(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の回転機構及び前記第2の回転機構のうちの少なくとも一方に動力を供給する電気モータをさらに備える、請求項1〜2のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、様々な変更及び代替の形態が容易であるが、本発明の細部は、例及び図面によって示され、詳細に説明される。しかしながら、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は、本発明の概念及び範囲内の変更形態、均等物、及び代替形態を包含する。
【0017】
本明細書で説明される本発明の実施形態は、本発明を網羅するものでも、以下の詳細な説明で開示される正確な形態に限定するものでもない。むしろ、実施形態は、当業者が本発明の原理及び実施を正当に評価し理解できるように選択される。
【0018】
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で開示される刊行物及び特許は、それらの開示のためだけに記載される。本明細書では、いかなる場合も、本明細書で言及される全ての刊行物及び特許を含む全ての刊行物及び特許に先行する権利が発明者らにあると認めることと解釈されるべきではない。
【0019】
標準的なコーティング技術は、浸漬コーティング及び/又は吹き付けコーティングを含み得る。しかしながら、出願者は、標準的な技術、例えば、浸漬コーティングは、様々なコーティングの不規則さを生じさせ得ることを観察した。一例として、浸漬コーティングは、厚い側と薄い側とによって特徴付けられるコーティングとなり得る。
図1を参照すると、中心内腔104を有するシャフト102を備えた器具100の断面図が示されている。器具100は、コーティング106も備える。しかしながら、コーティング106は、シャフト102の周囲に均等に分布していない。むしろ、コーティング106は、厚い側108と薄い側110を有する。これは、コーティングの最適以下の耐久性を含む様々な問題を引き起こし得る。
【0020】
加えて、標準的なコーティング技術は、特に、コーティングされる物体の表面がある程度の表面トポロジーのばらつきを有する部分に、コーティングの不規則さが起こり得る。例えば、表面が変化するトポロジー(高い点及び低い点)を有する物体では、通常は、低い点に大量のコーティング材料が集まり、高い点には少量のコーティング材料しか存在しない。ここで、
図2Aを参照すると、高い点204及び低い点206を有する医療器具の支持層202の部分断面図が示されている。コーティング208は、支持層202に設けられている。コーティングは、厚い部分210及び薄い部分212を有する。このタイプのコーティングパターンは、高い点が、使用中に低い点よりも大きい摩擦を受けるため、これらのタイプの不規則さのあるコーティングは、実質的に耐久性に劣ることがあり、コーティングが分解するときに粒子状物質が放出されやすいため問題があり得る。
【0021】
特徴間に間隙のある医療器具に関連して、標準的なコーティング技術では、間隙(例えば、ウェビング)に跨り、かつ/又は内径まで達するコーティングとなることがあり、いくつかのタイプの適用例には望ましくないコーティング構造となる。ここで
図2Bを参照すると、医療器具の部分断面図が示されている。医療器具は、間隙260(例えば、管の表面のスロット)によって互いに分離された、中心内腔を取り囲む複数のセグメント252を備える。コーティング材料258が医療器具に設けられている。しかしながら、コーティング材料は、医療器具の間隙260内及び内径表面262にも設けられている。セグメント間のコーティング材料は、壊れやすいため、粒子状物質の供給源となってしまうことがある。加えて、医療器具の内径と外径との間に様々な機能的特性が望まれる場合には、内径におけるコーティングの存在は望ましくないであろう。
【0022】
本明細書のコーティング装置の実施形態を使用して、標準的なコーティング技術の様々な欠点に対応すると共に、活性物質を含む又は含まないコーティングを含むコーティングを医療器具、例えば、バルーンカテーテルのシャフト及び/又はバルーンに塗布することができる。特に、本明細書のコーティング装置の実施形態を使用して医療器具をコーティングし、医療器具の周囲に実質的に均等である均一のコーティングを形成することができる。これは、均等なコーティングの形成に使用するのが極めて困難なコーティング液、例えば、粘度の高いコーティング液及び粘度の低いコーティング液でも可能であることが分かった。
【0023】
加えて、本明細書のコーティング装置の実施形態を使用して、変化する表面トポロジーを有する医療器具をコーティングすることができ、表面の高い点と低い点とを比較したときに、塗布されるコーティングの量に関して実質的により均一なコーティングとなる。一部の実施形態では、本明細書のコーティング装置を使用して、高い点により多くのコーティング材料が存在するようにコーティングを施すことができ、低い点にコーティング材料がより多い典型的なパターンが実際に逆になる。
【0024】
様々な実施形態では、本明細書のコーティング装置は、コーティングされる医療器具を比較的高速で回転させる回転機構を備える。医療器具の高速での回転により、相当な遠心力が発生し、この遠心力により、医療器具の周囲のコーティングの厚さを評価すると厚さが実質的に均一のコーティングとなる。ここで
図3を参照すると、中心内腔304を有するシャフト302を備えた器具300の断面図が示されている。器具300は、コーティング306も備える。しかしながら、
図1に示されているコーティング106とは対照的に、コーティング306は、シャフト302の周囲に実質的に均等に設けられている。
【0025】
加えて、相当な遠心力が、コーティング材料が低い点に集まる傾向に対して反対に作用し、これは、通常は、低速の回転又は固定の適用例に関して当てはまる。驚くべきことに、出願者は、高いRPM回転を、コーティング液が塗布された後に医療器具の表面からコーティング液が吹き飛ばされずに利用できることを見出した。言い換えれば、出願者は、コーティングされる器具の表面からコーティング材料が投げ出されるほど遠心力が強くならずに、非常に高い毎分回転数をコーティングプロセスで使用できることを見出した。
【0026】
一部の実施形態では、コーティングされる器具は、500〜2000回転/分(RPM)の速度で回転させられる。一部の実施形態では、コーティングされる器具は、600〜1500回転/分の速度で回転させることができる。一部の実施形態では、コーティングされる器具は、700〜1000回転/分の速度で回転させることができる。一部の実施形態では、コーティングされる器具は、500、600、700、800、900、1000、1100、又は1200回転/分よりも高い速度で回転させることができる。
【0027】
遠心力は、以下の式(I)に従って計算することができる:
Fc=0.01097×M×r×n
2 (式I)
式中、
Fc=遠心力(N(kg・m/s
2))
M=質量(kg)
r=半径(m)
n=RPM
【0028】
従って、遠心力は、半径と共に線形に変化するが、RPMと共には線形に変化しないことが分かるであろう。このため、このような高いRPM速度でも、コーティングが、コーティングされる医療器具の表面に留まることができるという驚くべき結果に至った。
【0029】
本明細書の実施形態に従ってコーティングされる医療器具の半径は様々であり得る。一部の実施形態では、医療器具の半径は、5cm未満、4cm未満、3cm未満、2cm未満、又は1cm未満である。一部の実施形態では、医療器具の半径は、約0.1mm〜2cmである。一部の実施形態では、医療器具の半径は、約0.2mm〜1cmである。
【0030】
ここで
図4を参照すると、医療器具400の一部の概略図が示されている。医療器具400の表面416は、相対的に高い点及び低い点を有する。ここで
図5Aを参照すると、医療器具400の特定のセグメント414の部分断面図が示されている。医療器具400は、表面402に設けられたコーティング408を備える。支持層の表面は、高い点404及び低い点406を有する。
図5Aは、コーティング408が、高い点404及び低い点406の両方で実質的に均等であるという点で
図2に示されているコーティングと区別される。コーティングの個別の厚さは、用途によって異なり得るが、様々な実施形態では、厚さを約0.1μm〜約50μmにすることができることを理解されたい。一部の実施形態では、厚さは、1〜10μmにすることができる。
【0031】
器具400によって代表される例示的な医療器具は、編組カテーテルを備えることができる。編組カテーテルは、典型的には、高いトルク、耐破裂圧力性 押しやすさ、操作のしやすさ、及びねじれ耐性を必要とする適用例に使用される。例示的な用途として、EPマッピング及びアブレーションカテーテル、温度検出、圧力監視、ロボット&光学カテーテル(Creganna−Tactx Medical, Galway, Irelandから入手可能)が挙げられる。
【0032】
本明細書の実施形態を使用して、コーティングが間隙に跨らず、また進入して医療器具の内径を覆わないように、特徴間に間隙がある医療器具にコーティングを施すことができる。ここで
図5Bを参照すると、医療器具の部分断面図が示されている。医療器具は、間隙によって互いに分離された、中心内腔を取り囲む複数のセグメント552を備える。コーティング材料858が医療器具に設けられている。しかしながら、
図2Bに示されている医療器具とは対照的に、コーティング材料は、間隙内にも、医療器具の内径表面262にも存在しない。
【0033】
加えて、本明細書の実施形態を使用して、多孔質の支持層及び/又は表面を有する医療器具にコーティングを施すことができ、表面から多孔質材料へのコーティングの移動を防止し、かつ/又はその移動量を低減することができる。特に、高いRPM速度によって生じる遠心力は、通常はコーティング材料を多孔質材料内に進入させるように働く力(例えば、毛細管現象)をある程度は弱めるように作用することができる。
【0034】
ここで
図6を参照すると、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置600の概略側面図が示されている。コーティング装置600は、バルーンカテーテル602と共に示されている。バルーンカテーテル602は、カテーテルシャフト604及びバルーン606を備えることができる。バルーン606は、収縮した構造及び膨張した構造をとることができる。バルーンカテーテル602は、遠位端部及び近位端部を備えことができる。バルーンカテーテル602は、近位端部マニホールド(不図示)を備えることができる。コーティング装置600は、コーティング塗布ユニット608を備えることができる。コーティング塗布ユニット608は、支持レール610に沿って移動することができる。しかしながら、一部の実施形態では、コーティング塗布ユニット608を静止したままとし、コーティング装置600の他の構成要素を移動させることもできることを理解されたい。
【0035】
バルーンカテーテル602のコーティングは、その近位端部から開始して遠位端部まで進めることができる。しかしながら、他の実施形態では、バルーンカテーテル602のコーティングは、遠位端部から開始して近位端部まで進めることができる。一部の実施形態では、コーティングは、バルーンカテーテル602に対してコーティング塗布ユニット608の1回の通過で行うことができる。しかしながら、他の実施形態では、バルーンカテーテル602に対してコーティング塗布ユニット608を複数回通過させることもできる。
【0036】
コーティング塗布ユニット608は、流体ポンプ612をさらに備えることができる。流体ポンプ612は、例えば、シリンジポンプとすることができる。流体ポンプ612は、コーティング塗布ユニット608の構成要素(例えば、流体アプリケータ)に流体連通することができる。流体ポンプ612は、シャフト又はコーティングされる器具の他の部分の長さ1cmに付き約0.5μl〜約10μlのコーティング液を塗布するのに十分な速度でコーティング液をポンピングするように動作することができる。コーティング塗布ユニット608は、流体アプリケータ614をさらに備えることができる。
【0037】
一部の実施形態では、流体アプリケータは、接触流体アプリケータ(例えば、流体アプリケータが、コーティングされる医療器具に物理的に接触する)とすることができる。理論に縛られることを望むものではないが、接触流体アプリケータは、医療器具に塗布されるコーティングのセグメントの開始点及び停止点での正確な制御、廃棄物(例えば、他の場合に塗り過ぎで損失し得る材料)の減少、及び/又は医療器具に堆積される材料(例えば、活性剤など)の総量の制御の点で有利であり得ると考えられる。他の実施形態では、流体アプリケータは、非接触流体アプリケータである。例示的な流体アプリケータの詳細は、以下に説明される。
【0038】
浸漬コーティング法とは対照的に、本明細書の実施形態は、器具が浸漬される容器に関連した死容積又は残留量が存在しないため、コーティング試薬の使用においてかなり効率的であり得る。それどころか、使用されるコーティング試薬の量は、医療器具に実際に堆積される量に近づけることができる。一部の実施形態では、コーティングプロセスで消費されるコーティング液の80%を超える量が、コーティングされる医療器具に堆積される。一部の実施形態では、コーティングプロセスで消費されるコーティング液の90%を超える量が、コーティングされる医療器具に堆積される。一部の実施形態では、コーティングプロセスで消費されるコーティング液の95%を超える量が、コーティングされる医療器具に堆積される。一部の実施形態では、コーティングプロセスで消費されるコーティング液の98%を超える量が、コーティングされる医療器具に堆積される。一部の実施形態では、コーティングプロセスで消費されるコーティング液の99%を超える量が、コーティングされる医療器具に堆積される。
【0039】
一部の実施形態では、コーティング液が医療器具の表面に塗布される速度は、コーティングされる部分の相対的なサイズに基づいて動的に変化し得る。一例として、所与の厚さにコーティングするために、必要なコーティング液の相対量は、コーティングされる器具の直径に基づいて変化し、直径が大きければ大きいほど、より多量のコーティング液を必要とすることを理解されたい。従って、様々な実施形態では、コーティング液が医療器具の表面に塗布される速度は、その時にコーティングされている部分の直径(又は他のサイズの測定)によって動的に変化し得る。一部の実施形態では、接触流体アプリケータを使用して、コーティングされる医療器具のサイズを検出することができ、この情報を制御装置が使用して、コーティング液の塗布の適切な速度(又はポンピング速度)を動的に計算することができる。
【0040】
コーティング装置600は、第1の回転機構(又はバルーンカテーテルを回転させる固定具)616及び第2の回転機構618(又はバルーンカテーテルを回転させる固定具)をさらに備えることができる。回転機構616、618は、バルーンカテーテル602をその長手方向(主)軸を中心(カテーテルの中心内腔を中心)に回転させるために、バルーンカテーテルに直接又は間接的に接続することができる。回転機構は、コーティング材料をカテーテルの中心内腔から離れる外側方向に引っ張る相当な遠心力を発生させるために高速で回転することができる。一部の実施形態では、バルーンカテーテルは、500〜2000回転/分の速度で回転することができる。一部の実施形態では、バルーンカテーテルは、600〜1500回転/分の速度で回転することができる。一部の実施形態では、バルーンカテーテルは、700〜1000回転/分の速度で回転することができる。一部の実施形態では、バルーンカテーテルは、500、600、700、800、900、又は1000回転/分を超える速度で回転することができる。
【0041】
多くの実施形態では、コーティングされる医療器具は、一端が回転して、他端が回転しない場合に医療器具が捻じれるように比較的柔軟であることを理解されたい。過度の捻じれは、医療器具に設けられたコーティングの質を低下させ得る。従って、一部の実施形態では、回転機構は、医療器具の捻じれを低減又は排除するように構成される。一部の実施形態では、回転機構は、電気モータを備えることができる。一部の実施形態では、これらのモータは、同じ速度で回転するように電気的に接続され、この同じ速度での回転は、コーティングされる医療器具の捻じれを防止することができる。一部の実施形態では、1つの電気モータしか使用されず、この電気モータからの駆動力が、両方の回転機構に伝達される。例えば、電気モータからの駆動力は、構成要素、例えば、歯車、駆動軸、及びベルトなどを介して回転機構に伝達することができる。
【0042】
一部の実施形態では、回転機構の一方又は両方は、選択的に作動させることができるクラッチ機構を備えることができる。例えば、クラッチ機構を使用して、回転機構の一方又は両方の回転力の供給源を、回転される医療器具に対して選択的に係合又は係合解除することができる。様々な実施形態では、このような構成を使用して、医療器具の回転を開始するためにクラッチをつなぐ前に、同期した速度で電気モータの回転を開始することができる。
【0043】
一部の実施形態では、カテーテルの中心内腔を通過するガイドワイヤを、カテーテルの遠位先端部から延ばすことができ、このガイドワイヤを、遠位先端部支持リング又はガイドに挿入することができる。この方式では、ガイドワイヤを使用して、コーティングされるバルーンカテーテルが自由に回転できる状態で、このバルーンカテーテルの遠位先端部を支持することができる。他の実施形態では、カテーテルの外面と回転機構との間の接続は、直接行うことができる。
【0044】
コーティング装置600は、一部の実施形態では、バルーンカテーテルをその長手方向の主軸の方向に移動させるように構成することができる軸方向移動機構をさらに備えることができる。一部の実施形態では、軸方向の移動は、実質的に水平とすることができる。他の実施形態では、軸方向の移動は、実質的に垂直とすることができる。一部の実施形態では、軸方向の移動は、バルーンカテーテルの長手方向軸の向きによって決まる、水平と垂直との間の任意の向きとすることができる。一部の実施形態では、軸方向移動機構は、線形アクチュエータとすることができる。一部の実施形態では、軸方向移動機構は、電気モータを備えることができる。
【0045】
コーティング装置600は、特に、コーティング塗布ユニット608、流体ポンプ612、回転機構616、回転機構618、及び/又はシステムの他の構成要素を含むコーティング装置600の動作を制御するように機能することができる制御装置624をさらに備えることができる。制御装置624は、様々な構成要素、例えば、プロセッサ、メモリ(例えば、RAM)、入出力チャネル、及び電源などを備えることができる。一部の実施形態では、制御装置624は、特にモータ制御装置を備えることができる。
【0046】
様々な実施形態では、コーティング塗布ユニットが移動することができ、他の実施形態では、回転機構が、コーティングされる医療器具と共に移動することができ、なお他の実施形態では、コーティング塗布ユニットと他の構成要素、例えば、回転機構との他の両方が全て、互いに対して移動することができることを理解されたい。
【0047】
様々な実施形態では、塗布されるコーティング液は、例えば、化学線によって活性化される成分を含むことができる。このような実施形態では、コーティング装置は、化学線源、例えば、UV光源をさらに備えることができる。
【0048】
ここで
図7を参照すると、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置700の概略側面図が示されている。この実施形態では、コーティング装置700は、化学線源732を備える。化学線源732は、UV光源を含み得る。コーティング装置700は、医療器具の長手方向軸の方向の回転機構616、618の移動を可能にする機構をさらに備えることができる。一例として、コーティング装置700は、回転機構及びこれらの回転機構が取り付けられたプラットフォーム738が下側の支持体736に対して移動するのを可能にするローラ734を備えることができる。
【0049】
流体アプリケータ
流体アプリケータは、本明細書の実施形態に従って様々な形態をとり得ることを理解されたい。一部の実施形態では、流体アプリケータは、高速の回転にもかかわらず、コーティングされる医療器具との接触を維持するように構成することができる。ここで
図8を参照すると、本明細書の様々な実施形態に従った流体アプリケータ800の正面図が示されている。流体アプリケータ800は、流体オリフィス810を備える。流体オリフィス810は、様々な領域に配置することができる。一部の実施形態では、流体オリフィス810は、流体アプリケータ800の横方向中心点808から離れた点に配置される。流体アプリケータ800は、上部804、底部806、及びこの上部804及び底部806に対して内側に切れ込みが入れられた中間部802を備えることができる。従って、上部804、底部806、及び中間部802は、U字溝を形成することができる。コーティングされる医療器具は、(全部又は一部が)U字溝内に適合することができる。U字溝は、一部の実施形態では、流体アプリケータ800の前面全体を覆うことができる。ここで
図9を参照すると、本明細書の様々な実施形態に従った流体アプリケータ800の側面図が示されている。この図では、U字溝が、流体アプリケータ800の側面を覆うことができることが分かるであろう。従って、U字溝は、横方向中心点808から離れる曲率半径に沿って延びることができる。この図では、例示的な医療器具812が流体アプリケータ800とどのように相互作用するかを例示するために、この医療器具812の外周が図に重ねられている。ここで
図10を参照すると、本明細書の様々な実施形態に従った流体アプリケータ800の上面図が示されている。理論に縛られることを望むものではないが、出願者は、
図8〜
図10に示されているタイプの流体アプリケータが、特に、コーティング塗布ユニットが医療器具に対して複数回通過するコーティングプロセスに関して有用であり得ること見出した。
【0050】
ここで
図11を参照すると、本明細書の別の実施形態に従った流体アプリケータ1000の概略図が示されている。流体アプリケータ1000は、端部が流体オリフィス1004である流体導管1002を備える。流体アプリケータ1000は、コネクタ1008及び接触バー1006を備えることもできる。接触バー1006は、流体アプリケータが、コーティング液を医療器具1012に塗布する位置に向けられたときに、コーティングされる医療器具1012に接触するように向いている。コネクタは、接触バー1006が流体導管1002に対して移動するときにばねの力を発揮することができる。この実施形態では、コネクタ1008は、流体導管1002に取り付けられて示されているが、コネクタ1008は、流体アプリケータ1000及び/又はコーティング装置の他の構成要素に取り付けることもできることを理解されたい。
【0051】
医療器具
本明細書の実施形態のコーティング装置は、医療器具の長さに沿ったコーティングの停止及び開始、並びに塗布されるコーティングの量に関して驚くほどの制御精度でのコーティング材料の医療器具への正確な塗布を可能にする。加えて、本明細書の実施形態が動作する高い毎分回転数により、通常なら不可能である特定の種類のコーティングを施すことが可能となる。ここで
図12を参照すると、本明細書の範囲に含まれる(膨張した構造の)医療器具1200の実施形態が示されている。医療器具1200は、シャフト1202及びバルーン1204を備える。コーティング材料1203は、バルーン1204の一側のシャフト1202に設けられているが、バルーン1204自体及びバルーンの他側には設けられていない。
【0052】
ここで
図13を参照すると、本明細書の範囲に含まれる(収縮した構造の)医療器具1300の実施形態が示されている。医療器具1300は、シャフト1302及びバルーン1304を備える。コーティング材料1303が、シャフト1302及びバルーン1304に設けられている。バルーン1304は、収縮した構造のときに長手方向のひだ又は畳み部1306を備える。
図14は、膨張した構造の同じ医療器具1300を示している。この図では、コーティングが、バルーン1304の殆どを覆っているが、バルーン1304の長手方向のひだ又は畳み部1306の領域は覆っていないことが分かるであろう。従って、コーティング層は、長手方向のひだの領域に開口を画定している。
【0053】
一部の実施形態では、少量のコーティング材料しか、ひだの領域に引き込まれない。一例として、ひだの領域のコーティング材料の(バルーンが膨張したときに測定される)量は、バルーンの完全にコーティングされた部分(例えば、長手方向のひだの外部の領域)と比較すると一定の表面積において10%未満である。一部の実施形態では、ひだの領域のコーティング材料の量は、バルーンの完全にコーティングされた部分と比較すると一定の表面積において5%未満である。一部の実施形態では、ひだの領域のコーティング材料の量は、バルーンの完全にコーティングされた部分と比較すると一定の表面積において2%未満である。一部の実施形態では、ひだの領域のコーティング材料の量は、バルーンの完全にコーティングされた部分と比較すると一定の表面積において1%未満である。
【0054】
ここで
図14を参照すると、本明細書の範囲に含まれる(膨張した状態の)医療器具1500の一実施形態が示されている。医療器具1500は、シャフト1502及びバルーン1504を備える。コーティング材料1503は、バルーン1504の一側のシャフト1502、バルーン1504の一端の第1の領域1506、バルーン1504の他端の第2の領域1510、及びバルーン1504の他側のシャフト1502に設けられている。コーティング材料1503は、バルーンの中間セグメント1508には設けられていない。
【0055】
これらの例は、バルーンカテーテルに関して説明されたが、様々なタイプの医療器具も、本明細書の実施形態に従ってコーティングすることができることを理解されたい。一例では、医療器具として、限定されるものではないが、カテーテル、ガイドワイヤ、リード、ステント、移植片、導管、その他の種類の回転可能な医療器具、又は医療器具の構成要素を挙げることができる。様々な実施形態では、本明細書の医療器具は、管状部分を備えた器具を含む。様々な実施形態では、本明細書の医療器具は、回転可能な医療器具を含む。
【0056】
本明細書で説明される実施形態を用いて回転させることができる他の医療器具は、カテーテルの遠位端部に塞栓用保護フィルタを備えた医療器具を含み得る。塞栓用保護フィルタは、カテーテルのガイドワイヤとは異なるコーティング(例えば、ヘパリン)でコーティングされるか、又はコーティングしないままにすることが望ましいであろう。これにより、医療器具は、特定の目的のために経済的にコーティングすることができるが、例えば、浸漬コーティングは、コーティングされないままにする部品の面倒なマスキングを行わずにはこの目的を達成することができない。
【0057】
本明細書で説明されるコーティング方法及び装置から恩恵を受けるなお他の医療器具は、医療器具の不可欠の側面として電極又はセンサ(例えば、グルコースセンサ、ペースメーカーリードなど)を有する医療器具である。コーティングは、センサ又は電極の感度を低下又は変化させて、疑似の不正確な測定結果を生むことがある。本明細書で説明される実施形態に従って施されるコーティングは、医療器具のセンサ又は電極の部位に不連続なコーティングを形成することができ、従って、コーティングが電極又はセンサの出力測定を妨害する問題を回避することができる。
【0058】
本開示を適用するコーティングの一部の実施形態を使用して、不連続なコーティングをカテーテルのガイドワイヤに塗布することができる。例えば、カテーテルをヒトの体内に配置するときに医師が「感覚」を維持できるように、ガイドワイヤの遠位先端部を好都合にコーティングしないままにすることができる。この「感覚」は、カテーテルの遠位先端部が、例えば、潤滑材料でコーティングされると変化する、又は完全に失われる。
【0059】
本明細書で説明されるコーティングの実施形態から恩恵を受け得る他の医療器具として、小さい開口又は孔を備えた医療器具(例えば、アテローム性動脈硬化組織の除去用のアテローム切除器具、例えば、Foxhollow Technologiesが販売するSILVERHAWK(商標)プラーク切除システム)が挙げられる。これらのタイプの医療器具が適切に機能するように、小さい開口又は孔は開いたままでなければならない。場合によっては、これらの医療器具に浸漬コーティングを使用すると、小さい開口を塞ぐことがあり、従って、医療器具の効率が低下する、又は医療器具の機能が無効になる。本明細書で説明される実施形態を用いて達成される不連続なコーティングは、コーティング材料での開口の閉塞を最小限にする、又はなくすことができる。
【0060】
方法
本明細書の実施形態は、医療器具にコーティングを施す方法を含む。一実施形態では、この方法は、医療器具を回転機構で回転させるステップを含み得る。一部の実施形態では、医療器具は、バルーンカテーテル、シャフト及びバルーンとすることができる。一部の実施形態では、医療器具は、500〜2000回転/分の速度で回転させることができる。一部の実施形態では、医療器具は、600〜1500回転/分の速度で回転させることができる。一部の実施形態では、医療器具は、700〜1000回転/分の速度で回転させることができる。一部の実施形態では、医療器具は、500、600、700、800、900、又は1000回転/分の速度で回転させることができる。
【0061】
一部の実施形態では、回転機構は、第1の回転機構及び第2の回転機構を含み得る。一部の実施形態では、この方法は、医療器具を第1の回転機構及び第2の回転機構を用いて固定するステップを含み得る。
【0062】
一部の実施形態では、この方法は、流体アプリケータを医療器具の長手方向軸に対して移動させるステップを含み得る。一部の実施形態では、この方法は、医療器具をその長手方向軸に沿って流体アプリケータに対して移動させるステップを含み得る。なお他の実施形態では、流体アプリケータ及び医療器具の両方を移動させることができる。
【0063】
一部の実施形態では、流体アプリケータを用いたコーティング液のバルーンの表面への塗布は、医療器具の表面と流体アプリケータとの直接接触によって達成される。他の実施形態では、器具の表面と流体アプリケータとの間に直接接触が存在しない。
【0064】
構造的特性に基づいて、特定のタイプの医療器具は、他の医療器具よりもコーティングが困難である。一例として、一部の医療器具は、たとえ長いシャフトを備えていても、器具の特性及び形状により、回転コーティングが容易でないこともある。例えば、ある程度の曲率を有し、真っすぐにすることができない器具は、一般に、器具の回転を必要とする装置ではコーティングすることができない。従って、これらの器具は、従来、浸漬コーティングのような技術でコーティングされている。しかしながら、浸漬コーティングには、少なくとも3つの欠点がある。第1に、浸漬コーティングは、工程に比較的時間がかかるため高価となる。第2に、浸漬コーティングは、浸漬するための材料の大きい容器又はバットを必要とするため、しばしば、器具が浸漬される容器内の残存量の形で廃棄される大量のコーティング材料が存在する。第3に、浸漬コーティングは、厚さのばらつき及びウェビングなどを含む様々なコーティングの不規則さを引き起こし得る。
【0065】
本明細書に開示される装置を使用して、通常なら浸漬コーティング又は器具回転コーティング技術でコーティングされ得る器具をコーティングすることができる。特に、本明細書のコーティング装置は、コーティングされる器具を実質的に回転しないように維持した状態で、コーティングされる器具の外径の周りを回ってコーティング材料を塗布する回転接触部材を備えることができる。この装置は、回転接触部材が、コーティングされる器具の周りを回ってコーティングを施すときに、コーティングされる器具の長手方向軸に沿って移動することができる(かつ/又はコーティングされる器具は、この装置に対して移動することができる)。この装置は、常に、コーティングされる器具の比較的短い長さしか装置内になく、従って、器具自体が回転される装置で器具がコーティングされる場合に通常は必要となり得るように、器具が、その全長に亘って実質的に直線である必要がないため、形状、例えば、曲率に関係なく器具をコーティングすることができる。
【0066】
図16は、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置1602の概略図である。コーティング装置1602は、回転接触部材1604、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材1612を備える。流体アプリケータ1606はオリフィス1608を備える。動作の際は、流体ポンプ1610が、コーティング液を流体アプリケータ1606を通過させてオリフィス1608から出し、コーティングされる医療器具1601の上に供給する。
図16は、駆動軸の後縁の近傍にコーティング材料を堆積させるように配置されたオリフィスを示しているが、オリフィスを他の位置に配置してコーティング材料を堆積させることもできることを理解されたい。また、一部の実施形態では、オリフィスは、医療器具の上側に位置するが、オリフィスは、横又は底部に配置しても良いことを理解されたい。回転接触部材1604は、螺旋型要素1614を備えることができる。コーティング装置1602は、取り付け構造1616を備えることができる。取り付け構造1616は、回転接触部材1604の回転を可能にする。取り付け構造1616は、軸受又はブシュなどを備えることができる。コーティング装置1602は、駆動軸1618をさらに備えることができる。一部の実施形態では、駆動軸1618は、回転接触部材1604の一部とすることができる。医療器具1601は、コーティング装置1602に対して矢印1603の方向に移動することができる。あるいは、コーティング装置1602は、医療器具1601に対して矢印1605の方向に移動することができる。一部の実施形態では、コーティング装置1602及び医療器具1601の両方が、互いに対して移動することができる。
【0067】
図17Aは、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の駆動軸及び回転接触部材の正面図である。回転接触部材1604は、螺旋型要素1614を備えることができる。回転接触部材1604は、通路1720を画定することができる。通路1720は、
図16に示されるように医療器具1601(不図示)を収容する大きさにすることができる。コーティング装置1602は、駆動軸1618を備えることができる。
【0068】
一部の実施形態では、回転接触部材は、複数の剛毛及び/又はブラシを備えることができる。
図17Bは、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の駆動軸及び回転接触部材の正面図である。回転接触部材1604は、剛毛1715を備えることができる。剛毛1715は、一部の実施形態では、回転接触部材1604の周囲に内側に向けて配置することができる。一部の実施形態では、剛毛1715は、駆動軸1618又は回転する同様の構造に接続することができる。回転接触部材1604は、通路1720を画定することができる。通路1720は、
図16に示されるように医療器具1601(不図示)を収容する大きさにすることができる。
【0069】
図18Aは、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の概略図である。コーティング装置1602は、回転接触部材1804、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材1612を備える。流体アプリケータ1606は、オリフィス1608を備える。コーティング装置1602は、取り付け構造1616を備えることができる。コーティング装置1602は、駆動軸1618を備えることができる。回転接触部材1804は、ブラシ1814又は同様のブラシ状構造を備えることができる。ブラシ1814は、回転接触部材1804が、コーティングされる医療器具1601に接触してその周りを回転するときに、このコーティングされる医療器具1601の表面に接触することができる。
【0070】
図18Bは、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の概略図である。コーティング装置1602は、回転接触部材1804、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材を備える。コーティング装置1602は、取り付け構造1616を備えることができる。コーティング装置1602は、駆動軸1618を備えることができる。回転接触部材1804は、剛毛1815又は同様の構造を備えることができる。剛毛1815は、回転接触部材1804が、コーティングされる医療器具1601に接触してその周りを回転するときに、このコーティングされる医療器具1601の表面に接触することができる。
【0071】
図19は、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の概略図である。コーティング装置1602は、モータ1922、回転接触部材1604、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材1612を備える。流体アプリケータ1606は、オリフィスを備える。コーティング装置1602は、取り付け構造を備えることができる。コーティング装置1602は、駆動輪1924を備えることができる。駆動輪1924は、コーティングされる医療器具1601に接触することができ、回転接触部材1604によってコーティングされる医療器具1601を押す又は引くように機能することができる。モータ1922は、駆動力を供給して回転接触部材1604及び/又は駆動輪(又は軸)1924を回転させることができる。一例として、モータ1922を使用して、駆動歯車1923を回転させて開口した中心歯車1925を駆動させ、これにより回転接触部材1604を回転させることができる。しかしながら、プーリ、ベルト、及び他のタイプの歯車を含め、駆動力をモータ1922から回転接触部材1604に伝達する様々な手段が存在することを理解されたい。モータ1922は、様々なタイプとすることができる。様々な実施形態では、モータ1922は、電気モータとすることができる。一部の実施形態では、モータを省くことができる。
【0072】
図20は、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の概略図である。コーティング装置1602は、回転接触部材2004、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材1612を備える。流体アプリケータ1606は、オリフィスを備える。コーティング装置1602は、取り付け構造1616を備えることができる。回転接触部材2004は、コーティングされる医療器具1601の外形よりも僅かに大きい内径を有することができる。
【0073】
図21は、本明細書の様々な実施形態に従った回転接触部材の概略断面図である。回転接触部材2004は、ハウジング2126を備えることができる。ハウジング2126は、中心内腔2128を画定することができる。中心内腔2128は、コーティングされる医療器具1601(不図示)の外径を収容するために十分に大きい直径を有することができる。一部の実施形態では、中心内腔2128の内径2127は、実質的に平滑とすることができる。他の実施形態では、中心内腔2128の内面は、表面特徴を備えることができる。一部の実施形態では、中心内腔2128の内面は、ナットの内径に類似したねじ山状突出部を備えることができる。
【0074】
一部の実施形態では、中心内腔は、回転接触部材の長さに亘って実質的に同じとすることができる。他の実施形態では、中心内腔の様々な部分は、異なるようにすることができる。ここで
図22を参照すると、回転接触部材2004は、ハウジング2126を備えることができる。ハウジング2126は、中心内腔2128を画定することができる。この実施形態では、中心内腔2128の直径は、回転接触部材2004の一側が他側よりも大きい。一部の実施形態では、中心内腔2128は、一側にテーパ2252又は漏斗形状を有することができる。
【0075】
一部の実施形態では、コーティング材料は、流体アプリケータによって塗布することができる。しかしながら、他の実施形態では、コーティング材料は、他の構造によって塗布することができる。ここで
図23を参照すると、回転接触部材2004は、ハウジング2126を備えることができる。ハウジングは、中心内腔2128を画定することができる。ハウジング2126は、流体ポート2330を備えることができる。流体ポート2330は、回転接触部材2004の中心内腔2128と外面2331との間の流体連通を実現することができる。コーティング組成物を、流体ポート2330の外部に供給することができ、次いで、コーティング組成物をコーティングされる器具に塗布することができる中心内腔2128に供給することができる。一部の実施形態では、複数の流体ポート2330を、回転接触部材2004に設けることができる。
【0076】
本明細書の実施形態に従ったコーティング装置は、様々な構造をとることができる。一部の実施形態では、コーティング装置は、ハンドヘルドとすることができる。ここで
図24を参照すると、コーティング装置1602は、回転接触部材1604、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材1612を備える。流体アプリケータ1606は、オリフィスを備える。コーティング装置1602は、取り付け構造1616を備えることができる。コーティング装置1602は、駆動輪1924、1924を備えることができる。コーティング装置1602は、駆動軸1618を備えることができる。コーティング装置1602は、ハンドル2432を備えることができる。ハンドル2432は、装置の動作を制御する制御要素、例えば、トリガ2433を備えることができる。
【0077】
一部の実施形態では、装置は、構造に取り付けることができ、コーティングされる器具の長手方向軸に沿って移動することができる。ここで
図25を参照すると、コーティング装置1602は、回転接触部材1604、流体アプリケータ1606、流体ポンプ1610、及びベース部材1612を備える。流体アプリケータ1606は、オリフィスを備えることができる。コーティング装置1602は、取り付け構造1616を備えることができる。駆動輪を備えるコーティング装置1602。コーティング装置1602は、駆動軸1618を備えることができる。コーティング装置1602は、線形アクチュエータ2534も備えることができる。線形アクチュエータは、コーティング装置を線形に移動させて、コーティングされる器具1601の長手方向軸に沿ったこのコーティング装置の移動を可能にするために駆動力を供給することができる。
【0078】
図26は、本明細書の様々な実施形態に従ったコーティング装置の概略図である。この実施形態では、コーティング装置1602は、6軸ロボットアーム2636を備える。ロボットアーム2636を使用して、コーティング装置1602が、コーティングされる医療器具2601の外形に従うように、コーティング装置を移動させることができる。
【0079】
回転接触部材は、様々な形状及び構造をとることができることを理解されたい。一部の実施形態では、回転接触部材は、螺旋形状を有することができる。例えば、回転接触部材は、螺旋型要素とすることができる。螺旋型要素は、可撓性材料を含み得る。螺旋型要素は、ポリマー及び金属などを含む様々な材料から形成することができる。一部の実施形態では、螺旋型要素は、形状記憶金属から形成される。螺旋型要素の螺旋は、少なくとも約2つの巻きを有することができる。一部の実施形態では、螺旋型要素は、その回転により、コーティング組成物が、回転接触部材が移動するときに、器具の長手方向軸に沿って同じ方向に、コーティングされる器具の表面に沿って運ばれるように配置される。言い換えれば、螺旋型要素を使用して、近づいてくる回転接触部材の外側前方にコーティング材料を押すと同時に、回転接触部材に向かって内側にコーティング材料を引っ張ることができる。しかしながら、他の実施形態では、螺旋型要素の向きは、コーティング材料を回転接触部材に向かって引っ張るように逆にすることができる。
【0080】
回転接触部材は、一部の実施形態では、ハウジングを備えることができる。ハウジングは、金属、ポリマー、複合材、及びセラミックなどを含む様々な材料から形成することができる。一部の実施形態では、ハウジングは、ポリテトラフルオロエチレンから形成することができる。ハウジングは、コーティングされる器具が適合する中心内腔を画定することができる。中心内腔は、一端に他端よりも大きい直径を有することができる。中心内腔は、一部の実施形態では、漏斗形状を形成することができる。漏斗形状は、ハウジングの一端に設けることができる。ハウジングは、一部の実施形態では、流体ポートを画定することもできる。ハウジングは、一部の実施形態では、円筒状とすることができる。
【0081】
回転接触部材は、約50〜400RPMの速度で回転することができる。回転接触部材は、約100〜200RPMの速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約50RPMを超える速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約75RPMを超える速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約100RPMを超える速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約125RPMを超える速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約400RPM未満の速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約350RPM未満の速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約275RPM未満の速度で回転することができる。一部の実施形態では、回転接触部材は、約200RPM未満の速度で回転することができる。
【0082】
回転接触部材及び/又は通路は、0.5mm〜20mmの直径を有する、コーティングされる器具を収容する大きさにすることができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約0.5mmを超える直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約1mmを超える直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約3mmを超える直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約15mm未満の直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約11mm未満の直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約8mm未満の直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約0mm〜約15mmの直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約1mm〜約11mmの直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。一部の実施形態では、回転接触部材及び/又は通路は、約3mm〜約8mmの直径を有する、コーティングされる器具を収容することができる。
【0083】
コーティング装置は、様々な実施形態(例えば、
図24に示されている実施形態では、駆動輪を備えることができる。駆動輪は、コーティングされる器具に接触することができ、かつコーティングされる器具を装置を介して押す又は引っ張る力を発生させることができる。一部の実施形態では、駆動輪は、回転接触部材によってコーティングされる器具を引っ張る。一部の実施形態では、駆動輪は、実質的に平滑にすることができる。一部の実施形態では、駆動輪は、表面テクスチャを有することができる。駆動輪は、様々な材料から形成することができる。一部の実施形態では、駆動輪は、シリコーン(PMDS)から形成することができる。
【0084】
装置は、駆動輪の動作又は別の駆動力源によって様々な速度で、コーティングされる器具の長手方向軸に沿って移動することができる。一部の実施形態では、装置は、0.1〜1.5cm/秒の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。
【0085】
一部の実施形態では、装置は、0.1cm/秒を超える速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約0.5cm/秒を超える速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約1.0cm/秒を超える速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約2cm/秒未満の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約1.5cm/秒未満の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約1cm/秒未満の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約0cm/秒〜約2cm/秒の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約0.1cm/秒〜約1.5cm/秒の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。一部の実施形態では、装置は、約0.5cm/秒〜約1cm/秒の速度で、コーティングされる器具をコーティングすることができる。
【0086】
一部の実施形態では、回転接触部材は、開いた構造及び閉じた構造をとることができる。一部の実施形態では、コーティングされる器具は、回転接触部材が開いた構造にあるときに、この回転接触部材に挿入する、又はこの回転接触部材から取り出すことができる。
【0087】
一部の実施形態では、コーティング装置は、駆動軸を備えることができる。駆動軸は、モータと回転接触部材との間で駆動力を伝達する。駆動軸は、中空とすることができる。一部の実施形態では、コーティングされる器具は、回転接触部材及び/又は駆動軸がこのコーティングされる器具の周りを回転するようにこの回転接触部材及び/又は駆動軸内に配置することができる。
【0088】
一実施形態では、本発明は、医療器具をコーティングする方法を含む。医療器具をコーティングする方法は、接触部材を非回転医療器具の外径の周りを回転させるステップを含み得る。この方法は、接触部材に近接した位置にある非回転医療器具の外径にコーティング液を塗布するステップをさらに含み得る。この方法は、接触部材が、非回転医療器具の長手方向軸に対して移動するように、接触部材及び非回転医療器具の少なくとも一方を他方に対して移動させるステップをさらに含み得る。
【0089】
一部の実施形態では、螺旋型接触部材の回転により、コーティング組成物が、回転接触部材が移動するときに、非回転医療器具の長手方向軸に沿って同じ方向に、非回転医療器具の表面に沿って移動する。一部の実施形態では、コーティング液を塗布するステップは、コーティング液を回転接触部材に供給するステップを含む。他の実施形態では、コーティング液を塗布するステップは、コーティング液を、コーティングされる器具に直接塗布するステップを含む。一部の実施形態では、非回転医療器具を接触部材に挿入する動作は、この接触部材を回転させるステップの前に行うことができる。
【0090】
医療器具
本明細書の実施形態のコーティング装置は、医療器具の長さに沿ったコーティングの停止及び開始、塗布されるコーティングの均一性、並びに塗布されるコーティングの量に関して驚くほどの制御精度でのコーティング材料の医療器具への正確な塗布を可能にする。
【0091】
様々なタイプの医療器具を、本明細書で説明される装置でコーティングすることができる。一例として、本明細書で説明される実施形態に従ってコーティングされる医療器具には、実際には回転コーティング又は浸漬コーティングを施すことができない程度の曲率及び/又は剛性を有する器具が含まれ得る。特定の実施形態では、器具は、湾曲したシャフトを有する器具とすることができる。一部の実施形態では、器具は、中心内腔が存在しない器具とすることができる。
【0092】
一部の実施形態では、本装置及びコーティング法を使用して、経大動脈弁インプラント(TAVI;SAPEIN経カテーテル心臓弁;Edwards Lifesciences Corporation, Irvine, Californiaから入手可能)用のカテーテルをコーティングすることができる。TAVI器具及び処置は、患者が重度の大動脈弁狭窄を有するが、外科手術に適していない場合に使用することができる。TAVIカテーテルは、典型的には、真っすぐではなく3次元の曲がり又は湾曲を有する。このカテーテルは、医師が弁を狭窄部位に正確に配置しやすいように湾曲している。TAVIカテーテルの狭窄部位への送達時の潤滑性を改善するためにTAVIカテーテルに親水性コーティングを施す必要がある。
【0093】
以前は、従来の方法、例えば、浸漬コーティング又は吹き付けコーティングを用いたこれらの非線形の大きく湾曲したカテーテルのコーティングは、一定ではなく塗布されたコーティング、又は医療器具の表面に塗布されるコーティング材料と比較して過度の量の廃棄コーティング材料を必要とするコーティングとなる。本明細書に開示される装置及び方法は、正確な表面コーティングの達成に医療器具の空間的構造に大きくは依存しないため、本開示の装置及び方法を使用して、曲がり及び湾曲を有するTAVI器具の表面に正確にコーティングを施すことができる。
【0094】
なお他の実施形態では、コーティングされる医療器具は、バルーンカテーテルとすることができる。バルーンカテーテルは、収縮した状態で、本明細書で説明される装置でコーティングすることができる。あるいは、バルーンカテーテルは、部分的に又は完全に膨張した状態で、本明細書で説明される装置でコーティングすることができる。一実施形態では、バルーンカテーテルは、生理活性物質、例えば、化学除去物質(chemical ablative)(例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル)でコーティングして、高血圧の腎動脈除神経治療に使用することができる。
【0095】
コーティング液
本明細書の実施形態に関連して使用されるコーティング液は、限定されるものではないが、1つ以上の活性剤、担体剤、溶媒(水性及び/又は非水性)、ポリマー(分解性又は非分解性ポリマーを含む)、モノマー、マクロマー、賦形剤、光反応化合物、及び架橋剤を含む様々な成分を含み得ることを理解されたい。コーティング液の成分の相対量は、様々な因子によって決まる。
【0096】
コーティング液は、コーティング液が塗布される医療器具に様々な機能特性を付与するように配合することができる。一例として、コーティング液は、潤滑性;抗感染性、治療性、及び耐久性などを付与するように配合することができる。
【0097】
本明細書の実施形態に関連して使用されるコーティング液の粘度は様々にすることができる。一部の実施形態では、コーティング液は、比較的粘性である。一例として、一部の実施形態では、コーティング液は、50、100、300、500、1000、5000、又は10,000センチポアズ以上の粘度を有し得る。一部の実施形態では、コーティング液は、約50〜5000センチポアズの粘度を有し得る。
【0098】
他の実施形態では、コーティング液は、比較的低い粘度を有する。一例として、一部の実施形態では、コーティング液は、約100、50、40、30、20、又は10センチポアズ未満の粘度を有し得る。一部の実施形態では、コーティング液は、約1〜100センチポアズ、又は1〜50センチポアズの粘度を有し得る。
【0099】
一部の実施形態では、コーティング液は、比較的低い固形分を有し得る。一例として、一部の実施形態では、本明細書の実施形態に関連して使用されるコーティング液は、約10mg/ml未満の固形分を有し得る。一部の実施形態では、本明細書の実施形態に関連して使用されるコーティング液は、約5mg/ml未満の固形分を有し得る。一部の実施形態では、本明細書の実施形態に関連して使用されるコーティング液は、約2mg/ml未満の固形分を有し得る。
【0100】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、特段の記載がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、「1つの化合物(a compound)」を含む組成物について述べた場合、2つ以上の化合物の混合物を含む。また、一般に使用される「又は(or)」という語は、特段の記載がない限り、「及び/又は(and/or)」を含め、広い意味で使用されることに留意されたい。
【0101】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される句「構成された(configured)」は、特定の作業を行う、又は特定の構成を採用するように形成又は構成されたシステム、装置、又は他の構造を表すことにも留意されたい。この句「構成された」は、他の同様の句、例えば、配置され構成された、形成され配置された、形成された、製造された、及び配置されたと互換的に使用することができる。
【0102】
本明細書の全ての刊行物及び特許出願は、本発明の属する分野の一般的な技術者のレベルを示唆する。全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的かつ個別に示されたのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0103】
様々な特定の好ましい実施形態及び技術を参照して本発明を説明してきたが、様々な変形及び変更が、本発明の概念及び範囲内で可能であることを理解されたい。