(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688691
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】整列した配向繊維強化ポリマー複合体の創出
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20200421BHJP
B29K 105/10 20060101ALN20200421BHJP
【FI】
B29B11/16
B29K105:10
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-120469(P2016-120469)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-19268(P2017-19268A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2019年6月17日
(31)【優先権主張番号】14/793,193
(32)【優先日】2015年7月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・アルフレッド・ベック
(72)【発明者】
【氏名】ランジート・ラオ
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03617437(US,A)
【文献】
米国特許第03947535(US,A)
【文献】
米国特許第03442997(US,A)
【文献】
米国特許第04505777(US,A)
【文献】
特開昭58−079836(JP,A)
【文献】
特開昭60−199996(JP,A)
【文献】
米国特許第06066235(US,A)
【文献】
特表2002−506754(JP,A)
【文献】
特開平03−040853(JP,A)
【文献】
米国特許第04271112(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第10053622(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B29C 39/00−39/44
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/88
C08J 3/00−3/28;99/00
D04H 1/00−18/04
D21F1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維配向および整列システムであって、
繊維配向および整列ヘッドと、
前記繊維配向および整列ヘッドに接続された貯蔵器と、
を備え、
前記繊維配向および整列ヘッドが、
前記貯蔵器からのランダム配向繊維を保持する溶液を受容するように配列された、入口と、
配向構成要素であって、前記入口からの溶液を受容し、作動して前記溶液内で所定の単一方向において整列された繊維を製造するように位置付けされた、配向構成要素と、
前記整列された繊維を伴う溶液を受容し、基材上にそれらを整列方向に堆積するように配列された出口と、
前記出口を通過した流体を収集し、前記繊維の整列を補助する溶液の二次フローを生成し、未使用の流体を前記溶液の貯蔵器に戻すように位置付けされた、リサイクル出口と、
前記入口、前記配向構成要素、前記出口および前記リサイクル出口を含む、ヘッドハウジングと
を含む、繊維配向および整列システム。
【請求項2】
前記配向構成要素が、入口に収縮を含み、前記収縮は、前記ランダム配向繊維をフローの軸に平行な方向に整列させるのに十分に狭く、また、一方向で前記収縮よりも広く該一方向に垂直な方向で前記収縮よりも狭いことにより前記繊維を前記フローの軸に垂直な方向に整列させる出口部分を含む、請求項1に記載の繊維配向および整列システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、繊維複合体シートに関し、より詳細には整列して、任意に配向した繊維強化繊維複合体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
製造プロセスは、繊維プレフォームを使用してもよい。プレフォームは、通常、繊維のシートまたはマットからなる。マットは、所望の形態に成形され、またはマトリックスとしてモールドに挿入される。次いでポリマー材料が、マトリックスに注入され、所望の物品が形成される。次いで物品は硬化され、モールドから除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
繊維プレフォームの形成は、通常、高価な設備を伴う複雑で高価プロセスを含む。良好な強度のために所望の方向に繊維を配向させる試みには1つの問題がある。印刷技術の進歩が、繊維の良好な整列を可能にすると共に、プロセスのコストおよび複雑性を低減するための答えを持ち得るが、これまでのところ、こうした手法は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態は、ハウジング、ランダム配向繊維を保持する溶液を受容するように配列されたハウジングへの入口、ハウジング内の配向構成要素であって、入口からの溶液を受容し、作動して所定の単一方向において整列した繊維を製造するように位置付けされた配向構成要素、および整列した繊維を受容し、基材上にそれらを堆積するように配列されたハウジング上の出口を有する堆積ノズルからなる。
【0005】
別の実施形態は、多孔質基材、堆積ノズル、この堆積ノズルに接続された溶液中のランダム配向繊維の貯蔵器(この堆積ノズル位置は、多孔質基材に隣接し、貯蔵器に接続され、このノズルはランダム配向繊維を受容し、整列した繊維をアウトプットする)、および堆積ノズルが多孔質基材上に整列した繊維を堆積し、整列した繊維を有する繊維プレフォームを製造するときに多孔質基材から流体を除去するために多孔質基材に接続された真空機を含むシステムからなる。
【0006】
別の実施形態は、溶液中のランダム配向繊維の貯蔵器を提供する工程、配向構成要素を有するノズルを通して整列した繊維の溶液としてランダム配向繊維の溶液を多孔質基材上に分配する工程、および繊維を固定して繊維プレフォームを形成する工程を含む方法からなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、配向繊維を有するプレフォームから繊維強化複合体を製造するための方法の実施形態のフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、配向繊維を有するプレフォームから繊維強化複合体を製造するためのシステムの実施形態を示す。
【
図4】
図4は、2ロールミルを有する繊維配向および整列ヘッドの実施形態を示す。
【
図7】
図7は、配向および整列ヘッドからの繊維の角度を変更する実施形態を示す。
【
図8】
図8は、配向および整列ヘッドからの繊維の角度を変更する実施形態を示す。
【
図9】
図9は、配向および整列ヘッドからの繊維の角度を変更する実施形態を示す。
【
図10】
図10は、リサイクルフローを伴う繊維配向および整列ヘッドの代替実施形態を示す。
【
図13】
図13は、繊維プレフォームにマトリックスを浸透させる方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1および2は、配向繊維プレフォームを創出し、その後続いてそのプレフォームを用いて繊維強化複合体を製造するためのシステムおよび方法の実施形態を示す。
図1の議論は、実施形態についての情報およびシステムのバリエーションを提供するために他の図面と関連させる。
【0009】
プロセスの最初の部分において、流体中の繊維懸濁液が10で創出される。懸濁液は、溶液中に分散した低体積フラクションの繊維からなってもよい。1つの実施形態において、溶液は、ニュートン流体からなってもよい。1つの実施形態において、溶液はバインダーを含んでいてもよい。
図2のシステム図において、システム30は、懸濁液を保持するための貯蔵器32を含む。
【0010】
12において、繊維配向および整列ヘッドは
図2において34に示され、ある種の基材上に繊維懸濁液を分配させる。
図2に示される1つの実施形態において、基材38は、固定装置36によって保持される穿孔および/または多孔質基材である。基材は、載置されてもよく、またはそうでなければ真空機のようなアスピレーションシステムに接続されてもよい。アスピレーションデバイス、例えば真空機40は、懸濁液から余分の流体を除去し、繊維を後に残す。これは高フラクション組成の繊維マットをもたらす。
【0011】
溶液がプレフォームマットを十分構築するように分配されたら、または分配中に、プレフォームは、14においてある種の固定または接着プロセスを経て、繊維を適切な位置に固定して、プレフォームを固化または半固化する。固定は、上記で議論されるように溶液中のバインダーが関与してもよく、溶液が除去されるときに、バインダーは残り続け、繊維を適切な位置に固定する。より詳細に議論されるように、接着剤またはバインダーは、プレフォーム上に噴霧されてもよい。
【0012】
本明細書の実施形態は、独特の繊維配向ヘッドを用いて形成された配向した繊維を有するプレフォームの形成を対象とする。製造されたら、このプレフォームは、ポリマー/樹脂のマトリックスを受容して、繊維強化複合体を形成し得る。完全性のために、この議論では、マトリックスのプレフォームへの浸透を行う方法の実施形態を設定するが、このプロセスは任意であり、多くの異なる形態を採用することも可能であることを理解する。
【0013】
プレフォームは、
図1の16においてマトリックスを受容する。マトリックスは、多くの異なる材料からなってもよく、それらとしては、種々のタイプのポリマー、例えば樹脂、ポリウレタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されず、液体形態であってもよく、または熱可塑性または他の成形可能な材料のシートの形態をとってもよい。 多くの異なるタイプの材料が使用できる。一般に、レジントラスファー成形(RTM)またはレジンインフュージョン成形(RIM)用に使用されるいずれかの材料が使用できる。それらの鍵となるのは、注入プロセスと適合性にするために粘度および硬化特性を調整することであり、これは製造される特定のプレフォームに依存する。典型的な粘度は、50〜1000センチポイズの範囲である。一般的なRTMおよびRIM材料としては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ポリイミド、フェノール性物質などが挙げられる。これらの高粘度について調整が行われる場合に熱可塑性物質を使用できる場合がある。プロセスは、合理的な低粘度を達成するのに十分、温度を制御する必要がある。一般的な熱可塑性物質としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)などが挙げられる。
図2の例において、マトリックスは、フィード機構44を通して液体としてプレフォームに供給される。
【0014】
浸透プロセスは、繊維プレフォームによって含有される湿潤マトリックスをもたらす。この構造は、最終的な強化繊維複合体を形成するための硬化を必要とする。硬化操作は、熱および/または圧力の適用を含んでいてもよく、次いで
図1の18においてプレフォームと共にマトリックスを固化するための冷却プロセスを含んでいてもよい。ポスト加工処理は、注入された材料に依存する。
図1の20において、これは、
図2の繊維強化複合体42をもたらす。
【0015】
この議論全体のいくつかの態様は、独特な特徴を有する。1つのこうした特徴は、
図2に示される繊維配向および整列ヘッド34である。繊維配向ヘッドは、拡張フローを創出し、拡張フローは、懸濁液中の繊維の整列のために理想的である。
図3は、機械的な4ロールミルの例を示す。機械的4ロールミルは2つの入口41および43を有する。ミルカウンターの4ロールは回転し、液体を出口45および47から押し出す。出口からのこのタイプの拡張フローは、懸濁液中の繊維を整列させる。
【0016】
図4は、繊維整列ヘッドの1つの実施形態を示し、これは繊維整列および配向ヘッドと称され得る。整列ヘッドは、後でより詳細に議論される配向構成要素を含有するハウジング34を有する。
図4において、ハウジング34は、ヘッドが出るときの繊維の整列角度を制御できる回転リング48を有する。この実施形態において、ハウジングは2ロールミルを含有する。繊維を有する懸濁液は、図面に示されるようにハウジングの底部から2ロールミルに流れる。ローラーの動きにより、出口48から出るときに繊維を整列させる。
【0017】
フローは、
図5のフロー図を見て理解が深まり得る。ハウジング34は、入口フロー52を有し、これがロール間の経路54にて狭くなり、次いでプリントヘッドを整列フローとして出る。ロールミルの実施形態において、ローラーは、
図6に示されるようなすそ広がりのフローを創出する。ローラーは、領域54においてそれらの間で繊維を整列させ、次いでフロー60でミルから出る。
【0018】
上述されたように、ヘッドは、回転してもよく、または出口において回転リング48を有していてもよい。回転は、繊維がヘッドを出るときに、繊維に関して角度を変えることができる。
図7〜
図9は、異なる可能性を示す。
図7において、繊維は絵に対して水平に整列させる。ヘッドまたはリングの回転割合が増大するにつれて、繊維に対する出口角度が変化する。
図8は、第1の回転割合から生じる第1の出口角度を示し、
図9は、第2の回転割合から生じる第2の出口角度を示す。異なる用途は、異なる角度および異なる構造態様を有する異なるプレフォームを有していてもよい。アウトプットを回転させる能力が、繊維配向の良好な制御を可能にする。
【0019】
ハウジング内のローラーに対する代替実施形態において、ハウジングは、その中にこのすそ広がりのフローを創出する構造を有することができる。
図10は、代替ハウジング70を示す。ハウジングは、円筒状部分72を有し、これはアウトプット部分74の方に下がって狭くなる。円筒状部分がアウトプット部分74の方に下がって細くなるときに、アウトプット部分の寸法は矢印によって示されるフロー方向に大きくまたは「広く」なるが、フロー方向に対して垂直には小さくなる。示される例において、得られたアウトプット部分は、円筒状部分よりもこのページの左から右への寸法が大きくなるが、このページの出入り方向に向かっては相当狭くなる。これは、スリット76の幅よりは広くないハウジングのアウトプット部分をもたらす。
【0020】
図10は、リサイクルフローの付加だけでなくこの実施形態のハウジングの内側の詳細を示す。材料がフロー方向52で貯蔵器82からヘッドに入るときに、入口は収縮78の方に狭くなる。収縮78が溶液内の繊維をフロー軸に対して平行に整列させ始める。これにより、すべての繊維がノズルの中心において出て、拡張部分74への加工処理前に、同じ出発配向を有することを保証する。収縮の後は、拡張出口部分74が続く。出口部分は、収縮78にわたって1方向に広くなるが、広くなった方向に垂直な寸法では狭くなる。これが、フロー軸に対して垂直な整列を生じる。
【0021】
これは、繊維を整列させるのに十分であり得る。強化として、整列ヘッドは、矢印86および88によって示される方向にフローを引っ張る負圧を適用するリサイクルフロー出口84を有していてもよい。これは、リサイクルまたは二次フローと呼ばれる。主要フローは、矢印80の方向にノズルから移動する。リサイクルフローは、繊維がヘッドから出るときに繊維の整列を補助する。これは、上記で議論されたすそ広がりのフローを強化する。
【0022】
使用された繊維配向ヘッドの実施形態にかかわらず、プレフォームは、マトリックスの浸透の前にさらに加工処理を行う必要があり得る。繊維堆積の間、真空圧力は、堆積された繊維を圧縮し、固定し、キャリア流体を除去するのに役立つ。加えて、繊維はさらなる固定が行われてもよい。溶液は、流体が除去される場合に適切な位置に繊維を保持するバインダーを含んでいてもよい。あるいは繊維プレフォームは、バインダー溶液で少なくとも部分的に噴霧またはそうでなければコーティングされてもよい。バインダーは、次の加工処理工程のために、繊維プレフォームの取扱いを促進し得る。また、マトリックスが浸透される場合にプレフォームの熱可塑性界面の品質を改善してもよい。
【0023】
図11は、適用真空で堆積を行うときの繊維プレフォーム39の側面図を示す。基材38は多孔質であり、これにより、真空をプレフォームに作用させることができる。
図12に示されるように、スプレーヘッド、例えば90は、プレフォームにバインダー溶液を分配する。バインダーは、さらなる硬化プロセス、例えば乾燥または熱の適用を行う必要があり得る。
【0024】
上述されるように、配向した繊維を有するプレフォームが完了したら、それにマトリックスを浸透させてもよい。こうしたプロセスの1つの実施形態を
図13に示す。繊維プレフォーム39は、アプリケーター92、例えばカーテン、スロット、ロールコーターなどを用いて溶融ポリマーまたは樹脂94でコーティングされてもよく、または浸透されてもよい。マトリックスは、単に冷却および/または乾燥させることによって固化してもよい。あるいは、マトリックスは、
図13に示されるように熱および圧力の適用を必要とする場合があり、結果として繊維強化複合体42が得られる。
【0025】
この様式において、独特のノズルにより、溶液中の繊維の配向を可能にして、繊維プレフォームを創出する。プレフォームは、必要とされる形態に従って配向した繊維を有していてもよい。マトリックスの浸透後、得られた繊維強化複合体材料または形状は、優れた強度を有し、ノズルは、相対的に安価であり、相対的に簡単な製造が可能である。