(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢部材の復元力は、制動時における前記ブレーキディスクと前記第1及び第2ブレーキライニングとの接触に伴う前記ブレーキ本体及び前記支持ピンの傾動を許容する大きさに設定されることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
前記付勢部材は、前記球面ベアリングよりも前記第2キャリパアーム側かつ前記支持ピンの鉛直方向上側において、前記挿通孔の内周面と前記支持ピンの外周面との間に設けられ前記支持ピンを付勢することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1から
図4を参照して、第1実施形態に係るブレーキ装置100の構成について説明する。
【0026】
ブレーキ装置100は、作動流体として圧縮空気が用いられる鉄道車両用のフローティング型空気圧ブレーキである。圧縮空気に代えて、作動油など他の作動流体を用いてもよい。
【0027】
ブレーキ装置100は、車輪1とともに回転するブレーキディスク2に摩擦力を付与するものである。具体的には、ブレーキ装置100は、ブレーキディスク2の両側からブレーキディスクに摺接して摩擦力を付与可能な第1,第2ブレーキライニング3,4によってブレーキディスク2に摩擦力を付与して、車輪1の回転を制動する。
【0028】
ブレーキディスク2は、車輪1の表裏両面に形成されて車輪1と一体に回転する。ブレーキディスク2を車輪1と一体に形成する構成に代えて、車輪1とともに回転する別体のブレーキディスク2を設けてもよい。
【0029】
ブレーキ装置100は、
図1及び
図2に示すように、ガイドプレート5を介して第1,第2ブレーキライニング3,4をそれぞれ支持する第1,第2キャリパアーム12,14を有するブレーキ本体10と、台車(図示省略)取り付けられる支持枠20に軸方向に移動自在に支持されると共にブレーキ本体10を支持する第1,第2支持ピン21,22と、第1ブレーキライニングに支持されるガイドプレート5をブレーキ本体10に進退自在に支持する一対のアンカピン33と、圧縮空気の圧力によって第1,第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に押圧する押圧部35と、を備える。
【0030】
ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両に適用される場合には、支持枠20を介して台車に支持される。ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両以外の車両に適用される場合には、車体(図示省略)に支持される。
【0031】
ブレーキ本体10は、
図1に示すように、ブレーキディスク2に跨るようにして延びる第1キャリパアーム12及び第2キャリパアーム14と、第1キャリパアーム12と第2キャリパアーム14とを連結するヨーク部13と、ブレーキ本体10を台車上に支持するための第1,第2ブラケット部15,16と、を有する。
【0032】
第1支持ピン21と第2支持ピン22とは、後述する付勢部材としての復元ばね40によって付勢されるか否かを除き、基本的な構成は同一である。よって、以下では、復元ばね40によって付勢される第1支持ピン21及びその周辺構造について具体的に説明し、第2支持ピン22及びその周辺構造については説明を省略する。
【0033】
第1支持ピン21は、
図3に示すように、支持枠20の挿通孔20aに挿通される。第1支持ピン21の両端部は、ブレーキ本体10の第1,第2ブラケット部15,16に各々連結される。第1支持ピン21は、車輪1の回転軸(図示省略)と平行に設けられると共に軸方向に移動可能に支持枠20に支持される。これにより、ブレーキ本体10は、第1支持ピン21の軸方向への移動が可能なように支持枠20に支持される。
【0034】
第1支持ピン21の露出部は、
図1に示すように、ゴム製のブーツ23によって覆われ、ダスト等から保護されている。このようにして、ブレーキ本体10は、第1支持ピン21によって支持枠20に対して摺動可能にフローティング支持される。なお、
図1を除き、ブーツ23の図示は省略する。
【0035】
第1,第2ブレーキライニング3,4は、ガイドプレート5に固定される裏板部3a,4aと、制動時にブレーキディスク2に当接する摩擦部材3b,4bと、を有する。摩擦部材3b,4bは、複数のセグメントからなり、裏板部3a,4aの表面に固定される。第1,第2ブレーキライニング3,4は、摩擦部材3b及び4bとブレーキディスク2との当接によって発生する摩擦力によって、車輪1の回転を制動する。
【0036】
第1,第2ブレーキライニング3,4は、非制動時には、それぞれブレーキディスク2と予め設定された所定の間隔をあけて対向する(
図1に示す状態)。第1及び第2ブレーキライニング3,4は、制動時には、押圧部35による押圧力を受けてブレーキディスク2に向かってそれぞれ移動し、ブレーキディスク2に平行に当接して押圧される。
【0037】
ガイドプレート5は、長手方向に沿って形成され第1ブレーキライニング3の裏板部3aが係合するアリ溝5aを有する。ガイドプレート5は、長手方向の両端部が、一対のアンカピン33によってブレーキ本体10に支持される。一方のアンカピン33は、ガイドプレート5の一端(
図2では上端)をブレーキ本体10に回動可能に支持し、他方のアンカピン33は、ガイドプレート5の他端(
図2では下端)をブレーキ本体10に係止する。
【0038】
ブレーキ本体10の第1キャリパアーム12には、長手方向(
図2中上下方向)の両端部に配置される一対のアジャスタ30と、一対のアジャスタ30の間に配置される押圧部35と、が設けられる。
【0039】
アジャスタ30は、制動解除時にブレーキディスク2に対する第1ブレーキライニング3の相対位置を一定に調整するものである。アジャスタ30は、アンカボルト32によってブレーキ本体10の上下端部にそれぞれ締結される。
【0040】
アジャスタ30は、
図1に示すように、アンカボルト32によってブレーキ本体10に固定されるライニング受け31と、ライニング受け31に対して進退可能に設けられて第1ブレーキライニング3をブレーキ本体10に支持するアンカピン33と、第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2から離間する方向に付勢するリターンスプリング(図示省略)と、制動解除時に第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との隙間を一定に調整する隙間調整機構(図示省略)と、を備える。
【0041】
アンカピン33は、第1ブレーキライニング3がブレーキディスク2に近接する際に、第1ブレーキライニング3とともに変位するガイドプレート5によってライニング受け31から引き出されて軸方向に変位する。アンカピン33は、第1ブレーキライニング3がブレーキディスク2に摺接する制動時に、摩擦力によってブレーキディスク2が第1ブレーキライニング3を周方向に移動させようとするのに抗して、第1ブレーキライニング3を保持する。アンカピン33の内周に、リターンスプリングと隙間調整機構とが収装される。
【0042】
リターンスプリングは、アンカピン33の内周に圧縮して介装されるコイルばねである。ブレーキ装置100が制動状態から非制動状態になったときには、リターンスプリングの付勢力によって、アンカピン33がガイドプレート5を介して第1ブレーキライニング3を押し戻し、第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2から所定の距離だけ離間させる。これにより、制動解除時における第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との距離を調整して、ブレーキディスク2の放熱性を良好にすることができる。
【0043】
隙間調整機構は、制動解除時におけるリターンスプリングの付勢力による第1ブレーキライニング3の戻し量を一定に調整する。つまり、隙間調整機構は、非制動時における第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2の間隔を常に一定に保つ。
【0044】
第1ブレーキライニング3の摩耗量が小さく、制動時におけるアンカピン33のストローク量が小さいうちは、制動解除時には、アンカピン33が制動前における元の位置まで戻る。
【0045】
これに対して、第1ブレーキライニング3の摩耗が進行し、制動時におけるアンカピン33の移動量が大きくなった場合において、制動解除時には、隙間調整機構が非制動時における第1ブレーキライニング3の位置を、摩耗した厚さの分だけ前進させる。これにより、非制動時における第1ブレーキライニング3とブレーキディスク2との間隔を常に一定に保つことができる。
【0046】
押圧部35は、圧縮空気の圧力により第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2に押圧すると共にその反力によってブレーキ本体10を第1支持ピン21の軸方向に移動させて第2ブレーキライニング4をブレーキディスク2に押圧する。
【0047】
押圧部35は、第1、第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に押圧するものであれば、任意の構成とすることができる。このため、押圧部35の詳細な説明は省略するが、例えば、押圧部35は、内部に設けられる圧力室における空気圧を調整することでダイヤフラムを変形させ、ダイヤフラムの変形によってピストンをシリンダから退出させる。これにより、押圧部35は、ガイドプレート5を介して第1ブレーキライニング3をブレーキディスク2に向けて
図1中右方向に押圧し、その反力によってブレーキ本体10を
図1中左方向へ移動させて第2ブレーキライニング4をブレーキディスク2に向けて引き寄せる。このようにして、ブレーキディスク2が第1,第2ブレーキライニング3,4によって挟持されて、制動力としての摩擦力が発揮される。
【0048】
ブレーキ装置100は、
図3に示すように、支持枠20の挿通孔20a内に設けられ第1支持ピン21を摺動自在に支持する球面ベアリング24と、支持枠20の挿通孔20a内において球面ベアリング24の軸方向両側に設けられ第1支持ピン21を摺動自在に支持する一対のゴム製ブッシュ27,28と、車輪1の回転軸に対する第1支持ピン21の回動に抗する復元力を第1支持ピン21に付与する付勢部材としての復元ばね40と、復元ばね40を支持するばね受け部50と、をさらに備える。
【0049】
図3に示すように、球面ベアリング24は、2つのゴム製ブッシュ27,28のうち
図3中左側である第1キャリパアーム12側(第1ブラケット部15側)に設けられるゴム製ブッシュ27に接触するように隣接して設けられる。球面ベアリング24は、挿通孔20aの内周面に嵌合する外周面25a及び球面状に形成される内周面25bを有する外輪25と、第1支持ピン21が挿通すると共に外輪25の内周面25bに対応した形状に形成され内周面25bに摺動自在に嵌合する外周面26aを有する内輪26と、を有する。つまり、外輪25及び内輪26は、互いに摺動可能に嵌合する軸受面を有し、傾動可能(相対回転可能)に係合する。
【0050】
これにより、球面ベアリング24は、支持枠20に対してブレーキ本体10を傾動可能に支持すると共に支持枠20に対して第1支持ピン21の軸方向(車輪1の回転軸方向)に摺動可能にフローティング支持する。
【0051】
ばね受け部50は、挿通孔20a内において球面ベアリング24よりも第2キャリパアーム14側(第2ブラケット部16側)に設けられる。ばね受け部50は、球面ベアリング24における内輪26の一方の側面(端面)26bに接触した状態で第1支持ピン21の外周に設けられる環状の受け部としての第1受け部51と、挿通孔20aの内周面に形成される段差部20bに係止され第1支持ピン21の外周に設けられる環状の第2受け部52と、を有する。第1受け部51と第2受け部52とは、軸方向に並んで設けられる。第1及び第2受け部51,52には、それぞれ第1支持ピン21が挿通する貫通孔51a,52bが形成される。また、第1ばね受け部51の外径は、内輪26の側面26bの外周径よりも大きく形成される。
【0052】
復元ばね40は、第1受け部51と第2受け部52との間に介装されるコイルばねである。復元ばね40は、第1受け部51を介して内輪26の側面26bを付勢することで、復元力を第1支持ピン21に付与する。復元ばね40は、内輪26の側面26bの外径よりも大きな内径を有する。これにより、復元ばね40が内輪26の径方向外側において第1受け部51に当接して付勢力を付与し、内輪26に復元力が付与される。このように、内輪26の側面26bよりも径方向外側において第1受け部51が付勢されることによって、力のモーメントアームの長さが大きくなり、復元ばね40から第1受け部51に付与される力が大きくなる。したがって、内輪26の側面26bに直接接触して付勢力を付与する場合と比べ、球面ベアリング24の内輪26により大きな復元力を付与することができる。
【0053】
図3に示すように、第1支持ピン21の中心軸O1が車輪1の回転軸と平行に並んだ状態、言い換えれば、第1支持ピン21及びブレーキ本体10が傾いていない状態では、復元ばね40は、略自然長となるように設けられる。よって、
図3に示す状態では、復元ばね40は、内輪26に対して付勢力を付与しない。
【0054】
次に、ブレーキ装置100の作用について説明する。
【0055】
ブレーキ装置100では、第1支持ピン21が球面ベアリング24に支持されることにより、ブレーキディスク2の面振れ等が生じる場合であっても、制動時にはブレーキ本体10が傾動して、第1,第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に追従させることができる。以下、制動時において、ブレーキディスク2に第1,第2ブレーキライニング3,4を追従させるために必要なブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動角を「θ」とする。
【0056】
また、ブレーキ装置100は、第1,第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に押圧する押圧部35が第1キャリパアーム12にのみ設けられ、第2キャリパアーム14には設けられないフローティング型のブレーキ装置である。このため、車輪1の幅中心に対するブレーキ本体10の重量バランスは、押圧部35の重さにより第1キャリパアーム12が下がる方向に偏っている。よって、ブレーキ装置100では、
図4に示すように、重量バランスの偏りにより、非制動時においてもブレーキ本体10及び第1支持ピン21が車輪1の回転軸に対して傾動することがある。
【0057】
なお、
図4におけるO1は、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21が傾いていない状態における第1支持ピン21の中心軸を示すものである。つまり、中心軸O1は、車輪1の回転軸と平行に並ぶものである。
図4におけるO2は、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21が車輪1の回転軸に対して傾いた状態における第1支持ピン21の中心軸を示すものである。
【0058】
第1支持ピン21が車輪1の回転軸に対して傾動すると、復元ばね40の一部(
図4中下側部分)が圧縮される。これにより、内輪26には第1支持ピン21の傾動に抗するような付勢力が付与される。つまり、復元ばね40は、第1支持ピン21の傾動に抗する復元力を球面ベアリング24の内輪26を介して第1支持ピン21に付与する。よって、ブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動が抑制される。
【0059】
復元ばね40の付勢力は、ブレーキディスク2と第1,第2ブレーキライニング3,4との接触に伴うブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動角θ分の傾動を許容するような大きさに設定される。これにより、押圧部35の押圧力が付与される制動時のブレーキ本体10の傾動は許容しつつ、非制動時のブレーキ本体10の傾きを抑制することができる。なお、第1受け部51及び第2受け部52の貫通孔51a,52aは、それぞれ第1支持ピン21が傾動角θだけ傾動した際に、第1支持ピン21に干渉しないような大きさに形成される。
【0060】
また、復元ばね40の付勢力は、第1支持ピン21が傾動角θだけ傾動した際に、押圧部35を含むブレーキ本体10全体の重量を支えるだけの大きさであることが望ましい。つまり、復元ばね40の付勢力は、第1支持ピン21が傾動角θだけ傾動した状態で、ブレーキ本体10全体の重量と釣り合うだけの付勢力であることが望ましい。これによれば、復元ばね40の付勢力によって、傾動角θ以上のブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動が効果的に抑制される。
【0061】
次に、
図5を参照して、上記第1実施形態の変形例について、説明する。
【0062】
上記第1実施形態では、ばね受け部50の第2受け部52は、挿通孔20aの内周面に形成される段差部20bに係止される。これに代えて、
図5に示すように、第2受け部52は、第2キャリパアーム14側のゴム製ブッシュ28に接触して軸方向に隣接するものでもよい。この場合には、付勢部材は、球面ベアリング24から遠ざかるほど巻径が大きいテーパスプリング40aであることが望ましい。付勢部材がテーパスプリング40aとして形成されることにより、球面ベアリング24から離れた位置における第1支持ピン21とテーパスプリング40aとの干渉を回避し易くなる。なお、付勢部材は、球面ベアリング24から遠ざかるほど巻径が大きいテーパスプリング40aに限らず、球面ベアリング24から遠ざかるほど巻径が小さいテーパスプリング(図示省略)でもよい。
【0063】
また、上記第1実施形態では、復元ばね40及びばね受け部50は、第1支持ピン21が挿通する挿通孔20a内に設けられ、第1支持ピン21に復元ばね40の復元力を付与する。これに代えて、復元ばね40及びばね受け部50は、第2支持ピン22が挿通する挿通孔内に設けられ、復元ばね40が第2支持ピン22に復元力を付与するものでもよい。また、第1,第2支持ピン21,22がそれぞれ挿通する挿通孔20aの両方に、復元ばね40及びばね受け部50を設けて、第1,第2支持ピン21,22の両方に復元力を付与してもよい。
【0064】
また、上記第1実施形態では、付勢部材は、第1支持ピン21の外周に設けられる単一の復元ばね40である。これに代えて、付勢部材は、第1支持ピン21の径方向外側に周方向に並んで設けられる複数のコイルばねであってもよい。
【0065】
以上の第1の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0066】
ブレーキ装置100では、車輪1の回転軸に対して第1支持ピン21が傾動しようとすると、第1支持ピン21には、その傾動に抗する付勢力が復元ばね40によって復元力として付与される。よって、復元ばね40の復元力により第1支持ピン21及びブレーキ本体10の傾きが抑制される。したがって、ブレーキ本体10の傾きによる非制動時の第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止され、ブレーキ装置100の第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0067】
また、復元ばね40は、傾動角θとなるまでのブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動を許容すると共に、傾動角がθに達するとブレーキ本体10の重量を支える大きさの付勢力を発揮する。これにより、制動時においてブレーキディスク2に第1,第2ブレーキライニング3,4を追従させつつ、非制動時にはブレーキ本体10の傾動を抑制して、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触を防止することができる。
【0068】
また、復元ばね40は、第1支持ピン21が挿通する挿通孔20a内における球面ベアリング24とゴム製ブッシュ28との間の隙間に設けることができるため、ブレーキ装置100の大型化を抑制しつつ、ブレーキ本体10の傾きを抑制することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のブレーキ装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
上記第1実施形態では、球面ベアリング24は第1キャリパアーム12側のゴム製ブッシュ27に接触して設けられ、復元ばね40及びばね受け部50は、球面ベアリング24と第2キャリパアーム14側のゴム製ブッシュ28との間に設けられる。これに代えて、ブレーキ装置200では、球面ベアリング24は、一対のゴム製ブッシュ27,28の両方と軸方向に離間して設けられ、それぞれとの間に復元ばね140,145が設けられる点において、上記第1実施形態に係るブレーキ装置100とは相違する。
【0071】
図6に示すように、ブレーキ装置200では、球面ベアリング24と一対のゴム製ブッシュ27,28との間には、それぞれ隙間が形成される。ブレーキ装置200は、軸方向の両側から球面ベアリング24の内輪26の側面26b,26cをそれぞれ付勢して、内輪26に復元力をそれぞれ付与する第1及び第2付勢部材としての第1及び第2復元ばね140,145を有する。
【0072】
第1及び第2復元ばね140,145は、それぞれ第1及び第2支持部150,155により支持される。第1支持部150は、上記第1実施形態におけるばね受け部50と同様の構成を有しており、第2支持部155は、球面ベアリング24を挟んで第1支持部150とは対称の構成を有している。よって、第1及び第2支持部150,155の詳細な説明は省略する。
【0073】
第1支持ピン21が車輪1の回転軸に対して傾動すると、第1復元ばね140の一部(
図6中下側部分)と第2復元ばね145の一部(
図6中上側部分)とが圧縮され、内輪26を介して傾動に抗する復元力を第1支持ピン21に付与する。
【0074】
このように、球面ベアリング24と一対のゴム製ブッシュ27,28の両方との間に隙間が設けられる場合には、それぞれの隙間に復元ばね140,145を設けて、2つの復元ばね140,145によって復元力を第1支持ピン21に付与することができる。
【0075】
第1復元ばね140と第2復元ばね145の付勢力は、両者の付勢力の合力が制動時におけるブレーキディスク2と第1及び第2ブレーキライニング3,4との接触に伴うブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動を許容するように設定される。
【0076】
以上の第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
(第3実施形態)
次に、
図7を参照して、第3実施形態に係るブレーキ装置300について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のブレーキ装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
上記第1実施形態では、復元ばね40は、球面ベアリング24の内輪26を付勢することにより、内輪26を介して第1支持ピン21に復元力を付与する。これに代えて、ブレーキ装置300では、復元ばね240は、挿通孔20aの内周面と第1支持ピン21の外周面との間に介装され、直接第1支持ピン21を付勢することにより復元力を付与する点において、第1実施形態に係るブレーキ装置100とは相違する。
【0079】
図7に示すように、ブレーキ装置300では、復元ばね240は、球面ベアリング24よりも第2キャリパアーム14側かつ第1支持ピン21よりも鉛直方向上側において、鉛直方向(
図7中上下方向)に延びて挿通孔20aの内周面と第1支持ピン21の外周面との間に設けられる。復元ばね240の一端は、挿通孔20aの内周面に形成される凹部20cに収容される。復元ばね240は、第1支持ピン21と摺接する滑り部材245を介して、第1支持ピン21の外周面を付勢する。復元ばね240は、
図7に示すような巻径が軸方向に一定である円筒形状のコイルスプリングであってもよいし、第1支持ピン21に近づくにつれ巻径が大きくなる又は小さくなる円錐形状のコイルスプリング(テーパスプリング)であってもよい。
【0080】
滑り部材245は、第1支持ピン21との間の摺動抵抗が小さい材質によって、第1支持ピン21における外周面の周方向の一部に沿って形成される。このような滑り部材245が設けられることにより、ブレーキ装置300の制動時における第1支持ピン21の軸方向への移動を妨げることがない。
【0081】
ブレーキ本体10及び第1支持ピン21が車輪1の回転軸に対して傾動すると、復元ばね240が圧縮され、傾動に抗する復元力を第1支持ピン21に直接付与する。よって、ブレーキ本体10の傾きが防止されて、第2ブレーキライニング4とブレーキディスク2との接触が防止される。
【0082】
次に、第3実施形態の変形例について説明する。
【0083】
上記第3実施形態では、鉛直方向に延びて設けられる単一の復元ばね240によって、第1支持ピン21に復元力を付与している。これに代えて、周方向に並ぶ2以上の復元ばね240によって復元力を付与してもよい。
【0084】
また、上記第3実施形態では、復元ばね240は、球面ベアリング24よりも第2キャリパアーム14側に設けられる。これに代えて、設置スペースがある場合には、復元ばね240は、球面ベアリング24よりも第1キャリパアーム12側に設けられてもよい。また、設置スペースがある場合には、上記第2実施形態のように、球面ベアリング24の軸方向両側に復元ばね240を設けてもよい。
【0085】
また、上記第3実施形態では、復元ばね240は、挿通孔20a内であって、挿通孔20aの内周面と第1支持ピン21の外周面との間に介装される。ブレーキ装置300の大型化を抑制するためには、復元ばね240は、挿通孔20a内に設けられることが望ましいが、挿通孔20aの外に設けられてもよい。この場合には、例えば、支持枠20の端部に支持板を取り付けて、支持板と第1支持ピン21の外周面との間に復元ばね240を介装すればよい。
【0086】
以上の第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0087】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0088】
車輪1とともに回転するブレーキディスク2に摩擦力を付与するブレーキ装置100,200,300は、ブレーキディスク2の両側からブレーキディスク2に摺接して摩擦力を付与可能な第1及び第2ブレーキライニング3,4をそれぞれ支持する第1及び第2キャリパアーム12,14を有するブレーキ本体10と、台車に取り付けられる支持枠20に球面ベアリング24を介して支持されると共にブレーキ本体10を支持する第1支持ピン21と、第1キャリパアーム12に設けられ第1及び第2ブレーキライニング3,4をブレーキディスク2に押圧する押圧部35と、車輪1の回転軸に対する第1支持ピン21の傾動に抗する復元力を第1支持ピン21に付与する付勢部材(復元ばね40,40a,140,145,240)と、を備える。
【0089】
この構成では、車輪1の回転軸に対して第1支持ピン21が傾動しようとすると、第1支持ピン21には、その傾動に抗する付勢力が付勢部材(復元ばね40,40a,140,145,240)によって復元力として付与される。よって、付勢部材(復元ばね40,40a,140,145,240)の復元力により第1支持ピン21及びブレーキ本体10の傾きが抑制される。したがって、ブレーキ装置100,200,300の第2ブレーキライニング4の寿命を向上させることができる。
【0090】
また、ブレーキ装置100,200,300は、付勢部材(復元ばね40,40a,140,145,240)の復元力が、制動時におけるブレーキディスク2と第1及び第2ブレーキライニング3,4との接触に伴うブレーキ本体10及び第1支持ピン21の傾動を許容する大きさに設定される。
【0091】
この構成によれば、ブレーキディスク2に第1及び第2ブレーキライニング3,4を追従させて接触させるための制動時におけるブレーキ本体10の傾動は許容しつつ、非制動時におけるブレーキ本体10の傾動を抑制することができる。
【0092】
また、ブレーキ装置100,200,300は、付勢部材(復元ばね40,40a,140,145,240)が、支持枠20に形成され第1支持ピン21が挿通する挿通孔20a内に設けられる。
【0093】
この構成によれば、ブレーキ装置100,200,300の大型化を防止しつつ、ブレーキ本体10の傾きを抑制することができる。
【0094】
また、ブレーキ装置100,200は、球面ベアリング24が、挿通孔20aの内周面に嵌合する外周面25a及び球面状に形成される内周面25bを有する外輪25と、第1支持ピン21が挿通すると共に外輪25の内周面25bに摺動自在に嵌合する外周面26aを有する内輪26と、を有し、付勢部材(復元ばね40,40a,140,145)は、内輪26を付勢して第1支持ピン21に復元力を付与する。
【0095】
また、ブレーキ装置200は、付勢部材が、軸方向の両側から球面ベアリング24の内輪26に復元力を付与する第1及び第2復元ばね140,145を有する。
【0096】
これらの構成では、付勢部材(復元ばね40,40a,140,145)によって球面ベアリング24の内輪26を介して第1支持ピン21に復元力が付与される。
【0097】
また、ブレーキ装置100は、付勢部材が、球面ベアリング24から遠ざかるほど巻径が大きいテーパスプリング40aであってもよい。
【0098】
この構成によれば、球面ベアリング24から遠ざかった位置における第1支持ピン21とテーパスプリング40aとの干渉を容易に回避できる。
【0099】
また、ブレーキ装置100,200は、内輪26の側面26bに接触する第1受け部51をさらに備え、付勢部材(復元ばね40,40a,140,145)は、内輪26の側面26bよりも径方向外側において第1受け部51に当接し、第1受け部51を介して内輪26の側面を付勢する。
【0100】
この構成によれば、モーメントアームの長さが大きくなるため付勢部材(復元ばね40,40a,140,145)から第1受け部51に付与される力が大きくなり、球面ベアリング24により大きな復元力を与えることができる。
【0101】
また、ブレーキ装置300は、付勢部材(復元ばね240)が、球面ベアリング24よりも第2キャリパアーム14側かつ第1支持ピン21よりも鉛直方向上側において、挿通孔20aの内周面と第1支持ピン21の外周面との間に設けられ第1支持ピン21を付勢する。
【0102】
この構成では、付勢部材(復元ばね240)によって第1支持ピン21に直接復元力が付与される。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。