(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体部(2)に鉛筆芯(3)を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部(2)の先端に、鉛筆芯(3)の径に対応する内径(R)を有し鉛筆径(X)よりも外径(Y)が小さい平坦面からなるリング部(4)と、該リング部(4)から周側面に連続するテ―パ部(5)と、を有する既切削鉛筆(1)を製造する既切削鉛筆の製造方法であって、
前記鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削し、芯が現れる前に切削を停止させる第1の切削工程と、
前記第1の切削工程によって形成された傾斜部(7)から前記鉛筆芯(3)に向けて、長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削工程と、を含むことを特徴とする既切削鉛筆の製造方法。
本体部(2)に鉛筆芯(3)を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部(2)の先端に、鉛筆芯(3)の径に対応する内径(R)を有し鉛筆径(X)よりも外径(Y)が小さい平坦面からなるリング部(4)と、該リング部(4)から周側面に連続するテ―パ部(5)と、を有する既切削鉛筆(1)を製造する装置であって、
前記鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削する第1の切削刃(15a、25a)と、
該第1の切削刃(15a、25a)による切削を芯が現れる前に停止させるストッパ(16,26)と、
前記第1の切削刃(15a,25a)によって形成された傾斜部(7)から前記鉛筆芯(3)に向けて、長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削刃(15b,25b)と、を含んで構成されたことを特徴とする既切削鉛筆の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2の鉛筆は、即座に筆記することはできるが、いずれも使用性に欠け、文字を丁寧に書くことができない。そのため、木製の鉛筆を好む人に対しては、削られていない状態の鉛筆を、特許文献3〜6等に示す鉛筆削器と共に提供するか、事前に鉛筆を切削しておき、削られた状態の鉛筆を使用現場に運搬して提供する必要があった。
しかし、削られた状態で使用現場に運搬する際に、様々な衝撃を受け、鉛筆芯が本体内部で折れてしまったり、芯先が欠けたりすることがあった。特に、赤鉛筆などの油分の高い材料からなる鉛筆芯の場合は、硬性が低く、本体部との間の接着材の付着力が弱いので、本体内部での中折れ現象が頻発していた。
そこで、本発明は、削られた状態で提供される鉛筆に関し、特に、芯の折れにくい構造の既切削鉛筆、その製造方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、本体部に鉛筆芯を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部の先端に、鉛筆芯の径に対応する内径を有し鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する既切削鉛筆を製造する既切削鉛筆の製造方法であって、前記鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削
し、芯が現れる前に切削を停止させる第1の切削工程と、前記第1の切削工程によって形成された傾斜部から前記鉛筆芯に向けて、長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る既切削鉛筆の製造装置は、本体部に鉛筆芯を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部の先端に、鉛筆芯の径に対応する内径を有し鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する既切削鉛筆を製造する装置であって、前記鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削する第1の切削刃と、
該第1の切削刃による切削を芯が現れる前に停止させるストッパと、 前記第1の切削刃によって形成された傾斜部から前記鉛筆芯に向けて、長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削刃と、を含むものである。
【0009】
または、本体部に鉛筆芯を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部の先端に、鉛筆芯の径に対応する内径を有し鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する既切削鉛筆を製造する装置であって、 ケースに設けられた第1の鉛筆差込口から内部に向けて縮径する保持部の傾斜面に沿ってスリットを設けると共に、該スリットに沿って傾斜状に
第1の切削刃を取り付けてなる第1の切削部と、前記ケースに第2の鉛筆差込口を設け、差し込まれた鉛筆に対して略直交方向に延びる
第2の切削刃を取り付けてなる第2の切削部と、を備え、前記第1の鉛筆差込口に差し込まれた鉛筆を、鉛筆芯を中心に回転させることで、前記本体部の先端が削られて傾斜部が形成され、該傾斜部を前記第2の鉛筆差込口に挿入して回転させることで、前記傾斜部の先端部が削り落とされて、前記リング部が形成されて芯先が露出されるように構成したものであってもよい。
【0010】
また、
本体部に鉛筆芯を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部の先端に、鉛筆芯の径に対応する内径を有し鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する既切削鉛筆を製造する装置であって、鉛筆差込口からケースの内部に向けて縮径する保持部
の先端に、鉛筆の先端部を当接させるためのストッパを設けるとともに、傾斜面に沿ってスリットを設け
、該スリットに沿って傾斜状に
第1の切削刃を設け、前記鉛筆に略直交する方向に刃先が延びる
第2の切削刃を設け、前記鉛筆差込口に差し込んだ状態で鉛筆を回転させることで、前記第1の切削刃で前記鉛筆差込口に差し込まれた鉛筆の前記本体部の先端を削って前記テーパ部
を形成
すると共に、前記ストッパに鉛筆の先端部を当接させた状態で前記第2の切削刃で
切削することでリング部が形成されて芯先が露出されるように構成してもよい。
この場合、前記ケースの側壁面に歯車を取り付け、該歯車の一側に、前記ストッパの側面に設けられたギアを噛み合わせ、他側部には、前記第2の切削刃を上下動させるための昇降部材をギアを介して設けることで該ストッパを、切削前の鉛筆の先端部が当接される位置に上下動可能に配設してもよい。
【0011】
また、
本体部に鉛筆芯を配してなる鉛筆を切削することで、該本体部の先端に、鉛筆芯の径に対応する内径を有し鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する既切削鉛筆を製造する装置であって、表面に鑢部を有してなる回転ローラの回転方向に沿って載置された鉛筆を、該回転ローラの幅方向に向けて転動させることで、前記本体部の先端を傾斜状に切削する
第1の切削刃と、 前記回転ローラの回転方向とは直交する方向に配設された
第2の切断刃と、を備えてなり、 前記第1の切削刃によって形成された傾斜部の先端を、前記第2の切断刃が切削することで、前記リング部の形成と同時に芯先が露出されるように構成してもよい。
本発明に係る既切削鉛筆は、本体部の中心に鉛筆芯を配してなる
鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削して芯が現れる前に切削を停止させ、それによって形成された傾斜部から前記鉛筆芯に向けて、長手方向に略直交する方向に切削することによって構成された既切削鉛筆であって、前記本体部の先端を、前記鉛筆芯の径に対応する内径を有し、鉛筆径よりも小さい外径を有する平坦面からなるリング部と、該リング部から前記本体部の周側面に連続するテーパ部と、によって構成し、前記リング部から
円柱形状の芯先を露出させて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る
方法で製造された既切削鉛筆は、長尺状の本体部の中央に鉛筆芯を配してなる鉛筆の本体部先端を、鉛筆径よりも小さい外径を有する平坦面からなるリング部と、リング部から本体部の周側面に連続するテーパ部と、によって構成し、前記リング部から芯先を露出させたので、この既切削鉛筆を箱などに収容した状態で落下させた場合であっても、鉛筆芯の中折れや欠けが発生
し難くなる。
リング部から円柱形状の芯先が露出されるので、芯先角部の稜線に沿って移動させることで細い線を描くことができるし、該稜線の直交方向に移動させることで太い線を描くことも可能となる。
【0013】
この製造方法は、鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削する第1の切削工程と、切削された傾斜部から前記鉛筆芯に向けて長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削工程と、を含んで構成されたので、本体部の先端に、鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する構造の既切削鉛筆を容易に製造することができる。鉛筆芯に触れることなく、本体部が傾斜状に切削されるので、鉛筆芯に対する負荷を低減させることができる。これによって、鉛筆芯と本体部との間の接着材が剥がれるのを防止でき、衝撃を受けた場合でも鉛筆芯が折れ難くなる。
【0014】
本発明に係る既切削鉛筆の製造
装置は、
鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削する第1の切削刃と、その第1の切削刃によって形成された傾斜部から鉛筆芯に向けて、長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削刃とを有するので、長尺状の本体部の先端に、鉛筆芯径に対応する内径を有し鉛筆径よりも外径が小さい平坦面からなるリング部と、該リング部から周側面に連続するテ―パ部と、を有する既切削鉛筆を容易に製造することができる。
これによって、鉛筆芯が鉛筆内部で保護された状態を維持することができ、衝撃を受けた際の鉛筆芯の中折れ現象を、極めて効果的に防止することができる。
【0016】
請求項
3に係る既切削鉛筆の製造装置は、第1の鉛筆差込口から縮径する保持部において鉛筆を回転させることで、本体部を切削してその先端に傾斜部を形成し、その後、第2の鉛筆差込口に差し込み、鉛筆に対して略直交方向に延びる第2の切削刃によって傾斜部を切削するので、鉛筆の周面から連続するテーパ部の先端に、平坦面からなるリング部を有し、その中央から鉛筆芯が露出される構造の既切削鉛筆を容易に製造することができる。
本体部が傾斜状に削られる際に、その切削刃が鉛筆芯に触れることがないので、鉛筆芯に対する負荷は生じない。また、単一の刃によって本体部と鉛筆芯が同時に切削されることがないので、鉛筆芯と本体部との間の抗力によって接着性が低下するという問題を回避できる。これによって、鉛筆芯が鉛筆内部で保護された状態を維持することができ、衝撃を受けた際の鉛筆芯の中折れ現象を効果的に防止できる。
【0017】
請求項4に係る既切削鉛筆の製造装置は、縮径する保持部において鉛筆を保持した状態で回転させ、傾斜状に配設された第1の切削刃によって本体部先端に傾斜部を形成し、
その切削を芯が現れる前に停止させた状態で、鉛筆に対して略直交方向に延びる第2の切削刃によって傾斜部を切削するので、鉛筆の周面から連続するテーパ部の先端にリング部を有し、その中央から芯先が露出された形態の既切削鉛筆を容易に製造することができる。
この場合、
ケースの側壁面に歯車を取り付け、その歯車の一側に、ストッパの側面に設けられたギアを噛み合わせ、他側部には第2の切削刃を上下動させるための昇降部材をギアを介して設けることで、ストッパを、切削前の鉛筆の先端部が当接される位置に上下動可能に配設することができる。
【0018】
請求項
6に係る既切削鉛筆の製造装置は、高速回転するローラの表面の鑢部によって鉛筆の本体部先端の周面を傾斜状に削り、その後、ローラの回転方向に直交する方向に配設された第2の切削刃によって、傾斜部の先端が削り落とされるので、きわめて迅速に既切削鉛筆を製造することができる。
特に、回転ローラの回転方向に沿った方向に鉛筆が載置されるので、鉛筆芯に沿った方向に鉛筆を削ること(縦削り)ができ、鉛筆の周側面に沿って回転させて削る方式(横削り)に生ずる問題点(単一の切削刃によって本体部と鉛筆芯とが同時に削られることによって生じる両部材間の抗力により、両部材間に介在する接着材が離れ落ちること)を回避できる。これによって、衝撃に強い既切削鉛筆を極めて効率的に製造することが可能となる。
請求項7に係る既切削鉛筆は、長尺状の本体部の中央に鉛筆芯を配してなる鉛筆の本体部先端を、鉛筆径よりも小さい外径を有する平坦面からなるリング部と、リング部から本体部の周側面に連続するテーパ部と、によって構成し、前記リング部から芯先を露出させたので、この既切削鉛筆を箱などに収容した状態で落下させた場合であっても、鉛筆芯の中折れや欠けが発生し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る既切削鉛筆を示す斜視図である。
【
図2】上記既切削鉛筆を示し、(a)は
平面図、(b)は
側面図、(c)は底面図である。
【
図3】上記既切削鉛筆の変形例を示し、(a)は第1変形例としての色鉛筆の平面図、側面図及び底面図、(b)は第2変形例としての書き方鉛筆の平面図、側面図及び底面図を示す。
【
図4】上記変形例の拡大図であり、(a)は上記色鉛筆の平面、側面及び底面を示し、(b)は上記書き方鉛筆の平面、側面及び底面を示す。
【
図5】上記既切削鉛筆の効果を検証するための実験のサンプル
の平面図及び側面図であり、(a)は実施例、(b)は比較例を示す。
【
図6】テ―パ部の傾斜角度の最適値を求めるための実験
の説明図であり、(a)は実施例、(b)は比較例
を示す。
【
図7】本発明に係る既切削鉛筆の製造装置の第1実施形態としての鉛筆削器を示す説明図である。
【
図8】上記鉛筆削器の第2の切削刃を示し、(a)は平面図、(b)はA−A矢視断面図である。
【
図9】上記鉛筆削器の使用状態を示す断面図であり、(a)は第1の切削工程、(b)は第2の切削工程を示す。
【
図10】鉛筆が切削される状態を示す斜視図であり、(a)は第1の切削刃によって切削された状態、(b)は第2の切削刃によって切削された状態を示す。
【
図11】上記鉛筆削器の第1実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【
図12】上記第1実施例の(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)はA−A線矢視断面図である。
【
図13】上記鉛筆削器の第2実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【
図14】上記第2実施例の(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)はA−A線矢視断面図である。
【
図15】上記鉛筆削器の第1変形例を示す断面図である。
【
図16】上記鉛筆削器の第2変形例を示す断面図である。
【
図17】第2変形例に係る鉛筆削器によって芯先
が成型された状態の既切削鉛筆の例を示す説明図である。
【
図18】本発明に係る既切削鉛筆の製造装置の第2実施形態としての鉛筆削器を示す説明図ある。
【
図19】上記鉛筆削器の第1の切削刃と第2の切削刃の構成を示し、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【
図20】上記鉛筆削器の実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【
図21】上記実施例の(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)はA−A線矢視断面図である。
【
図22】上記鉛筆削器の変形例を示す斜視図であり、(a)は第
1の切削刃
の刃先に連続して第2の切削刃の刃先を設けた第1変形例であり、(b)は非連続に設けた第2変形例を示す。
【
図23】上記鉛筆削器の第3変形例の説明図であり、(a)は第1の切削刃によって切削されている際の状態を示し、(b)は第2の切削刃が押し下げられて切削を開始する状態を示し、(c)はストッパに当接して第2の切削刃による切削が終了する状態を示す。
【
図24】本発明の既切削鉛筆の製造装置の第3実施形態に係る鉛筆削器を示す説明図である。
【
図25】上記鉛筆削器の使用状態を示す説明図である。
【
図26】上記鉛筆削器の変形態様を示す説明図である。
【
図27】本発明の既切削鉛筆の製造装置の第4実施形態としての工業用鉛筆削器の構成を示す説明図である。
【
図28】上記鉛筆削器の第1の切断刃としてのグラインダの使用状態を示し、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
本発明に係る既切削鉛筆は、色鉛筆、化粧用鉛筆、アンケート用の鉛筆など、削られた状態で提供されるものであり、
図1に示す既切削鉛筆1のように、長尺状の本体部2の中央に鉛筆芯3を配してなる鉛筆である。
このような鉛筆において、本発明は、本体部2の先端部をリング部4とテーパ部5とによって形成すると共に、リング部4の開口部から芯先6を露出させたことを特徴とするものである。
即ち、
図2に示すように、本体部2の先端面を、鉛筆芯の径Rに対応する内径を有し、鉛筆径Xよりも小さい外径Yを有するリンク形状の平坦面(即ち、リング部4)によって構成し、当該リング部4の外周から本体部2の周側面に向けて傾斜状に連続するテーパ部5を設けた形状とした。
【0021】
テーパ部5の傾斜角度θは、鉛筆の周側面に対して5度〜60度(好ましくは8度〜45度、より好ましくは10度〜30度)に設定されている。このように設計されたリング部4の開口部から円柱状の芯先6が現れている。
なお、
図1に示す化粧用鉛筆の実施例(実施例1)においては、テーパ部5の傾斜角度θを30度とし、リング部4の内径(即ち、鉛筆芯の径R)を4mm、外径Yを6mmとし、鉛筆径Xを12mmとしている。リング部の内径に対する外径の比率(鉛筆径に対するリング部径の比率(Y/X)は1/2、リング部径に対する鉛筆芯径の比率(R/Y)は2/3に設計されている。
【0022】
このように設計されたリング部4の開口部から円柱形状の芯先6が現れている。この際、芯先6の露出長さ(T)は約1.8mmである。
このように既切削鉛筆1を設計することで、箱などに収容した状態で落下させた場合であっても、鉛筆芯の中折れや欠けの発生が低下される。特に、リング部から円柱形状の芯先が露出される構造とすることで、芯先角部の稜線に沿って移動させることで細い線を描くことができ、該稜線の直交方向に移動させることで太い線を描くことができる。
【0023】
本発明に係る既切削鉛筆1の第2実施例としての断面円形の色鉛筆は、
図3(a)に示すに示すように、テーパ部5の傾斜角度θを12.8度とし、リング部4の内径(即ち、鉛筆芯の径R)を3mm、外径Yを4.7mmとし、鉛筆径Xを7.6mmとしている。芯先6の露出長さTは3mmとした(
図4(a)を参照)。リング部の内径に対する外径の比率(鉛筆径に対するリング部径の比率(Y/X)は0.62、リング部径に対する鉛筆芯径の比率(R/Y)は0.64に設計した。
【0024】
図3(b)に示す第3実施例は、書き方鉛筆として提供される断面六角形状のものであり、テーパ部5の傾斜角度θを9.1度とし、リング部4の内径(即ち、鉛筆芯の径R)を2mm、外径Yを2.9mmとし、鉛筆径Xを7.6mm、芯先6の露出長さTを2mmとした。
上記切削形状の効果を検証するために、アルミ製の筆箱に第2実施例の色鉛筆を6本入れ、それを1.5mの高さから落下させ、芯折れ(芯欠け)の発生頻度を測定した。比較例として、
図5(b)に示すように、通常の鉛筆削器(第1の切削刃のみのもの)で削ったもの(比較例1)についても同様の実験をおこなった。上記落下実験を8回行なった結果、合計48本の鉛筆のうち、比較例は37本の芯折れ(中折れ18本、芯欠け9本)が生じたが、本実施例のものは、4本の芯折れ(中折れ4本、芯欠け0)に止まった。
【0025】
次に、筆記の際の折れ難さを検証するための実験を行った。芯を下に向けた状態で60度の角度で傾斜させ、弾性部材Dにおいて保持し、その上から負荷Fをかけ、芯折れが発生した際の荷重を測定した(
図6を参照)。実験は3回ずつ行い、その平均値求めた結果、下記のようになった。
【0027】
これらの実験結果により、本発明に係る既切削鉛筆の芯折れの発生難さを確認することができた。
次に、テ―パ部5の最適な傾斜角度を求めるために、第2実施例(傾斜角度θ=12.8度)に係る色鉛筆と、傾斜角度10.7度に削ったもの(比較例2)、傾斜角度9.1度に削ったもの(比較例3)について、上記の落下実験を行なった。その結果、本実施例の芯折れ発生(4本)に対し、比較例2は5本(中折れ5本)、比較例3は7本(中折れ6本、芯欠け1本)の芯折れが発生した。
【0028】
上記既切削鉛筆1は、鉛筆の周側面から先端部方向に向けて傾斜状に切削する第1の切削工程と、切削された傾斜部から中心部に向けて前記鉛筆芯の回りに向けて中心部に向けて長手方向に略直交する方向に切削する第2の切削工程を経ることで製造される。
以下、既切削鉛筆1の製造装置としての鉛筆削器10の一例を、
図7を参照して説明する。
【0029】
この鉛筆削器10は、ケース11の一側面に設けられた鉛筆差込口12からケース内部に向けて鉛筆を差し込んで回転させることによって切削するものであり、鉛筆差込口12からケース11の内部に向けて縮径する円錐状の保持部13にスリット14を設けると共に、そのスリット14に沿って切削刃15を設けた構造の鉛筆削器をベースとして製造されたものであり、第1の鉛筆差込口12aに隣接させて第2の鉛筆差込口12bを設けて構成される。
【0030】
これらの鉛筆差込口12a、12bに、鉛筆の先端部を保持するための保持部13a、13bが夫々連続されている。これらの保持部13a、13bには、第1および第2の切削刃15a、15bが夫々取り付けられている。
第1の切削刃15aは、鉛筆の本体部2を傾斜状に切削するためのものであり、第1の保持部13aに設けられたスリット14に沿って、傾斜状に配設されている。この保持部13aに差し込まれた鉛筆が、第1の切削刃15aに対して斜めに押し付けられながら回転することで、鉛筆の周側面が、中央の芯部に向けて傾斜状に削られる。
【0031】
保持部13aの先端には、鉛筆の先端部を当接させるためのストッパ16が設けられている。第1の保持部13aの先端に設けられた第1のストッパ16aは、本体部2の先端に傾斜部7を設けるためのものであり、第1の切削刃13aによる切削が、芯が現れる前に停止されるような位置に設けられている。
第2の鉛筆差込口12bに連続する第2の保持部13bの先端部には、第2の切削刃15bが設けられている。
【0032】
第2の切削刃15bは、第1の切削刃15aによって形成された傾斜部7の先端部を切除して鉛筆芯6を露出させるためのものであり、差し込まれた鉛筆に対して略直交方向に配設される。この第2の切断刃15bは、傾斜部7から鉛筆芯3に向けて切り込んでいけるように設計されており、例えば、
図8に示すように、鉛筆芯3を取り囲むように円弧状の刃先を設けたものであってもよい。
【0033】
刃先の先端部15b’に向かうにつれて、鉛筆芯3に当接(或いは、限りなく近接)されるように設計することで、芯先6の露出と同時に、リング部4とテーパ部5を形成することが可能となる。
第2の切削刃15bから所定距離離れたケース他側面部側には、芯先6を所望の長さにまで露出させるための第2のストッパ16bが設けられている。これらのストッパ16a、16bは、ケース11の他側面部に設けられた蓋部17に形成されたものであってもよい。
上記既切削鉛筆の製造装置によって既切削鉛筆1を製造する方法を説明する。
【0034】
まず、第1の鉛筆差込口12aに鉛筆を差し込んで回転させる(
図9(a)を参照)。
ストッパ16aに当接するまで回転させることで、鉛筆の周側面が傾斜状に削り取られ、先端に傾斜部7が形成される(
図10(a)を参照)。
第1の鉛筆差込口12aから鉛筆を取り出して、第2の鉛筆差込口に12bに挿入する(
図9(b)を参照)。そして、第2の保持部13bに保持させた状態で回転する。
すると、傾斜部7の先端が削り取られ、平坦面からなるリング部4と、それに連続して鉛筆周側面へと至るテーパ部5が形成され、リング部4の開口部から芯先6が現れる。さらに鉛筆を回転させることで、傾斜部7が深く削り取られてゆき、第2のストッパ16bに当接することで、所望の長さにまで芯先6が露出される(
図10(b)を参照)。
【0035】
鉛筆芯3が現れる前に、鉛筆の周りを傾斜状に切削する横削り工程(第1の切削工程)が停止されるので、鉛筆芯と共に本体部が傾斜状に切削されることがない。本体部2と鉛筆芯3との間の摩擦による抗力が発生することがないので、本体部2と鉛筆芯3との間の接着材が剥がれるのを防止できる。
鉛筆の芯方向に削る縦削り方式に比べて、横削り方式の鉛筆削器の場合、鉛筆を削っているうちに、鉛筆芯と本体部との間の接着材が剥がれ、鉛筆芯のコーティング性が低下するという問題があったが、本実施形態に係る既切削鉛筆の製造装置によれば、本体部2と鉛筆芯3とが単一の切削刃によって同時に横削りされることがないので、かかる問題は発生しない。そのため、鉛筆芯3のコーティング性が維持され、衝撃を受けた際の鉛筆芯3の中折れ現象が防止される。
【0036】
例えば、
図11に示す既切削鉛筆の製造装置10の実施例のように、透明な部材によって屑入れ用のケース11を構成してもよい。この場合、
図12(d)に示すように、鉛筆差込口12から保持部13までの間に長い保持空間13’を設けてもよい。特に、第2の鉛筆差込口12bから第2の切削刃15bに至る保持空間13b’を長くすることで、鉛筆を安定した状態で回転させることができ、切削精度を高めることができる。これによって、第2の切削刃15bによる切削の際に、本体部2のみが削りとられ。鉛筆芯3が傷つけられないようすることができる。
或いは、
図13及び
図14の実施例のように、屑入れ用のケースを有しないものであてもよい。
【0037】
なお、上記鉛筆削器は、
図15に示すように、ケース11の一側面に設けられた鉛筆差込口12a、12bからケース内部に向けて鉛筆を差し込み、当該ケース11の他側面部17に取り付けられたハンドル18を持ち、糸巻きの要領でケース11を回転させて鉛筆を削る構造のものであってもよい。
ケース11には開口部が設けられており、その開口部に、別部材からなる蓋部材を取り付けることによって、ケースの他側面部17が構成されている。蓋部材は、開口部を封止する本体部(即ち、ケース他側面部17)と、本体部の延長部から直角方向に延びる筒部19と、によって構成される。この筒部19は、鉛筆の差込方向とは逆の方向からケースの他側面部に挿入されたハンドル18が回転可能に取り付けられている。
【0038】
この筒部19は、ケース11とは反対側に向かって延びており、鉛筆差込口12a、12bに差し込まれる鉛筆の軸線(すなわち、鉛筆芯3の中心)から所定距離(M、M’)離れた位置において、鉛筆芯3と平行になるように配設されている。筒部19の内部には、ハンドル18が遊びを持たせた状態で、取り付けられている。
また、
図16に示すように、ケース11に蓋11aを設けてもよい。蓋の内側に鑢11bを設けておき、芯先を所望の形状に成型できるようにしてもよい(
図17参照)。
【0039】
次に、本発明に係る既切削鉛筆の製造装置の第2実施形態としての鉛筆削器20の構成を、
図18を参照して説明する。
このケース21の側面部には単一の鉛筆差込口22が設けられており、それに連続して単一の鉛筆保持部23が設けられている。この保持部23は、鉛筆差込口22からケース内部に向けて縮径する円錐状の領域であり、その傾斜面に沿ってスリット24を設け、其スリット24に、第1の切削刃25aが設けられている。
そして、この第1の切削刃25aの先端部(即ち、ケース21の他側面側の端部)よりも鉛筆差込口22に寄った位置に、第2の切削刃25bが配設されている。第2の切断刃25bの刃先は、
図19に示すように、鉛筆に略直交する方向に延びており、第1の切削刃25aによって切削された傾斜部7の先端を切り落とし、平坦面からなるリング部4と傾斜面からなるテ―パ部5とが形成されるように、その先端部を鉛筆芯3に略当接させている。
【0040】
なお、本実施形態に係る鉛筆削器は、
図19及び
図20に示すように、通常の回転式のものであってもよい。
また、第2の切削刃25bは、第1の切削刃25aと同一部材によって構成してもよい。例えば、
図22に示すように、鉛筆の周側面を傾斜状に削る第1の切削刃25a’の回転方向前端部を、鉛筆芯3に直交する方向に屈曲し、その屈曲部において第2の切削刃25b’を構成してもよい。
この場合、
図22(a)に示す第1変形例のように、第1の切削刃25a’の刃先に連続して第2の切削刃25b’の刃先を設けてもよいし、
図22(b)に示す第2変形例のように、第1の切削刃25a’から屈曲形成された第2の切削刃25b’が、先端部に向かうにつれて鉛筆芯3の周側面に略摺接されるように設計してもよい。このように、第1の切削刃25b’の刃先と非連続になるように刃先を構成することで、傾斜部7を形成するための切削工程(第1の切削工程)の後に、リング部4を形成し芯先6を露出させるための切削工程(第2の切削工程)を施すことができる。これによって、切削の際に生ずる本体部2と鉛筆芯3との間の抵抗を低くすることができる。
【0041】
或いは、第1の切削刃25aに連続する第2の切削刃25bの構成としては、円弧状の内径に刃先を設けた螺旋刃であってもよい。
また、第1の切削刃25aによる切削が停止された際に、自動的に第2の切削刃25bが所定の切削位置に移動されるように設計してもよい。この場合、
図23に示す第3変形例のように、ストッパ26を、切削前の鉛筆の先端部が当接される位置に上下動可能に配設する。
ケース21の側壁面に歯車27が取り付けられており、この歯車27の一側に、ストッパ26の側面に設けられたギア26aが噛み合わされている。歯車27の他側部には、第2の切削刃25bを上下動させるための昇降部材28がギア28aを介して設けられている。
【0042】
第1の切削刃25aによって傾斜部7が形成されるに従ってストッパ26が上昇し、それに連動されて第2の切削刃25bが切削位置へと下降される。そして、ケース21の上壁面に当接することで、第2の切削刃25bによる切削が停止される。
このように構成することで、本体部2が傾斜状に削られていくに従って、ストッパ26が上昇し、歯車27を介して昇降部材28が下降して第2の切削刃25bによる切削が開始されるようにすることができる。本体部2の傾斜部7が鉛筆芯3の方向に向けて切削されることで、テーパ部5とリング部4の形成と同時に、芯先6が露出される。
【0043】
次に、本発明に係る既切削鉛筆の製造方法の第3実施形態としての鉛筆削器30の構成を、
図24を参照して説明する。
この実施例は、設置型の手動式鉛筆削器として構成した例である。第1の切削刃35aは、円筒形状の周面に幾条もの螺旋刃を配設して構成されたものであり、保持部33において傾斜状に配設される。この保持部33は、固定状態の鉛筆を中心としてシリンダが回転されるように構成されている。即ち、ハンドル38を回転することで、鉛筆を中心としてシリンダごと回転するように構成されており、ハンドル取付部33aに設けられた遊星歯車を介して傾斜状に配設された第1の切削刃35aが、固定状態の鉛筆の周りを自転しながら公転する。これによって、本体部2の先端が傾斜状に切削されるようになっている(
図25を参照)。
【0044】
シリンダ内には、この傾斜部7の先端を削り落すための第2の切削刃35bが配設されている。この第2の切断刃25bの刃先は、鉛筆芯3に直交する方向に向けて突出されており、傾斜部7を削って、リング部4を形成して刃先6が露出されるように設計されている。
この場合、
図26に示すように、鉛筆芯が現れる前にシリンダの回転を停止させるストッパ36を設け、第1の切断刃35a’を停止させた状態で、第2の切断刃35b’を、鉛筆芯3に向けて突出させてもよい。
【0045】
次に、本発明に係る既切削鉛筆の製造装置の第4実施形態としての鉛筆削器40の構成を、
図26を参照して説明する。
この鉛筆削器40は、既切削鉛筆を大量生産するためのものであり、表面に鑢部(第1の切削刃45a)を有してなるグラインダ46と、その回転方向Nに直交する方向に回転する回転刃(第2の切削刃45b)と、鉛筆をグラインダ46の幅方向Wに搬送させるための搬送装置47と、によって構成される。
【0046】
グラインダ46は、回転ローラの高速回転により、表面の鑢部で鉛筆の本体部2を傾斜状に切削する。
図27(a)に示すように、鉛筆をローラの表面に対して傾斜させて載置し、その周側面を押圧しながらローラの幅方向Wに転がしていくことで、鉛筆の先端部が傾斜状に切削される。この際、鉛筆の先端部を、ローラの回転方向Nに向けて載置することで、鉛筆芯に沿った方向に本体部を削ることができる。このように縦削り方式で本体部2を傾斜状に削るので、万一、本体部2と共に鉛筆芯3が削られてしまった場合であっても、本体部2と鉛筆芯3との間に発生する負荷を最小限のものとすることができる。
このようにして、鉛筆の先端を傾斜状に切削し、その傾斜部7を第2の切削刃によって削り取る。これによって、本体部2の先端にリング部4が形成され、その開口部から芯先6が露出された構成の既切削鉛筆1を容易かつ迅速に製造することが可能となる。