(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688502
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】液体搬送用タンクおよび切断汚泥水の回収方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/09 20060101AFI20200421BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20200421BHJP
【FI】
E01C23/09 Z
B65D90/02 J
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-145884(P2016-145884)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-16959(P2018-16959A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】516224134
【氏名又は名称】ハイブリッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】辺見 浩司
(72)【発明者】
【氏名】辺見 宇宙
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−047611(JP,A)
【文献】
特開昭50−115317(JP,A)
【文献】
特開平04−272334(JP,A)
【文献】
特開平09−195331(JP,A)
【文献】
特開平04−330125(JP,A)
【文献】
特開2001−301884(JP,A)
【文献】
米国特許第05564408(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D1/00−7/04
B65D88/00−90/66
C02F1/00
E01C21/00−23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体の内部が仕切板により仕切られて、清水室および汚水室が形成された液体搬送用タンクであって、
前記タンク本体内の上部に隔壁により形成された共用室を備え、
前記共用室は、前記清水室および汚水室と、それぞれ第1のバルブおよび第2のバルブを介して連通可能に構成された液体搬送用タンク。
【請求項2】
前記仕切板は、上下に延びるように配置されており、上部が前記隔壁の一部を構成する請求項1に記載の液体搬送用タンク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体搬送用タンクを用いた切断汚泥水の回収方法であって、
前記清水室および共用室に清水を収容して、作業現場まで搬送する工程と、
前記作業現場で発生した切断汚泥水を、前記汚水室および共用室に回収する工程とを備える切断汚泥水の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体搬送用タンクおよびこれを用いた切断汚泥水の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトやコンクリート等からなる舗装路面の切断作業においては、切断時に使用するカッターの冷却水を作業現場まで搬送し、作業中に発生する切断汚泥水を回収することが従来から行われている。このような用途に使用されるタンクとして、例えば、特許文献1に開示された構成が知られている。
【0003】
このタンクは、内部が柔軟性を有する防水布によって仕切られることにより清水室および汚水室が形成されており、車両等に搭載して清水を搬送する際には、清水室への清水の供給により防水布が撓んだ状態になり、清水室の容積が大きくなる一方、作業後の汚水を汚水室に供給することにより防水布が逆方向に撓み、汚水室の容積が大きくなるように構成されている。
【0004】
この構成によれば、清水と汚水とが混じり合うのを防止しつつ、往路および復路において多量の清水および汚水をそれぞれ搬送することができ、タンク内部の空間を効率良く使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−231359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のタンクは、内部を洗浄する際には防水布が弛んだ状態になっているため、水洗等による洗浄作業が困難になるという問題があり、更に、防水布の耐久性の問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、洗浄作業性および耐久性を良好にしつつ、清水および汚水を効率良く搬送することができる液体搬送用タンクの提供を目的とし、更に、この液体搬送用タンクを用いた切断汚泥水の回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、タンク本体の内部が仕切板により仕切られて、清水室および汚水室が形成された液体搬送用タンクであって、前記タンク本体内の上部に隔壁により形成された共用室を備え、前記共用室は、前記清水室および汚水室と、それぞれ第1のバルブおよび第2のバルブを介して連通可能に構成された液体搬送用タンクにより達成される。
【0009】
この液体搬送用タンクにおいて、前記仕切板は、上下に延びるように配置されており、上部が前記隔壁の一部を構成することができる。
【0010】
また、本発明の前記目的は、上記の液体搬送用タンクを用いた切断汚泥水の回収方法であって、前記清水室および共用室に清水を収容して、作業現場まで搬送する工程と、前記作業現場で発生した切断汚泥水を、前記汚水室および共用室に回収する工程とを備える切断汚泥水の回収方法により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄作業性および耐久性を良好にしつつ、清水および汚水を効率良く搬送することができる液体搬送用タンクを提供することができ、更に、この液体搬送用タンクを用いた切断汚泥水の回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体搬送用タンクを一部切り欠いて示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す液体搬送用タンクの要部断面図である。
【
図3】
図1に示す液体搬送用タンクの使用方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体搬送用タンクの斜視図であり、側壁の上部を一部切り欠いた状態で示している。この液体搬送用タンク1は、タンク本体2の内部が上下に延びる仕切板4で仕切られて、清水室10および汚水室20が形成されている。
【0014】
清水室10は、上部に形成された給水口12から冷却水や洗浄用水等の清水を導入することができ、下部に設けられた清水排出管14から清水が外部に排出される。清水排水管14には、開閉可能な清水排出バルブ14aが設けられている。清水室10の上部には、ヒンジにより開閉可能とされた蓋板5が設けられており、蓋板5には、清水室10の内外を連通する脱気管5aが設けられている。
【0015】
汚水室20は、上部に形成された汚水口22から切断汚泥水等の汚水を導入することができ、下部に設けられた汚水排出管24から汚水が外部に排出される。汚水排水管24には、開閉可能な汚水排出バルブ24aが設けられている。汚水室20の下部には、汚水排出管24側に向けて下方に傾斜する傾斜板20aと、傾斜板20aの傾斜方向と平面視で直交するようにタンク本体2の側壁に沿って延びるガイド部材20bとが設けられている。ガイド部材20bは、中空の筐体状に形成されており、ガイド部材20bの内部には、汚水排出管24が側壁を介して汚水室20を外部と連通するように配置されている。汚水排出バルブ24aの開閉操作は、タンク本体2の側壁に形成された切欠部2bを介して、外部から行うことができる。
【0016】
図2は、汚水室20の下部を示す断面図である。汚水に含まれるスラッジ等の沈殿物は、傾斜板20aに沿って矢示A方向に案内される。また、液体搬送用タンク1を車両の荷台に搭載した場合には、清水室10が空の状態で汚水室20に汚水が収容されると、汚水の重量によって荷台が傾斜し、沈殿物がガイド部材20bに沿って矢示B方向に案内される。こうして、汚水に含まれる沈殿物が汚水排出管24の近傍に集められ、汚水排出バルブ24aの開放により、沈殿物が液体と共に汚水排出管24から排出される。
【0017】
タンク本体2内の上部には、隔壁32によって共用室30が形成されている。隔壁32は、タンク本体2の天板下面から垂下する側壁32aと、側壁32aに連設された底壁32bとを備えており、側壁32aと対向する仕切板4の上部が隔壁32の一部を構成することで、共用室30を容易に効率よく形成することができる。作業現場においては、清水の全てを汚水として回収するのが困難であることから、通常は汚水よりも清水の搬送量が多くなるため、本実施形態においては、共用室30を汚水室20の内部に形成している。但し、共用室30を清水室10の内部に形成してもよい。あるいは、清水室10および汚水室20の双方に跨るように共用室30を形成し、仕切板4を底壁32の下部から垂下するように設けることも可能である。
【0018】
汚水室20および共用室30の上部には、両者に跨るように延びてヒンジにより開閉可能とされた蓋板6が設けられている。蓋板6には、汚水室20および共用室30の内外を連通する脱気管6a,6bがそれぞれ設けられている。
【0019】
隔壁32を構成する仕切板4の上部には、第1の連通管34および第2の連通管36が設けられている。第1の連通管34は、先端が清水室10内に開放されており、清水室10と共用室30とを連通する。第2の連通管36は、先端が湾曲して仕切板4の下部に接続されており、汚水室20と共用室30とを連通する。底板32bは、第2の連通管36に向けて下方に傾斜しており、共用室30内に滞留するスラッジ等を第2の連通管36に案内する。
【0020】
第1の連通管34および第2の連通管36には、開閉可能な第1のバルブ34aおよび第2のバルブ36aがそれぞれ設けられている。第1のバルブ34aおよび第2のバルブ36aは、清水室10の蓋板5を開放して開閉操作を行うことが可能であり、共用室30をそれぞれ清水室10および汚水室20と連通させることができる。なお、第1のバルブ34aおよび第2のバルブ36aを電動バルブとして、タンク本体2の外部から開閉可能に構成してもよい。
【0021】
以上の構成を備える液体搬送用タンク1は、清水室10および汚水室20にそれぞれ清水および汚水を収容できるだけでなく、共用室30を清水および汚水の双方の収容に利用できることから、清水および汚水の搬送を効率良く行うことができる。
【0022】
例えば、舗装路面の切断作業を行う場合、液体搬送用タンク1を車両の荷台に搭載して、清水排出バルブ14aおよび汚水排出バルブ24aをいずれも閉じた状態で、第1のバルブ34aを開放すると共に第2のバルブ36aを閉じることにより、共用室30を清水室10と連通させる。ついで、カッター冷却用の清水を給水口12から導入すると、
図3(a)に示すように、清水L1が清水室10に収容されると共に、第1の連通管34を介して共用室30にも収容される。
【0023】
次に、液体搬送用タンク1を舗装路面の切断作業現場まで搬送した後、清水排出バルブ14aを開放して清水を使用すると共に、切断作業で発生した切断汚泥水を汚水口22から汚水室20に回収する。清水室10および共用室30内に貯留されていた清水の液面が第1の連通管34よりも下方まで低下すると、第1のバルブ34aを閉じると共に、第2のバルブ36aを開けて、共用室30を汚水室20と連通させる。これにより、
図3(b)に示すように、切断汚泥水L2が、汚水室20および共用室30に回収される。こうして、切断汚泥水を作業現場から搬出することができる。なお、作業現場に搬送した清水は、カッターの冷却用としてだけでなく、路面の洗浄用等としても使用することができる。
【0024】
回収した切断汚泥水は、搬送先の処理施設等で汚水排出バルブ24aを開放して処理施設等に引き渡した後、蓋板5,6を開放することにより、タンク本体2の内部を上方から水洗等により洗浄することができる。仕切板4および隔壁32は、いずれも金属等からなる剛体により形成することができるため、良好な耐久性が得られると共に、洗浄作業を容易に行うことができる。
【0025】
切断汚泥水の回収が必要な作業としては、必ずしも舗装路面の切断作業に限定されるものではなく、例えば、コンクリート面の穿孔作業等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 液体搬送用タンク
2 タンク本体
4 仕切板
10 清水室
20 汚水室
30 共用室
32 隔壁
34a 第1のバルブ
36a 第2のバルブ