(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6688495
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】装身具
(51)【国際特許分類】
A44C 7/00 20060101AFI20200421BHJP
A44C 9/00 20060101ALI20200421BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
A44C7/00 A
A44C9/00
A44C5/00 501D
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-120633(P2019-120633)
(22)【出願日】2019年6月28日
【審査請求日】2019年6月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593075049
【氏名又は名称】株式会社シンク
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 辰也
【審査官】
高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−000267(JP,A)
【文献】
特開2012−170766(JP,A)
【文献】
実開昭61−033008(JP,U)
【文献】
特開2012−034833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 7/00
A44C 5/00
A44C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の装飾部材を備え、
一方の装飾部材の一端に設けられる一対の取付脚部と、他方の装飾部材の一端に設けられ前記一対の取付脚部に弾性部材を介して連結される取付基部と、前記一対の取付脚部に前記弾性部材を回転可能に軸着する連結ピンと、を有する装身具であって、
前記弾性部材は先端にバネ性を有するU字状の屈曲部と、該屈曲部から延びる対向する一対の弾性片と、を備え、
前記弾性部材の端部である基端が前記取付基部に固定され、前記弾性部材のU字状の屈曲部のバネ弾性により前記一対の弾性片が前記取付脚部に弾性的に挟着される装身具。
【請求項2】
前記屈曲部から延びる対向する一対の弾性片は、前記弾性部材の基端に向かって平行に延び、対向する一対の弾性片の間に所定の隙間を有する請求項1に記載の装身具。
【請求項3】
前記屈曲部は、U字状の曲面を有する請求項1に記載の装身具。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記装飾部材より硬質の板状部材をU字状に屈曲形成した板バネからなる請求項1乃至3のいずれかに記載の装身具。
【請求項5】
前記一対の取付脚部は、装飾部材の一端に二股状に形成され、その内方に前記弾性部材を収納する凹部が設けられる請求項1に記載の装身具。
【請求項6】
前記取付脚部の凹部にカラーが装着され、カラーを介して前記弾性部材が取付脚部に挟着される請求項5に記載の装身具。
【請求項7】
前記カラーは、前記装飾部材より硬質の部材によって形成され、前記凹部の内周面を被覆する請求項6に記載の装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ式の装身具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリップ式の装身具としては、半円状からなる一対の装飾部材の連結部分に取付脚部と取付基部とを設け、この取付脚部と取付基部との間にワッシャなどバネ性を有する金属板材を挟んで軸着するとともに、金属板材とともに軸部をかしめた構造のイヤリングが知られている(特許文献1,2,3)。これらのイヤリングでは、取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際の金属板材による接触摩擦抵抗によって、耳たぶを挟む挟着力を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−229007号公報
【特許文献2】実用新案登録第3158448号公報
【特許文献3】特開2017−121382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装身具にあっては、一対の装飾部材の開閉を繰り返すことで金属板材のバネ力が低下し、長期間に亘って使用する間に挟着力が低下してしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、所定の挟着力を長期間に亘って維持することのできる装身具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る装身具は、一対の装飾部材を備え、一方の装飾部材の一端に設けられる一対の取付脚部と、他方の装飾部材の一端に設けられ前記一対の取付脚部に
弾性部材を介して連結される取付基部と、前記一対の取付脚部
に前記弾性部材を回転可能に軸着する連結ピンと、を有する装身具であって、
前記弾性部材は先端にバネ性を有するU字状の屈曲部と、該屈曲部から延びる対向する一対の弾性片と、を備え、
前記弾性部材の端部である基端が前記取付基部に固定され、前記弾性部材のU字状の屈曲部のバネ弾性により前記一対の弾性片が前記取付脚部に弾性的に挟着される。
【0007】
また、本発明に係る装身具の一実施形態では、前記
屈曲部から延びる対向する一対の弾性片は、前記弾性部材の基端に向かって平行に延び、対向する一対の弾性片の間に
所定の隙間を有する。
【0008】
また、本発明に係る装身具の一実施形態では、前記取付脚部の凹部にカラーが装着され、カラーを介して前記弾性部材が取付脚部に挟着される。また、前記カラーは、硬質材によって形成され、前記凹部の内周面を被覆する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る装身具によれば、一方の装飾部材の一端に設けられる一対の取付脚部と、他方の装飾部材の一端に設けられ取付基部との連結部分に挟着される弾性部材が、屈曲部と、この屈曲部から延びる対向する一対の弾性片と、を備えている。弾性部材は、屈曲部及び一対の弾性片のバネ力が長期間に亘って低下しないので、連結部分における所定の挟着力を長期間に亘って維持することができる。
【0010】
また、本発明に係る装身具によれば、前記弾性部材は、屈曲部を先端に有し、屈曲部から延びる対向する一対の弾性片の間に隙間を有しているので、前記一対の弾性片には開閉方向のバネ力が付与される。
【0011】
また、本発明に係る装身具によれば、前記取付脚部の凹部にカラーが装着され、このカラーを介して前記弾性部材が取付脚部に挟着されるので、一対の装飾部材同士が擦れ合うことがなく、装飾部材をスムーズに回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る装身具の分解斜視図である。
【
図2】一対の装飾部材に各端部にカラーと弾性部材を組み込んだ斜視図である。
【
図4】本発明の装身具を装着した状態を示す正面図である。
【
図5】本発明の装身具を耳たぶから取り外した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る装身具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明の装身具を模式的に表したものである。これらの実物の寸法及び寸法比は、図面上の寸法及び寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。さらに、本発明の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1及び
図2には本発明に係る装身具をイヤリングに適用した場合の分解図が、
図3には一対の装飾部材の連結部分の断面図が、
図4及び
図5にはイヤリングを開閉した状態の正面図がそれぞれ示されている。イヤリング1は、半円状の一対の装飾部材2,3と、一方の装飾部材2の一端に設けられる一対の取付脚部4と、他方の装飾部材3の一端に設けられ前記取付脚部4に連結される取付基部5と、前記取付脚部4と取付基部5との連結部分を回転可能に軸着する連結ピン6と、を備えている。
【0015】
前記一対の装飾部材2,3は対向して配置され、互いの一端部を回動可能に連結することで、装飾部材2,3の他端側を開閉可能とするリング状のイヤリングを形成している。前記一対の取付脚部4は、前記装飾部材2の一端を二股状に形成したものであり、各先端部付近には前記連結ピン6を挿通させるピン孔7aが設けられている。また、一対の取付脚部4の内方には前記装飾部材3の一端の取付基部5に固定された弾性部材10を収納する凹部8が設けられる。
【0016】
前記装飾部材2,3は、装飾効果を高めるため、金、プラチナ、シルバーなどの貴金属材や真鍮などの金属材によって形成されることが多い。また、装飾部材2,3の一部にダイヤモンドなどの宝石を配置して装飾効果をさらに高めることもできる。
【0017】
この実施形態において、前記一対の取付脚部4の凹部8にはカラー9が装着され、このカラー9を介して前記弾性部材10が取付脚部4に挟着される。カラー9は、前記装飾部材2,3より硬質の部材で形成されることが望ましく、例えばステンレスなどが用いられる。カラー9は、前記取付脚部4の凹部8の内側面8aを被覆する側壁部9aと、凹部8の内奥面8bを被覆する後壁部9bとで略コの字状に折曲げ形成され、凹部8の内周面全体を被覆している。後壁部9bは、カラー9が凹部8から離脱しないように突起状に形成され、この後壁部9bが凹部8の内奥面に設けられた抜け止め用の凹み8bに嵌め込まれる。カラー9は、凹部8の内周壁に圧接されることで取付脚部4に一体に固定される。前記取付脚部4に設けられるピン孔7aと同様、カラー9にも前記ピン孔7aと同じ位置にピン孔7bが設けられる。なお、取付脚部4及びカラー9の先端形状は共に曲面形状となっている。
【0018】
一方、装飾部材3の一端に設けられる取付基部5は、前記装飾部材2の取付脚部4に対応して二股状に形成され、その内方には弾性部材10の基端10cが収納される凹部11が設けられている。凹部11の横幅は弾性部材10の横幅に対応しており、また凹部11の内奥面には弾性部材10の抜け止め用の凹み11bが設けられている。なお、取付基部5の先端形状は、前記取付脚部4及びカラー9の先端の曲面形状を受け入れて先端同士が回転可能となるような湾曲形状となっている。
【0019】
前記弾性部材10は、前記カラー9と同様、装飾部材2,3より硬質の材料で形成されることが望ましく、例えばステンレスなどの板状部材を略U字状に屈曲形成した板バネからなり、前記半円状の装飾部材2の取付脚部4の形状に対応した一見そら豆に似た形状からなる。この弾性部材10は、先端に形成される屈曲部10aと、この屈曲部10aの両端から基端10cに向かって平行に延びる対向する一対の板状の弾性片10bを備え、屈曲部10aの弾性によって一対の弾性片10bにバネ力が付与される。弾性部材10は、屈曲部10a及び一対の弾性片10bのバネ性を利用して前記取付脚部4に挟着される。前記屈曲部10aは先端にU字状の曲面を有しており、一対の弾性片10bに安定したバネ力を付与している。屈曲部10aのU字状の曲面形状や曲率の大きさなどによって弾性片10bのバネ力を調整することができる。
【0020】
前記弾性部材10の先端の屈曲部10aから基端10cに向かって平行に延びる対向する一対の弾性片10bの間には所定の隙間12が形成されている。このように、対向する一対の弾性片10bの間に所定の隙間12を確保することで、一対の弾性片10bには開閉方向のバネ力が確実に付与されることになる。また、一対の弾性片10bが先端の屈曲部10aから連続してつながっていると共に、一枚の板状部材をU字状に屈曲形成してあるため、所定のバネ力が長期間に亘って維持されるメリットがある。なお、また、前記隙間12の間隔は特に限定されるものではなく、必要なバネ力を得るために適宜調整され得るものである。
【0021】
特にこの実施形態における弾性部材10には、先端の屈曲部10aの上下端に切欠き10a’が設けられている。そのため、屈曲部10aの上下幅が弾性片10bの上下幅より狭いものとなっている。屈曲部10aの上下端の角をなくすことで、弾性部材10の回転時における先端の屈曲部10aとカラー9との擦れ合いを確実に防ぐことができる。
【0022】
また、弾性部材10の基端10cには、前記取付基部5の凹部11に設けられた凹み11bに嵌め込まれる突起10dが形成されている。さらに、弾性部材10の一対の弾性片10bには、前記取付脚部4のピン孔7a及びカラー9のピン孔7aと同様、連結ピン6が挿通するピン孔7cが設けられている。
【0023】
前記弾性部材10は、その基端10c側が取付基部5の凹部11に嵌め込まれる。嵌め込む際に弾性部材10の基端10c側を少し押し縮めるようにして嵌め入れる。凹部11の内側面11aに基端10cの側面を押圧させることで、一対の弾性片10bにバネ性が付与されることになる。基端10cに形成した突起10dを凹部11の内奥面に設けた凹11bに嵌め入れて位置決めすると共に、凹部11に嵌め入れた基端10cを取付基部5に溶接する。
図2には装飾部材3の取付基部5に弾性部材10が固定された状態が示されている。この弾性部材10は、装飾部材3の一端から突出する屈曲部10a及び一対の弾性片10bが装飾部材2の一端に設けられた取付脚部4の凹部8にカラー9を介して収納される。そして、取付脚部4、カラー9及び弾性部材10の各ピン孔7a,7b,7cに連結ピン6を挿通させ、連結ピン6の両端を取付脚部10のピン孔7aの周縁部にかしめることによって、装飾部材2,3が回転可能に軸着される。
【0024】
前記弾性部材10は、バネ性が付与された屈曲部10a及び一対の弾性片10bがカラー9を介して取付脚部4に挟着されることになる。一対の弾性片10bは、バネ性をもった状態でカラー9に接触しカラー9を押圧することで、カラー9との間に接触摩擦抵抗が発生する。
図3に示されるように、弾性片10bは平板状に形成されているためカラー9の側壁部9aとの接触面積が大きく、カラー9との間に大きな接触摩擦抵抗を発生させることができる。その結果、装飾部材2,3を開閉する際には大きな接触摩擦抵抗を伴いながら回転させることができる一方、装飾部材2,3を閉じて耳たぶを挟持する際には大きな摩擦力が保持されるため耳たぶから脱落するといったことがない。さらに、本実施形態の弾性部材10は、一枚の板状部材をU字状に折り曲げて立体的に形成してあるのでへたりにくく、ワッシャのような平面的な弾性材に比べて弾性力が低下し難いメリットがある。
【0025】
前記カラー9及び弾性部材10は、ステンレスなどの硬質材によって形成されているため、両者の接触面における耐摩耗性が高く、カラー9と弾性部材10との間の摩擦力を長期間に亘って維持することができる。また、貴金属材によって形成されることが多い装飾部材2,3同士が擦れ合うことがないので、装飾部材2,3をスムーズに回転させることができると同時に装身具としての寿命が伸びる。
【0026】
装飾部材2,3の連結部分では、
図4に示されるように、装飾部材2,3が閉じた状態では、弾性部材10が取付脚部4の凹部8内に収まっているのに対して、
図5に示されるように、装飾部材2,3が開いた状態では、弾性部材10の先端の屈曲部10aが取付脚部4の凹部10から上方に飛び出す。そのため、装飾部材2,3を開いた状態から次第に閉じていくと、弾性部材10の屈曲部10aが両側から圧縮を受けながら凹部8内に収まり、同時に一対の弾性片10bの間の隙間12も狭められることで弾性片10bのバネ力が強まり、弾性片10bとカラー9との間の接触摩擦抵抗が次第に大きくなる。その結果、装飾部材2,3を閉じる力が徐々に増していくことになり、装飾部材2,3の他端で耳たぶをしっかりと挟める感覚が得られる。また、耳たぶをじわじわとゆっくり挟んでいけるので挟む際の力の入れ具合を加減できる。
【0027】
一方、装飾部材2,3を閉じた状態から次第に開いていくと、弾性部材10の先端の屈曲部10aが取付脚部4の凹部から上方に次第に飛び出していくのに伴って一対の弾性片10bの間の隙間12が次第に広がり、弾性片10bとカラー9との間の接触摩擦抵抗が次第に小さくなる。その結果、装飾部材2,3を開く力が小さくて済み、イヤリングを耳たぶから容易に外すことができる。
【0028】
なお、本発明に係る装身具は、上記実施形態において説明したイヤリングに限定されるものではなく、クリップ式のブレスレットや指輪などにも適用されるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 イヤリング(装身具)
2,3 装飾部材
4 取付脚部
5 取付基部
6 連結ピン
7a,7b,7c ピン孔
8 凹部
8a 内側面
8b 凹み
9 カラー
9a 側壁部
9b 後壁部
10 弾性部材
10a 屈曲部
10a’ 切欠き
10b 弾性片
10c 基端
10d 突起
11 凹部
11a 内側面
11b 凹み
12 隙間
【要約】
【課題】 所定の挟着力を長期間に亘って維持することのできるクリップ式の装身具を提供する。
【解決手段】 一対の装飾部材2,3を備え、一方の装飾部材2の一端に設けられる一対の取付脚部4と、他方の装飾部材3の一端に設けられ前記一対の取付脚部4に連結される取付基部5と、前記一対の取付脚部4と取付基部5との連結部分を回転可能に軸着する連結ピン6と、を有するイヤリング1である。前記取付基部5には、前記取付脚部4に挟着される弾性部材10が固定され、この弾性部材10は屈曲部10aと、この屈曲部10aから延びる対向する一対の弾性片10bと、を備える。屈曲部10aの弾性によって一対の弾性片10bにバネ力が付与され、このバネ性を利用して取付脚部4に挟着される
【選択図】
図1