(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1及び
図2に示すように、本実施形態における冷蔵庫1は、正面を開口とし、内側を複数の部屋に区画された断熱箱体3と、各部屋の正面側の開口を封止する複数の扉21〜26と、を備える。
【0010】
断熱箱体3は、内箱と外箱との間に断熱材としてそれらの対向面のほぼ全面にVIP(Vacuum Insulation Panel)と呼ばれる真空断熱材35を挟み込んで構成されている。なお、
図2においては、説明のために冷蔵庫1の右側面板の真空断熱材35を透過させているが、上面板、底面板、左側面板、背面板にも真空断熱材35が配設されている。
【0011】
この断熱箱体3は、上方から順に冷蔵室11と、野菜室12と、横並びの製氷室13及び第一冷凍室14と、第二冷凍室15の5個の部屋に区画されている。冷蔵室11の正面側の開口には、観音開き式の冷蔵室第一扉21と冷蔵室第二扉22が取り付けられている。また、野菜室12、製氷室13、第一冷凍室14、第二冷凍室15の正面側の開口には、夫々引出し式の野菜室扉23、製氷室扉24、第一冷凍室扉25、第二冷凍室扉26が取り付けられている。
【0012】
まず、引出し式の扉の構造の説明のため、代表して第二冷凍室扉26について説明する。
図3及び
図4に示すように、第二冷凍室扉26は、外板31と、内板32と、スロート部材34と、真空断熱材35と、ガスケット37と、取手39と、を備える。
【0013】
そして、第二冷凍室扉26は、外板31と内板32の間に真空断熱材35が挟み込まれており、内板32の背面(第二冷凍室扉26における内側に位置する面)の外周近傍にガスケット37が嵌着され、内板32の背面にスロート部材34が固着されている。また、外板31の正面には取手39が取り付けられている。
【0014】
図5に示すように、外板31は、略箱形であり、正面板と側板とが交差する角部の内側に、後方に向かって立ち上がる、複数のねじ受け用の突出部31aが形成されている。また、突出部31aには、螺子が螺着されるねじ穴31bが形成されている。
【0015】
図3及び
図4に示したように、内板32は、略箱形であり、外周縁近傍の背面側にガスケット37が嵌着されるガスケット受け部32aを備える。ガスケット受け部32aは、後方(冷蔵庫室内側)へ開口する溝が設けられた前方へ突出する突条であり、内板32の外周縁近傍全体に形成されている。また、ガスケット受け部32aの正面側端面における、外板31に装着したときに外板31の突出部31aのねじ穴31bに相対する位置に、ねじ穴32bが形成されている。なお、
図3においてガスケット受け部32aは、断面が略方形状とされているが、後述するガスケット37の差込部37bを差し込むことができる形状であれば、例えばU字状など他の形状としてもよい。
【0016】
図6〜
図8に示すように、真空断熱材35は、グラスウールのような無機コア材101を外包フィルム105で真空パックした構造であり、外包フィルム105に突起物や螺子、金属や固いプラスチックのバリやエッジなどが触れると破れることがある。外包フィルム105が破れると、真空状態が解除されるため、著しく断熱効果が落ちる。外板31は、
図5に示したように、螺子受け用の突出部31aが複数形成されているため、真空断熱材35を何ら保護せずに配置すると、突出部31aに、または、内板32を外板31に固定するための螺子41に、または、螺子41を突出部31aのねじ穴31bに螺着したときに生じるバリなどに外包フィルム105が触れ、破れるおそれがある。なお、外包フィルム105としては、アルミ箔と樹脂フィルムをサンドウィッチした構造、もしくは、樹脂フィルムの表面にアルミ蒸着などによってラミネート加工を施したもの等を用いることができる。
【0017】
そこで、本実施形態における真空断熱材35は、外包フィルム105を保護するため、外周部に弾性部材36が巻装され取着されている。弾性部材36は、断熱効果を備えた素材であり、例えば、スポンジテープのようなソフトテープを用いることができる。このように、真空断熱材35の外周部を弾性部材36で覆うことにより、外板31の突出部31a等に外包フィルム105が直接触れることがないため、真空断熱材35が破損することを防止できる。
【0018】
そして、この真空断熱材35は、外板31及び内板32の内側の対向面のほぼ全面に配置されて、外板31の背面、及び、内板32の正面に接着剤によって接着されている。また、内板32は、内板32のガスケット受け部32aの正面側端面(溝の底部)が外板31の突出部31aの背面側端面に近接した状態で、螺子41によって外板31に固定されている。
【0019】
ガスケット37は、中空密閉のエアクッション部37aを有した枠体であり、矢尻状の差込部37bを有している。さらに、ガスケット37は、エアクッション部37aの後面に断熱箱体3の開口部周面に磁着するためのマグネット37cを有している。このガスケット37は柔軟材であり、差込部37bを内板32のガスケット受け部32aに柔軟性を利用して押し込むことで内板32に取り付けられている。
【0020】
スロート部材34は、矩形の枠状をなし、内板32に図示しない螺子や爪、スライドによる嵌合などにより取り付けられている。このスロート部材34は、第二冷凍室扉26の閉扉時に断熱箱体3の内側に進入して断熱箱体3の内面と重なることにより断熱箱体3内の冷気が漏洩を防止するための部材である。なお、スロート部材34の内空側にも、例えば発泡スチロール等の断熱材43が予め充填されている。
【0021】
次に、観音式の扉の構造を説明するため、代表して冷蔵室第一扉21について述べる。なお、上記引出し式扉と共通する部材には共通の符号を付して述べる。
図9及び
図10に示すように、冷蔵室第一扉21は、外板31と、内板32と、スロート部材34と、ガスケット嵌合部材45と、冷蔵室第二扉22との間の隙間を塞ぐ回動部材33と、真空断熱材35と、ガスケット37と、取手39と、ヒンジ受け板55と、を備える。
【0022】
外板31及び内板32は、夫々扁平な箱形である。そして、内板32は、外板31の側壁の内側に嵌合することで外板31と固定されている。また、外板31及び内板32の内側には、その対向面のほぼ全面に渡って真空断熱材35が配置されている。内板32の冷蔵庫1の内側に位置する側の面には、スロート部材34が接着などによって固定されている。スロート部材34の外方(回動部材33側は除く。)には、ガスケット37が嵌合されるガスケット嵌合部材45が、外板31及び内板32に接着などによって固定されている。また、内板32の冷蔵室第二扉22側の端部近傍には、冷蔵室第一扉21と冷蔵室第二扉22の間の隙間を塞ぐ回動部材33が回動可能に接続されている。
【0023】
このような構成とされた冷蔵室第一扉21は、上面及び底面の一側端近傍にヒンジ部50を備えている。このヒンジ部50には、
図2に示した、断熱箱体3の軸棒19が貫通する軸孔51が形成されている。また、ヒンジ部50の内側、すなわち、外板31と内板32の内側角部近傍には、金属などの剛性の高い素材で形成されたヒンジ受け板55が配置されている。
【0024】
ヒンジ受け板55は、冷蔵室第一扉21を断熱箱体3に回動可能に装着したときに、軸棒19に枢着される部材である。
図11に示すように、ヒンジ受け板55は、L字状の平面板55aと、平面板55aの一端から平面板55aに対して垂直に立ち上がる垂直板55bと、からなる。垂直板55bには、軸棒19が貫通する軸孔55cが形成されている。
【0025】
そして、
図12に示すように、冷蔵室第一扉21における真空断熱材35は略直方体形状であって、外板31及び内板32のヒンジ部50の近傍に位置する角部が切り取られて、隣接する2つの角部が面取りされた形状とされている。また、真空断熱材35は、内板32の内側に挿入でき、かつ、内板32の内側に有るスペースをできる限り埋めることができるように、内板32の内寸よりも僅かに小さな外寸とされている。このように真空断熱材35を形成することにより、真空断熱材35を内板32の内側に挿入した状態では、上下のヒンジ部50の間にも真空断熱材35が入り込み、内板32の内側において断熱材が存在しないスペースを殆ど無くすことができる。
【0026】
さらに、冷蔵室第一扉21において真空断熱材35は、スロート部材34の外寸よりも大きく形成され、スロート部材34が固定された面の裏面において、少なくともスロート部材34よりも広範囲に渡って配置されている。すなわち、真空断熱材35の外周近傍位置では、スロート部材34と真空断熱材35が重畳された状態となっている。
【0027】
また、
図13に示すように、真空断熱材35は、外板31及び内板32に接着剤等によって接着されている。そして、ヒンジ受け板55は、平面板55aの一部が内板32と真空断熱材35の間に入り込んでおり、真空断熱材35と共に内板32に接着固定されている。
【0028】
このように本実施形態における冷蔵室第一扉21は、真空断熱材35の隣接する一組の角部を面取りすることにより、断熱箱体3に冷蔵室第一扉21を取り付けたときに軸棒19が真空断熱材35に干渉する当接する)ことを防止できる。よって、真空断熱材35の外包フィルム105が軸棒19によって損傷することを防止できる。また、真空断熱材35の隣接する一組の角部を面取りすることにより、冷蔵室第一扉21における上下のヒンジ部50の間にまで真空断熱材35を配置できるため、断熱効果を高めることができる。
【0029】
さらに、冷蔵室第一扉21において真空断熱材35は、スロート部材34の外寸よりも大きく形成され、スロート部材34で囲まれた領域よりも広い領域に渡って配置されていることにより、冷蔵室内の断熱効果を高めることができる。
【0030】
また、ヒンジ受け板55を真空断熱材35と共に内板32に接着固定するため、製造時の作業工程を減らすことができる。
【0031】
なお、冷蔵室第二扉22も冷蔵室第一扉21と同様の構成とされており、同一の作用効果を得ることができる。また、冷蔵室第一扉21及び冷蔵室第二扉22における真空断熱材35も、周りにソフトテープを巻装した構成としてもよい。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について述べる。なお、以下の実施形態においても、共通する部位に関しては共通する符号を用いて述べる。
図14に示すように、本実施形態における冷蔵室第一扉21は、上記実施例における真空断熱材35の面取りした部分、すなわち、ヒンジ部50の内側に位置する空間に他の断熱材61が配置されていることを特徴とする。他の断熱材61としては、発泡ウレタンや発泡スチレン、スポンジ材、ソフトテープなどを使用することができる。
【0033】
このように、真空断熱材35の面取りした部分を埋めるように他の断熱材61を配置することで、断熱効果をより高めることができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。