【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0035】
実施例1 PBP2’測定用イムノクロマト法用試験片の作製
(1)抗体感作ラテックス粒子の調製および乾燥化
抗PBP2’モノクローナル抗体を常法によりペプシンで処理しF(ab’)2を得た。これを粒子径0.4μmのラテックス粒子に感作し結合させ、ポリスチレン不織布に噴霧した。次いで減圧装置内で1時間減圧乾燥し、乾燥ラテックス抗体パッドとした。使用時には4mm間隔で裁断し、標識試薬部位2として用いた。
【0036】
(2)PBP2’測定用イムノクロマト法用試験片の作製
ラテックス感作に用いた抗PBP2’モノクローナル抗体とは認識部位を異にする第二の抗PBP2’モノクローナル抗体を常法によりペプシンで処理しF(ab’)2を得た。これを0.075%CHAPSを含むクエン酸緩衝液(pH6)で希釈し、ニトロセルロースメンブレン(固相支持体5)に塗布し、充分に乾燥した(捕捉試薬部位3)。対照用試薬としてAnti-Mouse IgGsを同様にニトロセルロースメンブレンに塗布し、充分に乾燥した(対照部位4)。
【0037】
疎水性シート7上に捕捉試薬部位3および対照部位4を含む固相支持体5を配置し、標識試薬部位2、検体供給部位1としてガラス系繊維、吸収部位6として濾紙、を用いて任意の場所に配置し、PBP2’測定用イムノクロマト法用試験片を作製した。
イムノクロマト法用試験片の構造を
図1に示す。
【0038】
実施例2 PBP2’抽出試薬の作製
検体浮遊用液として、0.1M水酸化ナトリウムと1.0% Triton X-100を混合した水溶液を調製した。
【0039】
R1試薬(微生物破壊試薬)として、0.2M水酸化ナトリウムと1.5%Tx−100を混合した水溶液を調製した。
R2試薬(ろ液調整液)として、0.6Mトリス塩酸塩水溶液(pH6.0±0.5)を調製した。
上記の検体浮遊溶液、R1試薬及びR2試薬を併せてPBP2’抽出試薬と呼ぶ。
【0040】
実施例3
濾過膜のサイズの検討
血液寒天培地にて培養したMRSAを生理食塩水に浮遊させ、1.0×10
8個に調整したものを検体とした。
1)検体1:検体浮遊液1になるように混合し、全量2mLとした。
2)全量2mLを濾過膜(材質:セルロースアセテート、孔径:0.45μm、直径:25mm)でろ過した。
3)2)の濾過膜にR1試薬を1000μLろ過し、濾過膜内に液を残し5分静置した。
4)3)の濾過膜にR2試薬を400μLろ過し、ろ液を回収した。
5)実施例1で作製したPBP2’試験片での検体供給部位に滴下し、10分後に判定した。判定結果を表1に示す。「++」は比較的強い陽性を示し、「+++」は強い陽性を示す。
【0041】
【表1】
PVDF: ポリビニリデンフロライド
acrylic copolymer: アクリル共重合体
【0042】
表1の結果は、孔径0.22〜1.2μmの濾過膜を用いた場合、いずれも本発明の方法でMRSAのPBP2’を検出することが可能であることを示す。特に、孔径0.22〜0.45μmの濾過膜を用いた場合が良好であった。
【0043】
実施例4
濾過膜の材質の検討
血液寒天培地にて培養したMRSAを生理食塩水に浮遊し、1.0×10
8個に調整したものを検体とした。
1)検体1:検体浮遊液1になるように混合し、全量2mLとした。
2)全量2mLを濾過膜(材質:セルロースアセテート、孔径:0.45μm、直径:25mm)でろ過した。
3)2)の濾過膜にR1試薬を1000μLろ過し、濾過膜内に液を残し5分静置した。
4)3)の濾過膜にR2試薬を400μLろ過し、ろ液を回収した。
5)実施例1で作製したPBP2’試験片での検体供給部位に滴下し、10分後に判定した。判定結果を表2に示す。「++」は比較的強い陽性を示し、「+++」は強い陽性を示す。
【0044】
【表2】
PVDF: ポリビニリデンフロライド
MCE: セルロース混合エステル
PES: ポリエーテルスルフォン
hydrophilic polyethersulfone: 親水性ポリエーテルスルホン
GHP: 親水性ポリプロピレン
NYL:ナイロン
CA:セルロースアセテート
GxF:多層グラスファイバー製プレフィルター
GF: ホウケイ酸グラスファイバー製プレフィルター
PTFE: ポリテトラフルオロエチレン
【0045】
表2の結果は、1〜13のいずれの濾過膜を用いた場合でも本発明の方法でMRSAのPBP2’を検出することが可能であることを示す。
【0046】
実施例5
界面活性剤の検討
血液寒天培地にて培養したMRSAを生理食塩水に浮遊し、1.0×10
8個に調整したものを検体とした。
1)検体1:検体浮遊液1になるように混合し、全量2mLとした。
2)全量2mLを濾過膜(材質:セルロースアセテート、孔径:0.45μm、直径:25mm)でろ過した。
3)2)の濾過膜にR1試薬を1000μLろ過し、濾過膜内に液を残し5分静置した。
4)3)の濾過膜にR2試薬を400μLろ過し、ろ液を回収した。
5)実施例1で作製したPBP2’試験片での検体供給部位に滴下し、10分後に判定した。判定結果を表3に示す。「++」は比較的強い陽性を示し、「+++」は強い陽性を示す。
【0047】
【表3】
エマルゲン106:ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル
エマルゲンA500:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル
【0048】
表3の結果は、いずれの界面活性剤を用いた場合でも本発明の方法でMRSAのPBP2’を検出することが可能であることを示す。
【0049】
実施例6
従来技術との比較実験
本発明の濾過膜法と従来技術である遠心法と再現性について比較した。
検体はMRSA菌株を血液培地(馬脱繊維血1:液体培地4)で希釈した。
【0050】
1.遠心法
1)検体1:検体浮遊液3になるように混合し、全量2mLとした。
2)7000g、5min、室温で遠心した。
3)上清を捨て、R1試薬を200μL加えた。
4)R2試薬を100μL添加し、混合した。
5)実施例1で作製したPBP2’試験片での検体供給部位に滴下し、10分後に判定した。
【0051】
2.濾過膜法
1)検体1:検体浮遊液1になるように混合し、全量2mLとした。
2)全量2mLを濾過膜(材質:セルロースアセテート、孔径:0.45μm、直径:25mm)でろ過した。
3)2)の濾過膜にR1試薬を1000μLろ過し、濾過膜内に液を残し5分静置した。
4)3)の濾過膜にR2試薬を400μLろ過し、ろ液を回収した。
5)実施例1で作製したPBP2’試験片での検体供給部位に滴下し、10分後に判定した。
【0052】
遠心法と濾過膜法をA、B、Cの3名に3回実施してもらい判定結果の再現性を比較した。判定結果を表4に示す。「-」は陰性、「+」は陽性、「++」は比較的強い陽性、「+++」は強い陽性を示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4の結果は、本発明の濾過膜法は従来技術の遠心法よりも再現性が優れていることを示す。