【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明者は、ピッチ検出に失敗するか、困難である場合などには、ギターシンセサイザの発振器由来の信号ではなく、入力信号を歪ませて出力する構成とすること、つまり、入力信号由来の信号で対応可能であることを見出した。
【0008】
つまり、本発明は、弦操作による弦振動信号を取り込むピックアップ(5)を備えた電子ギター(110)の楽音信号を処理する装置(100)であって、
前記ピックアップによって得られる楽音信号からピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示す
、1ビットのピッチ検出成否情報を出力するピッチ情報処理手段(40)と、
前記ピックアップによって得られる前記楽音信号を入力しこれに基づいた歪信号を生成する歪信号生成手段(35)と、
前記ピッチ情報処理手段によって検出されたピッチに応じた発振信号を生成する発振器(30)と、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を正とする情報である場合には、前記発振器が生成した発振信号を出力する一方、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合には、前記歪信号生成手段により生成される、前記弦操作により得られる楽音信号を加工した前記歪信号を出力する出力制御手段と、を備え
、
前記出力制御手段は、
前記発振器が生成した発振信号と自身の係数とを乗じた乗算信号を出力する構成で、前記1ビットのピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合には係数を零、これ以外の場合には係数を「1」とする第1の乗算器と、
前記ピッチ検出成否情報を反転させるNOT回路と、
前記歪信号生成手段が生成した歪信号と前記NOT回路の出力とを乗じる第2の乗算器と、
前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力との加算を行う加算器と、を含んで成ることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ピッチ情報処理手段(40)は、電子ギター(110)に設けられたピックアップによって得られる楽音信号からピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示すピッチ検出成否情報を出力する。そして、出力制御手段は、ピッチ検出成否情報がピッチの検出を「正」とする情報である場合には、ピッチに応じた発振信号を生成する発振器(30)が生成した発振信号を出力する一方、ピッチ検出成否情報がピッチの検出を「否」とする情報である場合には、楽音信号を入力してこれに基づいて歪信号生成手段(35)が生成した歪信号を出力する。
【0010】
したがって、電子ギター(110)の演奏者が和音を弾き、その楽音信号からピッチを検出できない場合であっても、歪信号生成手段(35)が生成した歪信号(歪波形)が出力される。この歪信号は、ピッチ不検出時にその出力が不安定となる発振器(30)が発振する信号ではない、つまり、ギターシンセサイザを構成する発振器由来の信号ではなく、入力信号由来の信号であり、演奏者の演奏した入力信号由来の信号が出力されることになる。よって、和音が入力されピッチ検出に失敗する場合であっても、その回避を演奏者の違和感が無いようにして行うことが可能になる。もちろん、このピッチデータの発振器(30)への供給を急に停止すると違和感がある。
【0011】
また、ピッチ検出成否情報を、1ビットの情報とすれば装置規模が小型化できるので好ましい。更に、前記出力制御手段は、前記1ビットのピッチ検出成否情報がピッチの検出を「否」とする情報である場合にその係数を零とする第1の乗算器(42)と、この1ビットのピッチ検出成否情報を反転させるNOT回路(46)と、このNOT回路の出力が、ピッチ成否情報を「否」とする情報である場合その係数を零とする第2の乗算器(44)と、前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力との加算を行う加算器(48)と、を含んで成る構成とすることができる。
【0012】
この構成によれば、第1の乗算器(42)は1ビットのピッチ検出成否情報がピッチの検出を「否」とする情報である場合(例えば「0」)にその係数を零とするので、発振器(30)の出力が無効とされる反面、この場合にはNOT回路(46)の出力が、この「否」とする1ビット情報を反転させる(例えば「1」)、つまりピッチの検出を「正」とする情報とするので、歪信号生成手段(35)の出力はそのままである。その一方で、第1の乗算器(42)は、1ビットの検出成否情報がピッチの検出を「正」とする情報である場合(例えば「1」)には通常の係数が設定されるので、発振器(30)の発振信号がそのまま出力される反面、この場合にはNOT回路(46)の出力が、ピッチの検出を「否」とする情報となるので、歪信号生成手段(35)の出力は無効とされる。
【0013】
したがって、この構成によれば、一対の乗算器と1個の論理回路と1個の加算器との極小規模のデジタル回路で、ピッチ成否情報の内容に応じた出力の変更制御、つまり、発振器と歪信号生成手段との出力変更制御を行うことが可能になる。
【0014】
また、本発明の他の態様は、弦操作による弦振動信号を取り込むピックアップ(11)を備えた電子ギター(110)の楽音信号を処理する装置(200)であって、
前記ピックアップ(11)で得られる楽音信号を第1の入力信号と第2の入力信号とに分けて入力する構成とし、
前記第1の入力信号と前記第2の入力信号とを加算した加算信号を出力する加算器(12)と、
前記加算信号からピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示すピッチ検出成否情報を出力するピッチ情報処理手段(40)と、
前記加算信号を入力しこれに基づいた歪み波形信号を生成する歪信号生成手段(35)と、
前記ピッチ情報処理手段によって検出されたピッチに応じた発振信号を生成する発振器(30)と、
前記発振器が生成した発振信号を出力するか、または、前記歪信号生成手段が生成した歪信号を出力する出力制御手段と、
前記第1の入力信号が第1の閾値を超えている場合に「1」で、これ以外の場合には「0」である第1の情報を出力する第1の振幅判定手段(80)と、
前記第2の入力信号が第2の閾値を超えている場合に「1」で、これ以外の場合には「0」である第2の情報を出力する第2の振幅判定手段(85)と、
前記第1の情報と前記第2の情報とが共に「1」である場合にのみ「0」を出力する振幅情報出力手段と、を備え、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報であり、かつ、前記振幅情報出力手段が「1」を出力する場合には、前記歪信号生成手段(35)が生成した歪信号を出力する構成であることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ピッチ情報処理手段(40)は、加算器(12)によって第1の入力信号と第2の入力信号とを加算した加算信号から、ピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示すピッチ検出成否情報を出力する。また、第1の振幅判定手段(80)および第2の振幅判定手段(85)は、ピックアップ(11)で得られる楽音信号を分けた第1の入力信号と第2の入力信号がそれぞれ第1、第2の閾値を超えている場合、第1、第2の情報(例えば1ビットの「1」)を出力する。また、振幅情報出力手段は、これらの出力を受け、第1の情報と第2の情報とが共に「1」である場合に「0」を出力する。更に、出力制御手段は、発振器が生成した発振信号を出力するか、または、歪信号生成手段が生成した歪信号を出力する。そして、ピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合、または、振幅情報出力手段が「0」を出力する場合には、もしくは、その双方の場合には、歪信号生成手段(35)が生成した歪信号が出力される。また、他の場合には発振器(30)の発振信号が出力される。双方の場合とは、前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合であり、かつ、前記振幅情報出力手段が前記第3の情報を出力する場合のことである。以下双方とはこのことを意味する。
【0016】
したがって、電子ギターの演奏者が和音を弾いたにもかかわらず、ピッチ処理手段が周期性を見出してしまうことによりピッチ検出成否情報を「正」としてしまう場合であっても、歪信号生成手段(35)が生成した歪波形が出力される。しかも、この歪波形の出力は、ピッチ検出成否情報がピッチの検出を「否」とする情報であり、かつ、振幅判定手段が第3の情報を出力する場合にのみ行われる。つまり、第1の入力信号(入力1)と第2の入力信号(入力2)とがそれぞれ第1、第2の閾値を超えている場合にのみ、換言すれば、第1の入力信号(入力1)と第2の入力信号(入力2)とが共に、弦が奏でられて鳴っているものである場合、またはピッチ検出成否情報がピッチの検出を「否」とする場合、もしくはその双方の場合に歪信号が出力されるので、より精度の高い和音検出を可能とした状態で歪信号を出力できる。
【0017】
この歪信号は、ピッチ不検出時にその出力が不安定となる発振器(30)が発振する信号ではない、つまり、ギターシンセサイザを構成する発振器由来の信号ではなく、演奏者の演奏由来の信号である。よって、和音が入力されピッチ検出に失敗しても、その回避を演奏者の違和感をないようにして行うことが可能になる。
【0018】
また、前記第1の振幅判定手段は、
前記第1の入力信号の包絡線を検出出力する第1のエンベロープ検出部(70)と、前記第1のエンベロープ検出部の出力結果が前記第1の閾値を超えている場合に「1」、これ以外の場合には「0」を出力する第1の信号処理部(80)と、含んで成り、
前記第2の振幅判定手段は、
前記第2の入力信号の包絡線を検出出力する第2のエンベロープ検出部(75)と、前記第2のエンベロープ検出部の出力結果が前記第2の閾値を超えている場合に「1」、これ以外の場合には「0」を出力する第2の信号処理部(85)と、含んで成り、
前記振幅情報出力手段は、
前記第1の信号処理部の出力および前記第2の信号処理部の出力を入力として論理積をとる論理積回路(90)を含むことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1および第2のエンベロープ検出部(70、75)はそれぞれ、第1、第2の入力信号の包絡線を検出出力する。更に、第1および第2の信号処理部(80、85)がそれぞれ、第1、第2のエンベロープ検出部(70、75)の出力結果が第1、第2の閾値を超えている場合に、「1」を出力する。論理積回路(90)は、第1の信号処理部の出力および第2の信号処理部の出力を入力として論理積をとる。
【0020】
したがって、第1、第2の振幅判定手段はそれぞれ、第1、第2の入力信号のエンベロープを検出し、これがそれぞれの閾値を超えたか否かを判断するだけでの回路構成で良く、また、振幅情報出力手段が論理積をとるだけで良くなる。しかも第1、第2の所定の情報は、1ビット論理値であるので、小規模の簡素な論理回路構成で対応可能となる。
【0021】
また、本発明の更に他の態様は、弦操作による弦振動信号を取り込むピックアップ(5)を備えた電子ギターの楽音信号を処理し、検出されたピッチに応じた発振信号を生成する発振器(30)を搭載した楽音信号処理装置(100)を動作させるためのプログラムであって、
前記ピックアップ(5)によって得られる楽音信号からピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示す
、1ビットのピッチ検出成否情報を出力するピッチ情報処理機能と、
前記ピックアップ(5)によって得られる前記楽音信号を入力してそれに基づいた歪波形信号を生成する歪信号生成機能と、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を正とする情報である場合には、前記発振器(30)が生成した発振信号を出力する一方、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合には、前記歪信号生成手段により生成される、前記弦操作により得られる楽音信号を加工した歪信号を出力する出力制御機能と、をコンピュータに実現するためのプログラム
で、
前記出力制御機能は、
前記発振器が生成した発振信号と自身の係数とを乗じた乗算信号を出力する構成で、前記1ビットのピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合には係数を零、これ以外の場合には係数を「1」とする第1の乗算機能と、
前記ピッチ検出成否情報を反転させるNOT機能と、
前記歪信号生成機能が生成した歪信号と前記NOT機能の出力とを乗じる第2の乗算機能と、
前記第1の乗算機能の出力と前記第2の乗算機能の出力との加算を行う加算機能と、を含んで成る。
【0022】
このプログラム(ROM等の記録媒体に記録される)がCPU、DSP等のプロセッサによって実行されることによって、ピックアップ(5)によって得られる楽音信号からピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示すピッチ検出成否情報を出力するピッチ情報処理機能と、
前記ピックアップ(5)によって得られる前記楽音信号を入力してそれに基づいた歪信号を生成する歪信号生成機能と、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を正とする情報である場合には、前記発振器(30)が生成した発振信号を出力する一方、
前記ピッチ検出成否情報がピッチの検出を否とする情報である場合には、前記歪信号生成手段
により生成される、前記弦操作により得られる楽音信号を加工した前記歪信号を出力する出力制御機能と、がコンピュータに実現される。
【0023】
そして、ピッチ情報処理機能は、電子ギター(110)に設けられたピックアップ(5)によって得られる楽音信号からピッチ検出を行うと共に、ピッチ検出の成否を示すピッチ検出成否情報を出力する。そして、出力制御機能は、ピッチ検出成否情報がピッチの検出を「正」とする情報である場合には、ピッチに応じた発振信号を生成する発振器(30)が生成した発振信号を出力する一方、ピッチ検出成否情報がピッチの検出を「否」とする情報である場合には、楽音信号を入力してこれに基づいた歪信号を生成する歪信号生成機能が生成した歪信号を出力する。
【0024】
したがって、電子ギター(110)の演奏者が和音を弾いて入力し、その楽音信号からピッチを検出できない場合であっても、歪波形が出力される。この歪波形は、ピッチ不検出時にその出力が不安定となる発振器(30)が発振する信号ではない、つまり、ギターシンセサイザを構成する発振器由来の信号ではなく、演奏者の演奏由来の信号である。よって、和音が入力されピッチ検出に失敗した場合であっても、その回避を演奏者の違和感が無いようにして行うことが可能になる。
【0025】
このようなプログラムをROM等の記録媒体に記録しておき、この記録したプログラムをCPUやDSP等のプロセッサ等が読み取って実行していくことによって、ピッチ情報処理機能等の各機能を実現することが可能である。