特許第6688520号(P6688520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古澤 洋将の特許一覧

<>
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000002
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000003
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000004
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000005
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000006
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000007
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000008
  • 特許6688520-取引システム及び取引方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688520
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】取引システム及び取引方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20200421BHJP
   G06Q 10/08 20120101ALI20200421BHJP
【FI】
   G06Q50/02
   G06Q10/08 306
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-513530(P2019-513530)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2018012875
(87)【国際公開番号】WO2018193805
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-82855(P2017-82855)
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516193483
【氏名又は名称】古澤 洋将
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】古澤 洋将
【審査官】 永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−225614(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03109659(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0218242(US,A1)
【文献】 特開2004−309350(JP,A)
【文献】 LUBIN Gus,違法操業を衛星で監視、世界中に広がるか,[オンライン],Business Insider Japan,2016年11月 1日,[検索日 2019.12.18],URL,https://businessinsider.jp/post-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上で航行する複数の船舶の航行軌跡をモニタリングしてモニタリング情報を生成するモニタリング手段と、
前記モニタリング手段から受信した前記モニタリング情報に含まれる前記複数の船舶の各航行軌跡に基づいて、所定の期間より長く所定の距離範囲内に接近した状態にあった2以上の船舶を検出し、前記2以上の船舶について洋上取引が行われた可能性を判定する洋上取引判定部と、を備える、取引システムであって、
各船舶が所有する各商品の商品情報を含む所有商品リストを生成する生産者側端末をさらに備え、
前記各船舶にそれぞれ1つの生産者側端末が関連付けられており、
前記取引システムは、さらに、
洋上の複数の位置又は領域とその位置又は領域で捕獲可能な捕獲可能商品とが関連付けられた捕獲可能テーブルを有し、前記生産者側端末から受信した前記所有商品リストに含まれる個別の商品の出所を検証する検証部であって、前記モニタリング手段から受信した前記モニタリング情報に基づいて、検証される所有商品リストを送信した生産者側端末が設けられた船舶の航行軌跡を求め、求められた前記航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる各商品とを比較することで個別の商品の出所を検証する検証部を備え、
前記検証部はさらに、前記洋上取引判定部によって洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの1の船舶に関連付けられた生産者側端末からの所有商品リストを検証する際に、前記モニタリング手段から受信したモニタリング情報に基づいて、前記洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの他の船舶に関する航行軌跡をさらに求め、求められた前記他の船舶の航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる商品とを比較することで各商品の出所を検証するように構成されている、
取引システム。
【請求項2】
前記取引システムはさらに、ユーザが注文する商品を示す注文情報を生成するユーザ側端末を備え、
前記商品情報のうち、前記検証部による検証を受け、かつ、前記ユーザ側端末からの注文情報に適合する商品情報を当該ユーザ側端末に提供するように構成されている、
請求項1に記載の取引システム。
【請求項3】
モニタリング手段が、洋上で航行する複数の船舶の航行軌跡をモニタリングしてモニタリング情報を生成するステップと、
洋上取引判定部が、前記モニタリング情報に含まれる前記複数の船舶の各航行軌跡に基づいて、所定の期間より長く所定の距離範囲内に接近した状態にあった2以上の船舶を検出し、洋上取引が行われた可能性を判定するステップと、
生産者側端末が、前記複数の船舶の各船舶が所有する各商品の商品情報を含む所有商品リストを生成するステップと、
検証部が、洋上の複数の位置又は領域と、その位置又は領域で捕獲可能な捕獲可能商品とが関連付けられた捕獲可能テーブルを設けるステップと、前記モニタリング情報に基づいて、検証される前記所有商品リストに関連付けられた船舶の航行軌跡を求め、求められた前記航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる各商品とを比較することで個別の商品の出所を検証するステップと、
を備える取引方法であって、
前記洋上取引が行われた可能性を判定するステップにおいて洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの1の船舶に関連付けられた所有商品リストに含まれる商品の出所を検証する、前記個別の商品の出所を検証する際に、前記モニタリング情報に基づいて、前記洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの他の船舶に関する航行軌跡をさらに求め、求められた前記他の船舶の航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる商品とを比較することで各商品の出所を検証する、
取引方法。
【請求項4】
ユーザ側端末が、ユーザが注文する商品を表す注文商品情報を生成するステップと、前記所有商品リストに含まれる商品のうち、前記検証を受け、かつ、前記注文商品情報に適合する商品の商品情報をユーザ側端末に提供するステップと、をさらに備える請求項3記載の取引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引システム及び取引方法に関し、例えば海産物の取引システム及び取引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品の取引において、需要と供給の適切なバランスを、タイミングを合わせて取ること(いわゆるジャスト・イン・タイム)は非常に重要である。とりわけ水産物や農産物のような生鮮物の取引の分野においては、需要に即した商品を適時に生産(漁獲、収穫)して市場に提供し、さらにこの商品を生産者から消費者まで迅速に流通させることで、消費者の希望に沿った商品をより新鮮な状態で提供することが可能となり、消費者の満足度が向上し、需要を促進させ、ひいては生産者により利益をもたらすこととなる。
【0003】
とりわけ、漁業においては、一般に、漁船が、目的とする魚が生息する海域へ航行し、そこで操業して魚を捕獲し、その魚を港へ持ち帰り、水揚げし、水揚げされた魚は、その水揚げされた港を産地とされて、市場で取引され、最終的に消費者のもとへ届けられる、という形態が一般的である。
【0004】
ここで、例えば、より新鮮な魚を消費者に提供するために、漁獲した水産物の情報を船上から管理者端末へ送信することで、取引を促進する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、需要が見込まれる魚を目的として、それに対応する海域で操業したとしても、必ずしも目的の魚を、品質の適した状態で必要な量だけ漁獲できるとは限らない、という問題が常にある。また、そもそも目的の魚を漁獲するのに適した海域が、相互に離れて点在しているような場合には、目的の魚を揃えるために、本来一度の操業で回りたい海域を回ることができないこともある。
【0006】
そこで、特に、沖合/遠洋漁業においては、ある海域又はより局所的なある領域で操業している漁船が、他の漁船が他の海域、領域で捕獲した魚を洋上で買い取り、自身が漁獲した魚とともに港まで運んで水揚げする、という取引の実態がある(いわゆる洋上取引)。
【0007】
このような洋上取引によれば、1つの漁船又は船団が実際に操業したよりも広い範囲で操業したのと同じ成果(漁獲高)をあげることができる。即ち、1つの漁船又は船団で回るよりも短時間で、より広い範囲で操業することができるので、より多数の又は多種類の魚を手に入れることができ、市場又は顧客の需要により即した、より品質のよい魚を、より効率よく市場へ流通させることができるという効果がある。
【0008】
しかしながら、洋上取引で魚を買い受けた漁船が、自身が所定の海域で捕獲した魚と、買い取った魚、即ち、他の漁船が、特に他の海域で、捕獲した魚とを区別することなく、水揚げすると、結果として、その魚の本来の産地がわからなくなってしまい、即ち、市場で流通する魚のトレーサビリティが損なわれる、という問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−78571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、洋上取引の実態を把握することができる取引システムと取引方法を提供することにある。洋上取引の利便性を確保しつつ、商品のトレーサビリティを担保する、という両方の利点を実現することができる取引システムと取引方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る取引システムは、洋上で航行する複数の船舶の航行軌跡をモニタリングしてモニタリング情報を生成するモニタリング手段と、前記モニタリング手段から受信した前記モニタリング情報に含まれる前記複数の船舶の各航行軌跡に基づいて、所定の期間より長く所定の距離範囲内に接近した状態にあった2以上の船舶を検出し、前記2以上の船舶について洋上取引が行われた可能性を判定する洋上取引判定部と、を備える。
【0012】
また、本発明に係る取引方法は、洋上で航行する複数の船舶の航行軌跡をモニタリングしてモニタリング情報を生成するステップと、前記モニタリング情報に含まれる前記複数の船舶の各航行軌跡に基づいて、所定の期間より長く所定の距離範囲内に接近した状態にあった2以上の船舶を検出し、洋上取引が行われた可能性を判定するステップと、を備える。
【0013】
本発明によれば、このような構成を備えることにより、洋上で航行する複数の船舶の航行軌跡をモニタリングしたモニタリング情報に基づいて、所定の期間より長く所定の距離範囲内に接近した状態にあった2以上の船舶を検出し、これらの2以上の船舶の間で商品の取引が行われたとみなし、洋上取引が行われた可能性があるものと判定することができる。通常であれば、洋上で航行する複数の船舶、特に操業中の複数の漁船が、一か所に留まることはまれであるので、所定の時間以上一か所に複数の船舶が集まった状態が続いた時には、それらの船舶間で何らかの取引、即ち洋上取引が行われたものと推定する。なお、より正確には、巻き網漁など複数の漁船が船団を組み、採捕を行う場面は存在する。ただし、このような船団は、通常は同一漁港から出港し同一漁港へ戻ることが多い。出港からの経路を追尾することで、漁業を営む船団と洋上取引の船団を識別できると考えられる。従って、各船舶に係る各生産者からの自己申告によらず、洋上取引を検出でき、これにより、各船舶において所有されている商品の正確な出所を特定することができるようになる。従来であれば洋上取引が行われたときには、その商品を流通ルートに乗せた、例えば水揚げした生産者が自己申告しない限りは、その商品がその生産者以外の生産者によるものであることは判定することができず、従って、商品の正確な出所を特定することが著しく妨げられていた。本発明によれば、洋上取引が行われた可能性を判定/検出することができるので、洋上取引の実態を把握することができ、ひいては管理した状態での洋上取引を促進させることができる。また、洋上取引によって商品のトレーサビリティが損なわれる、という問題を解決することができる。
【0014】
なお、以下では、商品として特に海産物を対象とした例を用いて本発明を説明するが、商品は海産物には限定されない。また、合法的な商品にも限定されず、非合法な商品であっても本発明に商品の対象となりうる。
【0015】
さらに本発明に係る取引システムは、各船舶が所有する各商品の商品情報を含む所有商品リストを生成する生産者側端末をさらに備えることができる。
【0016】
さらに前記各船舶にそれぞれ1つの生産者側端末が関連付けられていることができる。
【0017】
また、本発明に係る取引方法は、前記複数の船舶の各船舶が所有する各商品の商品情報を含む所有商品リストを生成するステップをさらに備えることができる。
【0018】
本発明のこのような実施形態によれば、各船舶が所有する商品を正確に把握することができる。また、所有商品リスト含まれている各商品の商品情報から、各商品の情報を把握することができる。さらに、各船舶からの所有商品リストを受信して収集することによって、各船舶での商品所有量を一元的に把握し、管理することが可能になる。従って、所定の海域での魚の漁獲量を管理することが可能になる。なお、所有商品リストに含まれる商品の商品情報を所有商品情報と称することがある。商品情報には、商品の種類、大きさ、品質、捕獲された位置、時期など、商品に関する情報が含まれうる。
【0019】
さらに本発明に係る取引システムは、洋上の複数の位置又は領域とその位置又は領域で捕獲可能な捕獲可能商品とが関連付けられた捕獲可能テーブルを有し、前記生産者側端末から受信した前記所有商品リストに含まれる個別の商品の出所を検証する検証部であって、前記モニタリング手段から受信した前記モニタリング情報に基づいて、検証される所有商品リストを送信した生産者側端末が設けられた船舶の航行軌跡を求め、求められた前記航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる各商品とを比較することで個別の商品の出所を検証する検証部を備えるという構成を有している。
【0020】
また、本発明に係る取引方法は、さらに、洋上の複数の位置又は領域と、その位置又は領域で捕獲可能な捕獲可能商品とが関連付けられた捕獲可能テーブルを設けるステップと、前記モニタリング情報に基づいて、検証される前記所有商品リストに関連付けられた船舶の航行軌跡を求め、求められた前記航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる各商品とを比較することで個別の商品の出所を検証するステップと、を備える。
【0021】
本発明のこのような実施形態によれば、従来であれば、商品が実際にどこで捕獲されたかによらず、流通ルートに乗せられた出発点、例えば魚介類の商品の場合には水揚げされた港、又は、生産者による自己申告でしか特定することができなかった個別の商品の出所をより正確に検証することができる。従って、個別の商品の出所をより具体的に特定することができ、より高いトレーサビリティを確保することができる。
【0022】
本発明に係る取引システムは、検証部がさらに、前記洋上取引判定部によって洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの1の船舶に関連付けられた生産者側端末からの所有商品リストを検証する際に、前記モニタリング手段から受信したモニタリング情報に基づいて、前記洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの他の船舶に関する航行軌跡をさらに求め、求められた前記他の船舶の航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる商品とを比較することで各商品の出所を検証するように構成されている。
【0023】
また、本発明のかかる取引方法は、前記洋上取引が行われた可能性を判定するステップにおいて洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの1の船舶に関連付けられた所有商品リストに含まれる商品の出所を検証する、前記個別の商品の出所を検証する際に、前記モニタリング情報に基づいて、前記洋上取引を行ったものと判定された前記2以上の船舶のうちの他の船舶に関する航行軌跡をさらに求め、求められた前記他の船舶の航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を前記捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と前記検証の対象である所有商品リストに含まれる商品とを比較することで各商品の出所を検証する。
【0024】
従って、本発明によれば、このような構成を備えることにより、洋上取引によって入手された商品であっても、その商品の元々の出所が不明になることを防止することができる。また、洋上取引によって得られた商品であっても、元々の商品情報が保たれるので、実際に商品が捕獲された日時が明らかであり、従って、その日時からその商品の鮮度を正確に推定することができる。
【0025】
本発明に係る取引システムは、さらに、ユーザが注文する商品を示す注文情報を生成するユーザ側端末を備え、前記商品情報のうち、前記検証部による検証を受け、かつ、前記ユーザ側端末からの注文情報に適合する商品情報を当該ユーザ側端末に提供するように構成されている。
【0026】
また、本発明に係る取引方法はさらに、ユーザが注文する商品を表す注文商品情報を生成するステップと、前記所有商品リストに含まれる商品のうち、前記検証を受け、かつ、前記注文商品情報に適合する商品の商品情報を前記ユーザ側端末に提供するステップと、をさらに備える。
【0027】
従って、ユーザは、購入しようとする商品について、より正確で具体的な出所に関する情報を入手することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る取引システムの実施形態を示す概略図である。
図2】モニタリング手段のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】生産者側端末、ユーザ側端末、及びサーバの各々のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】捕獲可能テーブルを説明するための図である。
図5】モニタリング手段で行われるプロセスを示すフローチャートである。
図6】サーバで行われるプロセスを示すフローチャートである。
図7】ユーザ側端末で行われるプロセスを示すフローチャートである。
図8】サーバで行われる別のプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る取引システムの一実施形態の概略を図1に示す。取引システムは、ネットワークNを介して接続された、モニタリング手段1と生産者側端末2とサーバ4とを含んでいる。
【0030】
図2は、モニタリング手段1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、モニタリング手段1は、撮影機器21、コンピュータ22と、通信機器23と、を有する。撮影機器21は、例えば、カメラである。コンピュータ22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)等を有する。通信機器23は、例えば、アンテナ等を有する。
【0031】
図3は、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々が同様のハードウェア構成を有する例について説明するが、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々のハードウェア構成は異なっていてもよい。
【0032】
図3に示されるように、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々は、入力装置11と、出力装置12と、外部I/F13と、RAM(Random Access Memory)14とを有する。また、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々は、ROM(Read Only Memory)15と、CPU(Central Processing Unit)16と、通信I/F17と、HDD18とを有する。これらハードウェア構成要素は、バスBにより相互に接続されている。
【0033】
入力装置11は、ボタン、スイッチ、キーボードやマウス、タッチパネル等を含み、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々に各種信号を入力するのに用いられる。出力装置12は、ディスプレイ等の表示装置及びスピーカなどの音声出力装置を含み、各種の処理結果を表示する。
【0034】
なお、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々は、入力装置11及び出力装置12の少なくとも一方を、必要なときにバスBに接続して利用しても良い。
【0035】
外部I/F13は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、例えば、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(SD memory card)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory)等の記録媒体13aがある。
【0036】
生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々は、外部I/F13を介して記録媒体13aの読み取りや書き込みを行うことができる。
【0037】
RAM14は、プログラムやデータを一時保存する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM15は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。CPU16は、例えばHDD18やROM15等からプログラムやデータをRAM14上に読み出して、各種処理を実行する演算装置である。
【0038】
通信I/F17は、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々をネットワークNに接続するためのインタフェースである。HDD18は、プログラムやデータを格納している不揮発性のメモリ(記憶装置)である。
【0039】
HDD18に格納されるプログラムやデータには、本実施形態を実現するプログラムや、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々の全体を制御する基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、OS上で動作する各種アプリケーションプログラム等がある。
【0040】
なお、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4の各々は、HDD18の代わりに又はHDD18と併せて、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性のメモリ(記憶装置)を用いても良い。
【0041】
本実施形態に係るモニタリング手段1、生産者側端末2、ユーザ側端末3、及びサーバ4は、図2及び図3に示すハードウェア構成により後述する各種機能及び各種処理を実現することができる。
<モニタリング手段1>
モニタリング手段1は、洋上で航行する複数の船舶の航行軌跡をモニタリングしてモニタリング情報を生成するように構成されている。本実施形態においては、モニタリング手段1は、監視部と、解析部と、通信部とを備えることができる。
【0042】
監視部は、例えば人工衛星に設けられたカメラであり、洋上の所定の領域を周期的に監視(カメラの場合には撮影)し、その領域内の複数の船舶の位置を特定するための監視データを生成する。監視部によって生成された監視データは、解析部へ送信される。解析部は、例えばコンピュータであり、監視部から受け取った監視データを解析する。例えば、解析部は、カメラによって撮影された、時系列に沿った複数の画像をそれぞれ解析して、各画像中の複数の船舶をそれぞれ識別し、各船舶の位置情報を時系列に沿って把握することで、即ち、各船舶について、時刻とその時刻に応じた位置情報を関連付けて記録することで、各船舶の航行した航行軌跡を求め、各船舶に関するモニタリング情報を生成する。通信部は、この各船舶について求められた各モニタリング情報を、無線及び/又は有線の通信設備を介して接続されたサーバへ送信(矢印1b)する。また、ネットワークNを介して、生産者側端末2、サーバ4等からの種々の信号を受信することができる(矢印1a)。
【0043】
図1には、これらの監視部、解析部、通信部は、一体的に構成されて、例えば人工衛星などの機器に設けられていている例が示されている。しかしながら、これらの監視部、解析部、通信部は、別個に構成されていてもよい。すなわち、監視部のみが人工衛星に設けられ、解析部と通信部は、ネットワークを介して接続された別の機器、例えばサーバ4内に設けられていてもよい。また、監視部、解析部及び/又は通信部の各機能が部分的に別個の機器に設けられていてもよい。例えば、解析部の一部は監視部と一体的に構成され、解析部の他の部分は通信部と一体的に構成されていてもよい。なお、各船舶は、自動船舶識別装置(Automatic Identification System)を搭載することが義務付けられている。
【0044】
また、複数の監視部を設け、各監視部によって相互に少なくとも部分的に重複する洋上の範囲を監視して、各監視部からの位置情報を組み合わせて解析することで、各船舶の位置情報の精度を向上させることができる。また、監視部を監視対象に対して相対的に移動させながら監視することもできる。監視部には、上述した人工衛星に搭載されたカメラの他に、グローバルポジショニングシステム(GPS)機器、地上のレーダー装置や、携帯電話などを含む無線通信機器が含まれうる。
【0045】
モニタリング情報に含まれる航行軌跡を表す位置情報は、経度及び緯度のような絶対的指標によって表される値を含むことができる。また、地上又は洋上の所定の位置からの相対的な距離及び方位で表される値を含んでもよい。
【0046】
また、各船舶に対応するGPS機器の識別情報を船舶の識別情報として用いることができる。付加的に又は代替的に、解析部が各航行軌跡に対して個別の識別情報を割り当てることもできる。識別情報はさらに、船舶の種類、規模、その船舶に搭載されている設備(漁具)の種類、船籍等の情報等を含んでもよい又はこれらの情報と関連付けられることができる。
【0047】
通信部は、解析部で求められた各船舶の航行軌跡を、対応する船舶の識別情報と関連付けた状態で、サーバに送信する。このサーバへの送信は、全ての又は一部の船舶に関する所定の期間のモニタリング情報を定期的に送信するようにしてもよいし、サーバからの送信依頼に応答して、送信依頼に応じた期間及び/又は特定の船舶について送信するようにしてもよい。
【0048】
モニタリング手段1は、このようにして洋上を航行する複数の船舶のそれぞれに関する航行軌跡を識別情報と関連付けてモニタリング情報を取得し(図5のステップ31)、このモニタリング情報をサーバ4へ送信することができる(図5のステップ32)。
<生産者側端末2>
生産者側端末2は、各船舶が所有する各商品の商品情報を含む所有商品リストを生成するように構成されている。図1は、各生産者側端末2が洋上を航行する各船舶に設けられている例を示している。各生産者側端末2は、入力部2−1と表示部2−2と通信部2−3とを備える。
【0049】
入力部2−1は、例えばキーボードやタッチパネル等を含むことができ、及び/又は、例えば、音声認識による入力を可能にするマイクを含んでもよい。生産者側端末2が設けられている船舶の生産者(漁業者)である操作者が、自身が捕獲し、保有している商品の捕獲場所を入力できる。さらに、個別の商品の種類、サイズ、重量や品質などを等級で表して入力することもできるし、商品の写真を撮影して入力することもできる。また、商品の希望販売価格等、販売に関する情報も入力することができる。
【0050】
なお、商品には、主に、海産物、より詳しくは、魚類、カニやエビなどの甲殻類、クジラやイルカなどの鯨類及びアシカやオットセイなどの海獣類を含む海洋ほ乳類、貝類や昆布、ワカメ等が含まれうる。
【0051】
入力部2−1は、付加的に又は代替的に、商品が捕獲された際、船内へ搬入される際、及び/又は、船内で保管庫に格納される際に、商品の捕獲場所、種類、大きさ、品質、数量等を自動的に認識して、入力できるように構成されていてもよい。
【0052】
例えば、入力部2−1は、GPS等の位置認識手段を備え、魚を捕獲する際に、その時の位置を自動的に認識し、その位置で捕獲された商品を個別に識別できる識別情報と関連付ける。そして捕獲された魚が一匹ずつ保管庫(冷凍庫)へ搬入される場合には、ベルトコンベアなどの搬送装置の上方にカメラなどの撮影手段を配置して、搬送装置によって搬送されてくる個別の商品を撮影し、その画像を解析して、魚の種類を判別したり、サイズを測定したり、色つやなどから魚の状態/品質を判別することができる。また、搬送装置に重量測定装置を内蔵させ、その商品の重量を測定することもできる。このようにして得られた付加的な個別の商品情報は、その商品の個体を表す識別情報とさらに関連付けられて、位置情報とともに、例えば生産者側端末2に設けられたメモリに、所有商品リストの形態で記憶される。
【0053】
さらに、生産者側端末2は、その商品に識別情報を付与するラベリング手段を含むことができる。このラベリングは、印刷、刻印などにより、商品に直接記入したり、識別情報が、例えばバーコードや二次元バーコード等として表示されたラベリングシールや、識別情報が電磁的方法で埋め込まれたRF−IDタグ等を貼付又は埋め込むことにより行われる。また、個別に取り扱われることが少なく、容器などに入れられた状態で搬送される、より小型の魚については、容器に予めラベリングが施されており、魚を容器に入れる際に、複数の魚の全体的な状態を自動的に又は手動でランク付けし、この情報をその魚が捕獲された位置を表す位置情報とともに、容器のラベルの識別情報と関連付けて記憶することができる。
【0054】
また、入力部2−1を介した所有商品情報の入力の際には、位置情報及び時刻は手動による入力ができないように構成されていてもよく、その場合には、生産者側端末2に予め設けられている時計と位置認識手段とによって取得された値を、生産者側端末2の位置情報及び時刻として用いることができる。若しくは、位置情報又は時刻のいずれか一方のみを入力可能とし、他方はその船舶の航行軌跡に基づいて自動的に求められるようにすることができる。こうすることで、操作者の入力ミスを防止し、また、不正な入力を阻止することができる。
【0055】
また、生産者は、洋上で他の船舶から商品を買い付けた場合には、商品の引き渡しとともに、その商品に関連付けられている所有商品情報のデータをセットで取得することもできる。その際、さらに、その商品を元々捕獲した船舶の識別情報もさらに入手するとよい。商品の引き渡しを受けた生産者は、商品を自身の保管庫に格納するとともに、自身の生産者側端末2の所有商品リストに、その商品に係る所有商品情報のデータを格納することができる。このようにすることで、洋上取引を介して入手された商品についても、その出所を正確に記録し、商品と関連付けた状態で流通させることができる。また、このように、洋上取引によって入手された商品のうち、元々の所有商品情報とともに取引された商品についてだけ、特定の認証を与え、トレーサビリティの確保された商品として、消費者に届けるようにすることもできる。
【0056】
このようにして生成された所有商品リスト及び/又はこのようにして入力部2−1を介して入力された情報は、生産者側端末2に設けられたメモリに一時的又は恒常的に記録されてからサーバ4へ伝送されてもよいし、入力される毎に直接サーバ4へネットワークを介して伝送され、サーバ4側で記録されてもよい。
【0057】
表示部2−2は、生産者に種々の情報を表示する表示装置、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、ブラウン管等の表示装置であって、生産者が入力部2−1を介してデータを入力するのを補助するための情報や、ユーザからの注文の状況を示す情報などを表示する。
【0058】
表示部2−2は、所有商品情報を入力する際に、入力されるべき情報の項目を表示したり、現在の位置情報や時刻を表示したり、ユーザからの注文商品情報を表示して、どの商品の需要が高まっているか、生産者に提示することができる。また、他の船舶の位置や、他の船舶の所有商品リストを表示することもできる。これらの表示は、緯度及び経度を用いた数値で示されてもよいし、地図上に位置を表示してもよい。
【0059】
通信部2−3は、入力部2−1を介して入力された所有商品情報のデータを、サーバ4に送信する(矢印2b)機能を有する通信装置である。通信部2−3はさらに、サーバ4から送信されてきたデータを受信することができる(矢印2a)。通信部2−3は、アンテナを有し、例えば、携帯電話、衛星通信機器、無線通信機器等を含む。通信部2−3は、入力部2−1を介して入力された情報データや、付属の他の機器を介して得られた情報データを、定期的に、又は、サーバ4からの呼び出しに応じて送信することができる。
【0060】
さらに、生産者側端末2には、生産者側端末2自身について及び/又はその生産者側端末2が属する船舶についての、固有の識別情報IDが記憶されており、所有商品情報の送信の際には、所有商品情報はこの識別情報IDと関連付けられて送信される。
【0061】
このように、生産者側端末2では、その生産者側端末2が属する船舶によって捕獲され、その船舶に保管されている即ち所有されている複数の商品について、個別の商品ごとに、その出所(生産地、即ち捕獲地)を表す位置情報を含む商品情報を、場合によってはその商品に関する他の情報と、関連付けて所有商品情報としてサーバ4に送信する。
<サーバ4>
サーバ4は、ネットワークNに接続されており、モニタリング手段1、生産者側端末2、及び、ユーザ側端末3と通信するように構成されており、ネットワークNを介して、モニタリング手段1からモニタリング情報を受信し、生産者側端末2から所有商品情報を受信する。
【0062】
本発明の一実施形態において、サーバ4は、洋上取引判定部を備える。洋上取引判定部は、モニタリング手段1から受信したモニタリング情報に含まれる複数の船舶の各航行軌跡情報に基づいて、所定の期間にわたって所定の距離範囲内に接近した状態にあった船舶を検出し、洋上取引が行われた可能性を判定する。即ち、洋上取引判定部は、各船舶の航行軌跡を相互に対比し、少なくとも2つの船舶の位置情報が、所定の距離範囲内に同時に所定の期間を超えて存在していることを検出すると、これらの船舶の間で洋上取引が行われた可能性があるものと判断し、これらの船舶に属する生産者側端末2から受信した所有商品情報のそれぞれに対して1セットの洋上取引可能性フラグを立てる。
【0063】
サーバ4はさらに検証部を備える。検証部は、生産者側端末から受信した所有商品リストに含まれる個別の商品の出所を検証する。その際、モニタリング手段から受信した前記モニタリング情報に基づいて、検証される所有商品リストを送信した生産者側端末が設けられた船舶の航行軌跡を求め、求められた前記航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を後述する捕獲可能テーブルから抽出し、抽出された捕獲可能商品と検証の対象である所有商品リストに含まれる各商品とを比較することで個別の商品の出所を検証する。
【0064】
例えば、検証部は、前述の洋上取引可能性フラグを立てられた生産者側端末2の所有商品情報が、そこに含まれている商品の出所(生産地、捕獲地を示す位置情報)について、その所有商品情報に係る生産者側端末2の属する船舶の航行軌跡に基づいて妥当であるか検証する。
【0065】
検証部による検証によって、出所が確認できた商品、即ち、所有商品リストに基づくその商品出所と、捕獲可能テーブルに基づく捕獲可能位置とが適合した商品、又は、所有商品リストに基づくその商品の種類及び捕獲位置と、その位置に基づいて捕獲可能テーブルから抽出された捕獲可能商品とが適合した商品、については、その所有商品情報が提供可能商品として記憶される。サーバ4は、提供可能商品の一覧を示すリストを有することができる。また、出所が確認できなかった商品については、提供不可商品として記憶してもよいし、出所が未確認であることを所有商品情報に付記した上で提供可能商品の一覧に含ませることもできる。
【0066】
なお、上述したとおり、モニタリング手段1からのモニタリング情報では、そこに含まれる複数の船舶の各航行軌跡に対し、いずれの船舶/そこに関連付けられた生産者側端末2に関する航行軌跡かを示すための固有の識別情報IDが関連付けられており、生産者側端末2からの主有商品リスト/所有商品情報には、その主有商品リスト/所有商品情報の送信元の生産者側端末2を表す識別情報IDが関連付けられている。このモニタリング手段1からの識別情報IDと、生産者側端末2からの識別情報IDとを一意に対応付けることによって、所有商品リスト/所有商品情報の送信元である生産者側端末2と、モニタリング情報による各船舶とを対応付けることができる。
【0067】
検証部による検証には、捕獲可能テーブルTBが用いられる。図4は、この捕獲可能テーブルを説明するための概念図である。捕獲可能テーブルTBは、洋上の複数の位置又は領域A1〜A5と、その位置で捕獲可能な商品の一覧とが関連付けられて記録されたテーブルである(図4ではマップの形態で表される)。さらに、各位置又は領域A1〜A5に対して、季節ごとに異なる捕獲可能な商品の一覧を備えることができる。なお、この捕獲可能テーブルTBは、サーバ4内のメモリに記憶されていてもよいし、ネットワークNを介して接続されたいずれかの機器内に記憶されていてもよい。また、ネットワークNを介して接続された種々の機器内に分割されて記憶されていてもよい。さらに、この捕獲可能テーブルTBは特定の権限を有する者のみが(例えば特定の権限を有する生産者側端末2からの入力に応じて)書き換え/更新可能に構成されていてもよいし、多数の者(例えば生産者側端末2)からの情報の入力によって書き換え/更新可能に構成されていてもよい。
【0068】
サーバ4の検証部は、捕獲可能テーブルTBから、検証の対象となっている所有商品情報に係る生産者側端末2が設けられた船舶の航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を抽出し、この捕獲可能商品と所有商品情報とを比較する。所有商品の中に捕獲可能商品の中に含まれていない商品がある場合は、その商品について、出所確認フラグを立てる(この商品を出所確認商品と称する)。
【0069】
検証部はさらに、捕獲可能テーブルTから、出所確認商品が含まれる所有商品情報(の属する船舶)と同じセットの洋上取引可能性フラグが立てられている(別の商品所有情報の属する)別の船舶(即ち、洋上取引の相手である可能性がある船舶)の航行軌跡に含まれる位置情報に対応する獲可能商品を抽出し、その抽出された商品の中に、出所確認フラグを付けられた商品に相当する商品が含まれているか確認する。検証中の出所確認商品が、別の船舶に係る捕獲可能商品に含まれている場合には、検証部は、出所確認商品の出所の候補地として、その出所確認商品に相応する捕獲可能商品の位置情報を記録する。
【0070】
また、本発明の別の実施形態においては、洋上取引判定部による洋上取引可能性フラグの有無にかかわらず、検証部が所有商品情報に含まれる商品の出所の妥当性の検証を行うようにしてもよい。即ち、生産者側端末2から受信された所有商品情報に含まれる各商品について、捕獲可能テーブルTBからその商品を捕獲することができる可能性のある位置を求め、生産者側端末2から受信された所有商品情報に基づくその商品の出所と捕獲可能テーブルTBから求められたその商品を捕獲することができる可能性のある位置とを照らし合わせて、所有商品情報に含まれる各商品の出所の妥当性を検証してもよい。
【0071】
その際、生産者側端末2から受信された所有商品情報に基づくその商品の出所が捕獲可能テーブルTBから求められた捕獲可能位置に含まれない場合には、その商品について、出所確認フラグが立てられる。そして出所確認商品を含む所有商品情報の送信元である生産者側端末2について、洋上取引判定手段によって、上記の一実施形態と同様に、洋上取引の可能性が判定され、当該生産者側端末2(の属する船舶)、及び、その船舶と洋上取引を行った可能性があると判定された別の船舶に属する別の生産者側端末2に対して、1セットの洋上取引可能性フラグが立てられる。さらに検証部は上記の一実施形態と同様に、可能性のある洋上取引の相手である別の生産者側端末2による航行軌跡について、捕獲可能テーブルTBから捕獲可能商品を抽出し、その抽出された商品中に出所確認商品に相当する商品が含まれるか確認し、別の船舶に係る捕獲可能商品に出所確認商品が含まれている場合には、検証部は、出所確認商品の出所の候補地として、その出所確認商品に相応する捕獲可能商品の位置情報を記録する。
【0072】
さらに、サーバ4は、出所確認商品について、その出所を確認するための出所確認メッセージを元の生産者側端末2(即ち、出所確認商品が含まれている所有商品情報の送信元である生産者側端末2)に送信する。この際、出所確認メッセージに出所確認商品について記録された候補地が含まれていてもよく、この候補地で間違いないか確認する形で出所を確認してもよいし、出所確認メッセージを受け取った生産者側端末2において自由に出所を入力させる形で確認してもよい。出所確認メッセージは、洋上取引の有無について、及び、その相手についての入力を促すメッセージを含んでいてもよい。
【0073】
この出所確認メッセージに対する生産者側端末2からの回答において、生産者側端末2によって指定された出所について、検証部で妥当性を検証し、妥当性があると判断された場合には、新たに指定された出所に基づいてサーバ4側で出所確認商品についての出所を変更して所有商品情報を更新することができる。
【0074】
出所確認メッセージに対する回答がない場合や、回答があっても、回答に含まれる出所確認商品に対する出所が妥当であると判断されなかった場合には、サーバ4側でその出所確認商品の出所を「未確認」として所有商品情報を更新することができる。
【0075】
さらに別の実施形態について、図6のフローチャートを参照して説明する。サーバ4は、モニタリング手段1からモニタリング情報を受信し(ステップ41)、生産者側端末2から所有商品情報を受信する(ステップ42)。所有商品情報の送信元である各生産者側端末2(の船舶)について、受信したモニタリング情報の中から、対応する船舶(の生産者側端末2)を識別し、その識別された(生産者側端末2の)船舶に対応する航行軌跡に含まれる位置情報に対応する捕獲可能商品を捕獲可能テーブルTBから、抽出し(ステップ43)、抽出された捕獲可能商品の一覧を生成する。この捕獲可能商品の一覧の中に所有商品情報の商品が含まれるか、判断する(ステップ44)。Yesの場合は、所有商品情報のその商品に対応する位置情報と、その商品に対応する捕獲可能商品の位置情報とが適合するか、判断する(ステップ45)。Yesの場合は、その所有商品情報を提供可能商品として、サーバ4のメモリに格納する(ステップ46)。捕獲可能商品の一覧の中に所有商品情報の商品が含まれない場合(ステップ44のNoの場合)、及び、所有商品情報のその商品に対応する位置情報と、その商品に対応する捕獲可能商品の位置情報とが適合しない場合(ステップ45のNoの場合)は、所有商品情報の送信元の生産者側端末2に確認を依頼する出所確認メッセージを送信する(ステップ47)
<ユーザ側端末3>
取引システム100はさらに、ネットワークNを介して接続されたユーザ側端末3を備えていてもよい。
【0076】
ユーザ側端末3は、商品を購入しようとする消費者であるユーザの元に設けられており、入力部3−1と表示部3−2と通信部3−3とを備える。
【0077】
入力部3−1は、例えばキーボードやタッチパネル等を含むことができ、及び/又は、例えば、音声認識による入力を可能にするマイクを含んでもよい。ユーザ側端末3を操作するユーザは、入力部3−1を介して所望の商品の種類や数量などの条件を入力することができる。
【0078】
表示部3−2は、ユーザに種々の情報を表示する表示装置、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、ブラウン管等の表示装置であって、ユーザが入力部3−1を介してデータを入力するのを補助するための情報や、生産者の所有商品の状況を示す情報などを表示する。
【0079】
表示部2−2は、ユーザが注文を入力する際に、入力されるべき情報の項目を表示したり、現在生産者がそれぞれ所有している商品の量や質、価格などを表示したりすることができる。
【0080】
通信部3−3は、無線又は有線による通信装置であって、入力部3−1を介して入力された、ユーザが購入したい商品に関する注文商品情報をサーバ4に送信する(矢印3b)。通信部3−3はさらに、サーバ4から送信されてきたデータを受信することができる(矢印3a)。通信部3−3は、有線又は無線によりネットワークを介してサーバ4と接続されている。通信部3−3は、入力部3−1を介して入力されたデータをその都度サーバ4に送信できる。また、サーバ4に定期的にアクセスして新着データを受け取ることもできる。
【0081】
ユーザ側端末3の入力部3−1を介して、注文商品情報が入力されると(図7のステップ51)、この注文商品情報が通信部3−3を介してサーバ4に送信される(図7のステップ52)。この注文商品情報には、ユーザが注文したい商品の種類やサイズ、数量、品質、希望購入価格等の種々の特徴に関する情報が含まれうる。
【0082】
サーバ4側では、この注文商品情報を受信すると(図8のステップ61)、提供可能商品一覧から、注文商品情報に含まれる商品を抽出する(図8のステップ62)。この抽出された提供可能商品と、注文商品情報に含まれる商品の特徴とを比較して、適合度を求める(図8のステップ63)。そして、抽出された提供可能商品と、それに関して求められた適合度とを関連付けて、注文商品情報の送信元のユーザ側端末3に送信する(図8のステップ64)。
【0083】
これを受け取ったユーザ側端末3は、表示部3−2にその内容を表示し、ユーザは注文内容を検討し、提示された提供可能商品の内のどれを購入するか、即ち、どの生産者のどの商品を購入するか決定する。注文内容が入力部3−1を介して入力されると、ユーザ側端末3は、通信部3−3を介して注文決定情報をサーバ4に送信する。サーバ4が注文決定情報を受信すると(図8のステップ65)、その注文決定情報によって指定された注文先である生産者側端末2に注文決定情報を送信する(図8のステップ66)。
【0084】
生産者側端末2がこの注文決定情報を受信すると、その生産者側端末2を有する生産者は、その注文決定情報が指定する商品を、ユーザへ又は配送センターへ発送する用意をする。発送準備が整った商品は、生産者の船舶から注文をしたユーザへ直接配送されてもよいし、例えば、ユーザの位置に応じて最も適した港にある配送センターを選択し、その配送センターを介してユーザの元に届けられてもよい。
【0085】
商品を受け取ったユーザは、その商品にラベリングされた識別情報から、注文した通りの商品が届いたか、確認することができる。
【0086】
このような取引システム100及び取引方法によれば、各生産者が所有する個別の商品について、本当の出所を妥当性を持って検証することができ、各商品についてその出所を特定することができる。そして、ユーザは検証済みの出所と関連付けられた個別の商品を注文することができる。
【0087】
なお、上述したいくつかの実施形態は、本発明を限定するものではなく、その実施例を説明するための例示にすぎないことはいうまでもない。また、上述した複数の実施形態を部分的に適宜取捨選択して組み合わせることができる。
【0088】
本出願は2017年4月19日に出願した日本国特許出願第2017−082855号に基づくものであり、その全内容は参照することによりここに組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8