(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688595
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】魚の下ごしらえ道具
(51)【国際特許分類】
A22C 25/14 20060101AFI20200421BHJP
A22C 25/02 20060101ALI20200421BHJP
A22B 3/08 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
A22C25/14
A22C25/02
A22B3/08
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-212344(P2015-212344)
(22)【出願日】2015年10月10日
(65)【公開番号】特開2017-70274(P2017-70274A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】594108605
【氏名又は名称】福本 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】福本 成男
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−004287(JP,U)
【文献】
実開昭61−080688(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3158940(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00−29/04
A22B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄と、該柄の一端から伸びており該柄と反対側の他端部が前記柄に接続されている端部よりも低い位置となるように屈曲した幹部と、該幹部の前記他端部から前記柄の長手方向延長線と略平行に伸びている上の枝刃と下の枝刃とを備えており、前記柄、前記幹部、前記上の枝刃と下の枝刃が一体的に設けられた魚の下ごしらえ道具であって、
前記下の枝刃は、全体的に柳の葉状の細長い形状であって、鈍い切っ先を有しており左右両側面にギザギザ形状の刃を備え、かつ、上下方向にしなるような弾性を有しており、
前記上の枝刃は、前記下の枝刃の2/3程度の長さの細長い形状であり先端にフックを備え、該上の枝刃の先端よりの中央部から根元部にかけて下向き複数の返しの爪を備え、かつ、上下方向にしなるような弾性を有している
ことを特徴とする魚の下ごしらえ道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一本で魚の活き締め、血抜き、ウロコ取り、エラと内蔵を口から取り出す等、魚の下ごしらえが安全、簡単、かつきれいにできる道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、魚のエラと内蔵を一緒に口から取り出す、「つぼ抜き」という方法で下ごしらえを行うには、主に割りばしやこれに似た2本からなる道具が使用される。(特許文献1参照)また、トング状のものやはさみ状のもので挟みとる道具も提案されている。(特許文献2参照)更に、魚の活き締め、ウロコ取り、エラ内蔵取りができる道具として2本からなるものが提案されている。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特4909439号
【特許文献2】 実新3094884号
【特許文献3】 特開2008−253237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1、特許文献3におけるエラと内蔵取り道具に関しては、2本のばらばらになった道具を使用する為に使い勝手が悪く、魚の口から差し込んでエラを挟んでねじる際に手指への負担が大きくなり、鋭く丈夫な歯を有する魚に対しては効果が少ないという問題があった。 また特許文献2に示される道具に関しては、挟むためには魚の狭い口や腹の中での作業になるために効果が期待できない。また、ウロコ取りに関しては刃とウロコの接触面が垂直になるために、大きく固いウロコが飛び跳ねるという問題がある。また、特許文献3に示されるウロコ取りに関しては、柄となる部分が細いために使い勝手が悪い、という問題がある。本発明は、これらの問題を解決するためになされたものである。
【0005】
魚の活き締めと血抜きを行う為の鈍い切っ先を有し、ウロコを削ぎ取る為のぎざぎざの付いた柳葉状の両刃を有する弾性を持った下の枝刃と、こて状に屈曲する幹部から枝分れし、先端にフックを設け中央部から根元にかけて返しの爪の付いた、弾性を持った上の枝刃とで構成される部位と、柄の部位とからなる一本の道具である。魚の口から上下の枝刃を差し込み、エラと内蔵を挟み込んでひねって引き出す機能を併せ持った、魚の下ごしらえの道具である。
【0006】
本発明によれば、一本の道具で魚の活き締め,血抜き、ウロコ取り、エラと内蔵の取り出しがいずれも使い勝手良くできる。また鋭利な刃物を使用して魚の腹部を大きく切り開く必要がないので、安全に見栄えよくきれいに下ごしらえが仕上がる。釣行の際にも便利である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る魚の下ごしらえの道具の構成をあらわす。
図2は
図1のA−A線に沿った断面図である。
図3は
図1におけるB−B線に沿った断面図である。こて状に屈曲する幹部10から上下2本の刃が枝分かれしている。上の枝刃12と下の枝刃11それぞれに弾性がある。材質はステンレス、セラミック、プラスチック等が使用される。下の枝11の切っ先11bは魚の活き締めを行うために鈍く細めてある。切っ先11bの周辺は、エラの上部背骨に沿う血管を切るためにやや薄くなっているが、刃の切れ味はペーパーナイフ程度であり、誤って手に触れても傷つかない。下の枝刃11は全体的には柳葉状になっており、その両側の刃には刻み11aが刻まれている。これはウロコを取る時に柄13を握り魚の体の表面に水平にあてがい、下の枝刃を前後に押したり引いたりして削ぐのに都合がよい。ウロコの飛び跳ねを防止できる。下の枝刃11の断面は
図2に示されるように、外側は内側に向かって湾曲している。これは、下の枝刃11を魚の体の表面に密着させるために、また、ウロコを下から救いやすくするための工夫である
【0009】
上の枝刃12は下の枝刃11よりも短くなっている。その長さの比率はおおよそ2対3程度である。これは、魚の口から両方の刃を差し込んで左右のエラを同時に挟み込むことが困難なためである。たいていの魚のエラは左右4枚ずつ有り、前列のエラは後列のエラに幅半分程度覆いかぶさっている。そして最後列のエラは魚の体の表面と薄い皮膜で繋がっている。したがって一旦エラの外側に差し込んだ刃を再度魚の体内に差し込むには、刃の向きを変えてこの被膜を突き破らなくてはならない。この作業を円滑に行う為に、2本の枝刃の長さを変える必要がある。また、下の枝刃11と上の枝刃12の先端付近は、向かい合うようにわずかに湾曲しているが、これも前記作業を円滑に行う為の工夫である。
【0010】
図3は
図1における上の枝刃12のB−B線に沿った断面図である。上の枝刃12は分岐点10aから斜め上方向に湾曲してから下の枝刃11とほぼ平行に伸びている。これは両方の刃が持つ弾性を助長するという効果がある。先端部は上向きに広がっており最先端部のフック12bは下向きに曲がっている。これは魚のエラの厚みに応じて刃と刃の間隔を変えて、エラを挟み易くするためである。
図3に示される爪12aは、挟み込まれたエラと内蔵を魚の口から引き抜く際の抜け止めである。刃の弾性と相まって強力な抜け止めの効果がある。また、挟み込んだエラと内蔵を指でしごいて除去する際に、指の痛みや傷つきを防ぐために、爪12aの線端は丸みを帯びている。
図1における柄13は握り易く、またねじり易くするために扁平と丸みのある形を組み合わせた構造になっている。
本発明は以上のような構造である。
【0011】
本発明を使用するには、まず生きた魚を締める時は柄13を握り、下の枝刃11の切っ先11bを魚の脳髄に突き立てる。その後血抜きを行う。魚のエラ蓋をあけて下の枝刃11の先端部をエラの上部奥の背骨に沿った血管に当てこれを切る。刃が細いので円滑に行うことができる。ウロコ取りは、魚体の表面に下の枝刃11を水平に当て、前後に押したり引いたりして削ぎ取るとウロコの飛び跳ねが少なく後始末が楽である。鋭くとがった背びれを手前に向けた状態でウロコ取りを行うときには、ひれが手に触れないように気を付けなければならないが、本発明のこて状の形態はこれに対応したものであり安全である。
【0012】
図4はエラとウロコ取りの使用図である。本発明の道具を横に寝かせた状態で持ち、魚の腹を上にしてエラ蓋F2をあけ、まず下の枝刃11の先端を魚の口F1から差し込み、えらF4の外側に出す。次に切っ先11bを最後部のエラと魚体の間にわずかに差し込む。次に上の枝刃の先端のフック12bをエラF5の外側からかぶせるように差し込み、最後部のエラと魚体の隙間に届いたら両側のエラ蓋を閉じ本道具を左右に小刻みにひねりながら押し込む。
図5における分岐点10aが最前部のエラに触れた状態で止める。次に柄13を強く握り1回転〜2回転捩じり、軽くなったらゆっくり引き抜く。上の枝刃12の先端部に設けたフック12bはこの時内蔵の引っ掛かりをよくするためのものである。
【符号の説明】
【0013】
10 幹部
10a 分岐点
11 下の枝刃
11a 刻み
11b 切っ先
12 上の枝刃
12a 爪
12b フック
13 柄
F 魚体
F1 口
F2 右エラ蓋
F3 左エラ蓋
F4 右エラ
F5 左エラ
F6 肛門