(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688406
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】高選択性促進輸送膜およびオレフィン/パラフィン分離のためのその使用
(51)【国際特許分類】
B01D 69/00 20060101AFI20200421BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20200421BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20200421BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/08 20060101ALI20200421BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
B01D69/00 500
B01D71/68
B01D71/64
B01D71/16
B01D71/40
B01D71/38
B01D71/52
B01D71/44
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/08
B01D71/02
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-561934(P2018-561934)
(86)(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公表番号】特表2019-504767(P2019-504767A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】US2017036265
(87)【国際公開番号】WO2017214221
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年8月15日
(31)【優先権主張番号】62/348,112
(32)【優先日】2016年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チュンチーン
(72)【発明者】
【氏名】リスキー,カール・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ホーウィー・オー
(72)【発明者】
【氏名】カーンズ,ニコル・ケイ
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0215045(US,A1)
【文献】
特開2016−041415(JP,A)
【文献】
特開昭49−048603(JP,A)
【文献】
特表2004−501125(JP,A)
【文献】
米国特許第9327248(US,B1)
【文献】
欧州特許出願公開第3428142(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 − 71/82
C07B 31/00 − 61/00
63/00 − 63/04
C07C 1/00 −409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
99〜1モル%の1種以上のC2〜C8オレフィン類および1〜99モル%の1種以上のC1〜C8パラフィン類を含む気体状の供給流の処理方法であって、
親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記ナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜の供給側に前記気体状の供給流を送り、これにより前記供給流中の80モル%以上のオレフィンが前記膜を通過するようにすること、及び、
90モル%以上のオレフィンおよび10モル%以下のパラフィンを含む浸透流を回収すること、を含み、
前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーが前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層と異なり、
前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーがアルギン酸であり、前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーがキトサンまたはヒアルロン酸である、
方法。
【請求項2】
親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記ナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、及び、前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩、を含み、
前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーが前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層と異なり、
前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーがアルギン酸であり、前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーがキトサンまたはヒアルロン酸である、
促進輸送膜。
【請求項3】
前記ナノ多孔性支持膜が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホンとポリイミドのブレンド、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、および酢酸セルロースと三酢酸セルロースのブレンドからなる群から選択される親水性のポリマーを含む、請求項2に記載の膜。
【請求項4】
前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩が、銀塩類または銅塩類である、請求項2に記載の膜。
【請求項5】
親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記ナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、及び、前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜の作製方法であって、該方法は、
(a)相反転膜キャスティングプロセスまたは紡糸作製プロセスにより、前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜を作製すること、ここで、前記親水性ポリマーは、相反転膜キャスティングプロセスまたは紡糸作製プロセス中またはそれらプロセスの終わりに、前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に導入される、
(b)前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面に無孔性の親水性ポリマー薄層を塗布すること、及び
(c)前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の無孔性の親水性ポリマー薄層を金属塩水溶液に浸漬することによって前記促進輸送膜を作製すること、
を含み、
前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーが前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層と異なり、
前記ナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーがアルギン酸であり、前記ナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーがキトサンまたはヒアルロン酸である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2016年6月9日に提出された米国特許出願第62/348112号に対する優先権を主張するものであり、すべての記載内容が本明細書に参考として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
170を超えるSeparex(商標)膜システムが、石油増進回収法における天然ガスからの酸性ガスの除去および水素精製などのガス分離用途のために世界中に設置されてきた。天然ガスから二酸化炭素を除去する2つの新規なSeparex(商標)膜(Flux+およびSelect)が、イリノイ州デス・プレーンズのハネウェルUOP社(Honeywell UOP)によって近年実用化された。これらのSeparex(商標)渦巻き型膜システムは、現在、天然ガスアップグレーディングにおける膜市場のリーダーである。しかしながら、これらの膜は、オレフィン/パラフィン分離に対しては優れた性能を持っていない。新たな安定性のある高選択性膜の開発が、プロピレン/プロパン分離およびエチレン/エタン分離などのオレフィン/パラフィン分離用膜の、今後の成功のために重要である。
【0003】
プロピレンおよびエチレンなどの軽質オレフィンは、化学、石油化学、石油精製工業での多くの異なるプロセスにおいて、様々な原料から副生成物として生成される。様々な石油化学製品の工程には、オレフィンおよび他の飽和炭化水素が含まれている。典型的には、これらの工程は、水蒸気分解ユニット(エチレン製造)、接触分解ユニット(自動車用ガソリン製造)、またはパラフィン類の脱水素からなる。
【0004】
現在、オレフィン成分およびパラフィン成分は、深冷蒸留によって分離されているが、成分の相対揮発度が低いため、費用が掛かり、多くのエネルギーを消費する。多額の設備投資とエネルギーコストが掛かることで、この分離分野における幅広い研究が活発化になっていて、エネルギー消費の少ない膜分離は、魅力的な代替手段と考えられている。
【0005】
原理的には、膜ベースの技術は、プロピレン/プロパン分離およびエチレン/エタン分離などの従来のオレフィン/パラフィン分離方法と比較して、設備コストが低くエネルギー効率性が高いという両方の利点を有する。主に4種類の膜が、オレフィン/パラフィン分離用として報告されている。これらは、促進輸送膜、ポリマー膜、混合マトリックス膜、無機膜である。錯化剤として銀イオンを用いることのある促進輸送膜、すなわちイオン交換膜は、高いオレフィン/パラフィン分離選択性を持つ。しかしながら、担体の被毒または損失による化学安定性の低さ、高コスト、および流速の低下により、現在、促進輸送膜の実用的な用途が限られている。
【0006】
従来のポリマー膜でパラフィン類からオレフィンを分離するのは、ポリマー膜材料の選択性および透過性が不十分であり、それに加えて可塑化の問題により実用化に成功していない。より透過性のあるポリマーは、一般的に、より透過性のないポリマーよりも選択性が低い。オレフィン/パラフィン分離を含む、あらゆる種類の分離において、透過性と選択性の間には一般的に二律背反の関係(いわゆる、ポリマーの上限値)が存在している。近年、かなりの研究努力が、この上限によって課された限界の克服に向けられてきた。様々なポリマーおよび技術が使用されてきたが、膜の選択性向上の観点からは、多くの成果は見られなかった。
【0007】
金属イオンを導入した高いオレフィン/パラフィン選択性の促進輸送膜を開発するため、さらなる努力がなされてきた。銀(I)陽イオンもしくは銅(I)陽イオンなどの金属イオンを、高多孔質膜支持層の最上部の緻密な無孔性ポリマーマトリックス層に導入する(いわゆる固定化担体促進輸送膜)、または高多孔質支持膜の細孔に直接的に導入する(いわゆる支持液促進輸送膜)ことによって、オレフィンのπ結合によって可逆的な金属陽イオン錯体の形成をもたらす一方で、金属陽イオンおよびパラフィンの間には相互作用が生じなくなり、オレフィン/パラフィン分離の高い選択性が実現する。固定化担体促進輸送膜もしくは支持液促進輸送膜への水、可塑剤の添加、またはオレフィン/パラフィン供給流の加湿は、通常、適度なオレフィン透過性および高オレフィン/パラフィン選択性を得るために必要である。固定化担体促進輸送膜の性能は、支持液促進輸送膜よりも格段に安定しており、固定化担体促進輸送膜は、支持液促進輸送膜よりも金属陽イオン担体の損失の影響を受けにくい。
【0008】
Pinnauらは、テトラフルオロホウ酸銀を導入したポリエチレンオキシドを含有する緻密なポリマー電解質固定化担体促進輸送膜について開示した(米国特許第5,670,051号を参照)。Herreraらは、銀陽イオンキレート化キトサンの固定化担体促進輸送膜を用いたオレフィン/パラフィン混合物の分離プロセスについて開示した(米国特許第7,361,800号を参照)。Herreraらは、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、またはポリカーボネートから作製されるミクロ細孔の支持膜表面のキトサン層コーティングについて開示した。
【0009】
Feiringらは、ペルフルオロ化環式または環化可能なモノマーおよび強酸の高フッ素化ビニルエーテル化合物から合成された銀(I)陽イオン交換フッ素化コポリマーを含有する新規な促進輸送膜について開示した(米国特許第2015/0025293号を参照)。
【0010】
前記文献に開示されている複合促進輸送膜は、支持膜として限外ろ過膜または精密ろ過膜を含む。オレフィン/パラフィン分離用の固定化担体促進輸送膜作製のための支持膜としてポリエーテルスルホン膜などの相対的に親水性のナノ多孔性ポリマー膜を使用することは、文献に報告されていない。特に、固定化担体促進輸送膜作製のため、支持膜のスキン層表面に10nm未満の平均孔径を有する相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜を使用することは、前記文献に報告されていない。
【0011】
新規で安定かつ高性能で高選択性の促進輸送膜の開発は、プロピレン/プロパンの分離およびエチレン/エタンの分離などのオレフィン/パラフィンの分離に依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜、該膜の作製方法、ならびにオレフィン/パラフィンの分離、特にC3=/C3およびC2=/C2分離のための該膜の使用方法を提供する。
【0013】
本発明に開示される相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜の作製に使用される相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、ポリエーテルスルホン(PES)、PESとポリイミドのブレンド、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、および酢酸セルロースと三酢酸セルロースのブレンドからなる群から選択される相対的に親水性のポリマーを含むが、これに限定されるわけではない。本発明に記載されている相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、前記膜のスキン層表面に10nm未満の平均孔径を有する。本発明に記載されている相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、平板(渦巻き型)または中空糸形状のいずれかを有する、スキン層が形成された非対称の統合膜または薄膜複合体(TFC)膜のいずれかであればよい。
【0014】
本発明に記載された促進輸送膜の相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、キトサン、カルボキシメチルキトサンナトリウム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール、ポリカルボフィルカルシウム、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、カラギーナン、リグノ硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物からなる親水性ポリマーの群から選択することができるが、これに限定されるわけではない。
【0015】
本発明に記載された、膜表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む乾燥した相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、50℃で、30〜100psigの10%CO2/90%CH4混合ガス供給圧力下で、800〜10,000GPUの二酸化炭素透過性を持つが、二酸化炭素/メタン選択性を持っていない。
【0016】
本発明に記載された前記促進輸送膜の相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層は、キトサン、カルボキシメチルキトサンナトリウム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール、ポリカルボフィルカルシウム、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、カラギーナン、リグノ硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物を含む親水性ポリマーの群から選択される親水性ポリマーを含むが、これに限定されるわけではない。本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーおよび本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、同じ親水性ポリマーまたは異なる親水性ポリマーから選択することができる。好ましくは、本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層および本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、異なる親水性ポリマーから選択される。一例として、本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーはキトサンであり、本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーはアルギン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸ナトリウムである。
【0017】
本発明に記載された前記促進輸送膜の支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層および前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩は、硝酸銀(I)または塩化銅(I)などの銀塩類または銅塩類から選択されることが好ましい。
【0018】
オレフィン/パラフィンの透過実験の結果から次のことが分かった。すなわち、本発明に記載された新規な促進輸送膜を適切に設計することが、オレフィン/パラフィン分離における非常に高いオレフィン/パラフィン選択性、高いオレフィン透過性、および高い透過安定性を達成するのに重要である。本発明は、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む、新規な促進輸送膜の新たな作製方法について開示する。該方法は、a)相反転膜キャスティングプロセスまたは紡糸作製プロセスにより、支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜を作製する工程であって、前記親水性ポリマーを前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔に導入することが、膜キャスティングもしくは紡糸作製プロセスの終わりに0.05重量%〜5重量%の範囲の濃度の親水性ポリマー水溶液をニップすることによって、または、膜キャスティングもしくは紡糸作製プロセス中に親水性ポリマーをゲル化水タンクに投入することによって行なわれる工程;b)0.2重量%〜10重量%の範囲の濃度の親水性ポリマーの水溶液を用いた浸漬コーティングまたはメニスカスコーティングなどの任意の塗布方法により、スキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜のスキン層表面に無孔性の親水性ポリマー薄層を塗布する工程;c)1分から48時間の一定時間、0.2M〜10Mの範囲の濃度の硝酸銀(AgNO
3)などの金属塩水溶液に、スキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜のスキン層表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層を浸漬することで新規な促進輸送膜を作製する工程を含む。
【0019】
本発明は、99〜1モル%の1種以上のC2〜C8オレフィン類および1〜99モル%の1種以上のC1〜C8パラフィン類を含む気体状の供給流を処理するプロセスを提供する。該プロセスは、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜の供給側に前記気体状の供給流を送り、これにより前記供給流中の80モル%以上のオレフィンが前記促進輸送膜を通過するようにすることと、90モル%以上のオレフィンおよび10モル%以下のパラフィンを含む浸透流の回収とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、処理時間中のUFTM−1促進輸送膜の透過性及び純度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
膜技術は、オレフィン/パラフィン混合物の分離にとって非常に重要である。しかしながら、膜技術によるオレフィン/パラフィン分離に関する多大な研究努力がなされてきたにもかかわらず、膜を使用するオレフィン/パラフィン分離の実用化は、これまで報告されてこなかった。
【0022】
本発明は、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜、該膜の作製方法、ならびに、オレフィン/パラフィン分離、特にC3=/C3およびC2=/C2分離のための該膜の使用を提供する。
【0023】
本発明に開示された新規な促進輸送膜の作製に使用される相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、ポリエーテルスルホン(PES)、PESとポリイミドのブレンド、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、および酢酸セルロースと三酢酸セルロースのブレンドからなる群から選択される相対的に親水性のポリマーを含むが、これに限定されるわけではない。本発明に記載された相対的に親水性のポリマーは、エーテル基またはヒドロキシル基を含む非水溶性ポリマーである。本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、前記膜のスキン層表面に10nm未満の平均孔径を有する。本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、平板(渦巻き型)または中空糸形状のいずれかを有する、スキン層が形成された非対称の統合膜または薄膜複合体(TFC)膜のいずれかであってもよい。
【0024】
本発明に記載された促進輸送膜の相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、キトサン、カルボキシメチルキトサンナトリウム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール、ポリカルボフィルカルシウム、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、カラギーナン、リグノ硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物を含む親水性ポリマーの群から選択することができるが、これに限定されるわけではない。
【0025】
本発明に記載された、支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層は、キトサン、カルボキシメチルキトサンナトリウム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール、ポリカルボフィルカルシウム、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、カラギーナン、リグノ硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物を含む親水性ポリマーの群から選択される親水性ポリマーを含むが、これに限定されるわけではない。本発明に記載された、支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーおよび本発明に記載された前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、同じ親水性ポリマーまたは異なる親水性ポリマーから選択することができる。好ましくは、本発明に記載された前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーおよび本発明に記載された前記支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、異なる親水性ポリマーから選択される。一例として、本発明に記載された、支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーはキトサンであり、本発明に記載された前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーはアルギン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸ナトリウムである。
【0026】
本発明に記載された前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層に導入され、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩は、硝酸銀(I)または塩化銅(I)などの銀塩類または銅塩類から選択されることが好ましい。
【0027】
本発明は、本発明の新規な促進輸送膜作製のため、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーの導入について教示する。相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、前記金属塩化合物と前記親水性ポリマーのヒドロキシル基またはカルボン酸基などの親水性官能基との間の相互作用によって、その孔径を縮小し、本発明に記載された微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層に導入された金属塩を安定化させ、一定の供給圧力下において前記促進輸送膜からの金属塩の損失を防ぐ。加えて、前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜と前記支持膜に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層との間の接着性を向上する。膜キャスティングもしくは紡糸作製プロセスの終わりに親水性ポリマーの水溶液をニップすることによって、または、膜キャスティングもしくは紡糸作製プロセス中に親水性ポリマーをゲル化水タンクに投入することによって、前記親水性ポリマーを本発明の相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔に導入することができる。
【0028】
本発明は新規な促進輸送膜作製のための相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜の使用方法を開示する。本発明は、新規な促進輸送膜作製のため、前記膜のスキン層表面に10nm未満の平均孔径を有する相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜作製用のPESなどの相対的に親水性のポリマーの使用をさらに教示する。本発明の微細孔のナノ多孔性支持膜作製のため、PESなどの相対的に親水性のポリマーを使用することで、前記支持膜および前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーとの間の相互作用が向上する。本発明の微細孔のナノ多孔性支持膜作製用のPESなどの相対的に親水性のポリマーを使用することによって、前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜および前記支持膜に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層との間の接着性も向上する。本発明の金属塩を含む新規な促進輸送膜作製のため、支持膜表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む微細孔のナノ多孔性支持膜を使用することで、前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層および前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーから、前記支持膜の微細なナノ細孔下の粗孔へと金属塩担体が容易に拡散かつ移動すること(圧力下において促進輸送膜から金属塩担体が損失する原因となる)を防ぐ。したがって、本発明に開示される新規な促進輸送膜は、オレフィン/パラフィン分離に対してオレフィン/パラフィンの高選択性および高安定性をもたらす。本発明に記載された、膜表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む乾燥した相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜は、50℃で、30〜100psigの10%CO
2/90%CH4混合ガス供給圧力下で、800〜10,000GPUの二酸化炭素透過性を持つが、二酸化炭素/メタン選択性を持っていない。
【0029】
本発明の前記支持膜のスキン層表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層により、新規な促進輸送膜の欠陥が除去され、金属塩化合物と前記無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーのヒドロキシル基またはカルボン酸基などの親水性官能基との間の相互作用によって前記支持膜のスキン層表面に被覆された親水性ポリマー層に導入された金属塩を安定化させる。本発明の前記支持膜のスキン層表面の無孔性の親水性ポリマー薄層は、浸漬コーティングまたはメニスカスコーティングなどの任意の塗布法によって形成することができる。
【0030】
本発明の促進輸送膜の支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層および前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩の銀陽イオンなどの金属陽イオンは、オレフィンのπ結合によって可逆的な金属陽イオン錯体を形成する一方で、本発明に記載された新規な促進輸送膜の金属陽イオンおよびパラフィンの間には相互作用が生じない。それ故に、本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜は、オレフィン/パラフィン分離に対する高選択性および高透過性の両方を備えている。
【0031】
オレフィン/パラフィンの透過実験の結果から次のことが分かった。すなわち、本発明に記載された新規な促進輸送膜を適切に設計することが、オレフィン/パラフィン分離における非常に高いオレフィン/パラフィン選択性、高いオレフィン透過性、それに高い透過安定性を達成するのに重要である。本発明は、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜の新たな作製方法を開示する。該方法は、a)相反転膜キャスティングプロセスまたは紡糸作製プロセスにより、支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜を作製する工程であって、前記親水性ポリマーを前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔に導入することが、膜キャスティングもしくは紡糸作製プロセスの終わりに0.05重量%〜5重量%の範囲の濃度の親水性ポリマー水溶液をニップすることによって、または、膜キャスティングもしくは紡糸作製プロセス中に親水性ポリマーをゲル化水タンクに投入することによって行なわれる工程;b)0.2重量%〜10重量%の範囲の濃度の親水性ポリマー水溶液を用いた浸漬コーティングまたはメニスカスコーティングなどの任意の塗布方法により、スキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜のスキン層表面に無孔性の親水性ポリマー薄層を塗布する工程;c)1分から48時間の一定時間、0.2M〜10Mの範囲の濃度の硝酸銀(AgNO
3)などの金属塩水溶液に、スキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜のスキン層表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層を浸漬することで新規な促進輸送膜を作製する工程を含む。相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜を作製するために、工程a)では、PESなどの相対的に親水性ポリマー、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)および1,3−ジオキソランの混合物などの溶媒、アルコールまたは炭化水素などの非溶媒、グリセリンなどの添加剤を含む膜キャスティング液または紡糸液が、本発明では使用される。n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、またはn−オクタンなどの炭化水素の非溶媒およびグリセリンなどの孔形成剤を膜キャスティング液または紡糸液に添加することは、前記相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜の膜スキン層表面に10nm未満の平均孔径を有する微細なナノ細孔を形成するための重要な要素である。
【0032】
本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜は、所望のオレフィン/パラフィン用途に適した任意の好適な形状に作製することができる。例えば、該膜は中空糸、チューブ、平板などの形状であることができる。本発明の促進輸送膜は、膜およびセパレーターの形状に対して任意の好適な構成でセパレーター内に組み込むことができ、この膜の未透過側および透過側に並流、向流、直交流の供給流をもたらすことができる。一代表的実施形態では、本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜は、30μm〜400μm厚の平板の渦巻き形モジュールである。別の代表的実施形態では、本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜は、数千、数万、数十万、またはそれ以上の中空糸またはチューブが並列に密に充填された形状の中空糸モジュールである。一実施形態では、各糸は、外径200μm〜700mm、肉厚30μm〜200μmを有する。作動中、供給流は本発明に記載された促進輸送膜の第一の表面に接触し、浸透流は本発明に記載された促進輸送膜を透過し、膜から取り除かれる。本発明に記載された促進輸送膜を透過しない非浸透流もまた、膜から取り除かれる。別の実施形態では、本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜は、30μm〜400μmの範囲の厚さを持つ平板状であることができる。
【0033】
本発明は、本発明の相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な促進輸送膜を用いて、例えば、水蒸気分解、接触分解、パラフィン類の脱水素化などにより生成された99〜1モル%の1種以上のC2〜C8オレフィン類および1〜99モル%の1種以上のC1〜C8パラフィン類を含む気体流などのパラフィンおよびオレフィン分離プロセスを提供する。該プロセスは、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜の供給側に前記気体状の供給流を送り、これにより前記供給流中の80モル%以上のオレフィンが前記促進輸送膜を通過するようにすることと、90モル%以上のオレフィンおよび10モル%以下のパラフィンを含む浸透流の回収とを含む。該プロセスでは、オレフィンに対して高透過性かつ高選択性の、本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む新規な安定した高選択性の促進輸送膜を使用し、これによりパラフィンよりさらに高い透過率でオレフィンを該膜に透過させることが可能となる。本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜は、特定用途に適した多様な形状を取ることができる。例えば、前記膜は平板、中空チューブまたは中空糸などの形状であることができる。これに関連して、本明細書で検討された前記プロセスの様々な実施形態は、ポリプロピレン排気流または流動接触分解(FCC)のオフガス流などからオレフィンを回収するための、オレフィン精製用膜/蒸留混合ユニットであるC2およびC3分離器と置き換えるために使用することができる。前記プロセスは、ポリマーグレードのプロピレン生成にも使用することができ、これにより、従来の蒸留と比較して大幅にエネルギー、設備、および稼働コストが削減される。
【0034】
本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む前記促進輸送膜を用いたオレフィン/パラフィン分離プロセスは、オレフィン/パラフィン供給流が前記膜の第一の表面に接触することにより開始する。例えば、それぞれ、前記オレフィン類はプロピレンまたはエチレンを含むことができ、前記パラフィン類はプロパンまたはエタンを含むことができる。オレフィン/パラフィン供給流は、膜分離用途に応じて、第一のオレフィン濃度および第一のパラフィン濃度を有する。例えば、プロパンの脱水素化プロセスでは、35質量%のプロピレンを含む供給流が得られるのに対して、FCCユニットからの供給流は、通常、75質量%のプロピレンを含む。オレフィン/パラフィン供給流の流速および温度は、所望の用途に好適な値である。次に、前記膜の第二の表面から該膜を通って浸透流が流される。オレフィン/パラフィン分離のため、本発明に記載された相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む安定な高選択性の促進輸送膜は、パラフィン類よりもオレフィン類に対して、より選択性が高いため、前記浸透流は、パラフィン濃度よりもさらにオレフィン濃度が高い。一代表的実施形態では、前記浸透流中のオレフィン濃度は、95.5〜99.9質量%である。さらに、幾つかのパラフィン類は、前記膜を通じて透過することができるが、該浸透流は、前記供給流中のパラフィン濃度よりもさらにパラフィン濃度が低い。次いで、前記浸透流は、前記膜の第二の表面から除去することができる。前記浸透流が膜を通過すると、該膜を透過しなかった非浸透流または残留物は、前記膜の第一の表面から除去される。前記非浸透流は、前記供給流中のオレフィン濃度よりもさらに低く、前記浸透流濃度よりさらに低いオレフィン濃度を有する。また、前記非浸透流は、前記供給流中のパラフィン濃度よりもさらに高いパラフィン濃度を有する。
【0035】
実施例
以下の実施例は、本発明の1つ以上の好ましい実施形態を説明するために提供されるが、それらの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲内の以下の実施例には多くの変形形態が可能である。
【0036】
実施例1
UFTM−1促進輸送膜
プロピレン/プロパン選択性の高い促進輸送膜(UFTM−1)は、支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜および硝酸銀を含浸した該膜の表面に被覆された他の親水性ポリマーから作製した。非対称の相対的に親水性の微細孔ナノ多孔性ポリエーテルスルホン支持膜は、相反転法によって作製した。重量%換算で、ポリエーテルスルホン(BASF社E6020P)18〜25%、N−メチルピロリドン60〜65%、1,3−ジオキソラン10〜15%、グリセリン1〜10%、n−デカン0.5〜2%を含む膜キャスティング液を、ナイロン繊維上にキャストし、10分間1℃の水浴中に浸漬することによってゲル化させ、次いで、5分間85℃の湯浴中で熱処理した。アルギン酸ナトリウムの希釈水溶液を、非対称の相対的に親水性の微細孔ナノ多孔性ポリエーテルスルホン含浸支持膜の表面にニップ法によって塗布した。前記膜スキン層表面の微細なナノ細孔内部にアルギン酸ナトリウムを含む含浸膜に、希釈した酢酸水溶液中にキトサンを溶解させた溶液を塗布し、次いで、50℃で乾燥し、前記膜表面に無孔性のキトサン薄層を形成した。次いで、前記膜を塩基性の水酸化ナトリウム溶液で処理し、水で洗浄し、前記膜スキン層表面に微細なナノ細孔内部のアルギン酸と、前記膜表面に無孔性のキトサン薄層とを含むポリエーテルスルホン支持膜を形成した。次いで、前記膜を硝酸銀水溶液(H
2O中に3M)に含浸した。次いで、前記含浸膜を、50℃、791kPa(100psig)下で、加湿した(相対湿度80〜100%)プロピレン/プロパン(C3=/C3)ガス混合物(70%C3=/30%C3)によって試験した。UFTM−1の性能は、表1に示される。UFTM−1は、3時間の試験後、99.9%を超えるプロピレン純度の浸透流に対して39.8GPUのプロピレン透過性および1000を超えるプロピレン/プロパン選択性を示した。UFTM−1膜を、さらに、33%C3=と残りがC3の供給流によって試験し、その結果を前記供給流中に70%のプロピレンを有するものと比較した。比較結果を表2に示す。UFTM−1膜は、33%C3=と残りがC3の供給流で非常に高いプロピレン透過性を示し、より低いプロピレン/プロパン選択性を示した。
【0037】
比較例1
COMP−FTM−1促進輸送膜
アルギン酸ナトリウムのニップ溶液を塗布しない以外は実施例1と同じ方法で促進輸送膜(COMP−FTM−1)を作製した。前記ポリエーテルスルホン支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部にアルギン酸を含まない場合、COMP−FTM−1膜は、3時間の試験後、45.3GPUのプロピレン透過性と67.6の低いプロピレン/プロパン選択性を示し、この選択性は時間の経過とともに減少し続けた。
【0038】
実施例2
UFTM−2促進輸送膜
キトサンコーティング層にキトサンのニップ溶液を追加で塗布した以外は、実施例1と同じ方法で促進輸送膜(UFTM−2)を作製した。前記膜では、3時間の試験後、プロピレン/プロパン選択性が152、透過性はUFTM−1と類似した39.6GPUを示した。
【0039】
実施例3
UFTM−3促進輸送膜
アルギン酸ナトリウム溶液を支持膜表面の塗布に使用し、その後アルギン酸ナトリウムでニップした以外は実施例1と同じ方法で促進輸送膜(UFTM−3)を作製した。このアルギン酸ナトリウム塗布膜を、希釈した酢酸溶液で処理し、水で洗浄し、硝酸銀に含浸した。
【0041】
前記膜を791kPa(100psig)の70%C3=/30%C3ガス圧下、50℃、80〜100%の相対湿度、200cc/分で非浸透流を流して試験した。結果は3時間の試験後に報告されたものである。1GPU=1x10
−6cm
3(STP)/cm
2・s・cmHg。
【0043】
前記膜を50℃、791kPa(100psig)の圧力下、80〜100%の相対湿度、200cc/分で非浸透流を流して試験した。結果は3時間の試験後に報告されたものである。1GPU=1x10
−6cm
3(STP)/cm
2・s・cmHg。
【0044】
比較例2
COMP−FTM−2促進輸送膜
市販のミクロ細孔の限外ろ過ポリスルホン支持膜(DSS社GR51PP)に希釈した酢酸水溶液中にキトサンを溶解させた溶液を塗布し、次いで室温で乾燥した。次いで、前記膜を塩基性の水酸化ナトリウム溶液で処理し、水で洗浄し、硝酸銀水溶液(H
2O中に3M)に含浸した。次いで、前記含浸COMP−FTM−2膜を、50℃、791kPa(100psig)下で、加湿した(相対湿度80〜100%)プロピレン/プロパン(C3=/C3)ガス混合物(70%C3=)によって試験した。UFTM−1との比較結果を表3に示す。前記ミクロ細孔のポリスルホン支持膜に作製された膜は、1GPU未満と言う非常に低い透過性を示し、透過速度が低かったために選択性を測定できなかった。
【0046】
前記膜は、50℃、791kPa(100psig)の圧力下、80〜100%の相対湿度、200cc/分で非浸透流を流して試験した。結果は3時間の試験後に報告されたものである。1GPU=1x10−
6cm
3(STP)/cm
2・s・cmHg。
1低過ぎて測定不可。
【0047】
比較例3
膜スキン層表面の細孔内部に親水性ポリマーを含まない(すなわち、ニップ法によって細孔中に親水性ポリマーが導入されていない)COMP−FTM−1およびCOMP−FTM−2促進輸送膜は、時間の経過とともに前記細孔から銀担体が損失し、プロピレン透過性およびプロピレン/プロパン選択性が徐々に悪くなる一方で、本発明に記載された非対称の相対的に親水性の微細孔ナノ多孔性ポリエーテルスルホン支持膜の膜スキン層表面の微細なナノ細孔内部のアルギン酸、前記膜表面の無孔性のキトサン薄層、およびキトサンコーティング層と微細なナノ細孔内部のアルギン酸ポリマーに導入された硝酸銀(I)を含むUFTM−1促進輸送膜は、120時間を超える安定性を示し、プロピレン生成物のプロピレン透過性も純度も目立った低下が見られなかった。99.7%を超えるプロプレン純度が、35GPU超のプロピレン透過性を持つ浸透流で維持された。時間を軸とした浸透流のプロピレン透過性および純度のプロット図を
図1に示す。
【0048】
特定の実施形態
特定の実施形態について以下に記載するが、当然のことだが、本説明は例示を目的としており、前述の説明および添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0049】
本発明の第一の実施形態は、99〜1モル%の1種以上のC2〜C8オレフィン類および1〜99モル%の1種以上のC1〜C8パラフィン類を含む気体状の供給流を処理するプロセスである。該プロセスは、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜の供給側に前記気体状の供給流を送り、これにより前記供給流中の80モル%以上のオレフィンが前記膜を通過するようにすることと、90モル%以上のオレフィンおよび10モル%以下のパラフィンを含む浸透流の回収とを含む。本発明の一実施形態は、本段落の第一の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記浸透流は、オレフィン/パラフィン分離器に送達され、99モル%超のオレフィンを含む生成物流を生成する。本発明の一実施形態は、本段落の第一の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記浸透流は、99.5モル%超のオレフィンを含み、オレフィン/パラフィン分離器からのオレフィン生成物流と混合される。
【0050】
本発明の第二の実施形態は、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜である。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜は、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホンとポリイミドのブレンド、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、および酢酸セルロースと三酢酸セルロースのブレンドからなる群から選択される相対的に親水性のポリマーを含む。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜は、ポリエーテルスルホンを含む。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜は、前記膜のスキン層表面に10nm未満の平均孔径を有する。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーが、キトサン、カルボキシメチルキトサンナトリウム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール、ポリカルボフィルカルシウム、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カラギーナン、リグノ硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、キトサン、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、およびアルギン酸からなる群から選択される。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層は、キトサン、カルボキシメチルキトサンナトリウム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール、ポリカルボフィルカルシウム、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カラギーナン、リグノ硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される親水性ポリマーを含む。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層は、キトサン、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、およびアルギン酸からなる群から選択される親水性ポリマーを含む。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーは、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーと同じである。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーおよび前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーは、キトサンである。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーは、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーと異なる。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層の親水性ポリマーは、キトサンまたはヒアルロン酸であり、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーはアルギン酸である。本発明の一実施形態は、本段落の第二の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩は、銀塩類または銅塩類である。
【0051】
本発明の第三の実施形態は、相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部の親水性ポリマー、前記支持膜表面に被覆された無孔性の親水性ポリマー薄層、および前記支持膜の表面に被覆された親水性ポリマー層と前記微細なナノ細孔内部の親水性ポリマーに導入された金属塩を含む促進輸送膜の作製方法である。該方法は、(a)前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔内部に親水性ポリマーを含む相対的に親水性の微細孔のナノ多孔性支持膜を作製すること、(b)前記支持膜のスキン層表面に無孔性の親水性ポリマー薄層を塗布すること、(c)金属塩水溶液に前記支持膜のスキン層表面の無孔性の親水性ポリマー薄層を浸漬することによって促進輸送膜を作製することを含む。本発明の一実施形態は、本段落の第三の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記親水性ポリマーは、膜キャスティングまたは紡糸作製プロセスの終わりに支持膜に親水性ポリマーの水溶液をニップすることによって、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔に導入される。本発明の一実施形態は、本段落の第三の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、前記親水性ポリマーは、膜キャスティングまたは紡糸作製プロセス中に親水性ポリマーをゲル化水タンクに投入することによって、前記支持膜のスキン層表面の微細なナノ細孔に導入される。本発明の一実施形態は、本段落の第三の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、無孔性の親水性ポリマー薄層は、前記支持膜のスキン層表面に親水性ポリマーの水溶液を浸漬コーティングすることによって形成される。本発明の一実施形態は、本段落の第三の実施形態までを含む本段落の先の実施形態の1つ、いずれか、またはすべてであり、無孔性の親水性ポリマー薄層は、前記支持膜のスキン層表面に親水性ポリマーの水溶液をメニスカスコーティングすることによって形成される。
【0052】
さらに詳述することなく、前述の説明から、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を最大限利用し、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、様々な用途および条件に適合させるために本発明に様々な変更および修正を行うことができる。したがって、前述の好ましい特定の実施形態は、単なる例示であり、決して本開示の残りの部分を限定するものではないと解釈され、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な修正および同等の構成を包含することを意図している。
【0053】
上記において、すべての温度は摂氏で記載されており、すべての部およびパーセントは、特に指示がない限り重量基準である。