特許第6688382号(P6688382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688382
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】メタロセン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   C07F17/00
【請求項の数】20
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2018-501346(P2018-501346)
(86)(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公表番号】特表2018-520181(P2018-520181A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】KR2016001640
(87)【国際公開番号】WO2017010648
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0100232
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515358285
【氏名又は名称】ハンファ ケミカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA CHEMICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ラン ファー ピィアオ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヘ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン スン イ
(72)【発明者】
【氏名】ドン ウク チョン
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01213295(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01152006(EP,A1)
【文献】 特開平10−139792(JP,A)
【文献】 特表平09−510994(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0045369(KR,A)
【文献】 Journal of Organometallic Chemistry,2001年,631,pp.29-35
【文献】 Journal of Organometallic Chemistry,2009年,694,pp.2581-2596
【文献】 Organometallics,2000年,19(26),pp.5744-5749
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素雰囲気下で、下記化学式(I)で表される化合物のうちの少なくとも一つの化合物Iと、前記化合物Iの100重量部に対して0.10重量部乃至0.55重量部の水素化反応触媒を攪拌する段階と、
下記化学式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1化合物を含むメタロセン化合物の混合物を得る段階とを含んでなる、メタロセン化合物の混合物の製造方法であって、
<化学式(I)>
【化1】


<化学式(1)>
【化2】


前記化学式(I)と前記化学式(1)中、それぞれ、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、
Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、
Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基のうちのいずれか一つであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基である、メタロセン化合物の製造方法。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
【請求項2】
前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれか一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、
前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれか一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環である、請求項1に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項3】
前記水素化反応触媒は、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)及びパラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つの金属を含む、請求項1に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項4】
前記水素化反応触媒は、前記パラジウム(Pd)が炭素担体に担持されたパラジウム担持触媒である、請求項3に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項5】
前記化合物Iと前記水素化反応触媒を攪拌する段階は、ハロゲン化されていない芳香族溶媒中で行われる、請求項1に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化されていない芳香族溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、テトラリン、アニソール、クメン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1−エチル−2−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン及び1−エチル−4−メチルベンゼンのうちの少なくとも一つである、請求項5に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項7】
前記メタロセン化合物の混合物は、下記化学式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2化合物をさらに含む、請求項1に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法:
<化学式(2)>
【化3】

前記化学式(2)中、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、
Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、
Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基のうちのいずれか一つであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基である。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
【請求項8】
前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれか一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、
前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれか一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環である、請求項7に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項9】
前記メタロセン化合物の混合物は前記化合物Iをさらに含む、請求項1、2、7及び8のいずれか一項に記載のメタロセン化合物の混合物の製造方法。
【請求項10】
下記化学式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1化合物と、下記化学式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2化合物と、を含む、メタロセン化合物の混合物
<化学式(1)>
【化4】

前記化学式(1)中、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、
Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、
Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基のうちのいずれか一つであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基である。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり、
<化学式(2)>
【化5】

前記化学式(2)中、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、
Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、
Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基のうちのいずれか一つであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基である。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである
【請求項11】
下記化学式(I)で表される化合物のうちの少なくとも一つの化合物Iをさらに含む、請求項10に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(I)>
【化6】

前記化学式(1)中、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、
Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、
Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基のうちのいずれか一つであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基である。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つである。
【請求項12】
前記第1化合物は、下記化学式(3)乃至(18)で表される化合物のうちの少なくとも一つである、請求項10に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(3)>
【化7】

<化学式(4)>
【化8】

<化学式(5)>
【化9】

<化学式(6)>
【化10】

<化学式(7)>
【化11】

<化学式(8)>
【化12】

<化学式(9)>
【化13】

<化学式(10)>
【化14】

<化学式(11)>
【化15】

<化学式(12)>
【化16】

<化学式(13)>
【化17】

<化学式(14)>
【化18】

<化学式(15)>
【化19】

<化学式(16)>
【化20】

<化学式(17)>
【化21】

<化学式(18)>
【化22】
【請求項13】
前記化合物Iは、下記化学式(19)乃至(34)で表される化合物のうちの少なくとも一つである、請求項11に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(19)>
【化23】

<化学式(20)>
【化24】

<化学式(21)>
【化25】

<化学式(22)>
【化26】

<化学式(23)>
【化27】

<化学式(24)>
【化28】

<化学式(25)>
【化29】

<化学式(26)>
【化30】

<化学式(27)>
【化31】

<化学式(28)>
【化32】

<化学式(29)>
【化33】

<化学式(30)>
【化34】

<化学式(31)>
【化35】

<化学式(32)>
【化36】

<化学式(33)>
【化37】

<化学式(34)>
【化38】
【請求項14】
前記第2化合物は、下記化学式(35)乃至(50)で表される化合物のうちの少なくとも一つである、請求項10に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(35)>
【化39】

<化学式(36)>
【化40】

<化学式(37)>
【化41】

<化学式(38)>
【化42】

<化学式(39)>
【化43】

<化学式(40)>
【化44】

<化学式(41)>
【化45】

<化学式(42)>
【化46】

<化学式(43)>
【化47】

<化学式(44)>
【化48】

<化学式(45)>
【化49】

<化学式(46)>
【化50】

<化学式(47)>
【化51】

<化学式(48)>
【化52】

<化学式(49)>
【化53】

<化学式(50)>
【化54】
【請求項15】
前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のうちのいずれか一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のうちのいずれか一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環である、請求項10に記載のメタロセン化合物の混合物
【請求項16】
前記第1化合物は、下記化学式(51)乃至(54)で表される化合物のうちの少なくとも一つである、請求項15に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(51)>
【化55】

<化学式(52)>
【化56】

<化学式(53)>
【化57】

<化学式(54)>
【化58】
【請求項17】
前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のうちのいずれか一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のうちのいずれか一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環である、請求項11に記載のメタロセン化合物の混合物
【請求項18】
前記化合物Iは、下記化学式(55)乃至(58)で表される化合物のうちの少なくとも一つである、請求項17に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(55)>
【化59】

<化学式(56)>
【化60】

<化学式(57)>
【化61】

<化学式(58)>
【化62】
【請求項19】
前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のうちのいずれか一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)のうちのいずれか一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環である、請求項10に記載のメタロセン化合物の混合物
【請求項20】
前記第2化合物は、下記化学式(59)乃至(62)で表される化合物のうちの少なくとも一つである、請求項19に記載のメタロセン化合物の混合物
<化学式(59)>
【化63】

<化学式(60)>
【化64】

<化学式(61)>
【化65】

<化学式(62)>
【化66】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロセン触媒で重合した樹脂は、従来のチーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒とは異なり、単一活性点で高分子が成長するので、狭い分子量分布を示し、機械的物性に優れるという利点を持つ。このような優れた特性に基づいて、メタロセン触媒はポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)産業でその領域を漸次拡大しつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新規なメタロセン化合物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態に係るメタロセン化合物の製造方法は、水素雰囲気下で、下記化学式(I)で表される化合物のうちの少なくとも一つの化合物Iと、前記化合物Iの100重量部に対して0.10重量部乃至0.55重量部の水素化反応触媒を攪拌する段階と、下記化学式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1化合物を含むメタロセン化合物を得る段階とを含んでなる。
<化学式(I)>
【化1】

<化学式(1)>
【化2】
【0005】
前記化学式(I)と前記化学式(1)中、Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数2乃至10のアルケニル基のうちのいずれか一つであり得る。
【0006】
前記化学式(I)と前記化学式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基であり得る。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。
【0007】
本発明の他の実施形態に係るメタロセン化合物は、下記化学式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1化合物を含む。
<化学式(1)>
【化3】
【0008】
前記化学式(1)中、Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり、Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のうちのいずれか一つであり、Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基(alkyl group)、炭素数2乃至10のアルケニル基(alkenyl group)のうちのいずれか一つであり得る。
【0009】
前記化学式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は下記(i)または(ii)を満足し、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基であり得る。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。
【0010】
その他の実施形態の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、新規なメタロセン化合物を提供することができる。
本発明に係る効果は以上で例示された内容によって制限されず、さらに様々な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1製造例に係るメタロセン化合物のH−NMR分析スペクトルである。
図2】本発明の第2製造例に係るメタロセン化合物のH−NMR分析スペクトルである。
図3】本発明の比較例1に係るメタロセン化合物のH−NMR分析スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の利点、特徴、及びそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現される。但し、本実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明は、請求項の範疇によってのみ定められる。
【0014】
たとえば、「第1の」、「第2の」などが様々な構成要素を述べるために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって制限されないのは勿論である。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。
【0015】
本明細書において、「アルキル基(alkyl group)」は、直鎖状または分枝状のアルキル基を含み、例えば、n−ブチル基、t−ブチル基などであり得る。本明細書において、「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環式アルキル基であって、例えば、シクロブチル(cyclobutyl)、シクロペンチル(cyclopentyl)、シクロヘキシル(cyclohexyl)などであり得る。本明細書において、「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素から一つの水素を除去した残基であって、例えば、フェニル(phenyl)などであり得る。本明細書において、「アルケニル基(akenyl group)」は、炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素から一つの水素を除去した残基であって、例えば、(メト)ビニル((meth)viyl、CH=CR−で表現でき、ビニルはRが水素であり、メトビニルはRがアルキル基などである。)、(メト)アリル((meth)allyl、CH=CR−CH−で表現でき、アリルはRが水素であり、メトアリルはRがアルキル基などである。)などであり得る。
【0016】
本発明の一実施形態に係る前記メタロセン化合物の製造方法は、下記化学式(I)で表される化合物のうちの少なくとも一つの化合物Iと、前記化合物Iの100重量部に対して0.10重量部乃至0.55重量部の水素化反応触媒を反応器内に投入し、水素雰囲気下で、前記化合物Iと前記水素化反応触媒との混合物を攪拌する段階と、下記化学式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1化合物を含むメタロセン化合物を得る段階とを含んでなる。
<化学式(I)>
【化4】

<化学式(1)>
【化5】
【0017】
前記化学式(1)及び前記化学式(I)中、M、Q、X、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は、それぞれ下記のとおりである。
【0018】
前記Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のうちのいずれか一つであり得る。前記Qは炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)うちののいずれか一つであり得る。前記Xはそれぞれ独立してハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基(alkyl group)、炭素数2乃至10のアルケニル基(alkenyl group)のうちのいずれか一つであり得る。
【0019】
前記R、前記R、前記R、前記R、前記R、前記R、前記R、前記R、前記R、前記R10、前記R11及び前記R12は下記(i)または(ii)を満足する。
(i)R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。
(ii)R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つのRとRn+1(nは1乃至11の整数である。)は、互いに連結され、炭素数1乃至4のアルキル基が置換された若しくは置換されていない炭素数3乃至15の単環または多環を形成し、この際、前記RとRn+1を除いた残りのRは、それぞれ独立して水素、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基及び炭素数6乃至14のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。
【0020】
前記R13及び前記R14は、それぞれ独立して炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数6乃至14のアリール基であり得る。
【0021】
前記(ii)において、炭素数1乃至4のアルキル基が置換されていない炭素数3乃至15の単環は、前記R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つの前記Rと前記Rn+1(nは1乃至11の整数である。)が互いに連結されて形成された一つの環であって、不飽和結合を含んでも含まなくてもよい。本明細書において、「芳香族系単環」は、不飽和結合を含む単環であり、「脂肪族系単環」は、不飽和結合を含まず、飽和結合で構成された単環である。また、炭素数1乃至4のアルキル基が置換されていない炭素数3乃至15の多環は、前記R(mは1乃至12の整数である。)のうち、隣接した2つの前記Rと前記Rn+1(nは1乃至11の整数である。)が互いに連結されて形成され、2つ以上の環が2つ以上の共通元素を共有して接合されている環であって、不飽和結合を含んでも含まなくもよい。本明細書において、「芳香族系多環」は、不飽和結合を含む多環であり、芳香族系単環が2つ以上の共通要素を共有して接合された構造、及び脂肪族系単環と芳香族系単環が2以上の共通要素を共有して接合された構造を含み、「脂肪族系多環」は、不飽和結合を含まず、飽和結合で構成された多環である。
【0022】
前記化合物Iは前記メタロセン化合物の製造のための出発物質である。前記第1化合物は、前記化合物Iの部分水素化反応によって生成できる。前記化合物Iは、ビスインデニル系メタロセン化合物であり、前記第1化合物は、インデニル−テトラヒドロインデニル系メタロセン化合物であることができる。前記インデニル−テトラヒドロインデニル系メタロセン化合物は、前記ビスインデニル系メタロセン化合物の部分水素化反応によって生成できる。前記水素化反応触媒は、前記化合物Iの部分水素化反応に必要な量で使用でき、例えば、前記化合物Iの100重量部に対して0.10重量部乃至0.55重量部の範囲内で使用できる。
【0023】
前記水素化反応触媒は、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)またはパラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つの金属を含むことができる。水素化反応は、炭素間の多重結合(二重結合、三重結合)、ニトロ基、またはカルボニル基に水素を添加する反応であって、水素の高い可燃性と爆発性のために、できる限り低い温度で水素を活性化して反応物に提供するために触媒を使用する。
【0024】
水素の吸着強度が強過ぎる遷移金属(Ti、Zr、Cr、Mo、Co、Feなど)は、触媒表面で活性化された水素が反応物に伝達され難くて水素化反応触媒に適さない。逆に水素の吸着強度が弱過ぎる遷移金属(Mg、Zn、Ag、Si、Pbなど)は、水素が十分に活性化されないため、水素化反応活性が低い。したがって、水素の吸着強度が適切であって活性化された水素の移動が容易なルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)が水素化反応触媒として好ましい。
【0025】
ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの貴金属触媒の他に、ニッケル(Ni)が水素化反応触媒として使用できる。但し、ニッケル(Ni)は、触媒活性が低いため、高い収率のためには貴金属触媒に比べて相対的に高温高圧工程が必要である。
【0026】
高価な貴金属触媒を最大限に触媒反応に活用するために、前述した白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)またはパラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つの貴金属を担体に担持して使用することができる。前記担体は、例えば、炭素、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどであり得るが、これらに限定されるものではない。好ましくは、パラジウム(Pd)が炭素担体に担持されたパラジウム担持触媒(Pd/C)が使用できる。前記パラジウム担持触媒(Pd/C)は、PtOに比べて高い収率で、第1化合物が含有されたメタロセン化合物を提供することができる。
【0027】
前記化合物Iと前記水素化反応触媒の撹拌は、ハロゲン化されていない芳香族溶媒内で行われることができ、前記ハロゲン化されていない芳香族溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、テトラリン、アニソール、クメン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1−エチル−2−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、1−エチル−4−メチルベンゼンなどであり、好ましくはアニソール、トルエン、ベンゼン、キシレンであり得る。
【0028】
前記化合物Iの部分水素化反応の程度、例えば、前記化合物Iの部分水素化反応の時間または前記水素化触媒の含有量などに応じて、前記メタロセン化合物には、未反応の化合物Iと下記化学式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2化合物のうちの少なくとも1つがさらに含まれ得る。前記第2化合物は、前記第1化合物への水素化反応の結果として生成された物質である。前記第2化合物は、ビステトラヒドロインデニル系メタロセン化合物であり得る。
<化学式(2)>
【化6】
【0029】
前記化学式(2)中、M、Q、X、R、R、R、R、R、R、R、R、R 、R10、R11、R12、R13、R14は、それぞれ前記化学式(1)及び前記化学式(I)で定義したとおりである。
【0030】
本発明の一実施形態に係るメタロセン化合物は前記第1化合物を含む。また、前記化合物Iの部分水素化反応の程度に応じて、前記メタロセン化合物は、前記第1化合物と前記第2化合物の組成物になることができるか、或いは第1化合物、前記第2化合物及び前記化合物Iの組成物になることができる。このとき、前記メタロセン化合物は、前記第1化合物と前記第2化合物を含むことができるか、前記第1化合物、第2化合物及び前記化合物Iを含むことができるか、或いは前記第1化合物と前記化合物Iを含むことができる。
前記メタロセン化合物は、助触媒化合物と一緒に使用されてポリオレフィンの重合触媒として使用できる。前記助触媒化合物は、公知の助触媒化合物であり得るが、例えば、ホウ酸塩(borate)系化合物、またはアルキルアルミンオキサン(例えば、メチルアルミンオキサン)、アルキルアルミニウム、アルキルホウ素などであり得る。但し、これらに限定されるものではない。
【0031】
例えば、前記メタロセン化合物と前記助触媒化合物のうちの少なくとも一つは、担体に担持された形態で使用できる。前記担体は、例えば、炭素、シリカ、アルミナ、ゼオライト、塩化マグネシウムなどであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記メタロセン化合物と前記助触媒化合物のうちの少なくとも一つを担持する方法としては、公知の物理的吸着方法または公知の化学的吸着方法が使用できる。
【0033】
前記物理的吸着方法は、例えば、前記メタロセン化合物が溶解された溶液を前記担体に接触させた後、乾燥させる方法、または前記メタロセン化合物と前記助触媒化合物が溶解された溶液を前記担体に接触させた後、乾燥させる方法、または前記メタロセン化合物が溶解された溶液を前記担体に接触させた後、乾燥させてメタロセン化合物の担持された担体を製造し、これとは別に、前記助触媒化合物が溶解された溶液を前記担体に接触させた後、乾燥させて助触媒化合物の担持された担体を製造した後、これらを混合する方法などであり得る。
【0034】
前記化学的吸着方法は、例えば、前記担体の表面に前記助触媒化合物をまず担持させた後、前記助触媒化合物に前記メタロセン化合物を担持させる方法、または前記担体の表面の官能基(例えば、シリカの場合にはシリカン表面の水酸基(−OH))と前記メタロセン化合物とを共有結合させる方法などであり得る。
【0035】
一方、前記第1化合物は、例えば、下記化学式(3)乃至(18)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。但し、これらに限定されるものではない。
<化学式(3)>
【化7】

<化学式(4)>
【化8】

<化学式(5)>
【化9】

<化学式(6)>
【化10】

<化学式(7)>
【化11】

<化学式(8)>
【化12】

<化学式(9)>
【化13】

<化学式(10)>
【化14】

<化学式(11)>
【化15】

<化学式(12)>
【化16】

<化学式(13)>
【化17】

<化学式(14)>
【化18】

<化学式(15)>
【化19】

<化学式(16)>
【化20】

<化学式(17)>
【化21】

<化学式(18)>
【化22】
【0036】
前記化合物Iは、例えば、下記化学式(19)乃至(34)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。但し、これらに限定されるものではない。
<化学式(19)>
【化23】

<化学式(20)>
【化24】

<化学式(21)>
【化25】

<化学式(22)>
【化26】

<化学式(23)>
【化27】

<化学式(24)>
【化28】

<化学式(25)>
【化29】

<化学式(26)>
【化30】

<化学式(27)>
【化31】

<化学式(28)>
【化32】

<化学式(29)>
【化33】

<化学式(30)>
【化34】

<化学式(31)>
【化35】

<化学式(32)>
【化36】

<化学式(33)>
【化37】

<化学式(34)>
【化38】
【0037】
前記第2化合物は、例えば、下記化学式(35)乃至(50)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。但し、これらに限定されるものではない。
<化学式(35)>
【化39】

<化学式(36)>
【化40】

<化学式(37)>
【化41】

<化学式(38)>
【化42】

<化学式(39)>
【化43】

<化学式(40)>
【化44】

<化学式(41)>
【化45】

<化学式(42)>
【化46】

<化学式(43)>
【化47】

<化学式(44)>
【化48】

<化学式(45)>
【化49】

<化学式(46)>
【化50】

<化学式(47)>
【化51】

<化学式(48)>
【化52】

<化学式(49)>
【化53】

<化学式(50)>
【化54】
【0038】
前記化学式(I)中、前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)のうちの少なくとも一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)のうちの少なくとも一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環であり得る。このとき、前記第1化合物は、例えば、下記化学式(51)乃至(54)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。
<化学式(51)>
【化55】

<化学式(52)>
【化56】

<化学式(53)>
【化57】

<化学式(54)>
【化58】
【0039】
前記化学式(I)中、前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)のうちの少なくとも一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)のうちの少なくとも一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環であり得る。このとき、前記化合物Iは、例えば、下記化学式(55)乃至(58)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。
<化学式(55)>
【化59】

<化学式(56)>
【化60】

<化学式(57)>
【化61】

<化学式(58)>
【化62】
【0040】
前記化学式(2)中、前記炭素数1乃至20のアルキル基は、少なくとも一つの炭素(C)が酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)のうちの少なくとも一つで置換された炭素数1乃至20のヘテロアルキル基であり、前記炭素数3乃至15の単環または多環は、少なくとも一つの炭素(C)が酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)のうちの少なくとも一つで置換された炭素数3乃至15の複素単環または複素多環であり得る。このとき、前記化合物2は、例えば、下記化学式(59)乃至(62)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。
<化学式(59)>
【化63】


<化学式(60)>
【化64】


<化学式(61)>
【化65】


<化学式(62)>
【化66】

【0041】
以下、前記メタロセン化合物の具体的な製造例と実験例によって本発明をより詳細に説明する。
[製造例1]
Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(Rac−dimethylsilyl(indenyl)(tetrahydroindenyl)zirconium dichloride)とRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(Rac−dimethylsilyl bis(tetrahydroindenyl)zirconium dichloride)を1:1の比で合成
<反応式1>
【化67】

【0042】
グローブボックス(Glove box)内で100mLのオートクレーブ(auotoclave)内にRac−ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド502mg(1eq.)とPd/C溶液を入れた。Pd/C溶液は、5wt%Pd/C11mg(0.5mol%)をトルエン25mLに分散させて調製した。オートクレーブ内に水素30barを注入した後、70℃で14時間攪拌した。反応終了後、オートクレーブ内の溶液を濾過し、トルエン25mLを用いて生成された遷移金属化合物結晶を溶かした後、濾過した。濾過された溶液を集めて真空下で溶媒を除去した後、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとの混合物を90%の収率で得た。
【0043】
[製造例2]
Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドを1:3の比で合成
<反応式2>
【化68】

【0044】
グローブボックス内で100mLのオートクレーブ内にRac−ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド502mg(1eq.)とPd/C溶液を入れた。Pd/C溶液は、5wt%Pd/C11mg(0.5mol%)をトルエン25mLに分散させて調製した。オートクレーブ内に水素30barを注入した後、70℃で16時間攪拌した。反応終了後、オートクレーブ内の溶液を濾過し、トルエン25mLを用いて生成された遷移金属化合物結晶を溶かした後、濾過した。濾過された溶液を集めて真空下で溶媒を除去した後、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとの混合物を90%の収率で得た。
【0045】
[比較例1]
Rac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
<反応式3>
【化69】

【0046】
グローブボックス内で100mLのオートクレーブ内にRac−ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド502mg(1eq.)とPd/C溶液を入れた。Pd/C溶液は、5wt%Pd/C59.5mg(2.5mol%)をトルエン25mLに分散させて調製した。オートクレーブ内に水素30barを注入した後、70℃で5時間攪拌した。反応終了後、オートクレーブ内の溶液を濾過し、トルエン25mLを用いて生成された遷移金属化合物結晶を溶かした後、濾過した。濾過された溶液を集めて真空下で溶媒を除去した後、淡緑色の固体化合物Rac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド0.91g(90%)を得た。
【0047】
[実験例1]
核磁気共鳴法を用いて製造例1、製造例2及び比較例のメタロセン化合物を分析した。図1は本発明の第1製造例に係るメタロセン化合物のH−NMR分析スペクトルである。図2は本発明の第2製造例に係るメタロセン化合物のH−NMR分析スペクトルである。図3は本発明の比較例に係るメタロセン化合物のH−NMR分析スペクトルである。
【0048】
図1を参照すると、H−NMR分析の結果、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの比率は約1:1であった。
【0049】
図2を参照すると、H−NMR分析の結果、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの比率は約1:3であった。
【0050】
図3を参照すると、H−NMR分析の結果、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの比率は約0:1であった。
【0051】
Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
H−NMR(CDCl,300MHz)7.71(d,1H),7.46(d,1H),7.40(t,1H),7.21(dd,1H),7.07(m,1H),6.37(d,1H),6.04(d,1H),5.66(d,1H),3.01−1.45(8H),1.01(s,3H),0.89(s,3H).
【0052】
Rac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
H−NMR(CDCl,300MHz)6.65(d,2H),5.50(d,2H),3.02−2.88(m,2H),2.76−2.50(m,4H),2.38−2.22(m,2H),2.04−1.88(m,2H),1.86−1.70(m,2H),1.64−1.42(m,4H),0.76(s,6H)
【0053】
[製造例3]
Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの1:1混合触媒のエチレン及び1−ヘキセンの共重合
ヘキサン(hexane)と1−ヘキセン(1−hexene)入りの連続攪拌式反応器にエチレンを4atmの圧力で供給し、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドとRac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの1:1混合触媒の存在下に80℃で共重合を行った。1−ヘキセン(1−hexene)の投入量を15mL、30mL、45mLに増加させながら液相工程でそれぞれ重合を行った。
【0054】
[比較例2]
Rac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド単一触媒のエチレン及び1−ヘキセンの共重合
ヘキサン(hexane)と1−ヘキセン(1−hexene)入りの連続攪拌式反応器にエチレンを4atmの圧力で供給し、Rac−ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド単一触媒の存在下に80℃で共重合を行った。1−ヘキセン(1−hexene)の投入量を15mL、30mL、45mLに増加させながら液相工程で重合を行った。
【0055】
[実験例2]
表1には[製造例3]での触媒活性と樹脂密度がまとめられており、表2には[比較例2]での触媒活性と樹脂密度がまとめられている。
【表1】

【表2】
【0056】
[製造例3]と[比較例2]との重合結果を比較すると、同じ重合条件で共重合体の量を少しずつ増やしながら重合したとき、[製造例3]の混合触媒が[比較例2]の単一触媒に比べてより良い触媒活性を示し、[製造例3]の樹脂が[比較例2]の樹脂に比べて同じ重合条件で低い樹脂密度を示した(表1及び表2を参照)。
【0057】
このことから、Rac−ジメチルシリル(インデニル)(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドを使用したときに重合活性にさらに優れるうえ、コモノマー混入(comonomer incorporation)にもさらに優れることが分かった。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解することができるであろう。よって、上述した実施形態は、あらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。
図1
図2
図3