(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部は、前記第2基部に設けられ、前記ガイド部材の外周面に接触して、前記ガイド部材と前記開口部との摺動を保持するネジを含む請求項1又は請求項3に記載の骨切り術用の保持器具。
前記第1基部の前記ガイド部材は、該ガイド部材の開放端から前記第2基部が取り外れないようにストッパー部材を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の骨切り術用の保持器具。
前記ガイド部材には、前記第1離間部材と前記第2離間部材の開閉角度を視認できる角度目盛りが形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の骨切り術用の保持器具。
前記ガイド部材は、前記第1離間部材と前記第2離間部材とがなす角度を広げる動作が行われた後に、前記第1離間部材の後端と前記第2離間部材の後端との離間距離が、前記第1離間部材の先端と前記第2離間部材の先端との離間距離よりも長くなるように前記第1離間部材および前記第2離間部材を案内する請求項1に記載の保持器具。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の骨切り術用の保持器具、および骨切り術用の開大器の実施例について図面を参照して説明するが、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあり、大きさ、角度又は幅等は誇張して描かれている場合がある。また説明に用いる各図において、同様な構成については同一の番号を付して示し、その説明を省略している。また、以下の実施形態中で述べる形状、寸法、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。
【0014】
本明細書では、変形性膝関節症患者の膝の関節近くの脛骨に形成した切れ込みに、骨補填材を挿入するため、本実施形態の骨切り術用の開大器を用いて切れ込みを開大する場合、および切れ込みが開大した状態を骨切り術用の保持器具により保持する場合について説明する。
【0015】
<<第1実施形態>>
<骨切り術用の保持器具の構成>
図1(a)は、変形性膝関節症患者の変形した大腿骨または脛骨に形成された切れ込みを、後述するブレード210や、従来提案されている特許文献1の骨切り術用開大器や、特許文献2の開創器アセンブリなどによって、切れ込みが開大した状態を保持する骨切り術用の保持器具220を示す斜視図である。
図1(b)はその保持器具220の平面図である。
図1(a)及び(b)に示される保持器具220は、1対の離間部材221(221a、221b)、摺動機構222、保持機構223及び一対の基部225(225a、225b)を有する。
骨切り術用の保持器具220は、ステンレス鋼、貴金属合金、コバルトクロム合金、チタン、チタン合金などの金属材料などで構成される。骨切り術用の保持器具220は、硬質のプレスチック材料で構成されてもよい。
【0016】
(離間部材について)
1対の離間部材221は、それぞれ内面221pとこの内面221pに対して漸次厚くなる楔形状に形成された外面221qとを有する。なお、1対の離間部材221における内面221pと外面221qによりなされる形状は、楔形状に限らず、厚さが均一または略均一の平板形状であっても構わない。1対の離間部材221の後端側(+X軸側)は、一対の基部225が形成されている。1対の離間部材221の長さLX2は、一般にX軸方向に30mm〜70mmであり、好ましくは40mm〜60mmであり、さらに好ましくは45mm〜55mmである。また、長さLX2も、患者の体格に応じて適宜変更されることが好ましく、特に大腿骨等の脛骨皮質骨に十分に接する長さであることが好ましい。切れ込みを開大する骨切り術用の開大器によって挿入される深さよりも離間部材221の長さLX2が短いため、脛骨Kの切れ込みK1の奥全体が見えやすくなるとともに、骨補填材(例えば、小さいサイズの骨補填材や粒状の骨補填材)を切れ込みに挿入しやすくなる。離間部材221aの内面221pと離間部材221bの内面221pとの間は、閉じた状態では平行に対向している。
図1(b)では、離間部材221aの内面221pと離間部材221bの内面221bとの距離は、距離Dpで離間しているが、離れていなくても構わない。
【0017】
1対の離間部材221の幅Wpは、骨の太さや、開大した状態を保持できるように適宜設定する。一対の基部225は幅Wrで形成され、その幅Wrは幅Wpよりも広い。この広くなった基部225の部分に、摺動機構222及び保持機構223が設けられる。
【0018】
骨補填材が挿入される際には、保持器具220が切込まれた骨を保持する。このため
図1(a)に示されるように、一対の離間部材221の外面221qは、骨に対して滑りにくいように粗面加工されていることが好ましい。外面221qの粗面は、例えばローレット加工による細かい格子状溝もしくはZ軸方向に伸びる細かい線状溝、又はサンドブラスト加工によるランダムな細かい凸凹状溝が好ましい。
【0019】
(摺動機構について)
基部225は、摺動機構222を有しており、その摺動機構222は、ガイド部材ベース部222a、ガイド部材222b及び開口部222cを有する。一対の基部225の一方225bは、ガイド部材ベース部222aを有しており、1対の離間部材221の外面221qを−X軸側に延長した交点におけるZ軸線回りに沿って弧を描く円弧状(アーチ形状)のガイド部材222bが固定されている。また、アーチ形状のガイド部材222bの上面(+Z側面)には、離間部材221aと離間部材221bとのなす角度を示す目盛りを有する。角度の目盛りは、ガイド部材222bの下面(−Z側面)にも設けられていても良い。アーチ形状のガイド部材222bの外周側(+X軸側)の外周面222fは、粗面加工されていると良い。後述するように、保持機構223が外周面222fに当接し、一対の離間部材221の角度の保持を確実にするためである。外周面222fの粗面は、細かい格子状溝、細かい線状溝又はランダムな細かい凸凹状溝が好ましい。
【0020】
なお、ガイド部材222bの外周面222fと、外周面222fに対向する内周面222gは、円弧状(アーチ形状)が好ましいが、外周面222fと内周面222gが平行な長方形状であってもよい。ガイド部材222bの円弧状(アーチ形状)の長さは、1対の離間部材の開閉角度が25度程度まであれば、脛骨Kの切れ込みK1の奥に移植物を挿入できる。またガイド部材222bの円弧の終端にはストッバー部材222hが設けられている。ストッバー部材222hがあるため、ガイド部材222bと開口部222cとが分離されない。つまり、一対の離間部材221a,221bが分離されない.これによって医療従事者が誤って、一対の離間部材221の一方を床などに落としてしまうことを防いでいる。
図1(a)ではストッバー部材222hが円柱形のピンであるが別形状であってもよい。またストッバー部材222hは、ガイド部材222bの下面(−Z側面)に突出して配置されているが、ガイド部材222bの外周側(+X軸側)又は内周側(−X軸側)に突出して配置されていてもよい。
【0021】
一対の基部225の他方225aには、開口部222cを有している。ガイド部材222bが開口部222cに入り込んでおり、 開口部222cは円弧状(アーチ形状)のガイド部材222bの摺動をサポートする。
図1(a)及び(b)において、開口部222cは、ガイド部材222bの上面、下面、内周面及び外周面を覆う構造であるが、例えば、開口部222cが切り欠かれており、ガイド部材222bの上面を覆わない構造であってもよい。
【0022】
(保持機構について)
また開口部222c+X軸方向には、保持機構223が設けられている。保持機構223は、第1例の第1固定ネジ223aと第2例の第2固定ネジ223bとがある。第1固定ネジ223aは+X軸方向に六角穴が空いており、第2固定ネジ223bも+X軸方向に六角穴が空いている。このため、医療従事者は、+X軸方向から保持機構223による一対の離間部材221の保持作業をしやすい。
【0023】
第1例
図2(a)及び(b)を使って、保持機構223の第1例を説明する。
図2(a)及び(b)は共に、基部225周辺を透視した状態で描かれており、開口部222cのガイド部材222b及び第1固定ネジ223aが描かれている。
図2(a)は第1固定ネジ223aがガイド部材222bの外周側(+X軸側)の外周面222fに当接していない状態である。
図2(b)は第1固定ネジ223aがガイド部材222bの外周面222fに当接している状態である。
【0024】
第1固定ネジ223aは六角穴(
図1(a)を参照)を有しているので、不図示の六角レンチで第1固定ネジ223aを回すことができる。
図2(a)に示されるように、第1固定ネジ223aの先端が外周面222fに当接していない状態であれば、ガイド部材222bが開口部222c内を摺動可能で、一対の離間部材221a,221bが相対的に移動する。
図2(b)に示されるように、第1固定ネジ223bの先端が外周面222fに当接した状態であれば、一対の離間部材221a,221bが保持される。外周面222fが粗面加工されていなくても、第1固定ネジ223aで外周面222fを保持できる。しかしながら、第1固定ネジ223aが一対の離間部材221の角度の保持を確実にするため、外周面222fに細かい格子状溝、細かい線状溝又はランダムな細かい凸凹状溝が形成されることが好ましい。なお、六角穴を有する第1固定ネジ223aの代わりに、プラスネジもしくは六角形ボルト等であってもよい。
【0025】
第2例
図3(a)及び(b)を使って、保持機構223の第2例を説明する。
図3(a)及び(b)は共に、基部225周辺を透視した状態で描かれており、開口部222cのガイド部材222b及び第2固定ネジ223bが描かれている。
図3(a)は第2固定ネジ223bが締め付けられていない状態である。
図3(b)は第2固定ネジ223bが締め付けられている状態である。
【0026】
図2で示した第1例とは異なり、第2例では基部225aにY軸方向に伸びるスリット223sが形成されており、そのスリット223sは開口部222cまで貫通している。また第2固定ネジ223bは第1固定ネジ223aよりもX軸方向に長い。不図示の六角レンチで第2固定ネジ223bを回すことができる。
図3(a)に示されるように、第1固定ネジ223bが締め付けられていない状態では、スリット223sの間隔SXが広く、ガイド部材222bが開口部222c内を摺動可能で、一対の離間部材221a,221bが相対的に移動できる。
図3(b)に示されるように、第2固定ネジ223bが締め付けられると、スリット223sの間隔SXが狭い状態となり、ガイド部材222bが開口部222c内で保持される。このため一対の離間部材221a,221bが保持される。外周面222fは粗面加工されていてもいなくてもよい。
【0027】
<第1実施形態の骨切り術用の保持器具の使い方>
骨切り術用の保持器具220の使い方を、
図4を参照しながら説明する。
医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1に、後述する骨切り術用の開大器200や、従来提案されている骨切り術用の開大器(開創器アセンブリ)の先端を脛骨Kの奥に差し込み当接させる。その後、それら骨切り術用の開大器200などによって、切れ込みK1を開大させる。
【0028】
次に、医療従事者は、開大した切れ込みに、1対の離間部材221が閉じられた状態の骨切り術用の保持器具220を所定の深さ(例えば、大腿骨の脛骨皮質骨に接触する深さ)まで挿入する。
次に、医療従事者は、骨切り術用の保持器具220の1対の離間部材221の外面221qが、開大した骨に当接する角度まで広げる。このとき、第1固定ネジ223aの先端が外周面222fに当接していないので、骨切り術用の保持器具220の摺動機構による開閉動作はスムースに行われる。また、骨切り術用の保持器具220の1対の離間部材221は、先端側が離間状態を維持しながら開閉動作が行われる。
【0029】
次に、医療従事者は、開大した状態を維持するため、第1固定ネジ223aの先端が外周面22fに当接するまで第1固定ネジ223aを回転させる。これにより、一対の離間部材221a、221bが所定の角度のまま保持されているので、脛骨Kの切れ込みK1が開大された状態を維持することができる。
【0030】
次に、医療従事者は、骨切り術用の開大器
200を切れ込みK1から抜き取る。
図4は骨切り術用の開大器
200が抜き取られ、骨切り術用の保持器具220のみが脛骨Kの切れ込みK1に残っている状態を示した図である。ブレード210が抜き取られているので、医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1の奥が視認可能となり、その奥に骨補填材を挿入することができる。一対の離間部材221a,221bの外面221qが粗面加工されていると、骨補填材を挿入する際に、脛骨Kと離間部材221a,221bとが滑りにくい。
【0031】
骨補填材の挿入後は、医療従事者は、第1固定ネジ223aによるガイド部材222bの保持を解除し、一対の離間部材221a,221bを閉じて保持器具220を抜き去る。保持器具220を抜き取って形成されたスペースに、医療従事者は、更に骨補填材を挿入してもよい。
【0032】
<<第2実施形態>>
<骨切り術用の開大器の構成>
図5(a)及び(b)は、第2実施形態の骨切り術用の開大器320を示す平面図である。
図5(a)は骨切り術用の開大器320が閉じた状態であり、
図5(b)は骨切り術用の開大器320が開いた状態である。第2実施形態では、骨切り術用の開大器320の長手方向をX軸、第1開閉機構327の開閉する方向をY軸、及び骨切り術用の開大器320の幅方向をZ軸として説明する。
【0033】
第2実施形態の骨切り術用の開大器320は、第1実施形態で説明した骨切り術用の保持器具220に第1開閉機構327を取り付けている。
【0034】
第2実施形態の骨切り術用の開大器320は、基本的に、第1実施形態の骨切り術用の保持器具220と似ている。このため、骨切り術用の開大器320において、同じ機能を有する部材には、第1実施形態の保持器具220の部材と同じ符号を付してある。また同じ符号に関しては説明を割愛する。骨切り術用の開大器320は、1対の離間部材221(221a、221b)の長さLX2も、第1実施形態の保持器具220と同じである。
【0035】
(第1開閉機構について)
図5(a)及び(b)に示されるように、基部325aに第1開閉機構327が設けられている。第1開閉機構327は、基部325aに設けられたネジ孔327a、このネジ孔327aを貫通して螺合するネジシャフト327c、ネジシャフト327cの一端部に設けられた六角穴327hを有する。ネジシャフト327cの六角穴327hは、プラスネジでも六角形ボルト形状等であってもよい。第1開閉機構327は、基部325aの代わりに他方の基部325bに設けられていてもよい。
【0036】
雄ネジであるネジシャフト327cは、ネジシャフト327cの一端部に設けられた六角穴327hに不図示の六角レンチドライバーを入れることができる。そしてドライバー等でネジシャフト327cが回転させられる。ネジシャフト327cの他端部は、半球状に形成されており、基部325bの平面である壁面(+Y軸面)に当接している。ネジシャフト327cの他端部が半球状であるため、ネジシャフト327cの角度が、
図5(a)から(b)で示される状態に変化しても、安定して基部325bの壁面に当接する。第1開閉機構327は、ネジシャフト327cが回転させられると、ネジシャフト327cの半球状の他端部から基部325aまでの距離が長くなり、基部325aが基部325bに対して
図7中+Y軸方向に移動する。
【0037】
<第2実施形態の骨切り術用の開大器の使い方>
骨切り術用の開大器320の使い方を説明する。医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1に、骨切り術用の開大器320を差し込む。このとき医療従事者は、大腿骨等の脛骨皮質骨に1対の離間部材221の外面221qが十分に接するようにする。医療従事者は、骨切り術用の開大器320を大腿骨等の奥まで差し込む必要もなく、ハンマーで骨切り術用の開大器320を叩かなくてもよい。
【0038】
骨切り術用の開大器320を脛骨Kの切れ込みK1に差し込んでから、医療従事者は、ネジシャフト327cの六角穴327hに六角レンチドライバーを嵌め込む。そして医療従事者は、六角レンチドライバーを回転する。するとネジシャフト327cが伸びて、離間部材221a、221bが相対的に開き、切れ込みK1を開大させる。骨切り術用の開大器320の1対の離間部材221は、先端側が離間状態を維持しながら切れ込みK1を開大できる。切れ込みK1に骨補填材を挿入できるだけの角度まで開いたら、医療従事者は、六角レンチドライバーの回転を止めて、第1固定ネジ223aを回転する。そして第1固定ネジ223aとガイド部材222bとを保持する。
【0039】
医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1の奥が視認可能となり、その奥に骨補填材を挿入することができる。骨補填材の挿入後は、医療従事者は、第1固定ネジ223aによるガイド部材222bの保持を解除し、一対の離間部材221a,221bを閉じて骨切り術用の開大器320を抜き去る。
【0040】
<<第3実施形態>>
<骨切り術用の開大器の構成>
図6(a)及び(b)は、第3実施形態の骨切り術用の開大器330を示す断面図である。なお理解を助けるため、ガイド部材222b及び第1固定ネジ223aなどは点線で描かれており、ネジシャフト327cが実線で描かれている。
図6(a)は骨切り術用の開大器330が閉じた状態であり、
図6(b)は骨切り術用の開大器330が開いた状態である。第3実施形態でも、骨切り術用の開大器330の長手方向をX軸、第1開閉機構327の開閉する方向をY軸、及び骨切り術用の開大器330の幅方向をZ軸として説明する。
【0041】
第2実施形態の骨切り術用の開大器320と第3実施形態の骨切り術用の開大器330とは、骨切り術用の開大器330の離間部材321b及び基部325bが異なる。また、第2実施形態の骨切り術用の開大器320の基部325aはネジ孔327aが形成されていたが、第3実施形態の基部325aはコマ部材327fを有している点で異なる。
【0042】
第3実施形態の骨切り術用の開大器330において、第1実施形態の骨切り術用の保持器具220と同じ似ている。このため、骨切り術用の開大器330において、同じ機能を有する部材には、第1実施形態の保持器具220の部材と同じ符号を付してある。
【0043】
(離間部材321について)
離間部材221aに対となる離間部材321は、それぞれ内面321pとこの内面321pに対して漸次厚くなる楔形状に形成された外面321qとを有する。離間部材321の後端側(+X軸側)は、一対の基部325bが形成されている。離間部材321の長さLX1は、第1実施形態のブレード210の回動部材211の長さLX1と同じである。離間部材321の先端には当接部328が設けられており、この当接部328は脛骨の奥に当接させる部分である。また離間部材321の厚さDb(Y軸方向)は、離間部材321の厚さDaよりも厚い。これは後述するように、骨切り術用の開大器330をハンマー等で叩き、当接部328は脛骨の奥に当接させるための強度を確保するためである。外面321qのうち、LX2で示される範囲には、細かい格子状溝、細かい線状溝、又は細かい凸凹状溝が形成されることが好ましい。
【0044】
離間部材321の後端側の基部325bは、ガイド部材ベース部222a及び凹み部329を有する。凹み部329は、Z軸方向断面が半円形に形成されており、ネジシャフト327cの動きを滑らかにするとともに移動範囲を規定するために設けられている。また
図6(a)に示されるように、基部325bは、基部325aに設けられた第1固定ネジ223aの+X軸方向の端部よりも、長さLX3だけ長くなっている。基部325bは打撃ブロックの役目も兼ねており、基部325bの後端(+X軸側)をハンマー等で叩いた際に、ハンマー等が第1固定ネジ223aに当たらないようにしている。なお特に図示しないが、離間部材221aと離間部材321とを入れ替えてもよい。
【0045】
(開閉機構について)
図6(a)及び(b)に示されるように、基部325aに第1開閉機構327が設けられている。第1開閉機構327は、基部325aに設けられた貫通孔327d、この貫通孔327dの途中位置に回転可能に設けられたコマ部材327f、コマ部材327fに設けられた雌ネジ孔を貫通して螺合するネジシャフト327c、ネジシャフト327cの一端部に設けられた六角穴327hを有する。コマ部材327fは、Z軸方向の伸びる円柱形状が好ましい。ネジシャフト327cの六角穴327hは、プラスネジでも六角形ボルト形状等であってもよい。
【0046】
ドライバー等でネジシャフト327cが回転させられると、ネジシャフト327cの半球状の他端部から基部325aまでの距離が長くなる。ネジシャフト327cの半球状の他端部は凹み部329に入り込み、ネジシャフト327cはコマ部材327fでプラスマイナス5度前後の角度を変えることができる。このため、ネジシャフト327cの回転を滑らかにすることができる。第1開閉機構327は、基部325aが基部325bに対して
図6中+Y軸方向に移動する。
【0047】
<第3実施形態の骨切り術用の開大器の使い方>
骨切り術用の開大器330の使い方を説明する。医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1に、骨切り術用の開大器330を差し込む。医療従事者は、基部325bの後端を不図示のハンマーなどで叩いて、骨切り術用の開大器330の離間部材321の当接部328を脛骨Kの奥に当接させる。
【0048】
骨切り術用の開大器330を脛骨Kの切れ込みK1に差し込んでから、医療従事者は、ネジシャフト327cの六角穴327hに六角レンチドライバーを嵌め込む。そして医療従事者は、六角レンチドライバーを回転する。するとネジシャフト327cが伸びて、離間部材221a、321が相対的に開き、切れ込みK1を開大させる。骨切り術用の開大器330の1対の離間部材221は、先端側が離間状態を維持しながら切れ込みK1を開大できる。切れ込みK1に骨補填材を挿入できるだけの角度まで開いたら、医療従事者は、六角レンチドライバーの回転を止めて、第1固定ネジ223aを回転する。そして第1固定ネジ223aとガイド部材222bとを保持する。
【0049】
医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1の奥が視認可能となり、その奥に骨補填材を挿入することができる。骨補填材の挿入後は、医療従事者は、第1固定ネジ223aによるガイド部材222bの保持を解除し、一対の離間部材221a,321を閉じて骨切り術用の開大器330を抜き去る。
【0050】
<<第4実施形態>>
<骨切り術用の開大器の構成>
図7は、第4実施形態の骨切り術用の開大器200を示す斜視図である。第4実施形態では、骨切り術用の開大器200の長手方向をX軸、第2開閉機構212の開閉する方向をY軸、及び骨切り術用の開大器200の幅方向をZ軸として説明する。
【0051】
第4実施形態の骨切り術用の開大器200は、ブレード210と保持器具220とを有する。ブレード210と保持器具220とは、ブレード210と保持器具220が固定されたり、ブレード210と保持器具220とが分離されたりするように構成されている。保持器具220は、打撃ブロック215(215a、215b)に設けられた連結部材213(213a、213b)でブレード210に固定されるように構成されてもよい。ブレード210は打撃ブロック215に設けられた第2開閉機構212によって開大できる。
【0052】
骨切り術用の開大器200は、ステンレス鋼、貴金属合金、コバルトクロム合金、チタン、チタン合金などの金属材料などで構成される。骨切り術用の開大器200は、硬質のプラスチック材料で構成されてもよい。
【0053】
また骨切り術用の開大器200は、変形性膝関節症患者の変形した大腿骨または脛骨に形成された切れ込みに挿入されこの切れ込みを開大するもので、その大きさは、一般に、
図7中のX軸方向に100mm〜180mmである。また大きさは、患者の体格に応じて適宜変更されることが好ましい。
【0054】
<ブレードの構成>
図8(a)はブレード210に保持器具220が装着された骨切り術用の開大器200を示す平面図である。
図8(b)は保持器具220が分離された状態のブレード210を示す平面図であり、
図8(c)は
図8(b)で示されたブレード210のC−C断面拡大図である。
図8(d)は保持器具固定ピンの別例を示すブレード210の背面図である。
【0055】
図8(a)に示される骨切り術用の開大器200は、保持器具220をブレード210に載置した状態で、打撃ブロック215を不図示のハンマーなどで脛骨Kに形成された切れ込みK1に差し込む。ブレード210は、第2開閉機構212によって保持器具220を連動させながら骨の切れ込みを開大することができる。その後、保持器具220が切れ込みの開大状態を保持した後、第2開閉機構212によってブレード210は閉じた状態に戻されて切れ込みから抜き取られる。
【0056】
図8(b)に示されるブレード210は、1対の回動部材211と、1つの第2開閉機構212と、保持器具固定ピン213a及び213bと、打撃ブロック215とを有する。1対の回動部材211(211a、211b)は、先端211cに配置されたヒンジ部211dにより相対的に回動可能に連結されている。
【0057】
(回動部材について)
各回動部材211a、211bは、ヒンジ部211dとは反対側(+X軸側)に打撃ブロック215a、215bを有する。1対の回動部材211のうち、脛骨Kに差し込まれる長さLX1は、一般にX軸方向に50mm〜90mmである。長さLX1は、患者の体格に応じて適宜変更されることが好ましい。各回動部材211a、211bは、ヒンジ部211dからのX軸方向を基準として、内面211rと外面(211p,211q)とを有する。その±Y軸方向の外面は、平行外面211pと傾斜外面211qとを有する。平行外面211pは内面211rと平行な形状であり、傾斜外面211qは、先端側(―X軸側)から後端側(+X軸側)にわたって内面に対して漸次厚くなる形状である。
【0058】
図8(c)に示されるように、回動部材211aの平行外面211pから回動部材211bの平行外面211pまでの厚さ(Y軸方向)は、厚さDpである。回動部材211aの傾斜外面211qから回動部材211bの傾斜外面211qまでの厚さは厚さDqであり、厚さDqは、先端側から後端側にわたって漸次厚くなる。このため、閉じられた状態の1対の回動部材211の厚さDqは、平面視で先端側からそれぞれ漸次厚くなる。楔形状であるため、1対の回動部材211は、大腿骨または脛骨に形成された切れ込みの奥まで先端を挿入しやすい。1対の回動部材211は、先端側に配置されたヒンジ部211dにより相対的に回動可能に連結されていれば、その形状に制限はない。第1実施形態では平行外面211pと傾斜外面211qとが形成されているが、傾斜外面が傾斜していなくてもよく、平行外面211pとY軸方向に高さの異なる別の平行外面であってもよい。
【0059】
図8(c)に示されるように、回動部材211a、211bは、その幅方向(Z軸方向)に、幅Wp(正面211sから中間面211tまでの距離)の平行外面211pと幅Wq(中間面211tから背面211uまでの距離)の傾斜外面211qである。平行外面211pの幅Wpは、保持器具220の幅に合わせて形成される。幅Wqと幅Wpは、同じ幅であっても良いし異なる幅であってもよい。各打撃ブロック215a、215bの幅(Z軸方向)は、幅Wpと幅Wqとを合わせた幅であることが好ましい。幅Wq及び幅Wpは、患者の体格に応じて適宜変更されるが、一般にそれぞれ10mm〜20mmが好ましい。
【0060】
(第2開閉機構について)
図8(b)に示されるように、打撃ブロック215には1つの第2開閉機構212が設けられている。打撃ブロック215a、215bは、その±Y軸側の面にそれぞれネジ孔212a(
図7も参照)、212bを有している。
図7に示されるように、±Y軸側の面に形成されるネジ孔212a、212bは、打撃ブロック215a、215bの−Z軸側(
図8の奥側)に形成されることが好ましい。そして、第2開閉機構212は、各ネジ孔212a、212bを貫通して螺合するネジシャフト212cを有する。
【0061】
雄ネジであるネジシャフト212cは、ネジ孔212a、212bとそれぞれ螺合する箇所で巻回方向が逆であり、いわゆる「正ネジ」と「逆ネジ」の関係にある。また、ネジシャフト212cの端部には六角穴(
図7を参照)が設けられており、六角レンチドライバーなどが嵌め合わされることによりネジシャフト212cを回転させることができる。雌ねじであるネジ孔212a、212bは、ネジシャフト212cの巻回方向に応じた「正ネジ孔」と「逆ネジ孔」である。また、ネジ孔212a、212bには、ブレード210が開いたときにネジシャフト212cの回転が規制されないように傾斜が設けられている。このため、1つの第2開閉機構212は、ネジシャフト212cを回転させると、回動部材211a、211bが相対的に回動して1対の回動部材211を円滑に開閉することができる。ネジシャフト212cの端部には六角穴が設けられているが、六角形ボルト形状等であってもよい。
【0062】
(保持器具固定ピンについて)
打撃ブロック215a、215bは連結部材である保持器具固定ピン213a、213bを有している。保持器具固定ピン213a、213bは、ネジ孔212a、212bを避けるように、打撃ブロック215a、215bの+Z軸側に形成されることが好ましい(
図7を参照)。保持器具固定ピン213a、213bの+X軸側のブロックは、
図7に示されるように、不図示のハンマーで打撃しやすいように、打撃ブロック215の面と同一面に形成されることが好ましい。また
図8(b)に示されるように、保持器具固定ピン213a、213bの先端側(−X軸側)は、凹み孔213g、213hが形成される。この凹み孔213g、213hに、保持器具220のボールプランジャ(不図示)が入り込み、ブレード210に保持器具220が保持される。保持器具固定ピン213a、213bの一部には、切り欠き面213d,213eが形成されている。切り欠き面213d,213eは、凹み孔213g、213hの+Z軸方向を特定する。第4実施形態では一対の保持器具固定ピン213a、213bを有しているが、1つの保持器具固定ピンのみで、ブレード210に保持器具220が保持されていてもよい。
【0063】
また保持器具固定ピン213a、213bに代えて、
図8(d)に示されるように、保持器具固定ピン213c、213dを1対の回動部材211の後端側で背面211uの位置に設けても良い。保持器具固定ピン213c、213dは、1対の回動部材211内で、−Z軸側から+Z軸方向に所定の距離を移動可能である。保持器具固定ピン213c、213dは、ブレード210から保持器具220に向かって移動し、その先端側(+Z軸側)が中間面211t(
図8(c)を参照)から突出して、ブレード210に保持器具220を保持するようができる。不図示のハンバーで打撃ブロック215を叩いて骨切り術用の開大器
200が脛骨Kに差し込まれる際に、打撃方向(X軸方向)と保持器具固定ピン213c、213dの移動方向(Z軸方向)とが同軸でない。このため、骨切り術用の開大器200の打ち込み時に、保持器具固定ピン213c、213dは、ブレード210と保持器具220との離間を防ぐことができる。別例でも一対の保持器具固定ピン213c、213dを有しているが、1つの保持器具固定ピンのみで、ブレード210に保持器具220が保持されていてもよい。
【0064】
第4実施形態では一対の保持器具固定ピン213a、213bを有しているが、1つの保持器具固定ピンのみで、ブレード210に保持器具220が保持されていてもよい。また連結部材として、固定ピンの代わりに、粘着、磁力などによってブレード210に保持器具220を固定するようにしてもよい。不図示のハンマーで打撃ブロック215を叩いて骨切り術用の開大器
200が脛骨Kに差し込まれる際に、ブレード210から保持器具220がブレード210から外れなければよいので、不図示のハンマーで打撃ブロック215を叩いても保持器具220がブレード210から外れなければ、連結部材が無くても良い。また、不図示のハンバーで打撃ブロック215を叩いて骨切り術用の開大器
200が脛骨Kに差し込まれる際に、より確実に、ブレード210から保持器具220が外れないようにするために、ブレード210の後端側の位置に、ブレード210から保持器具220に向かって(−Z軸方向)保持器具固定ピン213c、213dを挿入し、ブレード210と保持器具220を固定するようにしてもよい。
【0065】
<保持器具の構成>
保持器具220は、第1実施形態の骨切り術用の保持器具と同じであり、
図1(a)、(b)を用いて説明する。
図1(a)はブレード210から取り外された保持器具220を示す斜視図である。
図1(b)はその保持器具220の平面図である。
【0066】
図1(a)及び(b)に示される保持器具220は、回動部材211a、211bの平行外面211pに載置される。そして保持器具220は、1対の回動部材211の開大動作に連動する。保持器具220は、1対の離間部材221(221a、221b)、摺動機構222、保持機構223及び一対の基部225(225a、225b)を有する。
【0067】
(離間部材について)
1対の離間部材221は、それぞれ内面221pとこの内面221pに対して漸次厚くなる楔形状に形成された外面221qとを有する。1対の離間部材221の後端側(+X軸側)は、一対の基部225が形成されている。1対の離間部材221の長さLX2は、一般にX軸方向に30mm〜70mmであり、好ましくは40mm〜60mmであり、さらに好ましくは45mm〜55mmであり、回動部材211の長さLX1よりも短い。長さLX2も、患者の体格に応じて適宜変更されることが好ましく、特に大腿骨等の脛骨皮質骨に十分に接する長さであることが好ましい。回動部材211の長さLX1よりも離間部材221の長さLX2が短いため、脛骨Kの切れ込みK1の奥全体が見えやすくなるとともに、骨補填材(たとえば、小さいサイズの骨補填材や粒状の骨補填材)を切れ込みに挿入しやすくなる。離間部材221aの内面221pと離間部材221bの内面221pとの間は、閉じた状態では平行に対向しており、距離Dpで離間している。この距離Dpは、
図82(c)に示された回動部材211aの平行外面211pから回動部材211bの平行外面211pまでの厚さDpと一致する。
【0068】
1対の離間部材221の幅Wpは、一対の回動部材211の平行外面211pの幅Wp(
図8(c)を参照)に一致している。つまり、保持器具220がブレード210に載置された際には、離間部材221a、221bのそれぞれ内面221pが、回動部材211a、211bの平行外面211pに接する。一対の基部225は幅Wrで形成され、その幅Wrは幅Wpよりも広い。この広くなった基部225の部分に、摺動機構222及び保持機構223が設けられる。
【0069】
ここで、1対の離間部材221の外面221qについて説明する。
図8(a)に示されるように、保持器具220の外面221qと回動部材211の傾斜外面211qとは、平面視で先端側からそれぞれ漸次厚くなる、その厚くなる角度が一致している。つまり、保持器具220の外面221qは、回動部材221の傾斜外面211qと同一面になっている。同一面であるため、第2開閉機構212により、離間部材221の外面221qと回動部材211の傾斜外面211qとが、切込まれた骨に当接した状態で骨を開大できる。別の言い方をすれば、外面221qと傾斜外面211qとに段差がない面であるので、骨との接触面を比較的広く確保できるので、開大時の骨への負荷が軽減される。なお、楔形の骨補填材を挿入する際にはブレード210が抜き取られるため、離間部材221の外面221qが回動部材211の傾斜外面211qよりも若干厚くなっていても良い。
【0070】
骨補填材が挿入される際には、保持器具220が切込まれた骨を保持する。このため
図1(a)に示されるように、一対の離間部材221の外面221qは、骨に対して滑りにくいように粗面加工されていることが好ましい。外面221qの粗面は、例えばローレット加工による細かい格子状溝もしくはZ軸方向に伸びる細かい線状溝、又はサンドブラスト加工によるランダムな細かい凸凹状溝が好ましい。
【0071】
(摺動機構について)
基部225は、摺動機構222を有しており、その摺動機構222は、ガイド部材ベース部222a、ガイド部材222b及び開口部222cを有する。一対の基部225に一方225bは、ガイド部材ベース部222aを有しており、ヒンジ部211d(
図7を参照)の軸線回りに沿って弧を描く円弧状(アーチ形状)のガイド部材222bが固定されている。また、アーチ形状のガイド部材222bの上面(+Z側面)には、離間部材221aと離間部材221bとのなす角度を示す目盛りを有する。角度の目盛りは、ガイド部材222bの下面(−Z側面)にも設けられていても良い。この角度を示す目盛りは、ヒンジ部211d(
図7を参照)の軸線回りの角度でもある。アーチ形状のガイド部材222bの外周側(+X軸側)の外周面222fは、粗面加工されていると良い。後述するように、保持機構223が外周面222fに当接し、一対の離間部材221の角度の保持を確実にするためである。外周面222fの粗面は、細かい格子状溝、細かい線状溝又はランダムな細かい凸凹状溝が好ましい。
【0072】
角度を示す目盛りはヒンジ部211d(
図7を参照)の軸線回りの角度でもあるので、ガイド部材222bの外周面222fと、外周面222fに対応する内周面222gは円弧状(アーチ形状)が好ましいが、外周面222fと内周面222gが平行な長方形状であってもよい。ガイド部材222bの円弧状(アーチ形状)の長さは、ヒンジ部211dの軸線回りの角度が25度程度まであれば、脛骨Kの切れ込みK1の奥に移植物を挿入できる。またガイド部材222bの円弧の終端にはストッバー部材222hが設けられている。ストッバー部材222hがあるため、ガイド部材222bと開口部222cとが分離されない。つまり、一対の離間部材221a,221bが分離されない.これによって医療従事者が誤って、一対の離間部材221の一方を床などに落としてしまうことを防いでいる。
図1(a)ではストッバー部材222hが円柱形のピンであるが別形状であってもよい。またストッバー部材222hは、ガイド部材222bの下面(−Z側面)に突出して配置されているが、ガイド部材222bの外周側(+X軸側)又は内周側(−X軸側)に突出して配置されていてもよい。
【0073】
一対の基部225に他方225aは、開口部222cを有している。開口部222cは円弧状(アーチ形状)のガイド部材222bの摺動をサポートする。
図1(a)及び(b)において、開口部222cは、ガイド部材222bの上面、下面、内周面及び外周面を覆う構造であるが、例えば、開口部222cが切り欠かれており、ガイド部材222bの上面を覆わない構造であってもよい。
【0074】
(保持機構について)
また開口部222c+X軸方向には、保持機構223が設けられている。保持機構223は、第1例の第1固定ネジ223aと第2例の第2固定ネジ223bとがある。第1固定ネジ223aは+X軸方向に六角穴が空いており、第2固定ネジ223bも+X軸方向に六角穴が空いている。このため、骨切り術用の開大器200が大腿骨または脛骨Kに形成された切れ込みK1に挿入されている際に、医療従事者は、+X軸方向から保持機構223による一対の離間部材221の保持作業をしやすい。
【0075】
第1例
図2(a)及び(b)を使って、保持機構223の第1例を説明する。
図2(a)及び(b)は共に、基部225周辺を透視した状態で描かれており、開口部222cのガイド部材222b及び第1固定ネジ223aが描かれている。
図2(a)は第1固定ネジ223aがガイド部材222bの外周側(+X軸側)の外周面222fに当接していない状態である。
図2(b)は第1固定ネジ223aがガイド部材222bの外周面222fに当接している状態である。
【0076】
第1固定ネジ223aは六角穴(
図1(a)を参照)を有しているので、不図示の六角レンチで第1固定ネジ223aを回すことができる。
図2(a)に示されるように、第1固定ネジ223aの先端が外周面222fに当接していない状態であれば、ガイド部材222bが開口部222c内を摺動可能で、一対の離間部材221a,221bが相対的に移動する。
図2(b)に示されるように、第1固定ネジ223bの先端が外周面222fに当接した状態であれば、一対の離間部材221a,221bが保持される。外周面222fが粗面加工されていなくても、第1固定ネジ223aで外周面222fを保持できる。しかしながら、第1固定ネジ223aが一対の離間部材221の角度の保持を確実にするため、外周面222fに細かい格子状溝、細かい線状溝又はランダムな細かい凸凹状溝が形成されることが好ましい。なお、六角穴を有する第1固定ネジ223aの代わりに、プラスネジもしくは六角形ボルト等であってもよい。
【0077】
第2例
図3(a)及び(b)を使って、保持機構223の第2例を説明する。
図3(a)及び(b)は共に、基部225周辺を透視した状態で描かれており、開口部222cのガイド部材222b及び第2固定ネジ223bが描かれている。
図3(a)は第2固定ネジ223bが締め付けられていない状態である。
図3(b)は第2固定ネジ223bが締め付けられている状態である。
【0078】
図2で示した第1例とは異なり、第2例では基部225aにY軸方向に伸びるスリット223sが形成されており、そのスリット223sは開口部222cまで貫通している。また第2固定ネジ223bは第1固定ネジ223aよりもX軸方向に長い。不図示の六角レンチで第2固定ネジ223bを回すことができる。
図3(a)に示されるように、第1固定ネジ223bが締め付けられていない状態では、スリット223sの間隔SXが広く、ガイド部材222bが開口部222c内を摺動可能で、一対の離間部材221a,221bが相対的に移動できる。
図3(b)に示されるように、第2固定ネジ223bが締め付けられると、スリット223sの間隔SXが狭い状態となり、ガイド部材222bが開口部222c内で保持される。このため一対の離間部材221a,221bが保持される。外周面222fは粗面加工されていてもいなくてもよい。
【0079】
<第4実施形態の骨切り術用の開大器の使い方>
骨切り術用の開大器200の使い方を
図9〜
図11を参照しながら説明する。骨切り術用の開大器200を脛骨Kの切れ込みK1に差し込んでから、切れ込みK1を開大した後にその開大状態を保持するまでの動作を説明する。なお、
図9から
図11は、切れ込みK1に対し正面から見たときの説明図である。
【0080】
閉じた状態の骨切り術用の開大器200が用意される。この骨切り術用の開大器200は、保持器具固定ピン213a、213bにより、ブレード210に保持器具220が連結している状態である。そして医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1に、骨切り術用の開大器200の先端を差し込む。医療従事者は、打撃ブロック215を不図示のハンマーなどで叩いて、骨切り術用の開大器200の先端を、つまりブレード210の回動部材221の先端を脛骨Kの奥に当接させる。即ち1対の回動部材211の先端が切れ込みK1に入れられる。
【0081】
次に、
図9に示されるように、医療従事者は、ネジシャフト212cの端部に設けられている六角穴に実線で描かれた六角レンチドライバーSDを嵌め込む。そして医療従事者は、実線で描かれた六角レンチドライバーSDを
図9中の矢印CR1で示す方向に回転する。ネジシャフト212cが「正ネジ」と「逆ネジ」との関係を有するため、回動部材211a、211bがそれぞれ
図9中の矢印D11及びD12で示す方向に回動する。回動部材211a、211bが相対的に開くとともに保持器具220も連動して開き、切れ込みK1を開大させる。
図9では回動部材211a、211bが12度開いた状態である。切れ込みK1に骨補填材を挿入できるだけの角度まで開いたら、医療従事者は、実線で描かれた六角レンチドライバーSDの回転を止める。ネジシャフト212cの回転を止めて、実線で描かれた六角レンチドライバーSDがネジシャフト212cの六角穴から外されても、回動部材211aと211bとは相対的に開いた状態を維持する。
【0082】
次に、医療従事者は、実線で描かれた状態の六角レンチドライバーSDを点線で描かれた六角レンチドライバーSDへと移動させ、第1固定ネジ223aの端部に設けられている六角穴に点線で描かれた六角レンチドライバーSDを嵌め込む。そして医療従事者は、点線で描かれた六角レンチドライバーSDを
図9中の矢印CR2で示す方向に回転する。すると第1固定ネジ223aの先端がアーチ形状のガイド部材222bの外周面222fに当接する。第1固定ネジ223aとガイド部材222bとが保持される。
【0083】
次に、医療従事者は、保持器具220とブレード210との連結を解除する。このため医療従事者は、
図10に示されるように、保持器具固定ピン213a、213bをそれぞれ
図10中矢印D13及びD14で示される方向に引っ張る。すると、ボールプランジャ(不図示)が保持器具固定ピン213aの凹み孔213g(
図8(b)を参照)及び保持器具固定ピン213bの凹み孔213h(
図8(b)を参照)から抜ける。これにより保持器具220とブレード210との連結が解除される。
【0084】
次に、医療従事者は、ネジシャフト212cの端部に設けられている六角穴に六角レンチドライバーSDが嵌め込み、六角レンチドライバーSDを
図10中矢印CR3で示す方向に回転すると、回動部材211a、211bが相対的に閉じる方向に回動し、1対の回動部材211が閉じる。このとき、保持器具220は、ブレード210との連結が解除されており、かつ第1固定ネジ223aの先端が外周面222fに当接している。このため一対の離間部材221a,221bが所定の角度のまま保持されているので、脛骨Kの切れ込みK1が開大された状態を維持する。なお、
図10に示された1対の回動部材211は、閉じた状態で+Y軸方向に移動した状態を示している。
【0085】
次に、医療従事者は、ブレード210を切れ込みK1から抜き取る。
図11はブレード210が抜き取られ、保持器具220のみが脛骨Kの切れ込みK1に残っている状態を示した図である。ブレード210が抜き取られているので、医療従事者は、脛骨Kの切れ込みK1の奥が視認可能となり、その奥に骨補填材を挿入することができる。一対の離間部材221a,221bの外面221qが粗面加工されていると、骨補填材を挿入する際に、脛骨Kと離間部材221a,221bとが滑りにくい。
【0086】
骨補填材の挿入後は、医療従事者は、第1固定ネジ223aによるガイド部材222bの保持を解除し、一対の離間部材221a,221bを閉じて保持器具220を抜き去る。保持器具220を抜き取って形成されたスペースに、医療従事者は、更に骨補填材を挿入してもよい。
【0087】
以上、説明したように、第2実施形態から第4実施形態の骨切り術用の開大器は、簡易な機構であるため、洗浄などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、この骨切り術用の開大器では、1対の離間部材により切れ込みの開大状態を保持しているため、切れ込みの奥全体が視認可能になり移植物を容易に挿入できる。
【0088】
第1実施形態から第4実施形態を別々に説明したが、それらの実施形態間で部材構成を適宜変更させても良い。例えば、第2実施形態では、一対の離間部材221a、221bは厚く形成されていないかったが、第3実施形態の離間部材321のように厚くしてもよい。そして第2実施形態の基部325bにも凹み部329を形成してもよく、第2実施形態の基部325aにコマ部材327fを備えても良い。
【0089】
また、上記説明した第1実施形態の骨切り術用の保持器具、第2実施形態〜第4実施形態の骨切り術用の開大器に限らず、以下の構成Aの骨切り術用の保持器具や、構成B〜Eの骨切り術用の開大器であっても、簡易な機構によりメンテナンスを容易に行うことができ、かつ切れ込みを開大して移植物を挿入しやすくできる効果を有する。
【0090】
(構成A)
第1内面と、該第1内面に対向して設けられ骨に接する第1外面とを有する第1離間部材と、
第2内面と、該第2内面に対向して設けられ骨に接する第2外面とを有する第2離間部材と、
前記第1離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記第1離間部材と前記第2離間部材との開閉動作を案内するガイド部材とを有する第1基部を有し、
前記第2離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記ガイド部材が挿入される開口部を有する第2基部を有し、
前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記第1内面と前記第2内面が対向するように配置された骨切り術用の保持器具であって、
前記ガイド部材は前記開口部に篏合され、前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記先端側が離間状態を維持しながら、前記ガイド部材の形状に沿って開閉動作が可能となるように配置され、
前記第1離間部材と前記第2離間部材による開閉状態をある所定の状態に保持する保持部を備えたことを特徴とする骨切り術用の保持器具。
【0091】
(構成B)
第1内面と、該第1内面に対向して設けられ骨に接する第1外面とを有する第1離間部材と、
第2内面と、該第2内面に対向して設けられ骨に接する第2外面とを有する第2離間部材と、
前記第1離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記第1離間部材と前記第2離間部材との開閉動作を案内するガイド部材とを有する第1基部を有し、
前記第2離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記ガイド部材が挿入される開口部を有する第2基部を有し、
前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記第1内面と前記第2内面が対向するように配置された骨切り術用の開大器であって、
前記ガイド部材は前記開口部に篏合され、前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記先端側が離間状態を維持しながら、前記ガイド部材の形状に沿って開閉動作が可能となるように配置され、
前記第1離間部材と前記第2離間部材による開閉状態をある所定の状態に保持する保持部と、
前記第1離間部材と前記第2離間部材とのいずれか一方に配置され、前記第1離間部材と前記第2離間部材による開閉状態を調節する開閉機構と、
を備える骨切り術用の開大器。
【0092】
(構成C)
骨の切れ込みを開大するブレードと、前記ブレードに着脱可能に装着され、且つ開大された骨の切れ込みを保持する保持器具とを備える骨切り術用の開大器であって、
前記ブレードは、
先端に配置されたヒンジ部により相対的に回動可能に連結され、内面とその反対側の外面とを有する1対の回動部材を有し、
前記保持器具は、
第1内面と、該第1内面に対向して設けられ骨に接する第1外面とを有する第1離間部材と、
第2内面と、該第2内面に対向して設けられ骨に接する第2外面とを有する第2離間部材と、
前記第1離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記第1離間部材と前記第2離間部材との開閉動作を案内するガイド部材とを有する第1基部を有し、
前記第2離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記ガイド部材が挿入される開口部を有する第2基部を有し、
前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記第1内面と前記第2内面が対向するように配置されており、
前記ガイド部材は前記開口部に篏合され、前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記先端側が離間状態を維持しながら、前記ガイド部材の形状に沿って開閉動作が可能となるように配置され、
前記第1離間部材と前記第2離間部材による開閉状態をある所定の状態に保持する保持部を備えたことを特徴とする骨切り術用の開大器。
【0093】
(構成D)
骨の切れ込みを開大するブレードと、前記ブレードに着脱可能に装着され、且つ開大された骨の切れ込みを保持する保持器具とを備える骨切り術用の開大器であって、
前記ブレードは、
先端に配置されたヒンジ部により相対的に回動可能に連結され、内面とその反対側の外面とを有する1対の回動部材を有し、
前記1対の回動部材を前記ヒンジ部の軸線回りに開閉させる開閉機構を備え、
前記1対の回動部材の前記外面は、先端側から後端側にわたって前記内面に対して漸次厚くなる傾斜外面と、先端側から後端側にわたって前記内面と平行な平行外面とを含み、
前記保持器具は、
第1内面と、該第1内面に対向して設けられ骨に接する第1外面とを有する第1離間部材と、
第2内面と、該第2内面に対向して設けられ骨に接する第2外面とを有する第2離間部材と、
前記第1内面は、前記1対の回動部材の一方の前記平行外面に配置され、前記第1外面は、前記1対の回動部材の一方の前記傾斜外面と同一面になり、且つ、前記第2内面は、前記1対の回動部材の他方の前記平行外面に配置され、前記第2外面は、前記1つの回動部材の他方の前記傾斜外面と同一面になるように配置され、
前記第1離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記第1離間部材と前記第2離間部材との開閉動作を案内するガイド部材とを有する第1基部を有し、
前記第2離間部材は、骨に形成された切れ込みに挿入する先端側に対して後端側の位置に、前記ガイド部材が挿入される開口部を有する第2基部を有し、
前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記第1内面と前記第2内面が対向するように配置されており、
前記ガイド部材は前記開口部に篏合され、前記第1離間部材と前記第2離間部材は、前記ブレードの前記開閉機構によって前記先端側が離間状態を維持しながら、前記ガイド部材の形状に沿って開閉動作が可能となるように配置され、
前記第1離間部材と前記第2離間部材による開閉状態をある所定の状態に保持する保持部を備えていることを特徴とする骨切り術用の開大器。
【0094】
(構成E)
前記ブレードは、前記保持器具の前記第1基部又は前記第2基部の少なくとも一方と連結する連結部材を有する構成D記載の骨切り術用の開大器。