(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ばね要素は、印加側の前記ブレーキパッドバックプレート上において、前記ブレーキパッドバックプレートの前記上側部の上方の前記ブレーキパッドバックプレートの各ばねホルダ上に位置する、請求項6に記載のディスクブレーキ。
前記保持要素は、前記ブレーキパッドバックプレートの径方向外向きに延在する突起の穴を、前記ブレーキディスク回転軸に対して平行な方向に通過するよう構成された、リフトピンであり、
前記パッド保持ばねは、前記リフトピンと前記印加側ブレーキパッドの前記上面との間に捕捉される、請求項11に記載のディスクブレーキ。
前記印加側のブレーキパッド張力印加要素及び前記ブレーキパッド張力印加要素リテーナは、ブレーキパッド設置作業前に、前記印加側ブレーキパッド上に設置される、請求項13に記載の方法。
前記後側ブレーキパッドは後側張力印加要素を備え、前記印加側ブレーキパッドの設置、配置、押圧及び係合作業に対応する作業によって前記ディスクブレーキ内に設置される、請求項17に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの解決策の背景に対して、コストの削減と同時に、ブレーキ及びブレーキ構成部品の寿命の延長に対する不変の要求が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明は、改善されたディスクブレーキを提供するという目的に基づくものである。
【0011】
更なる目的は、ディスクブレーキ用の改善されたブレーキパッドのセットを提供することである。
【0012】
本発明は、印加側ブレーキパッドが、少なくとも1つの関連するパッド保持ばねを有するディスクブレーキであって、上記パッド保持ばねが少なくとも1つのブレーキキャリアホーン上で支持され、ブレーキパッドに径方向外向きに作用する張力を印加する、ディスクブレーキを提供することによって、最初の目的を達成する。
【0013】
上記更なる目的は、印加側ブレーキパッドが少なくとも1つのパッド保持ばねを有する、車両用の上述のようなディスクブレーキ用のブレーキパッドのセットであって、上記パッド保持ばねは、印加側ブレーキパッドのバックプレートの一端を越えて側方に突出する少なくとも1つの圧力セクションを有する、ブレーキパッドのセットを提供することによって達成される。
【0014】
従って、車両用、特に商用車両用のディスクブレーキは:ブレーキディスク回転軸;少なくとも1つの印加側ブレーキパッド及び後側(反応側としても公知である)ブレーキパッド;各パッドスロットに少なくとも2つの上記ブレーキパッドを収容するブレーキキャリアであって、上記少なくとも1つの印加側ブレーキパッドは、関連するパッドスロット内にぴったりと保持される、ブレーキキャリア;並びにブレーキディスクにまたがり、摺動キャリパとして設計される、ブレーキキャリパを有する、ディスクブレーキを含む。印加側ブレーキパッドは、ブレーキキャリアのパッドスロットの1つのブレーキキャリアホーン上で少なくとも支持され、径方向外向きに作用する張力をブレーキパッドに印加する、少なくとも1つのパッド保持ばねを備える。
【0015】
径方向外向きに作用する張力により、ブレーキパッドをそのぴったりとフィットするホルダの中に引き入れることが可能となり、その結果、有利なことに傾斜した摩耗の低減が可能となる。
【0016】
張力の生成は、ブレーキパッドを嵌め込んだ後にパッドスロットのブレーキキャリアホーン上で支持される少なくとも1つのパッド保持ばねを有する、有利に単純な構造により可能である。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1つの印加側ブレーキパッドは、ブレーキキャリアのパッドスロット内で、ブレーキキャリアホーンの輪郭とパッドバックプレートを介してぴったりと係合する。従って、ブレーキディスク回転軸に対する両方の径方向における印加側ブレーキパッドの固定が可能となり、遊離である。
【0018】
この目的のために、更なる実施形態では、ブレーキキャリアホーンの輪郭がパッドバックプレートの輪郭に対応することが規定され、ここで各ブレーキキャリアホーンの輪郭のアンダカット表面は、パッドバックプレートの突起のアンダカット表面と、遊びを有さずに係合する。
【0019】
更なる実施形態では、少なくとも1つのパッド保持ばねは、パッドバックプレートに取り付けられる。従ってコンパクトなブレーキパッドが作製される。
【0020】
少なくとも1つのパッド保持ばねはここでは、パッドバックプレートの上側部に取り付けることができ、これにより空間を節約できる。
【0021】
更に別の実施形態では、少なくとも1つのパッド保持ばねは:中央セクション;アーム;圧力セクション;及び移行セクションを備え、上記中央セクションはパッドバックプレートの上側部に取り付けられ、上記移行セクションパッドバックプレートの上側部に支承され、パッドバックプレートの各上側部の一端の上記圧力セクションは、パッドバックプレートから側方に突出する。よってパッド保持ばねの効果的かつ単純なプレテンショニングを生成できる。パッド保持ばねは例えば、平坦なばね鋼であってよく、この平坦なばね鋼から上記パッド保持ばねが打抜かれて曲げられた部品として製造される。
【0022】
代替実施形態では、少なくとも1つのパッド保持ばねは:中央セクション;アーム;圧力セクション;及び中間セクションを備え、上記中央セクションは少なくとも1つの締結要素によってパッドバックプレートに取り付けられ、パッドバックプレートの各上側部の一端の上記圧力セクションはパッドバックプレートから側方に突出する。従って有利なことに、既存の締結要素を、修正せずに又は微修正するだけで使用できるようになる。
【0023】
この目的のために、少なくとも1つの締結要素は、クランプ様設計のものとすることができ、また横断セクション横断セクションパッド保持ばねの設置状態においてパッドバックプレートの開口を通って延在する横断セクションを有することができ、上記パッド保持ばねは、少なくとも1つの締結要素とパッドバックプレートの上側部との間に配設される。このようにしてパッド保持ばねがブレーキパッドのパッドバックプレートに係留するように配設されるため、これは有利である。ここでの更なる利点は、締結要素とパッドバックプレートとの間のパッド保持ばねの中央部のクリアランスであり、これにより、パッド保持ばねの均一な負荷が達成される。
【0024】
更なる実施形態では、パッド保持ばねは少なくとも1つのスリットを有し、上記スリットを通って少なくとも1つの締結要素のあるセクションが延在する。よって例えば、パッド保持ばねのスリットのために既存の打ち抜き工具を使用できる。更に、パッド保持ばね及び締結要素を一体として係留するように保持できる。
【0025】
更に別の実施形態では、パッド保持ばねは少なくとも1つの更なるスリットを有し、上記スリットを通ってパッドバックプレートの案内突起が延在する。このようにして、パッド保持ばねを、有利なことにパッドバックプレートの上側にセンタリングされた状態で保持でき、また圧力セクションとブレーキキャリアホーンとの接点接続を確保したまま、その可能な長手方向運動を案内できる。
【0026】
圧力セクションのうちの少なくとも1つがブレーキキャリアのパッドスロットの少なくとも1つのブレーキキャリアホーン上で支持される場合、ブレーキキャリアにおいて追加の手段を必要とすることなく、有利に単純な張力がブレーキパッド上で生成される。
【0027】
代替実施形態では、少なくとも1つのパッド保持ばねは、少なくとも1つのばねホルダによってパッドバックプレートの上側部に取り付けられる。従って、有利な重量の節約が可能となる。
【0028】
更なる実施形態では、少なくとも1つのばねホルダは少なくとも1つの保持要素を有し、上記少なくとも1つのパッド保持ばねは、少なくとも1つの保持要素とパッドバックプレートの上側部との間に、プレテンションをかけられた状態で配設及び保持される。これはプレテンショニングの簡単な生成をもたらす。
【0029】
更に別の実施形態では、少なくとも1つのパッド保持ばねは、少なくとも1つの中央セクション、移行セクション、少なくとも1つの圧力セクション及び少なくとも1つの支承セクションを備える。
【0030】
更なる実施形態では、少なくとも1つの支承セクションはパッドバックプレートの上側部に載置され、少なくとも1つの圧力セクションは、パッドバックプレートの上側部の一端においてパッドバックプレートから側方に突出する。これは有利にコンパクトな設計をもたらす。
【0031】
ブレーキパッドに対して作用する張力の有利に単純な生成のために、少なくとも1つの圧力セクションは、ブレーキキャリアのパッドスロットの少なくとも1つのブレーキキャリアホーン上で支持される。
【0032】
更なる実施形態では、少なくとも1つの保持要素はローラ、特にケーブルローラとして設計される。このタイプのローラの設計は、パッド保持ばねを側方に案内するという利点を有する。
【0033】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのパッド保持ばねは、ばねワイヤから製造されることが規定される。従ってパッド保持ばねは製造が簡単である。
【0034】
更なる好ましい実施形態は、2つのこのようなパッド保持ばねをパッドバックプレートの上側部の各端部に提供する。これは張力の生成の改善をもたらす。
【0035】
車両用の、特に商用車両用の上述のディスクブレーキ用のブレーキパッドのセットは、少なくとも1つの印加側ブレーキパッド及び少なくとも1つの後側ブレーキパッドを備える。印加側ブレーキパッドは、少なくとも1つの圧力セクションを有する少なくとも1つのパッド保持ばねを有し、上記少なくとも1つの圧力セクションは、印加側ブレーキパッドのパッドバックプレートの上側部の一端を越えて側方に突出する。
【0036】
本発明の他の目的、利点及び新規の特徴は、本発明の以下の発明を実施するための形態を添付の図面と合わせて考慮した場合に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0038】
このタイプのディスクブレーキは、特に商用車両において使用され、空気圧により作動されることが多い。このタイプのディスクブレーキのブレーキキャリパの一実施形態は、摺動キャリパの形態であり、また隣接するホイールリム付近の狭い構造空間内で使用される。
【0039】
「上部(top)」、「底部(bottom)」、「右(right)」、「左(left)」等といった用語は、図面の配向及び配置に関連する。
【0040】
このタイプのディスクブレーキは、特に商用車両において使用され、空気圧により作動されることが多い。このタイプのディスクブレーキのブレーキキャリパの一実施形態は、摺動キャリパの形態であり、また隣接するホイールリム付近の狭い構造空間内で使用される。
【0041】
図1は、例えば空気圧ディスクブレーキ1である、本発明によるディスクブレーキ1の第1の実施形態の斜視図を示す。
図2〜4は、本発明によるブレーキパッド3を有する
図1の本発明によるディスクブレーキ1のブレーキキャリア5の部分図を示す。より明瞭にするために、ブレーキディスク2は
図1には示していないが、例えば
図9に示されているように容易に想像できる。
図2は、ブレーキキャリア5内のブレーキパッド3の摩擦パッド3bの上面図を示す。
図3は、ブレーキパッド3に対して作用する力11、12を示す。
図4は、ブレーキキャリアホーン5’aと係合するブレーキパッド3の片側の拡大図を示す。
【0042】
ディスクブレーキ1は例えば、車両、特に商用車両のブレーキシステムの一部であり、ブレーキディスク回転軸2aを有するブレーキディスク2と、ブレーキディスク2の両側に配設された2つのブレーキパッド3とを備える。2つのブレーキパッド3のうち、「印加側(application−side)」ブレーキパッド3のみがここでは示されている。他方の「後側」ブレーキパッドは容易に想像でき、また印加側ブレーキパッドと同一であっても、又はこれとは異なるように成形されていてもよい。更にディスクブレーキ1は、ブレーキキャリア5、ブレーキキャリパ6及び印加デバイス(図示せず)を備える。
【0043】
ブレーキパッドはパッドバックプレート3aを有し、その上に摩擦パッド3bが取り付けられる。各ブレーキパッド3は、それぞれ2つのブレーキキャリアホーン5aと5’aとの間、及び5bと5’bとの間のパッドスロット15、16(
図5、6も参照)内において、ブレーキキャリア5に収容され、またブレーキキャリア5内で保持される。パッド保持クリップ(図示せず)は、ブレーキパッド3の上方、即ち径方向外側に位置決めされる。少なくともブレーキパッド3は、関連するパッドスロット15において、ブレーキディスク回転軸2aの方向に変位可能に案内される。正x方向における関連する車両の前進中、ブレーキディスク2は、そのブレーキディスク回転軸2aの周りで主回転方向10(
図3)に回転する。従ってブレーキキャリパ6の、
図1の左に位置する側は、入側と呼ばれ、ブレーキキャリパ6の右に位置する側は、出側と呼ばれる。従ってブレーキキャリアホーン5’a、5’bは入側ブレーキキャリアホーン5’a、5’bと呼ばれ、対向するブレーキキャリアホーン5a、5bは出側ブレーキキャリアホーン5a、5bと呼ばれる。そうでないことを明記しない限り、入側に割り当てられた構成部品及び組立体は、各符号のアポストロフィによって識別される。
【0044】
ブレーキキャリパ6はここでは摺動キャリパとして設計され、ブレーキディスク回転軸2aの方向の両端部に、接続セクション6c、6’cを介して互いに接続された印加セクション6a及び後方セクション6bを有する。ここでは、印加セクション6a及び後方セクション6bはそれぞれ、ブレーキディスク2の片側に、ブレーキディスク2に対して平行に配設され、接続セクション6cはブレーキディスク回転軸2aに対して平行なy方向に延在する。印加セクション6a及び後方セクション6bは接続セクション6cと共に、ブレーキパッド3を有するブレーキディスク2上に、設置、交換及び保守作業中にブレーキディスク2にアクセスするための開口を形成する。
【0045】
ブレーキキャリパ6の印加セクション6aは、ディスクブレーキ1の印加デバイスを受承する。印加デバイスは、ディスクブレーキ1を作動させるために機能し、また例えば圧縮空気シリンダを有する枢動ブレーキレバーを有することができる。これについてはここでは更に説明しない。
【0046】
ディスクブレーキ1の、ブレーキキャリパ6の印加セクション6aが印加デバイスと合わせて配設される側は、以下で印加側ZSと呼ばれる。ブレーキキャリパ6の後方セクション6bが配設される、ディスクブレーキ1の他方の側は、以下で後側RSと呼ばれ、これはまた反応側とも呼ばれる。これらの用語「印加側」及び「後側」並びにこれらに対する他の呼称は慣用のものであり、より良好な配向識別のために使用される。
【0047】
よって、印加側ZSに配置されたパッドバックプレート3aを有するブレーキパッド3は印加側ブレーキパッド3と呼ばれ、これに対向するブレーキパッドは対応する様式で後側ブレーキパッドと呼ばれる。
【0048】
印加側ブレーキパッド3は、ブレーキディスク回転軸2aの方向の印加力により、ブレーキ操作中に印加デバイスによる作用を受ける。図示していないが想像できる後側ブレーキパッドは、ブレーキキャリパ6の後方セクション6b内に収容され、このディスクブレーキ1が摺動ブレーキキャリパ6を有する場合は、後方セクション6bに対して全く運動しない
印加側ブレーキパッド3は、パッドバックプレート3aの上側部3dにパッド保持ばね7を備える。パッド保持ばね7(
図2)は:中央セクション7a;アーム7b、7’b;圧力セクション7c、7’c、及び移行セクション7d、7’dを備える。
【0049】
中央セクション7aは、パッドバックプレート3aの上側部3dにおいて、上側部3dの略中央に締結され、またパッドバックプレート3bの長手方向に(即ちブレーキパッド3の嵌合状態においてブレーキディスク2に対して平行に)両側へと、それぞれパッドバックプレート3dの長手方向の長さの4分の1に対応する長さまで延在する。中央セクション7aの締結は、例えば溶接、リベット留め、ねじ留め等により実施できる。
【0050】
各移行セクション7d、7’d(これを介して各アーム7b、7’bが中央セクション7aに接続される)は、中央セクション7aの各端部に取り付けられる。移行セクション7d、7’dは屈曲した設計のものであり、上記移行セクションは、パッドバックプレート3aの上側部3dに向かって凸状に成形される。このようにして、移行セクション7d、7’dはそれぞれ、パッドバックプレート3aの上側部3dに線状接触して載置される。この例では、ブレーキパッド3を嵌め込んだ状態において、線状接触はブレーキディスク回転軸2aに対して平行となる。当然のことながら、例えば単一点接触、多点接触、マルチライン接触等、他の接触形態も可能である。
【0051】
凸状移行セクション7d、7’dは中央セクション7aをまたいで存在し、その結果上記移行セクションは、中央セクション7aのばね力により上側部3dに押し付けられる。
【0052】
各移行セクション7d、7’dは各アーム7b、7’bに融合する。各アーム7b、7’bはパッドバックプレート3aの上側部3dの各端部まで延在し、ブレーキパッド3が嵌め込まれていないとき、各アーム7b、7b’の端部は、上側部3d上に載置される。
【0053】
各圧力セクション7c、7’cはアーム7b、7’bの各自由端部に取り付けられ、上記圧力セクション7c、7’cはそれぞれ、上側部3dの関連する端部を越えてパッドバックプレート3aの長手方向に突出し、中央セクション7aの移行セクション7d、7’d及びアーム7b、7’bのばね力によりパッドバックプレート3aの上側部3dに押し付けられる。
【0054】
各圧力セクション7c、7’cは、各圧力セクション7c、7’cの凸状側がパッドバックプレート3aに向かって下向きに面するような、凸状の設計のものである。圧力セクション7c、7’cの丸み付けは、移行セクション7d、7’dの丸み付けより小さい。
【0055】
この例では、パッド保持ばね7の幅は一定であり、またここではパッドバックプレート3aの厚さに略対応する。幅及び厚さは、ブレーキディスク回転軸2aの方向に延在する。当然のことながら、パッド保持ばね7の幅は、パッドバックプレート3aに対して異なるように及び/又は一定でない様式で延在することもできる。
【0056】
印加側パッドスロット15は、ブレーキキャリアホーン5a、5’によって両側で範囲を定められ、本実施形態では支柱5dによってその下側で閉鎖されている(支柱5dは省略してもよい)。各ブレーキキャリアホーン5a、5’aは、その略中心に、ブレーキディスク回転軸2aに対して垂直方向の各ラグ5c、5’cを有し、これらはパッドスロット15へと内向きに突出し、丸みを帯びたコーナを有する。アンダカット4、4’が各ラグ5c、5’cの下方に形成され、上記アンダカットはそれぞれ、各ブレーキキャリアホーン5a、5’aに向かうよう外向きに形成され、即ちブレーキディスク2に対して平行な平面においてパッドスロット15から開始して、各ラグ5c、5’cと共に輪郭を形成する。各アンダカット4、4’は、各ラグ5c、5’cの下側で、最初は支柱5dに対して平行に、各ブレーキキャリアホーン5a、5’aに向かって延在する。続いて上記各輪郭は、各ブレーキキャリアホーン5a、5’a内で直角に、停止部(rest)まで延在し、上記停止部はその一部が、各ラグ5c、5’cの下側のアンダカット4、4’の長さに略対応する距離にわたって、パッドスロット15の内側に向かって直角に延在する。上記停止部は支柱5dによって接続され、ここで支柱5dの上側部は停止部の表面より下方に、即ちブレーキディスク回転軸2aに向かって遠方に、配設される。代替実施形態では、ブレーキパッドバックプレート3aとラグ5c、5c’との間の同等の停止表面がより高い位置に、例えばラグ5c、5c’の上部内及びバックプレート内に向かって機械加工された平坦表面の、上記機械加工された平坦部分のすぐ上方の領域に配置される場合、上記停止部を省略してよい。
【0057】
印加側パッドバックプレート3aの各側は、各ブレーキキャリアホーン5a、5’aと相互作用し、また関連するブレーキキャリアホーン5a、5’aの各輪郭に対応する輪郭を有する。換言すると、各ラグ5c、5’cの形状が、パッドバックプレート3aの関連する側に形成され、パッドバックプレート3aの各矩形突起3c、3’cが形成され、上記突起はブレーキキャリアホーン5a、5’aの各関連するアンダカット4、4’に対応する。このようにして、印加側ブレーキパッド3は、パッドバックプレート3aによって、印加側パッドスロット15内の、ラグ5c、5’cとの輪郭及びアンダカット4、4’との輪郭内に、ぴったりと収容され、これにより印加側ブレーキパッド3はブレーキディスク回転軸2aの方向に変位可能に案内されるが、ブレーキディスク回転軸2aに対して垂直な方向に固定される。ここでは印加側パッドバックプレート3aの下側部の端部領域のみが、支柱5dの端部の各停止部上に載置される。
【0058】
図2では、ブレーキパッド3は、ブレーキキャリア5のパッドスロット15に挿入される。これはまず、ブレーキパッド3をパッドスロット15、16間の中間空間(
図5、6)に径方向に挿入することによって実施される。
【0059】
本実施形態では、設置中、パッド保持ばね7はまず、ブレーキキャリアホーン5a、5’a上で支持される。これによりブレーキパッド3は、ブレーキキャリア5のアンダカット4、4’に滑り込むよう位置合わせされる。続いて、ブレーキパッド3は、ブレーキキャリア5のパッドスロット15内で固定され、またブレーキキャリパ6によって、軸方向に、即ちブレーキディスク回転軸2aの方向に、ブレーキパッド3の作動位置へと押圧され得る。
【0060】
ブレーキパッド3のパッドバックプレート3aの側部の輪郭はここでは、ラグ5c、5’c及びアンダカット4、4’の輪郭と係合し、ぴったりとフィットした接触を形成する。その後パッド保持ばね7の圧力セクション7c、7’cの凸状側はそれぞれ、載置セクション8、8’(
図3)上への載置のための接触セクション9、9’によって、ブレーキキャリアホーン5a、5’の上側部に接触している。パッド保持ばね7はここでは印加側ブレーキキャリアホーン5a、5’a上で支持され、パッド保持ばね7のばね力に逆らって上向きに引っ張られる。
【0061】
このようにして両側で引っ張られたパッド保持ばね7は、ブレーキディスク回転軸2aから離れた方を向くように、ブレーキパッド3に対して外向きに径方向の張力を印加する。これにより、キャリアホーンラグ5c、5’cの下側部のアンダカット表面13、13’上のブレーキパッド突起3c、3’cのアンダカット表面14、14’による、ブレーキキャリアホーン5c、5’cに対するブレーキパッド3の遊びのない接触がもたらされる。
【0062】
特にディスクブレーキ1の単一ブレーキ印加スピンドル実施形態の場合の、(長手方向側、即ちブレーキパッド3の長辺にわたる)接線方向の傾斜した摩耗を低減するために、摩擦力11は、レバーの動力学により入側アンダカット表面13’、14’上で生成される。レバーの動力学は、レバーアーム11aを用いて、枢動点10aの周りにトルクを生成する。枢動点10aはここでは、アンダカット表面13と14の間の出側突起3cの上側コーナ縁部と、出側ブレーキキャリアホーン5aのラグ5cの下側コーナ縁部との間に接触して存在する。
【0063】
上記トルクは、入ってくるトルク(レバーアーム12aによる力12‐出側ブレーキキャリアホーン5a上のブレーキパッド3のパッドバックプレート3aの支持により、摩擦パッド3bの入側がより酷く摩耗する公知の効果)とは反対に作用し、従って(接線方向の)傾斜したパッドの摩耗を補償する。
【0064】
この効果を最適に使用するために、アンダカット表面13、14;13’、14’は、これらがブレーキパッド3の嵌合状態において遊びを有さずに係合するように設計される。
【0065】
図5〜7は、
図1の発明によるディスクブレーキ1の、
図2〜4のブレーキキャリア5を示す。
【0066】
図5は、印加側ZS(
図1)から分かるように、ブレーキキャリア5の締結側5eを見た、ブレーキキャリア5の斜視図を示す。ブレーキキャリアホーン5a、5’aを有する印加側パッドスロット15、及びパッドスロット15へと突出するラグ5c、5’cをはっきりと確認できる。後側パッドスロット16は、ラグを有しないブレーキキャリアホーン5b、5’bを備え、これらは支柱5dに対して平行な支柱5fによって接続される。
【0067】
図6は、出側アンダカット4を拡大して斜視図で示す。
【0068】
図7は、ブレーキキャリア5の締結側5eの正面図を示す。ブレーキキャリア5はその締結側5eによって、位置が固定された車両の締結セクションに取り付けられる。
【0069】
図8及び9は、本発明によるディスクブレーキ1の第2の実施形態を示す。部分断面図が
図8に示されており、ここで断面はブレーキディスク平面に対して平行なブレーキキャリア5を通る平面に延在する。
図9は、ディスクブレーキ1の第2の実施形態の斜視図を示す。
図10及び11は、
図8及び9のディスクブレーキ1の第2の実施形態の拡大部分図を示す。
【0070】
この第2の実施形態では、ディスクブレーキ1の構成部品は、ブレーキパッド3を除いて第1の実施形態における構成部品と同一である。従って、ブレーキパッド3の相違のみを以下で扱う。
【0071】
印加側ブレーキパッド3は本実施形態でも、摩擦パッド3bを有するパッドバックプレート3aを有する。パッドバックプレート3aは、ラグ5c、5’c及びアンダカット4、4’の輪郭に対応する輪郭を備える。これについては既に、第1の実施形態とあわせて上述した。
【0072】
パッドバックプレート3aは、少なくとも1つのパッド保持ばね70、70’それぞれのための各ばねホルダ17、17’を有する上側部3dの、パッドバックプレート3aの側部領域に形成される。各ばねホルダ17、17’は、パッドバックプレート3aから上向きに突出する突起17a、17’aを備える。各突起17a、17’aはプレート様であり、パッドバックプレート3aの厚さの略2倍だけ上向きに突出している。同様に、パッドバックプレート3aの長手方向における各突起17a、17’aの範囲は、パッドバックプレート3aの厚さのおよそ2倍に略対応する。各突起17a、17’aは、パッドバックプレート3aの長手方向に、パッドバックプレート3aの各側からパッドバックプレート3aの中心に向かってある距離だけオフセットして配設され、ここで上記距離は、パッドバックプレート3aの厚さに略対応する。
【0073】
各突起17a、17’aの、印加側ZSに面した後面は、印加側ZSに面したパッドバックプレート3aの後面と位置合わせされる。
【0074】
各保持要素18、18’は、各突起17a、17’aの摩擦パッド3bに面した側の中心に取り付けられる。本実施形態では、上記保持要素18、18’は、ブレーキディスク軸2aに固定して取り付けられた、又はブレーキディスク軸2aに対して平行に延在する軸の周りで回転できる、ローラである。上記ローラは、例えばケーブルローラとして設計できる。パッドバックプレート3aの上側部3dは、各保持要素18、18’の下方の領域に湾曲凹部を備え、各保持要素18、18’は上記湾曲凹部に対してある距離を置いて配設される。
【0075】
各パッド保持ばね70、70’は、各保持要素18、18’とパッドバックプレート3aの上側部3dとの間に配設され、またその形状、及び各保持要素18、18’と上側部3dの各凹部との間の構成によりプレテンションをかけられる。このプレテンショニングは、プレテンション下で各パッド保持ばね70、70’の一端がパッドバックプレート3aの上側部3dに載置されるという効果を有し、ここで、ブレーキパッド3が嵌め込まれていない場合、他方の端部は、パッドバックプレート3aの長手方向に上側部3dの各端部を越えて突出し、上側部3dの上記端部にプレテンションをかけられた状態で載置される。
【0076】
各パッド保持ばね70、70’は、中央セクション70a、移行セクション70b及び70c、少なくとも1つの圧力セクション71、71’並びに少なくとも1つの支承セクション72、72’を備える。
【0077】
出側パッド保持ばね70を以下で説明する。入側パッド保持ばね70’の構造はこれを鏡像的に反転させた設計である。
【0078】
移行セクション70b、70cは、中央セクション70aの各端部に取り付けられる。移行セクション70bは、パッドバックプレート3aの上側部3dの一端に面し、中央セクション70aを圧力セクション71に接続する。移行セクション70cは、中央セクション70aの他方の側に取り付けられ、上側部3dの中心に面し、中央セクション70aを支承セクション72に接続する。各移行セクション70b、70cは、上側部3dに関してこれに向かって湾曲するように成形される。
【0079】
圧力セクション71の自由端部の下側部は接触セクション9を有し、この接触セクション9は、ブレーキパッド3が嵌め込まれた状態において、ブレーキキャリアホーン5aの載置セクション8上に載置される。ブレーキパッド3が嵌め込まれていない場合、圧力セクション71は、パッドバックプレート3aの上側部3dの端部に載置される。
【0080】
支承セクション72の自由端部の下側部は、パッドバックプレート3aの上側部3dに持続的に載置される載置セクション72aを有する。
【0081】
中央セクション70aは、保持要素18とパッドバックプレート3aの上側部3dの凹部との間に配設され、ここで中央セクション70aは上側部3dと接触しない。これは、上記凹部と、ケーブルローラの形態の保持要素18の構成とによって可能となる。
【0082】
移行セクション70b、70cは中央セクション70aに及び、その結果圧力セクション71は中央セクション7aのばね力により、上側部3dの端部又はブレーキキャリアホーン5aに押し付けられる。同時に、このようにして引っ張られる中央セクション70aは、支承セクション72もまた上側部3dに押し付けられるという効果を有する。
【0083】
この例では、パッド保持ばね70、70’は、ばねワイヤ材料から製造される。この場合、端部は相応に屈曲し、これによって圧力セクション71、71’及び支承セクション72、72’を形成する。点状の又は/及び湾曲した接触セクションはここで各停止部表面と相互作用して生成される。
【0084】
ブレーキパッド3は、第1の実施形態で説明したように設置される。
【0085】
図12〜13は、本発明によるディスクブレーキ1の第3の実施形態の部分図を示し、ここで
図12は、印加側ZS(
図1)から見たパッドバックプレート3の作動側3jの図を示す。
図13は、ブレーキディスク2から見た図を示す。
図14は、
図12〜13の第3の実施形態によるブレーキパッド3のパッドバックプレート3aの、作動側3jに向かう斜視図である。
図15は、
図12〜13の実施形態のパッド保持ばね7の斜視図である。
図16は、
図12〜13の例示的実施形態のブレーキパッド3の、
図15のパッド保持ばね7の締結要素20の斜視図を示す。
【0086】
この第3の実施形態では、ディスクブレーキ1の構成部品は、ブレーキパッド3を除いて第1の実施形態における構成部品と同一である。従って、ブレーキパッド3の相違のみを以下で扱う。
【0087】
印加側ブレーキパッド3は本実施形態でも、摩擦パッド3bを有するパッドバックプレート3aを有する。パッドバックプレート3aは、ラグ5c、5’c及びアンダカット4、4’の輪郭に対応する、既に上で説明した輪郭を備える。
【0088】
第1の実施形態とは対照的に、パッド保持ばね7はその中心において、締結要素20によって締結セクション3fに締結される。締結要素20については以下で詳述する。
【0089】
この第3の実施形態では、パッド保持ばね7は、中央セクション7a;アーム7b、7’b;圧力セクション7c、7’c及び中間セクション7e、7’eを含む。
【0090】
中央セクション7aは、締結要素20の一部を受承するための、パッド保持ばね7の長手方向に延在するスリット7fを備える。スリット7fは、パッド保持ばね7の仮想中心線に延在するのではなく、摩擦パッド3bに向かう方向にオフセットされ、かつパッド保持ばね7の仮想中心線に対して平行に延在する。上記仮想中心線は、パッド保持ばね7の長手方向に延在する。
【0091】
第1の実施形態とは対照的に、中央セクション7aの長さは、第1の実施形態のパッド保持ばね7の中央セクション7aの長さの略半分に対応する。
【0092】
各アーム7b、7’bは、中央セクション7aの各端部に取り付けられる。第1の実施形態とは対照的に、アーム7b、7’bは大幅に長く、例えばそれぞれ中央セクション7aの長さの2倍である。
【0093】
各アーム7b、7’bはその自由端部の領域に、それぞれのスリット7g、7’gを備える。スリット7g、7’gはそれぞれ、パッドバックプレート3aの上側部3dで案内突起3g、3’gを受承する役割を果たす。
【0094】
各圧力セクション7c、7’cは、中間セクション7e、7’eを介してアーム7b、7’bの各自由端部に取り付けられる。各中間セクション7e、7’eは、バックプレート3aの上側部3dに面するように下向きに、ここではそれぞれのアーム端部から鈍角に屈曲する。この目的のために、各圧力セクション7c、7’cは、中間セクション7e、7’eのそれぞれの自由端部上で反対方向に上向きに突出する。圧力セクション7c、7’cはそれぞれ、パッドバックプレート3aを越えて側方に延在し、またパッドバックプレート3aから各ブレーキキャリアホーン5a、5’aの範囲に略対応する距離を置いてパッドバックプレート3aの長手方向に突出する。
【0095】
締結セクション3fはパッドバックプレート3aの上側部3dから突出し、またパッドバックプレート3aを通ってブレーキディスク回転軸2aの方向に延在する連続開口19を有する。パッドバックプレート3aの、摩擦パッド3bが取り付けられる側では、
図13で確認できるように、開口19の領域の摩擦パッド3bは下方に、開口19に隣接するように凹む。
【0096】
締結要素20(
図16参照)はここでは、クランプのように設計され、プレート20aを備え、このプレート20aの長手方向側部には、台形側壁20b、20cがそれぞれ概ね直角に取り付けられている。台形側壁20b、20cは平行に延在し、横断セクション20dによって、その短い下辺において接続される。横断セクション20は、一方の側壁20bに対して直下雨に取り付けられ、また例えば溶接シームである接続部20eにおいて他方の側壁20cに接続される。横断セクション20dはプレート20aに対して平行に延在し、パッド保持ばね7を設置した状態においては、開口19を通って延在する。接続部20eは、設置の後に形成される。
【0097】
設置状態において、一方の台形側壁20bは、パッド保持ばね7の長手方向に延在するスリット7fを通して案内される。パッド保持ばね7の中央セクション7aの幅広の長手方向セクションはここでは、側壁20bと側壁20cとの間、及びプレート20aの下側部とパッドバックプレート3aの締結セクション3fの上側部3dとの間に、ブレーキディスク回転軸2aに関して径方向の一定の遊びを有して配設される。
【0098】
パッドバックプレート3aの上側部3dにパッド保持ばね7を設置した状態において、案内突起3g、3’gはそれぞれ、パッド保持ばね7のスリット7g、7’gを通って延在し、各アーム7b、7’bの上側部から突出する。パッド保持ばね7の圧力セクション7c、7’cの下側部の接触セクション9、9’はそれぞれ、既に上で説明したように、ここでは関連する載置セクション8、8’と接触している。
【0099】
更に、本実施形態では、パッドバックプレート3aは、斜角3i、3’iをそれぞれ有する上側斜角付きコーナセクション3e、3’eを有する。各斜角3i、3’iは、凹部3h、3’hを経由して、各案内突起3g、3’g及びパッドバックプレート3aの上側部3dに融合する。凹部3h、3’hは各斜角3i、3’iから、最初は直線セクション内に延在し、上記直線セクションはその後、各案内突起3g、3’g及び上側部3dへの移行部分において対応する丸み部分を有する。
【0100】
図17〜18は、本発明によるディスクブレーキ1の第4の実施形態の部分図を示す。ここで
図17は、印加側ZS(
図1)から見た、パッドバックプレート3の作動側3jの図を示す。
図18は、ブレーキディスク2からの、摩擦パッド3bを有しないパッドバックプレート3aの図を示す。
図19は、摩擦パッド3bの側から見た、
図17〜18の第4の実施形態のブレーキパッド3のパッドバックプレート3aの斜視図を示す。摩擦パッド3bはここでは図示されていないが、容易に想像できる。
図20は、
図17〜18による実施形態のパッド保持ばね7の斜視図を示す。
【0101】
第3の実施形態とは対照的に、パッドバックプレート3aは開口19を有する締結セクション3fを有しないが、案内突起3gと案内突起3’gとの間で連続的な上側部3dを有する。それぞれ案内突起3g、3’gの近傍に配設された2つの開口19、19’が、この第4の実施形態では設けられる。上記開口19、19’の互いからの距離はここでは、案内突起3g、3’gの互いからの距離より短い。
【0102】
第3の例示的実施形態とは対照的に、第4の例示的実施形態のパッド保持ばね7は、中央セクション7aの端部領域において、各締結要素20、20’によりパッドバックプレート3aに締結される。締結要素20、20’は同一の設計を有する。これに関する説明は既に上で行った。
【0103】
この第4の実施形態では、パッド保持ばね7は:中央セクション7a;アーム7b、7’b;圧力セクション7c、7’c;及び中間セクション7e、7’eを含む。
【0104】
中央セクション7aはその端部領域に、上述のように、締結要素20、20’の一部を受承するための、パッド保持ばね7の長手方向に延在する各スリット7f、7’fを備える。
【0105】
第3の実施形態とは対照的に、中央セクション7aの長さは、第3の例示的実施形態のパッド保持ばね7の中央セクション7aの長さの3倍に略対応し、案内突起3g、3’g間の距離より幾分短い。
【0106】
アーム7b、7’bはそれぞれ、中央セクション7aの各端部に取り付けられる。アーム7b、7’bは、第3の実施形態のアーム7b、7’bの長さの半分に略対応する長さを有する。
【0107】
各アーム7b、7’bはその自由端部に、それぞれのスリット7g、7’gを備える。スリット7g、7’gはそれぞれ、案内突起3g、3’gを受承する役割を果たす。
【0108】
圧力セクション7c、7’cはそれぞれ、第3の実施形態とあわせて上述したように、各中間セクション7e、7’eを介してアーム7b、7’bの各自由端部に取り付けられる。
【0109】
パッド保持ばね7は、中央セクション7aがパッドバックプレート3aの上側部3dから一定の距離を置いて延在するように、締結要素20、20’によってパッドバックプレート3aに取り付けられる。
【0110】
ブレーキパッドのセットは、少なくとも1つの印加側ブレーキパッド3及び少なくとも1つの後側ブレーキパッドを有する。上記ブレーキパッドはまた、異なる長さのものとすることができる。
【0111】
本発明は上述の例示的実施形態によって制限されることはなく、むしろ添付の請求項の範囲内で修正できる。
【0112】
例えば、ブレーキパッド3の簡単な設置のために、ブレーキキャリア5を、径方向溝21と呼ばれるものを用いて実現できることが考えられる。溝21は関連するラグ5c、5’cの片側と各ブレーキキャリアホーン5a、5’aの縁部との間で、各ブレーキキャリアホーン5a、5’の方向に伸びる。これは
図6に示されている。
【0113】
図21〜22は、空間的制約が厳しい環境において所望のレベルのパッド保持ばね予圧の維持を提供する、別の実施形態を示す。本発明において、パッドの設置後は常に、ブレーキパッド、特に搭載済みブレーキパッド上の持ち上げ力を維持することが望ましい。例えば、200〜250N程度の持ち上げ力を維持することが望まれ得る。この力を、小さい利用可能な偏向範囲、例えば4mm内に維持しなければならない場合、50〜65N/mmのばね定数が要求される。しかしながら本発明のタイプの市販のディスクブレーキは、2mm程度の組み立て公差を有する場合がある。このような大きな公差は、ばね予圧が100〜125Nも変動し得る(即ち所望の200〜250Nの予圧範囲の50Nの公差を超える変動)、50〜65N/mmのばね定数を有するパッド保持ばねをもたらし得る。あるいは、より低いばね定数を有するパッド保持ばね、例えば20N/mmばねを用いた場合、ばねは、所望の200〜250N持ち上げ力を生成するために、10〜12.5mmだけ偏向しなければならない。このような偏向距離は、空間的制約が存在する環境において許容できない。
【0114】
図21は、空間的に制約される環境において所望のブレーキパッド持ち上げ力を提供できる構成の斜視図である。本実施形態では、印加側ブレーキパッド3がブレーキキャリアマウントパッドスロットに最初に据え付けられた後、パッド保持ばね7は印加側ブレーキパッドバックプレート3aの上面3d上に配置され、ここでパッド保持ばねスロット7g、7g’は、バックプレート突起3g、3g’とキャリアマウントホーン5a、5a’上に載置されたパッド保持ばね外側端部7c、7c’とを係合する。パッド保持ばね7は続いて、リフトピン75をパッド保持ばね7のアイスリット7h(
図22の断面立面図で視認可能)を通って径方向外向きに延在するブレーキパッドバックプレート3aのアイリング3kに挿入できるまで、ブレーキパッドの上面3dに向かって径方向内向きに加圧される。リフトピン75を設置した後と、これは例えばコッターピン76で所定の場所に固定されてよい。好ましくは、リフトピン75を挿入するのに十分な距離だけパッド保持ばね7を圧縮するのに必要な力は、上記所望の持ち上げ力予圧、この例では200〜250Nの圧縮力に等しい。
【0115】
パッド保持ばね7を圧縮するために径方向内向きに押圧する作業は、設置器具としてパッド保持クリップ10を用いることにより促進され得る。例えば、パッド保持クリップ10が存在する実施形態では、上記クリップの端部をキャリパ印加側6aの凹部に部分的に挿入し、その後パッド保持ばね7の上面に対して下向きに回転させてよい。パッド保持ばね7とキャリパ印加側6aの凹部との間の比較的短い距離と比較して、パッド保持クリップ10の長さによって提供される機械的利点により、ばね7は、リフトピン75をわずかな挿入力で又は挿入力なしで挿入できる点まで、比較的容易に圧縮できる。ピン75を設置すると、ピン75がばねに印加されている予圧力を吸収するため、パッド保持クリップ10が解放され得る。続いてパッド保持クリップ10をディスクブレーキに取り付ける場合、これはキャリパ印加側6aの凹部から除去されて、ブレーキが動作可能であるときにこれが設置されることになる位置へと再配向できる。
【0116】
この構成により、パッド保持ばね予圧は、ばねとブレーキパッドバックプレートとマウントホーンとの間に直接的に確立され、これによって組み立て公差の蓄積によって引き起こされる予圧の変動を実質的に低減又は排除する。この構成はまた、20N/mm程度のばねレートを有するパッド保持ばねの使用を可能とする。というのは、200〜250Nの予圧を確立するために必要な10〜12.5mmの偏向に対して、ブレーキパッド設置中のばねの圧縮中に適応できる、即ち組み立てられたブレーキの動作中にこのような大きなばね偏向に適応できる必要がなくなるためである。このばね予圧構成の更なる便益としては、
図21及び22に示すように、リテーナクリップは他の目的のために依然として存在してよいものの、ブレーキパッド持ち上げ構造の一部としてのリテーナクリップへの依存が排除されることが挙げられる。これらの図では、保持クリップ10は、アイリング3k及びリフトピン76を収容するためのスロット10bを備える。
【0117】
当業者であれば本発明の精神及び実質を組み込んだ本開示の実施形態の上述のような修正を思いつくことができるため、本発明は添付の請求項及びその均等物内に全てを含むと解釈されるものとする。