特許第6688369号(P6688369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6688369
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】抵抗溶接機制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   B23K11/24 392
   B23K11/24 335
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-214969(P2018-214969)
(22)【出願日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151070
【氏名又は名称】電元社トーア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大森 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】福澤 毅
(72)【発明者】
【氏名】福田 康彦
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−276064(JP,A)
【文献】 特開平01−118377(JP,A)
【文献】 特開2000−176648(JP,A)
【文献】 特開平09−085455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00−11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータトランスに流す溶接電流を制御する制御部と、
前記インバータトランスに流れる前記溶接電流を検知する電流検知部と、
検知した前記溶接電流の通電時間および打点時間間隔を測定し、測定した前記通電時間および前記打点時間間隔を用いて、使用率測定モードまたは平均使用率測定モードのいずれかのモードを起動して、前記インバータトランスの使用率を演算する使用率演算部と、
前記インバータトランスを定格容量で稼働させたときの前記溶接電流の電流値と前記インバータトランスの前記使用率との関係を示す等価電流曲線を記憶する記憶部と、
検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の関係が前記インバータトランスの前記定格容量を超える関係にあるか否かを前記等価電流曲線に照らして判定し、検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の関係が前記インバータトランスの前記定格容量を超える関係になければ前記制御部の動作を継続させ、検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の関係が前記インバータトランスの前記定格容量を超える関係にあれば前記制御部の動作を停止させる判定部と、
を有する、抵抗溶接機制御装置。
【請求項2】
前記使用率演算部は、
使用率測定モードが起動されているときには、
検知した前記溶接電流の前記通電時間および前記打点時間間隔を打点ごとに測定し、測定した前記通電時間および前記打点時間間隔を用いて前記インバータトランスの前記使用率を演算する、請求項1に記載の抵抗溶接機制御装置。
【請求項3】
前記使用率演算部は、
平均使用率測定モードが起動されているときには、
検知した前記溶接電流の前記通電時間および前記打点時間間隔を複数打点数ごとに、または一定時間ごとに測定し、測定した前記複数打点数ごとの、または前記一定時間ごとの平均通電時間または平均打点時間間隔を演算し、演算した前記平均通電時間または前記平均打点時間間隔を用いて前記インバータトランスの前記使用率を演算する、請求項1に記載の抵抗溶接機制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記記憶部が記憶している前記等価電流曲線を用いて描いたグラフに、検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の交点をプロットし、プロットした前記交点が前記等価電流曲線よりも下側に位置していれば、検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の関係が前記インバータトランスの前記定格容量を超える関係にないと判定し、プロットした前記交点が前記等価電流曲線よりも上側に位置していれば、検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の関係が前記インバータトランスの前記定格容量を超える関係にあると判定する、請求項1から3のいずれかに記載の抵抗溶接機制御装置。
【請求項5】
前記電流検知部によって検知された前記溶接電流の前記電流値、前記通電時間および前記打点時間間隔、前記使用率演算部によって演算された前記インバータトランスの前記使用率は、外部コンピュータに送信され、
前記外部コンピュータによって、前記溶接電流の前記電流値、前記通電時間、前記打点時間間隔および前記インバータトランスの前記使用率が記録および監視される、請求項1から4のいずれかに記載の抵抗溶接機制御装置。
【請求項6】
前記電流検知部によって検知された前記溶接電流の前記電流値および前記使用率演算部によって演算された前記インバータトランスの前記使用率は、外部コンピュータに送信され、
前記外部コンピュータによって、前記記憶部が記憶している前記等価電流曲線を用いて描いたグラフに、検知された前記溶接電流の前記電流値および演算された前記インバータトランスの前記使用率の前記交点がプロットされ、前記溶接電流の前記電流値および前記インバータトランスの前記使用率の関係が前記インバータトランスの前記定格容量を超える関係にあるか否かが監視される、請求項4に記載の抵抗溶接機制御装置。
【請求項7】
さらに、前記インバータトランスの温度を検知する温度検知部を設け、
前記温度検知部によって検知された前記インバータトランスの温度は、前記外部コンピュータに送信され、
前記外部コンピュータによって、前記インバータトランスの温度が記録および監視される、請求項5または6に記載の抵抗溶接機制御装置。
【請求項8】
前記温度検知部は、前記溶接電流を生成するトランスの温度を検知するトランス温度検知部と、前記トランスで生成された前記溶接電流を整流する整流器の温度を検知する整流器温度検知部と、を有する、請求項7に記載の抵抗溶接機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接機の溶接電流と使用率とを考慮して抵抗溶接機の動作を制御する抵抗溶接機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のボディーには、強度の確保と軽量化の実現に向けて、従来の鋼板よりも引張強度を向上させた高張力鋼板が用いられている。高張力鋼板同士をスポット溶接する場合、従来の鋼板をスポット溶接するときよりも大きな溶接電流を長い時間通電させる必要がある。このため、高張力鋼板同士のスポット溶接には、広範囲な溶接条件が設定できて高品質の溶接をすることができるインバータ方式の抵抗溶接機が用いられている。一般的に、インバータ方式の抵抗溶接機は、連続的に通電して使用するものではないため、特許文献1に示されているように、抵抗溶接機は、ある一定の時間内において通電できる時間の比率である使用率を考慮して稼動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−141747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年における高張力鋼板同士のスポット溶接においては、各溶接点において高品質の溶接を実現させるため、溶接点ごとに、溶接電流、通電時間、打点時間間隔などの溶接条件を異ならせている。このため、特許文献1のように、使用率だけを考慮して抵抗溶接機を稼働させたのでは、次のような不具合が生じる。
【0005】
インバータ方式の抵抗溶接機に使用しているインバータトランスは、高張力鋼板同士のスポット溶接においては、定格容量を超えて使用される場合があり、これにより、インバータトランスの寿命に悪影響が生じる。電気容量は使用される溶接条件により変化するため、使用率だけを考慮して、電気容量が定格容量を超えないように管理することは難しい。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解消するために成されたものであり、抵抗溶接機の溶接電流と使用率とを考慮して抵抗溶接機の動作を制御する抵抗溶接機制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る抵抗溶接機制御装置は、インバータトランスに流す溶接電流を制御する制御部と、インバータトランスに流れる溶接電流を検知する電流検知部と、検知した溶接電流の通電時間および打点時間間隔を測定し、測定した通電時間および打点時間間隔を用いて、使用率測定モードまたは平均使用率測定モードのいずれかのモードを起動して、インバータトランスの使用率を演算する使用率演算部と、インバータトランスを定格容量で稼働させたときの溶接電流の電流値とインバータトランスの使用率との関係を示す等価電流曲線を記憶する記憶部と、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランスの使用率の関係がインバータトランスの定格容量を超える関係にあるか否かを等価電流曲線に照らして判定し、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランスの使用率の関係がインバータトランスの定格容量を超える関係になければ制御部の動作を継続させ、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランスの使用率の関係がインバータトランスの定格容量を超える関係にあれば制御部の動作を停止させる判定部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る抵抗溶接機制御装置によれば、抵抗溶接機の溶接電流と使用率とを考慮して抵抗溶接機の動作を制御するので、抵抗溶接機の定格容量を超えない範囲内で抵抗溶接機を稼働させることができ、抵抗溶接機の寿命を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の抵抗溶接機制御装置を備えた抵抗溶接機の概略構成図である。
図2】本実施形態の抵抗溶接機制御装置の使用率測定モード時の動作フローチャートである。
図3】本実施形態の抵抗溶接機制御装置の平均使用率測定モード時の動作フローチャートである。
図4図2および図3の動作フローチャートの動作説明に供する図である。
図5図2および図3の動作フローチャートの動作説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る抵抗溶接機制御装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態の抵抗溶接機制御装置を備えた抵抗溶接機の概略構成図である。
【0011】
<抵抗溶接機の構成>
抵抗溶接機10は、溶接ガン190の電極200に溶接電流を供給するインバータトランス160と、インバータトランス160の動作を制御する抵抗溶接機制御装置100とを備える。
【0012】
インバータトランス160は溶接ガン190の一部に備えられ、溶接ガン190の電極200間に溶接電流を供給する。インバータトランス160は、溶接電流を生成するためのトランス162と、トランス162で生成された溶接電流を整流するダイオードスタック170とを有する。トランス162は、一次側巻線166と二次側巻線164とを有し、一次側巻線166に流れる電流が巻数比に応じた電流に増幅されて二次側巻線164に供給される。ダイオードスタック170はダイオード172、174を有し、ダイオード172、174によって、二次側巻線164に流れる交流の溶接電流が直流の溶接電流に変換される。直流に変換された溶接電流は、電極200間で加圧されている鋼板(図示せず)に供給され、電極200によって鋼板がスポット溶接される。
【0013】
インバータトランス160には、インバータトランス160の温度を検知する温度検知部が設けられる。温度検知部は、溶接電流を生成するトランス162の温度を検知するトランス温度検知部182と、トランス162で生成された溶接電流を整流する整流器としてのダイオードスタック170の温度を検知する整流器温度検知部184と、を有する。
【0014】
<抵抗溶接機制御装置の構成>
抵抗溶接機制御装置100は、抵抗溶接機10の溶接電流と使用率とを考慮して抵抗溶接機10の動作を制御する。
【0015】
抵抗溶接機制御装置100は、整流部110、スイッチング部115、制御部120、電流検知部125、使用率演算部130、記憶部135、判定部140、外部コンピュータであるPC150、トランス温度検知部182および整流器温度検知部184を備える。
【0016】
整流部110は、3相の商用電源に接続され、たとえば3相50Hzの交流を直流に変換し、抵抗溶接機制御装置100の全ての構成要素に電力を供給する。スイッチング部115は、制御部120から出力されるスイッチング信号によってスイッチングされ、溶接条件に応じた電圧を出力する。制御部120は、インバータトランス160に流す溶接電流を、スイッチング部115に出力するスイッチング信号によって制御する。電流検知部125は、インバータトランス160に流れる溶接電流を検知する。
【0017】
使用率演算部130は、電流検知部125が検知した溶接電流の通電時間および打点時間間隔を測定する。また、使用率演算部130は、トランス温度検知部182が検知したトランス162の温度および整流器温度検知部184が検知したダイオードスタック170の温度を測定する。さらに、使用率演算部130は、測定した通電時間および打点時間間隔を用いてインバータトランス160の使用率を演算する。
【0018】
使用率演算部130は、その内部に記憶部135を備える。記憶部135は、インバータトランス160を定格容量で稼働させたときの溶接電流の電流値とインバータトランス160の使用率との関係を示す等価電流曲線を記憶する。
【0019】
使用率演算部130は、使用率を演算する測定モードとして、「使用率測定モード」と「平均使用率測定モード」という2つの測定モードを備えている。使用率演算部130は、使用率測定モードが起動されているときには、電流検知部125が検知した溶接電流の通電時間および打点時間間隔を打点ごとに測定し、測定した通電時間および打点時間間隔を用いてインバータトランス160の使用率を演算する。また、使用率演算部130は、平均使用率測定モードが起動されているときには、電流検知部125が検知した溶接電流の通電時間および打点時間間隔を複数打点数ごとに、または一定時間ごとに測定し、測定した複数打点数ごとの、または一定時間ごとの平均通電時間または平均打点時間間隔を演算し、演算した平均通電時間または平均打点時間間隔を用いてインバータトランス160の使用率を演算する。
【0020】
判定部140は、電流検知部125によって検知された溶接電流の電流値および使用率演算部130によって演算されたインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かを、記憶部135に記憶されている等価電流曲線に照らして判定する。判定部140は、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係になければ制御部120の動作を継続させる。また、判定部140は、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあれば制御部120の動作を停止させる。
【0021】
判定部140は、記憶部135が記憶している等価電流曲線を用いて描いたグラフに、電流検知部125によって検知された溶接電流の電流値および使用率演算部130によって演算されたインバータトランス160の使用率の交点をプロットし、プロットした交点が等価電流曲線よりも下側に位置していれば、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にないと判定する。また、プロットした交点が等価電流曲線よりも上側に位置していれば、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあると判定する。
【0022】
記憶部135に記憶させる等価電流曲線は、現場の経験や実験によって得られた曲線である。等価電流曲線aは、一般的には、溶接電流(KA)×使用率α1/2の計算で求められる。使用率の計算は任意の電流値に換算することによって行なう。たとえば、自動車の溶接工程を考慮したときには、連続打点のトータルの使用率を考慮する必要があるためである。等価電流曲線(図5参照)を見ると、インバータトランス160を定格容量の範囲内で使用するには、使用率が小さければ大きな溶接電流を流すことができるが、使用率が大きくなるにつれて小さな溶接電流しか流せなくなることがわかる。等価電流曲線は、抵抗溶接機10の大きさや溶接の仕方によって異なる。各抵抗溶接機10には、その抵抗溶接機10に最適な等価電流曲線が用いられる。
【0023】
PC150は、使用率演算部130に接続される。電流検知部125によって検知された1打点ごとの溶接電流の電流値、通電時間および打点時間間隔、使用率演算部130によって演算されたインバータトランス160の使用率は、外部コンピュータであるPC150に送信される。PC150によって、溶接電流の電流値、通電時間、打点時間間隔およびインバータトランス160の使用率が記録および監視される。また、電流検知部125によって検知された溶接電流の電流値および使用率演算部130によって演算されたインバータトランス160の使用率は、PC150に送信される。PC150によって、記憶部135が記憶している等価電流曲線を用いて描いたグラフに、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランス160の使用率の交点がプロットされ、溶接電流の電流値およびインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かが監視される。さらに、温度検知部によって検知されたインバータトランス160の温度は、PC150に送信され、PC150によって、インバータトランス160の温度が記録および監視される。
【0024】
<抵抗溶接機制御装置の動作>
[使用率測定モード]
図2は、本実施形態の抵抗溶接機制御装置100の使用率測定モード時の動作フローチャートである。使用率測定モードの動作を図4および図5を参照しながら説明する。
【0025】
使用率演算部130において使用率測定モードが起動されているときには、使用率演算部130は、まず、電流検知部125が検知した、1打点ごとの溶接電流の電流値、溶接電流の通電時間および打点時間間隔を測定する(S100)。たとえば、図4に示すように、第1打点の溶接電流の電流値A1、第1打点の溶接電流の通電時間T11、第1打点の溶接電流の打点時間間隔T21、第2打点の溶接電流の電流値A1、第2打点の溶接電流の通電時間T12、第2打点の溶接電流の打点時間間隔T22、第3打点の溶接電流の電流値A3、第3打点の溶接電流の通電時間T13、第3打点の溶接電流の打点時間間隔T23、第4打点の溶接電流の電流値A1、第4打点の溶接電流の通電時間T14、第4打点の溶接電流の打点時間間隔T24、を打点ごとに測定する。
【0026】
次に、使用率演算部130は、S100のステップで測定した通電時間および打点時間間隔を用いてインバータトランス160の使用率を演算する(S101)。たとえば、図4の場合、第1打点におけるインバータトランス160の使用率α1は、α1=T11/T21、第2打点におけるインバータトランス160の使用率α2は、α2=T12/T22、第3打点におけるインバータトランス160の使用率α3は、α3=T13/T23、第4打点におけるインバータトランス160の使用率α4は、α4=T14/T24、のように求めることができる。
【0027】
次に、判定部140は、S100のステップで測定した1打点ごとの溶接電流の電流値、およびステップ101で演算した1打点ごとのインバータトランス160の使用率の関係が、インバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かを、記憶部135に記憶されている等価電流曲線に照らして判定する。つまり、溶接電流と使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かを判定する(S102)。
【0028】
たとえば、図5のように、第1打点の溶接電流の電流値がA1、使用率がα1であったとすると、判定部140は、記憶部135が記憶している等価電流曲線aを用いて描いたグラフに、電流値A1と使用率α1の交点をプロットし、プロットした交点が等価電流曲線aよりも下側に位置していれば、電流値A1と使用率α1の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にないと判定する(S102:NO)。定格容量を超える関係になければ、判定部140は、制御部120の動作を継続させ、S100およびS101のステップの処理を繰り返す。
【0029】
一方、たとえば、図5のように、第4打点の溶接電流の電流値がA1、使用率がα4であったとすると、判定部140は、記憶部135が記憶している等価電流曲線aを用いて描いたグラフに、電流値A1と使用率α4の交点をプロットし、プロットした交点が等価電流曲線aよりも上側に位置していれば、電流値A1と使用率α4の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあると判定する(S102:YES)。定格容量を超える関係にあれば、判定部140は、制御部120の動作を停止させ、異常を出力する(S103)。異常の出力は打点ごとに行なう。たとえば、第3打点の終了時に、定格容量を超える関係にあると判断されたときには、第4打点の溶接を行なう前に異常の出力がされる。異常の出力がされると、抵抗溶接機制御装置100は、警報音やパトライト(登録商標)により異常表示をすると共に、PC150などの外部の装置に異常信号を出力する。異常信号としては、接点信号や異常データを含み、異常信号は有線や無線で外部の装置に出力される。なお、異常の出力がされると、その出力がリセットされるまで、復帰できない。
【0030】
以上のように、使用率測定モードが起動されているときには、1打点ごとに、インバータトランス160の定格容量を超えるか、超えないかが判断される。したがって、抵抗溶接機10の定格容量を超えない範囲内で抵抗溶接機10を稼働させることができるため、インバータトランス160が備えるダイオード172、174を過熱から保護することができる。このため、ダイオードスタック170の寿命を延ばすことができ、ダイオードスタック170の交換頻度を減少させることができる。また、ダイオードスタック170の交換には多大の時間を要することから、溶接ラインの生産効率を向上させることができる。
【0031】
[平均使用率測定モード]
図3は、本実施形態の抵抗溶接機制御装置100の平均使用率測定モード時の動作フローチャートである。平均使用率測定モードの動作を図4および図5を参照しながら説明する。
【0032】
使用率演算部130において平均使用率測定モードが起動されているときには、使用率演算部130は、まず、電流検知部125が検知した、1打点ごとの溶接電流の電流値、溶接電流の通電時間および打点時間間隔を測定する(S200)。たとえば、図4に示すように、第1打点の溶接電流の電流値A1、第1打点の溶接電流の通電時間T11、第1打点の溶接電流の打点時間間隔T21、第2打点の溶接電流の電流値A1、第2打点の溶接電流の通電時間T12、第2打点の溶接電流の打点時間間隔T22、第3打点の溶接電流の電流値A3、第3打点の溶接電流の通電時間T13、第3打点の溶接電流の打点時間間隔T23、第4打点の溶接電流の電流値A1、第4打点の溶接電流の通電時間T14、第4打点の溶接電流の打点時間間隔T24、を打点ごとに測定する。測定されたこれらのデータは記憶部に一時的に記憶される。
【0033】
次に、使用率演算部130は、S200のステップで測定した通電時間および打点時間間隔を用いて、一定の打点数、または一定の時間における平均溶接電流の電流値、平均使用率を演算する(S201)。たとえば、一定の打点数が4打点に設定されているときには、図4の場合、平均溶接電流の電流値は、(A1×3+A3)/4であり、平均使用率は、(T11+T12+T13+T14)/(T21+T22+T23+T24)である。なお、一定の打点数ではなく一定の時間の場合でも考え方は同じである。
【0034】
次に、判定部140は、S201のステップで測定した一定打点数ごとの平均溶接電流の電流値、および一定打点数ごとのインバータトランス160の平均使用率の関係が、インバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かを、記憶部135に記憶されている等価電流曲線に照らして判定する。つまり、平均溶接電流と平均使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かを判定する(S202)。
【0035】
たとえば、図5のように、ある一定打点数の平均溶接電流の電流値がA5、平均使用率がα5であったとすると、判定部140は、記憶部135が記憶している等価電流曲線aを用いて描いたグラフに、電流値A5と平均使用率α5の交点をプロットし、プロットした交点が等価電流曲線aよりも下側に位置していれば、電流値A5と平均使用率α5の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にないと判定する(S202:NO)。定格容量を超える関係になければ、判定部140は、制御部120の動作を継続させ、S200およびS201のステップの処理を繰り返す。
【0036】
一方、たとえば、図5のように、ある一定打点数の平均溶接電流の電流値がA6、平均使用率がα6であったとすると、判定部140は、記憶部135が記憶している等価電流曲線aを用いて描いたグラフに、電流値A6と平均使用率α6の交点をプロットし、プロットした交点が等価電流曲線aよりも上側に位置していれば、電流値A6と平均使用率α6の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあると判定する(S202:YES)。定格容量を超える関係にあれば、判定部140は、制御部120の動作を停止させ、異常を出力する(S203)。異常の出力は一定打点数ごとに行なう。たとえば、ある一定打点数の終了時に、定格容量を超える関係にあると判断されたときには、次の打点の溶接を行なう前に異常の出力がされる。異常の出力がされた後の処理は、S103のステップの場合と同一である。
【0037】
以上のように、平均使用率測定モードが起動されているときには、一定の打点数ごとに、インバータトランス160の定格容量を超えるか、超えないかが判断される。したがって、抵抗溶接機10の定格容量を超えない範囲内で抵抗溶接機10を稼働させることができるため、使用率測定モードと同様に、インバータトランス160が備えるダイオード172、174を過熱から保護することができる。このため、ダイオードスタック170の寿命を延ばすことができ、ダイオードスタック170の交換頻度を減少させることができる。また、ダイオードスタック170の交換には多大の時間を要することから、溶接ラインの生産効率を向上させることができる。
【0038】
以上のように、本実施形態の抵抗溶接機制御装置100によれば、ダイオード172、174などの整流素子の劣化を阻止することができる。このため、ダイオード172、174の劣化が原因で、たとえば溶接ロボットのような抵抗溶接機10が突然停止し、ダイオードスタック170をインバータトランス160ごと交換するため、製造ラインの長時間の停止を余儀なくされるようなことを防止できる。また、インバータトランス160の寿命を延ばすことができ、予防保全が可能となるため、ダイオードスタック170の計画的な交換ができる。
【0039】
以上、本発明に係る抵抗溶接機制御装置の実施形態を述べたが、本発明の技術的範囲は、この実施形態の記載内容に限定されるものではない。したがって、本実施形態には明確に記載されていなくとも、特許請求の記載の範囲内において当業者によって改変されたものは本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10 抵抗溶接機、
100 抵抗溶接機制御装置、
110 整流部、
115 スイッチング部、
120 制御部、
125 電流検知部、
130 使用率演算部、
135 記憶部、
140 判定部、
150 PC(外部コンピュータ)、
160 インバータトランス、
162 トランス、
164 二次側巻線、
166 一次側巻線、
170 ダイオードスタック、
172、174 ダイオード(整流器)、
182 トランス温度検知部(温度検知部)、
184 整流器温度検知部(温度検知部)、
190 溶接ガン、
200 電極。
【要約】      (修正有)
【課題】溶接電流と使用率とを考慮して抵抗溶接機の動作を制御する。
【解決手段】インバータトランス160に流す溶接電流を制御する制御部120と、この溶接電流を検知する電流検知部125と、検知した溶接電流の通電時間および打点時間間隔を測定してインバータトランス160の使用率を演算する使用率演算部130と、インバータトランス160を定格容量で稼働させたときの溶接電流の電流値とインバータトランス160の使用率との関係を示す等価電流曲線を記憶する記憶部135と、検知された溶接電流の電流値および演算されたインバータトランス160の使用率の関係がインバータトランス160の定格容量を超える関係にあるか否かを等価電流曲線に照らして判定し、これらの関係定格容量を超える関係になければ制御部120の動作を継続させ、これらの関係が定格容量を超える関係にあれば制御部120の動作を停止させる判定部140と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5