術の少なくともいくつかの実施形態の別の特徴は、スライドガラスホルダが、低温加熱ゾーンと、この低温加熱ゾーンを囲む高温加熱ゾーンを生じるように構成可能であることである。高温ゾーンは、検体を略均一な温度に保つために、比較的高い蒸発熱損失を補償することができる。
【0145】
[00204]いくつかの実施形態では、スライドガラスによって担持された検体を処理するためのスライドガラス処理装置は、染色モジュールを含む。この染色モジュールは、スライドガラスホルダプラテンと、対向要素と、対向アクチュエータとを含む。スライドガラスホルダプラテンは、第1の側壁と、第2の側壁と、第1のおよび第2の側壁の間のスライドガラス受け入れ領域とを有する。スライドガラスは、スライドガラス受け入れ領域上に配置される。スライドガラスは、第1の縁部と、対向する第2の縁部とを含む。対向アクチュエータは、第1の縁部部分と第2の縁部部分とを有する対向要素を保持して、対向要素とスライドガラスの間に毛管間隙を形成する。対向要素の第1の縁部部分はスライドガラスの第1の縁部の方に近く、対向要素の第2の縁部部分はスライドガラスの第2の縁部の方に近い。
【0146】
[00205]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、液体が対向要素とスライドガラスとの間隙内に保持されながら、追加の液体を対向要素とスライドガラスの間に送達するように配置された1つまたは複数のディスペンサを含む。さらに、スライドガラス処理装置は、ディスペンサに通信可能に結合され、対向要素とスライドガラスの間の液体の体積を平衡体積範囲内に保つためにディスペンサが追加の液体を送達するようにディスペンサに命令するようにプログラムされたコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、追加の液体を所定の速度で送達するようにプログラムされる。一実施形態では、この所定の速度は、毎分約7μLに等しいかまたはそれよりも小さい。この速度は、処理されている検体染色プロトコールに基づいて選択可能である。
【0147】
[00206]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、複数の追加染色モジュールと、染色モジュールの各々を独立して制御するように構成されたコントローラとをさらに備える。染色モジュールは、使い捨てまたは再使用可能な対向要素(対向部)を使用して、試薬を、検体を横切って広げて移動させることができる。
【0148】
[00207]染色モジュールは、第1の側壁、第2の側壁、または両方を伝導的に加熱するように配置された少なくとも1つの加熱要素を含むことができる。対向アクチュエータは、検体を担持するスライドガラスの少なくとも一部分を横切って液体の帯を移動させるために、スライドガラスに沿って、またはこの上で対向要素の湾曲した部分を転がすように移動可能である。スライドガラスホルダは、液体の帯が検体を横切って操作される間、スライドガラス、検体、および/または液体を加熱するために使用可能である。
【0149】
[00208]いくつかの実施形態では、スライドガラスによって担持された検体を処理するためのシステムは、検体処理ステーションと、コントローラとを備える。検体処理ステーションは、対向アクチュエータと、スライドガラスホルダプラテンとを含む。スライドガラスホルダプラテンは、スライドガラス支持領域と、液体補充デバイスとを含む。スライドガラスホルダプラテンは、対向アクチュエータによって保持される対向要素が液体と接触して、スライドガラス面を横切って移動させる間、スライドガラス支持領域においてスライドガラス上の液体を加熱するように構成される。補充デバイスは、追加の液体を対向要素とスライドガラスの間に送達するように構成される。コントローラは、補充デバイスが液体の蒸発損失を補償するために追加の液体を補充速度で送達するように検体処理ステーションを制御するようにプログラムされる。
【0150】
[00209]コントローラは、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のメモリと、プログラム可能なプロセッサとを含む。メモリは、プログラム命令の第1のシーケンスと、プログラム命令の第2のシーケンスを記憶する。プログラム可能なプロセッサは、スライドガラス上の検体を第1の液体で処理するためにプログラム命令の第1のシーケンスを実行するように構成され、第1の液体と異なる第2の液体で検体を処理するためにプログラム命令の第2のシーケンスを実行するように構成される。いくつかの実施形態では、プログラム可能なプロセッサは、スライドガラスホルダプラテンを使用してスライドガラスを第1の温度に加熱するためにプログラム命令の第1のシーケンスを実行するように構成され、コントローラは、スライドガラスプラテンを使用してスライドガラスを第2の温度に加熱するためにプログラム命令の第2のシーケンスを実行するように構成され、第2の温度は第1の温度と異なる。
【0151】
[00210]コントローラは、いくつかの実施形態では、第1の速度でスライドガラスに第1の液体を送達するように補充デバイスに命令するために、プログラム命令の第1のシーケンスを実行するように構成される。コントローラは、第1の速度と異なる第2の速度でスライドガラスに第2の液体を送達するように補充デバイスに命令するために、プログラム命令の第2のシーケンスを実行するようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、第1の速度は第1の液体の蒸発速度に対応し、第2の速度は第2の液体の蒸発速度に対応する。コントローラは、蒸発損失を加減する助けとなることができる。
【0152】
[00211]コントローラは、いくつかの実施形態では、スライドガラス上の液体の体積を平衡体積範囲内に保つためにコントローラによって実行可能な補充プログラムを記憶するメモリを含む。いくつかの実施形態では、平衡体積範囲は約50μL〜約500μLである。いくつかの実施形態では、コントローラは、液体の体積を、過剰湿潤(over−wetting)条件に対応する最大平衡体積と過小湿潤(under−wetting)条件に対応する最小平衡体積の間に保つように、検体処理ステーションに命令するようにプログラムされる。コントローラは、いくつかの実施形態では、対向アクチュエータによって保持された対向要素をスライドガラスに対して移動させることによってスライドガラス上で保持された検体を横切ってある体積の液体を移動させるように検体処理ステーションに命令するようにプログラムされ、蒸発による液体の体積の減少をだいたい補償するために補充デバイスから追加の液体を送達するようにもプログラム可能である。
【0153】
[00212]コントローラは、いくつかの実施形態では、メモリから基準蒸発速度情報(たとえば液体の蒸発速度情報)を受け取り、この基準蒸発速度情報に基づいて検体処理ステーションを制御するように構成される。追加または代替として、コントローラは、液体の蒸発速度に基づいて選択された速度で補充デバイスが追加の液体を提供するように、検体処理ステーションに命令するようにプログラム可能である。
【0154】
[00213]検体を処理するためのシステムは、いくつかの実施形態では、対向要素と、コントローラとをさらに備える。対向要素は、対向アクチュエータによって保持され、スライドガラスの縁部を越えて外側に延びることができる。コントローラは、液体の蒸発速度がほぼ所定の速度(たとえば、毎分7μL、毎分5μLなど)に等しいかまたはそれよりも小さく保たれながら、対向要素がスライドガラスを横切って液体を操作する間、対向要素を移動させるように検体処理ステーションを制御するようにプログラムされる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0155】
[00214]スライドガラスホルダプラテンは、いくつかの実施形態では、電気エネルギーを受け取り、熱エネルギーを出力して、伝導によってスライドガラスを加熱する加熱要素を含む。この加熱要素は、1つまたは複数の抵抗性加熱要素を含むことができる。
【0156】
[00215]いくつかの実施形態では、スライドガラスによって担持された検体を処理する方法は、スライドガラスホルダによって保持されたスライドガラス上の液体を加熱することを含む。対向要素は、スライドガラス上の液体と接触し、この液体をスライドガラス上の生物検体を横切って移動させるように転がされる。補充速度は、液体の蒸発速度に基づいて決定される。追加の液体は、液体の蒸発損失を実質的に補償するために補充速度に基づいて送達される。追加の液体を含む液体と接触する対向要素は、検体を液体と繰り返し接触させるように転がされる。
【0157】
[00216]スライドガラス上へと送達される追加の液体の体積は、蒸発による液体の体積の減少に等しいかまたはこれよりも大きくてよい。追加または代替として、追加の液体は、スライドガラス上の液体の体積を最小平衡体積に等しいかまたはこれよりも大きく、かつ最大平衡体積に等しいかまたはこれよりも小さく保つために追加の液体を送達することによって、スライドガラス上へと送達可能である。追加または代替として、追加の液体は、対向要素がスライドガラスに沿って転がる間、スライドガラス上へと送達可能である。
【0158】
[00217]いくつかの実施形態では、スライドガラス上の検体を処理する方法は、液体と接触する対向要素を使用してスライドガラスに沿って液体を移動させることを含む。液体を移動させる間、スライドガラス上の液体の温度が制御される。液体の体積および/または液体の全蒸発速度のうちの少なくとも一方が評価され、追加の液体は、スライドガラス上の液体の体積を平衡体積範囲内に保つために、評価に基づいてスライドガラス上へと送達される。いくつかの実施形態では、液体の体積および液体の全蒸発速度、液体の体積および/または液体の全蒸発速度のうちの少なくとも一方を評価するメモリから液体の体積および液体の全蒸発速度を評価するためにメモリから受け取られる、受け取ることを含む。平衡体積範囲は、約125μLから約175μLとすることができる。
【0159】
[00218]いくつかの実施形態では、スライドガラス処理装置は、スライドガラスホルダプラテンと、対向アクチュエータとを備える。スライドガラスホルダプラテンは、受け入れ領域に面するスライドガラスの第1の側と受け入れ領域に面さない第2の側とを有するスライドガラスを受け入れるように構成された受け入れ領域を有する。対向アクチュエータは、対向要素を保持して、対向要素と受け入れ領域に位置するスライドガラス面との間に毛管間隙を画定するように配置される。対向アクチュエータは、液体の帯をスライドガラスの第2の側の長さおよび幅を横切って第1の位置から第2の位置に移動させるために、毛管間隙をスライドガラスに沿って第1の方向に前進させるように構成される。
【0160】
[00219]対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、液体の帯をスライドガラスの面を横切って第1の位置と第2の位置の間で操作するために、対向要素をスライドガラスに沿って第1の方向と第1の方向と反対の第2の方向とに交互に転がすように構成される。第1の位置における液体の帯は対向要素の端部とスライドガラスの間にあり、第2の位置における液体の帯は対向要素とスライドガラスの端部の間にある。液体の帯は、液体の帯を第1の位置および第2の位置のうちの他方に移動させる前に、第1の位置および第2の位置の各々において狭窄され得る。対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、帯の幅を所定の量に減少させるように構成された可変帯幅圧縮対向アクチュエータである。所定の量は、コントローラまたはオペレータによって選択可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0161】
[00220]対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、スライドガラスおよび/または対向要素のうちの少なくとも一方の端部によって画定された開口の端部における液体の帯の幅を少なくとも50%、40%、または25%減少させるように、スライドガラスに対して対向要素を移動させるように構成される。追加または代替として、対向アクチュエータは、液体の帯の緯度方向幅を維持しながら液体の帯を第1の位置と第2の位置の間に変位させるように対向要素を移動させるように構成され得る。対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、液体の帯が対向要素とスライドガラスの端部との間の開口の第1の端部において狭くなる第1の構成と、液体の帯が開口の第2の端部で狭くなる第2の構成の間で移動可能である。対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、液体の帯の第2の側が対向要素およびスライドガラスのうちの一方の端部に実質的に静止して保持されながら液体の帯の幅を減少させるように液体の帯の第1の側を液体の帯の第2の側に向かって移動させるために、過剰転がり構成に移動可能である。
【0162】
[00221]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、染色モジュールと、コントローラとをさらに備える。染色モジュールは、スライドガラスホルダプラテンと、対向アクチュエータとを備える。コントローラは、染色モジュールに通信可能に結合される。コントローラは、毛管間隙を移動させるために対向要素を移動させるように染色モジュールに命令するようにプログラムされる。
【0163】
[00222]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、対向要素をさらに備え、この対向要素は、対向アクチュエータの対向受け器(opposable receiver)によって保持される取り付け端部と、取り付け端部と反対の捕捉用端部と、主本体部とを含む。主本体部は、取り付け端部と捕捉用端部の間にある。捕捉用端部は、取り付け端部がスライドガラスから遠ざけられるとき、スライドガラス上のラベルに近接したスライドガラスの取り付け面の端部に液体を蓄積するためにスライドガラスと協働する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0164】
[00223]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、受け入れ領域に面するテーパ付き端部を有する対向要素をさらに備える。テーパ付き端部は、液体の帯と接触して捕捉するように配置される。いくつかの実施形態では、テーパ付き端部は、対向要素の長手方向に延びる対向する縁部同士の間に延びる丸い領域を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0165】
[00224]対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、スライドガラスの端部および対向要素によって画定された開口の端部における場所から開口の対向する端部における場所に液体の帯を移動させるためにスライドガラスに沿って対向要素を転がすための回転状態を有する。対向アクチュエータは、たとえばインキュベーションを実行するために対向要素をスライドガラスに対して静止に保つための静的状態を有することができる。
【0166】
[00225]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、接触面の対向する縁部を越えて側方外側にスライドガラスが延びるように受け入れ領域の接触面によって支持されたスライドガラスをさらに備える。スライドガラスは、1つまたは複数の検体を担持することができる。
【0167】
[00226]スライドガラス処理装置は、いくつかの実施形態では、対向アクチュエータによって保持された対向要素をさらに備える。この対向要素は、湾曲した捕捉端部を有する。捕捉端部は、約2.032mm(0.08インチ)に等しいかまたはそれよりも小さい曲率半径を有することができる。いくつかの実施形態では、対向要素は、受け入れ領域においてスライドガラスに沿って転がるための円弧状本体を有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0168】
[00227]いくつかの実施形態では、スライドガラス処理装置は、スライドガラスホルダプラテンと、対向アクチュエータとを備える。対向アクチュエータは、対向受け器と、駆動機構とを含む。対向受け器は、対向要素を保持するように、かつ作動位置にあるとき、対向要素とスライドガラスホルダプラテンによって保持されたスライドガラスとの間に毛管間隙を形成するように配置される。駆動機構は、液体の帯を対向要素とスライドガラスの間の空間の端部に移動させるために対向要素をスライドガラスに沿って第1の方向に転がすための回転状態を有する。駆動機構は、空間の端部に捕捉された液体の帯の幅を減少させるために対向要素を第1の方向に転がすための過剰回転状態を有する。
【0169】
[00228]対向アクチュエータは、いくつかの実施形態では、液体の帯をスライドガラスの取り付け面の少なくとも大部分を横切って移動させるために対向要素を移動させるように構成される。液体の帯の幅は、対向要素の少なくとも一部分をスライドガラスから遠ざけることによって減少され得る。液体の帯の幅は、スライドガラスの長手方向軸と実質的に平行な方向にある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0170】
[00229]いくつかの実施形態では、スライドガラスによって担持された検体を処理するための方法は、スライドガラスおよび対向要素を染色モジュールに送達することを含む。染色モジュールによって保持される対向要素は、液体をスライドガラスと対向要素の間の毛管間隙内に保持するように、染色モジュールによって保持されたスライドガラスに対して配置される。対向要素は、スライドガラスの長手方向軸と実質的に平行な第1の方向に、スライドガラスと対向要素の間の開口の端部に向かって液体を変位させるように、スライドガラスに対して移動される。対向要素は、液体の帯が開口の端部に捕捉されながら液体の帯の幅を第1の方向に減少させるように、スライドガラスに対して移動される。
【0171】
[00230]液体の帯は、いくつかの実施形態では、第1の方向および第1の方向と反対の第2の方向にスライドガラスに沿って対向要素を転がすことによって、開口の端部と開口の対向する端部の間を交互に移動される。対向要素は、対向要素の主本体部とスライドガラスの間隔を維持するための1つまたは複数の間隙作成要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の流体制御要素は、流体が流体担持間隙内または流体操作面上に維持されるように、対向部に組み込まれる。
【0172】
[00231]液体の帯は、いくつかの実施形態では、液体の帯の幅を増加させるように広げられる。広げられた液体の帯は、スライドガラス上の検体を横切って移動可能である。いくつかの実施形態では、液体の帯の幅が、毛管間隙の一方の端部において減少されてから、間隙の他方の端部に液体の帯を移動させる。
【0173】
[00232]検体を処理するための方法は、いくつかの実施形態では、液体の帯の幅を減少させながら液体の実質的にすべてを間隙の端部に捕捉することをさらに含む。
[00233]検体を処理するための方法は、いくつかの実施形態では、液体の帯の幅を維持しながらスライドガラス上の検体を横切って液体の帯を変位させることをさらに含む。
【0174】
[00234]検体を処理するための方法は、いくつかの実施形態では、スライドガラスに対して対向要素を移動させることによって液体の帯の幅を少なくとも50%減少させることをさらに含む。液体の体積は、約75μLに等しいかまたはこれよりも大きくすることができる。
【0175】
[00235]液体の帯の幅は、いくつかの実施形態では、液体の帯の長さよりも短い。液体の帯の幅は、スライドガラスの長手方向軸と実質的に平行である。液体の帯の長さは、スライドガラスの長手方向軸と実質的に垂直である。
【0176】
[00236]いくつかの実施形態では、スライドガラス加熱装置は、支持要素と、加熱器とを備える。この支持要素は、支持面に面するスライドガラスの裏側とこのスライドガラスの裏側と反対側のスライドガラスの検体支承面とを有するスライドガラスを支持するように構成された支持面を有する。加熱器は支持要素に結合される。スライドガラス加熱装置は、検体支承面上での液体の蒸発に関連する不均一な熱損失を実質的に補償するために、熱エネルギーを伝導によって支持面を横切ってスライドガラスの裏側に不均一に送達するように構成される。
【0177】
[00237]加熱器は、いくつかの実施形態では、検体支承面の検体支承部分に沿って実質的に均一な温度プロファイルを生じさせるために、支持要素を介して熱をスライドガラスに送達するように配置される。いくつかの実施形態では、実質的に均一な温度プロファイルは、検体支承面の検体支承部分にわたって5%未満の温度変化を有する。いくつかの実施形態では、実質的に均一な温度プロファイルは、検体支承面にわたって4℃未満の温度変化を有する。他の温度プロファイルも達成することができる。
【0178】
[00238]加熱器は、いくつかの実施形態では、支持面の側面部分を伝導的に加熱するための少なくとも2つの離間された細長い部分と、この細長い部分同士の間に延びる支持面の2つの端部加熱部分とを含む。この2つの端部加熱部分は、スライドガラスの端部と接触するための支持面の一部分と、スライドガラスのラベルに隣接するスライドガラスの領域と接触するための支持面の一部分の両方を加熱するように配置される。
【0179】
[00239]スライドガラス加熱装置は、いくつかの実施形態では、支持面の中央領域に沿った低加熱ゾーンと、支持面に沿った高加熱ゾーンを生じさせるように構成される。この高加熱ゾーンは、低加熱ゾーンを囲む(たとえば、周方向に囲む)ことができる。
【0180】
[00240]スライドガラス加熱装置は、いくつかの実施形態では、支持要素を冷却するために加熱器によって画定されたくぼみ(pocket)を通過する対流流れを生じるように配置された対流アセンブリをさらに備える。いくつかの実施形態では、この対流アセンブリは、1つまたは複数のファンを含む。対流流れは、スライドガラス上の検体を横切って流れずに支持要素を冷却することができる。
【0181】
[00241]スライドガラス加熱装置は、いくつかの実施形態では、各々が熱的伝導性部分と絶縁部分とを有する1対の側壁をさらに備える。熱的伝導性部分は、スライドガラスを加熱するためにスライドガラスに面する。
【0182】
[00242]スライドガラス加熱装置は、いくつかの実施形態では、絶縁材料を含むオーバーモールド成形された(overmolded)ホルダをさらに備える。支持要素は、オーバーモールド成形されたホルダの側壁の間に配置され、これらの側壁によって支持される。絶縁材料は、支持要素の材料の熱伝導性よりも低い熱伝導性を有することができる。いくつかの実施形態では、絶縁材料は非金属材料(たとえばプラスチック)を含み、支持要素は金属を含む。
【0183】
[00243]いくつかの実施形態では、加熱器および支持要素のうちの少なくとも一方は、重量で大部分はステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、支持面はステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、支持要素の、支持面と加熱器の間の大部分はステンレス鋼である。支持要素の、スライドガラスと加熱器の間の部分は、約20W/m*Kに等しいかまたはそれよりも小さい熱伝導性を有することができる。
【0184】
[00244]いくつかの実施形態では、スライドガラス上に担持された生物検体を加熱するための方法は、スライドガラスの裏側面が支持要素に面し、スライドガラスの検体支承面が支持要素に面さないように伝導性スライドガラス加熱装置の支持要素上にスライドガラスを配置することを含む。熱は、検体支承面上での液体の蒸発に関連する蒸発熱損失を実質的に補償するために支持要素を介してスライドガラスの裏側面を横切って不均一に送達可能である。蒸発熱損失は、スライドガラスの検体支承面を横切って不均一である。
【0185】
[00245]不均一な温度プロファイルは、いくつかの実施形態では、不均一な温度プロファイルよりも均一な温度プロファイルを検体支承面が有するようにスライドガラスの裏側面と接触する支持要素の支持面に沿って生じることができる。いくつかの実施形態では、温度変化(たとえば、生物検体と接触する検体支承面の一部分にわたって維持される温度変化)は、約5°Cの温度変化に等しいかまたはそれよりも小さくすることができるが、スライドガラスの裏側面と接触する支持要素の支持面は5℃よりも大きい温度変化を有する。
【0186】
[00246]支持要素の支持面は、スライドガラスの裏側面と接触することができ、支持面の中央領域で低加熱ゾーンを、中央領域を囲む支持面の領域で高加熱ゾーンを生じさせるために加熱可能である。追加または代替として、支持面は、検体支承面に沿った染色区域の周辺に沿って高加熱ゾーンを、染色区域の中央領域に低加熱ゾーンを生じさせるために加熱可能である。
【0187】
[00247]スライドガラスは、伝導性スライドガラス加熱装置の加熱要素によって生じさせられた熱エネルギーを使用して伝導的に加熱可能である。加熱要素は、少なくとも2つの離間された細長い加熱部分と、これらの細長い加熱部分同士の間に延びる2つの端部加熱部分とを含む。細長い加熱部分および端部加熱部分は、支持要素を冷却するための対流冷却くぼみを画定する。
【0188】
[00248]いくつかの実施形態では、検体支承スライドガラスを加熱するためのシステムは、支持要素と伝導性加熱器とコントローラとを含むスライドガラスプラテンを含む。支持要素は支持面を有する。伝導性加熱器は、支持要素を加熱するように配置される。コントローラは、スライドガラスの裏側が支持面と接触するときにスライドガラスの検体支承面の検体支承区域に沿って実質的に均一な温度プロファイルを生じさせるために熱エネルギーをスライドガラスに伝達するように、支持要素に沿って不均一な加熱プロファイルを生じるようにシステムを制御するようにプログラムされる。
【0189】
[00249]伝導性加熱器は、いくつかの実施形態では、実質的に均一な温度加熱プロファイルがスライドガラスの検体支承面の大部分に沿って生じるように、スライドガラスを支持する支持面の大部分にわたって不均一な温度加熱プロファイルを生じるために支持要素を加熱するように構成される。実質的に均一な温度プロファイルは、スライドガラスの検体支承区域にわたって5℃未満の温度変化を有する。追加または代替として、伝導性加熱器は、支持要素に沿った中央低温加熱ゾーンと、支持要素に沿った周辺高温加熱ゾーンを生じるように構成され得る。追加または代替として、伝導性加熱器は、支持要素の下に配置され、支持要素を冷却するために対流流れが通過することが可能な開口を画定する。
【0190】
[00250]検体支承スライドガラスを加熱するためのシステムは、いくつかの実施形態では、コントローラに結合され、かつコントローラからの信号に基づいて対流流れを開口へと送達するように構成された対流冷却デバイスを含む。いくつかの実施形態では、この対流冷却デバイスは、対流流れを生じることが可能な少なくとも1つのファンを含む。いくつかの実施形態では、圧縮空気または推進力となる(motive)空気が使用可能である。
【0191】
[00251]支持要素は、いくつかの実施形態では、ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、支持要素の、スライドガラスを担持するための支持面と伝導性加熱器の間の部分は、約20W/m*Kに等しいかまたはそれよりも小さい熱伝導性を有する。