(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学素子の下面を成形するための上方に向いた成形面を有する下型と、光学素子の上面を成形するための前記下型の成形面に対向するように下方に向いた成形面を有する上型と、プレス時に内周側に光学素子の側部を拘束する拘束部を有する筒状の胴型と、を備える光学素子を成形するためのプレス成形型であって、
前記胴型の拘束部は、
前記プレス成形型の中心に向かって斜め下方に向くように形成された第1面と、
前記第1面よりも下方に前記第1面に連続して、前記上型及び下型の中心軸に垂直に形成された第2面と、
前記第2面よりも下方に前記第2面に連続して、円筒面状に形成された円筒部と、を有する、
ことを特徴とするプレス成形型。
光学素子の下面を成形するための上方に向いた成形面を有する下型と、光学素子の上面を成形するための前記下型の成形面に対向するように下方に向いた成形面を有する上型と、プレス時に内周側に光学素子の側部を拘束する拘束部を有する筒状の胴型と、を備える光学素子を成形するためのプレス成形型であって、
前記胴型の拘束部は、
前記下型に向くように形成された第1面と、
前記第1面よりも下方に形成され、前記下型に向くように形成された第2面と、を有し、
前記第1面と前記第2面との間には、前記プレス成形型の中心軸に平行な円筒状の縦面が介在しており、
前記第1面と前記第2面とは、プレス時に前記光学素子と当接するように構成されている、
ことを特徴とするプレス成形型。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラスレンズなどの光学素子を製造する方法として、光学素子の下面を成形するための上方に向いた成形面を有する下型と、光学素子の上面を成形するための下方に向いた成形面を有する上型とを備えたプレス成形型を用いて形成する方法が用いられている。下型の成形面上にプリフォームなどのガラス材料を配置し、上型を下方に向かって下降させてガラス材料をプレスすることにより、上型及び下型の成形面がガラス材料の上下面に転写され、ガラスレンズ等の光学素子を製造することができる。
【0003】
しかしながら、このようなプレス成形型を用いてガラスレンズを成形する際に、上型を押し込むとガラス材料が横方向に移動してしまい、成形されたガラスレンズの光学面に偏りが生じ、十分な成形精度が得られないことがある。これに対して、例えば、特許文献1(特開2005−336050号公報)に記載されているように、胴型の内周面に下方に向かって拡がるような円錐台環状面が形成されたプレス成形型が提案されている。
図6は、従来、用いられていた胴型に下方に向かって拡がるような円錐台環状面が形成されたプレス成形型を示す鉛直断面図である。
図6に示すように、プレス成形型301は、上型302と、下型304と、上型302及び下型306とを包囲する第1の胴型306と、第1の胴型306内に配置された第2の胴型308とを備える。第2の胴型308の内周面には、胴型に下方に向かって拡がるような円錐台環状面308Aが形成されている。このようなプレス成形型301によれば、上型302を下方に向かってプレスすると、ガラス材料が外周方向に広がり、円錐台環状面308Aがガラス材料の周縁部を押さえつけるため、ガラス材料が横方向に移動するのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のプレス成形型の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるプレス成形型を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態のプレス成形型1は、下部に光学素子の上面に対応する成形面12Aを有する上型2と、上部に光学素子の下面に対応する成形面16Aを有する下型4と、上型2及び下型4の外周に設けられた第1の胴型6と、上型の外周かつ第1の胴型6の内側に設けられ、ガラス材料の側部を拘束する拘束部18を備えた第2の胴型8とを備える。本実施形態のプレス成形型1は一面が凸状であり、他面が凹状であるメニスカスレンズを製造するためのものである。
【0013】
上型2は、円柱状に形成された基部10と、基部10の下部から下方に向かって突出する成形部12とを有する。成形部12は、基部10よりも小径の円柱状を呈しており、下面には製造するガラスレンズ(光学素子)の凹面に対応した凸形状の成形面12Aが形成されている。
【0014】
下型4は、円筒状に形成された基部14と、基部14の上部から上方に向かって突出する成形部16とを有する。成形部16は、基部14よりも小径の円柱状を呈しており、上面には製造するガラスレンズの凸面に対応した凹形状の成形面16Aが形成されている。
【0015】
第1の胴型6は略円筒状に形成された部材からなる。第1の胴型6の内径は上型2の基部10の外径と等しい。上型2は第1の胴型6内に上方から挿入されている。また、第1の胴型6の下部の内径は下型4の成形部16の外径と略等しく形成されている。下型4の成形部16が下方から第1の胴型6内に挿入され、第1の胴型6の下端部は下型4の基部14の周縁部の上面に当接している。
【0016】
第2の胴型8は環状を呈しており、外周面は円筒面状を呈している。また、第2の胴型8の内周には、上方から第1の円筒部19と、第1の下面20と、第2の下面22と、第2の円筒部24とが連続して形成されている。第1の円筒部19は、円筒面状を呈しており、上下方向に延びている。第1の円筒部19の内径は、上型2の成形部12の外径と略等しくなっている。第1の下面20は、下方に向かって拡がるような円錐台環状面として形成されており、第1の下面20はプレス成形型1の中心側に向かって斜め下方を向いている。第2の下面22はプレス成形型1の中心軸(図中一点鎖線で示す)を中心とした円環状の面であり、プレス成形型1の中心軸に対して鉛直になっている。第2の下面22には鏡面加工が施されるとともに、FCVA膜によるコーティングが施されている。第2の円筒部24は円筒面状を呈している。好ましくは、第2の下面22の表面積は第1の下面20の表面積よりも小さく、さらに好ましくは、第2の下面22のプレス成形型1の中心軸方向の投影面積は第1の下面20のプレス成形型1の中心軸方向の投影面積よりも小さい。なお、本実施形態では、第2の胴型8の第1の下面20と、第2の下面22と、第2の円筒部24とにより第2の胴型8の拘束部18が構成されている。
【0017】
第2の胴型8は、第1の胴型6の内側の下型4の成形部16の上方、かつ、上型2の成形部12の外周に配置されており、内側に上型2の成形部12が挿入されている。プレス成形型1を組み立てた状態において、上型2の基部10の下方周縁部が第2の胴型8の上面と当接している。プレス成形型1を組み立てた状態において、上型2、下型4、第1の胴型6及び第2の胴型8の中心軸が一致した状態となっている。なお、
図1には、第2の胴型8の底部が下型4の上面に当接した状態を示しているが、プレス時には離間した状態からプレスを開始する。
【0018】
図2は、第1実施形態のプレス成形型を用いてガラスレンズの製造を行う際の第2の胴型の拘束部18の近傍を拡大して示す鉛直断面図である。ガラスレンズの製造時には、上型2及び第2の胴型8を取り外した状態で、プリフォームなどのガラス材料26を下型4の成形面16A上に配置する。そして、第2の胴型8を第1の胴型6内に配置し、次いで上型2を第1の胴型6内に配置する。このように内部にガラス材料26が配置されたプレス成形型1をガラス屈服点以上の温度まで加熱する。
【0019】
ガラス材料26がガラス屈服点以上の温度まで十分に加熱されたら、下型4を支持した状態で、油圧アクチュエータ等のプレス装置により上型2を下方に向けて押し込む。上型2を下方に押し込むことにより、上型2及び第2の胴型8が、第1の胴型6により上型2及び第2の胴型8の中心軸が下型4の中心軸と一致した状態を保たれながら、下降する。
【0020】
上型2が下降すると、まず、上型2の成形面12Aの中心部がガラス材料26の上面に当接する。さらに、上型2が下降することにより、ガラス材料26が押しつぶされ、側方に向かって拡がる。この際、
図2に示すように、ガラス材料26の上面の周縁部に第2の胴型8の第2の下面22が当接し、さらに、ガラス材料26の上面の第2の下面22が当接した部位の内側に、第1の下面20が当接する。これにより、ガラス材料26の横方向の移動が確実に防止される。この状態で、さらに上型2を、上型2の上面が第1の胴型6の上面と当接するまで押し込むことにより、ガラス材料26の上下面に上型2及び下型4の成形面12A、16Aが転写される。なお、この際、ガラス材料26の第2の下面22の内側部分(第1の下面20の下方の部分)は上方に向かって進出するが、必ずしも第1の下面20の全面に当接するわけではなく、第1の下面20の上部とガラス材料26との間には隙間が生じる。このように、第1の下面20の上部と、ガラス材料26との間に隙間が生じることにより、ガラス材料26の体積のばらつきを吸収することができる。
【0021】
そして、このように上型2にプレス圧力を加えた状態で、プレス成形型1を冷却する。この際、ガラス材料26の第1の下面20に当接した部分は、第2の下面22に当接した部分に比べて厚みが大きい。このため、ガラス材料26の第1の下面20に当接した部分は、第2の下面22に当接した部分に比べて厚さ方向に大きく収縮する。そして、冷却時にも上型2にプレス圧力が加えられているため、第2の下面22はガラス材料26の上面に当接した状態が保たれるが、ガラス材料26は第1の下面20から離間する。なお、仮にガラス材料26が第1の下面20から離間しなくても、ガラス材料26と第1の下面20との間で作用するプレス圧力は非常に小さくなる。
【0022】
そして、ガラス材料26が収縮するとガラス材料26の外周部は径方向中心に向かって移動する。この際、ガラス材料26の外周部の上面と第2の胴型8の第2の下面22との間に摩擦力が作用する。しかしながら、本実施形態によれば、上述の通り、第1の下面20とガラス材料26とは離間している、あるいは、ガラス材料26と第1の下面20との間で作用するプレス圧力が非常に小さいため、ガラス材料26と第2の胴型8の拘束部18との間の径方向に作用する摩擦力が非常に小さくなる。このため、ガラス材料26は径方向に均一に収縮することとなる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、プレス成形時には、第1の下面20及び第2の下面22がガラス材料26の外周縁の上面に当接する。これにより、プレス成形時におけるガラス材料26の横方向の移動を拘束することができる。さらに、本実施形態によれば、冷却時には第1の下面20はガラス材料26の上面から離間する。これにより、ガラス材料26の冷却時にガラス材料26が収縮しても、第2の下面22とガラス材料26との間でのみ摩擦力が生じ、拘束部18からガラス材料26に作用する径方向の摩擦力は非常に小さくなり、ガラスレンズを高い成形精度で製造することができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、第2の下面22の表面積が第1の下面20の表面積よりも小さくなっている。これにより、冷却時に第2の下面22とガラス材料26との間の摩擦力をより小さくすることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、第1の下面20を設けていることにより、この下方においてガラス材料26と第1の下面20との間に隙間が生じ、これによりガラス材料26の体積誤差を吸収することができる。
【0026】
以下、本発明の第2実施形態によるプレス成形型について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態によるプレス成形型を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態のプレス成形型101は、下部に光学素子の上面に対応する成形面12Aを有する上型2と、上部に光学素子の下面に対応する成形面16Aを有する下型4と、上型2及び下型4の外周に設けられた第1の胴型6と、上型の外周かつ第1の胴型6の内側に設けられ、後述するようにガラス材料を拘束する拘束部118を備えた第2の胴型108とを備える。上型2、下型4、及び第1の胴型6の構成は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
第2の胴型108は、環状を呈しており、外周面は円筒面状を呈している。また、第2の胴型108の内周には、上方から第1の円筒部119と、第1の下面120と、第2の円筒部121と、第2の下面122と、第3の円筒部124とが連続して形成されている。第1の円筒部119は、円筒面状を呈しており、上下方向に延びている。第1の円筒部119の内径は、上型2の成形部12の外径と略等しくなっている。第1の下面120は、プレス成形型101の中心側に向かって斜め下方を向くように形成されており、円錐台環状面を呈している。第2の円筒部121は円筒面状を呈しており、上下方向に延びている。第2の円筒部121の内径は、第1の円筒部119よりも大きく、第3の円筒部124より小さい。第2の下面122はプレス成形型101の中心軸(図中一点鎖線で示す)を中心とした円環状の面であり、プレス成形型101の中心軸に対して鉛直になっている。第2の下面122には鏡面加工が施されるとともに、FCVA膜によるコーティングが施されている。第3の円筒部124は円筒面状を呈している。
【0028】
好ましくは、第2の下面122の表面積は第1の下面120の表面積よりも小さく、さらに好ましくは、第2の下面122のプレス成形型101の中心軸方向の投影面積は第1の下面120のプレス成形型101の中心軸方向の投影面積よりも小さい。なお、本実施形態では、第2の胴型108の第1の下面120と、第2の円筒部121と、第2の下面122と、第3の円筒部124とにより第2の胴型108の拘束部118が構成されている。
【0029】
第2の胴型108は、第1の胴型6の内側の下型4の成形部16の上方、かつ、上型2の成形部12の外周に配置されており、上型2の成形部12が第1の円筒部119の内側に挿入されている。プレス成形型101を組み立てた状態において、上型2の基部10の下方周縁部が第2の胴型8の上面と当接している。プレス成形型101を組み立てた状態において、上型2、下型4、第1の胴型6及び第2の胴型108の中心軸が一致した状態となっている。なお、
図3には、第2の胴型108の底部が下型4の上面に当接した状態を示しているが、プレス時には離間した状態からプレスを開始する。
【0030】
第2実施形態のプレス成形型101によっても、第1実施形態のプレス成形型1と同様の作用効果が奏される。
すなわち、プレス成形時に上型2を下降させるとガラス材料が押しつぶされ、側方に向かって拡がる。この際、ガラス材料の上面の周縁部に第2の胴型108の第2の下面122が当接し、さらに、ガラス材料の上面の第2の下面122が当接した部位の内側に、第1の下面120が当接する。これにより、ガラス材料の横方向の移動を拘束することができる。
【0031】
さらに、ガラス材料の第2の下面122に当接した部分に比べて、第1の下面120が当接した部分の厚さの方が厚いため、冷却時には、第2の下面122に当接した部分に比べて、第1の下面120が当接した部分の方が厚さ方向の収縮が大きい。そして、冷却時にも上型2にプレス圧力が加えられているため、第2の下面122のみがガラス材料に当接し、第1の下面120はガラス材料から離間する。これにより、冷却時にガラス材料が径方向に収縮しても、第2の下面122のみにおいてガラス材料との間で摩擦力が生じ、ガラス材料に作用する摩擦力が非常に小さくなり、ガラスレンズを高い成形精度で製造することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、第2の下面122の表面積が第1の下面120の表面積よりも小さくなっている。これにより、冷却時における第2の下面122とガラス材料との間の摩擦力をより小さくすることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、第1の下面120を設けていることにより、この下方においてガラス材料と第1の下面120との間に隙間が生じ、これによりガラス材料の体積誤差を吸収することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、第2の下面122がプレス成形型101の中心軸に鉛直な面に平行である場合について説明したが、これに限らず、第2の下面122をプレス成形型101の中心に向かって斜め下方に向くように形成してもよい。このように第1の下面120及び第2の下面122をプレス成形型101の中心に向かって斜め下方に向くように形成する場合には、第2の下面122のプレス成形型101の中心軸に垂直な方向に対する角度(すなわち、
図3の左右方向に対する第2の下面122の角度)は、第1の下面120のプレス成形型101の中心軸に垂直な方向に対する角度よりも小さくするとよい。好ましくは、第1の下面120のプレス成形型101の中心軸に垂直な方向に対する角度は30°以下であり、第2の下面122のプレス成形型101の中心軸に垂直な方向に対する角度は10°以下である。
【0035】
以下、本発明の第3実施形態によるプレス成形型について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図4は、本発明の第3実施形態によるプレス成形型を示す鉛直断面図である。同図に示すように、本実施形態のプレス成形型201は、下部に光学素子の上面に対応する成形面12Aを有する上型2と、上部に光学素子の下面に対応する成形面16Aを有する下型4と、上型2及び下型4の外周に設けられた第1の胴型6と、上型の外周かつ第1の胴型6の内側に設けられ、後述するようにガラス材料を拘束する拘束部218を備えた第2の胴型208とを備える。上型2、下型4、及び第1の胴型6の構成は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
第2の胴型208は、環状を呈しており、外周面は円筒面状を呈している。また、第2の胴型208の内周には、上方から第1の円筒部219と、第1の下面220と、第2の円筒部221と、第2の下面222と、第3の円筒部224とが連続して形成されている。
【0037】
第1の円筒部219は、円筒面状を呈しており、上下方向に延びている。第1の円筒部219の内径は、上型2の成形部12の外径と略等しくなっている。第1の下面220は、プレス成形型201の中心軸(図中一点鎖線で示す)を中心とした円環状の面であり、プレス成形型201の中心軸に対して鉛直になっている。第1の下面220の外径は、第2の円筒部221の内径と等しくなっている。第2の円筒部221は円筒面状を呈しており、上下方向に延びている。第2の円筒部221の内径は、第1の円筒部219よりも大きく、第3の円筒部224より小さい。第2の下面222はプレス成形型201の中心軸(図中一点鎖線で示す)を中心とした円環状の面であり、プレス成形型201の中心軸に対して鉛直になっている。第2の下面222には鏡面加工が施されるとともに、FCVA膜によるコーティングが施されている。第3の円筒部224は円筒面状を呈している。
【0038】
好ましくは、第2の下面222の表面積は第1の下面220の表面積よりも小さく、さらに好ましくは、第2の下面222のプレス成形型201の中心軸方向の投影面積は第1の下面220のプレス成形型201の中心軸方向の投影面積よりも小さい。なお、本実施形態では、第2の胴型208の第1の下面220と、第2の円筒部221と、第2の下面222と、第3の円筒部224とにより第2の胴型208の拘束部218が構成されている。
【0039】
第2の胴型208は、第1の胴型6の内側の下型4の成形部16の上方、かつ、上型2の成形部12の外周に配置されており、上型2の成形部12が第1の円筒部219の内側に挿入されている。プレス成形型201を組み立てた状態において、上型2の基部10の下方周縁部が第2の胴型8の上面と当接している。プレス成形型201を組み立てた状態において、上型2、下型4、第1の胴型6及び第2の胴型208の中心軸が一致した状態となっている。なお、
図4には、第2の胴型208の底部が下型4の上面に当接した状態を示しているが、プレス時には離間した状態からプレスを開始する。
【0040】
第3実施形態のプレス成形型201によっても、第1実施形態のプレス成形型1と同様の作用効果が奏される。
すなわち、プレス成形時に上型2を下降させるとガラス材料が押しつぶされ、側方に向かって拡がる。この際、ガラス材料の上面の周縁部に第2の胴型208の第2の下面222が当接し、さらに、ガラス材料の上面の第2の下面222が当接した部位の内側に、第1の下面220が当接する。これにより、ガラス材料の横方向の移動を確実に拘束することができる。
【0041】
さらに、ガラス材料の第2の下面222に当接した部分に比べて、第1の下面220が当接した部分の厚さの方が厚いため、冷却時には、第2の下面222に当接した部分に比べて、第1の下面220が当接した部分の方が厚さ方向の収縮が大きい。そして、冷却時にも上型2にプレス圧力が加えられているため、第2の下面222のみがガラス材料に当接し、第1の下面220はガラス材料から離間する。これにより、冷却時にガラス材料が径方向に収縮しても、第2の下面222のみにおいてガラス材料との間で摩擦力が生じ、ガラス材料に作用する摩擦力が非常に小さくなり、ガラスレンズを高い成形精度で製造することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、第2の下面222の表面積が第1の下面220の表面積よりも小さくなっている。これにより、冷却時における第2の下面222とガラス材料との間の摩擦力をより小さくすることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1の下面220を設けていることにより、この下方においてガラス材料と第1の下面220との間に隙間が生じ、これによりガラス材料の体積誤差を吸収することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、第2の下面222がプレス成形型201の中心軸に鉛直な面に平行である場合について説明したが、これに限らず、第2の下面222をプレス成形型201の中心に向かって斜め下方に向くように形成してもよい。
【0045】
なお、上記各実施形態では、ガラス材料をプレス成形してガラスレンズを製造する場合を例として説明したが、本発明はこれに限らず、プラスチックレンズ等の他の材料からなる光学素子をプレス成形する場合にも適用できる。
【0046】
ここで、発明者らは、
図1を参照して説明した第1実施形態のプレス成形型(実施例)と、
図6を参照して説明した従来のプレス成形型(比較例)とを用いて、30個のガラスレンズを連続して製造し、製造したガラスレンズの直交するXY軸上のそれぞれ3点における厚さを測定し、設計値との誤差を算出した。
図5は、比較例と実施例における設計値に対する厚さ誤差を示すグラフである。
図5に示すように、比較例のプレス成形型ではショット数が増加するにつれて、厚さ誤差が増加する傾向がある。これに対して、実施例のプレス成形型によれば、ショットするが増加しても設計値に対する誤差は非常に小さい値で推移していることがわかる。これにより、本発明によれば、連続して多数のガラスレンズを製造しても、成形精度の高い光学素子を製造することが可能であることが確認された。
【0047】
以下、図面を参照して本発明を総括する。
本発明の第1実施形態のプレス成形型1は、
図1に示すように、ガラスレンズの下面を成形するための上方に向いた成形面16Aを有する下型4と、ガラスレンズの上面を成形するための下型4の成形面16Aに対向するように下方に向いた成形面12Aを有する上型2と、プレス時に内周側にガラスレンズの側部を拘束する拘束部18を有する筒状の第2の胴型8と、を備えるガラスレンズを成形するためのプレス成形型1であって、第2の胴型8の拘束部18は、下型4に向くように形成された第1の下面20と、第1の下面20よりも下方に形成され、下型4に向くように形成された第2の下面22と、を有する。
【0048】
本発明の第2実施形態のプレス成形型101は、
図3に示すように、ガラスレンズの下面を成形するための上方に向いた成形面16Aを有する下型4と、ガラスレンズの上面を成形するための下型4の成形面16Aに対向するように下方に向いた成形面12Aを有する上型2と、プレス時に内周側にガラスレンズの側部を拘束する拘束部118を有する筒状の第2の胴型108と、を備えるガラスレンズを成形するためのプレス成形型101であって、第2の胴型108の拘束部118は、下型4に向くように形成された第1の下面120と、第1の下面120よりも下方に形成され、下型4に向くように形成された第2の下面122と、を有する。
【0049】
本発明の第3実施形態のプレス成形型201は、
図4に示すように、ガラスレンズの下面を成形するための上方に向いた成形面16Aを有する下型4と、ガラスレンズの上面を成形するための下型4の成形面16Aに対向するように下方に向いた成形面12Aを有する上型2と、プレス時に内周側にガラスレンズの側部を拘束する拘束部218を有する筒状の第2の胴型208と、を備えるガラスレンズを成形するためのプレス成形型201であって、第2の胴型208の拘束部218は、下型4に向くように形成された第1の下面220と、第1の下面220よりも下方に形成され、下型4に向くように形成された第2の下面222と、を有する。