特許第6688498号(P6688498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人青森県産業技術センターの特許一覧

<>
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000002
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000003
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000004
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000005
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000006
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000007
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000008
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000009
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000010
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000011
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000012
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000013
  • 特許6688498-プロテオグリカンの分解方法及び分解物 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688498
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】プロテオグリカンの分解方法及び分解物
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   C08B37/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-201754(P2015-201754)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2016-79402(P2016-79402A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-211702(P2014-211702)
(32)【優先日】2014年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(72)【発明者】
【氏名】安保 亜衣子
(72)【発明者】
【氏名】山口 信哉
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−278907(JP,A)
【文献】 特公昭46−011357(JP,B1)
【文献】 特開2012−236776(JP,A)
【文献】 特開2002−069097(JP,A)
【文献】 特開2014−141580(JP,A)
【文献】 特開平04−220401(JP,A)
【文献】 特開昭58−002301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテオグリカンをプロトン型強酸性陽イオン交換樹脂にて処理し、プロトン型プロテオグリカン水溶液を得て、該プロテオグリカン水溶液を減圧下で47℃以上で加温することを特徴とする、プロテオグリカン分解物の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料や医薬品、飲食品、日用品などで使用されるプロテオグリカンの分解物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロテオグリカンは天然の高分子化合物であり、アミノ糖やウロン酸から構成されるグリコサミノグリカンを主成分とする多糖類とタンパク質との共有結合物の総称である。プロテオグリカンは、一般の糖タンパク質と比較して、全成分中のグリコサミノグリカン含量が極めて多いことを特徴とする。プロテオグリカンは、起源となる原料の種類や抽出・製造条件により、分子量や含まれるアミノ酸や糖(中性糖、ウロン酸、アミノ糖など)の種類や量、比率も異なり、千差万別である。
【0003】
プロテオグリカンは、生体成分として多様な機能性を持つ重要な天然成分である。主要な各種臓器、脳、皮膚をはじめとした体全体の組織中の細胞外マトリックスや細胞表面に存在するほか、関節軟骨の主成分としても存在している。プロテオグリカンは、コラーゲンやヒアルロン酸と複合体を作ることで身体組織や皮膚組織を維持しており、組織形成や伝達物質としての役割などを有し、組織修復にも関係する成分である。
【0004】
プロテオグリカンは、保水性や上皮細胞増殖作用などの様々な機能を有することが明らかになってきており、化粧品や食品など様々な分野において用いられている。しかし、プロテオグリカンは高分子のため、水に溶解すると高い粘性を有し、濃度が高くなると水に溶解しにくかったり、添加対象の化粧品や食品などの粘性へ影響を与えたりするなど、取扱いに難点がある。そのため、粘度の低いプロテオグリカンが求められている。一般的に、粘度は物質の分子量と相関があり、分子量が小さくなる程、その物質を溶解した溶液の粘度も低くなる。
【0005】
プロテオグリカンを分解する技術として、酵素を用いた方法が報告されている(特許文献1〜5)。しかし、これら酵素を用いた方法では、プロテオグリカンを分解する酵素自体が高価であり、また、分解して得た低分子プロテオグリカンと酵素とを分離しなければならないなど、コスト面および工程面で欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−169751号 公報
【特許文献2】特開2008−273955号 公報
【特許文献3】特開2009−278907号 公報
【特許文献4】特開2011−126880号 公報
【特許文献5】特開2014−64580号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を鑑み、本発明は、より低コストでかつ簡易な方法でプロテオグリカン分解物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様は、原料のプロテオグリカンをプロトン型強酸性陽イオン交換樹脂、もしくは強酸やクエン酸の少なくとも一つにて処理し、次に加温することを要旨とする。
【0009】
本発明の他の態様は、分子量が40kDa以下であり、純水に対する相対粘度が26.5℃で1.5以下であり、1w/v%水溶液の270nmの吸光度が2以上であるプロテオグリカン分解物であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、低コストでかつ簡易な方法でプロテオグリカン分解物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の、実施例2に係り、実施例1に係るプロテオグリカン分解物の分子量分布を示す図である。
図2】実施例2および比較例1、実施例4、比較例2、実施例6、実施例8、実施例10に係り、プロテオグリカン分解物の原料とした鮭由来プロテオグリカンの分子量分布を示す図である。
図3】比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの分子量分布を示す図である。
図4】比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図である。
図5】原料の鮭由来プロテオグリカンの1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図である。
図6】実施例4に係り、実施例3に係るプロテオグリカン分解物の分子量分布を示す図である。
図7】実施例4に係り、実施例3に係るプロテオグリカン分解物の1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図である。
図8】比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの分子量分布を示す図である。
図9】比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図である。
図10】実施例6に係り、実施例5に係るプロテオグリカン分解物の分子量分布を示す図である。
図11】実施例6に係り、実施例5に係るプロテオグリカン分解物の1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図である。
図12】実施例8に係り、実施例7に係るプロテオグリカン分解物の分子量分布を示す図である。
図13】実施例10に係り、実施例9に係るプロテオグリカン分解物の分子量分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態をより具体的に説明する。
【0013】
プロテオグリカンの原料由来としては、牛、鶏、鯨などの哺乳類や鳥類の軟骨や、鮭、鮫、エイなどの魚類の軟骨であり、その種類を問わない。また、プロテオグリカンの抽出薬剤についても、酢酸などの有機酸などの酸、アルカリ、グアニジン塩酸、水、温熱水など様々あるが、本発明では抽出薬剤や温度や時間などの抽出・製造の条件も限定しないものである。
【0014】
本発明のプロテオグリカンの分解方法としては、その一つは最初に原料のプロテオグリカンを含む水溶液をプロトン型強酸性陽イオン交換樹脂にて処理することである。プロトンとは水素イオンのことであり、プロトン型強酸性陽イオン交換樹脂とは、樹脂のイオン交換基と結合している陽イオンがプロトンである強酸性陽イオン交換樹脂のことである。強酸性陽イオン交換樹脂は、担体にスルホン酸基のイオン交換基が導入された水不溶性の高分子樹脂である。担体としてはスチレン系やフェノール系、ビニル系、アクリルアミド系などの合成樹脂やセルロース系、アガロース系、デキストラン系などがある。樹脂を使用する前には、常法により酸やアルカリなどで予備洗浄し、酸によりプロトン型に活性化する必要がある。
【0015】
原料のプロテオグリカンを含む水溶液をプロトン型強酸性陽イオン交換樹脂に接触させる際、原料のプロテオグリカンを含む水溶液には、原料のプロテオグリカン以外の物質、特にイオン物質は入っていないほうが好ましい。イオン物質が共存するときは、イオン強度は低いほうが望ましい。
【0016】
プロトン型強酸性陽イオン交換樹脂の接触方法としては、カラムなどに樹脂を充填し、原料のプロテオグリカンを含む水溶液をカラムに通過させる方式や、バッチ式などがある。接触時間は数分以上必要である。使用するプロトン型強酸性陽イオン交換樹脂の量は、樹脂の種類により異なるが、出発原料となる元のプロテオグリカンに対して、その樹脂の交換容量に安全率を乗じた以上の樹脂量は必要である。次に、プロトン型強酸性陽イオン交換樹脂と接触させたプロテオグリカンを、ろ過などの方法により、樹脂から分離して回収する。ろ過後のプロトン型強酸性陽イオン交換樹脂を水で洗浄し、樹脂に付着しているプロテオグリカンの残留分を回収する。
【0017】
原料のプロテオグリカンを強酸で処理するとき、強酸としては塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸やトリフルオロ酢酸などが挙げられる。また、原料のプロテオグリカンはクエン酸で処理してもよいし、強酸とクエン酸の混合物で処理してもよい。原料のプロテオグリカンと強酸、クエン酸の接触方法は、強酸やクエン酸の溶液に原料のプロテオグリカンを溶解してもよいし、原料のプロテオグリカンの水溶液に強酸やクエン酸を添加してもよい。強酸やクエン酸の濃度は原料のプロテオグリカンの種類や濃度にもよるが、原料のプロテオグリカン水溶液中の強酸の濃度はおおよそ5mM以上、クエン酸濃度はおおよそ0.1%以上が好ましい。また、接触時間は、強酸、クエン酸共に1時間以上、好ましくは10時間以上必要である。接触後、添加した強酸やクエン酸は除去したほうがよい。除去方法は限外ろ過でもよいし、透析、その他通常用いられている方法でよい。
【0018】
次に、プロトン型強酸性陽イオン交換樹脂、または強酸やクエン酸で処理して得たプロテオグリカンを含む水溶液を加温する。加温の温度と時間は、原料のプロテオグリカンの種類や量にもよるが、加温の温度が70℃以上の場合は、加温時間は24時間以上必要である。加温の温度が50℃や60℃の場合は、より長時間必要である。
【0019】
得られた水溶液はプロテオグリカン分解物を含む水溶液であり、そのまま使用することもできるが、噴霧乾燥や凍結乾燥などにより粉末化してもよいし、アルコールやアセトンなどの有機溶剤により沈殿、風乾して、粉末化してもよい。また、中和してプロテオグリカン分解物の金属塩水溶液とした後に同様の処理を行うと、酸性であるプロテオグリカン分解物が中性になり、様々な製品の原料としての扱いが容易になる。
【0020】
また、プロトン型強酸性陽イオン交換樹脂、または強酸やクエン酸で処理して得たプロテオグリカンを含む水溶液を、加温しながら濃縮、粉末化することでもプロテオグリカンを分解することができる。
【0021】
本発明の物質は、ゲルろ過クロマトグラフィー法で測定した分子量が40kDa以下であり、オストワルド式による純水に対する相対粘度が26.5℃で1.5以下であり、1w/v%水溶液の270nmの吸光度が光路長1cmで、2以上であるプロテオグリカン分解物である。
【0022】
本発明のプロテオグリカン分解物は、化粧料や飲料・食品などの原料として用いても、元の化粧料や飲料・食品などの粘性をほとんど変化させないという特徴がある。化粧料としては、化粧水や美容液、乳液、クリ−ム、リップ類などの化粧品や、シャンプー、リンス、入浴剤、石鹸などのトイレタリー用品が挙げられる。また、飲料にも容易に添加が可能であり、食品にも同様に適用できる。
【0023】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
(プロテオグリカン分解物の製造1:強酸性陽イオン交換樹脂処理)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:AG 50W−X8 resin、バイオラッド社製)をガラス製カラムに充填し(内径2.5cm、高さ8.2cm)、1M塩酸100mLを流下して樹脂を洗浄・活性化した後、脱イオン水200mLを流下して過剰の塩酸を除去した。原料の鮭由来プロテオグリカン0.6gを脱イオン水45mLに溶解した溶液を、室温でカラム上方から添加・流下した。その後、樹脂に脱イオン水を110mL流下し、溶出液150mLを得た。
【0025】
この強酸性陽イオン交換樹脂の溶出液10mLをバイアル瓶に入れ、蓋を閉め、70℃に加温した定温乾燥器(Drying Oven DX31、ヤマト科学(株)製)内へ静置した。24時間後、定温乾燥器よりバイアル瓶を取り出し、自然に冷却した。蓋を開け、50mM水酸化ナトリウム水溶液1mL、5mM水酸化ナトリウム水溶液9mLを反応液に加えて中和をし、プロテオグリカン分解物水溶液20mLを得た。
【実施例2】
【0026】
(プロテオグリカン分解物の分子量測定)
実施例1に係るプロテオグリカン分解物の分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はトヨパール HW55F(内径2.7cm、高さ116cm、東ソー(株)製)、ポンプはLKB・PumpP−1(ファルマシア社製)、フラクションコレクターはLKB・FRAC−100(ファルマシア社製)を用いた。実施例1に係るプロテオグリカン分解物水溶液5mLを、カラム上方から添加した。溶離液は1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、4mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量75,000、38,500;和光純薬工業(株)製、150,000、10,000;シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0027】
図1は、実施例1に係るプロテオグリカン分解物のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図1中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、実施例1に係るプロテオグリカン分解物の分子量は10kDa以下と算出された。
【0028】
なお、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量をゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はSephacryl S−500 HR(内径2.8cm、高さ120cm、GEヘルスケア社製)、ポンプはAC−2120ペリスタ・バイオミニポンプ(アトー(株)製)、フラクションコレクターはADVANTEC FRC−2120 Fraction Collector(アドバンテック東洋(株)製)を用いた。原料の鮭由来プロテオグリカン10mgを0.1M塩化ナトリウム水溶液5mLに溶解した溶液を、カラム上方から添加した。溶離液は0.1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、5.5mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量1,400,000、670,000、410,000、150,000、シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0029】
図2は、原料の鮭由来プロテオグリカンのゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図2中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量は、1,400kDa以上と確認された。
【0030】
実施例1に係るプロテオグリカン分解物と原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量の比較より、実施例1に係るプロテオグリカン分解物は、原料の鮭由来プロテオグリカンが約140分の1の大きさに分解されたものであることがわかった。
【比較例1】
【0031】
(プロテオグリカン分解物の製造条件の検討:加温温度)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:AG 50W−X8 resin、バイオラッド社製)をガラス製カラムに充填し(内径2.5cm、高さ8.2cm)、1M塩酸100mLを流下して樹脂を洗浄・活性化した後、脱イオン水200mLを流下して過剰の塩酸を除去した。原料の鮭由来プロテオグリカン0.6gを脱イオン水45mLに溶解した溶液を、室温でカラム上方から添加・流下した。その後、樹脂に脱イオン水を110mL流下し、溶出液150mLを得た。
【0032】
この強酸性陽イオン交換樹脂の溶出液10mLをバイアル瓶に入れ、蓋を閉め、47℃に加温した定温乾燥器(Drying Oven DX31、ヤマト科学(株)製)内へ静置した。24時間後、定温乾燥器よりバイアル瓶を取り出し、自然に冷却した。蓋を開け、50mM水酸化ナトリウム水溶液1mL、5mM水酸化ナトリウム水溶液9mLを反応液に加えて中和をし、プロテオグリカン分解条件検討サンプル水溶液20mLを得た。
【0033】
比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプル水溶液10mLを、透析用セルロースチューブ(外周9cm×長さ15cm、エーディア(株)製)に入れ、上下の口を封じ、4℃の低温室で、外液を脱イオン水にして3日間透析した。外液の脱イオン水は1日に3回交換した。その後セルロースチューブ内液を回収し、凍結乾燥し(凍結乾燥機 EYELA FDU−1200、東京理科器械(株)製)、15.9mgの白色綿状固体である比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルを得た。
【0034】
比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はSephacryl S−500 HR(内径2.8cm、高さ120cm、GEヘルスケア社製)、ポンプはAC−2120ペリスタ・バイオミニポンプ(アトー(株)製)、フラクションコレクターはADVANTEC FRC−2120 Fraction Collector(アドバンテック東洋(株)製)を用いた。比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプル水溶液5mLをカラム上方から添加した。溶離液は0.1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、5.5mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量1,400,000、670,000、410,000、150,000、シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0035】
図3は、比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルのゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図3中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの分子量は1,400kDa以上と確認された。
【0036】
実施例2に記載したとおり、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量が1,400kDa以上であることより、原料の鮭由来プロテオグリカンは分解されておらず、比較例1の方法ではプロテオグリカン分解物を製造することはできないことがわかった。
【0037】
比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの紫外可視吸収スペクトルを測定した。比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの1w/v%水溶液をセル長1cmの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計(U−3010型分光光度計、(株)日立製作所製)で測定した。測定条件については、測定波長範囲は190〜800nm、スキャンスピードは60nm/分、サンプリング間隔は0.2nm、対照溶液として純水を用意し、ダブルビーム方式で実施した。なお、比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの1w/v%水溶液の800nmの吸光度をゼロとして、各波長での吸光度を測定した。
【0038】
図4は比較例1に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図であり、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。図4の測定結果より、270nmの吸光度は0.803であった。原料の鮭由来プロテオグリカンについても、同様の条件で測定を行った。図5は原料の鮭由来プロテオグリカンの1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図であり、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。図5の測定結果より、270nmの吸光度は0.542であった。
【実施例3】
【0039】
(プロテオグリカン分解物の製造2:強酸性陽イオン交換樹脂処理)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:AG 50W−X8 resin、バイオラッド社製)をガラス製カラムに充填し(内径2.5cm、高さ8.2cm)、1M塩酸60mLを流下して樹脂を洗浄・活性化した後、脱イオン水150mLを流下して過剰の塩酸を除去した。原料の鮭由来プロテオグリカン0.4gを脱イオン水30mLに溶解した溶液を、室温でカラム上方から添加・流下した。その後、樹脂に脱イオン水を270mL流下し、溶出液約300mLを得た。得られた溶出液をウォーターバスで47℃に加温しながら、約10mLになるまで45分間濃縮した(エバポレーター;EYELA ROTARY VACUUM EVAPORATOR Nシリーズ、東京理科器械(株)製、恒温水循環装置;Neo Cool Circulator CF600(アスピレーター付)、ヤマト科学(株)製)。得られた濃縮液を凍結乾燥し(凍結乾燥機 EYELA FDU−1200、東京理科器械(株)製)、0.32gの白色綿状固体であるプロテオグリカン分解物を得た。
【実施例4】
【0040】
(プロテオグリカン分解物の分析)
実施例3に係るプロテオグリカン分解物のタンパク質含量を、比色法であるローリー法にて、牛血清アルブミン(アクロス社)を標準物質とした検量線から求めたところ、6.3重量%であった。ウロン酸含量を、比色法であるカルバゾール硫酸法にて、グルクロン酸(シグマ社)を標準物質とした検量線から求めたところ、38.3重量%であった。原料の鮭由来プロテオグリカンについて同様に分析したところ、タンパク質含量は6.5重量%、ウロン酸含量は34.6重量%であった。これらの結果から、実施例3に係るプロテオグリカン分解物のタンパク質とウロン酸含量は、原料の鮭由来プロテオグリカンとほとんど変化がないことが明らかとなった。
【0041】
実施例3に係るプロテオグリカン分解物0.2w/v%の水溶液のpHは2.5であり、原料の鮭由来プロテオグリカン0.2w/v%の水溶液のpHは6.2であった。
【0042】
実施例3に係るプロテオグリカン分解物の相対粘度をオストワルド式で測定した。測定器具にはオストワルド相対粘度計No.1(柴田科学(株)製)を用い、溶媒は脱イオン水とし、実施例3に係るプロテオグリカン分解物の5mg/mL水溶液の粘度を26.5℃の水浴中で測定した。結果、実施例3に係るプロテオグリカン分解物5mg/mL水溶液の相対粘度は1.1であった。原料の鮭由来プロテオグリカン5mg/mL水溶液を同様の条件で測定したところ、相対粘度は3.7であった。
【0043】
実施例3に係るプロテオグリカン分解物の分子量をゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はトヨパール HW55F(内径2.7cm、高さ116cm、東ソー(株)製)、ポンプはLKB・PumpP−1(ファルマシア社製)、フラクションコレクターはLKB・FRAC−100(ファルマシア社製)を用いた。実施例3に係るプロテオグリカン分解物10mgを1M塩化ナトリウム水溶液5mLに溶解し、カラム上方から添加した。溶離液は1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、4mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量75,000、38,500;和光純薬工業(株)製、150,000、10,000;シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0044】
図6は、実施例3に係るプロテオグリカン分解物のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図6中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、実施例3に係るプロテオグリカン分解物の分子量は32kDaと算出された。
【0045】
実施例2に記載したとおり、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量は、1,400kDa以上であった。実施例3に係るプロテオグリカン分解物と原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量の比較より、実施例3に係るプロテオグリカン分解物は、原料の鮭由来プロテオグリカンが約44分の1の大きさに分解されたものであることがわかった。
【0046】
実施例3に係るプロテオグリカン分解物の紫外可視吸収スペクトルについて、比較例1と同様の条件で測定を行った。図7は実施例3に係るプロテオグリカン分解物の1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図であり、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。図7の測定結果より、270nmの吸光度は2.650であった。
【比較例2】
【0047】
(プロテオグリカン分解物の製造条件の検討:中和工程の導入)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:AG 50W−X8 resin、バイオラッド社製)をガラス製カラムに充填し(内径2.5cm、高さ8.2cm)、3M塩酸100mLを流下して樹脂を洗浄・活性化した後、脱イオン水200mLを流下して過剰の塩酸を除去した。原料の鮭由来プロテオグリカン0.4gを脱イオン水30mLに溶解した溶液を、室温でカラム上方から添加・流下した。その後、樹脂に脱イオン水を300mL流下し、溶出液約300mLを得た。得られた溶出液を撹拌しながら、1M水酸化ナトリウム水溶液および50mM水酸化ナトリウム水溶液を滴下して中和をした。次に、ウォーターバスで47℃に加温しながら、約40mLになるまで40分間濃縮した(エバポレーター;EYELA ROTARY VACUUM EVAPORATOR Nシリーズ、東京理科器械(株)製、恒温水循環装置;Neo Cool Circulator CF600(アスピレーター付)、ヤマト科学(株)製)。この濃縮液を透析用セルロースチューブ(外周9cm×長さ35cm、エーディア(株)製)に入れ、外液を脱イオン水にして3日間透析した。外液の脱イオン水は1日に3回交換した。その後セルロースチューブ内液を回収し、ウォーターバスで47℃に加温しながら、約10mLになるまで30分間濃縮した(エバポレーター;EYELA ROTARY VACUUM EVAPORATOR Nシリーズ、東京理科器械(株)製、恒温水循環装置;Neo Cool Circulator CF600(アスピレーター付)、ヤマト科学(株)製)。得られた濃縮液を凍結乾燥し(凍結乾燥機 EYELA FDU−1200、東京理科器械(株)製)、0.36gの白色綿状固体であるプロテオグリカン分解条件検討サンプルを得た。
【0048】
比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はSephacryl S−500 HR(内径2.8cm、高さ120cm、GEヘルスケア社製)、ポンプはAC−2120ペリスタ・バイオミニポンプ(アトー(株)製)、フラクションコレクターはADVANTEC FRC−2120 Fraction Collector(アドバンテック東洋(株)製)を用いた。比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプル10mgを0.1M塩化ナトリウム水溶液5mLに溶解し、カラム上方から添加した。溶離液は0.1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、5.5mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量1,400,000、670,000、410,000、150,000、シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0049】
図8は、比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルのゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図8中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの分子量は1,400kDa以上と確認された。
【0050】
実施例2に記載したとおり、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量が1,400kDa以上であることより、原料の鮭由来プロテオグリカンは分解されておらず、比較例2の方法ではプロテオグリカン分解物を製造することはできないことがわかった。
【0051】
比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの紫外可視吸収スペクトルについて、比較例1と同様の条件で測定を行った。図9は比較例2に係るプロテオグリカン分解条件検討サンプルの1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図であり、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。図9の測定結果より、270nmの吸光度は0.526であった。
【実施例5】
【0052】
(プロテオグリカン分解物の製造3:強酸性陽イオン交換樹脂処理)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSK1B、三菱化学(株)製)をガラス製カラムに充填し(内径2cm、高さ8cm)、1M塩酸100mLを流下して樹脂を洗浄・活性化した後、脱イオン水200mLを流下して過剰の塩酸を除去した。原料の鮭由来プロテオグリカン0.4gを脱イオン水30mLに溶解した溶液を、室温でカラム上方から添加・流下した。その後、樹脂に脱イオン水を100mL流下し、溶出液約125mLを得た。得られた溶出液をウォーターバスで47℃に加温しながら、約10mLになるまで30分間濃縮した(エバポレーター;EYELA ROTARY VACUUM EVAPORATOR Nシリーズ、東京理科器械(株)製、恒温水循環装置;Neo Cool Circulator CF600(アスピレーター付)、ヤマト科学(株)製)。得られた濃縮液を凍結乾燥し(凍結乾燥機 EYELA FDU−1200、東京理科器械(株)製)、0.35gの白色綿状固体であるプロテオグリカン分解物を得た。
【実施例6】
【0053】
(プロテオグリカン分解物の分析)
実施例5に係るプロテオグリカン分解物のタンパク質含量を、比色法であるローリー法にて、牛血清アルブミン(アクロス社製)を標準物質とした検量線から求めたところ、6.3重量%であった。ウロン酸含量を、比色法であるカルバゾール硫酸法にて、グルクロン酸(シグマ社製)を標準物質とした検量線から求めたところ、37.2重量%であった。原料の鮭由来プロテオグリカンについて同様に分析したところ、タンパク質含量は6.5重量%、ウロン酸含量は34.6重量%であった。これらの結果から、実施例5に係るプロテオグリカン分解物のタンパク質とウロン酸含量は、原料の鮭由来プロテオグリカンとほとんど変化がないことが明らかとなった。
【0054】
実施例5に係るプロテオグリカン分解物0.2w/v%の水溶液のpHは2.6であり、原料の鮭由来プロテオグリカン0.2w/v%の水溶液のpHは6.2であった。
【0055】
実施例5に係るプロテオグリカン分解物の相対粘度をオストワルド式で測定した。測定器具にはオストワルド相対粘度計No.1(柴田科学(株)製)を用い、溶媒は脱イオン水とし、実施例5に係るプロテオグリカン分解物の5mg/mL水溶液の粘度を26.5℃の水浴中で測定した。結果、実施例5に係るプロテオグリカン分解物5mg/mL水溶液の相対粘度は1.2であった。原料の鮭由来プロテオグリカン5mg/mL水溶液を同様の条件で測定したところ、相対粘度は3.7であった。
【0056】
実施例5に係るプロテオグリカン分解物の分子量をゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はトヨパール HW55F(内径2.7cm、高さ116cm、東ソー(株)製)、ポンプはLKB・PumpP−1(ファルマシア社製)、フラクションコレクターはLKB・FRAC−100(ファルマシア社製)を用いた。実施例5に係るプロテオグリカン分解物10mgを1M塩化ナトリウム水溶液5mLに溶解し、カラム上方から添加した。溶離液は1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、4mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量75,000、38,500;和光純薬工業(株)製、150,000、10,000;シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0057】
図10は、実施例5に係るプロテオグリカン分解物のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図10中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、実施例5に係るプロテオグリカン分解物の分子量は12kDaと算出された。
【0058】
実施例2に記載したとおり、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量は、1,400kDa以上であった。実施例5に係るプロテオグリカン分解物と原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量の比較より、実施例5に係るプロテオグリカン分解物は、原料の鮭由来プロテオグリカンが約120分の1の大きさに分解されたものであることがわかった。
【0059】
実施例5に係るプロテオグリカン分解物の紫外可視吸収スペクトルについて、比較例1と同様の条件で測定を行った。図11は実施例5に係るプロテオグリカン分解物の1w/v%水溶液の190〜800nmの紫外可視吸収スペクトルを表す図であり、横軸は測定波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。図11の測定結果より、270nmの吸光度は2.687であった。
【実施例7】
【0060】
(プロテオグリカン分解物の製造4:強酸処理)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。原料の鮭由来プロテオグリカン0.1gを脱イオン水40mLに溶解し、撹拌しながら、塩酸の終濃度が0.05Mになるように1M塩酸を2.1mL滴下した。4℃で3時間撹拌した後、反応液を透析用セルロースチューブ(外周9cm×長さ35cm、エーディア(株)製)に入れ、外液を25mM塩酸にし、4℃で一晩透析した。その後、外液を脱イオン水に変え、3日間透析した。外液の脱イオン水は1日3回交換した。セルロースチューブ内液をメスシリンダーに移し、全量100mLとなるよう、脱イオン水を加えた。溶液のうち30mLをバイアル瓶に入れ、蓋を閉め、70℃に加温した定温乾燥器(Drying Oven DX31、ヤマト科学(株)製)内へ静置した。24時間後、定温乾燥器よりバイアル瓶を取り出し、自然に冷却した。蓋を開け、50mM水酸化ナトリウム水溶液1mL、5mM水酸化ナトリウム水溶液4mLを反応液に加えて中和をし、プロテオグリカン分解物水溶液35mLを得た。
【実施例8】
【0061】
(プロテオグリカン分解物の分子量測定)
実施例7に係るプロテオグリカン分解物の分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はトヨパール HW55F(内径2.7cm、高さ116cm、東ソー(株)製)、ポンプはLKB・PumpP−1(ファルマシア社製)、フラクションコレクターはLKB・FRAC−100(ファルマシア社製)を用いた。実施例7に係るプロテオグリカン分解物水溶液5mLを、カラム上方から添加した。溶離液は1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、4mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量75,000、38,500;和光純薬工業(株)製、150,000、10,000;シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0062】
図12は、実施例7に係るプロテオグリカン分解物のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図12中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、実施例7に係るプロテオグリカン分解物の分子量は17kDaと算出された。
【0063】
実施例2に記載したとおり、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量は、1,400kDa以上であった。実施例7に係るプロテオグリカン分解物と原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量の比較より、実施例7に係るプロテオグリカン分解物は、原料の鮭由来プロテオグリカンが約82分の1の大きさに分解されたものであることがわかった。
【実施例9】
【0064】
(プロテオグリカン分解物の製造5:クエン酸処理)
原料のプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン((株)角弘プロテオグリカン研究所)を購入して用いた。原料の鮭由来プロテオグリカン0.1gを脱イオン水40mLに溶解し、撹拌しながら、クエン酸の終濃度が1.8%になるようにクエン酸一水和物を0.8g加えた。4℃で3時間撹拌した後、反応液を透析用セルロースチューブ(外周9cm×長さ35cm、エーディア(株)製)に入れ、外液を1%クエン酸水溶液にし、4℃で一晩透析した。その後、外液を脱イオン水に変え、3日間透析した。外液の脱イオン水は1日3回交換した。セルロースチューブ内液をメスシリンダーに移し、全量100mLとなるよう、脱イオン水を加えた。溶液のうち30mLをバイアル瓶に入れ、蓋を閉め、70℃に加温した定温乾燥器(Drying Oven DX31、ヤマト科学(株)製)内へ静置した。24時間後、定温乾燥器よりバイアル瓶を取り出し、自然に冷却した。蓋を開け、50mM水酸化ナトリウム水溶液1mL、5mM水酸化ナトリウム水溶液4mLを反応液に加えて中和をし、プロテオグリカン分解物水溶液35mLを得た。
【実施例10】
【0065】
(プロテオグリカン分解物の分子量測定)
実施例9に係るプロテオグリカン分解物の分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した。ゲルろ過クロマトグラフィー用樹脂はトヨパール HW55F(内径2.7cm、高さ116cm、東ソー(株)製)、ポンプはLKB・PumpP−1(ファルマシア社製)、フラクションコレクターはLKB・FRAC−100(ファルマシア社製)を用いた。実施例9に係るプロテオグリカン分解物水溶液5mLを、カラム上方から添加した。溶離液は1M塩化ナトリウム水溶液、流速0.5mL/分で、4mLずつ溶出液を分取した。得られた各溶出液画分に対して、比色法であるカルバゾール硫酸法にてウロン酸含量を分析した。得られたウロン酸含量ピークの溶出体積に対して、分子量標準物質としてデキストラン(平均分子量75,000、38,500;和光純薬工業(株)製、150,000、10,000;シグマアルドリッチ社製)を用いた検量線から分子量を求めた。
【0066】
図13は、実施例9に係るプロテオグリカン分解物のゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示すものであり、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーの溶出体積、縦軸はゲルろ過クロマトグラフィー溶出液画分のカルバゾール硫酸法呈色液の535nmでの吸光度を示す。図13中の数字(kDa表記)は、分子量標準物質であるデキストランの平均分子量を示す。この結果から、実施例9に係るプロテオグリカン分解物の分子量は17kDaと算出された。
【0067】
実施例2に記載したとおり、原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量は、1,400kDa以上であった。実施例9に係るプロテオグリカン分解物と原料の鮭由来プロテオグリカンの分子量の比較より、実施例9に係るプロテオグリカン分解物は、原料の鮭由来プロテオグリカンが約82分の1の大きさに分解されたものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により、プロテオグリカン分解物が低コストで製造され、安価に提供されることになり、化粧料産業や食品産業に広く利用されることが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13