【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年6月1日 一般社団法人日本建築協会発行 建築と社会、2015年6月号、vol.96、No.1119、第4頁にて公開 平成27年6月1日 株式会社新建築社発行 新建築、第90巻8号、第166〜173,211頁にて公開 平成27年6月5日 株式会社近代建築社発行 近代建築、2015年6月号、第69巻、第6号、表紙、第78〜88頁にて公開 平成27年3月29日 立命館大学 大阪いばらきキャンパス竣工式・見学会パンフレットにて公開 平成27年3月29日 大阪いばらきキャンパス竣工式・見学会にて公開
【文献】
レンガとガラスと十字型...。 外構工事専門店 ルーチェ☆,生駒店ブログ,2011年 7月 9日,URL,https://www.ext-web.com/ikomablog/2011/07/post-2.php
【文献】
昼光利用・照明システム(A5),エネルギー自律循環型建築・都市システム技術の開発 報告書<上巻>,日本,国土交通省,2005年10月,p.357−358,検索日:2019年4月16日
【文献】
ステンドグラス パテ パティーナ染め/教会 十字架,ステンドグラスの武蔵野工房,2015年10月 3日,URL,https:www.musashino-kb.com/blog/2015/10/cross-10-3.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の採光窓は、側部上方に設けられているので、室内の奥まで採光されるので採光効果は高いが、眺望は確保されない。
【0006】
また、特許文献2の第1の窓と第2の窓とで構成された窓は、開口面積が大きく、採光と眺望とは確保されるが、直射日光が多く差し込み、日射受照量が多い。よって、例えば、夏場の冷房効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、日射受照量を低減しつつ、採光と眺望とを確保することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様は、建物の外壁に設けられ、天井と床との間を上下方向に延在する縦窓と、前記外壁に設けられ、前記天井と前記床との中間部に左右方向に延在する横窓と、を備える外壁構造である。
【0009】
第一態様の外壁構造では、天井と床との間を上下方向に延在する日射遮蔽の効果が高い縦窓に、天井と床との中間部に左右方向に延在することで眺望を確保する横窓を組み合わせることで、日射受照量を低減しつつ、採光と眺望とが確保される。
【0010】
第二態様は、前記外壁は、縦横に間隔をあけて配置されたコンクリート板で構成され、前記コンクリート板の間に、前記縦窓及び前記横窓が設けられる窓開口が格子状に形成され、前記コンクリート板の外側に間隔をあけて外装板が設けられている
第一態様に記載の外壁構造である。
【0011】
第二態様の外壁構造では、コンクリート板と外装板との二重壁構造とすることで、コンクリート板と外装板との間に空気層が形成され、これにより遮音性と遮熱性とが向上する。
【0012】
また、外装板が縦横に間隔をあけて配置されることで、蜂の巣のような意匠を得ることができる。
【0013】
第三態様は、前記横窓は腰高窓とされ、前記腰高窓の窓下を構成する腰壁の上面は、日光が反射する反射面とされている
第一態様又は第二態様に記載の外壁構造である。
【0014】
第三態様の外壁構造では、腰高窓の窓下を構成する腰壁の上面が日光を反射するので、日射受照量を低減しつつ、採光量が増加する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、日射受照量を低減しつつ、採光と眺望とを確保することできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る外壁構造について説明する。なお、図中に示す矢印Zは鉛直方向を示し、矢印Yは後述する外壁の面外方向を示し、矢印Xは外壁の左右方向(Y方向とZ方向とに直交する方向)を示している。
【0018】
<構造>
本発明の一実施形態の外壁構造11が適用された建物10の構造について説明する。
【0019】
図10に示すように、建物10には、中庭12を挟んで外壁20A及び外壁20Bの外面側同士が間隔をあけて対向配置された棟(とう)14A及び棟(とう)14Bを有している。
【0020】
なお、一方の棟14Aの外壁20Aを構成する各部材には符号の後にAを付し、他方の棟14Bの外壁20Bを構成する各部材には符号の後にBを付す。しかし、外壁20Aと外壁20Bとは、後述する縦窓80の位置及びスパンドレル100の位置以外は、同様の構造である。よって、これらを区別して説明する必要がある場合のみ、符号の後のA及びBを付す。また、
図5は、外壁20Aと外壁20Bとの間隔を
図10よりも狭く図示している。
【0021】
図2に示すように、外壁20は縦横に間隔をあけて配置された正面視矩形状のコンクリート板50で構成されている(
図3〜
図5も参照)。各コンクリート板50は、図示していない支持部材を介して柱16(
図5参照)に固定されている。なお、本実施形態のコンクリート板50は、高温高圧蒸気養生によって製造された軽量気泡コンクリート(ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete))が用いられている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、外壁20を構成する各コンクリート板50(
図2参照)の間に、窓開口60(
図3〜
図5も参照)が格子状に形成されている。この窓開口60に窓枠や窓ガラスなどを含んで構成される横窓70(
図3、
図4及び
図7も参照)及び縦窓80(
図5及び
図7も参照)が設けられている。
【0023】
図2〜
図5に示すように、各コンクリート板50の外側には、外装板の一例としての正面視矩形状の金属製のスパンドレル100が設けられている。つまり、本実施形態では、コンクリート板50とスパンドレル100との二重壁構造となっている。なお、符号100の後のL及びRについては後述する。また、L及びRの説明が不要の場合は、L及びRを図示及び説明を省略する。
【0024】
図4に示すように、スパンドレル100は、コンクリート板50に固定された下地材150に取り付けられている。また、
図6に示すように、スパンドレル100は、左右非対称の台形状の凸部110L及び凸部110R(
図5も参照)が形成された複数のスパンドレル板材102で構成されている。そして、スパンドレル板材102の端部同士が重ね合わされ、この重ね合わされた部位が留付ビス120で下地材150に取り付けられている。なお、スパンドレル100(スパンドレル板材102)は、本実施形態ではガルバニウム鋼板で構成されているが、ガルバニウム鋼板以外の鋼板(金属製の板)で構成されていてもよい。
【0025】
左右非対称の台形状の凸部110Lと凸部110Rとは、互いに左右反転した形状である。凸部110Lが形成されたスパンドレル100には符号Lを付けてスパンドレル100Lとし、凸部110Rが形成されたスパンドレル100には符号Rを付けてスパンドレル100Rとする。なお、前述したように、これらを区別しない場合などは、L及びRを省略する。
【0026】
図1、
図2、
図5及び
図6に示すように、スパンドレル100Lとスパンドレル100Rとが交互に配置されている。別言すると、スパンドレル100の凸部110は、左右非対称の台形状とされ、隣接するスパンドレル100は凸部110が左右反転して配置されている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、梁30に支持されたスラブ32の下側に、間隔をあけて天井材34(
図7も参照)が設けられている。つまり、スラブ32と天井材34とで構成された二重天井となっている。また、本実施形態では、
図4に示すように、スラブ32の上面には床材38(
図7も参照)が貼られている。なお、床は二重床であってもよい。
【0028】
図3及び
図4に示すように、スパンドレル100の裏側のコンクリート板50には、ダクト40の吸気口42が開口している(
図2も参照)。ダクト40は、スラブ32と天井材34との間の空間に配管され、図示していない全熱交換器に連結されている。
【0029】
全熱交換器で熱交換されて空調された空気は、
図7に示す天井材34に設けられた排出口36から室内90に排出される。なお、本実施形態では、室内90に排出された空調された空気は、天井材34に設けられた図示していない吸込口から吸い込まれ、図示していない廊下に排出される。
【0030】
図3〜
図5に示すように、外壁20の室内90側には、外壁20と間隔をあけて設置された内装仕上材によって、室内90の内壁92が形成されている(
図7も参照)。
【0031】
なお、本実施形態では、外壁20と内壁92との間隔は約320mmとなっている。また、本実施形態の横窓70は、高さが約1200mmで窓高さが約800mmの腰高窓とされていると共に片引き窓となっている。一方、本実施形態の縦窓80は、幅が約500mmとされている。なお、これらの寸法は、本実施形態におけるものであり、これらの寸法に限定されものではない。
【0032】
図7に示すように、縦窓80は、室内90の左右方向の一方の端部側に床材38から天井材34までの間が開口するように設けられている。また、左右方向に延在する横窓70は、天井材34と床材38との中間部に設けられている。なお、横窓70の室内90側の開口端部70Aは、縦窓80と間隔があくように内壁92が設けられている。
【0033】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の外壁20と内壁92との間隔は約320mmと深いので、
図3、
図4及び
図7に示すように、横窓70の窓下を構成する腰壁94の上面96は幅広である。
【0034】
図5に示すように、対向する一方の棟14Aの外壁20A(
図7も参照)の縦窓80Aと、他方の棟14Bの外壁20B(
図7も参照)の縦窓80Bとは、X方向にずれて配置され、Y方向(面外方向)から見た場合に縦窓80Aと縦窓80Bとが重ならないように配置されている。
【0035】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
図7等に示すように、天井材34と床材38との間を上下方向に延在する日射遮蔽の効果が高い縦窓80に、天井材34と床材38との中間部、本実施形態では腰高位置に左右方向に延在し眺望を確保する横窓70を組み合わせることで、日射受照量を低減しつつ、採光と眺望とが確保される。
【0037】
更に、外壁20と内壁92との間隔を広くすることで(横窓70の窓深さを深くするこことで)幅広となった窓下を構成する腰壁94の上面96(
図3も参照)が、日光を反射する反射面(ライトシェルフ)として機能することで、室内90の採光量が増加する。
【0038】
また、
図3に示すように、本実施形態の横窓70は、立っている人H2の目線の高さであるので、立っている人H2の開放感及び眺望感が確保される。一方、座っている人H1に対しては、横窓70からは外が見えないようになっている。更に、
図5に示すように、対向する一方の棟14Aの外壁20Aの縦窓80Aと、他方の棟14Bの外壁20Bの縦窓80BとはX方向にずれて配置され、Y方向(面外方向)から見た場合に縦窓80Aと縦窓80Bとが重ならないように配置されている。よって、
図3に示されている座っている人H1は、縦窓80からの視線の見合いが抑制される又は見合いがほとんど生じない。したがって、室内90は、落ち着いた雰囲気となり、研究や仕事などに集中しやすい環境が得られる。
【0039】
なお、横窓70は片引き窓とされているので、窓を開けることで自然換気(自然排煙)される。
【0040】
図3及び
図4に示すように、コンクリート板50とスパンドレル100との二重壁構造とすることで、コンクリート板50とスパンドレル100との隙間97(
図4参照)に空気層が形成され、これにより遮音性と遮熱性とが効果的に向上する。
【0041】
また、コンクリート板50に開口する吸気口42は、コンクリート板50とスパンドレル100との隙間97から新鮮な外気を吸気する。そして、吸気口42の外側に配置されたスパンドレル100が、大型のベントキャップとして機能するので、吸気口42からの風雨などの進入が効果的に抑制される。
【0042】
図1及び
図2に示すように、スパンドレル100が縦横に間隔をあけて配置されることで、蜂の巣のような意匠を得ることができる。更に、
図5及び
図6に示すように、隣接するスパンドレル100R及びスパンドレル100Lは、左右非対称の台形状の凸部110L及び凸部110Rが左右反転して配置されているので、
図1及び
図2に示すように、光の加減で隣接するスパンドレル100Rとスパンドレル100Lとに濃淡に差が発生し、全体として市松模様の意匠を得ることができる。
【0043】
なお、スパンドレル100を別の観点から説明すると、スパンドレル100は、遮音性及び遮熱性を向上する二重壁としての機能と、大型のベントキャップとしての機能と、の二つの機能を有し、更に蜂の巣及び市松模様の意匠を得る効果を有している。
【0044】
[シミュレーション]
次に、本実施形態の外壁構造11を適用することで、日射受照量が低減しつつ、採光量が確保されることについて、コンピューターシミュレーションを行って確認した結果について説明する。
【0045】
(日射受照量)
まず、日射受照量について説明する。
【0046】
図8(A)〜(D)の日射受照量の分布図は、本実施形態の外壁構造11が適用された建物10の室内90と、比較例の外壁構造211の室内290と、のそれぞれにおける内壁92、292及び床材38、238の日射受照量のシミュレーション結果である。なお、ドットが密であるほど日照受照量が多いことを示している。また、床材38、238における受照領域は内壁92、292から4mとした。
【0047】
なお、
図8(A)は本実施形態の外壁構造11の夏至の日における一日の平均日射受照量であり、
図8(B)は夏至の日における一日の合計日射受照量である。
図8(C)は比較例の外壁構造211の夏至の日における一日の平均日射受照量であり、
図8(D)は夏至の日における一日の合計日射受照量である。
【0048】
比較例の外壁構造211は、本実施形態の外壁構造11の横窓70及び縦窓80と同じ開口面積(本実施形態では3.1m
2)の横窓270が設けられている。また、比較例の外壁構造211では、コンクリート板50の外側にスパンドレル100(
図3及び
図4参照)が設けられていない。
【0049】
このような比較例の外壁構造211では、平均日射受照量(
図8(C))は31.1Wh/m
2であり、合計日射受照量(
図8(D))は37.7Wh/m
2である。
【0050】
これに対して本実施形態の外壁構造11では、平均日射受照量(
図8(A))は24.6Wh/m
2であり、合計日射受照量(
図8(B))は29.8Wh/m
2である。
【0051】
このように両者の窓の開口面積は同じであるが、本実施形態の外壁構造11(縦窓80と横窓70との組み合わせ)のほうが、比較例の外壁構造211(窓高さが高い横窓270のみ)よりも、日射受照量が削減されている。また、合計日射受照量で比較すると、本実施形態の外壁構造11は、比較例の外壁構造211よりも、約21%日射受照量が低減する。
【0052】
また、分布図は示されていないが、比較例の外壁構造211にコンクリート板50の外側にスパンドレル100を設けると、平均日射受照量は27.3Wh/m
2となり、合計日射受照量は33.0Wh/m
2となり、スパンドレル100を設けることで、日射受照量が削減することが確認されている。なお、比較例の横窓270の外壁構造211にスパンドレル100を設けた構造よりも、本実施形態の外壁構造11の方が、約10%日射受照量が低い。
【0053】
(採光量)
次に、採光量について説明する。
【0054】
図9は、本実施形態の外壁構造11の室内90の照度分布図をまとめた表である。なお、表の上段は床材38の照度分布であり、表の下段は室内90の全体の照度分布である。なお、夏至、秋分及び冬至は12時の照度分布であり、年間平均は8時〜18時の照度分布である。
【0055】
そして、夏至は平均490Lux、秋分は平均2020Lux、冬至は平均3890Lux、年間平均は平均670Luxとなり、窓際は年間を通じて必要な照度が確保されている。つまり、実施形態の外壁構造11の室内90は、採光量が確保されている。
【0056】
(まとめ)
このように、本実施形態の外壁構造11を適用することで、日射受照量が低減しつつ、採光量が確保されていることが、コンピューターシミュレーションによって確認された。
【0057】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0058】
例えば、上記実施形態では、横窓70は1200mmで窓高さが800mmの腰高窓とされていたが、これに限定されない。横窓70は、これよりも高くてもよいし、低くてもよい。また、縦窓80の幅も任意である。
【0059】
また、例えば、本実施形態では、縦窓80と横窓70とは、横T字状に配置されていたが、これに限定されない。例えば、縦窓80と横窓70との配置は、十字状であってもよい。
【0060】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。