(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.第1実施形態>
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、パラレルリンクロボット等の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、パラレルリンクロボット等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
(1−1.パラレルリンクロボットの全体構成)
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係るパラレルリンクロボット1の全体構成の一例について説明する。
【0013】
図1に示すように、パラレルリンクロボット1は、基礎部2と、可動部3と、3つのリンク機構部4a,4b,4cと、3つのアクチュエータ5a,5b,5cとを有する。
【0014】
3つのリンク機構部4a,4b,4cは、パラレルリンクロボット1の中心軸AX周りの円周方向に沿って配置され、基礎部2と可動部3とを連結する。3つのアクチュエータ5a,5b,5cは、基礎部2に配置され、それぞれリンク機構部4a,4b,4cを駆動する。基礎部2は、この例では円盤状に形成されており、円形の天板(図示省略)と、アクチュエータ5a〜5cを収容する収容部(図示省略)を有する。アクチュエータ5a〜5cは天板の下部に設けられる。可動部3は、この例では円盤状に形成されており、下端に取付部材20を備える。取付部材20には、例えばロボットハンド、溶接機、塗装ガン、鋲打ち機等の図示しないエンドエフェクタが取り付けられる。
【0015】
3つのリンク機構部4a〜4cは同様の構成を有する。リンク機構部4aは、アクチュエータ5aに連結された駆動リンク6aと、駆動リンク6aと可動部3とに連結された2つの受動リンク7aとを有する。2つの受動リンク7aは、それぞれ球面軸受8aにより駆動リンク6aと連結され、それぞれ球面軸受9aにより可動部3と連結される。リンク機構部4bは、アクチュエータ5bに連結された駆動リンク6bと、駆動リンク6bと可動部3とに連結された2つの受動リンク7bとを有する。2つの受動リンク7bは、それぞれ球面軸受8bにより駆動リンク6bと連結され、球面軸受9bにより可動部3と連結される。リンク機構部4cは、アクチュエータ5cに連結された駆動リンク6cと、駆動リンク6cと可動部3とに連結された2つの受動リンク7cとを有する。2つの受動リンク7cは、それぞれ球面軸受8cにより駆動リンク6cと連結され、球面軸受9cにより可動部3と連結される。駆動リンク6a,6b,6cは直線状の部材であり、中心軸AXの方向から見て中心軸AXを中心とする半径方向に延設されている。
【0016】
なお以上では、基礎部2や可動部3の形状を円形として説明したが、例えば三角形や四角形、星形等の多角形の形状でもよいし、中心軸AXに対して左右非対称の形状でもよい。また、本実施形態では基礎部2内にアクチュエータ5a〜5cが収容される場合を一例として説明するが、アクチュエータ5a〜5cの一部が基礎部2からはみ出して設置されてもよい。
【0017】
また、各アクチュエータ5a〜5cの配置位置は、特に限定されるものではない。例えば、アクチュエータ5a〜5cの全軸が中心軸AXから等距離に配置されてもよいし、アクチュエータ5a〜5cの軸のうち少なくとも1つの軸が他の軸に対して中心軸AXから異なる距離に配置されてもよい。また、各アクチュエータ5a〜5cの配置方向も、特に限定されるものではない。例えば、各アクチュエータ5a〜5cの軸が中心軸AXの方向から見て各駆動リンク6a〜6cにそれぞれ直交する方向(中心軸AXを中心とする円の接線方向)を向いていてもよいし、例えば出力軸にジョイントを設ける等により接線方向以外の方向を向いていてもよい。
【0018】
また、球面軸受8a,8b,8cは、球面ジョイントに限定されるものではなく、例えば回転ジョイント、ユニバーサルジョイント、又は直進ジョイント等でもよい。また、各リンク機構部4a〜4cは、2つのリンク(駆動リンクと受動リンク)による構成に限定されるものではなく、3以上のリンクで構成されてもよい。
【0019】
(1−2.アクチュエータの概略構成)
次に、
図2を参照しつつ、アクチュエータ5a〜5cの概略構成の一例について説明する。アクチュエータ5a〜5cは同様の構成を有する。
【0020】
図2に示すように、アクチュエータ5(5a〜5c)は、モータ部12と、ブレーキ部13と、エンコーダ部14と、アンプ部15とを有する。すなわちアクチュエータ5は、アンプ一体型のモータとして構成されている。
【0021】
モータ部12は、固定子及び回転子(図示省略)を備え、回転子が固定子に対し回転する回転型(ロータリタイプ)のモータである。モータ部12はシャフトSHを回転させる。
【0022】
ブレーキ部13は、モータ部12の反負荷側(シャフトSHと反対側)に配置されている。ブレーキ部13は、シャフトSHの制動を行う。
【0023】
エンコーダ部14は、ブレーキ部13の反負荷側に配置されている。エンコーダ部14は、シャフトSHの位置(「回転位置」や「回転角度」等ともいう)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
【0024】
アンプ部15は、エンコーダ部14の反負荷側に配置されている。アンプ部15は、モータ部12に電力を供給する。この際、アンプ部15は、エンコーダ部14から位置データを取得し、その位置データに基づいてモータ部12に印加する電流又は電圧等を制御することで、モータ部12の動作を制御する。また、アンプ部15は、上位制御装置(図示省略)から上位制御信号を取得し、その上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がシャフトSHから出力されるように、モータ部12の動作を制御することもできる。
【0025】
なお、上記で説明したアクチュエータ5の構成は一例であり、上記構成に限定されるものではない。例えば、ブレーキ部13やエンコーダ部14がモータ部12の負荷側(シャフトSH側)に配置されてもよい。また、アンプ部15がモータ部12とブレーキ部13との間、又はブレーキ部13とエンコーダ部14との間に配置されてもよい。また、アクチュエータ5がブレーキ部13やエンコーダ部14を備えない構成としてもよい。
【0026】
(1−3.3つのリンク機構部の円周方向の角度配置)
次に、
図3を参照しつつ、3つのリンク機構部の円周方向の角度配置の一例について説明する。
【0027】
図3に示すように、3つのリンク機構部4a〜4cは、基礎部2に対して、各リンク機構部4a,4b,4cの基礎部2側の端部である駆動リンク6a,6b,6cの円周方向の角度間隔がそれぞれ異なる角度となるように配置されている。すなわち、3つのリンク機構部4a〜4cが等間隔に配置される場合には、それぞれの角度間隔が120°となる。これに対し、パラレルリンクロボット1では、円周方向の角度間隔が120°となる2つのリンク機構部以外の他の1つのリンク機構部の配置が、等間隔となる位置から角度αだけ変更されている。その結果、3つのリンク機構部4a〜4cは、角度間隔がそれぞれ120°、120°より上記角度αだけ大きい角度、120°より上記角度αだけ小さい角度となるように配置されている。
【0028】
本実施形態では、円周方向の角度間隔が120°となる例えばリンク機構部4aとリンク機構部4bに対し、リンク機構部4cの配置が等間隔となる位置から50°だけ変更されている。その結果、リンク機構部4aとリンク機構部4bとの間が120°、リンク機構部4aとリンク機構部4cとの間が120°より50°だけ大きい170°、リンク機構部4bとリンク機構部4cとの間が120°より50°だけ小さい70°となっている。すなわち、3つの角度間隔のうちの1つが90°よりも小さい鋭角となっており、他の2つが90°よりも大きい鈍角となっている。
【0029】
上記角度間隔とするに伴い、アクチュエータ5a,5b,5cの配置も最適化されている。すなわち、アクチュエータ5a,5bについては、対応するリンク機構部4a,4bの円周方向一方側に配置されているのに対し、アクチュエータ5cについては、対応するリンク機構部4cの円周方向他方側に配置されている。その結果、リンク機構部4aとリンク機構部4bとの間には1台のアクチュエータ5b、リンク機構部4aとリンク機構部4cとの間には2台のアクチュエータ5a,5cが配置され、リンク機構部4bとリンク機構部4cとの間にはアクチュエータが配置されない構成となっている。
【0030】
なお、リンク機構部4cの変更角度α(所定角度の一例)は50°に限定されるものではない。すなわち、変更角度αは、リンク機構部4a,4b間の120°の角度間隔の二等分線h1の方向におけるリンク機構部4cの中心軸AXからの張り出し寸法と、二等分線h1の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の中心軸AXからの張り出し寸法とが、略一致する角度であればよい(後述の
図5参照)。これにより、各リンク機構部4a〜4cに対する負荷のバランスの低下や可動部3の寸法(可動部径D。後述の
図4、
図6参照)の増大を抑制しつつ、パラレルリンクロボット1の幅寸法(上記二等分線h1の方向におけるロボット幅)を低減することが可能となる。以下、この詳細について説明する。
【0031】
(1−4.リンク機構部の変更角度と可動部径及びロボット幅との関係)
次に、
図4〜
図6を用いて、リンク機構部の変更角度と可動部径及びロボット幅との関係の一例について説明する。
図4は、リンク機構部4cの変更角度αと可動部3の径D及びロボット幅(半分)Wの関係を表すグラフである。
図5は、リンク機構部4cの変更角度αとロボット幅(半分)Wの関係を表す模式図である。
図6は、リンク機構部4cの変更角度αと可動部3の径Dの関係を表す模式図である。なお、ロボット幅(半分)Wは、上記二等分線h1の方向における中心軸AXからリンク機構部4c側への張り出し寸法で規定される。
【0032】
図4及び
図5に示すように、リンク機構部4cの変更角度αが0°の場合には、3つのリンク機構部4a〜4cの角度間隔がそれぞれ120°となる。すなわちリンク機構部4cは、上記二等分線h1(
図3参照)上にあり、基礎部2から二等分線h1の方向に沿って突出している。この場合のロボット幅(半分)Wは、リンク機構部4cの上記二等分線h1の方向における中心軸AXからの張り出し寸法であるW0となる。
【0033】
リンク機構部4cの上記二等分線h1の方向における中心軸AXからの張り出し寸法は、リンク機構部4cの変更角度αが0°から10°,20°,30°,40°,50°と増加するに従い漸減する。すなわち、ロボット幅(半分)WはW1,W2,W3,W4,W5の順に低減する(W1>W2>W3>W4>W5)。そして、変更角度αが50°となった場合に、リンク機構部4cの上記二等分線h1の方向における中心軸AXからの張り出し寸法は、上記二等分線h1の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の張り出し寸法と略一致する。すなわち、ロボット幅(半分)Wは、上記二等分線h1の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の張り出し寸法と略同一のW5となる。
【0034】
その後は、変更角度αが60°,70°,80°,90°と増加しても、上記二等分線h1の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の張り出し寸法の方がリンク機構部4cの張り出し寸法よりも大きくなるので、ロボット幅(半分)W6,W7,W8,W9は上記W5と略同一となり、これ以上低減しない(W5≒W6≒W7≒W8≒W9)。
【0035】
なお、
図5に示す例では、変更角度αが40°以上となる場合に、アクチュエータ5cとリンク機構部4bとの干渉を回避するために、アクチュエータ5cの配置が対応するリンク機構部4cに対して円周方向に反転されている。
【0036】
一方、
図4及び
図6に示すように、リンク機構部4cの変更角度αが0°,10°,20°の場合には、可動部径Dを変更しなくともリンク機構部4cの球面軸受9cと隣接するリンク機構部4bの球面軸受9bとが干渉しないため、可動部径Dは略同一(D0≒D1≒D2)とすることができる。しかしながら、変更角度αが20°を超えてからは、球面軸受9cと球面軸受9bとの間隔を確保して干渉を回避するために、可動部径Dを大きくするのが好ましい。この例では、変更角度αが30°,40°,50°,60°,70°,80°,90°と増加するに従い、可動部径DはD3,D4,D5,D6,D7,D8,D9の順に漸増する(D3<D4<D5<D6<D7<D8<D9)。
【0037】
以上のように、リンク機構部4cの変更角度αを大きくするほど当該リンク機構部4cの中心軸AXからの張り出し寸法を低減できるが、変更角度αが50°以上になると基礎部2の張り出し寸法の方が大きくなるため、それ以上変更角度αを大きくしてもパラレルリンクロボット1の幅寸法を低減することができなくなる。
【0038】
一方で、各リンク機構部4a〜4cに対する負荷のバランスの観点からは、120°等間隔の配置が最もバランスが良く、リンク機構部4cの変更角度αはなるべく小さい方が好ましい。また、可動部3の寸法(可動部径D)は、リンク機構部4cの変更角度αが大きくなるにつれて隣接する球面軸受9c,9b同士の干渉を回避するために大きくなるので、可動部3の小型化の観点からも変更角度αはなるべく小さい方が好ましい。
【0039】
以上から、リンク機構部4cの変更角度αを基礎部2とリンク機構部4cの張り出し寸法が略一致する角度である50°とすることにより、各リンク機構部4a〜4cに対する負荷のバランスの低下や可動部3の寸法の増大を抑制しつつ、パラレルリンクロボット1の幅寸法を低減することができる。
【0040】
(1−5.パラレルリンクロボットシステムの構成)
次に、
図7及び
図8を用いて、以上説明したパラレルリンクロボット1を使用したパラレルリンクロボットシステム10の構成と、比較例のパラレルリンクロボット1’を使用したパラレルリンクロボットシステム10’の構成の一例について説明する。
【0041】
図7に示すように、本実施形態のパラレルリンクロボットシステム10は、複数(この例では2台。但し3台以上としてもよい)のパラレルリンクロボット1を有する。パラレルリンクロボット1の3つのリンク機構部4a,4b,4cは、基礎部2に対して、各リンク機構部4a,4b,4cの基礎部2側の端部である駆動リンク6a,6b,6cの中心軸AX周りの円周方向の角度間隔が、リンク機構部4a,4b間が120°、リンク機構部4b,4c間が70°、リンク機構部4c,4a間が170°の角度間隔となるように配置されている。2つのパラレルリンクロボット1は、互いの3つのリンク機構部4a,4b,4cの円周方向の配置が互いに同じとなる姿勢で、リンク機構部4a,4b間の120°の角度間隔の二等分線h1の方向に沿って並列に配置されている。言い換えると、2つのパラレルリンクロボット1は、互いのリンク機構部4a同士が平行、互いのリンク機構部4b同士が平行、互いのリンク機構部4c同士が平行となる姿勢で、二等分線h1上に中心軸AXが位置するように並列に配置されている。
【0042】
図7に示すように、パラレルリンクロボット1の二等分線h1の方向の幅寸法は、上記ロボット幅(半分)Wの2倍の2Wとなる。したがって、2台のパラレルリンクロボット1を中心軸AX間のピッチが2Wとなるように配置すると、ロボットシステム10全体の幅寸法は4Wとなる。
【0043】
なお、パラレルリンクロボットシステム10においては、複数のパラレルリンクロボット1に対する制御系統は特に限定されるものではない。例えば、各パラレルリンクロボット1を共通の制御部により制御してもよいし、各パラレルリンクロボット1を異なる制御部により制御してもよい。異なる制御部とする場合、各パラレルリンクロボット1に対して異なる動作をさせてもよいし、例えば一方の制御部から他方の制御部に作動情報を伝達する等により同じ動作をさせてもよい。
【0044】
これに対し、
図8に示す比較例のパラレルリンクロボットシステム10’は、2つのパラレルリンクロボット1’を有する。パラレルリンクロボット1’の3つのリンク機構部4a,4b,4cは、基礎部2に対して、各リンク機構部4a,4b,4cの基礎部2側の端部である駆動リンク6a,6b,6cの中心軸AX周りの円周方向の角度間隔が等角度間隔(120°間隔)となるように配置されている。2つのパラレルリンクロボット1’は、互いの3つのリンク機構部4a,4b,4cの円周方向の配置が互いに同じとなる姿勢で、リンク機構部4a,4b間の120°の角度間隔の二等分線h1の方向に沿って並列に配置されている。
【0045】
図8に示すように、各パラレルリンクロボット1’のリンク機構部4cは、120°の角度間隔の二等分線h1上にあるため、基礎部2から幅方向に大きく突出している。このため、パラレルリンクロボット1’の二等分線h1の方向の幅寸法は、本実施形態のパラレルリンクロボット1の幅寸法2Wよりも大きい2W’となる。したがって、2台のパラレルリンクロボット1’を中心軸AX間のピッチが2W’となるように配置すると、ロボットシステム10’全体の幅寸法は、本実施形態のパラレルリンクロボットシステム10の幅寸法4Wよりも大幅に大きい4W’となる。
【0046】
以上により、本実施形態のパラレルリンクロボット1は、比較例のパラレルリンクロボット1’に比べて幅寸法を低減できるので、設置スペースを小型化できる。その結果、本実施形態のパラレルリンクロボットシステム10は、比較例のパラレルリンクロボットシステム10’に比べて幅寸法を大幅に低減できるので、ロボットシステム全体の設置スペースを大幅に小型化できる。ロボットシステムの小型化効果は、ロボットの台数が増加するほど顕著となる。
【0047】
なお、パラレルリンクロボットシステム10が有する複数のパラレルリンクロボット1は、略同じサイズに限定されるものではない。3つのリンク機構部4a,4b,4cの角度間隔が共通であれば、異なるサイズのパラレルリンクロボット1としてもよく(例えば相似形状等)、この場合にも上記効果を得ることができる。また、パラレルリンクロボットシステム10が有する複数のパラレルリンクロボットは、全部が本実施形態のパラレルリンクロボット1でなくともよく、例えばパラレルリンクロボット1と上記比較例のパラレルリンクロボット1’が混在してもよい。この場合でも、全部がパラレルリンクロボット1’である場合に比べて設置スペースを小型化できる。
【0048】
(1−6.実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態のパラレルリンクロボット1は、基礎部2と、エンドエフェクタが取り付けられる可動部3と、基礎部2と可動部3とを連結する3つのリンク機構部4a,4b,4cと、基礎部2に配置され、3つのリンク機構部4a,4b,4cをそれぞれ駆動する3つのアクチュエータ5a,5b,5cと、を有し、3つのリンク機構部4a,4b,4cは、基礎部2に対して、各リンク機構部4a,4b,4cの基礎部2側の端部である駆動リンク6a,6b,6cの中心軸AX周りの円周方向の角度間隔がそれぞれ異なる角度となるように配置されている。これにより、次の効果を奏する。
【0049】
すなわち、上述した比較例のように3つのリンク機構部4a,4b,4cが等間隔(120°間隔)で配置されたパラレルリンクロボット1’では、各リンク機構部の中心軸AX周りの向きをどのように変えても、リンク機構部が左右方向に大きく張り出し、設置スペースの小型化が難しい。
【0050】
本実施形態では、3つのリンク機構部4a,4b,4cをそれぞれの角度間隔が異なる角度となるように配置する。これにより、パラレルリンクロボット1の所定の方向(本実施形態では二等分線h1の方向)の幅寸法が低減するように角度間隔を最適化することができる。したがって、設置スペースを小型化することができる。
【0051】
また、本実施形態では特に、3つのリンク機構部4a,4b,4cは、円周方向の角度間隔が120°、120°より変更角度αだけ大きい角度、120°より上記変更角度αだけ小さい角度となるように配置されている。
【0052】
すなわち本実施形態では、3つのリンク機構部4a,4b,4cのうち2つのリンク機構部4a,4bについては120°間隔のままとし、他の1つのリンク機構部4cの配置を所定角度だけ変更する。これにより、パラレルリンクロボット1の所定の方向(120°の角度間隔の二等分線h1の方向)の幅寸法を低減できる。したがって、設置スペースを小型化することができる。
【0053】
また本実施形態では、3つの角度間隔のうち1つは120°を維持する。パラレルリンクロボット1の搬送能力を考慮すると、各リンク機構部4a,4b,4cに対する負荷のバランスは120°等間隔の配置が最もバランスが良いため、1つの角度間隔を120°に維持することで、全部の角度間隔を変更する場合(例えば角度間隔を180°、90°、90°とする場合)に比べて、搬送能力の低下(負荷のバランスの低下)を抑制できる。
【0054】
また本実施形態では、3つのリンク機構部4a,4b,4cのうち2つのリンク機構部4a,4bについては配置を変更せず、1つのリンク機構部4cのみ配置を変更するので、2以上のリンク機構部の配置を変更する場合(例えば角度間隔を180°、90°、90°とする場合)に比べて、汎用品からの設計変更が少なくて済み、コストを低減できる。
【0055】
また、本実施形態では特に、変更角度αは、リンク機構部4cの二等分線h1の方向における中心軸AXからの張り出し寸法と、二等分線h1の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の中心軸AXからの張り出し寸法とが、略一致する角度である。これにより、次の効果を奏する。
【0056】
すなわち、リンク機構部4cの変更角度αが大きいほど当該リンク機構部4cの中心軸AXからの張り出し寸法を低減できるが、変更角度αが所定の角度以上になると基礎部2の張り出し寸法の方が大きくなるため、それ以上変更角度αを大きくしてもパラレルリンクロボット1の幅寸法を低減することができなくなる。
【0057】
一方で、各リンク機構部4a,4b,4cに対する負荷のバランスを考慮すると、120°等間隔の配置が最もバランスが良く、リンク機構部4cの変更角度αは小さい方が好ましい。また、可動部3の寸法を考慮すると、リンク機構部4cの変更角度αが大きくなるにつれて隣接する球面軸受9c,9b同士の干渉を回避するために可動部3の寸法(可動部径D)が大きくなるため、変更角度αは小さい方が好ましい。
【0058】
したがって、所定角度を基礎部2とリンク機構部4cの張り出し寸法とが略一致する角度とすることで、負荷のバランスの低下や可動部3の寸法の増大をできるだけ抑えつつ、パラレルリンクロボット1の幅寸法を最大限に低減できる。
【0059】
また、本実施形態では特に、3つのリンク機構部4a,4b,4cは、円周方向の角度間隔が120°、170°、70°となるように配置されている。これにより、パラレルリンクロボット1の小型化と搬送能力とを最適化することが可能となる。したがって、負荷のバランスの低下や可動部3の寸法の増大をできるだけ抑えつつ、パラレルリンクロボット1の幅寸法を最大限に低減できる。
【0060】
また、本実施形態では特に、アクチュエータ5(5a〜5c)は、モータ部12と、モータ部12に電力を供給するアンプ部15とを一体的に有する。これにより、アクチュエータとアンプ部を別々に設置する場合に必要となるモータとアンプの接続ケーブルが不要となるので、省配線化できると共に設置作業が容易となる。
【0061】
また、本実施形態のパラレルリンクロボットシステム10は、複数のパラレルリンクロボット1を有しており、これら複数のパラレルリンクロボット1は、3つのリンク機構部4a,4b,4cの円周方向の配置が互いに同じとなる姿勢で、二等分線h1の方向に沿って並列に配置されている。
【0062】
すなわち、パラレルリンクロボットシステム10では、2つのパラレルリンクロボット1が幅寸法が低減される方向(二等分線h1の方向)に沿って並列に配置されるので、当該並列方向の寸法を大幅に低減できる。したがって、ロボットシステム全体の設置スペースを小型化できる。
【0063】
また本実施形態では、2つのパラレルリンクロボット1を同じ姿勢で配置するので、姿勢を変更して並列に配置する場合(例えば角度間隔を180°、90°、90°とした2つのパラレルリンクロボットの180°間隔の部分を対向配置する場合)に比べて、設置作業が容易となる。また、上記の場合には2台1組として偶数台を設置することとなるが、本実施形態の場合には設置台数の制約がないため、ロボットシステムの設計の自由度を向上できる。
【0064】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下では、主として上記第1実施形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0065】
(2−1.3つのリンク機構部の円周方向の角度配置)
まず、
図9を参照しつつ、3つのリンク機構部の円周方向の角度配置の一例について説明する。
【0066】
本実施形態のパラレルリンクロボット1Aは、上記第1実施形態のパラレルリンクロボット1と同様に、基礎部2と、可動部3と、3つのリンク機構部4a,4b,4cと、3つのアクチュエータ5a,5b,5cとを有する。
【0067】
図9に示すように、3つのリンク機構部4a〜4cは、基礎部2に対して、各リンク機構部4a,4b,4cの基礎部2側の端部である駆動リンク6a,6b,6cの円周方向の角度間隔の1つが90°よりも小さな鋭角となるように配置されている。また、3つのリンク機構部4a〜4cは、上記鋭角の他の2つの角度間隔が90°よりも大きな鈍角であり、且つ、互いに等しい角度となるように配置されている。すなわち、3つのリンク機構部4a〜4cは、中心軸AXの方向から見て略Y字状となるように配置されている。
【0068】
本実施形態では、例えば、リンク機構部4aとリンク機構部4bとの間が140°、リンク機構部4aとリンク機構部4cとの間が上記と同じ140°、リンク機構部4bとリンク機構部4cとの間が80°となっている。
【0069】
本実施形態では、例えば
図9に示すように、全てのアクチュエータ5a,5b,5cが対応するリンク機構部4a,4b,4cの円周方向一方側に配置されている。但し、例えばアクチュエータ5cについては、対応するリンク機構部4cの円周方向他方側に配置する等、アクチュエータ5a,5b,5cの配置を上記角度間隔に応じて最適化してもよい。
【0070】
なお、鋭角の角度間隔は80°に限定されるものではない。すなわち、当該鋭角の二等分線h2に垂直な法線h3の方向におけるリンク機構部4b,4cの中心軸AXからの張り出し寸法と、法線h3の方向における基礎部2の中心軸AXからの張り出し寸法とが、それぞれ略一致するように設定された角度であればよい(後述の
図10参照)。これにより、各リンク機構部4a〜4cに対する負荷のバランスの低下や可動部3の寸法(可動部径D。後述の
図11参照)の増大を抑制しつつ、パラレルリンクロボット1Aの幅寸法(上記法線h3の方向におけるロボット幅)を低減することが可能となる。以下、この詳細について説明する。
【0071】
(2−2.リンク機構部の角度間隔と可動部径及びロボット幅との関係)
次に、
図10及び
図11を用いて、リンク機構部の角度間隔と可動部径及びロボット幅との関係の一例について説明する。
図10は、リンク機構部4b,4c間の角度とロボット幅(半分)Wの関係を表す模式図である。
図11は、リンク機構部4b,4c間の角度と可動部3の径Dの関係を表す模式図である。なお、ロボット幅(半分)Wは、上記法線h3の方向における中心軸AXからリンク機構部4c側への張り出し寸法で規定される。
【0072】
図10に示すように、リンク機構部4b,4c間の角度が120°の場合には、その他の2つの角度間隔もそれぞれ120°となる。すなわち3つのリンク機構部4a〜4cは円周方向に等間隔に配置されている。この場合のロボット幅(半分)Wは、リンク機構部4cの上記法線h3の方向における中心軸AXからの張り出し寸法であるW10となる。なお、リンク機構部4bの中心軸AXからの張り出し寸法も同様にW10となる。
【0073】
リンク機構部4cの上記法線h3の方向における中心軸AXからの張り出し寸法は、リンク機構部4b,4c間の角度が120°から110°,100°,90°,80°と減少するに従い漸減する。すなわち、ロボット幅(半分)WはW10,W11,W12,W13,W14の順に低減する(W10>W11>W12>W13>W14)。そして、リンク機構部4b,4c間の角度が80°となった場合に、リンク機構部4cの上記法線h3の方向における中心軸AXからの張り出し寸法は、上記法線h3の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の張り出し寸法と略一致する。すなわち、ロボット幅(半分)Wは、上記法線h3の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の張り出し寸法と略同一のW14となる。なお、リンク機構部4bの中心軸AXからの張り出し寸法も同様にW14となる。
【0074】
その後は、リンク機構部4b,4c間の角度が70°,60°,50°,40°,30°と減少しても、上記法線h3の方向における基礎部2のリンク機構部4c側の張り出し寸法の方がリンク機構部4cの張り出し寸法よりも大きくなるので、ロボット幅(半分)W15,W16,W17,W18,W19は上記W14と略同一となり、これ以上低減しない(W14≒W15≒W16≒W17≒W18≒W19)。
【0075】
なお、
図10に示す例では、リンク機構部4b,4c間の角度が例えば70°以下となる場合に、アクチュエータ5cとリンク機構部4bとの干渉を回避するために、アクチュエータ5cの配置が対応するリンク機構部4cに対して円周方向に反転されている。さらに、
図10に示す例では、リンク機構部4b,4c間の角度が例えば70°,60°となる場合に、隣接するアクチュエータ5a,5cの干渉を回避するために、アクチュエータ5cの出力軸をオフセットさせる機構(例えばベルト、プーリ等)が設けられている。
【0076】
一方、
図11に示すように、リンク機構部4b,4c間の角度が120°,110°,100°の場合には、可動部径Dを変更しなくともリンク機構部4cの球面軸受9cと隣接するリンク機構部4bの球面軸受9bとが干渉しないため、可動部径Dは略同一(D10≒D11≒D12)とすることができる。しかしながら、リンク機構部4b,4c間の角度が100°を下回ってからは、球面軸受9cと球面軸受9bとの間隔を確保して干渉を回避するために、可動部径Dを大きくするのが好ましい。この例では、リンク機構部4b,4c間の角度が90°,80°,70°,60°,50°,40°,30°と減少するに従い、可動部径DはD13,D14,D15,D16,D17,D18,D19の順に漸増する(D13<D14<D15<D16<D17<D18<D19)。
【0077】
以上のように、リンク機構部4b,4c間の角度を小さくするほど当該リンク機構部4b,4cの中心軸AXからの張り出し寸法を低減できるが、リンク機構部4b,4c間の角度が80°以下になると基礎部2の張り出し寸法の方が大きくなるため、それ以上リンク機構部4b,4c間の角度を小さくしてもパラレルリンクロボット1Aの幅寸法を低減することができなくなる。
【0078】
一方で、各リンク機構部4a〜4cに対する負荷のバランスの観点からは、120°等間隔の配置が最もバランスが良く、リンク機構部4b,4c間の角度はなるべく大きい方が好ましい。また、可動部3の寸法(可動部径D)は、リンク機構部4b,4c間の角度が小さくなるにつれて隣接する球面軸受9c,9b同士の干渉を回避するために大きくなるので、可動部3の小型化の観点からもリンク機構部4b,4c間の角度はなるべく大きい方が好ましい。
【0079】
以上から、リンク機構部4b,4c間の角度を基礎部2とリンク機構部4b,4cの張り出し寸法が略一致する角度である80°とすることにより、各リンク機構部4a〜4cに対する負荷のバランスの低下や可動部3の寸法の増大を抑制しつつ、パラレルリンクロボット1Aの幅寸法を低減することができる。
【0080】
(2−3.パラレルリンクロボットシステムの構成)
次に、
図12を用いて、以上説明したパラレルリンクロボット1Aを使用したパラレルリンクロボットシステム10Aの構成の一例について説明する。
【0081】
図12に示すように、本実施形態のパラレルリンクロボットシステム10Aは、複数(この例では2台。但し3台以上としてもよい)のパラレルリンクロボット1Aを有する。パラレルリンクロボット1Aの3つのリンク機構部4a,4b,4cは、基礎部2に対して、各リンク機構部4a,4b,4cの基礎部2側の端部である駆動リンク6a,6b,6cの中心軸AX周りの円周方向の角度間隔が、リンク機構部4a,4b間が140°、リンク機構部4b,4c間が80°、リンク機構部4c,4a間が140°の角度間隔となるように配置されている。2つのパラレルリンクロボット1Aは、互いの3つのリンク機構部4a,4b,4cの円周方向の配置が互いに同じとなる姿勢で、リンク機構部4b,4c間の80°の角度間隔の二等分線h2に垂直な法線h3の方向に沿って並列に配置されている。言い換えると、2つのパラレルリンクロボット1は、互いのリンク機構部4a同士が平行、互いのリンク機構部4b同士が平行、互いのリンク機構部4c同士が平行となる姿勢で、法線h3上に中心軸AXが位置するように並列に配置されている。
【0082】
図12に示すように、パラレルリンクロボット1Aの法線h3の方向の幅寸法は、上記ロボット幅(半分)Wの2倍の2Wとなる。したがって、2台のパラレルリンクロボット1Aを中心軸AX間のピッチが2Wとなるように配置すると、ロボットシステム10A全体の幅寸法は4Wとなる。
【0083】
以上のように、本実施形態のパラレルリンクロボット1Aは、前述した比較例のパラレルリンクロボット1’(
図8)に比べて幅寸法を低減できるので、設置スペースを小型化できる。その結果、本実施形態のパラレルリンクロボットシステム10Aは、前述した比較例のパラレルリンクロボットシステム10’(
図8)に比べて幅寸法を大幅に低減できるので、ロボットシステム全体の設置スペースを大幅に小型化できる。ロボットシステムの小型化効果は、ロボットの台数が増加するほど顕著となる。
【0084】
(2−4.実施形態の効果)
以上説明した第2実施形態のパラレルリンクロボット1A及びパラレルリンクロボットシステム10Aによれば、前述の第1実施形態と同様に、設置スペースを小型化することができる。また、鋭角の他の2つの角度間隔を互いに等しい角度とすることにより、パラレルリンクロボット1Aのアンバランスを低減でき、振動や騒音等の発生を抑制することができる。
【0085】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0086】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0087】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。