特許第6688612号(P6688612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688612
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】杭構造及び杭の組立方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   E02D5/34 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-4349(P2016-4349)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-120005(P2017-120005A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-251424(P2015-251424)
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】391039829
【氏名又は名称】東洋テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】尾本 聡
(72)【発明者】
【氏名】長谷 理
(72)【発明者】
【氏名】濱川 亮太
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−140558(JP,A)
【文献】 特開2005−282043(JP,A)
【文献】 特開平07−113260(JP,A)
【文献】 特開平07−090928(JP,A)
【文献】 特開2002−356845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜 5/80
E02D 5/00〜 5/20
E04G 21/12〜 21/22
E04C 5/00〜 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔内に挿入された鉄筋カゴと、
前記鉄筋カゴの内側に接合されたリング部材と、
前記鉄筋カゴの中心部に配置される鉄骨柱と、
前記リング部材と前記鉄骨柱とに接合されて、前記鉄筋カゴと前記鉄骨柱とを固定する固定部材と、
を備え、前記固定部材は複数の部材をボルト固定して形成されている、杭構造。
【請求項2】
凹状円弧面に周方向へ間隔をおいて第1主筋を係止する第1係止部が形成された下架台を地組ヤードに間隔をおいて並べる工程と、
複数の前記下架台の前記第1係止部に前記第1主筋を架け渡す工程と、
間隔を置いて配置されたリング部材の中心部に通され、固定部材で前記リング部材と接合された鉄骨柱を前記第1主筋の上に配置し、前記リング部材と前記第1主筋を接合する工程と、
凸状円弧面に周方向へ間隔をおいて第2主筋を係止する第2係止部が形成された上架台を前記下架台に取付ける工程と、
複数の前記上架台の前記第2係止部に前記第2主筋を架け渡す工程と、
前記第2主筋と前記リング部材とを接合する工程と、
前記第1主筋及び前記第2主筋を取り囲むようにフープ筋を巻回して、前記第1主筋及び前記第2主筋と前記フープ筋とを接合して鉄筋カゴを形成する工程と、
を備えた杭の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭構造及び杭の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、板状支持部材の略円弧状の凹部に形成された掛合溝に主筋を掛合し、この主筋とフープ筋とを結合して鉄筋カゴを形成する、鉄筋カゴの組立方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−281113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に開示された鉄筋カゴで構成される杭に構真柱などの鉄骨柱を挿入する場合、まず鉄筋カゴを削孔内に挿入し、次に鉄骨柱を鉄筋カゴの中心部に挿入する工程を踏まなければならない。しかし、鉄骨柱を鉄筋カゴへ挿入するとき、鉄骨柱を精度よく位置決めするのが難しい。また、鉄筋カゴと鉄骨柱とをそれぞれ削孔内へ吊り込むので、杭工事の工程に影響を及ぼす。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、鉄骨柱と鉄筋カゴとを精度よく位置決めすると共に、吊り込みの工程を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る杭構造は、削孔内に挿入された鉄筋カゴと、前記鉄筋カゴの内側に接合されたリング部材と、前記鉄筋カゴの中心部に配置される鉄骨柱と、前記リング部材と前記鉄骨柱とに接合されて、前記鉄筋カゴと前記鉄骨柱とを固定する固定部材と、を備え、前記固定部材は複数の部材をボルト固定して形成されている
【0007】
請求項1に記載の杭構造では、鉄筋カゴの中心部に配置した鉄骨柱を、固定部材を介して鉄筋カゴに固定するので、地上で鉄骨柱と鉄筋カゴとを精度よく位置決めできる。
また、鉄筋カゴと鉄骨柱とをそれぞれ吊り込む従来技術と比較すると、1回の吊り込みで削孔内へ鉄筋カゴと鉄骨柱とを同時に挿入できるため、工期を短縮することができる。
【0008】
また、請求項1に係る杭構造は、前記鉄筋カゴの内側に接合されたリング部材を備え、前記固定部材は、前記鉄骨柱と前記リング部材とに接合されている。
【0009】
請求項1に記載の杭構造では、リング部材によって、鉄筋カゴの主筋が精度よく円周上に配設される。また、鉄骨柱は固定部材を介してリング部材と接合されるため、鉄骨柱と鉄筋カゴの主筋とが位置ずれしにくい。
また、請求項1に係る杭構造は、前記固定部材は複数の部材をボルト固定して形成されている。
【0010】
請求項2に係る杭の組立方法は、凹状円弧面に周方向へ間隔をおいて第1主筋を係止する第1係止部が形成された下架台を地組ヤードに間隔をおいて並べる工程と、複数の前記下架台の前記第1係止部に前記第1主筋を架け渡す工程と、間隔を置いて配置されたリング部材の中心部に通され、固定部材で前記リング部材と接合された鉄骨柱を前記第1主筋の上に配置し、前記リング部材と前記第1主筋を接合する工程と、凸状円弧面に周方向へ間隔をおいて第2主筋を係止する第2係止部が形成された上架台を前記下架台に取付ける工程と、複数の前記上架台の前記第2係止部に前記第2主筋を架け渡す工程と、前記第2主筋と前記リング部材とを接合する工程と、前記第1主筋及び前記第2主筋を取り囲むようにフープ筋を巻回して、前記第1主筋及び前記第2主筋と前記フープ筋とを接合して鉄筋カゴを形成する工程と、を備えている。
【0011】
請求項2に係る杭の組立方法では、鉄骨柱を、固定部材を介してリング部材と接合し、このリング部材を、鉄筋カゴを形成する第1主筋及び第2主筋に接合するので、地上で鉄骨柱と鉄筋カゴとを精度よく位置決めできる。また、鉄筋カゴと鉄骨柱とをそれぞれ吊り込む従来技術と比較すると、1回の吊り込みで削孔内へ鉄筋カゴと鉄骨柱とを同時に挿入できるため、工期を短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の杭構造及び杭の組立方法は、鉄骨柱と鉄筋カゴとを精度よく位置決めすると共に、吊り込みの工程を短縮することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットと上杭ユニットが削孔に建て込まれた状態を示した立断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットを鉄骨柱の軸方向から見た断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットの鉄骨柱とリング部材との接合構造を示す部分断面図であり、(A)は鉄骨柱の軸方向から見た断面を示し、(B)は鉄骨柱の軸方向と直交する方向から見た断面を示す。
図4】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットの組立方法を示す断面図であり、(A)は下架台及び上架台と下杭ユニットとの関係を示し、(B)は鉄筋カゴの本体部とリング部材との関係を示している。
図5】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットの組立方法を示す側面図であり、(A)は下架台に主筋を架け渡した状態を示し、(B)は鉄骨柱をクレーンで吊下した状態を示し、(C)は鉄骨柱をジャッキに載置した状態を示している。
図6】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットの組立方法を示す側面図であり、(A)は下架台の上に上架台を載置し、上架台に主筋を架け渡した状態を示し、(B)は主筋にフープ筋を接合し鉄筋カゴが組みあがった状態を示している。
図7】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットが接合される上杭ユニットの組立方法を示す立断面図であり、(A)は2つの削孔の上部にそれぞれ櫓を組み、一方の削孔に鉄骨柱を建て込んで保持し、他方の削孔に杭頭鋼管及び鉄筋カゴをクレーンで吊下した状態を示し、(B)は一方の削孔から他方の削孔へ鉄骨柱を移動して、鉄骨柱、杭頭鋼管及び鉄筋カゴを組み合わせた状態を示している。
図8】本発明の実施形態に係る杭構造が適用された下杭ユニットと上杭ユニットを接合して杭ユニットを組立てる方法を示す立断面図であり、(A)は削孔に下杭ユニットを挿入して架台に固定した状態を示し、(B)は下杭ユニットの鉄骨柱に上杭ユニットの鉄骨柱を接合した状態を示し、(C)は下杭ユニットの鉄筋カゴに上杭ユニットの鉄筋カゴを接合した状態を示し、(D)は上杭ユニットと下杭ユニットを接合して形成された杭ユニットを削孔の所定位置まで挿入した状態を示している。
図9】本発明の実施形態の杭構造の変形例に係る下杭ユニットの鉄骨柱と主筋との接合構造を示す部分断面図であり、(A)は鉄骨柱の軸方向から見た断面を示し、(B)は鉄骨柱の軸方向に直交する方向から見た断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る杭構造が適用される杭ユニット10について説明する。
【0015】
[杭ユニット]
図1に示すように、杭ユニット10は、上杭ユニット10Aと下杭ユニット10Bとを接合して構成される。上杭ユニット10Aは杭頭鋼管20、鉄筋カゴ30A、鉄骨柱40Aを備え、下杭ユニット10Bは鉄筋カゴ30B、鉄骨柱40Bを備えている。また、鉄筋カゴ30Aと鉄筋カゴ30Bとを接合して杭ユニット10の鉄筋カゴ30が形成され、
鉄骨柱40Aと鉄骨柱40Bとを接合して杭ユニット10の鉄骨柱40が形成されている。この杭ユニット10が地盤100の削孔102に挿入され、トレミー管を通じてコンクリートが打設されて、杭12が形成される。なお、図1ではコンクリートの図示は省略されている。
【0016】
また、下部の鉄骨柱40Bは削孔102の孔底まで挿入され、杭頭まで地盤を掘削すると上部の鉄骨柱40Aが露出して、上部に構築される建物の本設柱として利用することができる。すなわち、鉄骨柱40Aと鉄骨柱40Bとで構成された鉄骨柱40は、杭12の杭底まで根入れされた構真柱とされている。
【0017】
図2には、下杭ユニット10Bの断面図が示されている。下杭ユニット10Bは、鉄筋カゴ30Bと、鉄筋カゴ30Bの中心部に配置される鉄骨柱40Bと、鉄筋カゴ30Bと鉄骨柱40Bとを固定する固定部材60と、を備えている。
【0018】
(鉄筋カゴ)
鉄筋カゴ30Bは、主筋32B及びフープ筋34Bを備えた本体部36Bと、本体部36Bを内側から補強するリング部材70と、を備えている。なお、主筋32Bとフープ筋34Bは図示しない結束線で固定され、主筋32Bとリング部材70は溶接固定されている。
【0019】
(リング部材)
図3(A)、(B)に示すように、リング部材70は、円環状に形成されたフラットバー72と、フラットバー72の内側に溶接された丸鋼74で構成されている。また、フラットバー72には、フラットバー72から径方向内側に向かってプレート76が突設されている。プレート76には切欠き76Aが形成され、丸鋼74が通されている。プレート76は、フラットバー72及び丸鋼74に溶接されている。また、プレート76にはルーズホールとされたボルト孔76Bが形成されている。
【0020】
(鉄骨柱)
図2に示すように、鉄骨柱40BはH形鋼とされ、固定部材60を介してリング部材70に固定されている。また、鉄骨柱40Bは鉄筋カゴ30Bの中心に通されており、図1に示すように、削孔102の孔底まで挿入されている。なお、鉄筋カゴ30Bの中心とは、鉄筋カゴ30Bの中央部分のことを示しており、必ずしも鉄筋カゴ30Bの軸心と、鉄骨柱40Bの軸心が一致する必要はない。また、本実施形態において鉄骨柱40A、鉄骨柱40Bはそれぞれ単一のH形鋼とされているが、二本のH形鋼を組み合わせてウェブを十字状に構成した柱としてもよい。
【0021】
(固定部材)
図3に示すように、固定部材60は、鉄骨柱40Bのフランジに溶接された内側部材62と、内側部材62の外側にボルト固定された外側部材64と、外側部材64に溶接されたアングル66と、アングル66にボルト固定されたアングル68と、を備えている。
【0022】
内側部材62は、H形鋼で構成され、ウェブ及びフランジの一方の端面に溶接された接合プレート62Bを備えており、外側部材64も同様にH形鋼で形成され、ウェブ及びフランジの一方の端面に溶接された接合プレート64Bを備えている。この接合プレート62B、64Bが互いにボルト固定され、内側部材62と外側部材64とが一体化されている。
【0023】
外側部材64のウェブにはアングル66の一辺が溶接されており、アングル66の他辺には、ルーズホールとされたボルト孔66Aが形成されている。
【0024】
アングル66にはアングル68がボルト71で固定され、アングル68には、リング部材70のプレート76がボルト73で固定されている。なお、アングル68のボルト孔68A、68Bはルーズホールとされており、鉄骨柱40Bとリング部材70との取付け位置を調整できるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態においては、固定部材60は内側部材62と外側部材64に分割することができる。このため、鉄筋カゴの径が小さい場合は、外側部材64を取り外し、内側部材62の接合プレート62Bにボルト孔を形成して、アングル68にボルトで固定すればよい。
【0026】
[杭の組立方法]
次に、杭ユニット10の組立方法を説明する。
【0027】
(下杭ユニット)
まず、下杭ユニット10Bを寝かせた状態で組み立てるが、そのために用いる治具の構成について説明する。下杭ユニット10Bを組み立てるためには、図4(A)に示す、下架台110、上架台120、ジャッキ130を用いる。
【0028】
下架台110は、地組ヤードGに載置される一対の脚部112と、脚部112の上端部から脚部112が対向する方向に張出して、上架台120が載置される台座部116と、台座部116の下面に接合された円弧状鉄筋114と、を備えている。円弧状鉄筋114の凹状円弧面114Aには、周方向に等間隔に係止鉄筋118が立設され、主筋32Bが係止可能とされている。なお、凹状円弧面114Aの曲率半径は、フープ筋34Bの内径と略同一とされている。また、円弧状鉄筋114と係止鉄筋118とは、異形鉄筋で形成され、互いに溶接されている。
【0029】
上架台120は、下架台110の台座部116に載置される載置部122と、載置部122の上面に接合された円弧状鉄筋124と、を備えている。円弧状鉄筋124の凸状円弧面124Aには、周方向に等間隔に係止鉄筋128が立設され、主筋32Bが係止可能とされている。なお、凸状円弧面124Aの曲率半径は、図4(B)に示すリング部材70の外径と略同一とされている。また、下架台110の台座部116に上架台120の載置部122を載置したとき、凸状円弧面124Aの曲率半径に主筋32Bの直径を加えた寸法が、凹状円弧面114Aの曲率半径と略同一となる。また、円弧状鉄筋124と係止鉄筋128とは、異形鉄筋で形成され、互いに溶接されている。
【0030】
下架台110の間にはジャッキ130が設置してある。ジャッキ130は、鉄骨柱40Bを支える仮支持部材であり、鉄骨柱40Bを載置した状態で、ジャッキアップ及びジャッキダウンして、鉄筋カゴ30Bに対して鉄骨柱40Bを位置決めする。
【0031】
次に、下杭ユニット10Bの組み立て方法について説明する。まず、図5(A)に示すように、地組ヤードGに間隔をおいて下架台110を並べる。そして、下架台110の係止鉄筋118(図4(A)参照)に主筋32Bを架け渡す。このとき、主筋32Bの端部を揃えるために、下架台110に隣接して当て板140を設置する。
【0032】
次に、図5(B)に示すように、固定部材60によってリング部材70が接合された鉄骨柱40Bをクレーンで吊下して、図5(C)に示すように、鉄骨柱40Bをジャッキ130の上に載置する。このとき、クレーンで吊下しながら鉄骨柱40Bを主筋32Bの中央に配置されるように位置調整を行い、鉄骨柱40Bの荷重をクレーンからジャッキ130に盛りかえる。その後、ジャッキダウンしてリング部材70と主筋32Bとを当接させて、溶接固定する。
【0033】
なお、本実施形態においては、リング部材70は鉄骨柱40Bをクレーンで吊下する前に、予め工場などで鉄骨柱40Bに接合されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、鉄骨柱40Bをクレーンで吊下する前に、リング部材70を鉄骨柱40Bに接合せずに通しておき、鉄骨柱40Bをジャッキ130に載せた後で、リング部材70を鉄骨柱40Bに接合してもよい。
【0034】
次に、図6(A)に示すように、下架台110の上部に上架台120を載置し、さらに、上架台120の係止鉄筋128(図4(A)参照)に、主筋32Bを架け渡す。その後、リング部材70と、係止鉄筋128に架け渡された主筋32Bとを、溶接固定する。
【0035】
次に、図6(B)に示すように、係止鉄筋118、128に架け渡された主筋32Bを取り囲むようにフープ筋34Bを巻回し、主筋32Bとフープ筋34Bとを、図示しない結束線で固定する。
【0036】
以上の工程により、主筋32B及びフープ筋34Bが接合された本体部36Bとリング部材70とが接合された鉄筋カゴ30Bが形成される。また、鉄筋カゴ30Bと鉄骨柱40Bとが、固定部材60を介して接合された下杭ユニット10Bが組み立てられる。
【0037】
なお、下杭ユニット10Bを建て起こす際には、下架台110及び上架台120を変形させて鉄筋カゴ30Bから取り外す。下架台110の円弧状鉄筋114、上架台120の円弧状鉄筋124は、それぞれ異形鉄筋で形成されているので、容易に弾性変形させて取り外すことができる。
【0038】
(上杭ユニット)
次に、上杭ユニット10Aの組立方法について説明する。まず、図7(A)に示すように、削孔104の上部に櫓104Aを組み、鉄骨柱40Aをクレーンで吊下した状態で櫓104Aの内部に設置する。そして、図示しない傾斜計を鉄骨柱40Aに取付け、鉄骨柱40Aが鉛直方向に直立するように建入れを調整する。このとき、傾斜計は鉄骨柱40Aが鉛直方向に直立した状態で目盛が0になるように調整しておく。櫓104Aを用いることで、櫓104Aを用いない場合と比較して、建入れの調整作業の精度を向上させることができる。
【0039】
一方で、地盤100に形成された削孔106の上部に櫓106Aを組み、クレーンを用いて櫓106Aに設置した杭頭鋼管20と鉄筋カゴ30Aとを溶接固定する。互いに溶接固定された杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aは、櫓106Aに取付けられたチェーンブロックで保持させる。これにより、杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aをクレーンで揚重し続ける必要がないので、省スペースとなる。
【0040】
次に、図7(B)に示すように、鉄骨柱40Aを櫓106Aへ移動させ、クレーンで吊下げられたまま、杭頭鋼管20と鉄筋カゴ30Aに挿入された状態とする。
以上の工程により、上杭ユニット10Aが組み立てられる。なお、この状態で鉄骨柱40Aは杭頭鋼管20と鉄筋カゴ30Aの何れにも接合されておらず、鉄骨柱40Aはクレーンで吊下され、杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aは櫓106Aに取付けられたチェーンブロックで保持されている。
【0041】
(杭ユニット)
次に、上杭ユニット10Aと下杭ユニット10Bを接合して、杭ユニット10及び杭12を組み立てる方法について説明する。
【0042】
杭ユニット10を組み立てるには、先ず、図6(B)で組み立てられた下杭ユニット10Bを建て起し、図8(A)に示すように、地盤100に形成された杭12用の削孔102に挿入する。このとき、鉄骨柱40Bの頂部に仮受け部材42を接合し、仮受け部材42を地盤100に載置された架台43に架け渡して、鉄骨柱40Bの頂部が削孔102から突き出た状態で、下杭ユニット10Bを保持する。
【0043】
次に、図7(B)で組み立てられた上杭ユニット10Aを、図8(B)に示すように、下杭ユニット10Bの上部に載置し、上杭ユニット10Aの鉄骨柱40Aと、下杭ユニット10Bの鉄骨柱40Bと、を接合する。これにより、長尺の鉄骨柱40が形成される。下杭ユニット10Bの荷重は、上杭ユニット10Aの鉄骨柱40Aを吊下するクレーンによって支持することができるので、鉄骨柱40Bの頂部の仮受け部材42を取り外す。
【0044】
なお、上杭ユニット10Aを図7(B)に示した櫓106Aから移動する際には、鉄骨柱40Aをクレーンの主フックに吊下げ、鉄骨柱40Aが挿入された状態の杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aを同じクレーンの補助フックに吊下げて移動する。補助フックは主フックから独立して巻き上げ可能とされており、鉄筋カゴ30Aは鉄骨柱40Aに対して相対移動可能となっている。
【0045】
なお、鉄骨柱40A、杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aの吊下げ方法はこれに限らず、例えばトラバーサーを用いた吊下げ方法としてもよい。トラバーサーは複数の吊元フックが設けられたレール状部材であり、クレーンの主フックから吊下げられる。さらに、鉄骨柱40A、電動ウィンチを、それぞれトラバーサーの吊元フックから吊下げる。また、電動ウィンチには、杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aを吊り下げる。電動ウィンチは主フックから独立して巻き上げ可能であるので、このような構成によっても、鉄筋カゴ30Aは鉄骨柱40Aに対して相対移動可能となる。あるいは、鉄骨柱40Aと、杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30とを、それぞれ別のクレーンを用いて吊下げても、同様に鉄筋カゴ30Aは鉄骨柱40Aに対して相対移動可能となる。
【0046】
次に、図8(C)に示すように、鉄骨柱40Aと一体化された下杭ユニット10Bをクレーンで持ち上げて、下杭ユニット10Bの鉄筋カゴ30Bを削孔102から露出させる。そこで、鉄筋カゴ30Bを削孔102から露出させた状態で鉄骨柱40Aを保持し、上杭ユニット10Aの鉄筋カゴ30Aを降ろして、鉄筋カゴ30Bと接合する。これにより、鉄筋カゴ30が形成される。
【0047】
なお、図7(A)、(B)、図8(B)〜(D)に示したクレーンのフックやワイヤーは、鉄骨柱40A、杭頭鋼管20及び鉄筋カゴ30Aが吊下げ支持されているときの状態を模式的に示しているが、フックの形状、ワイヤーの長さなどは図に示された実施形態に限定されるものではない。
【0048】
以上の工程により、上杭ユニット10Aと下杭ユニット10Bとが接合され、杭ユニット10が組み立てられる。
【0049】
なお、鉄筋カゴ30Aと鉄筋カゴ30Bとの接合後、杭ユニット10は、図8(D)に示すように削孔102に挿入され、さらに削孔102に挿入された図示しないトレミー管から削孔102にコンクリートが送られ、削孔102内がコンクリートで満たされて、鉄筋鉄骨コンクリート製の杭12が形成される。
【0050】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0051】
本実施形態における杭ユニット10の下杭ユニット10Bにおいては、図3(A)に示すように、固定部材60とリング部材70とは、アングル68によって接合される。アングル68にはボルト孔68A、68Bが形成されており、このボルト孔68A、68Bにそれぞれボルトを貫通させて、外側部材64のウェブに溶接されたアングル66、リング部材70に溶接されたプレート76と固定する。
【0052】
これにより、鉄骨柱40Bとリング部材70の相対的な位置関係を調整することができる。具体的には、図3(A)に矢印Wで示した水平方向の位置調整、矢印Hで示した鉛直方向の位置調整及び図3(B)に矢印Lで示した鉄骨柱40Bの軸方向の位置調整が可能である。なお、矢印W、Hは共に、鉄骨柱40Bとリング部材70を削孔102に配置した状態での水平方向と一致する。
【0053】
なお、本実施形態においては、位置調整手段としてルーズホールとされたボルト孔68A、68Bを用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、ルーズホールに代えて長孔としてもよい。また、アングル66、プレート76にもそれぞれルーズホールとされたボルト孔66A、76Bが形成されているので、ボルト孔68A、68Bは、ボルトが通る程度の孔径としてもよい。
【0054】
また、本実施形態における下杭ユニット10Bの組立方法においては、下架台110、上架台120にそれぞれ備えられた係止鉄筋118、128によって主筋32Bを位置決めできる。このため、主筋32Bを正確なピッチで配設することができる。
【0055】
このように、本実施形態における下杭ユニット10Bの組立方法においては、地組ヤードGに鉄骨柱40Bを寝かせた状態で、鉄骨柱40Bとリング部材70の位置調整、リング部材70と主筋32Bの位置決めが可能である。このため、例えば削孔102内に鉄骨柱40Bを立てた状態で鉄骨柱と鉄筋カゴとを位置調整する場合と比較して、作業しやすく精度も高い。
【0056】
また、本実施形態における下杭ユニット10Bの組立方法においては、リング部材70が主筋32Bの内側に溶接される。このため、主筋32Bが杭の径方向内側へ移動することが抑制され、鉄筋カゴ30が変形しにくい。
【0057】
また、本実施形態における杭12には、構真柱としての鉄骨柱40が、削孔102の孔底まで根入れされている。このため、鉄骨柱40の引抜抵抗力が高い。また、鉄筋カゴ30の上部に杭頭鋼管20が接合されているので、杭頭剛性が高い。なお、必要な杭頭剛性に応じて杭頭鋼管20に代えて、鉄筋カゴ30Aを杭頭鋼管20の上端部まで延長する構成とすることもできる。
【0058】
[変形例]
次に、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態においては、杭ユニット10として、上杭ユニット10Aと下杭ユニット10Bを接合する構成としたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば必要な杭長が短い場合は、下杭ユニット10Bだけで杭を構成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、鉄骨柱40Bは削孔102の孔底まで挿入されているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、削孔102の中央部分や、上端部分まで挿入されるものとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、鉄筋カゴ30Bは、主筋32B及びフープ筋34Bを備えた本体部36Bと本体部36Bを内側から補強するリング部材70と、を備え、さらに、リング部材70は円環状に形成されたフラットバー72の内側に丸鋼74が溶接されて構成されているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばリング部材は、フラットバー72又は丸鋼74の何れか一方を用いる構成としてもよい。このようにすればリング部材の製造が容易である。或いは、リング部材70を備えない構成としてもよい。この場合、図9(A)、(B)に示すように、まず主筋32Bを下架台110の係止鉄筋118(図4(A)参照)に係止させて位置決めし、プレート76を主筋32Bに溶接固定することにより、プレート76が位置決めされる。このプレート76に対して、上記実施形態と同様に鉄骨柱40Bの位置を調整することで、鉄骨柱40Bと鉄筋カゴ30Bの位置決めができる。また、プレート76が位置決めされた際には、プレート76からアングル等の適宜なピース部材を介在させて、直接、外側部材64に溶接し固定してもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、リング部材70と主筋32Bとは溶接固定されるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らず、例えば結束線を用いて固定してもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態の例について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0063】
30B 鉄筋カゴ
32B 主筋(第1主筋、第2主筋)
34B フープ筋
40B 鉄骨柱
60 固定部材
70 リング部材
110 下架台
114A 凹状円弧面
118 係止鉄筋(第1係止部)
120 上架台
124A 凸状円弧面
128 係止鉄筋(第2係止部)
G 地組ヤード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9