(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動ウインチ装置では、2つの電動機が出力するトルクでウインチドラムを回転させるため、大きな吊能力を確保できるという利点はある。しかしながら、2つの電動機をウインチドラムの軸方向の両側に配置する構成を採ると、前記軸方向における電動ウインチ装置の寸法が増大する。従って、設置スペースに制約がある場合、当該構成の電動ウインチ装置を採用できなくなる。また、このような電動ウインチ装置を移動式クレーンに搭載した場合、その車幅が大きくなってしまい、公道を経由した当該移動式クレーンの輸送の際に、法令上の車幅制限の要請から分解輸送が必要となることが生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、大きな吊能力を確保しつつ、ウインチドラムの軸方向における幅を抑制することが可能な電動ウインチ装置及び移動式クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る電動ウインチ装置は、作業用ロープの巻き取り又は繰り出しのために、ドラム軸回りに回転するウインチドラムと、前記ウインチドラムを回転駆動する電動機であって、固定子と、回転軸回りに回転し前記固定子に対して軸方向に間隔を空けて配置された回転子と、を備えるアキシャルギャップ型の複数の電動機と、前記ドラム軸と同じ軸上に配置され、前記複数の電動機の前記回転子を前記回転軸の軸上において直列に連結してなる駆動軸と、を備
え、前記固定子は、磁性コアと励磁コイルとで構成される複数のスロットを有し、前記回転子は、永久磁石で構成される複数の磁極を有し、前記電動機の各々は、前記スロットの数と前記磁極の数とで定まるコギングを発生するものであって、前記複数の電動機のうちの一の電動機が発生するコギングと、他の電動機が発生するコギングとを相殺させる打ち消し手段をさらに備える。
【0008】
この電動ウインチ装置によれば、ウインチドラムの駆動源として複数のアキシャルギャップ型の電動機が用いられる。そして、これら電動機が共通の駆動軸によって直列に接続されると共に、前記駆動軸がウインチドラムのドラム軸と同じ軸上に位置するよう組み付けられる。アキシャルギャップ型電動機は、ラジアルギャップ型電動機に比べて、薄型化が可能、大トルクが得られるといった利点がある。従って、上記の構成によれば、複数の電動機の連結により大トルクを得ながら、ウインチドラムのドラム軸方向のサイズを抑制した電動ウインチ装置を提供することができる。
また、前記打ち消し手段を具備させることで、コギングに基づく各電動機の出力トルクの脈動を相殺させることができる。従って、ウインチドラムを低速回転させる場合や、寸送り(インチング)させる場合等の操作性を向上させることができる。
【0009】
上記の電動ウインチ装置において、前記アキシャルギャップ型の電動機は、一つの固定子と、該固定子を軸方向に挟んで配置された一対の回転子とを有するダブルロータ型の電動機であることが望ましい。
【0010】
この電動ウインチ装置によれば、固定子の片面側のみに回転子が配置されるシングルロータ型のものに比べて、より大きなトルクを得ることができる。
【0011】
上記の電動ウインチ装置において、前記固定子は、磁性コアと励磁コイルとで構成される複数のスロットを有し、前記回転子は、永久磁石で構成される複数の磁極を有し、前記電動機の各々は、前記スロットの数と前記磁極の数とで定まるコギングを発生するものであって、前記複数の電動機のうちの一の電動機が発生するコギングと、他の電動機が発生するコギングとを相殺させる打ち消し手段をさらに備えることが望ましい。
【0012】
電動機は、固定子のスロットの数と回転子の磁極の数とに依存してコギング(Cogging)が発生する。アキシャルギャップ型の電動機は、高トルクを得ることができる反面、コギングの問題が顕著に発生する傾向がある。上記の電動ウインチ装置によれば、前記打ち消し手段を具備させることで、コギングに基づく各電動機の出力トルクの脈動を相殺させることができる。従って、ウインチドラムを低速回転させる場合や、寸送り(インチング)させる場合等の操作性を向上させることができる。
【0013】
この場合、前記打ち消し手段は、前記複数の電動機のうちの一の電動機の回転子が、所定の基準位置に前記磁極が位置する基準回転角で前記駆動軸に固定されること、及び、他の電動機の回転子が、自身が発生するコギングで前記一の電動機が発生するコギングを打ち消すように、前記基準回転角に対して回転方向にシフトさせた位置に前記磁極が位置する状態で前記駆動軸に固定されること、を含むものとすることができる。
【0014】
この電動ウインチ装置によれば、一の電動機と他の電動機とにおいて、両者の回転子の磁極位置を回転方向において相対的に異ならせるという簡便な構成で、コギングの打ち消しを達成できる。
【0015】
あるいは、前記打ち消し手段は、前記複数の電動機のうちの一の電動機の固定子が、所定の基準スロット位置に前記スロットが位置する状態で、当該一の電動機内において配置されること、及び、他の電動機の固定子が、自身が発生するコギングで前記一の電動機が発生するコギングを打ち消すように、前記基準スロット位置に対して前記スロットを前記回転子の回転方向にシフトさせた位置関係で、当該他の電動機内において配置されること、を含むものとすることができる。
【0016】
この電動ウインチ装置によれば、一の電動機と他の電動機とにおいて、両者の固定子のスロット位置を回転方向において相対的に異ならせるという簡便な構成で、コギングの打ち消しを達成できる。
【0017】
上記の電動ウインチ装置において、前記駆動軸に対して制動を掛けるブレーキをさらに備えることが望ましい。
【0018】
この電動ウインチ装置によれば、前記ブレーキによって、駆動軸に対して自在に制動力を与えることができる。
【0019】
上記の電動ウインチ装置において、前記駆動軸と前記ウインチドラムとの間でトルクを伝達する接続状態と、前記トルクの伝達を遮断する遮断状態とに切り換えるクラッチをさらに備えることが望ましい。
【0020】
この電動ウインチ装置によれば、前記クラッチを遮断状態にすることにより、ウインチドラムを電動機から切り離して自由回転させるフリーフォール運転が可能となる。
【0021】
本発明の他の局面に係る移動式クレーンは、吊作業用の作動部と、上記の電動ウインチ装置と、を備え、前記作業用ロープは前記作動部に繋がるロープである。
【0022】
この移動式クレーンによれば、上記電動ウインチ装置を備えることにより、大きな吊能力を確保しつつ、車幅制限の問題をクリアすることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、大きな吊能力を確保しつつ、ウインチドラムの軸方向における幅を抑制することが可能な電動ウインチ装置、及びこれが適用された移動式クレーンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動ウインチ装置1が搭載された移動式クレーン9の概略的な側面図である。移動式クレーン9は、クローラクレーンであり、クローラ式の自走可能な下部走行体91と、下部走行体91上に搭載された上部旋回体92とを備える。
【0026】
上部旋回体92は、下部走行体91上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム93と、旋回フレーム93の前部に起伏可能となるように取り付けられたブーム94と、ブーム94の先端から吊ロープであるワイヤロープW(作業用ロープ)を介して吊り下げられたフック装置95とを備える。フック装置95は、吊作業用の作動部として機能する。
図1では、ワイヤロープWに繋がれたフック装置95が、吊荷96を吊っている状態を示している。フック装置95及びそれに吊られた吊荷96が、電動ウインチ装置1による巻上げ又は巻下げの対象物97である。
【0027】
電動ウインチ装置1は、上部旋回体92に搭載されている。その配置位置は、旋回フレーム93におけるブーム94の取り付け部位の後方である。電動ウインチ装置1は、フック装置95に繋がるワイヤロープWの巻き取り又は繰り出しを行うことにより、フック装置95に吊作業のための昇降動作を行わせる巻上用のウインチ装置である。本実施形態の電動ウインチ装置1は、前記昇降動作の駆動源として、複数台のアキシャルギャップ型の電動機が用いられる点に特徴を有する。
【0028】
[電動ウインチ装置の構造]
図2は、電動ウインチ装置1の概略構成を示す平面図、
図3はその斜視図である。電動ウインチ装置1は、ウインチドラム2と、アキシャルギャップ型の第1電動機3A及び第2電動機3B(複数の電動機)を備える駆動源3と、これら電動機3A、3Bに共通の駆動軸4と、駆動軸4に取り付けられるブレーキ51と、駆動軸4とウインチドラム2との間に介在される減速機52とを備えている。
【0029】
図4は、他の実施形態に係る電動ウインチ装置1Aの概略構成を示す平面図である。電動ウインチ装置1Aは、いわゆるフリーフォール運転を実現可能とする実施形態であり、
図2に示された構成に加えてクラッチ53をさらに備えている。クラッチ53は、減速機52と同じく、駆動軸4とウインチドラム2との間に介在される。以下、各構成について詳述する。
【0030】
ウインチドラム2は、ワイヤロープWが巻回される円筒状の胴部21と、この胴部21の両端に配置された鍔部22とを備える。ウインチドラム2は、ワイヤロープWの巻き取り又は繰り出しのために、胴部21の筒心であるドラム軸(
図6にAX2として表示)回りに回転する。なお、
図2及び
図4では、ウインチドラム2の内部の構成を示すため、ウインチドラム2及びワイヤロープWがドラム軸方向に沿った断面で表されている。
【0031】
ウインチドラム2の両端には、前記ドラム軸に沿った図略の軸部が突設されている。旋回フレーム93上には、このウインチドラム2の前記軸部を回転自在に支持するための一対の軸支持部(図略)が設けられている。前記一対の軸支持部は、旋回フレーム93の幅方向、すなわち移動式クレーン9の車幅方向において互いに間隔を置いて配置されている。つまり、ウインチドラム2は、前記車幅方向と前記ドラム軸とが一致するように、旋回フレーム93に搭載されている。
【0032】
ワイヤロープWは、胴部21から引き出されてブーム94の先端を経由し、そのブーム94の先端から垂下されてフック装置95を吊り下げている。ウインチドラム2は、ドラム軸回りの一方の回転方向である巻上方向に回転することにより、ワイヤロープWを胴部21に巻き取り、それによってフック装置95(対象物97)を巻き上げる。また、ウインチドラム2は、前記巻上方向と逆の回転方向である巻下方向に回転することにより、ワイヤロープWを繰り出し、それによって対象物97を巻き下げる。
【0033】
駆動源3は、ウインチドラム2を回転駆動するものであって、直列的に連結された複数台のアキシャルギャップ型電動機である、第1電動機3A及び第2電動機3Bを含む。ここでは2台の電動機3A、3Bが連結されている例を示しているが、駆動源3は、3台〜10台程度のアキシャルギャップ型電動機を連結したものであっても良い。第1電動機3A及び第2電動機3Bは、電力が供給されることによって作動し、対象物97の巻上時にウインチドラム2を巻上方向に回転させるためのトルクを出力する。第1、第2電動機3A、3Bは、
図2及び
図4に示すように、両方とも、ウインチドラム2のドラム軸方向の一方側に配置されている。
【0034】
[アキシャルギャップ型電動機の構造]
図5は、第1、第2電動機3A、3Bとして採用されているアキシャルギャップ型電動機の構造を示す分解斜視図であり、ここではアキシャルギャップ型DCブラシレスモータを例示している。アキシャルギャップ型電動機は、円盤状の固定子Sと、回転中心軸AX1(回転軸)の軸回りに回転する2個の円盤状の回転子R1、R2とを含む。固定子Sと回転子R1、R2とは、回転中心軸AX1の軸方向に並ぶように配置されている。各回転子R1、R2は、組み立て状態において固定子Sに対して軸方向に間隔を空けて配置される。この間隔は、いわゆるアキシャルギャップであり、その長さは1mm〜数mm程度とされる。
【0035】
このように本実施形態では、固定子Sの図中左方の円盤面に一方の回転子R1が対向し、固定子Sの右方の円盤面に他方の回転子R2が対向し、これにより一対の回転子R1、R2の間に一つの固定子Sが挟まれる形態の、ダブルロータ型の電動機を例示している。もちろん、アキシャルギャップ型電動機は、一の回転子が一の固定子と軸方向に対向配置されるシングルロータ型であっても良い。但し、電動機一台当たりにおいてより大きなトルクを得るという観点からは、ダブルロータ型が好ましい。
【0036】
固定子Sは、周方向(回転子R1、R2の回転方向)に配列された複数の電磁石ユニット60(スロット)を含む。各電磁石ユニット60は、扇形の磁性コア61と、磁性コア61に装着された励磁コイル62とを備える。複数の磁性コア61は、図略のコア支持部材によって支持され、回転中心軸AX1の軸回りに円環状に均等に配置されている。
【0037】
磁性コア61は、圧粉コアであることが好ましい。圧粉コアは、電気絶縁膜で被覆された鉄粉が強固に押し固められることによって形成されたコアである。渦電流を抑制するという観点からは、この圧粉コアに加え、複数枚の電磁鋼板の積層体からなる積層コアも用い得る。圧粉コアは、前記積層コアに比べて気密性が高く、また成型の自由度も高いため、磁性コア61としてはより好ましい。本実施形態では、磁性コア61は、その軸方向の両端面に鍔部611が形成されたボビン形状を有している。
【0038】
励磁コイル62は、ボビン形状の磁性コア61を巻芯として絶縁電線が所要のターン数だけ巻回されてなる。励磁コイル62への直流電流の通電によって、回転中心軸AX1と平行な方向に磁性コア61を貫く磁束が発生する。また、励磁コイル62への直流電流の通電方向を正逆反転させることで、前記磁束の方向を反転させることができる。各励磁コイル62へ通電及び通電方向の切り替えは、図略のドライバ回路によって制御され、これにより回転子R1、R2を回転中心軸AX1回りに回転させる磁力線が形成される。
【0039】
回転子R1、R2は各々、円盤状の基材71と、この基材71に固定される複数の永久磁石72(磁極)とを備えている。基材71は、固定子Sと対向する内側面71Sと、この内側面71Sの反対側の外側面71Rとを備える。内側面71S及び外側面71Rは、共に回転中心軸AX1と直交する円形面である。各永久磁石72は、ネオジウム等からなり、軸方向視で扇形の平板型の磁石である。複数の永久磁石72は、内側面71Sの中心点O(回転中心軸AX1と交差する点)の周囲に、S極とN極とが周方向に交互に並ぶように、内側面71Sの外周縁付近に、環状に配列されている。なお、渦電流に起因するジュール損失を低減するために、一の極を形成する永久磁石72を、複数の磁石小片に分割された態様としても良い。
【0040】
円盤状の基材71は、鋼材などの磁性体で形成された部材であり、上述の永久磁石72の支持機能と、永久磁石72のバックヨークとしての機能とを兼ねている。固定子Sと対向する表面がS極に着磁されている永久磁石72は、その裏面がN極となる。これに隣接する永久磁石72は、表面がN極で裏面がS極である。基材71は、これら永久磁石72の裏面側を支持すると共に、裏面側のS極−N極との間に磁路を形成する役目を果たす。永久磁石72は、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような接着剤を用いて、基材71の内側面71Sに固定される。接着剤に代えて、皿頭ネジ等の固定具を用いて、永久磁石72を内側面71Sに固定しても良い。
【0041】
回転子R1、R2の外側面71Rには、それぞれボス部73が軸方向外側に突設されている。ボス部73は、外側面71Rにおける径方向中央付近に配置された円柱状の凸部であり、回転子R1、R2の中心点O(回転中心軸AX1が外側面71Rと交差する点)と同軸である。ボス部73は、第1、第2電動機3A、3Bを軸方向に直列に連結するために、後述する駆動軸4の一部の軸部材をインロー形式で取り付けるための突起である。
【0042】
[駆動軸]
駆動軸4は、駆動源3の出力軸であり、この駆動軸4が回転することによってウインチドラム2が回転する。
図6は、電動ウインチ装置1の概略的な斜視図及びその分解斜視図であり、駆動軸4の構成例を示す図である。駆動軸4は、第1、第2電動機3A、3Bの回転子同士を回転中心軸AX1の軸上において直列に連結してなる軸である。この駆動軸4は、ウインチドラム2のドラム軸AX2(ウインチドラム2の回転中心軸)と同じ軸上に配置されている。
【0043】
駆動軸4は、回転中心軸AX1の軸上に直列的に配置される、第1電動機3Aの回転軸31Aと、第2電動機3Bの回転軸31Bと、回転軸31Aと回転軸31Bとを連結する連結軸部41と、ウインチドラム2の駆動伝達系に接続される出力軸部42とで構成されている。回転軸31Aは、第1電動機3Aの2つの回転子R1A、R2Aを、固定子SAを貫通して互いに連結している軸である。回転軸31Bは、第2電動機3Bの2つの回転子R1B、R2Bを、固定子SBを貫通して連結している軸である。回転軸31A、31Bの軸端は、
図5に示したボス部73である。
【0044】
連結軸部41は、第1電動機3Aの一方の回転子R2A、及び、これに対向する第2電動機3Bの一方の回転子R1Bが各々備えるボス部73を利用して、インロー形式で両回転軸31A、31Bを連結する。出力軸部42は、根元側が第1電動機3Aの他方の回転子R1Aが備えるボス部73にインロー形式で接続され、先端側がウインチドラム2の駆動伝達系、つまりブレーキ51、減速機52及びクラッチ53に接続されている。なお、第2電動機3Bの他方の回転子R2Bが備えるボス部73には、例えば回転数を計測するエンコーダが取り付けられる。
【0045】
[電動ウインチ装置の他の構成部材]
図2に戻り、ブレーキ51は、駆動軸4に対して制動を掛けることにより、この駆動軸4と繋がるウインチドラム2の回転を制動するものである。ブレーキ51としては、例えば電磁ブレーキ、乾式又は湿式のメカブレーキ等を用いることができる。ブレーキ51は、駆動源3と減速機52との間であって、駆動軸4の出力軸部42(
図6)の周りに設けられており、該出力軸部42に対して制動を掛ける。
【0046】
減速機52は、ウインチドラム2の胴部21内に配置されている。減速機52の入力側は駆動軸4(出力軸部42)に、出力側は胴部21に、各々接続されている。減速機52は、ウインチドラム2を、駆動軸4の回転速度を所定の減速比で減速させた回転速度で回転させる。また、減速機52は、駆動軸4から入力されるその駆動軸4のトルクを増大させて、該トルクをウインチドラム2へ伝達する。なお、
図2の配置に代えて、駆動源3をブレーキ51と減速機52との間に配置しても良い。
【0047】
図4に示す実施形態において用いられるクラッチ53は、フリーフォール運転の実現のため、駆動軸4とウインチドラム2との間でトルクを伝達する接続状態と、前記トルクの伝達を遮断する遮断状態とに切り換える。クラッチ53としては、例えば湿式クラッチを用いることができる。クラッチ53は、駆動伝達経路において減速機52とウインチドラム2との間に配置される。
【0048】
クラッチ53は、図示していないが、減速機52の図略の出力軸と一体的に回転する一方のクラッチ板と、ウインチドラム2と一体的に回転する他方のクラッチ板と、それらのクラッチ板同士を結合させる接続状態と互いに分離させる遮断状態とに切り換えるための切換装置とを備える。クラッチ53を備える
図4の電動ウインチ装置1Aによれば、クラッチ53を接続状態から遮断状態に切り換えることにより、ウインチドラム2を減速機52とそれに繋がる駆動軸4から切り離して自由に回転させることができる。その結果、フック装置95(
図1参照)のフリーフォールを実施できる。
【0049】
[制御構成の説明]
図7は、
図4に示す電動ウインチ装置1Aの制御構成を示すブロック図である。移動式クレーン9には、第1及び第2電動機3A、3B、ブレーキ51及びクラッチ53を制御するために、
図7に示すような電源81と制御システムとが搭載される。この制御システムは、第1インバータ82、第2インバータ83、ウインチ操作レバー85、ブレーキペダル86及びコントローラ84を有する。
【0050】
電源81は、移動式クレーン9に搭載されているDCバッテリーである。第1インバータ82は、電源81が発生する直流電圧を所要の交流電圧に変換して第1電動機3Aへ供給すると共に、当該第1電動機3Aへ通電させる電流(モータ電流)を制御する。第2インバータ82は、同様に前記直流電圧を所要の交流電圧に変換して第2電動機3Bへ供給すると共に、通電電流を制御する。
【0051】
ウインチ操作レバー85は、作業者がウインチドラム2を巻上方向又は巻下方向へ回転させる操作を行うために用いられる。ウインチ操作レバー85を通して受け付けられた前記操作を示す指示信号は、コントローラ84へ出力される。ブレーキペダル86は、作業者がブレーキ51を操作するために用いられる。ブレーキペダル86を通して受け付けられる前記操作を示す指示信号は、コントローラ84へ出力される。
【0052】
コントローラ84は、ウインチ操作レバー85から与えられる指示信号に応じて第1電動機3A及び第2電動機3Bが駆動するよう、第1インバータ82及び第2インバータ83の動作を同期制御する。すなわち、コントローラ84は、ウインチドラム2がウインチ操作レバー85の操作に応じた巻上方向又は巻下方向への回転を行うように、第1及び第2電動機3A、3Bの駆動を同期制御する。
【0053】
また、コントローラ84は、ブレーキペダル86から与えられる指示信号に応じて、その指示信号が示す制動を掛けるようにブレーキ51を制御する。さらに、コントローラ84は、クラッチ53を、前記接続状態と前記遮断状態との間で切り替える制御を行う。具体的にはコントローラ84は、クラッチ53の前記切換装置に制御信号を送り、該切換装置が前記クラッチ板同士を接続状態させる、又は遮断状態させるように制御する。
【0054】
[作用効果について]
上述の電動ウインチ装置1、1Aによれば、ウインチドラム2の駆動源3としてアキシャルギャップ型の第1電動機3A及び第2電動機3Bが用いられる。これら第1、第2電動機3A、3Bが共通の駆動軸4によって直列に接続されると共に、駆動軸4がウインチドラム2のドラム軸AX2と同じ軸上に位置するよう組み付けられる。すなわち、ウインチドラム2の一方の側面に、2つの電動機3A、3Bが横並びする態様で配置される。
【0055】
アキシャルギャップ型電動機は、円盤状の固定子と回転子とが軸方向に配列される構成であるので、ラジアルギャップ型電動機に比べて軸方向の薄型化を図ることができる。それゆえ、ウインチドラム2の側方に複数台の電動機3A、3Bを配置する構成を採用しても、ドラム軸AX2方向のサイズを抑制することができる。また、アキシャルギャップ型電動機は、固定子Sの電磁石ユニット60と回転子R1、R2の永久磁石72との間のエアギャップ面積を大きくすることができるため、高いトルクが得られる利点がある。このような高いトルクを発生可能な第1、第2電動機3A、3Bが、共通の駆動軸4によって直列接続されているので、これら電動機3A、3Bを同期駆動することで大きな合成トルクを得ることができる。従って、当該電動ウインチ装置1、1Aによれば、大きな吊能力を確保できる。
【0056】
さらに、以上のような電動ウインチ装置1、1Aを移動式クレーン9に搭載することで、クレーン動作に適した吊能力を確保しつつ、車幅制限の問題をクリアすることが可能となる。すなわち、移動式クレーン9の駆動源となる電動機は、低速回転で高トルクが求められる運転を行う頻度が高い。本実施形態では、アキシャルギャップ型の第1、第2電動機3A、3Bが重連されるので、このような低速高トルクの運転に適している。また、移動式クレーン9が公道を自走する時には、移動式クレーン自体が法令で定められた車幅制限をクリアする必要がある。本実施形態では、ウインチドラム2の片側にのみ第1、第2電動機3A、3Bが配置され、しかも、これらは軸方向に薄型の電動機であるため駆動源3をコンパクト化することができ、前記車幅制限に対応することができる。
【0057】
また、アキシャルギャップ型の電動機は、回転中心軸AX1方向に複数台を連結し易い構造であると言える。本実施形態では、2台の電動機3A、3Bを直列に連結した例を示したが、
図6に示した連結軸部41を用いることで、回転中心軸AX1に沿って所要台数のアキシャルギャップ型電動機を連結することが可能である。従って、移動式クレーン9に求められる吊り能力に対応して、直列に連結する電動機の個数を設定することができる。このことは、吊り能力が異なる様々な移動式クレーンの機種それぞれについて電動機設計を行う必要性を省き、アキシャルギャップ型電動機の個数調整で所望の吊り能力を実現できることを意味する。さらに、複数の電動機を有するので、一つの電動機が故障したとしても、他の電動機で最低限のウインチ動作を行わせることができる等、万が一の故障時でも対応しやすい利点がある。
【0058】
加えて、
図7に示した通り、コントローラ84は、第1、第2電動機3A、3Bに動作電流を供給する第1、第2インバータ82、83を独立的に制御することができる。典型的な制御としては、同じ容量の第1、第2電動機3A、3Bに対して、同一タイミングで同一駆動電流を与えて同一トルクを出力させる同期運転を行わせ、所望の合成トルク出力を得る制御を実行させるができる。或いは、ある合成トルク出力を得る場合に、第1、第2電動機3A、3Bから同一トルクを出力させるのではなく、両電動機の最も効率の良いトルク出力の組み合わせにより前記合成トルク出力を得るようにすることで、省エネ性を向上させることができる。また、各々の電動機3A、3Bの使用頻度や負荷の履歴に基づき、優先的に使用する電動機をワーク毎に変更することも可能となる。これにより、一つの電動機を使う場合と比較して、電動ウインチ装置の信頼性や耐久性を高めることができる。
【0059】
[コギング対策を備えた実施形態]
電動機は、固定子のスロットの数と回転子の磁極の数とに依存してコギング(コギングトルク)が発生する。コギングは、回転子が一回転する間に、固定子のスロット数(
図5に示す電磁石ユニット60の数)と、回転子の磁極数(永久磁石72の数)との最小公倍数分だけ発生する。例えば、スロット数=9、磁極数=6の場合であれば、回転子の一回転当たりに18回のコギング、つまり回転子が20°だけ回転する度にコギングが発生することになる。これは、駆動軸の出力トルクの脈動を生成させることになる。アキシャルギャップ型の電動機は、高トルクを得ることができる反面、コギングの問題が顕著に発生する傾向がある。
【0060】
とりわけ、本実施形態の如く、複数台のアキシャルギャップ型電動機3A、3Bを直列接続する場合には、各々の電動機3A、3Bのコギングが重畳されて駆動軸4に伝達されてしまう。これにより、ウインチドラム2を低速回転させる場合や、寸送り(インチング)させる場合等において、操作性に影響を与える懸念がある。
【0061】
以下、このようなコギング問題を解消する実施形態を示す。ここでは、複数の電動機のうちの一の電動機が発生するコギングと、他の電動機が発生するコギングとを相殺させる打ち消し手段を例示する。打ち消し手段の具体例としては、
(具体例1)回転子の磁極(永久磁石72)の固定位置を、一の電動機と他の電動機とで異ならせる、或いは、
(具体例2)固定子のスロット(電磁石ユニット60)の配置位置を、一の電動機と他の電動機とで異ならせる、
という手法を例示する。かかる打ち消し手段を具備させることで、コギングに基づく各電動機の出力トルクの脈動が相殺されるようになる。
【0062】
<2台の電動機の場合>
図8は、上記「具体例1」の一例であって、2台の電動機3A、3Bを連結する場合の、固定子のスロット及び回転子の磁極の配置の一例を示す図である。第1電動機3A及び第2電動機3Bは、いずれもダブルロータ型のアキシャルギャップ型電動機であり、それぞれ、第1電動機3Aは固定子SA及び2つの回転子R1A、R2Aを、第2電動機3Bは固定子SBと2つの回転子R1B、R2Bを備えている。回転子R1A、R2A及び回転子R1B、R2Bの磁極数=6、固定子SA、SBのスロット数=9である。従って、上記で示した通り、コギングの発生周期は、回転子の回転角=20°毎である。
【0063】
第1電動機3Aの回転子R1A、R2Aは、所定の基準位置に磁極(永久磁石72)が位置する基準回転角で駆動軸4(
図2)に固定されている。基準回転角は、回転子R1A、R2Aの回転角=0°の角度であり、このときに基準とする一つの永久磁石72(
図8において最も上側に位置している永久磁石72)の周方向中心が、回転角=0°のラインL1上に位置している。ラインL1は、回転子R1A、R2Aの中心点O(
図5)を通るラインである。固定子SAのスロット(電磁石ユニット60)は、前記基準回転角に応じて取り付けられる。すなわち、前記回転角=0°のラインL1に対向するラインL2上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置するように、第1電動機3Aのケーシングに固定されている。
【0064】
これに対し、第2電動機3Bの回転子R1B、R2Bは、自身が発生するコギングで第1電動機3Aが発生するコギングを打ち消すように、前記基準回転角に対して回転方向にシフトさせた位置に永久磁石72が位置する状態で駆動軸4に固定される。具体的には、ラインL1に対して、回転子R1B、R2Bの回転方向に回転角=10°だけシフトしたラインL11上に、基準とする一つの永久磁石72の周方向中心が位置している。このシフト回転角=10°は、コギング発生周期(回転角=20°)を電動機台数(2台)で除算(20°/2)して求められた回転角である。一方、固定子SBは、固定子SAと同じく、ラインL2上に基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置するように、第2電動機3Bのケーシングに固定されている。
【0065】
図9は、上記「具体例2」の一例であって、2台の電動機3A、3Bを連結する場合の、固定子のスロット及び回転子の磁極の配置の一例を示す図である。この例では、第1電動機3Aの固定子SAは、上述のラインL2上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置(基準スロット位置)している。この状態で、固定子SAは第1電動機3Aのケーシング内において配置されている。
【0066】
これに対し、第2電動機3Bの固定子SBは、ラインL2に対して、回転子R1B、R2Bの回転方向に回転角=−10°だけシフトしたラインL21上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置している。このようにシフトした状態で、固定子SBは第2電動機3Bのケーシング内において配置されている。第1電動機3Aの回転子R1A、R2A、及び第2電動機の回転子R1B、R2Bについては、いずれも基準回転角に対応したラインL1上に配置されている。
【0067】
このような第1、第2電動機3A、3B間における相対的な磁極同士又はスロット同士の前記10°又は−10°の意図的なシフトにより、第1電動機3Aが発生するコギングの山部に、第2電動機3Bが発生するコギングの谷部が位置するよう、これら電動機の出力トルクの脈動の位相を相互にずらすことができる。これにより、コギングを相殺させることができる。
【0068】
図10は、
図8に示した第1、第2電動機3A、3Bの出力トルクTA、TBと、これらの合成トルクTMとを示すグラフ、
図11は、
図10の一部を拡大したグラフである。第1電動機3Aの出力トルクTAは、20°周期の回転角で、正弦的に脈動している。これはコギングの影響である。第2電動機3Bの出力トルクTBも、同様に20°周期の回転角で正弦的に脈動している。しかし、回転子R1B、R2Bを上述の通り回転角=10°だけシフトして駆動軸4に取り付けることによって、出力トルクTBの脈動の位相は出力トルクTAに対して10°だけ遅延している。
【0069】
出力トルクTAの山部と出力トルクTBの谷部、或いはその逆の態様で両出力トルクが駆動軸4に重畳されることによって、これら出力トルクTA、TBの脈動は打ち消し合うようになる。従って、両者の合成トルクTMは、脈動のない、つまりコギングの影響を実質的に消失させた、フラットなものとなる。なお、
図10、
図11において合成トルクTMは、出力トルクTA=TB=10Nmである場合の合成トルクを表示している。
図9に示した第1、第2電動機3A、3Bによっても、同じ結果を得ることができる。
【0070】
なお、回転子R1B、R2Bをシフトさせる回転角度(
図8)、或いは固定子SBをシフトさせる回転角度(
図9)は、必ずしもコギングによる脈動周期(ここでは20°)の1/2に設定しなくても良い。例えば、前記シフトさせる角度を5°、或いは15°程度に設定した場合であっても、出力トルクTA、TBの脈動をある程度は相殺させることができ、コギングを低減させることができる。
【0071】
<3台の電動機の場合>
図12は、上記「具体例1」の他の例であって、3台の電動機3A、3B、3Cを連結する場合の、固定子のスロット及び回転子の磁極の配置の一例を示す図である。第1〜第3電動機3A〜3Cは、いずれもダブルロータ型のアキシャルギャップ型電動機であり、それぞれ、第1電動機3Aは固定子SA及び2つの回転子R1A、R2Aを、第2電動機3Bは固定子SBと2つの回転子R1B、R2Bを、第3電動機3Cは固定子SCと2つの回転子R1C、R2Cを備えている。回転子R1A、R2A及び回転子R1B、R2Bの磁極数=6、固定子SA、SBのスロット数=9である。従って、上記で示した通り、コギングの発生周期は、回転子の回転角=20°毎である。
【0072】
第1電動機3Aの回転子R1A、R2Aは、所定の基準位置に永久磁石72が位置する基準回転角で、駆動軸4(
図2)に固定されている。つまり、基準とする一つの永久磁石72の周方向中心が、回転角=0°のラインL1上に位置している。固定子SAの電磁石ユニット60は、前記回転角=0°のラインL1に対向するラインL2上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置するように、第1電動機3Aのケーシングに固定されている。
【0073】
これに対し、第2電動機3Bの回転子R1B、R2Bは、ラインL1に対して、回転子R1B、R2Bの回転方向に回転角=6.67°だけシフトしたラインL12上に、基準とする一つの永久磁石72の周方向中心が位置するように、駆動軸4に固定される。このシフト回転角=6.67°は、コギング発生周期(回転角=20°)を電動機台数(3台)で除算(20°/3)して求められた回転角である。さらに、第3電動機3Cの回転子R1C、R2Cは、ラインL1に対して、回転子R1C、R2Cの回転方向に回転角=13.33°((20°/3)×2)だけシフトしたラインL13上に、基準とする一つの永久磁石72の周方向中心が位置するように、駆動軸4に固定される。一方、固定子SB、SCは、固定子SAと同じく、ラインL2上に基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置するように、それぞれ第2、第3電動機3B、3Cのケーシングに固定されている。
【0074】
図13は、上記「具体例2」の他の例であって、3台の電動機3A、3B、3Cを連結する場合の、固定子のスロット及び回転子の磁極の配置の一例を示す図である。この例では、第1電動機3Aの固定子SAは、上述のラインL2上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置(基準スロット位置)している。この状態で、固定子SAは第1電動機3Aのケーシング内において配置されている。
【0075】
これに対し、第2電動機3Bの固定子SBは、ラインL2に対して、回転子R1B、R2Bの回転方向に回転角=−6.67°だけシフトしたラインL22上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置している。このようにシフトした状態で、固定子SBは第2電動機3Bのケーシング内において配置されている。さらに、第3電動機3Cの固定子SCは、ラインL2に対して、回転子R1C、R2Cの回転方向に回転角=−13.33°だけシフトしたラインL23上に、基準とする一つの電磁石ユニット60の周方向中心が位置するよう、第2電動機3Bのケーシングに固定されている。第1〜第3電動機3A〜3Cの回転子R1A、R2A、R1B、R2B、R1C、R2Cについては、いずれも基準回転角に対応したラインL1上に配置されている。
【0076】
このような第1〜第3電動機3A〜3C相互間における相対的な磁極同士又はスロット同士の前記6.67°又は−6.67°ずつの意図的なシフトにより、第1〜第3電動機3A〜3Cの各々が発生するコギング、すなわち、これら電動機の出力トルクの脈動の位相を相互にずらすことができる。これにより、コギングを相殺させることができる。
【0077】
図14は、
図12に示した第1〜第3電動機3A〜3Cの出力トルクTA、TB、TCと、これらの合成トルクTMとを示すグラフ、
図15は、
図14の一部を拡大したグラフである。第1電動機3Aの出力トルクTAは、コギングの影響によって20°周期の回転角で、正弦的に脈動している。第2、第3電動機3B、3Cの出力トルクTB、TCも、同様に20°周期の回転角で脈動している。しかし、回転子R1B、R2Bを上述の通り回転角=6.67°だけシフトして駆動軸4に取り付けることによって、第2電動機3Bの出力トルクTBの脈動の位相は出力トルクTAに対して6.67°だけ遅延している。また、回転子R1C、R2Cを上述の通り回転角=13.33°だけシフトして駆動軸4に取り付けることによって、第3電動機3Cの出力トルクTCの脈動の位相は出力トルクTAに対して13.33°だけ遅延している。
【0078】
このように、位相が6.67°ずつシフトした3つの出力トルクTA、TB、TCが駆動軸4に重畳されることによって、これら出力トルクTA〜TCの脈動は互いに打ち消し合うようになる。従って、両者の合成トルクTMは、脈動のない、つまりコギングの影響を実質的に消失させた、フラットなものとなる。
図13に示した第1〜第3電動機3A〜3Cによっても、同じ結果を得ることができる。
【0079】
以上説明した通り、本発明によれば、大きな吊能力を確保しつつ、ウインチドラム2の軸方向における幅を抑制することが可能な電動ウインチ装置1を提供することができる。従って、車幅制限や装置レイアウト上の制限など空間制約がある移動式クレーン9に、当該電動ウインチ装置1を好適に用いることができる。また、上述のコギング対策を施すことによって、ウインチドラム2を低速回転させる場合や、寸送りさせる場合等における操作性を良好なものとすることができる。
【0080】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施形態を採ることができる。本発明に係る電動ウインチ装置1は、対象物の巻上/巻下を行う巻上用のウインチ装置に必ずしも限定されない。例えば、電動ウインチ装置1は、ブーム等の起伏部材を起伏させるための起伏用のウインチ装置であってもよい。また、本発明に係る移動式クレーン9は、クローラクレーンに限定されるものではない。例えば、ホイール式の下部走行体を有するホイールクレーンであっても、本発明を同様に適用可能である。さらに、
図8、
図12他において、回転子の磁極数=6、固定子のスロット数=9の例を示したが、これは一例である。例えば、磁極数=8とスロット数=12の組合せ、磁極数=10とスロット数=12の組合せ、或いは磁極数=16とスロット数=18の組合せなどを例示することができる。