特許第6688681号(P6688681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友理工株式会社の特許一覧

特許6688681電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法
<>
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000002
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000003
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000004
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000005
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000006
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000007
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000008
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000009
  • 特許6688681-電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688681
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20200421BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20200421BHJP
   H02K 15/16 20060101ALI20200421BHJP
   H02K 33/00 20060101ALI20200421BHJP
   B06B 1/14 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H02K5/24 A
   F16F15/02 B
   H02K15/16 Z
   H02K33/00 A
   B06B1/14
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-106774(P2016-106774)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-212859(P2017-212859A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】金谷 知宏
(72)【発明者】
【氏名】大路 章
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−042017(JP,A)
【文献】 実開昭53−123101(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
B06B 1/14
F16F 15/02
H02K 15/16
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向で相互に加振力を及ぼされる固定子と可動子を備えており、該固定子と該可動子が加振方向と直交する方向で隙間をもって配置されていると共に、該固定子と該可動子を相互に連結する板ばねが軸直角方向に広がって設けられて、それら固定子と可動子が板ばねによって加振方向の相対変位を許容されながら加振方向と直交する方向で相互に位置決めされている電磁式アクチュエータにおいて、
前記固定子および前記可動子に対して加振方向の両外側に離れて前記板ばねが配設されており、且つ該板ばねは該固定子と該可動子への固定前の状態下において該固定子と該可動子の軸直角方向での相対的な変位が許容される構造となっていると共に、該板ばねが該固定子と該可動子へ固定されることで該固定子と該可動子が軸直角方向で位置決めされている一方、
各該板ばねには、厚さ方向に貫通する貫通孔が加振方向で相互に対応する位置において、且つ前記固定子と前記可動子の隙間と対応する部分に形成されていることを特徴とする電磁式アクチュエータ。
【請求項2】
前記板ばねに複数の前記貫通孔が形成されており、それら複数の貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に並んで配置されている請求項1に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項3】
前記貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に延びる孔断面形状を有している請求項1又は2に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一項に記載の電磁式アクチュエータを備えており、前記固定子が制振対象部材に取り付けられて前記可動子が弾性連結ゴムを介して該制振対象部材で弾性的に支持されるようにしたことを特徴とする能動型制振器。
【請求項5】
一軸方向で相互に加振力を及ぼされる固定子と可動子を備えており、該固定子と該可動子が加振方向と直交する方向で隙間をもって配置されていると共に、該固定子と該可動子を相互に連結する板ばねが設けられて、それら固定子と可動子が板ばねによって加振方向の相対変位を許容されながら加振方向と直交する方向で相互に位置決めされている電磁式アクチュエータの製造方法であって、
前記固定子および前記可動子に対して加振方向の両外側に離れて、軸直角方向に広がって該固定子と該可動子を連結する前記板ばねをそれぞれ配設せしめて、該固定子に対して該可動子の軸直角方向での相対的な変位が許容された非固定状態下で、
各該板ばねにおいて加振方向で相互に対応する位置に形成された貫通孔を通じて固定子と可動子の間にスペース治具を挿入して、それら固定子と可動子の隙間を該スペーサ治具によって設定する隙間設定工程により、該板ばねにおける該貫通孔を介して該固定子と該可動子を軸直角方向で位置決めして、該板ばねを該固定子と該可動子へ固定することを特徴とする電磁式アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
前記スペーサ治具が該貫通孔を通じて前記固定子と前記可動子の間に挿入されるスペーサ部を備えていると共に、該スペーサ治具が該スペーサ部の端部を支持する挿入規定部を備えている請求項に記載の電磁式アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記板ばねに複数の貫通孔が形成されており、それら複数の貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に並んで配置されていると共に、前記スペーサ治具が複数の前記スペーサ部を備えており、それら複数のスペーサ部が前記挿入規定部によって一体的に連結されていると共に、それら複数の該スペーサ部が該複数の貫通孔と対応して周方向に並んで設けられている請求項に記載の電磁式アクチュエータの製造方法。
【請求項8】
前記貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に延びる孔断面形状を有していると共に、前記スペーサ部が該固定子と該可動子の隙間と対応する周方向に延びる板状とされている請求項又はに記載の電磁式アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に加振される固定子と可動子を備えていると共に、それら固定子と可動子が板ばねによって相互に弾性連結された構造を有する電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器、電磁式アクチュエータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、相互に加振される固定子と可動子を備えた電磁式アクチュエータが知られている。電磁式アクチュエータは、例えば特開2012−42017号公報(特許文献1)に示されているように、固定子と可動子の何れかに設けられたコイルへの通電によって生じる磁界の作用を利用して、固定子と可動子が相互に加振されるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1に示されているように、固定子と可動子は、板ばねによって相互に弾性連結されている場合がある。これにより、固定子と可動子は、コイルへの通電が停止された状態で相互に適切な初期位置で保持されると共に、コイルへの通電時に板ばねの弾性変形によって相対的な変位を許容される。更に、固定子と可動子が板ばねによって軸直角方向で相対的に位置決めされて、固定子と可動子の隙間が維持されることから、それら固定子と可動子の間に磁気的な吸引力および排斥力を全周に亘って適切に作用させることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように電磁式アクチュエータのハウジング内で加振方向と直交して広がる板ばねを設けると、板ばねによってハウジング内の空間が仕切られることから、電磁式アクチュエータの製造時に固定子と可動子を適切な位置に精度よく保持することが難しく、固定子と可動子の相対位置に関係する部材に高い寸法精度が必要であった。更に、固定子と可動子が板ばねによって覆われることから、固定子と可動子の隙間を目視や計測用のレーザー、内視鏡などで確認するなど、内部の確認作業を行うことも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−42017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、板ばねで弾性連結された後の固定子と可動子の位置や表面の状態などを目視や差し入れた器具などで確認することができると共に、製造時には固定子と可動子を高精度に位置決めしながらそれら固定子と可動子を板ばねによって弾性連結することも可能となる、新規な構造の電磁式アクチュエータを提供することにある。
【0007】
また、本発明は、上述の如き電磁式アクチュエータを用いた新規な構造の能動型制振器を提供することも、目的とする。更に、上述の如き電磁式アクチュエータを製造するに際して、固定子と可動子の隙間を簡単に且つ精度よく設定しながら、それら固定子と可動子を板ばねで連結することができる、新規な電磁式アクチュエータの製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、一軸方向で相互に加振力を及ぼされる固定子と可動子を備えており、該固定子と該可動子が加振方向と直交する方向で隙間をもって配置されていると共に、該固定子と該可動子を相互に連結する板ばねが軸直角方向に広がって設けられて、それら固定子と可動子が板ばねによって加振方向の相対変位を許容されながら加振方向と直交する方向で相互に位置決めされている電磁式アクチュエータにおいて、前記固定子および前記可動子に対して加振方向の両外側に離れて前記板ばねが配設されており、且つ該板ばねは該固定子と該可動子への固定前の状態下において該固定子と該可動子の軸直角方向での相対的な変位が許容される構造となっていると共に、該板ばねが該固定子と該可動子へ固定されることで該固定子と該可動子が軸直角方向で位置決めされている一方、各該板ばねには、厚さ方向に貫通する貫通孔が加振方向で相互に対応する位置において、且つ前記固定子と前記可動子の隙間と対応する部分に形成されていることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、固定子と可動子が板ばねによって相互に連結された状態において、それら固定子と可動子を板ばねの貫通孔を通じて確認したり、板ばねの貫通孔を通じて器具を差し入れることにより固定子や可動子の位置を器具で調節するなどの操作をしたりすることができる。
【0011】
特に、板ばねの貫通孔が固定子と可動子の隙間と対応する位置に形成されていることから、固定子と可動子の隙間を目視や計測用器具によって確認したり、固定子と可動子の隙間に治具を差し入れることによって固定子と可動子の相対的な位置を簡単に設定することなども可能になる。
【0013】
また、本態様によれば、固定子と可動子が加振方向で相互に離れた複数の板ばねによって相互に連結されることから、固定子と可動子が安定して相互に位置決め保持される。しかも、それら複数の板ばねにそれぞれ貫通孔が形成されていると共に、それら複数の板ばねの貫通孔が加振方向で相互に対応する位置に形成されていることにより、例えば、目視による固定子と可動子の隙間の確認がより容易になると共に、器具や治具などをそれら複数の板ばねの貫通孔を通じて固定子と可動子の間などへ挿入し易くなる。
【0015】
さらに、本態様によれば、固定子と可動子を複数の板ばねによってより安定して位置決め保持することができる。更に、それら複数の板ばねに形成される貫通孔が加振方向で相互に対応する位置に配されることから、貫通孔を通じた目視などによる固定子と可動子の相対位置の確認などが容易である。
【0016】
本発明の第の態様は、第一の態様に記載された電磁式アクチュエータにおいて、前記板ばねに複数の前記貫通孔が形成されており、それら複数の貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に並んで配置されているものである。
【0017】
の態様によれば、複数の貫通孔がそれぞれ固定子と可動子の隙間と対応する位置に形成されることから、周方向の複数箇所において固定子と可動子の隙間を貫通孔を通じて確認などすることができる。
【0018】
本発明の第の態様は、第一又は第二の態様に記載された電磁式アクチュエータにおいて、前記貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に延びる孔断面形状を有しているものである。
【0019】
の態様によれば、貫通孔が周方向に長い孔断面形状を有していることによって、貫通孔の形成による板ばねのばね特性への影響などを抑えつつ、固定子と可動子の隙間を広い範囲に亘って確認したり、固定子と可動子を広い範囲で器具や治具によって操作乃至は保持したりすることなどが可能になる。
【0020】
本発明の第の態様は、能動型制振器であって、第一〜第の何れか1つの態様に記載された電磁式アクチュエータを備えており、前記固定子が制振対象部材に取り付けられて前記可動子が弾性連結ゴムを介して該制振対象部材で弾性的に支持されるようにしたことを、特徴とする。
【0021】
このような第の態様に従う構造とされた能動型制振器によれば、固定子と可動子の隙間を確認したり、固定子と可動子の相対位置を高精度に設定したりすることが可能な電磁式アクチュエータを採用することで、例えば目的とする制振性能を安定して得ることができる。
【0022】
本発明の第の態様は、一軸方向で相互に加振力を及ぼされる固定子と可動子を備えており、該固定子と該可動子が加振方向と直交する方向で隙間をもって配置されていると共に、該固定子と該可動子を相互に連結する板ばねが設けられて、それら固定子と可動子が板ばねによって加振方向の相対変位を許容されながら加振方向と直交する方向で相互に位置決めされている電磁式アクチュエータの製造方法であって、前記固定子および前記可動子に対して加振方向の両外側に離れて、軸直角方向に広がって該固定子と該可動子を連結する前記板ばねをそれぞれ配設せしめて、該固定子に対して該可動子の軸直角方向での相対的な変位が許容された非固定状態下で、各該板ばねにおいて加振方向で相互に対応する位置に形成された貫通孔を通じて固定子と可動子の間にスペース治具を挿入して、それら固定子と可動子の隙間を該スペーサ治具によって設定する隙間設定工程により、該板ばねにおける該貫通孔を介して該固定子と該可動子を軸直角方向で位置決めして、該板ばねを該固定子と該可動子へ固定することを、特徴とする。
【0023】
このような第の態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータの製造方法によれば、板ばねの貫通孔を通じて固定子と可動子の隙間にスペーサ治具を挿入することで、固定子と可動子の隙間をスペーサ治具によって簡単に且つ高精度に設定することができる。
【0024】
本発明の第の態様は、第の態様に記載された電磁式アクチュエータの製造方法において、前記スペーサ治具が該貫通孔を通じて前記固定子と前記可動子の間に挿入されるスペーサ部を備えていると共に、該スペーサ治具が該スペーサ部の端部を支持する挿入規定部を備えているものである。
【0025】
の態様によれば、スペーサ部を貫通孔から固定子と可動子の隙間へ挿入する際に、挿入規定部が板ばねなどに当接するまで挿入することにより、スペーサ部を固定子と可動子の隙間に対して適当な位置まで簡単に挿入することができる。また、製造作業者が挿入規定部を持つことにより、スペーサ治具の取り扱いが容易になり得る。
【0026】
本発明の第の態様は、第の態様に記載された電磁式アクチュエータの製造方法において、前記板ばねに複数の貫通孔が形成されており、それら複数の貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に並んで配置されていると共に、前記スペーサ治具が複数の前記スペーサ部を備えており、それら複数のスペーサ部が前記挿入規定部によって一体的に連結されていると共に、それら複数の該スペーサ部が該複数の貫通孔と対応して周方向に並んで設けられているものである。
【0027】
の態様によれば、複数のスペーサ部を複数の貫通孔を通じて固定子と可動子の隙間へ周方向の複数箇所で挿入することができる。これにより、固定子と可動子の隙間をより精度よく設定することが可能となる。
【0028】
本発明の第の態様は、第又は第の態様に記載された電磁式アクチュエータの製造方法において、前記貫通孔が前記固定子と前記可動子の隙間と対応する周方向に延びる孔断面形状を有していると共に、前記スペーサ部が該固定子と該可動子の隙間と対応する周方向に延びる板状とされているものである。
【0029】
の態様によれば、スペーサ部が周方向に十分な長さをもって固定子と可動子の隙間へ挿入されることから、固定子と可動子がスペーサ部によって安定して位置決めされて、固定子と可動子の隙間が精度よく設定される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、固定子と可動子を相互に連結する板ばねに貫通孔が形成されていることから、固定子と可動子が板ばねによって相互に連結された状態において、それら固定子と可動子を板ばねに形成された貫通孔を通じて確認したり、板ばねの貫通孔を通じて器具を差し入れることにより固定子や可動子の位置を器具で調節するなどの操作をしたりすることができる。しかも、板ばねの貫通孔が固定子と可動子の隙間と対応する位置に形成されていることによって、固定子と可動子の隙間を目視や器具によって確認したり、固定子と可動子の隙間に治具を差し入れることなども容易となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一の実施形態としての能動型制振器を示す縦断面図であって、図2のI−I断面に相当する図。
図2図1のII−II断面図。
図3図1のIII−III断面図。
図4図1に示す能動型制振器の製造における隙間設定工程を説明する縦断面図。
図5図4に示す能動型制振器の製造における隙間設定工程に用いられるスペーサ治具の斜視図。
図6図4に示す能動型制振器の製造における隙間設定工程を説明する斜視図。
図7】本発明の別の一実施形態としての電磁式アクチュエータを構成する板ばねの平面図。
図8】本発明のまた別の一実施形態としての電磁式アクチュエータの製造における隙間設定工程に用いられるスペーサ治具の斜視図。
図9】本発明の更にまた別の一実施形態としての電磁式アクチュエータの製造における隙間設定工程に用いられるスペーサ治具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1,2には、本発明の第一の実施形態としての電磁式アクチュエータ10を備えた能動型制振器12が示されている。能動型制振器12を構成する電磁式アクチュエータ10は、相互に加振力を及ぼされる固定子14と可動子16を備えている。以下の説明では、原則として、上下方向とは電磁式アクチュエータ10の加振方向であり、能動型制振器12の軸方向でもある、図1中の上下方向を言う。
【0034】
より詳細には、固定子14は、コイル18にアウタヨーク20を組み付けたコイル部材22を備えている。アウタヨーク20は、鉄などの強磁性材料で形成されており、コイル18の上下面と外周面を覆うように設けられており、本実施形態では、コイル18の上面と内周面の上部を覆う部材と、コイル18の下面および外周面と内周面の下部を覆う部材とによって構成されている。また、アウタヨーク20は、内周面の上部を覆う上磁極形成部24と下部を覆う下磁極形成部26を備えており、それら上磁極形成部24と下磁極形成部26の上下間に磁気ギャップ28が形成されて、それら上磁極形成部24と下磁極形成部26が磁気ギャップ28を隔てて上下で相互に離れている。本実施形態では、軸直平面に対して相互に面対称構造とされた二組のコイル部材22,22が、上下に重ね合わされて配設されている。
【0035】
そして、コイル18の端部が後述するハウジング64の外部へ取り出されて電源装置30に接続されており、コイル18への通電によってコイル18の周囲に磁界が形成されると共に、磁束がアウタヨーク20で構成された磁路によって導かれて上下の磁極形成部24,26にそれぞれ磁極が形成されるようになっている。本実施形態では、上下のコイル18,18が相互に逆巻きとされており、それらコイル18,18への通電によって、上側のアウタヨーク20の上磁極形成部24と下側のアウタヨーク20の上磁極形成部24に相互に異種の磁極が形成されるようになっている。
【0036】
一方、可動子16は、略円環板形状とされた永久磁石32の両面に上インナヨーク34と下インナヨーク36を重ね合わせた構造を有している。永久磁石32は、アルニコ系鋳造磁石やバリウム系フェライト磁石などであって、上下方向に着磁されている。
【0037】
上インナヨーク34と下インナヨーク36は、何れも鉄などの強磁性材料で形成されており、全体として略円環板形状とされていると共に、上インナヨーク34の上面と下インナヨーク36の下面がそれぞれテーパ面とされて、それら上下のインナヨーク34,36が何れも外周へ行くに従って次第に薄肉となっている。そして、上インナヨーク34が永久磁石32の上面に重ね合わされていると共に、下インナヨーク36が永久磁石32の下面に重ね合わされており、それらインナヨーク34,36が磁化されて、インナヨーク34,36の外周面に常に磁極が形成されている。
【0038】
このような構造とされた可動子16は、固定子14の内周へ挿入されており、それら固定子14と可動子16が隙間38をもって軸直角方向で相互に離れた位置に配置されている。また、固定子14と可動子16は、アウタヨーク20,20と上下のインナヨーク34,36の間に作用する磁気的な吸引力が釣り合う初期位置に配置されており、本実施形態では、固定子14の上下中央と可動子16の上下中央が略一致している。なお、初期位置において、上インナヨーク34の外周端部が上側のアウタヨーク20の磁気ギャップ28と軸方向で位置決めされていると共に、下インナヨーク36が下側のアウタヨーク20の磁気ギャップ28と軸方向で位置決めされている。
【0039】
また、固定子14と可動子16は、上部が上板ばね40によって相互に連結されていると共に、下部が下板ばね42によって相互に連結されている。なお、本実施形態では、上下の板ばね40,42が相互に略同一の構造であることから、ここでは上板ばね40の構造について説明する。
【0040】
上板ばね40は、図1,3に示すように、薄肉の略円環板形状を有しており、径方向中央部分を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔44が形成されていると共に、3つの第一貫通孔46と3つの第二貫通孔48がそれぞれ上板ばね40を厚さ方向に貫通して形成されている。第一貫通孔46は、図3に示すように、上板ばね40の中央付近まで達する略扇形の孔断面形状を有して所定の径方向幅寸法で周方向に延びており、3つの第一貫通孔46が周方向で相互に離れて形成されている。第二貫通孔48は、図3に示すように、所定の径方向幅寸法で周方向に延びるスリット状とされており、外周端が第一貫通孔46の外周端と略同じ径方向位置にあると共に、内周端が第一貫通孔46の内周端よりも外周側に位置している。そして、第一貫通孔46と第二貫通孔48が上板ばね40の周方向で交互に形成されており、3つの第一貫通孔46,46,46と3つの第二貫通孔48,48,48が周方向に並んで且つ周方向で相互に離れて配置されている。本実施形態では、3つの第一貫通孔46,46,46と3つの第二貫通孔48,48,48が、上板ばね40の周方向で略均等に配置されている。
【0041】
このような構造とされた上板ばね40は、外周端部が固定子14の上面に重ね合わされて固定されていると共に、内周端部が可動子16の内周端部の上面に重ね合わされて固定されている。一方、上板ばね40と同じ構造とされた下板ばね42は、外周端部が固定子14の下面に重ね合わされて固定されていると共に、内周端部が可動子16の内周端部の面に重ね合わされて固定されている。これにより、上下の板ばね40,42が固定子14および可動子16を挟んで軸方向の両外側に相互に離れて配置されており、固定子14の上端部と可動子16の上端部が上板ばね40によって相互に連結されていると共に、固定子14の下端部と可動子16の下端部が下板ばね42によって相互に連結されている。なお、上下の板ばね40,42は、固定子14および可動子16に接触状態で重ね合わされることから、非磁性材料で形成されていることが望ましい。
【0042】
このように、軸直角方向に広がる上下の板ばね40,42によって相互に連結された固定子14と可動子16は、上下の板ばね40,42が厚さ方向で弾性変形することにより、上下方向の相対的な変位を許容されていると共に、上下の板ばね40,42によって軸直角方向で相互に位置決めされている。また、固定子14と可動子16は、コイル18,18への通電が停止された状態において、上下の板ばね40,42の弾性に基づいて相対的な初期位置で弾性的に保持されている。
【0043】
また、上下の板ばね40,42に形成された第一貫通孔46の外周部分が、固定子14の内周面50と可動子16の外周面51との径方向間の隙間38と対応して周方向に延びていると共に、上下の板ばね40,42に形成された第二貫通孔48が、固定子14の内周面50と可動子16の外周面51との径方向間の隙間38と対応して周方向に延びている。そして、上下の板ばね40,42に形成された第一貫通孔46と第二貫通孔48は、固定子14の内周面50と可動子16の外周面51との径方向間の隙間38に対して軸方向の投影で重なり合う隙間38と対応する位置に配置されている。
【0044】
本実施形態では、上下の板ばね40,42の第一貫通孔46の外周部分と第二貫通孔48と隙間38が、何れも中心軸と略同一中心円の周上に延びる円弧形状を有している。また、上下の板ばね40,42の第一貫通孔46の外周部分と第二貫通孔48は、相互に略同じ形状を有していると共に、周上で等間隔に設けられている。
【0045】
さらに、固定子14の内周面50および可動子16の外周面51が、周方向で部分的に第一貫通孔46と第二貫通孔48の軸方向投影上に位置しており、固定子14の内周面50および可動子16の外周面51の各軸方向延長上に、第一貫通孔46および第二貫通孔48が開口している。換言すれば、固定子14の内周面50および可動子16の外周面51の径方向での対向面間距離が、第一貫通孔46および第二貫通孔48の径方向幅寸法よりも小さくされており、それら固定子14の内周面50および可動子16の外周面51が、軸方向の投影において第一貫通孔46および第二貫通孔48の幅方向内側に位置している。なお、固定子14の内周面50と可動子16の外周面51が何れも第一貫通孔46と第二貫通孔48の軸方向投影上に位置していると共に、それら内周面50と外周面51の少なくとも一方が、軸方向の投影において第二貫通孔48の幅方向端縁と重なり合うように、第二貫通孔48の幅方向端縁と径方向で略同じ位置に配置されていても良い。また、固定子14の内周面50と可動子16の外周面51の両方が、軸方向の投影において第二貫通孔48の幅方向端縁と重なり合うように配されて、それら内周面50と外周面51の径方向での対向面間距離が、第二貫通孔48の径方向幅寸法と同じに設定されていても良い。
【0046】
更にまた、本実施形態では、上板ばね40の第一貫通孔46と下板ばね42の第一貫通孔46が周方向の略同じ位置に配置されていると共に、上板ばね40の第二貫通孔48と下板ばね42の第二貫通孔48が周方向の略同じ位置に配置されている。要するに、本実施形態の上板ばね40と下板ばね42は、第一貫通孔46および第二貫通孔48の周方向での位置がそれぞれ相互に同じになるように周方向の向きを相互に決められている。これにより、上板ばね40の第一貫通孔46と下板ばね42の第一貫通孔46が軸方向で相互に対応する位置に形成されて直列的に配置されていると共に、上板ばね40の第二貫通孔48と下板ばね42の第二貫通孔48が軸方向で相互に対応する位置に形成されて直列的に配置されている。
【0047】
また、下板ばね42の下方には、弾性連結ゴム52が配設されている。弾性連結ゴム52は、略円環板形状のゴム弾性体であって、内周端部にインナ連結部材54が加硫接着されていると共に、外周端部にアウタ連結部材56が加硫接着されている。
【0048】
インナ連結部材54は、全体として小径の略円筒形状とされており、外周へ突出する軸方向中間部分に対して弾性連結ゴム52の内周端部が全周に亘って連続的に加硫接着されている。そして、インナ連結部材54が下板ばね42の内周端部に下方から重ね合わされており、可動子16と上下の板ばね40,42とインナ連結部材54の各中央孔に上方から連結用ボルト60が挿通されていると共に、ねじ山を形成された連結用ボルト60の下端部に連結用ナット62が螺着されることにより、それら可動子16と上下の板ばね40,42とインナ連結部材54が上下方向で相互に一体的に連結されている。
【0049】
なお、上板ばね40と下板ばね42の各ボルト挿通孔44が、何れも連結用ボルト60の軸部の外径寸法よりも大径とされていると共に、可動子16の中心孔とインナ連結部材54の中心孔が、連結用ボルト60の軸部の外径寸法と略同じ直径で形成されている。
【0050】
アウタ連結部材56は、外周へ向けて開口する横転溝形状を有しており、内周端に位置する溝底壁が弾性連結ゴム52の外周面に重ね合わされて固着されている。また、下側の溝側壁が上側の溝側壁よりも外周へ大きく突出している。そして、アウタ連結部材56は、上側の溝側壁が下板ばね42の外周端部に下方から重ね合わされており、後述するハウジング64によって固定子14および下板ばね42の外周端部に固定されている。
【0051】
そして、インナ連結部材54が可動子16に固定されると共に、アウタ連結部材56が固定子14に固定されることにより、固定子14と可動子16が弾性連結ゴム52によって下板ばね42よりも下方で相互に弾性連結されており、可動子16が弾性連結ゴム52を介して固定子14によって弾性的に支持されている。
【0052】
また、固定子14は、ハウジング64に固定されている。ハウジング64は、金属などで形成された高剛性の部材であって、全体として中空円柱形状とされている。より具体的には、ハウジング64は、略円筒形状の中間筒部材66と、中間筒部材66の上開口部を塞ぐ蓋部材68と、中間筒部材66の下開口部を塞ぐ底部材70とによって構成されている。
【0053】
中間筒部材66は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、上端部に上かしめ片72を備えていると共に、下端部に下かしめ片74を備えている。また、中間筒部材66の上下中間部分に固定子14がアウタヨーク20,20を重ね合わされた状態で挿入されることから、中間筒部材66は磁束の漏れを防ぐためにアルミニウム合金などの非磁性材料で形成されていることが望ましい。
【0054】
蓋部材68は、逆向きの灰皿形状を有しており、開口部にフランジ状の上かしめ部76を備えている。この上かしめ部76が上板ばね40の外周端部に上方から重ね合わされて中間筒部材66に挿入された状態で、中間筒部材66の上かしめ片72が内周へ屈曲せしめられて上かしめ部76に上方から重ね合わされることにより、蓋部材68が中間筒部材66の上部に固定されて、中間筒部材66の上開口が蓋部材68によって塞がれている。なお、蓋部材68の径方向中央下面には、略円板形状の上ストッパゴム78が固着されている。
【0055】
底部材70は、略有底円筒形状を有しており、開口部にフランジ状の下かしめ部80を備えている。この下かしめ部80が中間筒部材66の下かしめ片74によってかしめ固定されることにより、底部材70が中間筒部材66の下部に固定されて、中間筒部材66の下開口が底部材70によって塞がれている。なお、底部材70の径方向中央上面には、略円板形状の下ストッパゴム82が固着されている。
【0056】
さらに、弾性連結ゴム52の外周端部に固着されたアウタ連結部材56の下側の溝側壁が、底部材70の下かしめ部80と上下に重ね合わされており、アウタ連結部材56が底部材70とともに中間筒部材66にかしめ固定されている。これにより、固定子14が蓋部材68の上かしめ部76と底部材70の下かしめ部80の間で上下に挟まれており、固定子14がハウジング64に対して位置決めされている。
【0057】
このような構造とされた能動型制振器12は、固定子14を支持するハウジング64が制振対象部材である車両ボデー84に固定されることによって、車両に取り付けられるようになっており、車両装着状態で可動子16が弾性連結ゴム52を介して車両ボデー84に弾性的に支持されている。ハウジング64の車両ボデー84に対する取付構造は、特に限定されるものではないが、例えば、中間筒部材66や底部材70に外嵌されるブラケットを介してボルト固定したり、中間筒部材66や底部材70を車両ボデー84の圧入孔へ直接圧入して固定する他、溶接によってハウジング64を車両ボデー84に固定することもできる。
【0058】
そして、固定子14のコイル18,18への通電によって、アウタヨーク20,20の各上下の磁極形成部24,26に磁極が形成されることにより、上側のアウタヨーク20と上インナヨーク34の間と、下側のアウタヨーク20と下インナヨーク36の間にそれぞれ磁気的な吸引力および排斥力が作用して、可動子16が固定子14に対して軸方向で相対的に変位せしめられる。
【0059】
制振対象振動の周波数に応じてコイル18,18への通電が制御されることにより、可動子16が目的とする周波数で上下に加振される。そして、可動子16から弾性連結ゴム52を介してハウジング64に伝達された加振力が車両ボデー84に及ぼされることによって、車両ボデー84の振動が相殺的に低減されるようになっている。
【0060】
このような本実施形態に従う構造とされた能動型制振器12では、加振力を発揮するアクチュエータとして電磁式アクチュエータ10が採用されている。この電磁式アクチュエータ10は、固定子14と可動子16を相互に連結する上板ばね40と下板ばね42に第一貫通孔46と第二貫通孔48が形成されていると共に、第一貫通孔46と第二貫通孔48が固定子14と可動子16の径方向間の隙間38に対して軸方向の投影において重なり合っている。これにより、ハウジング64の蓋部材68を装着する前に固定子14と可動子16を上下の板ばね40,42で相互に連結した状態において、固定子14と可動子16の径方向間の隙間38が第一貫通孔46と第二貫通孔48を通じて露出している。従って、固定子14と可動子16を上下の板ばね40,42で相互に連結した状態において、例えば、固定子14と可動子16の隙間38を第一, 第二貫通孔46,48を通じて目視で確認したり、固定子14と可動子16の径方向対向面間距離(隙間38の径方向幅寸法)を測定する他、ファイバースコープのような検査用器具などを第一, 第二貫通孔46,48を通じて差し入れることも可能になる。
【0061】
さらに、第一, 第二貫通孔46,48の径方向幅寸法が隙間38の径方向幅寸法よりも大きくされて、固定子14の内周面50と可動子16の外周面51が何れも第一, 第二貫通孔46,48を通じて露出していることから、固定子14と可動子16の相対的な径方向位置をより正しく把握することが容易である。
【0062】
特に、以下に説明するような電磁式アクチュエータ10の製造方法によれば、固定子14と可動子16を径方向で簡単に且つ高精度に位置決めすることができる。
【0063】
すなわち、先ず、固定子14をハウジング64の中間筒部材66に挿入すると共に、固定子14に可動子16を挿入する。更に、上板ばね40と下板ばね42を中間筒部材66に各一方の開口部から挿入して、それら上板ばね40と下板ばね42を固定子14と可動子16の上下各一方の面に重ね合わせる。更にまた、インナ連結部材54およびアウタ連結部材56を備えた弾性連結ゴム52を中間筒部材66に挿入して、インナ連結部材54とアウタ連結部材56を下板ばね42に下方から重ね合わせる。
【0064】
次に、上板ばね40と可動子16と下板ばね42とインナ連結部材54の各中心孔に対して、連結用ボルト60を挿通させて、ねじ山を形成された連結用ボルト60の下端部に連結用ナット62を螺着させる。ここでは、上板ばね40と可動子16と下板ばね42とインナ連結部材54とが軸方向で分離せず、且つ、上板ばね40および下板ばね42と可動子16およびインナ連結部材54が軸直角方向の相対変位を許容されるように、連結用ボルト60と連結用ナット62の締込み量を調節して仮連結する。
【0065】
また次に、スペーサ治具86を中間筒部材66に挿入する。スペーサ治具86は、図5に示すように、複数のスペーサ部88が略円環形状の挿入規定部90から突出した構造を有している。スペーサ部88は、固定子14と可動子16の隙間38と対応する周方向に延びる湾曲板形状を有しており、厚さ寸法が固定子14と可動子16の径方向間に設定されるべき距離と同じに設定されている。更に、スペーサ部88は、複数が周方向に並んで形成されており、周方向で上下の板ばね40,42の第一, 第二貫通孔46,48に対応する位置に配置されている。それら複数のスペーサ部88は、相互に略同じ断面形状で上下に延びており、周方向で等間隔に配置されている。
【0066】
本実施形態の複数のスペーサ部88は、基端部(図4の上端部)が環状の挿入規定部90によって一体的に連結されている。尤も、複数のスペーサ部88は、挿入規定部90によって一体的に連結されている必要はなく、相互に独立していても良い。更に、例えば、挿入規定部90が周方向に複数に分割された構造なども採用可能であり、幾つかのスペーサ部88が挿入規定部90の一部によって相互に連結されていると共に、他の幾つかのスペーサ部88が挿入規定部90の他の一部によって相互に連結されていても良い。更にまた、スペーサ部88と挿入規定部90は一体構造に限定されるものではなく、互いに独立して後固定されるようにしても良い。
【0067】
そして、図4,6に示すように、スペーサ治具86のスペーサ部88を、上板ばね40の第一貫通孔46又は第二貫通孔48を通じて固定子14と可動子16の径方向間の隙間38へ挿入する。これにより、連結用ボルト60と連結用ナット62によって上下の板ばね40,42と仮連結された可動子16が、上下の板ばね40,42と中間筒部材66によって相対的に位置決めされた固定子14に対して軸直角方向へ適宜に変位して、固定子14と可動子16の径方向間の距離が適当に設定される。以上により、固定子14と可動子16の径方向間の距離、換言すれば隙間38の径方向寸法をスペーサ部88の厚さによって設定する隙間設定工程を完了する。なお、図6では、スペーサ治具86のスペーサ部88を上板ばね40の第一貫通孔46又は第二貫通孔48へ挿通していることが理解し易いように、インナ連結部材54およびアウタ連結部材56を備えた弾性連結ゴム52と中間筒部材66の図示が省略されている。
【0068】
さらに、スペーサ治具86の挿入規定部90を中間筒部材66の上部に挿入して上板ばね40の上面に重ね合わせることにより、スペーサ部88の隙間38に対する軸方向位置を容易に規定することができる。本実施形態では、スペーサ部88が固定子14と可動子16の隙間38を上下に貫通しており、スペーサ部88の下端部が下板ばね42の第一貫通孔46又は第二貫通孔48に挿通されている。なお、挿入規定部90が円環形状とされていることにより、上板ばね40よりも上方へ突出する連結用ボルト60の頭部が挿入規定部90の中心孔を通じて上方へ露出している。
【0069】
このようにスペーサ治具86によって固定子14と可動子16を相対的に位置決めした状態で、連結用ボルト60と連結用ナット62に締付けトルクを及ぼして、可動子16と上下の板ばね40,42とインナ連結部材54とを相互に連結固定する。これにより、可動子16と上下の板ばね40,42とインナ連結部材54は、相互に一体的に固定されて、可動子16およびインナ連結部材54の上下の板ばね40,42に対する軸直角方向の相対変位も阻止されている。
【0070】
次に、予め準備した底部材70を中間筒部材66に下方から挿入して、底部材70の下かしめ部80を中間筒部材66の下かしめ片74でかしめ固定することにより、中間筒部材66と底部材70を連結固定する。この際に、底部材70の下かしめ部80と重ね合わされるアウタ連結部材56の下側の溝側壁を、下かしめ部80とともに中間筒部材66の下かしめ片74でかしめ固定する。
【0071】
また次に、スペーサ治具86を中間筒部材66から上方へ取り除いた後で、予め準備した蓋部材68を中間筒部材66に挿入して、上板ばね40に蓋部材68を上方から重ね合わせる。そして、中間筒部材66の上かしめ片72を内周へ折り曲げて蓋部材68の上かしめ部76に重ね合わせることにより、ハウジング64を完成する。また、中間筒部材66に蓋部材68を固定することにより、固定子14と上下の板ばね40,42の外周端部とアウタ連結部材56を蓋部材68の上かしめ部76と底部材70の下かしめ部80との上下間で位置決めする。以上によって、電磁式アクチュエータ10を備えた能動型制振器12の製造工程を完了する。
【0072】
なお、本実施形態では、固定子14と上下の板ばね40,42の外周端部を相互に固定するよりも先に可動子16と上下の板ばね40,42の中央部分を連結用ボルト60と連結用ナット62によって固定しているが、例えば蓋部材68と底部材70によって中間筒部材66の開口が塞がれる構造でなければ、固定子14と上下の板ばね40,42を相互に固定した後で、連結用ボルト60と連結用ナット62によって可動子16と上下の板ばね40,42を相互に連結することもできる。更に、中間筒部材66の開口が蓋部材68と底部材70によって塞がれる構造でなければ、固定子14および可動子16の両方を上下の板ばね40,42に固定した後で、スペーサ治具86を取り外してスペーサ部88を隙間38から抜き取るようにしても良い。
【0073】
このような本実施形態に従う電磁式アクチュエータ10の製造方法によれば、固定子14と可動子16の径方向間の隙間38が、上板ばね40の第一, 第二貫通孔46,48を通じて固定子14と可動子16の径方向間に挿入されるスペーサ治具86のスペーサ部88の厚さによって簡単且つ高精度に設定される。従って、固定子14と可動子16の間に作用する磁気的な吸引力および排斥力を精度よく得ることができて、例えば電磁式アクチュエータ10を用いた能動型制振器12において優れた制振性能を得ることができる。
【0074】
本実施形態では、複数のスペーサ部88が周方向に並んで設けられて、それら複数のスペーサ部88が何れも上板ばね40の第一, 第二貫通孔46,48を通じて固定子14と可動子16の間に挿入されることから、固定子14と可動子16が周方向の複数箇所でスペーサ部88によって相互に位置決めされる。これにより、固定子14と可動子16の位置決めをより精度よく実現することができて、目的とする加振力をより高精度に得ることができる。
【0075】
しかも、複数のスペーサ部88と、それらが挿入される第一貫通孔4の外周部分および第二貫通孔48は、それぞれ略同一形状とされていると共に、周方向で等間隔に並んで配置されていることから、特定のスペーサ部88と特定の貫通孔448を周方向で相互に位置合わせする必要がなく、スペーサ部88を貫通孔448へ挿入し易くなっている。しかも、固定子14と可動子16の隙間38の大きさが、周方向で等間隔に挿入される相互に同一形状のスペーサ部88によって設定されることから、固定子14と可動子16の隙間38をより安定して設定することが可能になる。
【0076】
また、本実施形態のスペーサ部88は、固定子14と可動子16の隙間38と対応して周方向に延びる湾曲板形状とされており、外周面が固定子14の内周面50に対して周方向にある程度の幅をもって当接するようになっていると共に、内周面が可動子16の外周面51に対して周方向にある程度の幅をもって当接するようになっている。それ故、固定子14と可動子16の隙間38にスペーサ部88を差し入れて固定子14と可動子16を相対的に位置決めする際に、固定子14と可動子16をスペーサ部88によって適切な位置で安定して保持することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態において上下の板ばね40,42に形成されている第一, 第二貫通孔46,48の形状は、あくまでも例示であって、他の形状の貫通孔も採用され得る。具体的には、例えば、図7に示す板ばね100のように、同じ形状の貫通孔102が周方向に6つ形成されていても良い。図7に示す板ばね100の貫通孔102は、内周部分が略扇形のばね調節部104とされていると共に、外周部分が周方向へ延びるスリット状のスペーサ挿通部106とされており、スペーサ挿通部106がばね調節部104よりも周方向長さを長くされている。このような板ばね100は、貫通孔102のスペーサ挿通部106が固定子と可動子の径方向間の隙間と位置決めされるようになっており、前記実施形態で示したスペーサ治具のスペーサ部がスペーサ挿通部106を通じて固定子と可動子の径方向間に挿入されるようになっている。
【0078】
さらに、板ばねに形成される貫通孔の数は、特に限定されるものではなく、例えば、周方向に略C字状に繋がる1つの貫通孔が形成されていても良い。この場合には、図8に示すようなスペーサ治具110を採用することもできる。即ち、スペーサ治具110は、挿入規定部90から突出して周方向で一周に満たないC字状に延びる湾曲板形状のスペーサ部112を1つだけ備えており、このスペーサ部112を板ばねにおいて周方向に略C字状に延びる貫通孔に挿通できるようになっている。
【0079】
更にまた、スペーサ治具のスペーサ部は、好適には前記実施形態に示すような湾曲板形状とされるが、例えば、図9に示すスペーサ治具120のようなロッド状のスペーサ部122を採用することも可能であり、スペーサ部の寸法が固定子と可動子の径方向間の好適な距離と等しくされて、固定子と可動子がスペーサ部の挿入によって適切な相対位置に位置決めされるようになっていれば良い。
【0080】
また、前記実施形態では、上下の板ばね40,42が配設されており、それら複数の板ばね40,42にそれぞれ貫通孔46,48が形成された構造を例示したが、例えば、上板ばねだけに貫通孔が形成されていると共に、下板ばねには固定子と可動子の隙間に対応する位置に貫通孔が形成されていなくても良い。
【0081】
さらに、前記実施形態では、スペーサ治具86のスペーサ部88を上方からのみ貫通孔46,48や隙間38に挿通する例を示したが、上下対称構造とされた二つのスペーサ治具を採用して、上側のスペーサ治具のスペーサ部を上板ばねに対して上方から挿通すると共に、下側のスペーサ治具のスペーサ部を下板ばねに対して下方から挿通することにより、固定子と可動子の隙間に対してスペーサ部を上下からそれぞれ挿入するようにしても良い。
【0082】
また、前記実施形態では、扇孔断面形状とされた第一貫通孔46の内周部分が板ばね40,42のばね特性を調節するために形成されているが、例えばばね特性を調節する略渦巻状の孔を備えて、周方向へ傾斜しながら径方向へ延びる複数の腕部を有する形状の板ばねなども採用可能である。なお、貫通孔は、板ばねのばね特性を調節する孔(ばね調節孔)を利用しても良いし、ばね調節孔を部分的に拡張するようにして一体的に形成されていても良いし、ばね調節孔とは独立して形成されていても良い。
【0083】
また、前記実施形態では、筒状の固定子14に対して可動子16が挿入された構造を例示したが、例えば、可動子が筒状とされて、固定子が可動子の内周へ挿入される構造なども採用することが可能である。なお、コイル18が固定子14に設けられていることも必須ではなく、可動子がコイルを備えているとともに固定子が永久磁石を備える構造とされていても良い。
【0084】
また、本発明の適用範囲は、能動型制振器用の電磁式アクチュエータに限定されるものではなく、例えば、能動型流体封入式防振装置用の電磁式アクチュエータに本発明を適用することもできる。更に、本発明に係る電磁式アクチュエータは、自動車用にも限定されず、例えば、洗濯機などの家電を制振対象とする能動型制振器などにも適用され得る。
【符号の説明】
【0085】
10:電磁式アクチュエータ、12:能動型制振器、14:固定子、16:可動子、38:隙間、40:上板ばね(板ばね)、42:下板ばね(板ばね)、46:第一貫通孔(貫通孔)、48:第二貫通孔(貫通孔)、52:弾性連結ゴム、86,110,120:スペーサ治具、90:挿入規定部、88,112,122:スペーサ部、100:板ばね、102:貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9