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前記電子求引基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の有機電子輸送材料。
前記電子求引基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択されることを特徴とする請求項4記載の有機電界発光素子。
前記電子求引基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載の有機電界発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る有機電子輸送材料(以下、単に「有機電子輸送材料」と略称する場合がある。)、下記の式(1)で表されるホスフィンオキシド誘導体である。
【0032】
式(1)において、
R
1は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、前記1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の1つはリン原子に直接結合しており、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、置換アリール基及び置換ヘテロアリール基のいずれかを表し、
R
1、Ar
1及びAr
2の少なくとも1つは、任意の1又は複数の炭素原子上に、ハメットのσ値が正の値を有する電子求引基を有しており、
【0034】
式(2)において、R
2〜R
11は、それぞれ独立して、水素原子又は上述の電子求引基を表す。
【0035】
R
1に含まれるアリール基及びヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが炭素数2〜30が好ましい。具体的には、フェニル基等の単環式の芳香族炭化水素基、チオフェン環、トリアジン環、フラン環、ピラジン環、ピリジン環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリミジン環等の単環式の複素環基、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、スピロビフルオレン環等の縮合多環式芳香族炭化水素基、チエノ[3,2−b]フラン環等の縮合多環式の複素環基、ビフェニル環、ターフェニル環等の環集合式の芳香族炭化水素基、ビチオフェン環、ビフラン環等の環集合式の複素環基、アクリジン環、イソキノリン環、インドール環、カルバゾール環、カルボリン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、シンノリン環、チオナフテン環、1,10−フェナントロリン環、フェノチアジン環、プリン環、ベンゾフラン環、シロール環等の芳香族環と複素環との組み合わせからなるものが挙げられる。Ar
1及びAr
2に含まれるアリール基及びヘテロアリール基としては、上述のR
1に含まれるアリール基及びヘテロアリール基を挙げることができるが、フェニル基又はフェナンチル基(例えば、9−フェナンチル基)が好ましい。Ar
1及びAr
2において、アリール基又は/及びヘテロアリール基に置換される原子又は基は、後述する電子吸引基が好ましい。
【0036】
電子吸引基とは、ハメットのσ値(log[K
A/K
A0]:K
Aは置換安息香酸のpKa、K
A0は安息香酸のpKaである。)が正の値を有するものであり、具体的には、ホスフィンオキシド基に対しm−位に位置するフッ素原子などのハロゲン原子、ホスフィンオキシド基に対しm−位又はp−位に位置するニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルボニル基、アルコキシアルボニル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、シアノ基が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
【0037】
好ましい電子輸送材料の具体例としては、下記の式(I)〜(XI)のいずれかで表されるものが挙げられる。
【0049】
その他、好ましい化合物としては、下記に示すものが挙げられる。
【0052】
有機電子輸送材料の合成には、公知の方法を適用することができる。有機電子輸送材料は、下記に示すように、一般式(3)で表される化合物(3)(ジアリールホスフィンオキシド誘導体)と、下記一般式(4)で表される化合物(4)とを、溶媒(solvent)中、縮合触媒(catalyst)および/または塩基(base)の存在下で縮合(脱ハロゲン化水素反応)させることにより得ることができる。
【0054】
上の式では、化合物(4)が1分子当たり1つの脱離基Xを有する場合を示しているが、1分子当たり複数の脱離基Xを有していてもよい。ここで使用できる脱離基Xの具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホキシル基)、トシル基(トルエンスルホキシル基)等が挙げられる。
【0055】
上記の式(1)で表される1置換化合物を得る場合、化合物(4)の1モルに対して、化合物(3)の使用量は1.0〜4モル程度である。
ホスフィンオキシドが2個以上置換した化合物の場合は、置換数nに応じて化合物(3)の使用量をn倍すればよい。
【0056】
上記の溶媒としては、炭素数1〜8のアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらの中でも、収率の点で、DMSOが好ましい。
【0057】
上記の縮合触媒としては、例えば、酢酸パラジウム[Pd(OAc)
2]、酢酸ニッケル[Ni(OAc)
2]、およびPd(OAc)
2−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[dppp]、Pd(OAc)
2−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[dppe]、Pd(OAc)
2−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン[dppb]、Ni(OAc)
2−dppe、Ni(OAc)
2−dpppのような白金族元素とビスホスフィノアルカンとの錯化合物が挙げられる。これらの中でも、Pd(OAc)
2、Pd(OAc)
2−dpppおよびPd(OAc)
2−dppbが収率の点から好ましい。
【0058】
その他、一般にクロスカップリングに使用されるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)等も使用可能である。触媒の使用量は、化合物(4)の1モルに対して0.005〜0.1モル程度である。
【0059】
上記の塩基は、縮合により生成されるハロゲン化水素を捕捉する機能を有する。このような塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミンやN−エチルジイソプロピルアミン[DIEA]のような脂肪族第3級アミンやピリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン[DMAP]のような芳香族第3級アミンが挙げられ、これらの中でも、沸点の点で、DIEAおよびDMAPが好ましい。塩基の使用量は、生成するハロゲン化水素の理論量を捕捉するに十分な量、すなわち化合物(4)の1モルに対して、1.0〜2モル程度である。
【0060】
反応温度は、80℃から180℃で行うことが可能である。収率の観点から、100℃から160℃が好ましい。
【0061】
より具体的には、有機電子輸送材料は、例えば、下記のスキーム1〜11によって合成され得る。
【0062】
ベンゼン環とカルバゾールの窒素原子とのC−N結合の形成は、水素化ナトリウムの存在下DMF中において、フルオロベンゼン誘導体とカルバゾールとのカップリング反応により行うことができる(スキーム1参照)。2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン、2、6−ジフェニル−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン、9,9’−スピロフルオレンの炭素原子とフッ素原子又はシアノ基を有するジフェニルホスフィンオキシド誘導体のリン原子とのC−P結合の形成は、酢酸パラジウム、dppp、ジイソプロピルエチルアミン、DMSOの存在下において、臭素子によって置換された、2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン、2、6−ジフェニル−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン、5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼン、9,9’−スピロフルオレンと上記ジフェニルホスフィンオキシド誘導体とのカップリング反応により行うことができる(スキーム2〜6参照)。フルオロベンゼン誘導体、ベンゾニトリル誘導体、又はイソフタロニトリル誘導体の炭素原子と1,4−ビス(フェニルホスフィノイル)ベンゼン、2,7−ビス(フェニルホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン、ジフェナントリルホスフィンオキシドのリン原子とののC−P結合の形成も同様に、酢酸パラジウム、dppp、ジイソプロピルエチルアミン、DMSOの存在下において、臭素原子によって置換された、フルオロベンゼン、ベンゾニトリル、又はイソフタロニトリルと1,4−ビス(フェニルホスフィノイル)ベンゼン、2,7−ビス(フェニルホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン、ジフェナントリルホスフィンオキシドとのカップリング反応により行うことができる(スキーム7〜11参照)。
【0085】
電子輸送材料は、有機EL素子1に代表される有機電界発光素子等において、発光層5のホスト材料(電子輸送材料)や、電子輸送層6の構成材料として、単独で、或いは他の1又は複数の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0086】
[第2の実施形態:有機電界発光素子]
本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の一例である有機EL素子1は、透明基板2の上に形成された陽極3と陰極7に挟まれるように積層された複数の有機化合物層(本実施の形態に係る有機EL素子1においては、陽極3側から順に、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6)を有し、その全体が封止部材8で封止されている。
なお、以下の説明において用いられている「(電極又は有機化合物層)X上には(電極又は有機化合物層)Yが設けられている」という表現は、「Xの陰極7側の表面上に、Yが、互いに表面を接するように形成されている」ことを意味し、「(電極又は有機化合物層)X上に(電極又は有機化合物層)Yを形成する」という表現は、「Xの陰極7側の表面上に、互いに表面を接するようにYを形成する」ことを意味する。
【0087】
まず、有機EL素子1を構成する透明基板2、陽極3及び陰極7について説明する。
[透明基板2]
透明基板2は、有機EL素子1の支持体となるものである。本実施の形態に係る有機EL素子1は、透明基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、透明基板2及び陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明又は半透明)な材料より構成されている。透明基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
透明基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。なお、有機EL素子1が透明基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、透明基板2の代わりに不透明基板が用いられる場合がある。不透明基板の例としては、アルミナ等のセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼等の金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0089】
[陽極3]
陽極3は、後述する正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウムジルコニウム)、In
3O
3、SnO
2、Sb含有SnO
2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cu又はこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0090】
[陰極7]
一方、陰極7は、後述する電子輸送層6に電子を注入する電極であり、電子輸送層6の発光層5と反対側に設けられている。この陰極7の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。陰極7の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb又はこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種又は任意の2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0091】
特に、陰極7の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極7の構成材料として用いることにより、陰極7の電子注入効率及び安定性の向上を図ることができる。陰極7の平均厚さは、特に限定されないが、50〜10000nm程度であるのが好ましく、80〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0092】
トップエミッション型の場合、仕事関数の小さい材料、又はこれらを含む合金を5〜20nm程度とし、透過性を持たせ、さらにその上面にITO等の透過性の高い導電材料を100〜500nm程度の厚さで形成する。
なお、本実施の形態に係る有機EL素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極7の光透過性は特に要求されない。
【0093】
次に、有機EL素子を構成する有機化合物層(陽極3側から順に、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6)について説明する。
陽極3上には、正孔輸送層4が設けられている。この正孔輸送層4は、陽極3から注入された正孔を、発光層5まで輸送する機能を有するものである。
【0094】
[正孔輸送層4]
正孔輸送層4の構成材料の具体例としては、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属又は無金属のフタロシアニン系化合物、ポリアニリン等のポリアリールアミン、芳香族アミン誘導体、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂又はその誘導体等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を混合または積層して組み合わせて用いることができる。
【0095】
芳香族アミン誘導体の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0101】
また、上記の化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0102】
正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0103】
[発光層5]
正孔輸送層4上、すなわち、正孔輸送層4の陰極7側の表面上には、発光層5が設けられている。この発光層5には、後述する電子輸送層6から電子が、また、前記正孔輸送層4から正孔がそれぞれ供給(注入)される。そして、発光層5内では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーにより励起子(エキシトン)が生成し、励起子が基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が放出(発光)される。
【0104】
発光層5の構成材料のうち、発光機能を担う発光物質(ゲスト材料)の具体例としては、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリフルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq
3)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)
3)のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子、ポリフルオレン系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
また、発光層は、電子又は正孔の電荷輸送を担う材料(ホスト材料)として、本発明の第1の実施の形態に係る有機電子輸送材料を含んでいる。ゲスト材料は、ホスト材料中に均一に分布している。ゲスト材料の濃度は、一般に、ホスト材料の0.1〜1重量%程度である。
【0106】
発光層5は、上述のホスト材料及びゲスト材料以外に、電子輸送補助材料及び正孔輸送補助材料を更に含んでいてもよい。
発光層5に添加することができる電子輸送補助材料及び正孔輸送補助材料の具体例としては、正孔輸送層4及び後述する電子輸送層6の構成材料として用いられる任意の材料及びこれらの任意の2以上の組み合わせが挙げられる。
【0107】
発光層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0108】
[電子輸送層6]
発光層5上には、電子輸送層6が設けられている。この電子輸送層6は、陰極7から注入された電子を、発光層5まで輸送する機能を有するものである。
【0109】
電子輸送層6の構成材料の一例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、多環系化合物、バソクプロイン等のヘテロ多環系化合物、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、アントラキノンジメタン誘導体、アントロン誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸又はペリレンテトラカルボン酸等の芳香環テトラカルボン酸の酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体等の各種金属錯体、有機シラン誘導体、イリジウム錯体、特開2010−278376号公報記載のアルコール可溶性ホスフィンオキシド誘導体等のホスフィンオキシド誘導体、これらの化合物の任意の2以上の組み合わせが挙げられる。或いは、本発明の第1の実施の形態に係る電子輸送材料を、単独で又は上述の他の化合物とを任意に組み合わせたものを、電子輸送層6の構成材料として用いてもよい。
【0110】
電子輸送層6の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、10〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0111】
封止部材8は、有機EL素子1(陽極3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7)を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材8を設けることにより、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質及び劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0112】
封止部材8の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Ti又はこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材8の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材8と有機EL素子1との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。また、封止部材8は、平板状として、透明基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0113】
有機EL素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、透明基板2を用意し、この透明基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電界メッキ、浸漬メッキ、無電界メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0114】
次に、陽極3上に正孔輸送層4を形成する。
正孔輸送層4は、真空蒸着法または塗布法を用い成膜することが可能である。塗布法であれば、例えば、溶媒に溶解又は分散媒に分散した正孔輸送材料を陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒又は脱分散媒)することにより形成することができる。正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。このような塗布法を用いることにより、正孔輸送層4を比較的容易に形成することができる。
【0115】
溶解または分散に用いる溶媒又は分散媒は、用いられる正孔輸送材料の溶解性、コスト、入手容易性、乾燥の容易さ及び安全性等に応じて、適宜選択される。溶媒又は分散媒の具体例としては、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等のー黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、又は、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧又は減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
【0116】
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面に親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー:100〜800W程度、酸素ガス流量:50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度:0.5〜10mm/sec程度、透明基板2の温度:70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0117】
次に、正孔輸送層4上(陽極3の一方の面側)に、発光層5を形成する。
発光層5は、真空蒸着法または塗布法を用い成膜することが可能である。塗布法であれば、例えば、溶媒に溶解又は分散媒に分散したホスト材料及びゲスト材料を、正孔輸送層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒又は脱分散媒)することにより形成することができる。用いられる溶媒又は分散媒は、正孔輸送層4を溶解、浸食又は膨潤させないものを選択して用いることが望ましい。
【0118】
溶媒に溶解又は分散媒に分散したホスト材料及びゲスト材料の供給方法及び乾燥の方法は、前記正孔輸送層4の形成で説明したのと同様である。
【0119】
次に、発光層5上(陽極3の一方の面側)に、電子輸送層6を形成する。
電子輸送層6は、正孔輸送層4及び発光層5と同様に真空蒸着法または塗布法を用い成膜することが可能である。塗布法であれば、溶媒に溶解又は分散媒に分散した電子輸送材料を発光層5上に供給した後乾燥することにより、電子輸送層6が得られる。用いられる溶媒又は分散媒は、発光層5を溶解、浸食又は膨潤させないものを選択して用いることが望ましい。溶媒に溶解又は分散媒に分散した電子輸送材料の供給方法及び乾燥の方法は、前記正孔輸送層4及び発光層5の形成で説明したのと同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0120】
次に、電子輸送層6上(発光層5と反対側)に、陰極7を形成する。
陰極7は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布及び焼成等を用いて形成することができる。
最後に、得られた有機EL素子1を覆うように封止部材8を被せ、透明基板2に接合する。
以上のような工程を経て、有機EL素子1が得られる。
【0121】
以上のような製造方法によれば、有機層(正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6)の形成や、金属微粒子インクを使用する場合は陰極7の形成においても、真空装置等の大掛かりな設備を要しないため、有機発光素子1の製造時間及び製造コストの削減を図ることができる。また、インクジェット法(液滴吐出法)を適用することで、大面積の素子の作製や多色の塗り分けが容易となる。
【0122】
なお、本実施の形態では、液相法を用いて正孔輸送層4及び発光層5を製造する場合について説明したが、用いる正孔輸送材料及び発光材料の種類に応じて、これらの層を、例えば、真空蒸着法等の気相プロセスにより形成するようにしてもよい。
【0123】
このような有機EL素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の有機EL素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置を構成することができる。なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0124】
有機EL素子1に供給される電気エネルギー源としては、主に直流電流であるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値及び電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力、寿命を考慮するとできるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるようにするべきである。
【0125】
ディスプレイ装置を構成する「マトリックス」とは、表示のための画素(ピクセル)が格子状に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状、サイズは用途によって決まる。例えばパーソナルコンピュータ、モニター、テレビの画像及び文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられるし、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的には、デルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリックスの駆動方法としては、パッシブマトリックス方式及びアクティブマトリックス方式のどちらでもよい。前者には、構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、後者のアクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0126】
有機EL素子1は、セグメントタイプの表示装置であってもよい。「セグメントタイプ」とは、予め決められた情報を表示するように所定形状のパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器等の動作状態表示、自動車のパネル表示などがあげられる。マトリックス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0127】
有機EL素子1は、自発光しない表示装置の視認性を向上させるために、液晶表示装置、時計、オーディオ機器、自動車パネル、表示板、標識等に使用されるバックライトであってもよい。特に液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパーソナルコンピュータ用途のバックライトとしては、蛍光灯や導光板からなる従来のものに比べ、薄型化、軽量化が可能になる。
【0128】
このような有機EL素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の有機EL素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0129】
有機EL素子1において、陰極7と電子輸送層6の間には、図示しない電子注入層を設けることができる。電子注入層は、陰極7から電子輸送層6へ電子注入の効率向上、すなわち駆動電圧の低下のために用いられる。電子注入層は、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ土類金属及び炭酸水素塩からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニドなどで構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、酸化リチウム(Li
2O)、酸化カリウム(K
2O)、硫化ナトリウム(Na
2S)、セレン化ナトリウム(Na
2Se)及び酸化ナトリウム(Na
2O)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ベリリウム(BeO)、硫化バリウム(BaS)及びセレン化カルシウム(CaSe)が挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)及び塩化ナトリウム(NaCl)などが挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、フッ化カルシウム(CaF
2)、フッ化バリウム(BaF
2)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、フッ化マグネシウム(MgF
2)及びフッ化ベリリウム(BeF
2)などのフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
上記の無機化合物の他に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含む有機金属錯体も使用可能である。好ましい有機金属錯体の具体例としては、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン類、8−ヒドロキシLノリン、2−ピコリン酸等の複素環を含む配位子とアルカリ金属及びアルカリ土類金属との錯体などが挙げられる。
【0130】
また、発光層5と電子輸送層6との間に、図示しない正孔ブロッキング層を設けてもよい。正孔ブロッキング層を設けることによって、電子輸送層6への正孔の流入を抑制でき、発光効率を高めることができるとともに、有機EL素子1の寿命を延長することもできる。ここで、正孔ブロッキング層は、前述の電子輸送材料を用いて設けることができ、2つ以上の種類の電子輸送材料を共蒸着などにより混合して積層された混合層とすることが好ましい。正孔ブロッキング層に含有する電子輸送材料は、そのイオン化ポテンシャルを発光層5のイオン化ポテンシャルよりも大きくすることが好ましい。
【0131】
また、正孔輸送層4と陽極3との間に、図示しない正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層の構成材料としては、前述した正孔輸送層4の構成材料の具体例から適宜選択した任意のものを用いることができるが、正孔輸送層4の構成材料よりも低い電界強度で正孔を発光層5に輸送する材料が好ましい。
【実施例】
【0132】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0133】
実施例1:密度汎関数法を用いた第一原理計算による、アニオン状態におけるホスフィンオキシド誘導体の安定性の評価
【0134】
計算プログラムにGAMESSを用い、ワークステーション上で、下記の条件により構造の最適化及び生成熱の計算を行った。
・中性分子、カチオン、アニオンフラグメント:RHF(制限閉殻法)/6−31G(d)/B3LYP
・カチオン、アニオン分子、中性フラグメントは、UHF(非制限開核法)/6−31G(d)/B3LYP
以上の内フラグメント分子は、親イオンの配座のまま1点計算した。
【0135】
これらの生成熱より、下式(1)で示される解離反応の結合解離エネルギー(BDE:Bond Dissociation Energy)を計算した。
M→F1+F2・・・・・(1)
【0136】
この時の結合解離エネルギーは、下記の式(2)で求められる。
BDE=H
M−(H
F1+H
F2)・・・・(2)
BDE:結合解離エネルギー
H
M:親分子の生成熱
H
F1、H
F2:それぞれのフラグメント分子の生成熱
【0137】
モデル化合物系において、Linらの計算結果が再現できることを確認し、下記の化合物について、結合解離エネルギーの計算を行った。Linらの例示化合物CzPO2と電子吸引基であるフッ素を導入したF4CzPO2のリン原子と外殻フェニル基/ジフルオロフェニル基のP−C結合の結合解離エネルギーの計算結果を表1に示す。ホスフィンオキシド誘導体残基に電子求引基のフッ素原子を導入すると、アニオンのBDEが約10kcal/mol向上することがわかった。
【0138】
【化39】
【0139】
【表1】
【0140】
実施例2:電子輸送材料の基本骨格の合成
【0141】
2,6−(p−ブロモフェニル)−4−ビフェニルピリジンの合成
【0142】
【化40】
【0143】
4−フェニルベンズアルデヒド(4.61g、25.3mmol)、4’−ブロモアセトフェノン(10.1g、50.6mmol)、酢酸アンモニウム(25.1g、325mmol)を酢酸(63.4mL)に加え9時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ取し、エタノールで洗浄した。結晶はジクロロメタン/IPAで再結晶を行い、表題化合物4.42g(収率:32%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=538, 540, 542
【0144】
2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジンの合成
【0145】
【化41】
【0146】
塩化ベンゾイル(3.51g、25mmol)、4−ブロモベンゾニトリル(9.10g、50mmol)をクロロベンゼン(37.5mL)に溶解し、0℃に冷却した。この溶液に塩化アンチモン(V)(7.48g、25mmol)を滴下し、室温で20分、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、−20℃に冷却し、激しく撹拌しながら25%アンモニア水(20mL)を加えクエンチした。室温でクロロベンゼン(25mL)を加え、共沸により水を取り除いた。残渣は130℃に加熱して熱時ろ過した。ろ紙上の残留物はクロロホルム(25mL)に加え、加熱して再度熱時ろ過した。得られたろ液はメタノール(50mL)を加え、生じた沈殿をろ取し、表題化合物7.00g(収率:60%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=465, 467, 469
【0147】
1,3−ジブロモ−5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼンの合成
【0148】
【化42】
【0149】
55%水素化ナトリウム(500mg、1.5mmol)をDMF(20ml)に懸濁させ、カルバゾール(1.67g、10mmol)を加え、この懸濁液を80℃に加熱して溶解させた。続いて1,3−ジブロモ−5−フルオロベンゼン(2.54g、10mmol)を滴下して100℃で16時間加熱撹拌を行った。反応混合物は室温に冷却し、氷水でクエンチした。この水溶液をジクロロメタンを用いて抽出し、得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、ヘプタンより再結晶を行い、表題化合物1.63g(収率:41%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=402
【0150】
2,6−ビス(4−(ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィノイル)フェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジンの合成
【0151】
【化43】
【0152】
2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−4−フェニル−1,3,5−トリアジン(572mg、1.0mmol)、ジ(4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド(F2DPPO)(572mg、2.4mmol)、酢酸パラジウム(22.5mg、0.10mmol)、dppp(82.5mg、0.20mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(3.2mL)をDMSO(6.4mL)に加え、100℃で20時間化撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、淡緑色固体634mgを得た。得られた固体はシクロヘキサン/エタノールより再結晶を行い、表題化合物348mg(収率:44%)を得た。FAB-MS(m/z)=782
【0153】
ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィンオキシド(F4DPPO)の合成
【0154】
【化44】
【0155】
Mg(3.16g、130mmol)に1−ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン(25.0g、130mmol)−エーテル溶液65mLを30分間かけて滴下した。滴下終了後室温で2時間撹拌した。続いて−20℃に冷却し、ジクロロ(ジメチルアミノ)ホスフィン(9.49g、65mmol)を加え−20℃で15分間、室温で1時間撹拌した。続いて氷浴で冷却し12N塩酸(24mL、780mmol)を加え、0℃で20分間、室温で17時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタンで希釈し、水、飽和NaHCO
3水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物10.0g(収率:38%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=275
【0156】
ジ(4−シアノフェニル)ホスフィンオキシドの合成
【0157】
【化45】
【0158】
1M塩化ジイソプロピルマグネシウム−塩化リチウム錯体−THF溶液(34mL、34mmol)を0℃に冷却し、4−ブロモベンゾニトリル(6.19g、34mmol)を加え0℃で攪拌した。4時間後1.5Mジクロロジメチルアミドホスフィン−THF溶液(13mL、19.5mmol)を滴下し、2時間攪拌した。続いて12N HCl(8mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、得られた残渣を、カラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた固体はシクロヘキサンで再結晶を行い、表題化合物1.10g(収率:26%)を得た。
【0159】
ジ−9−フェナントリルホスフィンオキシド(DPhenPO)の合成
【0160】
【化46】
【0161】
Mg(2.43g、100mmol)に9−ブロモフェナントレン(25.7g、100mmol)−THF溶液(50mL)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、還流した。2時間後、室温まで冷却し、THF(30mL)を加え、0℃に冷却した三塩化リン(7.55g、50mmol)−THF溶液(30mL)に30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で18時間撹拌した。続いて1N塩酸(100mL)を加え、1時間室温で撹拌した。生じた沈殿はろ取し、さらに沈殿はトルエンで洗浄し、減圧下で乾燥後、表題化合物13.4g(収率:60%)を得た。
APCI-TOF-MS(m/z)=403
【0162】
2,6−ビス(4−(ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィノイル)フェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジンの合成
【0163】
【化47】
【0164】
2,6−ビス(4−ブロモフェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン(498mg、0.92mmol)、F4DPPO(603mg、2.2mmol)、酢酸パラジウム(20.7mg、0.092mmol)、dppp(75.9mg、0.184mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(2.9mL)をDMSO(5.8mL)に加え、100℃で22時間化撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、淡緑色固体758mgを得た。得られた固体はヘプタン/エタノールより再結晶を行い、表題化合物341mg(収率:40%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=928
【0165】
2,2’,7,7’−テトラキス(ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィノイル)−9,9’−スピロビフルオレンの合成
【0166】
【化48】
【0167】
2,2’,7,7’−テトラブロモ−9,9’−スピロビフルオレン(134mg、0.21mmol)、F4DPPO(348mg、1.27mmol)、酢酸パラジウム(20.7mg、0.092mmol)、dppp(75.9mg、0.184mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.34mL)をDMSO(2.8mL)に溶解し、100℃で24時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体132mgを得た。得られた結晶はさらにヘプタン/エタノールより再結晶を行い、表題化合物102mg(収率:35%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=1405
【0168】
1,3−ビス(ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィノイル)−5−(カルバゾール−9−イル)ベンゼンの合成
【0169】
【化49】
【0170】
1,3−ジブロモ−5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼン(800mg、2.0mmol)、ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィンオキシド(1.32g、4.8mmol)、酢酸パラジウム(45mg、0.2mmol)、dppp(170mg、0.4mmol)、DIEA(0.52g、4mmol)をDMSO(8.0ml)に加え、100℃で24時間撹拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた固体はトルエン/メタノールより再結晶を行い、表題化合物950mg(収率:60%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=788
【0171】
1−2.2,4−ビス(4−(ビス(4−シアノフェニル)ホスフィノイル)フェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジンの合成
【0172】
【化50】
【0173】
2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン(561mg、1.2mmol)、2pCNPh−PHO(908mg、3.6mmol)、酢酸パラジウム(8.1mg、0.036mmol)、dppp(29.7mg、0.072mmol)、DIEA(1.3mL)をDMSO(4.8mL)に加え、100℃で一晩撹拌撹拌した。反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた固体はトルエン/メタノールより再結晶を行い、表題化合物311mg(収率:32%)を得た。
【0174】
1,4−ビス(3,5−ジシアノフェニル(フェニル)ホスフィノイル)ベンゼンの合成
【0175】
【化51】
【0176】
1,4−ビス(フェニルホスフィノイル)ベンゼン(219mg、0.672mmol)、5−ブロモ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル418mg、2.02mmol)、酢酸パラジウム(15.1mg、0.0672mmol)、dppp(55.3mg、0.134mmol)、DIEA(2.2mL)をDMSO(4.4mL)に加え、100
oCで一晩攪拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた固体はシクロヘキサン/エタノールより再結晶を行い、表題化合物271mg(収率:31%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=579
【0177】
2,7−ビス(3,5−ジシアノフェニル(フェニル)ホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレンの合成
【0178】
【化52】
【0179】
2,7−ビス(フェニルホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン(371mg、0.838mmol)、5−ブロモ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル(520mg、2.51mmol)、酢酸パラジウム(28.1mg、0.125mmol)、dppp(103mg、0.251mmol)、DIEA(4.2mL)をDMSO(8.4mL)に加え、100
oCで24時間攪拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、得られた固体は昇華精製により精製し、表題化合物240mg(収率:41%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=694
【0180】
3,5−ジフルオロフェニル−ジフェナントリルホスフィンオキシドの合成
【0181】
【化53】
【0182】
3,5−ジフルオロフェニル−1−ブロモベンゼン(579mg、3.0mmol)、ジフェナントリルホスフィンオキシド(1.01mg、2.5mmol)、酢酸パラジウム(16.8mg、0.075mmol)、dppp(61.9mg、0.15mmol)、DIEA(1.7mL)をDMSO(3.3mL)に加え、100
oCで24時間攪拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、得られた固体はトルエンより再結晶を行い、表題化合物411mg(収率:32%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=515
【0183】
3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル−ジフェナントリルホスフィンオキシドの合成
【0184】
【化54】
【0185】
3,5−ジフルオロフェニル−1−ブロモベンゼン(879mg、3.0mmol)、ジフェナントリルホスフィンオキシド(1.01g、2.5mmol)、酢酸パラジウム(16.8mg、0.075mmol)、dppp(61.9mg、0.15mmol)、DIEA(1.7mL)をDMSO(3.3mL)に加え、100℃で24時間攪拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、得られた固体はトルエンより再結晶を行い、表題化合物430mg(収率:28%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=615
【0186】
4−シアノフェニル−ジフェナントリルホスフィンオキシドの合成
【0187】
【化55】
【0188】
3,5−ジフルオロフェニル−1−ブロモベンゼン(546mg、2.5mmol)、ジフェナントリルホスフィンオキシド(1.01g、3.0mmol)、酢酸パラジウム(16.8mg、0.075mmol)、dppp(61.9mg、0.15mmol)、DIEA(1.7mL)をDMSO(3.3mL)に加え、100℃で24時間攪拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、得られた固体はトルエンより再結晶を行い、表題化合物504mg(収率:40%)を得た。APCI-TOF-MS(m/z)=504
【0189】
実施例3:積層型有機EL素子(有機電界発光素子)の作製及び評価
1.積層型有機EL素子(有機電界発光素子)の作製
150nmのITOガラス(□50mm ジオマテック製)上に0.023cm
2の積層型有機EL素子(赤色リン光素子又は緑色蛍光素子)を作製した。基板はアルカリ洗剤(関東化学製)、超純水、アセトン(和光純薬製)にて超音波洗浄(各5分)、2−プロパノール(和光純薬製)にて煮沸洗浄(5分)、次いでUV/O
3洗浄(15分)を行った。
【0190】
(1)赤色リン光素子
正孔注入層の有機膜は、スピンコート法、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層の有機膜は、真空蒸着法にて、陽極であるITOガラス上に成膜した。各層の材料、成膜条件は以下の通りである。ドーピングを行っている発光層及のホスト材料とゲスト材料の比は、水晶振動子膜厚計でモニターし蒸着速度を調整することにより調整した。
【0191】
・正孔注入層:PEDOT−PSS(AI4083(Heraeus製))(40nm)
スピンコート2700rpm×45sec(大気雰囲気)
ベーク200℃ 60min(大気雰囲気)
・正孔輸送層:α−NPD(N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン:下式参照)(40nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10
−4Pa
・発光層(30nm)
ホスト材料:実施例2において合成した有機電子輸送材料
発光材料(ゲスト材料):Ir(piq)
3(下式参照)、6重量%
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10
−4Pa
・正孔ブロック層:BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニルフェナントロリン:下式参照)(10nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10
−4Pa
・電子輸送層:Alq
3(トリス(8−キノリノラート)アルミニウム:下式参照)(30nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10
−4Pa
【0192】
(2)緑色蛍光素子
正孔輸送層、発光層、電子輸送層の有機膜は、真空蒸着法にて、陽極であるITOガラス上に成膜した。各層の材料、成膜条件は以下の通りである。ドーピングを行っている電子輸送層のホスト材料とゲスト材料の比は、水晶振動子膜厚計でモニターし蒸着速度を調整することにより調整した。
【0193】
・正孔輸送層:α−NPD(40nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10
−4Pa
・発光層:Alq
3(20nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10
−4Pa
・電子輸送層:実施例2において合成した有機電子輸送材料(30nm)または、合成した有機電子輸送材料にLiqドープ10重量%ドープ
【0194】
【化56】
【0195】
【化57】
【0196】
【化58】
【0197】
【化59】
【0198】
【化60】
【0199】
【化61】
【0200】
陰極(LiF/Al)の蒸着には、チャンバー圧<1×10
−4Paの高真空蒸着装置を用いた。蒸着速度は、LiFについては0.1Å/s、Alについては5Å/sとした。全ての素子においてN
2雰囲気下で封止を行った。陰極の成膜が完了後、素子を窒素置換したグローブボックス(vac製、水分濃度1ppm以下、酸素濃度1ppm以下)内に直ちに移動し、乾燥シート剤(ダイニック製)を貼ったガラスキャップ(クライミング製)で素子を封止した。
【0201】
2.積層型有機EL素子の寿命の測定
積層型有機EL素子を25℃一定の恒温槽内に設置し、定電流連続駆動に伴う輝度、電圧の変化を、寿命評価測定装置(九州計測器製)を用いて測定した。
【0202】
3.結果
上記測定結果を表2及び表3に示す。表2は、赤色リン光素子における有機電子輸送材料(I)〜(XI)の評価結果を示す。表3は、緑色蛍光素子における有機電子輸送材料(I)〜(XI)の評価結果を示す。また、DPPO2DMFluを有機電子輸送材料として用いた比較例の結果も合わせて示す。なお、表2及び表3における半減寿命実測欄のカッコ内の表示は測定途中に短絡したことを表す。下記の表から分かるように、有機電子輸送材料(I)〜(XI)では、高い寿命を有し、耐久性に優れる。
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。