(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の目地部構造においては、目地材の係合部が経年により弾発力を失い目地幅の変位に追従できなくなるおそれがある。この場合、外装パネル間に隙間が生じるおそれがある。また、弾発力を失った係合部が、止水材の反発力によって目地部外に押し出され脱落するおそれもある。このため、上記特許文献1の目地部構造では、止水性の向上を十分に図ることができていない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、施工容易性及び止水性を担保することができる、外壁の目地部構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る目地部構造は、一対の外装パネル間に形成された目地部構造であって、一対の外装パネルそれぞれの側面に設けられた第1の乾式目地材と、一対の外装パネルの第1の乾式目地材間に挟まれるように設けられた第2の乾式目地材と、を備え、第1の乾式目地材と第2の乾式目地材のうち、少なくともいずれか一方が弾性体であり、第1の乾式目地材と第2の乾式目地材のうち、いずれか一方が凸部を有する凸部材であり、他方が凸部に対応して互いに係止し合う凹部を有する凹部材である。
【0008】
この目地部構造では、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材の一方が凸部材、他方が当該凸部材と互いに係止し合う凹部材とされている。第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材が互いに係止し合うため、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材が目地部から押し出される(脱落する)ことを抑制することができる。また、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材の少なくともいずれか一方が弾性体であるので、例えば目地幅が変位したような場合であっても、目地部構造における乾式目地材を当該変位に適切に追従させることができる。更に、少なくとも一方が弾性体であることにより、互いに係止し合う第1の乾式目地材と第2の乾式目地材とを圧接密着させることができる。これらにより、外装パネル間に隙間が生じることを抑制することができる。乾式目地材の脱落を抑制するとともに外装パネル間に隙間が生じることを抑制することにより、目地部構造における止水性を担保することができる。また、この目地部構造は、乾式工法の目地部構造であるため、湿式工法の目地部構造と比較して、容易に施工することができる。以上のことから、施工容易性及び止水性を担保することができる。
【0009】
また、第1の乾式目地材及び前記第2の乾式目地材の双方が弾性体であってもよい。これにより、目地幅の変位に対する追従性、及び、乾式目地材間の密着性をより高めることができ、目地部構造における止水性をより担保することができる。
【0010】
また、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材が互いに接着されていてもよい。これにより、乾式目地材間の密着性を高め、目地部構造における止水性をより担保することができる。
【0011】
また、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材が湿式シーリング材により接着されていてもよい。これにより、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材それぞれを独立した状態で現場に運び、現場において接着することができる。このことで、施工性を向上させることができる。
【0012】
また、第1の乾式目地材、第2の乾式目地材、及び湿式シーリング材が同一の材質であってもよい。同一の材質とすることにより、目地部構造に力が加わった際に、第1の乾式目地材、第2の乾式目地材、及び湿式シーリング材に加わる力を均一化することができる。このことで、一部の部材に偏って力が加わることによって乾式目地材間の密着性が低くなることを抑制することができる。
【0013】
また、第1の乾式目地材が凸部材であり、第2の乾式目地材が凹部材であってもよい。これにより、外装パネルそれぞれの側面に設けられた第1の乾式目地材の凸形状に沿わせるようにして、凹形状を有した第2の乾式目地材を押し込むことで、目地部構造を容易に施工することができる。
【0014】
また、一対の外装パネルのそれぞれの側面に設けられた第1の乾式目地材間の離間寸法よりも、第2の乾式目地材の幅寸法が大きくてもよい。これにより、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材の密着性を高めることができる。
【0015】
また、凸部及び凹部が曲面で構成されており、第1の乾式目地材の凸部の曲率
半径が、第2の乾式目地材の凹部の曲率
半径以上であってもよい。これにより、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材の間に隙間が発生することを抑制できる。
【0016】
また、第2の乾式目地材の表面が、目地部構造の表面を覆っていてもよい。一の乾式目地材により表面が覆われることにより、止水性をより高めることができる。また、目地部構造の表面側からの美観を向上させることができる。
【0017】
また、第2の乾式目地材の表面が、外装パネルの表面と同系色の模様とされていてもよいし、同様の多彩模様とされていてもよい。これにより、目地部構造と外装パネルとの一体感を演出することができ、美観をより向上させることができる。
【0018】
また、一対の外装パネルそれぞれの側面から対向する外装パネル方向に向けて延びる底面部を更に備え、第1の乾式目地材の対向する外装パネル方向の最大長さは、底面部の対向する外装パネル方向の長さよりも短くてもよい。これにより、外装パネルでは、第1の乾式目地材よりも底面部の先端が突出することとなる。このため、外装パネルの積み上げ時、及び、建築現場におけるナイロンスリング(帯状の吊り上げ治具)による外装パネルの吊り上げ作業時等において、第1の乾式目地材が他のものにぶつかり傷つくこと、汚れること等を回避することができ、施工性、密着性、及び水密性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、施工容易性及び止水性を担保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は適宜に省略する。
【0022】
建物の外壁100(
図1参照)の一部又は全部は、例えば、外壁パネル1A及び開口サッシ枠等の窓枠を複数並設すること、あるいは、窓枠に対して外壁パネル1Aを上下左右に隣接して設けること等によって形成される。外壁パネル1A及び窓枠等の外壁100を形成する面状の部材は、外装パネル材(外装パネル)に相当する。ここで、外壁パネル1Aとしては、プレキャスト鉄筋コンクリート(PC)板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、及び金属製カーテンウォール等を用いることができるが、以下の実施形態では、ALCパネルを想定した外壁パネル1Aを例に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る目地部構造2について説明する。
図1に示されるように、複数の外壁パネル1Aを立設して面状に並べることによって、隣り合う外壁パネル1A同士の間に目地部10が形成される。すなわち、一対の外壁パネル1A間に目地部10が形成される。具体的には、外壁パネル1Aの小口面1a(
図2参照)における表面側の隅角部には、長手方向に沿って切欠きが施されており、小口面1a同士が対向配置されることにより、表面側に溝を有する目地部10が形成されている。目地部構造2とは、当該目地部10に形成される構造である。なお、以下の説明において、「表面側」とは、外壁100の屋外に面する側を想定しており、特に、目地部10が形成されている側を意図する。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、目地部10は、一対の側面部11と、一対の底面部12とを有する。すなわち、目地部10を構成する一対の外壁パネル1Aは、それぞれ、側面部11と底面部12とを有している。一対の側面部11は、底面部12を挟んで対称な形状であり、それぞれ、底面部12に対して略垂直に立ち上がる垂直面11b(側面)と、垂直面11bから外壁100の表面にかけて目地部10の幅が拡大するように傾斜した傾斜面11aとを有する。一対の底面部12は、垂直面11bにおける傾斜面11aと連続する側と反対側の端部から、対向する外壁パネル1A方向(以下、「幅方向」と記載する場合がある)に向けて延びている。
【0025】
一対の外壁パネル1Aそれぞれの垂直面11bには、凸型乾式目地材3(第1の乾式目地材)が設けられている。具体的には、工場において、目地部10となる側面部11の垂直面11bにプライマーあるいは接着剤が塗布され、当該プライマーあるいは接着剤に凸型乾式目地材3が接着されることにより、垂直面11bに凸型乾式目地材3が設けられている。より詳細には、凸型乾式目地材3は、その表面が傾斜面11aに連続した面となるように、垂直面11bのうち傾斜面11aに連続する部分に設けられている。なお、凸型乾式目地材3が工場において側面部11と接着されることにより、現場で側面部11と接着される場合と比較して、接着信頼性を高めることができる。
【0026】
凸型乾式目地材3は、目地部10の長手方向の寸法に合わせて形成された長尺状の弾性部材である。また、凸型乾式目地材3は、垂直面11bに接着された状態において、幅方向に突出する曲面で構成された凸部3cを有するかまぼこ型(断面略半円形状)の凸部材である。凸型乾式目地材3の、幅方向の最大長さW1は、底面部12の、幅方向の長さW2よりも短い(
図3参照)。凸型乾式目地材3は、例えばポリウレタン系シーリング材又は変成シリコーン系シーリング材により構成されており、湿式シーリング材が固められることにより形成されている。なお、弾性部材である凸型乾式目地材3は、湿式シーリング材が固められたものに限定されず、EPDMゴム及びウレタンゴム等のゴムおよびその発泡体でもよい。
【0027】
一対の外壁パネル1Aの凸型乾式目地材3間に挟まれるように、凹型乾式目地材4が設けられている。凹型乾式目地材4は、目地部10の長手方向の寸法に合わせて形成された長尺状の弾性部材である。また、凹型乾式目地材4は、凸部3cに対応して互いに係止し合う曲面で構成された凹部4c(
図3参照)を有する凹部材である。凹型乾式目地材4は、例えばポリウレタン系シーリング材又は変成シリコーン系シーリング材により構成されており、湿式シーリング材が固められることにより形成されている。凹型乾式目地材4は、凸型乾式目地材と同じ材料により構成されていることが好ましい。なお、弾性部材である凹型乾式目地材4は、湿式シーリング材が固められたものに限定されず、EPDMゴム及びウレタンゴム等のゴムおよびその発泡体でもよい。
【0028】
凹型乾式目地材4は、一対の凸型乾式目地材3の凸部3cに対向する、凹部4cの側面部4aを有しており、当該凹部4cの側面部4aが、凸型乾式目地材3の凸部3cの凸形状に対応する凹形状とされて断面が略「鼓」形状をなしている。すなわち、凹型乾式目地材4は、凸型乾式目地材3の間に設けられた状態において、凹部4cの側面部4aが幅方向に凹んだ凹部材である。凹部4cの側面部4aが凸型乾式目地材3の凸部3cの凸形状に対応する凹形状とされているとは、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられた状態において、側面部4aと凸型乾式目地材3とが密着するように側面部4aが形成されていることをいう。なお、側面部4aと凸型乾式目地材3とが密着しているとは、側面部4aと凸型乾式目地材3とが直接接している状態だけでなく、側面部4aと凸型乾式目地材3とが湿式シーリング材5(詳細は後述)を介して接着されている状態を含んでいる。
【0029】
ここで、凸型乾式目地材3は、かまぼこ型(断面略半円形状)とされており、外壁パネル1Aの厚さ方向(以下、「厚さ方向」と記載する場合がある)中央部分の幅寸法が最も大きく、厚さ方向両端の幅寸法が最も小さい。そのため、対応する凹型乾式目地材4は、厚さ方向中央部分がくびれた形状となっており、厚さ方向中央部分の幅寸法が最も小さく、厚さ方向両端の幅寸法が最も大きい。より詳細には、凹型乾式目地材4は、厚さ方向両端のうち、表面側端部の幅寸法が最も大きい。そして、凹型乾式目地材4では、表面側端部が楔形状となっており、肉厚が極薄になっている。凹型乾式目地材4の表面側端部が薄く形成されていることにより、外壁パネル1Aの表面側から見た際に、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4の境界面を分かりにくくすることができる。
【0030】
また、一対の外壁パネル1Aそれぞれの垂直面11bに設けられた凸型乾式目地材3同士の離間寸法D1よりも、凸型乾式目地材3同士が互いに対向する方向(すなわち、幅方向)における凹型乾式目地材4の幅寸法D2が大きい(
図3参照)。当該凸型乾式目地材3同士の離間寸法D1と凹型乾式目地材4の幅寸法D2との関係は、凸型乾式目地材3と側面部4aとが接する(密着する)、厚さ方向の全ての領域において成り立つ。このことにより、凹型乾式目地材4が凸型乾式目地材3の間に設けられた状態においては、凹型乾式目地材4の両方の側面部4aが、一対の凸型乾式目地材3により押圧される構造となり、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4との密着性が高まる。
【0031】
そして、上述したように、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とは、厚さ方向において、幅寸法が対応した長さとなっており、凸型乾式目地材3では厚さ方向中央部分の幅寸法が最も大きいのに対し、凹型乾式目地材4では厚さ方向両端の幅寸法が最も大きい。このため、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とは互いに係止し合うこととなる。そして、厚さ方向中央部分がくびれた形状である凹型乾式目地材4は、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられた状態において、幅方向両側から凸型乾式目地材3に押圧されるので、凹型乾式目地材4の厚さ方向への移動が抑止される。
【0032】
凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とが互いに係止し合う部分(互いに接する部分)については、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられていない状態、すなわち凹型乾式目地材4が一対の凸型乾式目地材3により押圧されていない状態において、凸型乾式目地材3の幅方向の最大長さが凹型乾式目地材4の幅方向の最大長さよりも長く、凸型乾式目地材3の厚さ方向の最大長さが凹型乾式目地材4の厚さ方向の最大長さよりも長い。
【0033】
すなわち、側面部4aと接する凸型乾式目地材3の幅方向の最大長さX1は凸型乾式目地材3と接する側面部4aの幅方向の最大長さX2よりも長く、側面部4aと接する凸型乾式目地材3の厚さ方向の最大長さY1は凸型乾式目地材3と接する側面部4aの厚さ方向の最大長さY2よりも長い(
図3参照)。これにより、互いに係止し合う部分において、凹型乾式目地材4よりも凸型乾式目地材3が大きい態様となる。このことで、互いに係止し合う部分において、凸型乾式目地材3によって両方の側面部4aが押圧された凹型乾式目地材4が、変形しながら凸型乾式目地材3間に設けられることとなるので、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4との密着性をより高めることができる。
【0034】
なお、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられた状態においては、凹型乾式目地材4の表面4bは、目地部構造2における目地部10の表面を覆っている。凹型乾式目地材4の表面4bが目地部10の表面を覆っているとは、外壁パネル1Aの表面側から見て、底面部12が視認されないように、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられていることをいう。また、凸型乾式目地材3の凸部3cの曲率
半径R1は、凹型乾式目地材4の凹部4cの曲率
半径R2以上とされている(
図3参照)。
【0035】
また、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4(より詳細には側面部4a)とは湿式シーリング材5により接着されている。当該湿式シーリング材5は、例えばポリウレタン系シーリング材又は変成シリコーン系シーリング材であり、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4と同じ材料であることが好ましい。なお、外壁パネル1Aの表面が多彩模様仕上げであれば、湿式シーリング材5は、外壁パネル1Aと同様の多彩模様のシーリング材(多彩シーリング材)あるいは透明のシーリング材であることが好ましい。また、外壁パネル1Aの表面が単色仕上げであれば、湿式シーリング材5は、外壁パネル1Aと同様(同系色)の単色のシーリング材あるいは透明のシーリング材であることが好ましい。このことにより、仮に湿式シーリング材5が傾斜面11a側に露出した(はみ出した)場合であっても、湿式シーリング材5を目立ちにくくすることができる。以下では、外壁パネル1Aの表面が多彩模様仕上げであるとして説明する。
【0036】
なお、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とを接着する方法は、上述した湿式シーリング材5を用いる方法に限定されない。例えば、テープ状のホットメルト接着材を予め凸型乾式目地材3につけておき、施工現場において当該ホットメルト接着剤を加熱することにより、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とを接着してもよい。また、その他の接着剤により凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とを接着してもよい。
【0037】
傾斜面11a、及び傾斜面11aに連続する凸型乾式目地材3の表面の一部には、塗装15が施されている。塗装15は、例えば、凸型乾式目地材3の表面のうち、凹型乾式目地材4との接着時に凹型乾式目地材4によって隠ぺいされない部分には少なくとも施されている。塗装15は、工場において施される。塗装15は、多彩模様塗料により多彩模様とされている。
【0038】
図4は、塗装15の多彩模様の一例を示している。多彩模様とは、二色以上が使用された模様であり、特に、各色が不規則に配置された模様形態が好ましい。
図4中において、黒色ないし黒色がかすんで灰色で示される部分は多彩模様塗料の着色混合粒を示しており、白色で示される部分は着色されていない領域を示している。このように、塗装15では、着色混合粒がランダムに吹き付けられている。多彩模様塗料は、数種の色彩の異なる着色塗料を大小様々な形状の液状又はゲル状混合液(着色混合粒)として互いに溶け合わない状態で分散媒中に分散させたものである。このような多彩模様塗料としては、着色混合粒及び分散媒のいずれか一方を油性系とし他方を水性系とした水中油型及び油中水型多彩模様塗料、並びに、両者を同一系とした水中水型及び油中油型多彩模様塗料がある。塗装15は、例えば工場において、スプレーガンを用いて多彩模様塗料を吹き付け塗装することによって形成される。
【0039】
凹型乾式目地材4の表面4bには、補修シート18が貼付される。当該補修シート18は、上述した塗装15と同様の多彩模様塗料によって着色されている。これにより、塗装15が施された傾斜面11aと補修シートが貼付された凹型乾式目地材4との一体感を演出することができ、美観をより向上させることができる。なお、補修シート18は、例えば、可塑性を有したフレキシブルシートとされる。補修シート18は、凹型乾式目地材4の表面4bを覆うとともに、少なくとも、傾斜面11aと凸型乾式目地材3とが連続する箇所を覆うように設けられている。
【0040】
なお、傾斜面11aにおいて化粧目地が施されている化粧目地位置L1は、傾斜面11aと凸型乾式目地材3とが連続する箇所であるシーリング目地位置L2よりも表面側であってもよい(
図2参照)。すなわち、化粧目地の深さとシーリング目地の深さにギャップがある。このことによって、補修シート18が化粧目地に重なってしまうことを回避することができ、補修シート18を容易に貼付することができる。補修シート18は、施工現場において貼付されてもよいし、予め一部が表面4bに貼付されていてもよい。
【0041】
次に、目地部構造2の施工方法について
図2及び
図3を参照して説明する。なお、施工を行う前提として、
図3に示されるように、複数(
図2及び3では一対)の外壁パネル1Aが面状に並んで立設している。そして、当該一対の外壁パネル1Aの垂直面11bには、工場において接着された凸型乾式目地材が設けられている。
【0042】
この状態において、最初に、互いに対向する凸型乾式目地材3における、外壁パネル1Aの表面側の部分に湿式シーリング材5が塗布される。具体的には、外壁パネル1Aの表面側から、専用の押し出し機等により湿式シーリング材5が一対の凸型乾式目地材3の間の空間における表面側に打設される。当該湿式シーリング材5は、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とを接着させる用途で用いられるものである。つづいて、凸型乾式目地材3の凸部3cに凹型乾式目地材4の凹部4cの側面部4aを沿わせるようにして、外壁パネル1Aの表面側から凹型乾式目地材4が押し込まれ、凸型乾式目地材3間に凹型乾式目地材4が嵌め込まれる。凹型乾式目地材4が押し込まれることに伴って、湿式シーリング材5も凸型乾式目地材3の奥側にまで延ばされるので、凹型乾式目地材4の側面部4aの略全面に亘って、凸型乾式目地材3との密着面に湿式シーリング材5を介在させることができる。最後に、凹型乾式目地材4の表面4bに補修シート18が貼付される。なお、当該施工方法は一例であり、目地部構造2の施工方法はこれに限定されない。
【0043】
次に、第1実施形態に係る目地部構造2の作用効果について説明する。
【0044】
従来、外壁パネルなどの外装パネル間の目地部構造として、湿式シーリング材を目地部に打設する湿式工法による目地部構造と、乾式目地材を目地部に装着する乾式工法による目地部構造とが知られている。
【0045】
湿式工法は止水性を確保することができる一方、工期が長くなるという欠点がある。すなわち、湿式工法は天候によって実施可否が決まるため、天候に左右されて工期が長くなる場合がある。また、湿式工法は、筒状のシーリングガン等で目地部に湿式シーリング材を打設する工程、へらにより湿式シーリング材を延ばし表面を仕上げる工程、及び湿式シーリング材の上から仕上げ塗装を行う工程等を行うため、工期が長くなってしまう。
【0046】
また、乾式工法は施工容易性を担保することができる一方、完全な止水性を確保することが困難であるという欠点がある。すなわち、乾式シーリング材が目地幅の変位に追従できなくなり外壁パネル間に隙間が生じてしまう場合、乾式シーリング材が目地部外に脱落する場合等があり、この場合、止水性を確保することができない。
【0047】
第1実施形態に係る目地部構造2では、凸部材である凸型乾式目地材3と、凹部材である凹型乾式目地材4とが互いに係止し合っている。より詳細には、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられた状態において、凸型乾式目地材3では厚さ方向中央部分の幅寸法が最も大きいのに対し、凹型乾式目地材4では厚さ方向両端の幅寸法が最も大きい。このため、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とは互いに係止し合うこととなる。そして、厚さ方向中央部分がくびれた形状である凹型乾式目地材4は、一対の凸型乾式目地材3間に挟まれるように設けられており、幅方向両側から凸型乾式目地材3に押圧されるので、凹型乾式目地材4の厚さ方向への移動が抑止され、凹型乾式目地材4が目地部10から押し出される(脱落する)ことを抑制することができる。
【0048】
また、第1実施形態に係る目地部構造2では、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4の双方が弾性体であるので、仮に目地部10の幅方向の長さ(目地幅)が変位したような場合であっても、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4を当該変位に適切に追従させることができる。更に、双方が弾性体であることにより、互いに係止し合う凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とを圧接密着させることができる。これらにより、外壁パネル1A間に隙間が生じることを抑制することができる。凹型乾式目地材4の脱落を抑制するとともに外壁パネル1A間に隙間が生じることを抑制することにより、目地部構造2における止水性を担保することができる。
【0049】
更に、目地部構造2は乾式目地材である凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4が目地部10に装着させることにより止水性を担保する乾式工法による目地部構造であるため、湿式工法の目地部構造と比較して、容易に施工することができる。以上のことから、第1実施形態に係る目地部構造2によれば、施工容易性及び止水性を担保することができる。
【0050】
なお、目地部構造2では、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4の双方が弾性体であることによって、目地幅の変位に対する追従性、及び、乾式目地材間の密着性をより高めることができ、目地部構造2における止水性をより担保している。
【0051】
また、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4は、互いに接着されている。これにより、乾式目地材間の密着性を高め、目地部構造2における止水性をより担保している。また、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4が湿式シーリング材5により接着されている。これにより、凸型乾式目地材3及び凹型乾式目地材4を、それぞれ独立した状態で現場に運び、現場において接着することができる。このことで、施工性を向上させることができる。
【0052】
また、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4と湿式シーリング材5とが同一の材質とされた場合には、乾式目地材間の密着性をより高めることができる。すなわち、例えば地震等により目地部構造2に大きな力が加わった際に、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4と湿式シーリング材5とが同一の材質とされることにより、各構成に加わる力を均一化することができ、一部の構成に偏って力が加わることによって乾式目地材間の密着性が低くなることを抑制することができる。
【0053】
また、一対の外壁パネル1Aの垂直面11bに設けられた凸型乾式目地材3が凸部材であり、凸型乾式目地材3間に設けられる凹型乾式目地材4が凹部材であることにより、目地部構造を容易に施工することができる。すなわち、一対の外壁パネル1Aの垂直面11bに設けられた凸型乾式目地材3の凸形状に、凹型乾式目地材4の側面部4aを沿わせるようにして、外壁パネル1Aの表面側から凹型乾式目地材4が押し込まれることにより、目地部構造を容易に施工することができる。
【0054】
また、一対の外壁パネル1Aそれぞれの垂直面11bに設けられた凸型乾式目地材3同士の離間寸法D1よりも、凹型乾式目地材4の幅寸法D2が大きい。当該凸型乾式目地材3同士の離間寸法D1と凹型乾式目地材4の幅寸法D2との関係は、凸型乾式目地材3と側面部4aとが接する(密着する)、厚さ方向の全ての領域において成り立つ。このことにより、凹型乾式目地材4の両方の側面部4aが、一対の凸型乾式目地材3により押圧される構造となり、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4との密着性を高めることができる。
【0055】
また、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4とが互いに係止し合う部分(互いに接する部分)については、凸型乾式目地材3の間に凹型乾式目地材4が設けられていない状態、すなわち凹型乾式目地材4が一対の凸型乾式目地材3により押圧されていない状態において、凸型乾式目地材3の幅方向の最大長さX1が凹型乾式目地材4の幅方向の最大長さX2よりも長く、凸型乾式目地材3の厚さ方向の最大長さY1が凹型乾式目地材4の厚さ方向の最大長さY2よりも長い。これにより、互いに係止し合う部分において、凹形状よりも凸形状が大きい態様とすることができる。このことで、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4との密着性をより高めることができる。
【0056】
また、凸型乾式目地材3の凸部3c及び凹型乾式目地材4の凹部4cが曲面で構成されており、凸型乾式目地材3の凸部3cの曲率
半径R1は、凹型乾式目地材4の凹部4cの曲率
半径R2以上とされている。これにより、凸型乾式目地材3の凸形状の弧の部分が凹型乾式目地材4の側面部4aに接する態様となり、凸型乾式目地材3と凹型乾式目地材4との間に隙間が発生することを抑制できる。
【0057】
また、凹型乾式目地材4の表面4bは、目地部構造2における目地部10の表面を覆っている。このことにより、止水性を確実に担保することができると共に、底面部12が視認されないことによって目地部構造2の表面側からの美観を向上させることができる。
【0058】
また、一対の外壁パネル1Aの垂直面から対向する外壁パネル1A方向(幅方向)に向けて延びる底面部12が備わっており、凸型乾式目地材3の、幅方向の最大長さW1は、底面部12の、幅方向の長さW2よりも短い。これにより、外壁パネル1Aでは、凸型乾式目地材3よりも底面部12の先端が突出することとなる。このため、外壁パネル1Aの積み上げ時、及び外壁パネル1Aのナイロンスリングによる吊り上げ時等において、凸型乾式目地材3が他のものにぶつかり傷つくこと、汚れること等を回避することができ、施工性、密着性、及び水密性をより高めることができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、
図5を参照して、第2実施形態に係る目地部10Aに形成される構造(目地部構造2A)について説明する。なお、第2実施形態に係る目地部構造2Aでは、第1実施形態に係る目地部構造2との相違点を中心に説明し、同様の要素や構造については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
第1実施形態に係る目地部構造2では凹型乾式目地材4の表面4bに補修シート18が貼付されていたのに対し、第2実施形態に係る目地部構造2Aにおいては、凹型乾式目地材4の表面4bに塗装25(現場塗装)が施されている。塗装25は、塗装15と同様の多彩模様塗料である。塗装25は、凹型乾式目地材4の表面4bとともに、表面4bに連続する塗装15の上面に施されている。塗装25は、施工現場において施される。すなわち、第1実施形態では施工現場において表面4bに補修シート18が貼付される例を説明したが、第2実施形態では、施工現場において表面4b及び表面4bに連続する塗装15の上面に、塗装25が施される。
【0061】
このような目地部構造2Aでは、表面側から視認される領域全てについて、同様の多彩模様塗料(塗装15又は塗装25)が施されている。このため、目地部構造2Aの表面側からの美観をより向上させることができる。また、第1実施形態において用いた補修シート18が不要となるので、物品点数を削減しながら美観を担保することができる。
【0062】
[第3実施形態]
次に、
図6(a),(b)を参照して、第3実施形態に係る目地部10Bに形成される構造(目地部構造2B)について説明する。なお、第3実施形態に係る目地部構造2Bでは、第1実施形態に係る目地部構造2及び第2実施形態に係る目地部構造2Aとの相違点を中心に説明し、同様の要素や構造については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
第3実施形態に係る目地部構造2Bでは、凹型乾式目地材4の表面4bに、予め工場等において形成された塗膜35(先行塗膜)が設けられている。塗膜35は、外壁パネル1Aの表面すなわち傾斜面11a等の表面に施された塗装15と同様の多彩模様塗料により形成された塗膜である。塗膜35が設けられていることにより、凹型乾式目地材4の表面4b(より詳細には表面4bの上層)が、外壁パネル1Aの表面(より詳細には傾斜面11a等の表面に施された塗装15)と同様の多彩模様とされている。
【0064】
このような目地部構造2Bでは、目地部構造と外壁パネル1Aとの一体感を演出することができ、美観をより向上させることができる。また、塗膜35が予め工場等において形成された先行塗膜であるため、施工現場において補修シート18を貼付する作業、塗装25を施す作業等が不要となり、施工容易性が向上する。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、凸型乾式目地材3がかまぼこ型(断面略半円形状)の凸部材であり、凹型乾式目地材4が当該形状に対応する凹形状を有した凹部材であるとして説明したが、凸型乾式目地材及び凹型乾式目地材が互いに係止し合う形状であれば、それぞれの凸形状(或いは凹形状)はこれに限定されない。すなわち、
図7(a)に示されるように、三角型の凸部材である凸型乾式目地材3xと、当該三角型に対応する凹形状を有した凹部材である凹型乾式目地材4xとが互いに係止し合う構成であってもよいし、
図7(b)に示されるように、台形型の凸部材である凸型乾式目地材3yと、当該台形型に対応する凹形状を有した凹部材である凹型乾式目地材4yとが互いに係止し合う構成であってもよいし、
図7(c)に示されるように、五角形型の凸部材である凸型乾式目地材3zと、当該五角形型に対応する凹形状を有した凹部材である凹型乾式目地材4zとが互いに係止し合う構成であってもよい。
【0066】
また、凹型乾式目地材4において表面側端部が楔形状となっているとして説明したがこれに限定されない。凹型乾式目地材4では、側面部4a全てが凸型乾式目地材3の凸形状に対応する凹形状とされていたため、上述したように表面側端部が楔形状とされていた。これに対し、例えば、
図8に示すように、凸型乾式目地材3vが垂直面11bにおける底面部12に連続する部分に設けられている場合には、凹型乾式目地材4vは、側面部4pのうち凸型乾式目地材3vに対向する部分のみが凹形状とされ、垂直面11bに対向する部分は垂直面11bに沿って延びる平坦形状とされる。このような凹型乾式目地材4vを用いる場合には、側面部4pのうち垂直面11bに沿って延びる部分は、凹型乾式目地材4が凸型乾式目地材3vの間に設けられた状態において、垂直面11bと密着している。
【0067】
また、底面部12は必ずしも設けられていなくてもよく、例えば
図9に示されるように、底面部12が設けれていない外壁パネル1B同士の間に、上述した目地部構造が形成されていてもよい。また、外壁パネル1Aの側面に設けられた第1の乾式目地材が凹部材であり、第1の乾式目地材間に挟まれるように設けられた第2の乾式目地材が凸部材であってもよい。また、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材は、少なくともいずれか一方が弾性体であればよい。また、第1の乾式目地材及び第2の乾式目地材は必ずしも互いに接着されていなくてもよい。